長期総合計画 第2章 第2節 しごとを創る
第2節 しごとを創る
第1項 時代を先導するしなやかな産業構造の実現
<現状・課題>
・本県の産業構造は産出額でみると、製造業の構成比が最も高く、なかでも鉄鋼、石油、化学の3分野で約7割を占めています。また、全産業における農林水産業、建設業の比率が全国より高くなっています。
・本県は、中小企業の比率が非常に高く、繊維やパイル織物、日用家庭用品などの伝統的な地場産業も盛んです。
・近年の日本の経済成長は、自動車産業や情報通信、電子・電気機械などのハイテク産業により牽引されてきましたが、本県においては、そうした産業の集積が進まず、産業構造も従来からほとんど変化していません。
・一方、現在の産業を取り巻く状況は、市場のグローバル化や、IoT・AI・ロボットなどの革新的技術の進展、消費者の感性に訴えるサービスやコンテンツを提供する感性産業の拡大、外国人観光客の急増など、これまでにないスピードで目まぐるしく変化しています。
・県内産業の発展のためには、こうした変化をチャンスと捉え、時代の一歩先を見据えて絶えず変革し続けることが必要です。
<めざす方向>
国内人口の減少による内需の縮小局面において、県内産業が持続的に成長していくためには、全ての産業が世界に市場を求めていくとともに、常に新しい技術やアイデアを取り入れながら、時代の潮流に応じた成長分野で発展していくことが重要です。特に、技術革新の中核を担い産業活動全体で需要が拡大する「情報サービス分野」や、顧客データ等の活用により個々のニーズへの対応で成長が期待できる「顧客対応型製造分野」など、将来にわたって事業拡大が期待される領域での発展が必要です。
そのため、革新的技術の導入やデータ利活用の促進、デザイン力や感性への訴求力の向上、業種・企業の壁を越えた他分野との融合を進めることで、高い付加価値の創出と生産性の向上を図り、国際競争力を強化します。
また、成長分野における創業や国内外からの企業誘致を強力に推し進め、産業構造の多様化と雇用の場の拡大を図ります。
さらに、産業を取り巻く環境の変化に柔軟に適応できる人材を育成・確保するため、産業界と大学等の教育機関や産業支援機関との連携を促進します。
加えて、交流人口を増大させる政策を強化し、消費拡大も併せて図ります。
こうした政策を進めることで、全産業のたゆまぬ進化を促し、「時代を先導するしなやかな産業構造」を実現します。
<実施する主な施策>
次ページ以降の第2節「しごとを創る」の各項に記載しています。
第2項 県内企業の成長力強化
1.中小企業の競争力強化
<現状・課題>
・県内企業のうち中小企業の占める割合は99.9%と非常に高く、なかでも常用雇用者20人以下(卸・小売、飲食、サービス業は5人以下)の小規模企業の占める割合が88%と全国で3番目に高い状況であり、中小企業は県経済を支える大きな原動力となっています。
・グローバル競争の激化や、IoT・AI・ロボットなどの革新的技術の進展など、産業を取り巻く状況が劇的に変化する中、中小企業が成長の果実をつかむためには、これらの変化に対応した技術革新や高い生産性への転換を図る必要があります。
・人口減少により国内市場が縮小する中、成長する海外市場を取り込み、外に向かって積極的に取引を拡大していかなければ、持続的な成長は望めません。
<めざす方向>
革新的技術の導入や新たな感性・アイデアによる絶え間ないイノベーションの創出を促すことにより、世界で通用する技術の開発とサービスの高付加価値化を図るとともに、多様化する国内市場への販路開拓支援はもとより、海外市場への積極的な進出を強く推し進めます。
特に、地域の核となり、他の県内企業を牽引するコネクターハブ企業やニッチトップ企業を集中的に支援することにより、県内企業の成長を「点」から「面」へと広げ、県経済を絶えず新たな成長フェイズに移行させます。
<実施する主な施策>
1 イノベーションの創出支援
ア 生産管理の徹底や作業スピードの向上など、業務の効率化による生産性の向上を促進するため、中小企業へのICTの導入支援を強化します。
イ 高い生産性と多様なカスタマイズを可能とする顧客対応型製造分野への展開や、デジタルイノベーションの創出を促すため、IoT・AI・ロボットなどの開発や導入を支援します。
ウ 産学官の連携による共同研究や、コア技術をはじめとする県工業技術センターの最先端技術を活用することで、基礎研究から応用研究、商品化に至るまで、各段階に応じた継続的な技術支援を実施します。
エ 新たな製品・サービス・技術の開発に挑戦する企業を支援するため、先駆的産業技術研究開発支援などの研究開発支援制度を充実するとともに、企業のもつ優れた技能・ノウハウの特許化や規格の標準化等に係る相談体制を充実します。
オ 全国に通用する高い技術の開発支援やICTなど最新技術の普及により、県外への進出を含む建設産業の積極的な事業展開を促進します。
カ 米国シリコンバレー、イスラエルなど海外の技術先進地との交流を図り、企業間連携や人材育成を通して県内におけるイノベーションの創出を促進します。
キ RESAS(地域経済分析システム)等のデータを利活用した企業それぞれの状況に応じた事業展開の提案や、自社データをはじめとする企業によるデータ利活用の促進に取り組むことで、付加価値の高い製品・サービスの創出や生産性の向上を促し、県内産業の活性化を図ります。
2 県産品のブランド化と販路開拓支援
ア 企業の海外展開を促進するため、海外ビジネスに精通した専門アドバイザーによる相談体制を強化するとともに、市場動向の把握、現地の法制度への対応、販売先・提携先の確保を支援します。
イ 海外への販路開拓を促進するため、MOU(覚書)の締結等により海外展開のチャンスを拡大するとともに、大型展示会・商談会への集団出展を支援します。
ウ ICTの進展により、今後さらなる拡大が予想されるeコマース(電子商取引)市場への県内企業の参入を支援し、世界規模での商取引を促進します。
