6.旧県会議事堂の見所
車寄せ
正面車寄せには華麗な彫刻が施される。特に中央の「兎の毛通し」の彫刻は鳳凰がモチーフで、「笈形」の波や「蟇股」の雲の彫刻とともに軒の高い県会議事堂の正面玄関を引き締めている。これら彫刻群は棟札にある彫工「大窪嘉輔」の手になるものとみられる。
車寄せの彫刻
1 車寄せの兎の毛通し(鳳凰) 2 車寄せの笈形(波)
3 車寄せの蟇股(雲)
床の間
議場には床の間が付く。上部には唐破風が設けられ、鬼板をはじめ、鶴や亀をあしらった彫刻で飾る。これらの彫刻群も、車寄せ同様、棟札に記される 彫工「大窪嘉輔」によるものとみられる。床の間は演壇とは違い、当時の写真を見ると、日の丸を掲げたり、盆栽を置いたりしている。
議場の天井は中央部を折上格天井、周囲を鏡天井とした構成である。天井板は杉の杢目板で、一つの格間を一枚張りとした贅沢な木取りで、前後左右で 木目の向きを替え、市松模様になっている。
議場床の間の唐破風
1 議場床の間の鬼板 2 議場床の間の兎の毛通し(亀)
3 議場床の間の彫刻(鶴)
県会開会の様子(『社会画報』昭和2年12月号)
議場の天井
議場の天井は中央部を折上格天井、周囲を鏡天井とした構成である。折上格天井の天井板は、杉の杢目板で、一つの格間を一枚張りとした贅沢な木取りで、前後左右で木目の向きを変え、市松模様になっている。
議場の折上格天井
格天井折上げ部分の支輪 天井板は木目を市松文様に張る
格天井修理の様子
傍聴席
議場上部は傍聴席である。傍聴人は本館側の専用の階段より上がった。当時は鈴なりのように傍聴人が入ったこともあった。古写真を見ると、上手側に仕切りのあった時期もあり、ここは他県の例からみて新聞記者席とみられる。議場の勾欄は社寺建築の縁に付くものと同様の形式で、栂の長尺材で作られてい る。
議場をコの字形に傍聴席が取り巻く 傍聴する人々(『社会画報』昭和14年12月号)
傍聴席に上がる階段 傍聴席の勾欄
手挽き製材の最後の時代
県会議事堂の木材は桧材、見えない構造材は松材が採用された。天井板や根太は杉材である。トラス組には、成が40cmあまりの松の大材が使われている。
明治時代後期より和歌山県でも機械製材が導入されるが、県会議事堂の大量の木材はすべて職人の手作業で製材されたものである。県会議事堂は2年足らずで これだけの木材が調達・製材され建てられたもので、手挽き製材最後の時代の遺産といえる。