令和8年度重点施策と予算編成の方針

令和8年度重点施策と予算編成の方針(令和7年10月8日記者発表)

I 令和8(2026)年度重点施策の基本的な考え方

現在、本県では、県の未来を展望し、社会の潮流に適切かつ迅速に対応するため、県政の新たな指針となる総合計画の策定を進めているところ。

新総合計画の初年度となる令和8年度の重点施策は、同計画で捉える、5つの社会の潮流(大きな変化・リスク)に対応するための、めざす将来像の実現に向けた6つの政策の柱に準拠し、実施計画【アクションプラン】(令和8年度~令和12年度)を具現化する取組を中心に企画立案・実行する。

同計画で掲げるめざす将来像への道筋を確かなものとすべく、市町村との二層制の柔軟化も含めた広域地方公共団体としての県の役割を強く意識し、避けられない条件として進行する「人口減少・超高齢化」「地球温暖化」への対応に主眼をおいた中長期的な対策に着手するなど、未来の県民にも誇れる和歌山の創造に向けて、関係機関の協力を得ながら積極果敢に挑戦を始める。

※事業内容は、現時点における検討状況であり、今後の予算編成過程において変更する可能性がある。

新総合計画で掲げる和歌山の将来像と政策の6つの柱(計画原案より)

<2040年に実現したい和歌山の将来像>

「人口減少や気候変動に適応した、持続可能で心豊かな和歌山」
「個人が尊重され、あらゆる分野で個性輝く和歌山」

<政策の6つの柱>
1.海外の活力を取り込む

世界との結びつきを深め、多文化共生の社会を築きます。

2.人への投資を強化する

子育てを応援し、多様な学びの場をつくり、能力や意欲に応じて個人の可能性を拡げます。

3.産業の創造力と生産性を高める

脱炭素先進県をめざし、地域の特性を活かした産業政策を進めます。

4.つながりを拡げて、暮らしを守る

地域の魅力に磨きをかけ、県内外との交流と支え合いの力で暮らしを守ります。

5.誰にも居場所がある社会をつくる

柔軟な働き方やスポーツ、文化芸術活動などを通じて、自分らしさを発揮できる環境をつくります。

6.安全な社会基盤を築き、さまざまな脅威から命を守る

資源制約を乗り越え、災害や犯罪に対して強い地域をつくります。

II 現時点で検討中の令和8年度重点施策

1.海外の活力を取り込む


世界との結びつきを深め、多文化共生の社会を築きます。

令和8年度は、周年事業等による友好提携国との交流を積極的に展開しグローバルリーダーの育成に取り組むとともに、外国人材の受入れ拡大に向けた取組を本格的に始動します。

また、企業への海外展開支援や外国人観光客の誘客拡大に取り組むほか、次世代型のモビリティとして期待される、空飛ぶクルマの県内での早期実用化に向けた取組にも着手します。


(1)グローバル人材の育成

  1. 国際的な友好親善や、グローバルな視野を持つ青少年の育成を図るため、中国四川省との友好提携5周年を記念した記念訪問団・青少年交流団の相互派遣や、友好提携先等(中国・スペイン・アメリカ・トルコ)地域における青少年の派遣・受入を実施(新規)

(2)国際化を踏まえた産業の振興

  1. 県内企業の輸出拡大を戦略的に推進するため、マーケティング分野等の有識者の意見を踏まえ、各企業のステージに応じた海外展開計画の策定や販路拡大等を支援
  2. 次世代のモビリティとして地域の活性化や社会課題の解消に大きな役割(観光・ビジネス利用、物資輸送、災害救助など)を果たすことが期待される空飛ぶクルマの県内での早期実用化に向け、関連事業者のビジネス展開に必要な調査等(離発着場の地盤調査、周辺環境への影響調査など)を支援(新規)
  3. 外国人観光客の誘致拡大を図るため、重点10市場において観光プロモーターを設置し、プロモーション活動(現地旅行会社およびメディアを対象としたセールスコール、FAMトリップ等)を展開
  4. 観光客が快適で安全に県内を周遊できる環境を整備するため、ガイド人材の育成(高野・熊野地域通訳案内士育成研修など)や、飲食店の多言語化支援、多言語対応店舗検索サイト「EAT WAKAYAMA」等を運用