エ プレミア和歌山推奨制度の推進や、プロモーション活動の展開により、県産品のブランド化や首都圏をはじめとした大都市圏での販路開拓を支援します。
オ 地場産業など県内企業の新製品開発から販路開拓までの取組を一貫して支援します。
3 経営の安定と成長を支える制度の充実
ア 生産性の向上や経営の合理化、事業の承継など企業が抱える経営課題を解決するため、専門家による相談体制を充実します。
イ 商工業者の経営の改善に関する相談や指導などを行う商工会等との連携を強化し、地域経済の活性化に不可欠な小規模事業者の持続的発展を支援します。
ウ 事業拡大や経営改善等に必要な資金を円滑に調達できるよう、金融機関と連携し、融資制度を充実します。
エ 工事・物品役務等の公共調達において県内企業の受注機会を確保し、県内産業の振興を図ります。
オ 企業の省コスト化を図るため、エネルギー効率の高い機器への転換や設備改修による省エネ投資への支援を充実します。
カ 優れた技術・サービスを有する企業のグループ化や企業間連携を支援し、一企業では事業展開が困難な分野への進出を促進します。
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
---|---|---|
製造品出荷額等(年間) |
2兆9,950億円 (2014年:暦年) |
3兆8,500億円 (2026年:暦年) |
付加価値額(年間) |
7,925億円 (2014年:暦年) |
1兆1,000億円 (2026年:暦年) |
就業者一人当たりの労働生産性(年間) |
800万円 (2013年度) |
860万円 |
株式上場企業数 |
8社 |
16社 |
海外展示会出展支援社数(年間) |
37社 |
100社 |
2.新たな産業の創出
<現状・課題>
・本県の開業率は2014(平成26)年度で4.2%と、全国平均(6.3%)を大幅に下回っており、全国最下位の状況です。
・近年、近畿自動車道紀勢線や京奈和自動車道をはじめとする道路網の整備が進み、京阪神圏や中京圏の市場、関西国際空港との交通アクセスが飛躍的に向上したことで、過去とは違い、企業の進出先としての本県の相対的価値が高まっています。
・県内の発電施設における発電量は、県内電力使用量の1.7倍(2015(平成27)年度)と、電力移出県として近畿の電力需要を支えていますが、将来、資源の枯渇が危惧される化石燃料への依存度の低減や地球温暖化に対応するため、再生可能エネルギーの導入促進が求められています。
<めざす方向>
社会構造の変化に伴う市場の成長性や技術革新を的確に捉え、創業や第二創業を促進するとともに、地域特性を生かした戦略的な企業誘致活動を行うことで、国内外から多くの企業を呼び込みます。
また、再生可能エネルギーへの転換を基軸とした新たな産業の創出を進め、国の再生可能エネルギー割合の達成目標を大きく上回る「再エネ先進県」になるとともに、経済波及効果の高い大型火力電源の開発を促進し、「近畿のエネルギー供給基地化」を実現します。
<実施する主な施策>
1 創業・第二創業の促進
ア 創業気運の醸成や人脈形成、販路開拓、資金調達など官民一体となった支援体制を強化し、創業をめざす新たな担い手の発掘から事業の発展段階に至るまで、段階に応じた切れ目のない支援を行います。
イ 国内外で活躍する和歌山発ベンチャー企業を絶えず創出していくため、創業が盛んな米国シリコンバレー、イスラエルをモデルとした起業家支援ネットワークを構築します。
ウ 「わかやま中小企業元気ファンド」や「わかやま農商工連携ファンド」を活用し、農林水産業や観光、医療、福祉など他分野との融合による新たなビジネスモデルの創出や、デジタルイノベーションによる新たなビジネス展開を促進します。
エ 将来の和歌山を支えグローバルに活躍する人材を育成するため、必要な資質・能力の向上や人脈形成を促す「わかやま塾」の充実を図ります。
2 企業誘致の推進
ア 新たな工業用地の開発やコスモパーク加太などの大規模用地の活用、道路網の整備、奨励金制度の充実など、全国最高水準の受入環境を整備します。
イ 情報サービス関連企業のさらなる誘致と紀南地方への集積を図るため、ICT環境が整った拠点整備や豊かな自然環境の中でのワーケーション(リゾート地などで働きながら休暇を取ること)の推進など、地域特性を武器とした誘致活動を強化します。
ウ JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)との連携強化により、本県の優れたビジネス環境を世界の企業に売り込むことで、外国企業の誘致を推進します。
3 エネルギー供給基地化をめざした産業の創出
ア 本県の豊富な自然資源を生かし、太陽光、風力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーを活用した電源開発を自然と調和した形で促進するとともに、海流やメタンハイドレートを活用した未来型エネルギーシステムの構築を進め、新たな産業を創出します。
イ LNG火力発電施設の誘致などを推進し、近畿への電力の移出拡大と新たな雇用の創出を図ります。
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
---|---|---|
県内開業率 |
4.2% (2012~2014年) |
全国平均を超える水準 ※基準値時点における |
企業立地件数 (計画期間内の累計) |
123件 (2008~2015年度) |
200件 (2017~2026年度) |
県内消費電力に占める再生可能エネルギー構成比率 |
18% |
25% |
3.産業を支える人材の育成・確保
<現状・課題>
・県内の高等学校から県外の大学・短大へ進学した学生の割合は、2015(平成27)年度時点で87%と全国で一番高く、一方でUターン就職者の割合は低位にとどまっています。また、高校生の県内就職率は全国平均を下回っており、進学時、就職時における若年者の県外流出が顕著なことから、県内産業を支える人材の確保が急務となっています。
