イベントレポート“りぃぶる”語り合い広場「多様性の時代、女性議員が増えると世の中どう変わる?~クオータ制・パリテ法を考える~」
講座・イベント情報
イベントレポート
講座名
“りぃぶる”語り合い広場「多様性の時代、女性議員が増えると世の中どう変わる?~クオータ制・パリテ法を考える~」
講師
岩本 美砂子さん(三重大学名誉教授)
開催日時
令和6年11月9日(土)13:30~15:30
場所
和歌山県ジェンダー平等推進センター“りぃぶる”会議室A
内容
女性の議員が少なく多様性に乏しい日本の政治事情を背景に、女性議員が増えるとどのように社会が変わるか、女性議員を増やすにはどうすればいいかを講義と20~80歳代まで幅広い年代の参加者によるグループワークで一緒に考える機会となりました。
講師は、先の衆議院議員選挙後の女性議員の割合が選挙前の10.34%から15.7%に増えた現状や、和歌山県における女性議員数などの現状を共有した
あと、日本では女性の政治参加が少なかったことにより女性の人権がないがしろにされてきた歴史と、リプロダクション(生殖)、DV、性犯罪の3つの分野に分けて解説されると同時に、女性議員の存在意義や女性議員を増やす改善策について語られました。
リプロダクションについて、かつて女性のいない議会で制定された法律により、強姦被害や子だくさんなど中絶を余儀なくされた女性の場合でも中絶が犯罪とされヤミ中絶が横行したこと、そして1948年の優生保護法案が衆参両院ともに全会一致の賛成で成立(翌年改正)したが、中絶を許可する条件が厳しく依然ヤミ中絶は減らなかったことなどを説明されました。また、強制不妊手術について、国会でそれに関して質問できる議員がいなかった為、優生保護法を女性のリプロダクティブ・ライツを尊重する法律にできなかったことを例にあげ、女性の議員がいないことで、守られるべき女性の身体の権利や安全が担保されず、女性の人権が尊重されなかったと述べられました。
次に、ドメスティック・バイオレンスについては、日本では当時の調査で5人に1人の被害があることが判明していたにもかかわらず法務省が新しい制度は不要としたが、参議院共生社会調査会の女性議員の頑張りで、DV防止法が作られたと詳しく語られました。
そして性犯罪については、女性の法務大臣就任後、刑罰が重くなり、時効も長くなって、親告罪※1から非親告罪へ変更されたこと。また、1907年の刑法強姦罪では「性被害」は「貞操の侵害」とされ、加害者は男性、被害者は女性に限定されていたが、男性も被害者になりうると変更されたことにも言及されました。昨年には、不同意性交等罪(旧強姦罪)が成立し、「被害者が同意しない意思を形成、表明、全うすることが難しい状態で性交等を行う罪」と定義されたと述べられました。
最後に、女性の官僚を増やすためには、根本的に働き方改革をし、魅力ある管理職にすることが必要であり、女性議員や女性候補を増やすには、リモートを含む育児や介護との両立可能な審議や会議時間の設定などの労働条件、ハラスメント予防、経済的に不利な女性が立候補しやすいよう供託金をなくし署名に変える、女性の地方議員を増やすなど改善策を提示されました。女性が政策過程に参加すると、妊産婦、子育て中、高齢者介護者、障害者、年齢層の幅など、女性にも様々な背景の人がいるため、多様性が高まることを説かれました。
終始、熱のこもった講義で、歴史的なことも併せて解説され、興味深い内容でした。
参加者から「リプロの実態、不同意性交の内容が理解出来た。」「グループワーク、それについての先生のコメントもありよかった。」などのお声をいただきました。
※親告罪:被害者の告訴がなければ検察は起訴することができない罪。
会場の様子 岩本 美沙子さん