長期総合計画 概要版
和歌山県長期総合計画 概要版
本県では、これまで2008(平成20)年に策定した長期総合計画に基づき、交通ネットワークの充実、戦略的な観光政策による観光客の増加、出産・子育て環境の充実、先進的な防災対策の推進、企業への充実した支援体制の整備など「将来を拓く礎」を築いてきました。
その計画の最終年度は2017(平成29)年度となっており、終了まであと1年を残していましたが、本県を取り巻く状況は、本格的な人口減少社会の到来や相次ぐ大規模自然災害の発生、経済・社会のグローバル化の進展、情報通信技術等の急速な進歩など大きく変動しています。
こうした時代の流れに取り残されることなく、状況の変化に適切かつ迅速に対応していくため、2017(平成29)年度から10年間の道しるべとなる新たな長期総合計画を策定しました。
県政を進める上での指針とすることはもちろんのこと、県民の皆様にも共鳴していただき、県民一人一人の主体的な活動の指針となることが重要であると考えています。
計画に掲げためざす将来像の実現に向け、共に歩んでまいりましょう。
本計画では、“神々の棲む国”といわれた熊野、高野山をはじめ、絶えず守り続けてきた自然や文化など、和歌山県がもつ優れた特色を積極的に生かして発展させていく姿を「世界とつながる 愛着ある元気な和歌山」県民みんなが楽しく暮らすためにと表現し、めざす将来像としています。
めざす将来像
世界とつながる愛着ある元気な和歌山
1.未来を拓くひとを育む和歌山
2.たくましい産業を創造する和歌山
3.安全・安心で尊い命を守る和歌山
4.暮らしやすさを高める和歌山
5.魅力ある地域を創造する和歌山
将来像に向けた取組(新たな施策体系)
1.ひとを育む
2.しごとを創る
3.いのちを守る
4.くらしやすさを高める
5.地域を創る
計画期間中に3万5千人の人口減少をくい止める
なにも対策を講じない場合の推計 85.9万人(2026年)
本計画の取組による効果を見込んだ推計 89.4万人(2026年)
将来像1 未来を拓くひとを育む和歌山
子育て施策をより一層充実することで、県民みんなが子どもを産み育てやすいと感じ、子どもたちが将来の夢や目標の実現に必要な資質・能力を身につけるとともに、県民みんながそれぞれのライフスタイルに応じて楽しく元気に活躍し、故郷への愛着と誇りをもち続けている和歌山をめざします。
ひとを育む
- 未来を拓く子どもを育てる環境づくり
・子どもを安心してもつことができるよう、子育て家庭への経済的支援を充実します。
・結婚から妊娠・出産、子育てまでの相談・支援体制を強化します。
・仕事と子育ての両立支援を強化し、待機児童を解消します。
・社会全体で子育てを支援する仕組みを強化します。
・確かな学力の向上や健やかな体の育成に取り組み、学力や体力の全国調査で上位をめざします。
・ふるさと教育や道徳教育を推進します。
・いじめや不登校について、学校・県・市町村・関係機関が地域と協力し、根絶・解消に取り組みます。
・県内進学の選択肢を広げるため、新たな高等教育機関の設置・誘致を行います。
<主な目標>
合計特殊出生率 2.00(2015年:1.54)
全国学力・学習状況調査 全ての教科で10位以内
いじめ解消率 100%
- みんなが活躍できる社会づくり
・それぞれの希望に応じて社会参加ができる80歳現役社会を実現します。
・若者・高齢者・女性・障害のある人がそれぞれのライフスタイルに応じた働き方ができる就職支援に関する仕組みを構築します。
・健康づくりを推進するとともに、スポーツ・生涯学習・文化芸術を振興します。
・すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現をめざします。
<主な目標>
就業意思のある高齢者(65~79歳)の有業率 100%
就業意思のある女性(15~64歳)の有業率 100%
成人の週1回のスポーツ実施率 70%(2011年度 46%)
将来像2 たくましい産業を創造する和歌山
多様でバランスのとれた産業構造を築き上げ、外的経済ショックにもしなやかに適応できる力を備え、各産業が積極的に海外へ進出するとともに、生産性・収益性を高めることで雇用を生みだし、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む新たな人の流れを創りだす和歌山をめざします。
しごとを創る
- 時代を先導するしなやかな産業構造の実現
・全産業で革新的技術の導入や他分野との融合等を進め、国際競争力を強化するとともに、産業構造の多様化と雇用の場の拡大を図ります。