・新規学卒就職者の卒業後3年以内の離職率は、新規高等学校卒業者、新規大学卒業者ともに全国平均より高く、ミスマッチの解消や雇用環境の改善に取り組む必要があります。
・正社員の有効求人倍率は全国値より低く、より安定した雇用の拡大に取り組む必要があります。
<めざす方向>
和歌山で育った若者が県内産業の成長を支える仕組みを強化し、高校生や大学生等の県内就職を促進するとともに、性別や年齢、障害の有無、国籍にかかわらず働く意欲のある人がその能力を最大限発揮できるよう、県内企業の働き方改革や再就職支援を進め、地域産業界に求められる人材の安定的な供給を図ります。
さらに、国内外から優秀な人材を確保し、多様性を生かしたイノベーションや新たな価値を創造することで、県内企業の成長を促進します。
<実施する主な施策>
1 若者の県内就職・定着の促進
ア 小学校・中学校・高等学校の教育活動を通して、和歌山で働く魅力や県内企業の情報を絶え間なく発信するとともに、企業見学や学校での企業説明会など高等学校と企業が連携した取組を強化することで、高校生の県内就職を促進します。【再掲】
イ 大学生等の就職活動時期にあわせ、本県出身の学生全員に対して県内企業の求人情報を集中的に発信し確実に伝達するとともに、インターンシップや就職フェアなど県内企業との出会いの場を設けることで、大学生等のUIターン就職を促進します。
ウ ふるさと和歌山の暮らしやすさや就職情報を効果的に提供する仕組みを構築することで、県外企業へ就職した県出身者のUターン就職を促進します。
エ 中小企業の競争力強化等により生まれた利益が、賃金引上げや正社員の雇用拡大など、雇用環境の改善につながるよう、国と連携して企業への働きかけを強化します。【再掲】
オ 県内企業と県内外の大学等による共同研究や教育プログラムの共同実施などの取組を促進することで、県内企業の成長を支える人材を育成・確保します。
カ 県内企業との協働による奨学金返還助成制度により、製造業や情報通信産業の成長の中核を担う、優秀な理工系人材の確保を促進します。
キ 企業ニーズを捉えた即戦力となる人材を育成するため、県立産業技術専門学院の学科再編や設備の充実に取り組み、職業訓練機能を強化します。
2 多様な働き手の確保
ア 県内企業の働き方改革を促進し、時間や場所に制約されず一人一人のライフスタイルに応じた働きやすい雇用環境の整備を進めます。【再掲】
イ 和歌山版の再就職支援システムにより、企業の採用意欲を高めるとともに、就職希望者と企業のマッチングを行い、女性や高齢者の再就職を応援します。【再掲】
ウ 海外市場への進出・事業拡大の原動力となるグローバル人材や、イノベーションの創出を担う高度な技能・知識を有する人材を国内外から確保するため、プロフェッショナル人材や外国人留学生の県内就職を促進します。
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
---|---|---|
高校生の県内就職率【再掲】 |
76% |
90% |
新規高等学校卒業就職者の卒業後3年以内の離職率 |
45% |
20% |
大学生等のUターン就職者数(年間) |
2,300人 |
3,000人 |
就業意思のある女性(15~64歳)の有業率【再掲】 |
81% (2012年度) |
100% (2027年度) |
就業意思のある高齢者(65~79歳)の有業率【再掲】 |
81% (2012年度) |
100% (2027年度) |
第3項 農林水産業の振興
1.農業の振興
<現状・課題>
・本県の農業は恵まれた気象条件を生かした果樹栽培が盛んであり、産出額の62%(2015(平成27)年度)を果実が占め、全国に比べて特異な構成となっています。
・人口減少や高齢化による国内市場の縮小や、貿易自由化の進展による安価な外国産農畜産物との競合などにより、収益性の悪化が懸念される中で、海外への販路開拓なしに農業の飛躍的な成長は望めない状況です。
・近年、消費者の安全・安心で機能性の高い農畜産物を求める声が高まっています。
・農業者の高齢化や減少により、耕作放棄地の増加や水利施設の老朽化が進んでいます。
・みかんや梅など単一品目の専作経営は、価格変動や、台風・集中豪雨等の被害により、収入が不安定となるリスクがあります。
<めざす方向>
経済のグローバル化や消費者ニーズの多様化に的確に対応するため、海外への市場拡大や国内外でのブランド化を進めながら、安全・安心で機能性を備えた農畜産物の安定供給を図ります。
また、ICTやロボット等の革新的技術の活用によるスマート農業や農地の集積・集約化等の推進により、生産性の向上を図るとともに、複合経営等の推進により農業経営の安定化を進め、「収益性の高い農業」を実現します。
さらに、観光や福祉、教育等の分野と連携し、産業全体としての好循環を生み出す「農業の多面的な発展」を実現します。
<実施する主な施策>
1 国内外に向けた販路開拓・販売促進
ア 国内市場に加え、海外市場のターゲットを的確に見据えた産地育成を推進します。
イ 県産果実の輸出拡大に向け、植物検疫の問題で輸出できない相手国との早期輸出解禁合意等について、国に働きかけます。
ウ 海外市場で有望な果実を低コストで長距離輸送できる鮮度保持技術の開発を進めます。
エ 産地が主体となった果実輸出への取組を支援するとともに、県内事業者と輸出商社との商談会開催や海外展示会への出展等により商談機会を創出します。
オ 県産ブランドの構築に取り組む産地等を支援するとともに、高級販路の開拓や国内大型展示会への出展等、県内事業者にとって有利な販路を開拓します。
カ 加工業・飲食業や直売所など多様な流通チャネルに対応した産地の生産・出荷体制を充実します。
キ 農業者が加工や販売にも取り組む6次産業化を推進するとともに、異業種連携による商品開発や販路拡大により、新たな需要を開拓します。
ク みかんや梅等の機能性表示や地理的表示制度の活用を進めます。
