令和7年12月和歌山県議会農林水産委員会会議記録
令和7年12月和歌山県議会農林水産委員会会議記録
1 日時 令和7年12月16日(火)午前9時58分~午前11時22分
2 場所 第4委員会室
3 出席者 委員長 山家敏宏
副委員長 三栖拓也
委員 森 礼子、秋月史成、岩永淳志 、谷 洋一
欠席委員 なし
委員外議員 なし
4 概要
午前9時58分開会
●山家委員長
◎開会宣告 挨拶
◎報告事項 委員の欠席なし
◎傍聴協議 なし
◎撮影許可 3件
◎議 事 議案3件、継続審査を要する所管事務調査8件
◎農林水産部審査宣告
◎議案等に対する説明要請
●川尾農林水産部長説明
●山家委員長
◎議案に対する質疑及び一般質問宣告
Q 岩永委員
県の農業関係の研究機関を訪問して研究内容等を聞く機会があり、研究員が効率的な栽培方法等をしっかりと研究していることに敬意
をもっている。その上で、研究成果をどのように現場に伝えていくかが非常に重要になってくると考えている。各地で環境が違うため
長年の経験に基づいた農業をしている農家も多いが、今後は気候変動への対応も含め、研究成果と今までの経験をミックスしていくこと
が必要となり、各研究機関の成果をいかに現場に普及させていくかが重要となってくる。
県で作成したゆら早生栽培マニュアルを具体例にして、試験研究機関からどのように農家に普及させているのかを研究推進課長と経営
支援課長に伺いたい。
A 島研究推進課長
試験研究機関で開発した成果は、研究成果情報や試験場所の広報誌等に取りまとめてホームページで公開するとともに、年に1回、
成果発表会を開催し、直接JAの営農指導員や普及指導員、生産者等に周知している。また、各試験場所内に技術普及チームを編成し、
普及指導員等と協力しながら成果が現場に浸透するよう取り組んでいる。
ゆら早生栽培マニュアルは果樹試験場が平成21年に作成したが、印刷物として隅々まで配布するのはコストや労力の面で難しいため、
営農指導員や普及指導員の研修会、生産者の勉強会や技術相談での資料として活用してきた。
こうした取組により、マニュアルに掲載の技術はある程度現場に浸透していると考えているが、情報が行き渡っていない方のために、今
後マニュアルをホームページに公開するとともに、相談を受ければ技術指導の機会づくりに努めていく。
A 庄司経営支援課長
試験研究機関が開発した技術の農業者への普及については、県の普及指導員がJAの営農指導員や農業士会等の農業者団体と連携し
て、展示圃の設置や講習会の開催等により技術の普及に取り組んでいる。
ゆら早生栽培マニュアルについては、県の普及指導員やJAの営農指導員等で組織する果樹技術者協議会において、剪定や摘果等のマ
ニュアルに基づく栽培講習会を実施してきたところである。
また近年では、ゆら早生へのホルモン剤散布による摘果作業の軽減を推進するための展示圃を設置し、農業者にその効果を確認して
もらう現地検討会を開催している。
今後も試験研究機関で開発された技術等の研究成果については、JAや農業者団体と連携しながら様々な機会や媒体を通じて普及に
努める。
要望 岩永委員
こういったノウハウや研究成果は、まずオープンにしていくことをぜひお願いする。既に県内農家にホームページ等様々な形で情報
を公開していると思うが、その上で少しでも受け取りやすくするための工夫、例えばSNSの活用や、ラジオ等の音声でわかりやすく伝
えるなど、まだまだできることがあると思うので、引き続きお願いする。
Q 岩永委員
所得の向上につなげる海業の取組は、本県においても非常に重要な取組に今後なっていくと思うが、国が募集している海業の推進に
取り組む地区について、県内の状況はどうなっているか。また、海業取組促進事業はどのように活用されているのか。
A 岸裏水産振興課長
水産物の直接販売や漁業体験といった海業の取組は、漁業経営が不安定な中、今後ますます重要になると認識している。
海業の推進に取り組む地区は、県内では太地町及びすさみ町となっており、国から海業推進に資する情報提供等が行われている。
また、国の海業取組促進事業を活用し、那智勝浦町、太地町、すさみ町の3地区において、事業実施主体である町や漁協により、直接
販売に向けた取組が進められている。
