薬物乱用による精神的・身体的弊害
薬物乱用による精神的・身体的弊害
1 薬物依存について
薬物乱用の最も恐ろしい特徴は、何度でも繰り返し摂取したくなる「依存性」を持っていることです。一回くらいならと思っても、薬物の効果がきれるとまた薬物が欲しくなって自分の意志がきかなくなります。繰り返し使ううちにさらに薬物への要求は激しくなり、深みにはまります。さらに覚せい剤などいくつかの乱用薬物には、使用を繰り返しているうちに、それまでの量では効き方がうすれていく「耐性」という性質があります。一回だけと思って始めた人も、薬物の「依存性」と「耐性」によって使用する量や回数がどんどん増えていき、どうしようもない悪循環に陥ります。こうして、自分の意志では薬物使用のコントロールがきかなくなった状態を「薬物依存」といいます。
2 身体への影響について
乱用される薬物は身体のさまざまな器官に障害を引き起こします。特に脳への影響は大きく、幻覚や妄想、判断力の低下などをもたらします。
3 シンナー・覚せい剤による弊害
シンナーによる弊害
急性毒性
- 酩酊作用、麻酔作用
脱水、酸素欠乏、呼吸麻痺 - 知覚異常及び幻覚の発作作用
身体移動感、夢想症
慢性毒性
(1)身体的障害
- 慢性気管支炎
咳、痰 - 抹消神経炎
手足のしびれ、歩行困難、筋肉萎縮 - 視神経萎縮
複視、視力低下 - 再生不良性貧血
めまい、息切れ - 肝障害
肝機能障害 - 脳の萎縮
脳波異常、痴呆
(2)精神的障害
- 性格の変化
いらいらして落ち着きがない(抑制欠如型) - 有機溶剤精神病
幻視・幻聴、妄想、それらに基づく異常行動
覚せい剤による弊害
覚せい剤の乱用を繰り返すと慢性中毒となり、覚せい剤精神障害を引き起こします。
- だれかが自分のことを噂している(関係妄想)
- だれかが自分をねらっている(被害妄想)
- だれかに見られている(注視妄想)
- だれかに追いかけられている(追跡妄想)
その他にも、自分への悪口が聞こえるといった幻聴や、体中にシラミがたかって見えるといった小動物幻視なども出現します。
また、人格面で性格の変化が現れてきます。過敏、不安となり、些細なことで激怒するという傾向がみられ、周囲の変化に敏感で刺激的に陥りやすいのが特徴です。
また、乱用をやめ、治療によって普通の生活に戻ったようでも、ストレスや飲酒などほんの小さなきっかけで突然、幻覚・妄想などの精神異常が再燃することがあります。これを「フラッシュバック(自然再燃現象)」といいます。覚せい剤の乱用でひとたび精神異常が生じると、治療によって表面上は回復しているようでも、精神異常が容易に再発する下地が確実に残っているのです。
(図)フラッシュバックについて