2 安全・安心で機能性を備えた農畜産物の安定供給
ア 機能性成分に着目した新品種の育成や栽培技術の開発を進めます。
イ 国際的に通用するGAP(農業生産工程管理)やHACCP(食品衛生管理基準)の認証取得により、食品の適正な生産・製造工程管理を推進します。
ウ 農薬の適正使用や、土づくりを基本とした化学肥料・農薬の低減に取り組むエコ農業を推進するとともに、重要病害虫・鳥インフルエンザ等の動植物防疫対策を実施します。
エ わかやまジビエ処理施設衛生管理認証制度やわかやまジビエ肉質等級制度の普及により、消費者の安心・信頼を確保し、ジビエの消費拡大を進めます。
3 生産性の向上
ア ICTやロボット等の革新的技術を積極的に導入し、農業者の高齢化や減少に対応した農業の省力化や軽作業化を進めます。
イ 水利施設の整備エリアのゾーニングによる効率的な更新・高度化や、野菜・施設園芸振興のためのほ場整備、園内道等の園地改良により、優良な農地を確保します。
ウ 農地中間管理機構と本県が独自に各地域へ設置した農地活用協議会が連携して情報の収集・提供体制を強化し、農地の流動化を促進することにより、担い手への農地の集積・集約化を図ります。
エ 果樹の県オリジナル品種をはじめとする優良品種・品目への転換を進めるとともに、マルチ栽培や完熟栽培などによる高品質果実の生産・流通を拡大します。
オ 高度な環境制御システム等の導入による野菜花きの高品質化や省エネ化の推進により、施設園芸の拡大を図るとともに、露地栽培での省力・低コスト化を進めます。
カ 熊野牛の増頭を進めるとともに、消費者ニーズに対応した独自性の高い畜産物の生産、ブランド構築に取り組みます。
4 農業経営の安定化
ア 施設栽培や新たな品目の導入を進め、果樹・野菜・花きの複合経営を推進します。
イ 気候変動に適応した新品種の育成や栽培技術を開発します。
ウ 有害鳥獣の捕獲、狩猟者の育成、防護柵の設置等の鳥獣害対策を強化するとともに、捕獲した鳥獣の食肉利用を促進します。
エ 農業共済等への加入を進め、農業者のセーフティーネットの確立を図ります。
オ 6次産業化や複合経営などに取り組む担い手の経営基盤の強化を図るため、法人化により家族型経営から雇用型経営への転換を進めるとともに、農地情報の収集・提供体制を強化し、企業の農業参入を推進します。
5 他分野との連携による農業の多面的な発展
ア 観光業と融合したグリーンツーリズムを推進するとともに、学校教育における職業体験や教育旅行の推進、福祉分野との連携により、農業の多面的な発展を図ります。
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
---|---|---|
農業産出額(年間) |
1,011億円 |
1,200億円 |
農家戸数 |
29,713戸 |
24,000戸 |
耕地面積 |
33,700ha |
32,000ha |
県産果実及び果実加工品の輸出額 |
4.3億円 |
70億円 |
農地活用協議会が取り扱う農地の流動化面積(年間) |
112ha |
300ha |
農業法人数 |
66法人 |
150法人 |
グリーンツーリズム推進地域数 |
2地域 |
30地域 |
2.林業の振興
<現状・課題>
・県内の森林資源は本格的な利用期にあり、林業再生に向けた好機を迎えています。
・本県は地形が急峻なため、林内路網の整備が遅れており、他の都道府県と比べて生産コストが高くなっています。
・人口減少により、今後、住宅用建築材料としての木材需要は減少傾向で推移していくことが予測されます。
・林業採算性の悪化により適切に整備されていない人工林が存在し、森林のもつ重要な多面的機能の低下が懸念されます。
<めざす方向>
林業に適した場所と森林保全を行う場所を明確に区分する「森林ゾーニング」により施策の選択と集中を強化し、産業政策として、「林業・木材産業の成長産業化」を進めるとともに、環境政策として、「多様で健全な森林づくり」を進めます。
これらの取組を総合的に推進することで、造林・伐採から加工・流通・販売までの一貫した流れを築き上げる「新・紀州林業への挑戦」をはじめます。
<実施する主な施策>
1 森林ゾーニングによる施策の選択と集中の強化
ア 素材生産を行う「経済林」と森林保全を行う「環境林」とに明確に区分し、持続的な林業経営を促進します。
イ 経済林においては、さらに、集中投資を行う「重点エリア」を設定し、利用期を迎えた森林での基盤整備や素材生産を支援することで、素材生産量の拡大を図ります。
2 林業・木材産業の成長産業化
ア 林道及び作業道等の整備や高性能林業機械の導入支援、本県の地形に適した次世代の架線集材技術の開発支援、伐採と植栽の一貫システムの確立により、低コスト林業を推進します。
イ ICT等の革新的技術を活用し、広域かつ高精度な森林情報を把握するとともに、木材需要と生産情報のマッチングを進め、林業・木材産業の効率化を図ります。
ウ 首都圏をはじめとする大消費地での販路拡大や海外への輸出を促進するとともに、集成材や合板などの工場誘致を推進します。
エ 公共建築物など非住宅建築物の木造・木質化を促進するため、施設整備に対する助成、建築士の育成、新たな木材利用方法の開発、木造建築の普及啓発を強化します。
オ 公共土木工事への木材利用を促進するため、新技術の開発支援や木材活用の対象となる木製構造物の拡充を図ります。
カ 木質バイオマスボイラーなどの設備導入を支援するとともに、林地残材などの未利用材の木質バイオマスエネルギーへの利用を積極的に推進します。
3 多様で健全な森林づくり
ア 間伐をはじめとする適切な森林整備や保安林の適正な管理、獣害や森林病害虫の被害対策を推進し、森林のもつ水源の涵養、山地災害の防止及び地球温暖化防止などの多面的機能の維持・増進を図ります。
イ 林業の採算が取れない人工林は、針広混交林化や広葉樹林化を進めることで、森林の機能回復を図ります。
ウ スギ及びヒノキの花粉症対策苗木の生産拡大を積極的に進めるとともに、花粉症対策苗木への植え替えを促進します。
