イベントレポート“りぃぶる”語り合い広場 「能登半島地震から学ぶ きっと役立つ!多様な視点で取り組む防災講座」
講座・イベント情報
イベントレポート
講座名
“りぃぶる”語り合い広場
「能登半島地震から学ぶ きっと役立つ!多様な視点で取り組む防災講座 」
講師
斉藤 容子さん(人と防災未来センターリサーチフェロー /関西国際大学客員教授 )
開催日時
令和6年10月26日(土)13:30~15:30
場所
海南保健福祉センター2階 多目的ホール
内容
私たちの国では、年間通して様々な災害に見舞われる環境にあり、2024年元旦に発生した能登半島地震では、山岳の集落の孤立や高齢の被災者が多く、和歌山県も被災すれば同様の問題が起こることが想定されます。そのため、災害が起きる前の準備(減災)、発生時の行動(発災)、避難所などでの生活(再生)と、それぞれの場面で必要なことや避難所の運営において多様な視点で積極的に運営に携わることを考えることが重要です。そのため平時から多様な視点で活動に取り組める環境を作り防災に活かすことを学び、実行につなげることを目的にこの講座を開催しました。
講師は最初に、多様な視点の意味と、その多様な視点が災害時にどう影響するのかを考えていくことが講座の目的だとされ、災害について、発生の瞬間だけではなく、発生時→発生後→復旧・復興期、さらに減災・防災期のサイクルを考えて取り組んでいくことが重要だと話されました。また、災害への備え・対応にマニュアルはなく、一人一人、地域ごとに必要なことが違うことが「多様」ということであり、個々に「違う」ということが当たり前になる社会こそ災害時に強みを発揮すると語られ、だからこそ自分たちに合った正解を、自分レベル・地域レベル・家族レベルでそれぞれ考えていく必要があるのだと話されました。
まず、災害発生時について。事前に分かる災害(台風や大雨)では早めに避難することが大切で、行政や警察・消防からの避難の声かけより、見知った近所の人同士による声かけで避難行動に移す人が多く、これは男性より女性の方が高い傾向があることを東日本大震災の津波からの避難を例に説明されました。
次に避難後の生活について、日本の避難所の事情が1930年以降全く変わっていない現状を写真で示しながら、実際に能登半島地震の避難所での活動から、避難所で1番困るのはトイレであり、トイレに行きにくい環境にいると水分摂取を控えて、脱水症状になり、さらに誤嚥性肺炎をひきおこし、ひいては「災害関連死」となる可能性が大きいのだと強調されました。災害には、地震の揺れや土砂崩れなどの発災時に亡くなる「直接死」と避難生活など災害後に適切な環境で生活が送れなかったことで亡くなる「災害関連死」があり、日本はこの「災害関連死」が多く、災害から時間がたつほど亡くなる人が増えていると指摘し、避難所の環境など事前の災害対応が人の命を救ううえでとても重要であることを強調されました。
その他の避難所での困りごととしては、女性が使う生理用ナプキンや下着を受け取る、洗濯物を干すなどプライバシーが充分に確保されないことで、災害時であれ、どんな状況でも、人が人として尊厳のある生活ができるよう守られるべきだと述べられました。災害時は命を守ることが優先だから人権を後回しにしていいことではなく、加えて、災害時にはセクハラや性暴力が起こりうることを知っておくことが大事だと語られました。また避難所は、そこに避難している人たちだけのものではなく、物資や情報を得るための地域の核となる施設であって、在宅避難している人たちも避難所を頼って良いことを地域で共有しておくことが重要とのことでした。乳幼児世帯や妊婦さんの避難所やケアについて、また障害のある方と一緒に避難する際の具体的なサポートを本人とともに考えることで工夫することも必要で、障害のある方が避難所で「障害だ」と感じるものを無くせばいい、という考えがあることを知っていてほしいと述べられました。日本は平等社会と言われるが、その人に応じて必要なものは違うため、その人の状況に応じて必要なものを届けることが「公平」であり、平時にどのような社会であるかが災害時に現れるため、今自分たちが住んでいる社会について考えることは大切なのだと話されました。
海南市での開催でしたが、和歌山市、有田市、橋本市、白浜町など県内各地から参加がありました。年齢層も10~80代と幅広い世代の方が参加され、皆さん、真剣にメモを取り、グループワークでは活発に意見交換を行うなど賑わいのある講座となりました。
参加者からは、「自分の気付かない視点の情報や災害時に実際に起こった問題を知ることができて良かったです」「自分がもっと関わり、家族、職場で災害についてもっと話し合う必要があると痛感しました」「準備の大切さ、一人一人の尊厳を意識することの大切さ学ばせていただきました」などの感想をいただきました。
斉藤 容子さん 会場の様子