建築物等の解体・改修時のアスベスト飛散防止規制
大気汚染防止法では、建築物・工作物を解体・改修する作業を伴う建設工事において、石綿飛散防止のため、石綿使用の有無に係る事前調査や、作業開始前の届出、作業基準の遵守等を規定しています。
特定建築材料(アスベスト含有建材)とは
特定建築材料とは、石綿が使用された(石綿を意図的に含有させたもの又は石綿の質量が当該建材の質量の0.1%を超える)建築材料全てを指します。
(参考)国土交通省「目で見るアスベスト建材(第2版)」(外部リンク)
(参考)環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和6年2月改正)」(外部リンク)P17~、P78
大気汚染防止法の区分 | 例 | 発じん性 | レベル区分 | |
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吹付け石綿 | 吹付け石綿、石綿含有吹付ロックウール、石綿含有ひる石吹付け材、石綿含有パーライト吹付け材 | 著しく高い | レベル1 | |
石綿含有断熱材等 | 石綿含有断熱材 | 屋根用折板裏断熱材、煙突用断熱材 | 高い | レベル2 |
石綿含有保温材 | 配管等保温材 | |||
石綿含有耐火被覆材 | けい酸カルシウム板第2種 | |||
石綿含有仕上塗材 | 建築用仕上塗材 | 比較的低い | レベル3 | |
石綿含有成形板等 | けい酸カルシウム板第1種、下地調整塗材、スレートボード、スレート波板、住宅屋根用化粧スレート、せっこうボード、ビニル床タイル、セメント管、ジョイントシート、パッキン |
事前調査(すべての建築物等の解体・改修工事が対象)
建築時期・規模・用途を問わず、すべての建築物・工作物の解体・改修工事を行う際は、特定建築材料(アスベスト含有建材)使用の有無を調査(事前調査)する必要があります。事前調査は元請業者または自主施工者が行います。
- 事前調査は、設計図書その他の書面による調査と、目視による調査が原則です。
- これらの調査で建材の石綿含有の有無がわからない場合は分析調査を行う必要があります。
- ただし、建材中に石綿が含有されているとみなして石綿飛散防止措置を講じる場合は、分析を省略することができます。
(補足)釘を打って固定する、又は刺さっている釘を抜く等、材料に、石綿が飛散する可能性がほとんど無いと考えられる極めて軽微な損傷しか及ぼさない作業は、建築物等の解体・改修工事には該当せず、事前調査は不要です。ただし、電動工具等を用いて、石綿等が使用されている可能性がある壁面等に穴を開ける作業は、事前調査が必要です。
(参考)建築物所有者向け事前調査パンフレット(PDF形式 1,051キロバイト)
(参考)環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和6年2月改正)」(外部リンク)P27~、P89~
事前調査における資格
令和5年10月1日以降に着工する建築物の解体・改修工事、令和8年1月1日以降に着工する工作物の解体・改修工事から、資格者による事前調査が必要です。
(注意)解体等工事を行う建築物が平成18年9月1日以後に設置の工事に着手したことが書面により明らかである場合は、資格者による調査を行う必要はありません。
(参考)事前調査において資格が必要になります(環境省チラシ)(PDF形式 408キロバイト)
(参考)解体・改修・各種設備工事を行う施工業者の皆さまへ(厚生労働省チラシ)(PDF形式 2,414キロバイト)
(参考)環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和6年2月改正)」(外部リンク)P30、P93~
必要な資格
【建築物】
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て住宅・共同住宅の住戸の内部に限定)
- 令和5年9月までに一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き登録されている者
【特定工作物(令和2年環境省告示第77号)のうち、反応槽、加熱炉、ボイラー及び圧力容器、配管設備(建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備を除く)、焼却設備、貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く)、発電設備(太陽光発電設備及び風力発電設備を除く)、変電設備、配電設備、送電設備(ケーブルを含む) 】
- 工作物石綿事前調査者
【特定工作物のうち、煙突(建築物に設ける排煙設備等の建築設備を除く)、トンネルの天井板、プラットホームの上家、遮音壁、軽量盛土保護パネル、鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板、観光用エレベーターの昇降路の囲い(建築物であるものを除く) 】
【特定工作物以外の工作物のうち、塗料その他の石綿等が使用されているおそれがある材料の除去等の作業 】
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 令和5年9月までに一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き登録されている者
- 工作物石綿事前調査者
資格の取得方法
登録講習機関が実施する講習を受講し修了する必要があります。
詳細は下記の厚生労働省のホームページを確認してください。
- 建築物石綿含有建材調査者講習(厚生労働省ホームページ)(外部リンク)
注意点
事前調査結果の行政への報告(一定規模以上の工事が対象)
令和4年4月から、次のいずれかに該当する場合は、特定建築材料の使用の有無にかかわらず、事前調査結果の都道府県等への報告が必要です。
報告が必要な工事
- 建築物の解体工事:作業対象となる床面積の合計が80平方メートル以上
- 建築物の改修工事:請負代金の合計が100万円以上
- 環境大臣が定める工作物の解体・改修工事:請負代金の合計が100万円以上
(補足)分割発注している場合は、合計金額で判断してください。
(補足)請負代金の合計には事前調査費用は含みませんが、材料費、消費税を含みます。
(補足)報告対象となる特定工作物(令和2年環境省告示第77号)は、以下のとおりです。
反応槽、加熱炉、ボイラー及び圧力容器、配管設備(建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備を除く)、焼却設備、煙突(建築物に設ける排煙設備等の建築設備を除く)、貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く)、発電設備(太陽光発電設備及び風力発電設備を除く)、変電設備、配電設備、送電設備(ケーブルを含む)、トンネルの天井板、プラットホームの上家、遮音壁、軽量盛土保護パネル、鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板、観光用エレベーターの昇降路の囲い(建築物であるものを除く)
