長期総合計画 第2章 第4節 くらしやすさを高める

第4節 くらしやすさを高める

「くらし」とは、日常生活そのものであり、くらしやすさを高める取組は、本計画の第2章に掲げる「将来像に向けた取組」全般にわたるため、県民の視点に立って、本計画に掲げる取組を総合的に推進します。
また、各地域のくらしの特性を明確にし、その魅力をアピールすることで、移住・定住や二地域居住の推進につなげます。


第1項 快適な生活環境の実現

1.良好な生活空間づくり

<現状・課題>

・県内の大気・水・土壌環境等は一部の物質・地点を除き、概ね良好な状態に保たれています。
・水道の普及率が97%(2015(平成27)年度)と進む一方で、水道の老朽化施設の更新と耐震化は進んでいない状況にあります。
・汚水処理施設による生活排水対策は、汚水処理人口普及率が全国ワースト2位の61%(2015(平成27)年度)と著しく遅れています。
・ライフスタイルの変化とともに、多くの動物が家族同様にかけがえのない存在とし飼育される一方、不適正な飼育や遺棄された動物が地域の生活環境を悪化させる問題が生じています。


<めざす方向>

県民、行政、事業者が、それぞれの役割を十分に理解し、大気・水・土壌環境等の保全に向けた取組を実践することで、県民の「健康被害ゼロ」を継続します。
また、将来にわたる水道の安定的な供給体制の構築や、下水道、合併処理浄化槽等のそれぞれの特徴を生かした効率的・効果的な汚水処理施設の整備を推進することにより、快適で衛生的な生活環境を創造します。
さらに、暮らしに癒しや安らぎをもたらす動物の愛護と適正な管理、「殺処分ゼロ」に向けた取組を強化することで、生活環境との調和を保ち、「人と動物が共生する潤いのある社会」を実現します。


<実施する主な施策>
1 「健康被害ゼロ」に向けた取組の推進

ア 大気・水・土壌環境等の監視機能を充実させるとともに、測定データや注意情報を迅速・的確に県民へ伝達します。
イ 人の健康や生活環境に有害な影響を及ぼすおそれのある化学物質を使用・排出する工場や事業場への監視・指導を徹底します。
ウ 禁煙を推進するとともに、公共施設や職場における受動喫煙防止を進めることで、たばこによる健康被害を防ぎます。【再掲】

2 安心で良質な水の安定的供給

ア 人口減少に伴う水道料金の負担増加や、施設更新に係る運営コストの増加に対応するため、市町村域を超えた広域的な水道施設の共同利用や水道事業の統合を促進します。
イ 特に人口減少が著しい中山間地域においては、簡易水道に代わる供給体制の構築を促進します。

3 生活排水処理の向上

ア 公共用水域の水質保全と生活環境の改善を図るため、下水道、合併処理浄化槽、集落排水施設の整備を市町村に強く働きかけるとともに、支援を実施します。
イ 関係市町と連携を図り、下水道整備区域内の接続促進と流入汚水量に応じた施設整備を計画的に進めることで、流域下水道による排水処理を推進します。

4 人と動物が共生する潤いのある社会の実現

ア 地域住民が、飼い猫以外の猫に対する餌やりやトイレの設置、排せつ物の処理などのルールを定め活動する地域猫対策を支援します。
イ 終生飼養や不妊去勢等の啓発を充実するとともに、県動物愛護センターで収容した犬・猫の返還や譲渡を推進するなど、「殺処分ゼロ」に向けた取組を強化します。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

水質の環境基準達成率

河川 80%

海域 95%

河川 100%

海域 100%

ダイオキシン類の大気・水質・土壌の環境基準達成率

100%

100%

汚水処理人口普及率

61%

80%

犬・猫の殺処分数(年間)

2,750頭

0頭

※治癒の見込みがない場合の

安楽死処置と自然死を除く。


2.循環型社会の構築

<現状・課題>

・本県における1人1日当たりのごみの排出量は、全国平均を上回っており、また、ごみの再生利用率は全国平均を大きく下回っています。
・資源の循環的利用を推進するため、人口減少社会に対応した複数の市町村による効率的な廃棄物処理システムを構築する必要があります。
・廃棄物の不法投棄件数は2008(平成20)年度以降減少していますが、近年は横ばい傾向にあり、根絶には至っていません。


