平成11年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午前十時一分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
【日程第一 議案第百二十号から議案第百四十六号まで、並びに報第四号】
【日程第二 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、議案第百二十号から議案第百四十六号まで、並びに地方自治法第百七十九条の規定による知事専決処分報告報第四号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
九番坂本 登君。
〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 皆さん、おはようございます。
議長のお許しを得ましたので、一般質問をさせていただきます。
まず、この権威ある県議会において質問の機会を与えていただき、登壇できましたのも、私を支えていただきました多くの支援者の皆さんのおかげであり、心から感謝を申し上げます。したがいまして、私の質問は、単に私個人のみの考えではなく、支援していただいた皆様方の意見でもあり、支援者の皆さんと一緒にこの議場で質問しているものと受けとめていただき、当局の誠意ある、心のこもった答弁をお願いいたします。
「上杉鷹山」を書いた作家・童門冬二は、もう一方で肥後の名君「細川重賢」を書いております。細川重賢は、長い部屋住みの身から一転して藩主となるわけでありますが、藩主になった彼は、参勤交代で江戸からふるさとに帰るときも、火の車になっていた藩財政のために借金の取り立てから逃れ、家臣ともども藩邸の裏門から逃げるように出ていったと言われております。その彼が、藩の財政を再建するために、意識の壁を打ち破るために、保守的な家臣から「変わり者」とまで言われ、藩を追われた家臣をもかばい、その者の意見にも耳を傾け、苦しい財政を立て直すために、肥後の特産品のハゼのろうの増産に努め、これを商品化し、藩財政を潤わせたこと、いわゆる殖産に努め、またそのためのかんがい治水の土木工事、さらには遠い将来を見据えた人材育成、藩の学校をつくることでありました。紹介したこの小説は、今まさに和歌山県にも当てはまることであります。
バブルがはじけて企業倒産の続く中、財政状況が最も厳しい中で、名君とも言われる西口知事がこの難局をどう切り抜け、二十一世紀にどうつないでいくのか、本県の命とも言える農業政策をどのように打ち立てていくのか、和歌山に住んでよかったと二十一世紀を担う若者に言ってもらえるような国づくりをどうするのか、大きく問われるところであろうかと思います。
前段で申し上げた本県の特産物とは何か、それは梅であり、ミカン、カキ等であります。その梅産業は、今二十一世紀に向かってまさに立ち枯れをしようとしています。私の生まれ育った南部郷は、梅の里とも言われます。そのうち南部川村では、村の総人口に占める農家人口は約七七%と村全体が梅の栽培や加工等、梅産業に何らかの形でかかわっており、全国でただ一つのうめ課を設置する村でもあります。全国的に見ても圧倒的なシェアを誇る本県の良質な梅は、昭和五十年代半ばからの経済成長のもとに、健康食品ブームに乗って消費拡大が図られ、紀州南部の梅としてブランド化されました。
しかし、昭和六十年代に入って私の地元では梅の生育不良問題が持ち上がり、その後平成に入り被害が急に広がり始め、今や梅の立ち枯れは南部郷全体で五万八千本とも報道されています。この数字は、一昨年の二倍以上に、また四年前の約六倍にと広がっています。これは、一ヘクタール当たり約三百本の植栽として、立ち枯れ面積は約二百ヘクタールに相当し、その梅園がまさに消滅しようとしているわけであります。この面積は、南部郷すべての栽培園千八百ヘクタールの九分の一に当たると換算できます。したがって、このままいきますと九年後には南部郷すべての梅が消えてなくなることになります。この梅立ち枯れ問題については、県当局におかれても県政の重要課題としてとらえ、暖地園芸センターを中心に試験研究機関を挙げて取り組み、また日本を代表する専門家を集めて県うめ対策研究会を組織し、総合的に取り組まれております。しかし、この問題の原因究明につながる明るい兆しはいまだに見えてこないのが現状であります。