さらに、広く機運醸成を図るため、年明けに、漁業者及び行政関係者を対象とした県主催の海業勉強会を開催し、水産庁による制度
説明や太地町の取組紹介を行う予定である。
今後とも、国の事業を活用しながら、漁村地域における海業の取組を支援していきたい。
要望 岩永委員
年明けに勉強会をするとのことであったが、漁業者や行政関係者等にこういったアプローチもあることを丁寧に説明してほしい。
Q 秋月委員
今年4月に建築基準法が改正され、4号特例が縮小されたと聞いている。さらに、人口減少に加え、材木を含む資材の高騰といった
悪条件が重なっており、一般住宅の建て替えや新築が激減するであろうと予測している。
今、林業振興課を中心に、木造建築物への支援を一般住宅から非住宅へとシフトしているのはよく分かっているが、今後需要減が見込
まれる一般住宅への対応についてどのように考えているか。
A 谷口林業振興課長
県では、住宅における紀州材利用を図るため、平成13年度から令和7年度までの25年間にわたり、住宅新築等における紀州材の
使用量に応じて支援を行ってきた。
この結果、合計約8400戸の住宅における紀州材利用を支援するとともに、紀州材の特長をPRしたことで、本県における住宅の木造率
は57%から81%へと格段に上昇するなど、着実に紀州材を活用した家づくりが浸透し、一定の成果を得たものと考えている。
今後の住宅における紀州材の利用促進については、木造住宅の普及と利用拡大を目的に登録された「紀州材の家づくり協力店」への
支援や、木育の推進等により、取り組んでいく。
要望 秋月委員
20年ほど前に坪60万円ぐらいで建てられていた家が、今は坪100万円以上となっているほか、平屋建てがはやっており、基礎工事に
時間やお金がかかっていることもあって、今後、かなり需要減が見込まれる。
また、今までは土地つきで3000万円で建てられていた家が、現在は4000万円から5000万円となっており、なかなか若い方が家を建て
づらくなっているとも思っている。
需要減少の問題は材木だけの話ではないが、引き続きよろしくお願いする。
Q 秋月委員
林業振興課のホームページを見ると、わかやま木の家コンテストのページが2018年で更新が止まっており、コンテストが終了して
いるように見受けられる。
引き続き実施されているのか、もし終了しているのであれば、ホームページから削除してはどうか。
A 谷口林業振興課長
わかやま木の家コンテストは、紀州材を利用した優れた住宅建築を表彰し、紀州材の需要拡大につなげる取組として、2009年度
から2018年度までの10年間、毎年開催してきた。これを県のホームページにおいて、紀州材を利用した住宅の優良事例として、紀州
材の家づくり推進のために、応募作品を掲載している。
しかしながら、ホームページでは、2018年度のコンテスト内容についても掲載したままとなっていることから、今後は、住宅の優良
事例の紹介のみの内容に修正する。
Q 秋月委員
上富田町長はマニフェストに、上富田中学校体育館を木造木質化での建て替えを検討すると明記されているほか、那智勝浦町長か
らは、庁舎移転の話を伺っている。市町村の公共建築物の木造木質化に向けた県の働きかけについて、教えてほしい。
A 谷口林業振興課長
県は、和歌山県木材協同組合連合会、和歌山県森林組合連合会、紀州林業懇話会で構成された「和歌山県木材利用推進協議会」と
連携し、市町村長等に対して、公共建築物の新築や建て替えには、積極的に木材利用を働きかけるとともに、市町村の営繕担当者を
対象に、建築物の木造木質化の研修会を開催するなど、紀州材利用の促進を図っている。
さらに、紀州材公共施設木造木質化モデル事業による経費的支援や、設計時における相談受付等、技術的支援も行っている。
今後も、市町村において紀州材利用が促進されるよう、関係者と連携しながら、働きかけを行っていく。
意見 秋月委員
いずれの市町村も、県に準じて木材利用方針を策定していながら、木造に対しての認識が薄いと思われる。私も紀州材の利用促進
を発信している立場として、特別養護老人ホーム等の民間施設の木造化に協力させてもらっているところである。
Q 秋月委員
林業試験場の建て替えについて、前回、研究推進課長からは、長寿命化で対応するとのことであったが、私としては納得していない。