<めざす方向>

社会システムやライフスタイルを見直し、ごみの発生をできる限り抑え、排出されたごみを可能な限り資源として再生利用することで、「ごみゼロ社会」を実現します。
また、地域内で処理できるものは地域内で、それが困難なものはより広域で処理するなど、資源の特性に応じた循環ネットワークを形成します。
さらに、地域の美観を損ねるだけでなく、重大な環境汚染を引き起こす廃棄物の不適正処理や不法投棄を撲滅します。


<実施する主な施策>
1 ごみゼロ社会に向けた取組の推進

ア ごみを資源として捉える意識を醸成するための普及啓発活動を展開するとともに、市町村や地域団体、事業者の3R(リデュース、リユース、リサイクル)活動を支援します。
イ 廃棄物の適正処理や資源リサイクルの効率化を図るため、市町村をまたがる広域的なごみ回収・処分体制の構築を促進します。

2 資源循環ネットワークの形成

ア 環境に配慮したリサイクル製品の認定や利用拡大を推進するとともに、処理技術の向上を支援することで、リサイクルの担い手である環境ビジネスの育成を図ります。
イ 食品残さを飼料として利用するなど、バイオマス資源を循環させるための取組を推進します。
ウ 有用な金属などの再資源化を促進するため、使用済小型家電等の収集やリサイクル体制の構築を支援します。

3 不適正処理・不法投棄対策の推進

ア 処理業者や運搬事業者に対する指導・監督や行政処分を徹底するとともに、優良な事業者を登録する制度を充実することで、廃棄物の適正処理を推進します。
イ 不法投棄の監視・通報体制を強化することで、不法投棄行為者への指導や処分を徹底します。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

1人1日当たりのごみの排出量

992g

(2014年度)

914g

一般廃棄物再生利用率

14%

(2014年度)

22%


3.消費者の安全確保

<現状・課題>

・県消費生活センターに寄せられる消費生活相談件数は増加傾向にあり、60歳以上の相談件数が約4割を占め、なかでも訪問販売や電話勧誘販売でのトラブルが多くなっています。
・食品の偽装表示や異物混入、大規模な食中毒の発生など、食の安全や安心を揺るがすような事件が後を絶たないことから、食に対する不安や不信が高まっています。


<めざす方向>

消費者自身が、消費生活に関する情報を収集し、理解することに努めるとともに、商品・サービスに関する情報が適正に提供される環境を実現します。
また、食品の安全性を確保するとともに、全ての県民が食品安全についての理解を深めることで、「食の安全・安心わかやま」を実現します。


<実施する主な施策>
1 消費者被害の防止

ア 県民一人一人が消費生活に関する正確な知識や的確な判断力を身に付けるため、子どもから高齢者まで、それぞれの年代に応じた体系的な消費者教育を推進します。
イ 消費生活相談員の育成や県消費生活センター・市町村における相談体制の充実を図るとともに、消費者被害情報の収集・分析や被害防止のための効果的な広報・啓発に取り組みます。
ウ 高齢者の消費者被害を防止するため、見守り活動に併せた啓発を実施するなど、地域社会全体で見守り、支援する体制を構築します。
エ 商品・サービスの適正な表示や安全性の確保、悪質な商取引の防止のため、市町村や警察、関係機関と連携して、事業者への啓発・指導・取締りを強化します。

2 食の安全・安心確保

ア 国際的に通用するGAP(農業生産工程管理)やHACCP(食品衛生管理基準)の認証取得により、食品の適正な生産・製造工程管理を推進します。【再掲】
イ 食品による健康被害を未然に防止するため、飲食店や食品を製造・販売する工場・店舗に対する衛生管理指導や、流通食品の検査を徹底します。
ウ 消費者と食品関連事業者、生産者の相互理解を深めるため、消費者懇談会などのリスクコミュニケーションの機会を充実します。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

HACCP導入事業者の割合

11%

100%


4.地球温暖化対策の推進

<現状・課題>

・地球温暖化の進行を抑制するためには、温暖化の要因である温室効果ガスを削減する必要がありますが、本県の温室効果ガス排出量は2009(平成21)年度以降、増加傾向にあります。
・県土の約77%を占める森林は、二酸化炭素の吸収に貢献していますが、整備されずに放置されている山々も多く存在しています。
・温室効果ガス削減の取組を進めたとしても、この先の地球温暖化は避けることはできない可能性が指摘されています。


