ウメ園の草生栽培調査結果(秋まき緑肥作物)
ウメ園の草生栽培には、有機物の補給、雑草抑制、敷き草による乾燥防止、地温上昇防止、根による深耕等の効果があります。
普及センターでは、下表の通り昨年の秋から4種類の秋まき緑肥作物の草生栽培展示ほを設置し調査を行いました。
市町村 | 設置場所 | 緑肥作物(秋まき) | 面積 | 播種時期 |
---|---|---|---|---|
田辺市 | 秋津川パイロット | ライ麦 | 20アール | 11月12日 |
新庄パイロット | ライ麦、エン麦、 イタリアンライグラス、ヘアリーベッチ |
2.5アール | 12月11日 | |
上富田町 | 小郷パイロット | 2.5アール | 11月28日 | |
岡 | 2.5アール | 11月28日 |
調査結果
作物名 | 播種量 |
刈る回数 | 草丈 |
1平方メートル 当たりの乾物重 |
背丈 | 刈りやすさ |
---|---|---|---|---|---|---|
ライ麦 |
6~8 キログラム 毎10アール |
1度刈り |
120~180 センチメートル |
0.6~1.1 キログラム |
30~40 センチメートル |
やや刈りやすい |
2度刈り |
90~160 センチメートル |
0.9~1.4 キログラム |
||||
エン麦 |
5~7 キログラム 毎10アール |
1度刈り |
80~140 センチメートル |
0.4~1.4 キログラム |
40 センチメートル |
刈りやすい |
2度刈り |
75~80 センチメートル |
1.0 キログラム |
||||
イタリアンライグラス |
3~4 キログラム 毎10アール |
1度刈り |
80~100 センチメートル |
0.5~0.9 キログラム |
35~45 センチメートル |
やや刈りやすい |
ヘアリーベッチ |
3~4 キログラム 毎10アール |
2度刈り |
5~50 センチメートル |
0.3~0.5 キログラム |
30~45 センチメートル |
自然倒伏 |
- ライ麦(品種:ハルミドリ)
穂が出ると倒伏しやすいので、出穂の直前~直後に根元を5センチメートル程度残して刈り取ります。2度刈りを行う方が、乾物重も多くとれました。
新規造成園での、有機物の補給と、敷き草による乾燥・地温上昇防止を目的とした草生栽培に適すると思われます。
- エン麦(品種:エンダックス)
茎がしっかりしていて倒伏しにくく、乾物重も大きく変わらないので1度刈りでもよいと思われます。刈りやすく、株元へも寄せやすいので、作業性の面からも、乾物重の面からも、新規造成園の草生栽培に適すると思われます。
- イタリアンライグラス(品種:はるかぜ)
茎が細く倒状しやすいので、ライ麦と同様に2度刈りが必要です。乾物重もライ麦・エン麦と比較してやや少なくなりましたが、穂から落ちた種が再生するので2年目から播種量を減らせるという利点があります。
- ヘアリーベッチ(品種:まめっこ)
乾物重は少ないですが、5月末に自然に枯死するため刈り取りの必要がなく省力的です。枯死した後もよく雑草を抑えていました。マメ科なので窒素固定も行います。 省力的に雑草を抑制することを目的に草生栽培をする場合にはヘアリーベッチが適すると思われます。また、丈が短くすべりにくいので急傾斜地にも良いでしょう。
- まとめ
今回の4種類の緑肥作物と、ナギナタガヤ(4Hクラブプロジェクト発表参照)をあわせて考察すると、新規造成園では土づくりが重要な課題となりますので、乾物重の大きい(10アール当たり1トン前後になる)ライ麦やエン麦が適すると思われます。特に、倒伏が少なく刈り取りや株元へ寄せる作業が最も楽なエン麦がおすすめです。
また、自然に倒伏するため刈り取りの必要がないヘアリーベッチやナギナタガヤも、乾物重はやや少なくなりますが、雑草抑制やマルチの効果をねらう場合には有効だと思います。
緑肥作物を用いた草生栽培は、現在ウメ園を中心に広がりを見せています。ぜひ、積極的に取り入れて下さい。
- 春まき緑肥作物の草生栽培展示圃設置
秋まきの緑肥作物に引き続き、春まきの緑肥作物3種類の草生栽培も下表の通り行っています。
市町村 | 設置場所 | 緑肥作物(春まき) | 面積 | 播種時期 |
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田辺市 | 秋津川パイロット | マルチムギ | 5アール | 6月10日 |
新庄パイロット | ソルゴー、マルチムギ、エン麦 | 各5アール | 5月7日及び6月24日 | |
上富田町 | 岡 | ソルゴー、マルチムギ、エン麦 | 各2.5アール | 6月24日 |
小郷パイロット | ソルゴー、マルチムギ | 各2.5アール | 7月中旬予定 |