紀州備長炭

紀州備長炭とは

紀州備長炭とはの画像

紀州備長炭は、ウバメガシを原料に作られる固くて良質な白炭(はくたん又はしろずみ)で、料理の加熱・焼き物には最適の材料です。

和歌山県は日本有数の白炭の生産量を誇っており、年間約1,200トンを生産しています。

紀州備長炭の品質の高さは、世界中で焼かれている木炭の中でも秀逸で、原料となるウバメガシの存在をはじめ、窯の構造・製炭方法も品質の高さに関係しています。

1974年(昭和49年)、紀州備長炭の製炭技術は、和歌山県の無形民俗文化財に指定されています。現在、1970年(昭和45年)に結成された「紀州備長炭技術保存会」によって保持されており、技術の継承にあたっています。

白炭と黒炭の違い

木炭には「白炭(はくたん、しろずみ)」と「黒炭(こくたん、くろずみ)」があります。その名のとおり、白炭は白く、黒炭は黒い色をしています。製炭工程の大筋は同じですが、最後の炭の消し方に大きな違いがあります。

黒炭の画像
黒炭

黒炭は、炭化が終わった時点で窯の口をすべて閉じ、空気を遮断して消火します。

窯が冷えたところで炭を取り出します。

表面は黒色で軟らかく、たたくと鈍い土器音がします。

着火温度が低いため火付きが良く、短時間に勢いよく高温で燃焼します。


 

白炭の画像
白炭

炭化の終わり頃に窯の口を開け、空気を送り込みます。

窯内の炭材や揮発成分に火がつき、窯内の温度は1000度を超え、炭素以外の不純物が焼き尽くされて炭化が進みます。この作業を「ねらし」といいます。炭化の終わり頃に窯の口を開け、空気を送り込みます。

頃合いを見てまだ熱い窯から炭を取り出し、「素灰(すばい・灰と砂を混ぜたもの)」をかぶせ、空気を遮断して消火します。この素灰が炭の表面について灰白色の炭となることから、「白炭」と呼ばれています。

白炭は、着火温度が高いため火付きは悪いですが、一度火がつくと安定した火力で長時間燃え続けます。

紀州備長炭の等級

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紀州備長炭の等級一覧
銘柄 樹種 太さ 長さ
馬目細丸 ウバメガシ 直径1.5から2センチメートル 20センチメートル以上
馬目小丸 ウバメガシ 直径2から3センチメートル 20センチメートル以上
馬目上小丸 ウバメガシ 直径3から4センチメートル 20センチメートル以上
馬目中丸 ウバメガシ 直径4から6センチメートル 20センチメートル以上
馬目半丸 ウバメガシ 直径3から6センチメートル、二つ割り 20センチメートル以上
馬目割 ウバメガシ 直径3から6センチメートル、割り物 20センチメートル以上
ウバメガシ、カシ 粉炭を除いたもの

製炭工程

1 木づくり

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曲がりくねったウバメガシにのこぎりや鉈(なた)などで切り目を入れ、木片で作った楔(くさび)を打ち込み、真っ直ぐにします。

2 窯詰め

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炭材を数本ずつ束ねて窯の中へ立てて入れます。この立て詰めが紀州備長炭の焼き方の特徴のひとつです。

3 口焚き

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窯口で雑木を燃やし、窯の中の原木を乾燥させます。原木に着火したかどうかを煙の臭いと色で判断するという、経験と勘が必要な作業です。

4 炭化

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窯の中の原木に着火したら窯口をふさぎ、原木を蒸し焼きにしていきます。煙の臭いと色で窯の中の状況を判断しながら、窯口に小さな穴を開けたり排煙口の大きさを調節したりして、炭化を常に最高の状態に保ちます。

5 精錬(ねらし)

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紀州備長炭をはじめとした白炭の最大の特徴はこの「ねらし」です。
窯の中で炭化された炭は、窯口を徐々に広げて空気を送り込まれると、真っ赤になって燃え始めます。これが「ねらし」です。この作業によってさらに炭化が進みます。この時、窯の中の温度は1000度を超えています。

6 窯出し・消火

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「ねらし」をかけた炭を徐々に窯口の外にかき出し、灰と土を混ぜた「素灰」をかけて消火します。炭は一度に出さず、「ねらし」を加えながら少しずつ作業を進めます。

7 選別・箱詰め

製炭工程7画像

素灰をかけて消火された紀州備長炭を灰の中から取り出し、一定の長さに断ち割り、炭の直径や形によって等級ごとに選別し箱詰めします。
紀州備長炭の選別は、明治時代の基準によって細かく等級分けされていて、現在もその名残があります。

炭焼きを学ぶ ( 心構えと十分な準備 )

山村での生活

製炭の仕事は山村です。山村では、地域の行事等に参加したりして共同作業を通じて地域に溶け込んでいくことが重要です。

製炭技術の習得

  • どの地域で製炭技術を習得(弟子入り)するか
    将来、どの地域で仕事を始めるか、窯場・原木等の確保、家族・子どものことなど十分に検討して地域を選定する必要があります。
  • 製炭技術習得期間
    原木の伐採(択伐(補足))から、木づくり(曲がった原木をまっすぐにする作業)、選別・箱詰めまでの一連の製炭技術を習得するには、約3から5年間程度の期間が必要といわれています。
    (補足)択伐とは、株立ちするウバメガシの幹を全て伐らずに、太い幹から選んで伐採し、細い幹は次に生長するまで残す方法。
    二百数十年も前から継承され、ウバメガシ林を絶やさずに循環利用してきた伝統的な伐採技術です。
  • 製炭技術研修
    良い炭を焼くには、経験に裏付けられた優れた製炭技術が必要です。研修内容は厳しいですが、強い意志と忍耐が必要です。
  • 資金の準備
    技術習得中から収入が得られるまでの生活資金や、独立する際には窯場を構築する土地の確保・原木の購入など事業資金が必要です。資金計画をしっかりと立てておく必要があります。

紀州備長炭「やまづくり塾」の開催

紀州備長炭山づくり塾写真

紀州備長炭の原木林を守り育て、循環利用を図る「択伐」技術を習得するのため、和歌山県木炭協同組合と県が共催して実施している研修会です。

平成21年度から継続して実施しており、製炭技術の向上と格付・選別方法等の研修も併せて行っています。新規参入された方々に是非、ご参加頂きたい研修会です。

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