木造での建て替えでないと他部局に対しても説得力がないと思われるが、いかがか。
A 小川技監森林林業局長事務取扱
秋月委員には、日頃から紀州材の利用促進に御協力、御支援をいただき、御礼申し上げる。
林業試験場の建て替えについては、紀州材の利用促進を行う立場として、1日でも早い実現に向けて精一杯頑張っていきたい。
意見 秋月委員
有言実行となるように、協力したい。
Q 秋月委員
上富田町にある熊野高校講堂の建て替え時、高校の演習林を使用した材料調達に苦労したと聞いている。他府県に比べて、和歌山県
では材工分離発注の仕組みが確立されていないと思われる。鉄骨造や鉄筋コンクリート造と違い木材は自然材料なので、大型の公共
建築物の場合、工期に間に合わせるのが難しいと思うが、公共建築物における材工分離発注の仕組みづくりについて、本来は県土整備
部が確立すべきことであるが、林業振興課としてどのように考えているのか。
A 谷口林業振興課長
公共建築物の木造木質化を進めるにあたり、材工分離発注は、木材の安定調達、工期短縮という点において、大変有効な手段の一つ
であると認識している。
材工分離発注が行われた際には、木材供給側の窓口を一本化し、構造材や内装材の種類や量によって、複数の企業で加工、納品を分担
するなど、その体制づくりが必要であり、さらに当然のことながら、納期についても責任を持って遵守することが求められ、木材供給
全体の責任を関係者全員で負うという、連帯意識を持たなければならない。
県内では、過去に田辺市において、材工分離発注を行った事例があるので、その内容を参考にして、木材供給側の仕組みづくりを促
していく。
意見 秋月委員
木材供給側の考え方は理解した。今後も、お互いに研究していければと思う。
Q 秋月委員
農林大学校林業研修部・林業経営コースの募集状況と修了生の就職状況について教えてほしい。
A 谷口林業振興課長
平成29年度の開講から令和6年度までに、55名が修了し、県内の森林組合や民間事業体等に就業しており、就職率は96%となって
いる。
また、令和8年度の募集状況については、定員10名に対し現在のところ9名が合格し、まだ定員に達していないため、2月に追加選考
試験を実施することとしている。
要望 秋月委員
本会議で山家委員長も一般質問されていたが、林業経営コースの機能強化は大事であり、定員割れのないよう、よろしくお願いする。
Q 秋月委員
紀州材の家づくり協力店について、登録店が22社であり、かなり少ないように感じるが、これから増やしていくのか。
A 谷口林業振興課長
紀州材の家づくり協力店の登録制度は、紀州材を活用した木造住宅の普及と利用拡大を目的に、登録された工務店等に対し、紀州材
をPRする垂れ幕やのぼり等を無料で貸し出し、他社との区別化を図りたいという工務店を支援するもので、平成28年度から開始した。
このため、22社という数は、紀州材を取り扱っている工務店の内数で、さらに登録拡大に向け、積極的に働きかけていく。
要望 秋月委員
しっかりお願いする。
Q 秋月委員
山家委員長を筆頭に、公共建築課と林業振興課とで高知県の木造建築物、東京都の清水建設株式会社東京木工場、及び京都府、奈良
県の木造建築物や集成材工場等へ3回の調査を行ったが、調査の成果についてどう考えているのか。また、今後も続けるのか。
A 谷口林業振興課長
公共建築課と一緒に行った調査では、公共建築物を建てる際に建築を担当する部局が、まずは木材利用が第一であるとの認識を
持って、地域材利用の推進を図っていることが実感できたこと、また、建築工事における材工分離発注について学べたことなど、様々
な収穫があった。
林業振興課では、公共建築課との連携をさらに強化し、今回の調査で得られたことを、本県での取組の中で生かせられるように、検討
を進めたいと考えており、今後も先進地調査は必要であると考えている。
要望 秋月委員
よろしくお願いする。
Q 秋月委員
今月9日に民間企業であるが、田辺市龍神村にて特用林産物の工場の竣工式があった。
当日は私も出席し、知事代理として西牟婁振興局長及び農林水産部職員が参加された。地元田辺市の市長代理や龍神村森林組合長、
また、商工会の会長もお見えになり、和歌山県議会議長、山家委員長も祝電を送られていた。