<めざす方向>

県民誰もが、それぞれの立場で責任をもって省エネルギーの取組を推進するとともに、本県の特性を生かした太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる電力需給割合を高め、また、森林の二酸化炭素吸収源としての機能を将来にわたって維持することで、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を大幅に削減した「低炭素社会」を実現します。
さらに、温室効果ガス削減の取組を進めたとしても避けられない気候変動による影響に備えた取組を推進します。


<実施する主な施策>
1 省エネルギーに向けた取組の推進

ア 環境に優しいライフスタイルを発信するとともに、県民や事業者、地域団体のエコ活動を支援することにより省エネルギーを推進します。

2 再生可能エネルギーの導入促進

ア 事業者等における太陽光発電、風力発電、小水力発電等の導入を促進するとともに、林地残材などを活用した木質バイオマス発電施設の導入を支援します。

3 森林吸収源対策の推進

ア 間伐をはじめとする適切な森林整備や、住宅や公共建築物等への木材利用、植林による森林の再生を促進することで、樹木の炭素貯蔵効果を最大限に発揮させて、環境負荷を低減します。
イ 「企業の森」などの森林保全活動や県民参加の森林づくりを推進します。【再掲】

4 気候変動対策の推進

ア 増加が予想される熱中症や感染症等の健康被害対策、農作物の生育状況の変化に対応した品種改良、勢いを増す集中豪雨や台風、高潮等の自然災害への対策などに取り組みます。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

温室効果ガス排出量(年間)

20,410千t

(2013年度)

16,330千t

(2030年度)

県内消費電力に占める再生可能エネルギー構成比率【再掲】

18%

25%


第2項 支え合う福祉の充実

1.高齢者福祉の推進

<現状・課題>

・本県における要介護認定者は、現在の6.7万人から、75歳以上の高齢者数がピークを迎える2030(平成42)年に8.1万人まで増えることが見込まれています。
・県民の意識調査によると、要介護認定者の施設への入所希望は26%、在宅希望者は74%となっています。
・今後の要介護認定者の増加や県民の希望を踏まえつつ、必要な施設整備や、在宅サービスの充実等を図っていくことが必要です。


<めざす方向>

高齢者が安心して暮らせるよう、施設等への入所を望む高齢者に対応するための十分な施設整備を進めるとともに、自宅での生活を望む高齢者に必要な在宅サービスを整備します。
また、医療と介護の連携強化により、地域包括ケアシステムの構築を進めます。
さらに、地域で高齢者を見守り支える体制を充実するとともに、高齢者が健康で自立した生活を送れるよう健康づくりを推進し、知識や経験を生かし生きがいをもって活躍できる環境を実現します。


<実施する主な施策>
1 介護サービスの充実

ア 施設等への入所を望む高齢者のために、2015(平成27)年度末の1万9千床(うち特別養護老人ホーム5,900床)から、2030(平成42)年には要介護認定者数の26%に相当する2万1千床(うち特別養護老人ホーム8,100床)まで整備を進めます。
イ 自宅での生活を望む高齢者のために、訪問介護など、必要な在宅サービスを整備します。
ウ 運動機能が低下し支援が必要となった高齢者が、再び自立した生活に戻れるよう自立支援型ケアマネジメントを推進します。
エ 高齢者ができる限り住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」を市町村や関係機関と連携して進めます。
オ 介護・福祉サービスが適正に提供されるよう、事業者に対する指導監査を行うとともに、事業者への研修や相談窓口の充実を図ります。

2 高齢者の安心確保

ア 地域で認知症の人とその家族を支え見守る体制づくりを進めるとともに、認知症を早期に発見し、診断・治療につなげる医療支援体制の充実や認知症の人の容態に応じた適切な介護サービスが提供できるケア体制の構築を進めます。
イ 高齢者に配慮した生活環境を整備するため、住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化を推進します。

3 高齢者の暮らしを見守る体制の充実

ア 地域での見守り活動を県内全域に普及させるため、民生委員・児童委員や地域見守り協力員、一般家庭に出入りする機会のある民間事業者が連携・協力する地域見守りネットワークの輪を広げます。【再掲】
イ 買い物など生活上のちょっとした困りごとを地域でお互いに助け合う支え合い活動を広げます。