(3)外国人材の活躍推進

  1. 外国人材の受入れを促進するため、産業別の事業者向けセミナーや、国内外ジョブフェアへの出展、海外インターンシップを通したマッチング支援など、外国人材受入れ戦略に基づく新たな事業を総合的に展開(新規)
  2. 外国人材が安心して働ける環境を整えるため、WAKAYAMA外国人材雇用サポートデスクによる相談対応や、事業者が行う就業環境整備を支援
  3. 外国人が地域社会において健康かつ安全に自立して生活し、周辺住民と良好な関係を築けるよう、無償の日本語教室をオンライン形式で実施するとともに、企業内で行う日本語教室へ日本語教師を派遣
  4. 県内各地に在籍する日本語指導が必要な小中学生が、学校生活に早期に適応できるよう、日本語習得のレベルに応じて同時双方向型オンライン日本語講座を提供し、各学校や家庭において実施

2.人への投資を強化する


子育てを応援し、多様な学びの場をつくり、能力や意欲に応じて個人の可能性を拡げます。

令和8年度は、不妊治療費助成や妊産婦アクセス支援、保育料・学校給食費の無償化などに継続して取り組むとともに、人材不足の深刻化が懸念される保育士の育成や、虐待の恐れがあり一時保護されている生徒の学習機会の保証など、子育てを支え・見守る体制の強化に取り組みます。

また、教育関連では、個別最適な学びを実現するため、授業での生成AIの活用をリードするとともに、成長分野の企業と連携した産業教育の強化や、高等支援学校の設立準備など、学校の魅力化・特色化に段階的に着手します。

子育て

(1)安心してこどもを生み育てられる環境づくり

  1. こどもを持つことを望む夫婦の不妊治療の経済的負担を軽減し、治療を受けやすくするため、体外受精及び顕微授精による不妊治療(生殖補助医療)と併用して実施された先進医療に要する費用の一部を支援
  2. 妊産婦の経済的負担や不安軽減のため、妊婦健診や出産等に要する交通費及び宿泊費を助成する市町村を支援
  3. 出産後も安心して子育てができる支援体制の確保のため、出産後1年以内の母子に対して産後ケア事業(病院等の空きベッドを活用したショートステイやデイサービス、助産師・保健師等による訪問)を実施する市町村を支援
  4. 多子を育てる世帯の経済的負担を軽減するため、第2子の一部と第3子以降の子の保育料等の無償化や、就学前児童の一時預かり等の利用料助成を行う市町村を支援
  5. 保育人材確保のため、保育士をめざす学生への修学資金等の貸付を行うとともに、保育士・保育所支援センターと連携した潜在保育士の再就職支援や労働環境改善への支援を実施
  6. 保育士としてのキャリア選択の後押しを強化するため、中高生等へのキャリア教育(養成施設卒業者との交流機会等)や大学生への保育体験等に新たに取り組むとともに、地域限定保育士試験の導入(令和9年度から)に向けた準備に着手(新規)
  7. 子育て世帯の経済的負担軽減を図るため、小中学校の学校給食費を無償化する市町村及び特別支援学校に通う児童生徒等の保護者が負担する給食費を支援