この企業は、東京都にある日本最大規模の花き卸売会社である株式会社大田花きにも納入しており、相当格式の高いところにも、和歌山
県の特用林産物を納めている。
和歌山県の枝物のシェアは日本一で、かなり良質なものがとれると聞くが、特用林産物の需要拡大に向けて、どのように取り組むか教え
てほしい。
A 谷口林業振興課長
県産サカキは、特に、色つやが良く、日持ちが良いなど、品質の良さから非常に高い評価を得ているが、近年では、さらに商品価値を
上げるため、くくり技術の向上や品質確保の研修会を毎年実施している。
今年度は、11月26日に日高川町山村開発センターにて、「サカキをはじめとする山の恵み研修会in日高川町」と題して開催し、73名が
参加された。
また、需要拡大については、サカキを通年利用している神社庁に県産サカキの品質の良さをPRするとともに、アセビについては、株式会社
大田花きをはじめとする全国の卸売市場等に対して市場調査を実施するなど、新たな需要先の確保に努めている。
今後も引き続き、特用林産物の振興にしっかりと取り組んでいく。
要望 秋月委員
株式会社大田花きの部長から、ドバイ等の海外にもアセビやサカキを納めているとの話を聞いた。
インドやネパールといった国の話も出ていた。私は来年2月に議長代理で、インドやネパールを訪問する予定にしている。貿易等の難しい
話もあると思うが、海外にも販路が拡大できればいいと思うので、お手伝いをよろしくお願いする。
Q 秋月委員
林道整備計画では、2025年から2040年までに、28路線135キロメートルの林道整備の目標を掲げている。今年が初年度となるが、今後
着実に整備していけるのか、財政も厳しいため、不安に思っている。
初年度の進捗状況や、林道整備の所管課である林業振興課長としての意気込みを聞かせてほしい。
A 谷口林業振興課長
2025年初年度の進捗状況は、県代行林道1路線と市町村営6路線を整備中である。
新規路線として着手した県代行林道については、今年度1億9620万円の事業費を確保し、路線の測量設計業務、橋梁の地質調査業務等
を実施するとともに、工事着手の準備が完了した工区から速やかに工事を発注するなど、鋭意、整備推進に取り組んでいる。
また、来年度には、新たに県代行林道1路線と、新宮市が実施する林道に着手できるよう準備をしている。
今後も、必要な予算をしっかり確保するなど、2040年までに整備する路線ごとの計画を確実に実行できるよう、積極的に取り組んでいく。
要望 秋月委員
たっぷりと予算を確保して林道整備を迅速に進めてもらいたい。
Q 秋月委員
地産地消という言葉をよく聞く。地産地消はもちろん大事だと思うが、人口が少なく、また比較的所得の低い和歌山県では、地産地消
プラス地産外消が重要であると考えるが、紀州材の地産外消の方策を伺う。
A 谷口林業振興課長
地産地消プラス地産外消については非常に重要であると認識している。
このため、県では地産外消対策として、大規模展示会における紀州材のPRをはじめ、県外の設計士を対象とした産地見学会の開催や、
PR効果の高い県外の民間非住宅建築物の木造木質化への支援等、様々な施策により、紀州材の需要拡大を進めているところである。
今後も引き続き、積極的に取り組んでいく。
Q 秋月委員
バイオマス発電への木材供給はどのような状況か。
A 谷口林業振興課長
木質バイオマス発電所へは、木の先端や根元部分、また、曲がりや傷等で製材や合板の用途に向かない低質材を供給している。
その量は、県の独自調査では、令和6年次において、県内の素材生産量約30万立方メートルのうち、約11万立方メートルが供給されて
おり、令和2年次と比較すると、約3.7倍となっている。
Q 秋月委員
戦後80年が経過し、和歌山県の山が伐期を迎えている。以前、谷委員と九州の佐伯広域森林組合を視察した際に、70年、80年という木
よりも、林齢の若い、もう少し小さな木の方が世の中では好まれるという話を聞いた。和歌山県の山では70年、80年を超える大きい木も
あると思われ、この大径材の利用が非常に難しいと思っている。
今後の、大径材の利用推進に向けた方策を伺う。
A 谷口林業振興課長
柱やはりに製材するには、その大きさにより、一番効率の良い丸太の径級が決まってくる。このため、一般的に大径材は、柱やはりと