報告方法
- 報告者:元請業者または自主施工者
- 報告方法:原則として石綿事前調査結果報告システムを通じて報告してください。事前に「GビズID」への登録が必要です。
- 石綿事前調査結果報告システム(外部リンク)
- 「GビズID」(外部リンク)
(参考)事前調査結果の報告について(環境省チラシ)(PDF形式 488キロバイト)
(参考)環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和6年2月改正)」(外部リンク)P35~、P101~
(様式)事前調査結果報告様式(様式第3の4)(エクセル形式 26キロバイト)
事前調査後の手続(すべての建築物等の解体・改修工事が対象)
特定建築材料(アスベスト含有建材)の使用の有無にかかわらず、元請業者または自主施工者は次の事項を行ってください。
- 調査結果の発注者への説明(書面を交付)
- 調査記録の作成、記録・説明書面の写しの保存(工事終了後3年間)
- 調査結果写しの現場備え置き
- 調査結果の現場掲示(公衆の見やすい場所)
(様式)事前調査に係る発注者者への説明書面の参考様式(ワード形式 40キロバイト)
(様式)石綿事前調査及び工事お知らせ看板についての参考様式(エクセル形式 72キロバイト)
(参考)環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和6年2月改正)」(外部リンク)P32~、P95~
作業計画の作成(特定建築材料が使用されている場合)
1. 特定建築材料(アスベスト含有建材)が使用されていたら、元請業者または自主施工者は、建築物等の解体等工事の開始前に作業計画を作成してください。
【作業計画の内容】
- 発注者、住所、法人の場合は代表者氏名
- 工事の場所
- 作業の種類、実施期間、作業方法、作業工程概要
- 特定建築材料の種類、使用箇所、使用面積
- 対象建築物等の概要、配置図、付近の状況
- 元請業者等と作業を行う下請負人の現場責任者氏名、連絡場所
2. 公衆の見やすい場所に作業方法等を掲示してください。
3. 下請負人に作業の種類、実施期間、作業法方法等を説明してください。
(注意)石綿含有仕上塗材、石綿含有成形板等(レベル3建材)が使用されている場合も、作業計画の作成が必要です。
(参考)環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和6年2月改正)」(外部リンク)P20~、P107~
作業実施の届出(吹付け石綿や石綿含有断熱材等が使用されている場合)
発注者又は自主施工者は、石綿の除去等に係る作業開始の14日前までに大気汚染防止法に基づく「特定粉じん排出等作業実施届出書」の提出が必要です。
1 届出の対象となる作業
石綿含有吹付け材(レベル1建材)、石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材(レベル2建材)が使用されている建築物・工作物の解体・改修作業
2 届出者
3 届出時期
(注意)作業開始日とは、作業区画の隔離、集じん・排気装置の設置、足場の設置などの石綿飛散防止のための作業を含む、除去等に係る一連の作業の開始日です。
(注意)届出日と作業開始日の間に14日間以上必要です。1日に届出の場合は16日から作業が可能です。
(注意)届出書に不備がある場合は届出があったと判断できず、工期の延長につながる可能性があるので、期間に余裕を持って届け出てください。3 届出に必要な書類
4 提出先及び提出部数
- 作業を行う市町村を所管する各保健所衛生環境課(新宮保健所串本支所は保健環境課)
- 提出部数 3部(うち1部は届出者控え)
5 報告徴収・立入検査
- 作業の実施状況や石綿濃度測定結果等の報告を求めることがあります。
- 作業現場や施工者の営業所などへ立ち入り、作業内容や関係書類などの検査をすることがあります。
(参考)環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和6年2月改正)」(外部リンク)P39~、P112~
作業基準
作業の種類ごとに遵守しなければならない作業基準が定められています。
作業の種類 | 石綿飛散防止措置の概要 |
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<かき落とし・切断・破砕により除去> 吹付け石綿 石綿含有断熱材 石綿含有保温材 石綿含有耐火被覆材 |
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<かき落とし・切断・破砕以外の方法で除去> 石綿含有断熱材 石綿含有保温材石綿含有耐火被覆材 |
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石綿含有仕上塗材 |
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石綿含有形成板等 |
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(参考)環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和6年2月改正)」(外部リンク)P20~、P78~、P123~
作業完了報告
- 元請業者は、作業完了後、発注者に対して、作業の実施状況の概要や完了年月日等を書面により報告してください。
- 届出対象工事については、下記の完了報告書様式により、所管の保健所に提出してください。
(様式)特定粉じん排出等作業完了報告書(ワード形式 38キロバイト)
(参考)環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和6年2月改正)」(外部リンク)P44~、P78~、P123~
リスクコミュニケーション
- 解体等工事を実施する際には、石綿粉じんの漏えい等に対する周辺住民等の不安や懸念を解消することが重要です。
- リスクコミュニケーションとは、「石綿飛散に係るリスクや飛散防止対策の内容や効果などに関する正確な情報を、発注者や元請業者が周辺住民等と共有し、相互に情報や意見を交換して意思疎通を図ること」をいいます。
- 発注者にとっても、周辺住民等とのトラブルの未然回避や初期段階での対処が可能となり、工事の円滑な推進につながります。
- リスクコミュニケーションの考え方や手順については、下記の環境省ガイドラインを参照してください。
リンク集
- アスベスト対策に係る政府の対策について (環境省ホームページ)(外部リンク)
- 建築物の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(環境省ホームページ)(外部リンク)
- アスベスト(石綿)情報(厚生労働省ホームページ)(外部リンク)
- アスベストから子供を守ろう(外部リンク)