(2)こども見守りネットワークの構築

  1. 児童虐待等のおそれがあり一時保護(原則2ヵ月)されているこどもの学習権などを保障するため、一時保護施設から原籍校へ通うこどもの通学について、福祉タクシーを利用した通学支援(こどもの安全を守る観点から運転手と付添人の2人体制)を実施(新規)
教育
  1. 児童生徒の個別最適な学びの実現に向け、学校授業等における効果的な生成AIの活用を促進するため、小中高等学校においてモデル事業を実施し、得られた成果をガイドライン・運用手引として取りまとめるとともに、セキュリティポリシーのひな形を作成し、市町村教育委員会や各学校に横展開(新規)
  2. 成長産業分野(蓄電池・SAF・宇宙)の即戦力人材を育成するため、工業系高等学校において関連企業等と連携した教育プログラムを構築・実践するとともに、必要となる産業教育設備(産業界で求められる技術の修得を目的とした機械等)を、拠点となる高等学校へ段階的に導入(新規)
  3. 障害の程度が軽度な生徒の社会的・職業的自立を目的とし、資格取得を見据えた専門教科の学びを提供する高等支援学校の設置に向け、基本計画の策定やカリキュラム開発等の開校準備に着手(新規)
  4. 不登校等の未然防止、早期発見、早期対応のため、スクールカウンセラー等を配置するとともに、フリースクール等に通う不登校児童生徒等を対象とした調査を実施

3.産業の創造力と生産性を高める


脱炭素先進県をめざし、地域の特性を活かした産業政策を進めます。

令和8年度は、商工業関連では、成長産業の開拓を次の段階へと着実にステップアップさせるとともに、県内企業の経営力強化に資する伴走支援のほか、脱炭素社会への加速化に向けた県民の行動変容、若者・女性にも選ばれる職場環境づくりを促す取組を新たに展開します。

また、農林水産業関連では、温暖化対策に資する基礎研究を強化するとともに、農林水産事業者と連携した産業基盤の強化に新たに取り組みます。

観光業関連では、国内外へのプロモーション活動に加え、観光地経営の高度化に向けたデータ利活用や広域観光の環境づくりを本格化させます。

商工業

(1)成長産業の開拓

  1. 宇宙産業集積を図るため、宇宙アクションプランに基づき、県内企業の宇宙産業参入を目的としたビジネス創出支援や、宇宙関連企業の誘致活動を展開するとともに、ロケット打ち上げ事業者への支援を継続して実施

(2)産業の脱炭素化に向けた環境整備

  1. 本県海域における洋上風力発電の導入検討を進めるため、漁業操業実態調査の結果等を踏まえ、先行利用者をはじめとする関係者との調整を順次進めるなど、再エネ海域利用法に基づく有望区域指定に向けた取組を展開(新規)
  2. 森林クレジットの創出を促進するため、先行モデルとして県有林における森林クレジットの販売を進めるとともに、県内林業事業者への制度活用に向けた周知啓発等を実施

(3)脱炭素社会実現に向けた行動変容の推進

  1. 地球温暖化対策への県民の行動変容を促すため、こどもを中心に仮想空間を通してカーボンニュートラルの生活や街づくりを体験できる、ゲーム形式の啓発コンテンツを開発し、環境教育やeスポーツイベント等で活用(新規)
  2. 県内の小売事業者等と連携し、当該事業者が運営する店舗において、顧客が脱炭素につながる商品やサービスを購入・利用した場合、通常のお買い上げポイントに上乗せポイントを付与するなど、県民一人ひとりの主体的な環境配慮行動を促進

(4)県内企業の成長力強化

  1. 中堅企業の新たな創出に向け、高度な経営診断や、それに基づく経営課題・重点推進分野の可視化、支援人材とのマッチング等を通し、経営戦略策定を中心とした企業の経営力強化に資する伴走支援を実施(新規)
  2. 県産品、県内事業者のブランド力向上や国内外市場での販路拡大を支援するため、県産品推奨制度「和歌山一番星アワード」による展示会出展などのプロモーション活動を展開

(5)多様で柔軟な働き方の推進

  1. 女性が活躍できる職場環境づくりを推進するため、わかやまジェンダー平等プロジェクト参画企業にアドバイザーを派遣し、えるぼし認定取得にかかる相談に応じるとともに、認定後の継続取得又はプラチナえるぼし認定に向けた取組(職場環境整備、女性のキャリアアップ等)を支援(新規)
農林水産業

(1)農地集積、農業経営の規模拡大の促進

  1. 担い手への農地集積を進めるため、将来の農地利用のあり方をまとめた地域計画に基づいて県農業公社が実施する農地流動化の取組や遊休農地の復旧・園地条件の改良を行う取組を支援
  2. 農業の担い手を確保・育成するため、就農前後の資金の交付を行うとともに、新規就農者並びに規模拡大や法人化をめざす経営体の機械・設備等の導入を支援