エ 「企業の森」などの森林保全活動や県民参加の森林づくりを推進します。
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
---|---|---|
素材生産量(年間) |
181千立方メートル |
300千立方メートル |
林業産出額(年間) |
34.6億円 (2014年:暦年) |
38億円 (2026年:暦年) |
国産材製材品出荷量(年間) |
109千立方メートル |
120千立方メートル |
木質バイオマスエネルギーへの木材利用量(年間) |
15千t |
60千t |
林業就業者数 |
1,297人 (2010年度) |
1,400人 (2030年度) |
「企業の森」参画活動箇所数 |
77か所 |
150か所 |
3.水産業の振興
<現状・課題>
・本県の水産業を取り巻く情勢は、漁業者の高齢化や後継者不足が進むとともに、漁獲量の減少や魚価の低迷により収益性が悪化するなど、大変厳しい状況に直面しています。
・海面漁業では、主要魚種であるタチウオ・アジ類の資源減少、熱帯域から本県沿岸域へのカツオの回遊量の激減に加え、水産物消費の減少などにより、生産量及び生産額が10年前に比べ約3割減少しています。
・海面養殖業では、新たな高級魚への転換を進めた結果、10年前に比べ生産額はクロマグロを主体に2割弱増加していますが、生産量は半減しています。
・内水面養殖業では、生産量の99%を占めるアユの生産量が、魚価の低迷などにより10年前に比べ約3割減少しています。
<めざす方向>
水産資源を持続的に活用するための資源管理対策を推進するとともに、漁業者・漁協の経営構造改革や、観光との連携により経営の多角化を図ることで、「時代の変化に対応できる収益性の高い水産業」を実現します。
<実施する主な施策>
1 資源管理対策の推進
ア 公的な資源管理と漁業者自らによる計画的な資源管理を推進するとともに、資源管理に取り組むことによる減収を補てんするための漁業所得補償制度の普及を図ります。
イ 種苗生産・放流・育成管理により、水産資源を増大する栽培漁業を推進します。
ウ 海藻類が消失する磯焼け現象が発生している沿岸海域において、魚類の産卵場や育成場である藻場の再生を図ります。
エ 内水面におけるアユ資源を持続的に活用するため、資源調査を実施するとともに、稚魚の放流や産卵場の造成整備を支援します。
2 収益性の向上に向けた経営構造改革
ア 複数の漁業を営む漁業者や漁業者グループを育成し、経営基盤の強化を図ります。
イ 漁協に対し、業務改善や職員の人材育成に向けた指導を行い、経営基盤の強化を図ります。
ウ 県産魚のブランド力を強化し、南紀白浜空港を活用した首都圏での販路開拓など国内外への販路拡大に取り組みます。
エ スマなど新たな養殖魚種の開発により養殖業を推進します。
オ マルアジの干物・アユの一夜干しなど、地域資源を活用した付加価値の高い加工食品の開発を推進します。
カ ICTを活用したリアルタイムの漁場情報の収集など革新的技術を積極的に導入し、操業の効率化を進めます。
3 経営の多角化
ア 漁村の活性化と漁家所得の向上のため、観光業と連携し、マリンレジャーや漁業体験等を通じて都市との交流を図るブルーツーリズムを推進します。
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
---|---|---|
海面漁業生産額(養殖除く) (年間) |
93億円 (2014年:暦年) |
100億円 (2026年:暦年) |
海面養殖業生産額(年間) |
57億円 (2014年:暦年) |
60億円 (2026年:暦年) |
海面漁業生産量(養殖除く) (年間) |
22,901t (2015年:暦年) |
22,500t (2026年:暦年) |
海面養殖業生産量(年間) |
2,845t (2015年:暦年) |
2,000t (2026年:暦年) |
漁業就業者数 |
2,907人 (2013年:暦年) |
2,000人 (2028年:暦年) |
複合経営グループ数 |
ー |
20グループ |
複船経営体数 |
ー |
100経営体 |
ブルーツーリズム推進地域数 |
1地域 |
20地域 |
4.農林水産業の担い手の育成・確保
<現状・課題>
・本県における農林水産業就業者数は年々減少するとともに高齢化が進行しています。
・近年のグローバル化により、安価な外国産農畜産物が流入し、今後一層の競争力強化が求められる中で、優れた経営感覚や高い技術をもった担い手や地域の中核となる人材を育成する必要があります。
・自営による新規就農は、農業法人に雇用される場合と比べ、農地や資金の確保、栽培技術の習得の面で、ハードルが高くなっています。
<めざす方向>
新たな就業者が参入しやすい仕組みの構築や、県外からの移住者を支援する施策との連携により、新規就業者を確保するとともに、優れた経営感覚や高い技術をもった担い手や農林水産業の各分野の中核的な役割を担う人材を育成します。
また、農業経営の法人化は、持続可能で安定した経営につながるとともに、新規就農希望者の受け皿となることから、既存農家の法人化、企業参入や農協の農業経営参画等を積極的に推進します。
<実施する主な施策>
1 新規就業者の確保
ア Uターンや新規参入希望者を対象とした就業相談会や農林漁業体験、技術習得のための研修会を実施します。
イ 就業初期の経営を支えるための助成金・融資による経済的支援を推進します。
ウ 各分野の中核的な役割を担う、農業士・林業士・漁業士を育成し、若年就業者への指導・相談体制の強化を図ります。
2 優れた経営感覚や高い技術をもった担い手の育成
ア 農林大学校の教育カリキュラムを充実し、優れた経営感覚や実践的技術・知識をもった農業者や林業者を育成します。
イ アグリビジネスの重要性や儲かる農業をテーマにした公開講座を実施し、農業者の経営力の向上を図ります。