4 健康づくり・生きがいづくり

ア 生涯にわたり健康を維持するため、全県的に楽しく健康増進を図る仕組みを構築し、地域コミュニティに密着した健康づくりを推進します。【再掲】
イ ラジオ体操など手軽にできる運動を奨励し、県民一人一人の運動習慣の定着を図るとともに、年代に応じた食習慣の改善を推進します。【再掲】
ウ 市町村と連携し、住民が主体となって運営する多様な介護予防の通いの場を充実します。【再掲】
エ 2019(平成31)年に全国健康福祉祭(ねんりんピック)を開催し、県民の健康の維持・増進、生きがいの高揚を図り、世代や地域を超えた交流の輪を広げます。【再掲】
オ 知識や経験、技術を有する高齢者と地域団体・学校とのマッチングを行うことにより、ソーシャルビジネス(地域や社会の課題解決に向けてビジネスの手法を用いて取り組む事業)や地域貢献活動を支援します。【再掲】
カ 市町村、大学、生涯学習関連団体と連携し、体系化した学習情報の提供と学習活動の奨励を行う「きのくに県民カレッジ」を充実するなど、学びたい人がいつでも学べる機会を提供します。【再掲】
キ 誰もが気軽に運動・スポーツに親しむことができる場として、地域において住民主導で活動する「総合型地域スポーツクラブ」の活動を支援します。【再掲】
ク 県民一人一人の文化芸術活動への参加を促進するとともに、優れた文化芸術に直接触れ合う機会を充実します。【再掲】


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

要支援・要介護者数

65,668人

(2014年度)

72,217人

※施策実施前の推計値(80,032人)の約1割減

特別養護老人ホーム整備数

5,919床

8,100床

(2030年度)

地域包括ケアシステム構築市町村数

全市町村

地域見守り協力員制度実施市町村数

20市町

全市町村


2.障害者福祉の推進

<現状・課題>

・障害者手帳所持者は約73,600人(2016(平成28)年3月末現在)となっており、年々増加しています。
・福祉施設における平均工賃月額は全国平均を上回っていますが、障害のある人が地域で自立して生活していくために、一般就労における職場環境の整備や、福祉的就労におけるさらなる工賃水準の向上が必要です。
・障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が制定され、2016(平成28)年4月から施行されています。


<めざす方向>

障害のある人が社会を構成する一員として自己決定と自己選択の下に社会活動に参加し、自分らしく生きることができる環境づくりを進めるとともに、本人の適性と能力に応じて働くことができ、将来にわたって自立して生活を行うことができるよう支援することで、「障害のある人とその家族が安心して暮らせる社会」を実現します。
また、全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現します。


<実施する主な施策>
1 社会参加の促進

ア 障害のある人と地域住民が交流する場を創出し、障害への正しい理解を促進するとともに、障害に応じた教育環境や相談体制を充実します。
イ 障害のある人が利用しやすいスポーツ施設の整備や障害者スポーツの指導者・支援者の育成を促進することにより、障害者スポーツ活動の機会を充実します。
ウ 2021(平成33)年度に第21回全国障害者芸術・文化祭を開催し、これを契機として障害のある人が文化活動を発表する機会や芸術文化を鑑賞する機会をさらに充実します。
エ 障害のある人に配慮した生活環境を整備するため、住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化を推進します。
オ 障害のある人にとって分かりやすく、簡単に情報を入手できる「情報アクセシビリティ」が確立された社会づくりを進めます。
カ 障害のある人が自然の中で農作業を行うことによって身体の健康増進や社会参加を図る農福連携を推進します。

2 就労・雇用の促進

ア 福祉的支援を受けながら働く障害のある人が、自らの収入と障害年金等で自立した生活ができることをめざし、障害のある人が働く事業所が、販路を拡大し安定した受注を確保できるよう支援することにより、工賃水準の向上を図ります。
イ 事業主への理解促進による障害者雇用の場の拡大や、障害のある人の適性に応じた職業訓練を実施します。【再掲】