(2)収益性を高める農業生産体制の構築

  1. 収益性の高い農林水産業を維持・発展させるため、新品種開発や資源調査、実用化技術研究を実施するとともに、気候変動など生育環境の変化に対応した持続的な農林水産業の確立に向け、試験研究機関における新技術開発の基礎研究を強化(新規)
  2. 果樹、野菜、花きの生産力強化を図るため、戦略品種の早期産地化や園内道の整備、スマート農業技術の導入、災害に強い園芸ハウスの整備や環境制御システムの導入等を支援
  3. クビアカツヤカミキリの被害拡大を防止するため、市町村や団体等が実施する被害拡大防止への取組に対する支援を行うとともに、生産者向け研修会の開催や防除技術実証モデル地区の設置等の対策を実施
  4. 野生鳥獣による農作物被害を減少させるため、有害鳥獣の捕獲促進や防護柵の設置、狩猟者の育成等の対策を総合的に実施
  5. 農業関連産業の振興と農家所得向上に向けた加工機能の強化を図るため、食品関係事業者向けの加工品の開発・製造を後押しするセミナーを開催するとともに、未利用果実の活用に関心のある食品事業者等と農業者とのマッチングの取組を新たに展開(新規)
  6. 県産和牛の生産振興と安定供給のため、ゲノミック育種価の活用による付加価値の高い牛を効率的に生産する体制を整え、子牛市場の活性化を図るとともに、流通促進や消費拡大に向けた取組を実施

(3)循環型林業の実践

  1. 生産性を向上させるため、市町村による林道整備や県による幹線林道整備を推進するとともに、高性能林業機械等の導入を支援

(4)紀州材の利用拡大

  1. 木材加工体制を強化するため、製材工場の規模拡大に向けた製材用設備の導入支援を強化(新規)
  2. 紀州材の需要拡大を図るため、紀州材を使用した民間施設の木造木質化等を支援するほか、海外における紀州材の原木丸太や製品のニーズ調査を踏まえて輸出トライアルを実施するとともに、川上から川中まで連携した輸出体制の構築を支援

(5)水産業の経営基盤強化

  1. 生産性の向上を図るため、回遊魚の滞留を促進する表層型浮魚礁を増設するとともに、IoTをはじめとするICTやロボット技術等を活用した最新技術の導入を支援
  2. 養殖業の成長産業化を図るため、県内における陸上養殖の適地等調査(水環境、ターゲット魚種等)を開始するとともに、高水温耐性のある養殖魚種や新しい養殖システムの導入など、養殖業への支援を新たに展開(新規)
  3. 漁業の担い手を確保・育成するため、就業希望者に対する独立型・雇用型漁業研修中の資金の交付を行うとともに、新規就業者に対する漁船等の導入及び操業に必要な資格取得を支援
観光業
  1. 本県が有する多彩な観光資源を活用し、地域と一体となって魅力ある観光地づくりに取り組むとともに、「聖地リゾート!和歌山」をキャッチフレーズに、世界遺産やジオパーク、温泉と食等各テーマに特化した効果的な観光プロモーションを積極的に展開
  2. 地域全体で観光地経営の高度化を図るため、県、市町村、事業者等が客観的かつリアルタイムのデータに基づく経営戦略やプロモーション戦略を展開できるよう、関係者との合意形成を図りながらデータを収集し、分析・共有できるデータ連携基盤(DMP)の構築を推進(新規)
  3. 紀伊半島三県(三重県・奈良県・和歌山県)による欧米豪市場の高付加価値旅行者層をターゲットにした誘客を強化するため、地域金融機関と連携しながらプロモーションやランドオペレーション、ホテル誘致等の投資を一体的に進める環境づくりを推進(新規)

4.つながりを拡げて、暮らしを守る


地域の魅力に磨きをかけ、県内外との交流と支え合いの力で暮らしを守ります。

令和8年度は、人口減少に適応した社会システムを構築するため、地域交通や上水道、ごみ処理施設の運営について、市町村域を超えた広域連携策に本格的に着手するとともに、医療・介護サービスの提供体制を、各地域の実情に応じて確保するための対策を新たに展開します。

