モデル事例集「野村実里」
「国際協力を和歌山県の文化に」
JICA関西国際協力推進員
野村実里 さん(御坊市)
はじめに
皆様、こんにちは。私は平成22年の1月から平成24年の1月まで、JICAの青年海外協力隊(村落開発普及員)として、中央アジアのキルギス共和国で、タスマ村の女性たちと石鹸を作って販売する活動をしていました。一村一品運動を通じたタスマ村女性の地位・収入向上がわたしの仕事でした。初めて体験するマイナス20度の世界や6000メートル級の山々に圧倒されながらも、キルギス人の温かい心に助けられっぱなしの2年間でした。
すべてが0から
タスマ村にはこれといった産業はありませんでした。「なければ作ればいいんだ!」という発想をもとに、村の女性たち5人(主婦)が立ち上がり、石鹸作りをスタートさせました。村長さんと、学校の校長先生にたのんで、廃教室を仕事場として使わせてもらえることになりました。みんなで一生懸命掃除して、修理して、私たちの石鹸作り工房が完成しました。
村で採れるものを利用
自然豊かなタスマ村では、カモミールやカレンドュラといったハーブや、杏やシーバクソンといった果実もたくさんとれるので、それらを石鹸の材料にしました。ハーブは乾燥させ、果実の種からは石鹸作りに必要な油をしぼりました。村にたくさんいるヤギのミルクも石鹸の材料として利用しました。
安心・安全手作り品質
私たちの石鹸には化学保存料、化学着色料、化学香料は一切使用しませんでした。「せっかくタスマ村の天然素材を使っているんですもの!」と石鹸作りの女性たちも肌への影響にこだわります。女性の美への追及は世界共通。みんな一生懸命に美容についても勉強しました。
女性が無理なく働ける環境を
家事に育児にいつも大忙しの村の女性ですが、私たちの石鹸工房へは子供をつれてくるのが当たり前。工房につれてこられた年上の子どもが、年下の子どもの面倒を見てくれるので、お母さんは仕事に集中できます。生まれたばかりの子供にお乳をやりながら働く女性もいました。長期産休制度を整えるだけの力がなかった私たちですが、こういう風にして助け合いながら働ける環境があると、産休制度は必ずしも必要ではありませんでした。
自信が味方に
村の女性はあまり頻繁に村外にでることはありません。しかし、石鹸作りをはじめたからには村から出て、近くの街や首都へ売りにいく機会も増えます。はじめは人前に出ることを恥ずかしがっていた女性たちも、徐々に接客にもなれていき、お客さんの声に耳を傾けることの大事さや、それを商品開発に生かしていくことの面白さを学んでいきました。最終的には大きな会議でプレゼンテーションができるようになりました。
キルギス女性からの学びと今後の抱負
今、目の前に理想の世界がなければ、それを自分たちの手で作ればいい。0からスタートすることを恐れなかった石鹸作りの女性たち。2年間で、社会的にどんどん実力をつけていきました。私の次のフィールドは和歌山県。彼女たちのように、外国や都会じゃなくても新しいことにチャレンジできるはず。キルギス人女性からもらった勇気と故郷を大事に思う気持ちを胸に、JICA国際協力推進員として、国際協力を和歌山県の文化にできるように楽しく働いていきたいです。
(補足)国際協力とは、世界中の人々が協力し合い、世界の平和と安定・発展のために様々な行動を起こしていく事。
野村実里プロフィール
昭和59年11月24日和歌山県御坊市生まれ。
日高高校自然科学科、神戸商科大学(現兵庫県立大学)商経学部国際商学科卒業。大学時代旅にはまりアジア10カ国以上をめぐる。卒業後は大阪の中国系商社で松茸を売る。
その後平成22年1月より、青年海外協力隊(村落開発普及員)としてキルギスに赴任。キルギスの東の果て、タスマ村で、女性たちと石鹸作りを行う。村人の生活向上、女性の地位向上を図り、一村一品活動の好例となる事を目指した。また、キルギスに伝わる伝説の石鹸作りを復活させ、キルギス共和国の無形文化財第2号に登録を果たす。
平成24年1月帰国、現在は独立行政法人 国際協力機構 関西国際センター 国際協力推進員(和歌山県担当)として毎日楽しく働いている。
最強主婦軍団タスマズ5
私の任地タスマ村
初めての石けん作り
初めての石けん販売
経理の仕方を学ぶ女性
完全無添加天然石けん
プレゼンテーションの練習
3月8日国際女性デー