3 生活支援体制の充実

ア 障害のある人が身近な地域で必要なサービスを受けられるよう、障害福祉サービスの提供体制を充実するとともに、グループホーム等地域生活における住まいの場を確保します。
イ 精神科病院に入院している障害のある人が地域生活に移行できるよう、住まいの確保や外出の同行などの支援を充実します。
ウ 発達障害のある人や高次脳機能障害のある人が地域で専門的な支援を受けられる関係機関のネットワークを構築します。
エ 介護・福祉サービスが適正に提供されるよう、事業者に対する実地指導を行うとともに、事業者への研修や相談窓口の充実を図ります。

4 相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現

ア 障害のある人への虐待の早期発見・早期対応や、就労支援、障害福祉サービスなどの充実を図り、障害のある人が地域で自立した生活を送ることができる環境づくりに取り組みます。【再掲】


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

障害者スポーツ参加者数(年間)

2,255人

4,000人

福祉施設における平均工賃月額

16,198円

22,000円

障害者法定雇用率達成企業の割合【再掲】

62%

100%

就労系障害福祉サービスから移行して一般就労する人数(年間)

72人

160人

グループホームの定員数

1,092人

1,600人


3.困難を抱える家庭等へのきめ細やかな対応と自立支援

<現状・課題>

・子育てと生計の維持を一人で担っているひとり親家庭の親は、生活面や経済面でさまざまな困難を抱えています。
・ひとり親家庭だけではなく、生活に困窮している家庭の子どもは、経済的理由により進学をあきらめるなど、希望する学習機会を得られない場合もあります。
・生活保護世帯数は、1997(平成9)年度以降増加し続けており、生活に困っている人を支えるとともに、自立を支援することが必要です。
・児童虐待相談件数は、2008(平成20)年度と比較して約2倍に増加しており、発生の未然防止から子どもの保護・自立に至るまで、総合的な対策が必要です。
・配偶者等からのDV(ドメスティック・バイオレンス)は、潜在化しやすく、被害が深刻化する特性を有しており、社会全体でその根絶に取り組むことが必要です。
・性暴力被害は、被害の防止のみならず、被害者が相談しやすく潜在化しない環境づくりが必要です。


<めざす方向>

子どもの将来が生まれ育った環境で左右されることがないよう、経済的困窮状態にある家庭の就業、子育て、生活を社会全体で支援することで、「貧困の世代間連鎖を断ち切る」取組を進めます。
また、深刻な権利侵害である児童虐待やDV、重大な犯罪である性暴力については、関係機関が総力を挙げて、その根絶に取り組みます。
こうした取組を実施することにより、さまざまな困難を抱える県民が安心して暮らせるセーフティネットを充実します。


<実施する主な施策>
1 子どもの貧困対策の推進

ア 子どもへの教育・生活支援を行うとともに、親に対する就労支援や経済的支援を行うなど総合的な子どもの貧困対策を推進します。
イ 子どもを安心してもつことができるよう、多子世帯の保育料の無料化や乳幼児等医療費の負担軽減など、子育てへの経済的支援を充実します。【再掲】
ウ 進学意欲と学力が高いにもかかわらず、経済的理由により大学等への進学が困難な子どもを支援する給付型奨学金制度を充実することで、将来の地域を担う子どもの学びと成長を支えます。【再掲】
エ 帰宅しても一人で過ごさざるを得ないなど、さまざまな事情で寂しさを抱える子どもたちが安心して集える居場所づくりや大人数で食卓を囲み温かい食事の提供を行う団体の取組を支援します。【再掲】

2 困難を抱えるひとり親家庭の自立支援

ア ひとり親家庭が働きながら子どもを安心して育てられるよう、保育所等の優先利用などにより養育環境を充実します。
イ 延長保育や休日保育、病児保育、ファミリー・サポート・センター事業の充実など、働きながら子どもを育てる家庭のニーズに対応したサービスを県内全域で提供します。【再掲】
ウ 就学前の子どもへの教育・保育の提供や地域における子育て支援を行う認定こども園の整備を進めるとともに、低年齢児の保育体制の整備や事業所内保育所の設置を支援します。【再掲】
エ 放課後児童クラブの受入児童数の拡大や開所時間の拡充に取り組みます。【再掲】
オ 母子家庭等就業自立支援センターやハローワークと連携し、就業や資格取得を支援します。

3 生活保護世帯等の自立支援

ア 生活困窮者が困窮状態から早期に脱却できるよう、一人一人の状況に応じた相談や自立・就労支援を充実します。
イ 社会福祉法人と連携して社会貢献活動の場を提供するなど、生活保護受給者が自らの能力を生かして就労する経済的自立を支援します。