また、地域資源の維持・継承に向けた県立考古民俗博物館(仮称)施設の建設にとりかかります。


地域づくり

(1)拠点形成とネットワークによる機能補完

  1. 持続可能な地域交通の構築に向けて、圏域ごとのあるべき姿をリ・デザインするため、専門家とともに全市町村の現状把握・課題分析を行うとともに、その結果を交通カルテとして市町村にフィードバックするなど、関係機関の意識醸成や広域調整への準備に着手(新規)

(2)広域交通ネットワークの構築

  1. 世界とつながる拠点施設と県内各地を結ぶ道路ネットワークを構築するため、紀伊半島一周高速道路の早期完成、国道168号など幹線道路網等の整備を推進
  2. 熊野白浜リゾート空港の利用を促進するため、2万人/年の空港利用者増の目標に向けた取組(航空会社と連携した取組、旅行会社へのコンテンツ造成支援等)や、定期化を前提とした国際チャーター便の誘致等を実施するとともに、滑走路延伸に向けた準備を推進

(3)広域連携による地域運営の推進

  1. 市町村水道事業の広域連携による基盤強化を促進するため、複数の市町村が共同で実施するDX技術(人工衛星データやAI等)を活用した漏水調査に助成
  2. ごみ処理施設の広域化・集約化により持続可能なごみ処理体制を構築するため、市町村の意向を踏まえた、ブロックごとの中長期的な廃棄物処理体制の方針等を内容とする「長期広域化・集約化計画」の策定に着手(新規)

(4)持続可能な地域をめざしたつながりの構築

  1. きめ細かい相談体制の実施、移住関心層への情報発信、お試し移住、空き家を利活用した住まいの支援等により、移住者、二地域居住者、関係人口など地域の新たな担い手を呼び込む施策を総合的に推進
  2. 地域外人材の発掘とネットワーク構築を強化し地域の課題解決や活性化につなげるため、首都圏の共創施設に都市と地域の接点となる拠点を新たに設置し、県内外で活動しているキーパーソンを活用しながら地域の魅力や可能性を発信(新規)
地域資源

(1)自然共生社会の実現

  1. ネイチャーポジティブに資する30by30の実現に向け、民間による「自然共生サイト」への登録を進めるため、県が率先垂範し普及活動を行うとともに、ネイチャーキャンプ(小・中学生向け自然体験学習)などを通じて、将来の環境保全を担う人材の育成を推進

(2)地域資源の維持・継承

  1. 特別史跡岩橋千塚古墳群の保存と活用を図るため、第4次追加指定地の公有化や、特別史跡指定地の更なる拡大に向けた調査を実施
  2. 県内の考古資料及び民俗資料の保存と活用を更に推進するため、県立考古民俗博物館(仮称)への再編整備に向けて、博物館(新館)や収蔵棟の建設、既存資料館の改修等を実施(新規)
医療福祉

(1)質の高い医療提供体制の構築

  1. 救急医療体制の強化及び充実を図るため、県立医科大学附属病院と地域の中核病院の集中治療室等をネットワークで結び、県立医科大学附属病院の専門医が診療を24時間サポートできる体制の構築に要する費用の一部を支援
  2. 医師不足による医療現場のひっ迫緩和や常勤医師の負担軽減を図るため、県外医師が休日等の一定期間、県内で勤務する体制整備として、当該医師の勤務を希望する医療機関に対し、招聘に要する費用を支援
  3. 地域医療の重要な担い手である看護職員を地域全体で育成・確保・共有するため、二次医療圏ごとに、医療・福祉・教育等の関係機関で構成する看護職確保ネットワークを構築するとともに、コーディネーターを配置し、課題共有や人材のマッチング等を推進(新規)
  4. 医療DXに対応できる人材の育成に向け、県立看護師養成所のICT環境(ネットワーク環境、教育電子カルテの導入等)を強化(新規)