なる部分の外側をどう利用するかが重要となる。
こうしたことから、県では大径材の利用促進を図るため、林業試験場において、1本の丸太からはりに使う平角を製材する際、その周り
の材を板材として利用するなど、どのように木取りすれば効率的なのか、また、1本の丸太から2本の柱やはりを製材した場合の強度や、
乾燥時の曲がり具合等について、研究を行っている。
今後も、さらに研究を進め、その成果を、研究発表会等を通じて広く普及し、大径材の利用促進を図っていく。
要望 秋月委員
和歌山県の山にとっては非常に重要な課題になっていると思う。試験場や、製材所も含めしっかりと、グリップしてもらいたい。
Q 森委員
商業捕鯨の状況について、3月に出港して10月に帰港するまでの間、ミンククジラ29頭、ツチクジラ4頭を捕獲したということだが、
船の中で解体し、冷凍して持ち帰っているのか。また、捕れたクジラを全て和歌山県へ持ってきているのか。
A 島村資源管理課長
基地式捕鯨業では、日本列島を北上して、東北や北海道で操業する。捕鯨砲でもりを撃ってクジラを捕獲するのだが、捕ったクジラは
船に引き揚げたり、船の側面にくくり付けて近くの港まで行き、そこで水揚げして陸上で解体するので、和歌山県まで持ち帰るのは、
捕獲した一部になる。主に太地町で、クジラの食文化があるところで販売されている。
意見 森委員
先日、私の子供が忘年会で行った居酒屋で、初めてクジラの竜田揚げを食べて、とてもおいしいと言っていた。和歌山市内のスーパー
では見る機会がなく、百貨店では目にはするが高価であり、普段は食べるのが難しいと感じる。
私も太地町に行ったときは、スーパーで買って帰ったことがあったのだが、和歌山市内でも買えるような流通になればよいと思う。
Q 森委員
知人から、カナダに温州みかんを輸出したいが検疫のハードルがすごく高いという相談を受けた。県のホームページで、表面殺菌処理
試験を県職員が行ったという資料を読んだが、農家が検疫をクリアするための表面殺菌等を自らやっていくとなるとすごくハードルが高い
と思う。今後、輸出に向けて県としてはこの問題にどのように取り組んでいくのか。
A 大石食品流通課長
まず、青果物の輸出については検疫の問題もあるが、輸送が非常に難しい。例えば船便で運ぶ場合、2週間を超えると非常に大きなロス
が発生し、貿易相手国に到着後、店頭に並んだ時には既に売り物にならないものがたくさん発生してしまうという問題が生じる。また、
無事輸送し、現地店舗に並んだとしても、輸出に係るコストが上乗せされる。和歌山県の4大果実の1つであるももは、高価格でも贈答用
等に需要がある一方で、みかんに関しては、世界に誇るべきすばらしい果実ではあるが、どの地域にも似たような柑橘類があり、そういった
マーケットで勝ち抜けるか、ということも含めて考えていく必要がある。
そういった中でも海外市場に挑戦していきたいという農家には、個別に相談に応じているが、例としてアメリカ等にみかんを輸出する場
合、果実の表面殺菌が求められており、基準を満たす溶液につけて、それを乾燥させるという作業が必要になる。これを農家が必要な機材
を買って大規模にやるとなると、大きな投資が必要となりハードルが上がるため、うめ農家が梅干しを漬ける際に使用する器材を転用すれ
ばみかんの消毒ができるだろうと考え、うめ研究所の協力のもと調査を行い、その結果を当課のホームページで公表している。
いずれにしても、県内の農家や事業者の方から、具体的な海外輸出について相談があれば、丁寧な対応をしていきたい。
要望 森委員
輸出する国によってハードルの違いもあると思うが、引き続きよろしくお願いする。
要望 谷委員
10月8日に当委員会の県内外調査にて畜産試験場へ赴き、新しくなった施設を調査した。立派な施設を造っていただき感謝するが、牛
や豚について和歌山県が良いものを作っていることをもっと発信しなければならない。先ほど森委員も発言されたクジラと同様、和歌山
県の畜産物も広く宣伝してもらいたい。
また、秋月委員も発言されたが、林業試験場と同様に農業試験場も相当古い。しっかり予算を確保し、和歌山県は農林水産業がメインで
あることを知らしめてもらいたい。
Q 谷委員