- 県内企業の成長力強化
・新たな感性・アイデア等による技術開発やサービスの高付加価値化を図ります。
・県産品のブランド力の強化や、海外市場等への進出を支援します。
・創業・第二創業を促進するとともに、地域特性を活かした企業誘致を推進します。
・高校生や大学生等の県内就職を促進するとともに、働く意欲のある人が能力を発揮できるよう、企業の働き方改革や再就職を促進します。
<主な目標>
製造品出荷額等 3兆8500億円
企業立地件数 200件(計画期間内の累計)
大学生等のUターン就職者数 年間3000人
- 農林水産業の振興
・海外等への販路開拓を進めるとともに、安全・安心で機能性を備えた農畜産物の安定供給を図ります。
・ICTやロボットなどによる労働の省力化、農地の集積・集約化などを図るとともに、農家の法人化、企業参入を推進し、収益性の高い農業を実現します。
・林業に適した場所と森林保全を行う場所を明確に区分する森林ゾーニングにより、施策の選択と集中を強化します。
・漁業者・漁協の経営構造改革や、経営の多角化を図り、収益性の高い水産業を実現します。
<主な目標>
県産果実・果実加工品の輸出額 70億円
林業の年間素材生産量 300千立法メートル
漁業の複合経営グループ数 20グループ
- 観光の振興
・観光客が好みに応じた感動や楽しみ、癒しを感じることができる多彩な魅力に出合える観光地づくりを推進します。
・ターゲットに応じた多様な観光プランを提供します。
・多言語案内表示の充実や円滑な交通アクセスの構築など、快適な観光空間を創造します。
<主な目標>
日帰り観光客 年間3300万人
宿泊観光客 年間770万人
外国人宿泊客 年間170万人
- 時代の潮流を踏まえた産業の新しい発展
・データ・ICT等の利活用を促進し、産業の発展を図ります。
・世界に広がる新しい市場に挑戦できる環境の整備や、グローバルに活躍する企業・人材の誘致などにより、県内産業の発展を図ります。
将来像3 安全・安心で、尊い命を守る和歌山
地震・津波・風水害などの災害による「犠牲者ゼロ」をめざした防災対策を一層充実するとともに、住み慣れた地域で質の高い医療サービスが受けられ、犯罪や交通事故の少ない環境を整備することで、安心して暮らせる和歌山をめざします。
いのちを守る
- 自然災害への備え
・住宅や大規模建築物、公共施設などの耐震化をより一層進めます。
・津波避難困難地域の解消のためのソフト対策やハード整備を優先的・緊急的に実施します。
・風水害・土砂災害対策のためのソフト対策やハード整備を計画的に実施します。
・救助・救援体制や医療機関等の災害対応体制をより一層強化します。
・ライフライン機能を確保するとともに、地域防災力の強化や避難所運営の質の向上を図ります。
・県民生活の早期再建と地域のよりよい復興のため、それぞれの地域があらかじめよく議論し、復旧・復興計画を事前に策定しておく取組を進めます。
<主な目標>
津波避難困難地域 解消
耐震性を有する住宅の割合 100%
復旧・復興計画の事前策定市町村数 全市町村
- 医療の充実と健康の維持
・救急医療体制やへき地の医療体制を堅持します。
・がんによる死亡者を減らすとともに、患者ニーズの多様化に対応する先進的な医療を促進します。
・地域医療構想に基づき、医療機関の機能分化と連携、病床機能の再編を図ります。
・在宅医療の全県的なネットワークを構築します。
・医師の地域偏在や特定診療科における医師不足を解消します。
・地域住民相互のつながりを深め、心身の健康づくりに関する県民運動を全県的に展開します。
<主な目標>
地域医療構想に基づく病床機能の再編 2025年度に9,506床(2014年度:12,540床)
わかやま在宅医療推進安心ネットワーク 全保健医療圏で構築
健康寿命 男性75歳 女性78歳(2013年度から3.5歳程度上昇)
- 安全な社会の実現
・街頭防犯カメラ設置などの犯罪抑止対策や、徹底検挙に向けた捜査力・機動力の強化を進めます。
・歩道整備や見やすくわかりやすい道路標識の設置、啓発活動などにより、安全で快適な交通環境を実現します。
<主な目標>
刑法犯の年間認知件数 連続減少を更新(2016年6,360件)
交通事故の年間発生件数 連続減少を更新(2016年2,914件)
将来像4 暮らしやすさを高める和歌山