(2)持続可能な介護提供体制の構築

  1. 介護従事者の業務の負担軽減や効率化により介護従事者が継続して就労できる環境整備を図るとともに、介護サービスの質の向上を図るため、介護テクノロジーを導入する介護事業所に対する支援を実施
  2. 中山間地域における訪問介護及び居宅介護支援サービスの確保を図るため、サービス提供を行う事業所を支援する市町村に対して、費用の一部を支援(新規)
  3. 訪問介護サービスの質の向上を図り、安心して働き続けることができる体制づくりを促進するため、経験年数の短い訪問介護員にベテラン職員が同行する場合や、利用者からのハラスメント対策として2人体制でサービス提供を行う事業所の取組を支援する市町村に対して、費用の一部を支援(新規)

5.誰にも居場所がある社会をつくる


柔軟な働き方やスポーツ、文化芸術活動などを通じて、自分らしさを発揮できる環境をつくります。

令和8年度は、スポーツ・文化芸術活動関連では、人口減少に適応したまちづくりや地域の魅力向上など、現状を前提としない多角的な観点から県立スポーツ施設のあり方検討や博物館施設等のリニューアルなどについて着手するとともに、学校部活動の地域連携・地域展開の円滑な実施に向けた対策を強化します。

また、人権尊重の社会づくりに向け、犯罪被害者等支援として、多機関連携によるワンストップサービス体制を構築します。


居場所づくり

(1)多世代交流拠点の整備

  1. こども基本法第11条に基づき、県施策に対してこどもからの意見を聴く機会を確保するとともに、放課後児童クラブの質の向上を図るため、巡回アドバイザーによる意見聴取、巡回支援を実施
  2. こども食堂の新規開設に係る経費等への補助や、こども食堂と多機関(社会福祉協議会やフードバンク)をつなぐネットワーク支援等により、こどもの居場所づくりを推進

(2)スポーツ・文化芸術活動の拠点整備

  1. ゲームクリエーターによるコミュニティを構築し、若者中心の新たな地域文化を形成するため、ゲーム開発に関心のある社会人や学生等を対象とした交流イベントの開催や、ゲームづくりコンテスト、作品展示会等を開催
  2. eスポーツを推進し、デジタル社会を担う人づくりと地域の活性化を図るため、県立高等学校における部活動でのeスポーツの環境整備を進めるとともに、eスポーツを普及させるための交流・体験イベントを開催
  3. こどもの継続的なスポーツ・文化芸術活動の機会を確保するため、学校部活動の地域展開に向けて、課題整理や関係団体等と調整するアドバイザーの配置等を行う市町村を支援するとともに、受け皿となる地域クラブの発掘・育成などを実施(新規)
  4. スポーツ活動の拠点となる施設の機能確保に向け、老朽化等の課題を抱える県立スポーツ施設(県立体育館、紀三井寺公園陸上競技場・野球場)の将来的なあり方や整備の方向性を定めるため、スポーツ振興やまちづくり等多角的な観点からの調査・検討に着手(新規)
  5. 県立自然博物館の展示・収蔵や防災の機能を高める現地でのリニューアルに向け、老朽化施設の更新・改修のための調査設計を実施(新規)
  6. 県立近代美術館(MOMAW)において、世界的建築家の代表作品である建物の魅力を発信し、豊かな収蔵作品を活用した展覧会や講演会を開催するとともに、文化観光拠点としての施設の機能強化・魅力向上に向け、文化観光推進法に基づく拠点計画を策定(新規)

(3)多様で柔軟な働き方の推進

  1. 女性が活躍できる職場環境づくりを推進するため、わかやまジェンダー平等プロジェクト参画企業にアドバイザーを派遣し、えるぼし認定取得にかかる相談に応じるとともに、認定後の継続取得又はプラチナえるぼし認定に向けた取組(職場環境整備、女性のキャリアアップなど)を支援[再掲](新規)
人権尊重
  1. 犯罪被害者やそのご家族、ご遺族の方が一日も早く平穏な暮らしを取り戻すことを支援するため、犯罪被害者等のニーズを一元的に把握するコーディネーターを配置し、支援調整会議(県、市町村、警察、紀の国被害者支援センター等)で策定した支援計画をもとに途切れなく支援できる「多機関ワンストップサービス」体制を構築(新規)

