3.旧県会議事堂の特徴
建物の3エリア
県会議事堂は、正面より本館、議場、控室の3つのエリアからなった。名称は昭和14年(1939)の現JAグループ和歌山への売却価格調書に記載されている。
本館は県会議員のためのエリアで、1階は受付、傍聴人控所、接見室を備え、2階は議長室、書記室、議員休憩室、議員応接室を設ける。
議場は間口18m、奥行23m、高さ6mの大空間で、奥に床の間を備える。議場の外をコ字形に土間廊下が取り巻く。土間廊下上部の2階は傍聴席となっている。
控室は県執行部が使ったエリアで、高等官控所、応接室、参事会員室、県庁員控所、警察官室などがある。
このように、議場を挟み、議会と執行部が対置される構成となっていた。
売却価格調書にある部屋の名称 県会議事堂図面(売却価格調書添付資料)
県会議事堂平面図(左が1階、右が2階)
土間廊下
議場をコ字形に取り巻く土間廊下は、文字通り土間叩き仕上げで、建具などを設けず吹き放しとした外部空間である。このため本館から議員が議場に入るときは、いったん外部に出てから入ることになる。このような吹き放しの廊下は、明治時代の官庁建築でよく見られたもので、時代の特徴が現れている。
土間廊下
和洋折衷の構造
議事堂は、当時の県庁舎が洋風建築であったのに対し、木造真壁造、漆喰塗で、和風の建築である。明治28年(1895)の奈良県庁舎にはじまる伝 統建築見直しの時代的背景と重なる。
本館と議場の屋根は、洋式のトラス組で支えられる。議場の梁間18mに及ぶ大空間は、トラス組の採用なしに実現できないものであった。トラス組はボルトや帯金具が多く用いられ、インチサイズのネジが使われている。ボルト自体が重要な構造材として機能する。
このように外観は和風であるが、屋根の構造は西洋式で、いわば和洋折衷のつくりになっている。
議場の大空間は西洋式のトラス組で造る
議場のトラス組
本館トラスの帯金具 議場トラス組の吊り金具