南部川村では去る十月二十七日に、村会議員十四名全員と村役場職員が農林水産省を訪れ、梅生育不良の原因と対策等について陳情活動を繰り広げ、地域経済に及ぼす影響や梅農家に募る危機感を強く訴えたところであります。これに対して農林水産省からは、国としても重要課題として受けとめており、今後県とも連携を図り積極的に取り組んでいきたいとの回答を得たということであります。
また、同村の区長十九名全員が大気汚染問題に悩まされた福井県芦原町を視察に行きました。同町の説明では、北陸電力の火力発電所二基、合わせて六十万キロワットを昭和四十七年より稼働させており、その後、十キロメートル離れた地域で杉や松などの樹木が枯れ始め、住民が火電の影響ではないかとの心配から、町や議会が中心となり調査に乗り出したと言われております。その間、住民の健康調査、赤外線カラー空中写真撮影による植物の活力調査、植物の生態調査などを行い、原因究明に取り組んだ結果、火力発電所から十三キロメートル離れた地域の杉の平均活力度が最も低かったなどのデータが得られたということであります。ちなみに、この発電所の規模は御坊発電所の三分の一程度ということであります。そして、その因果関係の究明には十分に至らなかったものの、北陸電力では住民の声を重視し、稼働から七年後の昭和五十三年に脱硫装置を設置したところ、その後その被害が減少したということであります。
そこで、本県の話に戻りますが、新聞報道でもありましたように、南部郷では梅枯れ被害が一年間で五万八千本以上となっています。私は、梅農家に生まれ、今もなお梅栽培をしておりますが、梅の成木となりますと、一本の木でコンテナ約十五杯程度の収穫が見込まれます。コンテナ一杯で一万円から二万円となりますので、五万八千本の立ち枯れは実に五十八億円から百十六億円の損害となり、加えて苗木一本が千五百円として購入代約一億円となり、さらに労賃を入れますと大変な損失になります。急速に広がる梅の立ち枯れは、農家の所得を減少させ、もうこれ以上は梅農家の壊滅を意味します。県下で唯一とも言える特産品の梅で生計を立て、若い人たちもまじっての活気ある南部の里、そこには当然後継者も育っております。若者が県外に出ることもなく地元に定着し、梅栽培に従事する私たちの村は、過疎に悩む県内他町村からはうらやましがられておりますし、当然、県行政の目指す二十一世紀のあるべき和歌山の姿でもあります。梅の立ち枯れが急速に広がる中で、今梅農家の後継者たちは、僕らの代にはもう梅が枯れてしまっているのではないかといった悲観的な若者が少なくありません。私の家庭でも、子供たちがそのような会話をしています。本年の五万八千本の立ち枯れは梅全体の一〇・七%に当たり、このままさらに広がるのではないかとの心配から、今、南部郷の梅農家の若者は職を求めてふるさとを離れようとしています。
こんなときに、生育不良の原因として、水不足説、土壌悪化説、病原性バクテリア説、大気汚染説、モグラ説、さらには県当局は実のならせ過ぎ説まで挙げています。多くの説を並べ、複合説を唱えて、もう長いと思います。このままでよいのかどうか。緊急の措置として、福井県芦原町に見られるように、脱硫装置を直ちに設置し農民を安心させ、さらに継続してもろもろの説を一つ一つ解明していく方法をとるべきではないのか。地元では、御坊火電が稼働してから梅の立ち枯れが多く見られるようになった、排出するばい煙が気流に乗って波紋状に広がり、ちょうどその下に位置する私たちの梅園が帯状になって立ち枯れしているといった声もあります。農民の長い生活から出た、この知恵や意見を決して軽視してはならないと考えます。自然の変化は、私たちの科学知識等をはるかに超えた微妙な変化をしていることに留意してほしいと思います。
さきの本会議における島本農林水産部長の答弁での、発電所のばい煙が大気拡散中に化学的変化が生じるため、採取したガスを果樹に吹きつけても立ち枯れした果樹と同じ条件ではないとの見解は、私たち農民にとっては理解しがたく、納得のできる答弁と思っていません。ばい煙の化学的反応はもちろんのことです。さらに、ばい煙と水との関係、すなわちばい煙が雨水とまざるケースもあり、被害地域の池の水を採取し検査することや、この雨水が土の中に入り込み、これが化学反応を起こして長年にわたって樹木に影響することの想定も可能であります。このように、あらゆることを駆使して調査すべきであると考えます。一つ一つの問題を解決していくべきであると考えますが、いまだ農林水産部長のような、やる意思があるのかないのかわからないような答弁を聞いて、本当に焦りが出てきています。
