イベントレポート“りぃぶる”語り合い広場 「紫式部、”人生の選択”~『源氏物語』に込められた思いとは?~」
講座・イベント情報
イベントレポート
講座名
“りぃぶる”語り合い広場
「紫式部、“人生の選択”~『源氏物語』に込められた思いとは?~」
講師
山本 淳子さん(京都先端科学大学国際学術研究院教授)
開催日時
令和6年10月5日(土)13:30~15:30
場所
和歌山県ジェンダー平等推進センター “りぃぶる”会議室A
内容
世界最古の長編小説「源氏物語」の作者で、今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公でもある紫式部。その紫式部の生き方を通して、平安時代の貴族女性たちの生き方や気持ちを考察し、現代と比較しながら、自分らしい生き方について考えることを目的にこの講座を開催しました。
講師は、まず「源氏物語」に登場する光源氏の境遇と恋の遍歴について説明するとともに、現代の社会通念で考えると登場する女性たちは光源氏から性暴力、窃盗、誘拐などの被害を受けているなど、女性研究者の視点で「源氏物語」の解釈が変わってきたことを話されました。
続いて講師は、「光源氏はなぜこんなに次々と恋をするのだろうか?」と私たちに問いかけ、「恋しい」という言葉には、手に入らない対象を切なく求める気持ちが含まれており、光源氏は3歳のときに母を亡くしたことで、母を恋しく思う気持ちから、その身代わりを次々に求めた。紫式部も幼いころに母や姉、さらに亡くなった姉の身代わりのように思い親しくしていた幼なじみを亡くし、その上結婚してわずか3年後に夫を亡くしたことで、物語を書くことに心を傾け、光源氏に自身を重ねて描いたのだと語られました。
また、紫の上にも言及されました。光源氏は紫の上を愛していたが、その愛はいつの間にか「愛執」「束縛」となり、光源氏自身も「執着」したことが紫の上を苦しめ、紫の上は晩年の心中を「女ほど生き方が窮屈であわれなものはない。『したいことができず、言いたいことが言えなくて、どうして生きる張り合いがあるだろうか。人生の寂しさが紛らわされるだろうか。』」と明かしており、これは、紫の上が孫世代の女性たちに自身の教訓として伝えようとしているもので、作者である紫式部自身の言葉でもあると解釈されていると説明されました。
最後に講師は、物語のなかで、紫式部は自身の人生、実体験や思いを、登場人物を通して描き「人生は恋であったり愛であったり苦の繰り返しであるが、それでも誰かに恋し、愛しながら生き続けていく。そういうものだと受容しながらも、その時にどう主体的に生きるかが大切なのだ、なぜなら、それが人生の普遍なのだから」という結論にいきついたのではないだろうか、と結ばれました。
参加された方々は、講師の話に頷きながら熱心にメモを取り、グループワークでは、『源氏物語』そのものや大河ドラマの話で大いに盛り上がり、終始和やかな雰囲気の講座となりました。
参加者からは、「物語を知らない人でもわかりやすかった。コミカルさもあって頭に入りやすい。内容・解釈が面白かったです」「ややこしく感じていた人間関係や立場、気持ちが理解しやすくなりました。もう一度読み直したいと思いました」「光源氏や女性達に、作者の思いや人生観を投影していることも分かってこれからのドラマも楽しみ。そして、原作にもふれてみたいです」などの感想をいただきました。
会場の様子 山本 淳子さん