特用林産物(紀州備長炭)

紀州備長炭とは

紀州備長炭とはの画像

【 紀州備長炭とは 】

紀州備長炭は、ウバメガシなどを原料に作られる固くて良質な白炭(はくたん又はしろずみ)で、料理の加熱・焼き物には最適の材料です。

和歌山県は日本有数の白炭の生産量を誇っており、年間約927トン(R5)を生産しています。

紀州備長炭の品質の高さは、世界中で焼かれている木炭の中でも秀逸で、原料となるウバメガシやカシ類の存在をはじめ、窯の構造・製炭方法も品質の高さに関係しています。

また、300年も前から持続可能な伐採方法「択伐施業」を実施し、資源を循環利用してきました。

SDGsの観点から、択伐施業は、全国各地から注目され、技術の伝達、普及を行っています。


【 歴 史 】

紀州備長炭は江戸時代に和歌山県で完成したと伝わり、今日でもその製法に大きな変化はありません。

また、和歌山県の製炭者が全国各地に技術伝承を行い、各地域で備長炭ブランドの形成に寄与してきました。

1974年(昭和49年)、紀州備長炭の製炭技術は、和歌山県の無形民俗文化財に指定されています。

現在、1970年(昭和45年)に結成された「紀州備長炭技術保存会」によって保持され、技術の継承にあたっています。

また、「紀州備長炭」は、和歌山県木炭協同組合が権利を保有する地域団体商標です。

 

 【 目 次 】  

1 白炭と黒炭の違い

2 紀州備長炭の代表的な等級

3 原木林を守る伝統技術「択伐施業」 

4 紀州備長炭の製炭工程

5 職人となる心構えと十分な準備

1 白炭と黒炭の違い

木炭には「白炭(はくたん、しろずみ)」と「黒炭(こくたん、くろずみ)」があります。

その名のとおり、白炭は白く、黒炭は黒い色をしています。製炭工程の大筋は同じですが、最後の炭の消し方に大きな違いがあります。

白炭の画像
  【 白 炭 】

【工程の違い】

炭化の終わり頃に窯の口を開け、空気を送り込みます。(ねらし・精錬の工程)

窯内の炭材や揮発成分に火がつき、炭素以外の不純物が焼き尽くされて炭化が進みます。

頃合いを見てまだ熱い窯から炭を取り出し、素灰(すばい・灰と砂を混ぜたもの)をかぶせて消火します。


【品質の違い】

素灰が炭の表面について灰白色の炭となることから、「白炭」と呼ばれています。

白炭は、着火温度が高いため火付きは悪いですが、一度火がつくと安定した火力で長時間燃え続けます。

焼き物料理の職人が、うちわで火力を調整できる点が、大きな違いです。

黒炭の画像
  【 黒 炭 】
【工程の違い】
黒炭は、炭化が終わった時点で窯の口をすべて閉じ、空気を遮断して消火します。

炭窯が冷えたところで、口を開き、炭を取り出します。


【品質の違い】

表面は黒色で軟らかく、たたくと鈍い土器音がします。

着火温度が低いため火付きが良く、短時間に勢いよく高温で燃焼します。

2 紀州備長炭の代表的な等級

 
紀州備長炭の規格は、品質、使う樹種、原木の太さによって異なります。紀州備長炭の等級画像
紀州備長炭の代表的な等級一覧
銘柄 樹種 太さ 長さ
馬目細丸 ウバメガシ 直径1.5から2cm 20cm以上
馬目小丸 ウバメガシ 直径2から3cm 20cm以上
馬目上小丸 ウバメガシ 直径3から4cm 20cm以上
馬目中丸 ウバメガシ 直径4から6cm 20cm以上
馬目半丸 ウバメガシ 直径3から6cm 、二つ割り 20cm以上
馬目割 ウバメガシ    直径3から6cm 、割りもの 20cm以上
備長細丸  アラカシ 直径1.5から2cm 20cm以上
備長小丸 アラカシ 直径2から3cm 20cm以上
備長半丸 アラカシ 直径3から6cm 、二つ割り 20cm以上
備長割 アラカシ 直径3から6cm 、割りもの 20cm以上
ウバメガシ、カシ 粉炭を除いたもの


 