3 農業法人等の組織経営体の育成・企業参入の推進
ア 6次産業化や複合経営などに取り組む担い手の経営基盤の強化を図るため、法人化により家族型経営から雇用型経営への転換を進めるとともに、農地情報の収集・提供体制を強化し、企業の農業参入を推進します。【再掲】
イ 農協自らが行う農業経営を推進するとともに、高齢農家や兼業農家等の農作業負担の軽減や地域の優良農地の保全に寄与する農作業受託組織を育成します。
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
---|---|---|
新規就農者数 |
年間 137人 |
10年間で1,800人 |
新規林業就業者数 |
年間 29人 |
10年間で 400人 |
新規漁業就業者数 |
年間 44人 |
10年間で 600人 |
農業法人数【再掲】 |
66法人 |
150法人 |
第4項 観光の振興
1.和歌山の魅力を磨く
<現状・課題>
・本県は、温暖な気候、海、山、川などの豊かな自然や、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に代表される歴史や文化、さらには四季折々の多彩な食材、温泉や各地に伝わる伝統行事など、魅力あふれる多様な観光資源に恵まれています。
<めざす方向>
観光資源を守り、磨きをかけるとともに、観光客のニーズに応じた魅力を引き出すことで、それぞれの好みに応じた多様な感動や楽しみ、癒しを感じることができる「多彩な魅力に出合える観光地づくり」を推進します。
<実施する主な施策>
1 観光資源のブラッシュアップと保全
ア 歴史や文化、自然、多様な食など、それぞれの観光資源が有する背景をストーリーでつなぎ、観光客に分かりやすく伝えることで、資源がもつ真の魅力を引き出します。
イ 地域産業や農林水産業、スポーツ、生活文化などの地域資源を生かした体験型観光「ほんまもん体験」のコンテンツをさらに磨き上げます。
ウ 世界ジオパークや日本遺産の認定、重要文化財や史跡名勝天然記念物などの指定を推進し、観光資源のブランド化を図ります。
エ 貴重な文化遺産や豊かな自然環境を守るため、企業や学校と連携した「10万人の世界遺産参詣道環境保全活動」や、森林づくり活動などを推進します。
オ 和歌山の優れた自然を体験できる環境を提供するため、自然公園施設の整備・改修を計画的に進めます。
カ 和歌山県景観条例や和歌山県屋外広告物条例の適切な運用により、地域の特性を生かした良好な景観形成を図ります。
2 新たな観光資源の創出
ア 農林水産業やスポーツ、医療等のさまざまな分野と連携することで、外国人観光客や個人旅行客の多様なニーズに応えられる観光の魅力を創出します。
イ 自然と人とのつながりを学び体感できる南紀熊野ジオパークセンターや、地域の魅力に出合える道の駅・海の駅など、新たな観光拠点の整備を進めます。
ウ 海、山、川の大自然を満喫しながら快適に走行できるサイクリングロードの整備や、サイクルステーションの拡充に取り組み、「サイクリング王国わかやま」を実現します。
エ 国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現するため、関係自治体や経済界等と連携し、IR(統合型リゾート)の誘致をめざします。
2.和歌山へ招く
<現状・課題>
・本県への観光客数は、2011(平成23)年の紀伊半島大水害や東日本大震災の影響により大幅に落ち込んだものの、その後順調に回復し、2015(平成27)年の観光入込客総数は調査開始以降史上最高を記録しました。特に外国人観光客の増加が顕著です。
・観光客の嗜好の変化や価値観・文化の違いなどにより、観光地に求められるニーズは多様化しています。
・近年増加している外国人観光客のさらなる誘客のため、海外からのアクセスの改善に取り組む必要があります。
<めざす方向>
観光客のニーズや市場のトレンドを客観的に分析し、ターゲットを明確にした上で、観光客の視点に立った多様な観光プランを構築し、必要とされる情報を的確に発信するなど、戦略的な誘客活動を実施するとともに、世界とつながる玄関口の整備を進めることで、国内外から多くの観光客を招きます。
また、多彩な観光資源をつなぐ周遊ルートの構築により、消費拡大が期待できる長期滞在型観光を推進します。
<実施する主な施策>
1 ターゲットに応じた多様な観光プランの提供
ア 国や民間のビッグデータを活用した観光客の動態分析を踏まえ、歴史や文化、自然など、多様な観光素材を組み合わせ、観光客のニーズに合った周遊ルートを構築・提案します。
イ 世界に誇る観光資源や、国際大会に対応できる充実したスポーツ施設の活用などにより、教育旅行、年金旅行のほか、スポーツ大会やコンベンションといったターゲットに応じた多様なプランを売り出します。
2 戦略的な情報発信とプロモーション活動の推進
ア 映像、雑誌、新聞、多言語観光ウェブサイト、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等各種メディア展開や、フィルムコミッション活動などにより、和歌山の魅力を発信するとともに、旅行商品の造成を促進するため、ファムトリップ(観光地等を視察してもらうためのツアー)による国内外の旅行会社への売り込みなど、誘客活動を強化します。
イ 長期滞在が期待できる欧米豪など新たな市場の開拓や、消費拡大が期待できる富裕層など新たなターゲットの誘客を図るため、新規市場への展開や、富裕層向け旅行博覧会への出展等による誘客活動を強化します。
3 世界とつながる玄関口の整備
ア 関西の自治体や経済界と一体となって、急増する外国人観光客に対応するための受入体制の強化やエアポートプロモーション活動の推進に取り組み、関西国際空港の利用促進を図ります。
イ 民間事業者のノウハウを活用した空港運営や国際便の受入体制の強化などに取り組むことで、観光客やビジネス客の利用促進を図り、南紀白浜空港を活性化します。