県内における磯焼け対策の進捗状況について説明してほしい。
A 岸裏水産振興課長
県では、令和5年度から令和6年度にかけて、藻場の衰退要因やその対策について調査し、有識者による検証を行った結果、水産試験場
が作出した高水温に強い海藻の株を食害魚防止カゴで保護する手法が有効であると評価された。現在、その手法を含めた調査結果を沿
海市町や漁協へ周知している。
今年度は、こうした手法を用いて、串本町2地区、那智勝浦町2地区、新宮市1地区の計5地区で藻場造成に取り組むこととしており、
移植後の生育状況等についてモニタリングを実施しながら、藻場の拡大を図っていく。
また、新たな取組として、那智勝浦町の浜ノ宮地区では、漁港内の利用度の低い場所を網で仕切り、その内側で食害を防止しながら、アマ
モ類やガラモ類の移植を開始している。
引き続き、市町や漁協と連携して、より効果的な藻場造成の支援を行うことで、県内の磯焼け対策に取り組んでいく。
要望 谷委員
スピード感をもって取り組んでもらいたい。
Q 谷委員
那智勝浦町や太地町沖の冷水塊がなくなったということだが、なくなる前はカツオやマグロが熊野灘で結構釣れて、ここ2年3年、漁業
者が喜んでいる状況である。この冷水塊がなくなると、カツオやマグロはどこかへ行くのか。
A 島村資源管理課長
黒潮大蛇行の解消のことだと考えられるが、大蛇行によって熊野灘に内側反流が生まれ、そこにちょうど浮魚礁を設置していたので、浮
漁礁についたカツオやマグロ類が、ここ数年よく釣れていたという状況である。大蛇行解消以降については、少し長いスパンでこれからど
うなるのかを見ていく必要がある。今度は逆に、カツオが紀伊水道側の浮魚礁につくような変化が起こっている。また、イセエビについても
幼生が黒潮に運ばれて、それが着底していくのだが、幼生が流れてきてから漁獲サイズになるまで2年から3年かかるので、そういったこと
も含めて今後いろいろ状況を注視していく必要がある。
Q 谷委員
スルメイカはここ数年全然捕れなかったが、今年は捕れたという話がある。そしてトラフグが千葉県沖で捕れている。千葉県の漁業者に
よると、10年前からトラフグを種苗放流しており、現在増えているとのことだが、あれだけ潮の速いところで放流しても、定着するのかな
と思うがいかがか。
A 島村資源管理課長
全国的に、これまで捕れなかったところで捕れている魚があったり、逆に捕れていたのに捕れなくなったといった報道がある。
また、国の研究機関の報告によると、ブリやイセエビなどの漁獲場所が、長い年月の間に北に行ったり南に行ったり変動するが、近年は最
も北側に位置しているという報告がある。例えばブリは、北海道で昔は捕れなかったが、2011年ぐらいから急激に捕れ始め、和歌山県でよ
く捕れるイセエビも関東や東北の方で漁獲が増えているという状況である。千葉県のトラフグが種苗放流したことによって増えたかどう
かは、知見を持ち合わせていないが、千葉県での漁獲量は2017年以降ぐらいから増加傾向にあり、2024年には過去最高の漁獲があったと
いう報告がなされている。
和歌山県では、タチウオが非常に減少する一方で、関東や東北で増えているといった報道が多く、漁場が北上していると考えている。ま
た、比較的南方系のシロアマダイやアカハタが和歌山県で増えているという情報もある。
こうした変化は、海水温の上昇が主要因であると考えられている。気象庁によると、日本近海の海水温は、世界の海水温の平均上昇率の2
倍以上の速度で上がっているという報告があり、特に近年は上昇傾向が顕著である。
また、黒潮大蛇行も関係していると思うが、大蛇行しているときには黒潮の影響がより北の方まで及ぶという報告があり、こういったこと
も漁場の北上につながっていると考えている。
要望 谷委員
漁獲が増えるのであれば、種苗放流をどんどんやってもらいたい。藻場造成も藻を増やすことが目的ではなく、魚などを増やすことが
最終的な目的なので、試験研究を含めて頑張ってもらいたい。
●山家委員長
◎議案に対する質疑及び一般質問終了宣告
◎議案に対する採決宣告
◎議案第146号、議案第177号及び議案第179号については、全会一致で原案可決
◎農林水産部審査終了宣告
◎継続審査を要する所管事務調査宣告 異議なし
◎閉会宣告
午前11時22分閉会