3 原木林を守る伝統技術 「択伐施業」

【 持続可能な伐採技術 択伐施業 】
紀州備長炭では、原木であるウバメガシを絶やさないために、持続可能な伐採方法「択伐施業」 が古くから受け継がれてきました。
ウバメガシは幹を複数もつ「株立ち」となり、沿岸の貧栄養な土壌を中心に生育しています。
成長が遅いのことから、他の植物種との競争に負けてしまいます。
そこで、一度に原木の幹すべてを伐採せず、細い幹は将来に残しておきます。
ウバメガシの株には幹が残ることで株が枯死するのを防ぎます。
伐採した幹から成長する新しい芽を育てていくことで森林が更新され、原木林が将来にわたって守られていきます。
 
【 研修会 やまづくり塾 】紀州備長炭山づくり塾写真
和歌山県では、和歌山県木炭協同組合と共催で、製炭者向けの研修会「やまづくり塾」を毎年、開催しています。
紀州備長炭の原木林を循環利用する「択伐施業」の技術普及のほか、伝統的な製炭方法の技術継承を行っています。
平成21年度から継続して実施しており、製炭技術の向上と格付・選別方法等の研修も併せて行っています。
新規参入された製炭者や山林所有者の方々に是非、ご参加頂きたい研修会です。
 
 
択伐
択伐
 
 
 

4 紀州備長炭の製炭工程

1 木づくり

製炭工程1画像

木づくり

曲がったウバメガシに、のこぎりや鉈(なた)などで切り目を入れ、木片で作った楔(くさび)を打ち込み、真っ直ぐにします。 

細い原木は束ねます。

2 窯詰め

製炭工程2画像

炭材を数本ずつ束ねて窯の中へ立てて入れます。

この立て詰めが紀州備長炭の焼き方の特徴のひとつです。

また、伝統的な製炭方法では、「はね木」、「ほうり木」という技術を使い、炭窯が熱いうちに原木を窯にいれます。

3 口焚き

口炊き

窯口で雑木を燃やし、窯の中の原木を乾燥させます。 

製炭者は、原木に着火したかどうかを僅かな窯口の穴と、煙の臭いと色のみで判断します。

4 炭化

炭化

窯の中の原木に着火したら窯口をふさぎ、原木を蒸し焼きにしていきます。

煙の臭いと色で窯の中の状況を判断していきます。

窯口に小さな穴を開けたり排煙口の大きさを調節したりして、炭化を常に最高の状態に保ちます。

5 精錬(ねらし)

製炭工程5画像

紀州備長炭とはの画像

紀州備長炭をはじめとした白炭の最大の特徴は、「ねらし」の工程です。

窯口を徐々に広げて空気を送り込まれると、炭化された炭が真っ赤になって燃えます。

この作業によってさらに炭化が進みます。

この時、窯の中の温度は1000度を超えています。

6 窯出し・消火

製炭工程6画像

「ねらし」をかけた炭を徐々に窯口の外にかき出し、灰と土を混ぜた「素灰」をかけて消火します。

炭は一度に出さず、「ねらし」を加えながら少しずつ作業を進めます。

7 選別・箱詰め

製炭工程7画像

素灰をかけて消火された紀州備長炭を灰の中から取り出していきます。

一定の長さに断ち割り、炭の直径や形によって等級ごとに選別し箱詰めします。

紀州備長炭の選別は、明治時代の基準によって細かく等級分けされていて、現在の選別にもその名残があります。

5 職人となる心構えと十分な準備

山村での生活

製炭の仕事現場は山村地域です。古くからの伝統が残る地域が多くあります。
山村地域では、地域の行事等に参加したりして共同作業を通じて地域に溶け込んでいくことが重要です。

製炭技術の習得

【どの地域で製炭技術を習得(弟子入り)するか】
将来、どの地域で仕事を始めるか、窯場・原木等の確保、家族など十分に検討して地域を選定する必要があります。
また、修行を経て、和歌山県木炭協同組合に加入する必要があります。
 
【製炭技術習得期間】
紀州備長炭は江戸時代から続く伝統産業であり、製炭者は職人です。
一連の製炭技術、やまづくり技術を習得するまで、修行期間は約3年から5年間ほど必要といわれています。
それでも、一人前とはいえません。「炭焼きは一生修行」といえるような、職人の世界です。
 
【資金の準備】
事業資金が必要です。資金計画をしっかりと立てておく必要があります。
・技術習得中から収入が得られるまでの生活資金
・独立する際には窯場を構築するための土地の確保
・原木の購入、機械の購入           など

 
 
 

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