6.安全な社会基盤を築き、さまざまな脅威から命を守る


資源制約を乗り越え、災害や犯罪に対して強い地域をつくります。

令和8年度は、半島防災の観点から、防災減災・県土強靱化対策を着実に推し進めるとともに、能登半島地震の検証において短期的な取組が必要と判断されたものから段階的に対策を実行します。


防災減災
  1. 大規模災害発生時に、消防、警察、自衛隊、海上保安庁等が円滑に災害応急活動にあたれるよう、旧南紀白浜空港跡地の航空機活動拠点としての機能をさらに充実させるため、基本設計を踏まえた場外離発着場整備や燃料倉庫及び資機材保管庫の設置等を実施
  2. 県内の被害情報収集や、大規模災害発生時における防災関係機関等との速やかな情報共有及び災害対策の強化を図るため、国の新総合防災情報システム(SOBO-WEB)との連携や各種機能の強化を図る県総合防災情報システムの再構築を実施
県土強靱化
  1. 能登半島地震の教訓を踏まえ、南海トラフ地震等の大規模災害に備えるため、半島防災の観点から、紀伊半島一周高速道路などの高規格道路や幹線道路網等の整備を進めるとともに、橋梁耐震化、法面対策、無電柱化等による緊急輸送道路の防災・減災対策を推進
  2. 気候変動の影響による水害や土砂災害の激甚化と頻発化に対応するため、河川整備や砂防事業の推進に加え、特定都市河川の法的枠組み(雨水浸透阻害行為への規制、雨水貯留浸透施設の設置など)を活用する等、流域のあらゆる関係者が協働してハード・ソフト一体的に取り組む「流域治水」を推進
  3. 「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」に基づき、津波による経済被害を抑え、早期の復旧・復興につなげるため、港湾や漁港の防波堤等の強化を推進
  4. 持続可能なインフラメンテナンスの実現をめざし、施設の機能や性能に不具合が発生する前に対策を講じる予防保全型メンテナンスへの本格転換に向け、橋梁やトンネル、河川・港湾施設など深刻化するインフラの老朽化対策を着実に推進
治安・交通安全
  1. 近年被害が拡大し県民の脅威となっている匿名・流動型犯罪グループによる犯罪等をなくすため、ターゲットを絞った戦略的な広報啓発により県民への注意喚起を強化するとともに、ネットワーク型監視カメラシステムを活用した新たな捜査体制を整備(新規)

III 予算編成方針

令和8年度の重点施策及び新たな財政需要への対応に必要な予算については、令和5年2月に発出した「財政危機警報」を踏まえ、県財政の持続可能性を確保する観点から、徹底した事業のスクラップアンドビルド及び事業内容の見直しにより対応することとする。

この方針のもと、新総合計画実施計画【アクションプラン】(令和8年度~令和12年度)における新規施策については、令和7年度当初予算の部局マネジメント枠に5%のマイナスシーリングを適用し、捻出した財源により「重点施策推進予算枠」を設け、別枠で予算要求を受け付ける。

また、既存事業の見直しに当たっては、近年の物価・賃金水準の上昇の影響を予算に適切に反映させるとともに、業務量適正化の観点も踏まえ、事業の実績や効果を検証し、継続の可否も含めて精査を行うこととする。

その上で、大規模プロジェクトをはじめとする投資的経費や情報システム関連経費を含むその他の経費については、人口減少等の社会経済情勢の変化や後年度の財政負担への影響を考慮し、実施時期や事業規模、実施手法、さらには事業そのものの必要性の検討を行うこととする。特に、大規模な公共施設整備事業等については、将来の維持管理・更新コストの縮減や公共サービスの質的向上を図る観点から、PPP/PFIなど官民連携手法の導入検討を行うこととする。

※各部局において事業の優先順位を見直し、より効果や必要性の高い事業に組み替えることを徹底する予算要求枠

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