ウ 大型クルーズ客船に対応した施設改良など受入体制の整備を進めるとともに、外航クルーズ客船の寄港増に向けた誘致活動を進めます。
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
---|---|---|
日帰り観光客数(年間) |
2,771万人 (2015年:暦年) |
3,300万人 (2026年:暦年) |
宿泊観光客数(年間) |
569万人 (2015年:暦年) |
770万人 (2026年:暦年) |
外国人宿泊客数(年間) |
43万人 (2015年:暦年) |
170万人 (2026年:暦年) |
クルーズ客船の寄港数(年間) |
11隻 |
30隻 |
3.和歌山でもてなす
<現状・課題>
・おもてなしトイレや、フリーWi-Fiスポットなどの環境整備は着実に進んでいる一方、急増する外国人観光客の多様なニーズに応じて、快適に滞在し、不便なく移動しやすい環境づくりが急務となっています。
・山間部を中心に、交通拠点から離れたところにある観光地が多く、公共交通機関によるアクセスの改善に取り組む必要があります。
<めざす方向>
年齢や障害の有無、国籍にかかわらず、誰もが快適に旅を楽しめるよう、宿泊施設や交通機関、飲食店等におけるインフラ整備や付加価値の高いサービスを提供できる人材の育成など、地域が一体となった総合的なおもてなしを充実するとともに、ストレスフリーで移動できる交通アクセスを構築し、全ての観光客に「再びこの地を訪れたい」と思ってもらえる「快適な観光空間」を創造します。
<実施する主な施策>
1 快適で安全・安心な観光地づくり
ア 外国人観光客が安心して周遊できるよう、多言語案内表示の充実や多言語電話通訳・簡易翻訳サービスの提供に取り組みます。
イ 誰もが快適に旅を楽しめる環境を整えるため、観光施設や宿泊施設、公共交通機関等のユニバーサルデザイン化を進めるとともに、良好な景観を形成する街なみの整備や、Wi-Fi環境、おもてなしトイレのさらなる充実を図ります。
ウ 既存の観光事業者の活性化や、富裕層など多様な客層の嗜好に応じられる宿泊施設の誘致を図るため、資金面での支援を行います。
エ 外国人観光客が地場産品を購入しやすい環境を整備し消費拡大につなげるため、免税店の拡大を図ります。
オ 誰もが安心して旅を楽しむことができるよう、観光施設や宿泊施設における災害発生時等の迅速な情報提供・避難誘導体制の整備を促進します。
2 付加価値の高いサービスの提供
ア 観光客に地域の魅力を正しく伝えることができるよう、十分な観光知識をもった語り部や通訳ガイドの育成と活動促進の取組を強化します。
イ 観光施設や宿泊施設、公共交通機関など観光客が訪れるあらゆる場所において、外国人観光客の対応に際して、文化・習慣の違いに対する配慮や、多言語対応ができる接遇スキルの高い人材を育成するとともに、積極的な雇用を促進します。
ウ AR技術(現実の世界にデジタル情報を追加するテクノロジー)を活用し、映像を交えて分かりやすく観光情報を提供するなど、観光客の満足度を高める観光地づくりを進めます。
3 ストレスフリーで移動できる交通アクセスの構築
ア 観光地を快適に周遊できるよう、県内各地を概ね3時間で移動できる道路網を整備します。
イ 鉄道やバスのスムーズな乗降・乗り換えを実現し、利便性を向上させるため、公共交通機関へのIC決済システムの導入を促進します。
ウ 大都市圏のターミナル等からの直結バスルートの新設を促進するとともに、鉄道・空港などの一次交通の拠点と地域内の観光地間を結ぶ二次交通の円滑な接続を図るため、バス、タクシー、レンタカー、レンタサイクルなど観光客のニーズに応じた移動手段をスムーズに利用できる環境整備を促進します。
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
---|---|---|
多言語案内板の整備数 |
393か所 |
1,000か所 |
多言語電話通訳・簡易翻訳サービス登録施設数 |
ー |
320施設 |
和歌山フリーWi-Fiの整備件数 |
1,200か所 |
2,100か所 |
おもてなしトイレ整備率 |
94% |
100% |
高野・熊野特区通訳案内士登録者の活動率 |
25% (2014年度) |
100% |
県内のどこへでも3時間で移動 |
- |
達成 |
ICカード利用可能駅へ乗り入れる路線バスを運営する事業者のIC決済システム導入率 |
ー |
100% |
第5項 時代の潮流を踏まえた産業の新しい発展
1.ICT等の利活用推進
<現状・課題>
・ICTは距離や時間の制約を解消し、あらゆるビジネスの形態を大きく変えるとともに、経済のグローバル化を加速化させています。
・このような状況の中、本県の産業の競争力を高めていくためには、IoT・AI・ロボットなどの革新的技術を積極的に活用し、付加価値の高い製品・サービスの創出や生産性の飛躍的な向上を図る必要があります。
<めざす方向>
マーケットニーズを捉えた付加価値の高い製品・サービスの創出や生産性の向上を図るため、IoT・AI・ロボットなどの技術革新を的確に捉え、県内産業における利活用を推進します。
<実施する主な施策>
1 ICT等の利活用による産業の振興
ア 生産管理の徹底や作業スピードの向上など、業務の効率化による生産性の向上を促進するため、中小企業へのICTの導入支援を強化します。【再掲】
イ 高い生産性と多様なカスタマイズを可能とする顧客対応型製造分野への展開や、デジタルイノベーションの創出を促すため、IoT・AI・ロボットなどの開発や導入を支援します。【再掲】
ウ アシストスーツやドローン、GPS自動トラクタの導入等を推進し、農業者の減少や高齢化に対応した農業の省力化・軽作業化を進めます。
エ 航空レーザ計測や衛星画像等を活用し、広域かつ高精度な森林情報を把握するとともに、木材需要と生産情報のマッチングを進め、林業・木材産業の効率化を図ります。
オ 衛星データを活用したリアルタイムの漁場情報の収集等を推進し、漁業における効率的な操業を進めます。
