1.建物の概要
旧和歌山県会議事堂は、和歌山城の東側、和歌山市一番丁に明治31年(1898)に建設された、和歌山県会(現県議会)の議事堂建築である。木造二階建一部平屋、瓦葺屋根、間口31メートル 、奥行47メートル、建築面積1,239平方メートルの大規模な建造物で、当時、市内有数の壮麗なる白木の建物と評された。
議事堂は正面より本館、議場、控室の各部に分かれる。本館には接見室、議長室、議員休憩室などが設けられた。議場は正面に床の間が構えられ、上部には彫刻飾りを設けた唐破風が付く。議場を土間廊下で取り巻き、2階には傍聴席が設けられた。控室は高等官控所や参事会員室、県庁員控所などが設けられた。議場は公会堂としても使われ、明治44年には夏目漱石が「現代日本の開化」と題して講演したこともある。
当時の県庁舎は和歌山城西側の西汀丁にあり、洋風意匠の木造建築であったが、議事堂は腰に下見板を張り、壁を漆喰塗、屋根を瓦葺とした和風意匠で建てられた。外観に洋風要素は見られないが、大空間を造るために、小屋組には洋式のトラス構造が採用されている。
昭和13年(1938)に議場を備えた現県庁舎が完成すると、同16年に市内美園町、同37年には岩出市の根来寺に移築された。
議事堂は度重なる移築で各所が改造されたが、平成24~27年度の保存整備事業によって、建築当初の姿に復原された。本建造物は木造和風意匠の府県会議事堂として現存唯一であり、近代の和歌山県政史を物語る遺構として価値が高い。
議事堂の正面全景
側面外観 議場内部
玄関ホール
本館正面 往時の県会議事堂(和歌山市立博物館蔵)