良好な生活環境を保ち、3R(リデュース・リユース・リサイクル)や省エネルギー、再生可能エネルギー利用を進めるとともに、福祉サービスを充実し、高齢者や障害のある人が自分らしく暮らし、子どもたちが育った環境に左右されることなく成長できる環境を整備することで、快適で楽しく暮らせる和歌山をめざします。
くらしやすさを高める
- 快適な生活環境の実現
・大気・水・土壌環境等を保全し、健康被害ゼロを継続します。
・下水道、合併処理浄化槽、集落排水施設の整備を進め、生活排水処理の向上に取り組みます。
・動物の愛護や適正な管理を進め、犬猫の殺処分ゼロに向けた取組を強化します。
・ごみの発生をできる限り抑え、排出されたごみを可能な限り資源として再生利用する仕組みを強化します。
・消費者被害を防止するため、消費者教育や相談体制を強化します。
・温室効果ガスの排出を削減するため、省エネルギーの取組や、再生可能エネルギーの利用を進めます。
<主な目標>
汚水処理人口普及率 80%(2015年度:61%)
温室効果ガス年間排出量 2030年度に16330千トン(2013年度:20,410千トン)
県内消費電力の占める再生可能エネルギー構成比率 25%(2015年度:18%)
- 支え合う福祉の充実
・高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を進めます。
・施設等への入所を望む高齢者に対応するための施設整備を進めます。
・自宅での生活を望む高齢者に必要な在宅サービスを充実します。
・障害のある人が社会を構成する一員として自ら社会活動に参加し、自分らしく生きることができる環境づくりを進めます。
・経済的困窮状態にある家庭の就業、子育て、生活を社会全体で支援し、貧困の世代間連鎖を断ち切る取組を進めます。
・児童虐待やDV、性暴力の根絶に取り組みます。
・保育・介護人材の育成・確保に取り組みます。
<主な目標>
地域包括ケアシステム構築市町村数 全市町村
特別養護老人ホーム整備数 2030年度に8,100床(2015年度:5,919床)
障害者法定雇用率達成企業の割合 100%
将来像5 魅力のある地域を創造する和歌山
人口減少等が進む中、住民自らが主体的に考え、行政と一体となった地域づくりを推進します。また、コンパクトな都市や暮らしやすい中山間地づくり、交通ネットワークのさらなる充実を進めるとともに、各地域の自然・歴史・文化を固有の魅力として磨き上げるなど、魅力的な地域を創造する和歌山をめざします。
地域を創る
- 活力と魅力のあるまちづくり
・美しい自然環境と多様な生態系を保全するとともに、人と自然のつながりを後世に受け継ぐための教育・啓発を行い、自然資源の循環を守り続けます。
・文化遺産・景観を守り、引き継いでいくために、観光との融合に取り組み、地域の活性化につなげることで保存・保全と活用との好循環を実現します。
・都市機能の拠点エリアへの集約や、まちなか居住の誘導など空間の密度を高め、コンパクトな都市に戻しつつ、再開発などで中心部の新陳代謝を盛んにします。
・地域での生活を維持していくため、存続が見込めない集落にあっては、住民の意思を尊重しつつ最寄りの生活拠点や周辺集落への移転を促すとともに、効果的・効率的な地域公共交通ネットワークを構築します。
・地域や市町村が主体となった活力ある地域づくりを推進するとともに、移住・定住や二地域居住により人の流れを創出します。
<主な目標>
郊外の開発抑制に向けた都市計画の策定着手市町数 23市町(2015年度:9市町)
集落の活性化に取り組む「ふるさと生活圏」数 85か所(2015年度:31か所)
年間移住世帯数 1,000世帯(2015年度:113世帯)
- 地域をつなぐネットワーク
・高速道路や県内の幹線道路を早期に整備し、県内主要都市間の2時間移動や、県内3時間移動を実現します。
・関西国際空港の利用促進、南紀白浜空港や各港湾の機能強化を図り、多くの交流人口や活発な物流を創り出し、世界と直接つながる和歌山を実現します。
・紀淡海峡ルートの早期実現や紀勢本線へのフリーゲージトレインの導入に向けた取組を推進します。
<主な目標>
高速道路の予定延長に対する供用率 100%
南紀白浜空港の年間利用者数 15万人(2015年度:12万7千人)
クルーズ客船の年間寄港数 30隻(2015年度11隻)
計画の推進
毎年度、本計画に掲げた目標の進捗状況を確認し、必要に応じ事業の見直しを行うとともに、新たな施策を展開します。
市町村や関西広域連合、さらに企業・大学・関係団体・NPO等の多様な主体とも連携・協力します。
国に対して、権限の委譲、制度の創設・改正、相応の財源措置等を求めていきます。