カ AR技術(現実の世界にデジタル情報を追加するテクノロジー)を活用し、映像を交えて分かりやすく観光情報を提供するなど、観光客の満足度を高める観光地づくりを進めます。【再掲】
キ 建設生産プロセスでの3次元データの活用や、ICT建設機械の導入等を促進し、建設産業における生産性の向上を図ります。
ク 超高速・超低遅延・多数同時接続等の通信が可能となる5G(第5世代移動通信システム)など、新たな通信技術・サービスの動向を的確に捉え、導入を促進します。
2.データ利活用の促進
<現状・課題>
・情報通信基盤や通信端末の増加・高度化により、ネットワーク上のデータ量が飛躍的に増大している中で、データから新たな価値を見出すことが、世界を変えるイノベーションの原動力になっています。
・2018(平成30)年度に、総務省統計局及び独立行政法人統計センターの一部機能が和歌山県に移転し、より一層重要性が増していく統計ミクロデータ提供等の業務を行うこととなっています。
・本県においても、「和歌山県データ利活用推進センター(仮称)」を設置し、積極的にデータの利活用を進めることとしています。
・データ利活用の重要性が高まるとともに、本県における取組が充実していく中、産学官のあらゆる分野で、積極的にデータ利活用を推進し、経験や勘に頼ることなく、科学的根拠に基づいた意思決定を行い、競争力を高めていく必要があります。
<めざす方向>
産学官のあらゆる分野で、公的統計をはじめとするさまざまなデータの利活用を促進し、データから的確に情報を読み解く能力を高めるとともに、統計的思考や科学的根拠に基づく意思決定を普及させることで、産業の発展や地域課題の解決を図ります。
<実施する主な施策>
1 データ利活用の促進
ア 和歌山県データ利活用推進センター(仮称)を設置し、総務省統計局、独立行政法人統計センターと連携してデータ利活用を促進することにより、産学官のさらなるレベルアップにつなげます。
イ 県政における諸課題の解決にデータを活用し、統計的思考や科学的根拠に基づく行政をより一層推進します。
ウ RESAS(地域経済分析システム)等のデータを利活用した企業それぞれの状況に応じた事業展開の提案や、自社データをはじめとする企業によるデータ利活用の促進に取り組むことで、付加価値の高い製品・サービスの創出や生産性の向上を促し、県内産業の活性化を図ります。【再掲】
エ 県民に対する統計思想の普及・啓発や教育現場での質の高い統計教育の提供により、公的統計への理解を深め、統計情報を活用する能力の向上に取り組みます。
3.国際化を踏まえた産業の新しい発展
<現状・課題>
・経済のグローバル化により、市場経済メカニズムが地球規模で機能すれば、世界全体の生産性が上昇し、世界経済は持続的に発展すると見込まれています。
・経済のグローバル化の進展により、世界各国との競争が激化する一方で、成長著しい新興国などの国々は本県にとって魅力ある市場になっています。
・県内産業の発展のためには、全ての産業が国際競争力を強めて世界との取引を拡大していくとともに、世界中から多くの企業や人を招いて経済活動を活性化させる必要があります。
<めざす方向>
あらゆる産業において世界に広がる新しい市場に積極的に挑戦できる環境を整えるとともに、各方面で発展している海外の企業を呼び込み、さまざまな市場へのゲートウェイとして機能させることにより、県内産業の発展を図ります。
<実施する主な施策>
1 国際競争力の強化に向けた支援の充実
ア 県産品の国際競争力を強化するため、GAP(農業生産工程管理)やHACCP(食品衛生管理基準)の認証取得を進めるとともに、積極的なメディア展開などにより国際的な信頼性とブランド力の向上を図ります。
イ 県産果実の輸出拡大に向け、植物検疫の問題で輸出できない相手国との早期輸出解禁合意等について、国に働きかけます。【再掲】
ウ 企業の海外展開を促進するため、海外ビジネスに精通した専門アドバイザーによる相談体制を強化するとともに、市場動向の把握、現地の法制度への対応、販売先・提携先の確保を支援します。【再掲】
エ 海外への販路開拓を促進するため、MOU(覚書)の締結等により海外展開のチャンスを拡大するとともに、大型展示会・商談会への集団出展を支援します。【再掲】
オ ICTの進展により、今後さらなる拡大が予想されるeコマース(電子商取引)市場への県内企業の参入を支援し、世界規模での商取引を促進します。【再掲】
2 グローバルに活躍する企業・人材の誘致
ア JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)との連携強化により、本県の優れたビジネス環境を世界の企業に売り込むことで、外国企業の誘致を推進します。【再掲】
イ 海外市場への進出・事業拡大の原動力となるグローバル人材や、イノベーションの創出を担う高度な技能・知識を有する人材を国内外から確保するため、プロフェッショナル人材や外国人留学生の県内就職を促進します。【再掲】
3 世界とつながる玄関口の整備
ア 関西の自治体や経済界と一体となって、急増する外国人観光客に対応するための受入体制の強化やエアポートプロモーション活動の推進に取り組み、関西国際空港の利用促進を図ります。【再掲】
イ 民間事業者のノウハウを活用した空港運営や国際便の受入体制の強化などに取り組むことで、観光客やビジネス客の利用促進を図り、南紀白浜空港を活性化します。【再掲】
ウ 大型クルーズ客船に対応した施設改良など受入体制の整備を進めるとともに、外航クルーズ客船の寄港増に向けた誘致活動を進めます。【再掲】
<進捗管理目標>
指 標 |
基準値 (2015年度) |
目標値 (2026年度) |
海外展示会出展支援社数(年間)【再掲】 |
37社 |
100社 |
外国人宿泊客数(年間)【再掲】 |
43万人 (2015年:暦年) |
170万人 (2026年:暦年) |
クルーズ客船の寄港数(年間)【再掲】 |
11隻 |
30隻 |