4 児童虐待への対応強化と要保護児童への支援

ア 児童相談所、市町村、医療機関、学校、警察、保育所・幼稚園・認定こども園など関係機関が連携し、子どもへの虐待の兆候を見逃すことなく未然に防止するとともに、地域が協力して子どもと家庭を見守り支える体制を構築します。【再掲】
イ 里親制度を推進するとともに、児童養護施設における小規模グループケアの充実を図り、子どもが家庭的環境で健やかに養育されるよう取り組みます。
ウ 児童養護施設を退所した子どもの社会的自立に向けた支援を強化します。

5 DV被害対策の充実

ア 県、市町村、警察等関係機関が連携し、配偶者等からの暴力をなくすための指導、啓発を充実します。
イ 被害者が安心して相談できる体制を充実するとともに、被害者の保護や自立を支援します。

6 性暴力被害対策の充実

ア 警察等と連携を強化し、性犯罪を許さないという気運を醸成するとともに、企業と連携した働く女性へのきめ細かな啓発を充実することで、被害の発生防止を図ります。
イ 被害者が安心して相談できるよう、性暴力救援センターわかやまmine(マイン)を中心とした支援体制を充実するとともに、緊急医療や事後の心のケアを行う者への研修を実施します。


4.福祉人材の育成・確保

<現状・課題>

・産休明けや育休明けの早い時期から保育所の利用を希望する家庭が増えており、保育ニーズの増加に対応する人材確保が求められています。
・75歳以上の高齢者数は、今後増え続け2030(平成42)年にピークを迎えると見込まれており、介護ニーズの増加に対応する人材確保が求められています。
・保育士や介護職員の収入は、全職種を平均した収入に比べて低く、また、勤続年数も短い状況であり、少子高齢社会を支える職業として適切な処遇改善が必要です。


<めざす方向>

女性の社会進出や核家族化の進行による保育ニーズの高まりに対応するため、保育士の資格取得や再就職を支援することにより、保育人材の育成・確保に取り組み、質の高い保育環境を充実します。
また、今後増加が予測される要介護者の安心を支えるため、介護人材の新規就職や再就職を支援することにより、介護人材の育成・確保に取り組み、質の高い介護環境を充実します。
これらの取組により、保育・介護職を、「少子高齢社会において重要な役割を果たす社会的意義と魅力のある職業」へとさらに高めていきます。


<実施する主な施策>
1 保育人材の育成・確保

ア 保育士をめざす学生への返還免除付き修学資金や、保育士資格取得をめざす保育補助者を雇用する事業者への雇上費用貸付制度を充実することにより、低年齢児保育のニーズ増加に対応する保育人材を育成・確保します。
イ 保育に従事していない有資格者に対して、事業者とのマッチングを行うとともに、未就学児をもつ保育士への返還免除付き保育料の一部貸付や再就職準備金を充実し、潜在保育士の現場復帰を後押しします。
ウ 保育日誌等書類作成業務へのICTの活用や、保育補助業務へのベテランシニア人材の活用により、保育士の労働負担の軽減に取り組みます。
エ 関係団体と連携し、保育士の処遇改善について国や事業者に働きかけます。

2 介護人材の育成・確保

ア 介護職員への新規就職や、離職した介護職員の再就職を促進するため、介護福祉士をめざす学生への返還免除付き修学資金や、離職した介護職員の再就職準備金貸付制度を実施するとともに、介護事業所内保育所の整備などにより、地域包括ケアシステム構築の実現を支える介護人材を育成・確保します。
イ 高等学校と事業所が連携して介護知識や技術を習得する機会を提供し、地域の介護現場で活躍できる人材を育成します。
ウ 介護ロボットやICTの活用により、介護職員の労働負担軽減に取り組みます。
エ 関係団体と連携し、介護職員の処遇改善について国や事業者に働きかけます。

3 多様な福祉人材の確保

ア 障害者福祉施設等、福祉関係の多様な職場で働く人材を確保するため、福祉人材センターにおける就職相談や職業紹介の機能を充実し、就職希望者と企業のマッチングによる福祉人材の確保と定着を支援します。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

年度途中における保育所の待機児童数【再掲】

286人

(2016年10月1日現在)

解消

介護職員数

19,552人

(2013年度)

25,200人

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