こうした原因究明が進展しない中、関西電力の御坊第二発電所の公有埋め立てが国の認可を受け、実質的に第二発電所の着工がスタートを切りました。関西電力は、近々、県や御坊市、美浜町との四者の間で環境保全協定を結ぶ予定になっております。この中には、硫黄酸化物の排出濃度や窒素酸化物を規制する大気汚染防止対策、重油を初めとする環境ホルモンが含まれる新しい燃料のオリマルジョンの漏えいを未然に防ぐ対策などが盛り込まれていると聞いております。しかしながら、現実に排出されるばい煙が、視察に行った芦原町のように立ち枯れの原因ではないかと懸念し、不安の大きい印南町、南部町、南部川村、田辺市などは、環境保全協定の当事者としてテーブルに着いておらず、さらに地元住民の不安と怒りが募る一方であります。
現在、百八十万キロワットの発電機が稼働し、百十万キロワットの発電機四基が二〇〇七年から二〇一五年までの想定で順次稼働するとなると、梅栽培地域では大気汚染銀座になるのではとの不安がより一層深刻なものとなってきています。関西電力は、埋立免許交付後の記者会見で、最高レベルの脱硫装置などを導入したい、また油の漏えいをしないよう万全を期したいと語ったと報じられていますが、現在稼働中の発電所にも脱硫装置が取りつけられていないのが現状であります。
そこで、知事及び関係部長にお伺いします。
一点目として、御坊発電所は平成十四年をめどに脱硫装置を取りつけ完成すると言っておりますが、現状はわずか一年間で五万八千本の梅立ち枯れのこの現象を直視し、直ちに脱硫装置を設置し、農民の不安を取り除くために関西電力に対して強力な指導をすべきであると考えますが、その決意をお伺いいたします。
あわせて、梅立ち枯れの経済的打撃をどう受けとめているのか、また全国一の後継者を持つ梅農家の若者が県外へ流出しつつある現状、活気ある我が町が近い将来過疎化される現状に対してどう考えるのか、知事の思い、すなわち和歌山に住んでよかった、若者の定住する過疎のない和歌山と逆行する現象をどう受けとめているのか、お伺いします。
二点目として、土壌改良と水源の確保であります。
保水性や腐植性などに富んだ良質な土を確保するためにパイロット事業の谷埋め方式を見直し、表層土壌の風化の進んだ土を確保する乗せかえ方式をとり、今後のパイロット事業を推進するに当たって現有の造成地への客土を導入していける事業化を図り、補助制度の創設などを採用してはどうか。
あわせて、干ばつ等に対応するため水源の確保について、南紀用水の積極的利用の促進を図る施策も必要であるかと思いますので、検討をお願いします。
三点目として、研究指導体制の強化であります。
農業改良普及所の現行のセンター集中方式と従来の駐在方式を見直して、生育不良問題が解決するまでの間、一部駐在方式の弾力的運用を図るよう国に働きかけるなど、両方式のよい部分を採用してはどうか。
梅栽培では、各地域ごとに土壌、気流等が異なるため、それぞれの農家との密接した関係を維持するために駐在方式が望まれ、逆にセンター方式とはいえ、梅の着果率等の発表は日高地方と西牟婁地方に分離されているため窓口の一本化が望まれます。このようなことから、再検討の必要性を強く感じます。
以上、ふるさとの皆さんの悲痛な叫び、もがき苦しんでいる現状を思い浮かべていただき、県当局の誠意ある、そして心のこもった答弁をお願いします。
次に、教育について質問します。
先ほども紹介しましたように、細川重賢は、人材の育成は藩の将来にとって最も大事であると考え、苦しい財政のもとで学校をつくり、教育をしたと言われております。今、県財政の厳しいことはだれもが認めていますが、このようなときにこそ和歌山県の将来を見据えて教育をしておくことが大切であると考えます。
私も一年前まで、南部高校PTA、県高等学校PTA連合会長を務めさせていただき、PTAの立場から学校に協力し、また県教育委員会とも話し合ってきました。
教育委員会は、全国的にもおくれている和歌山県の教育を全国のトップにまで引き上げたいとの意気込みで、授業日数をふやすことや全国で初めての総合学科の設置、単位制をつくったりして、特色ある学校づくりをしてきました。また、先生の意識を変えたいということで、全国産業教育フェア、全国分校サミット、アウトドアスポーツ等多くの全国大会を開催し、その成功に向けて私たちPTAも全面的に協力をしてきました。
特色ある学校づくりについては、十九の高等学校に二十五学科をつくり、全国で初めての総合学科についても、和歌山高校に次いで有田中央高校に設置し、紀北地方、中紀地方にそれぞれ一校設置しています。この総合学科は、生徒が学びたい学科を自分で選んで勉強できるということで、生徒は生き生きと勉強し、生徒指導の問題はもちろん、遅刻や中退、留年も減り、学校が生まれ変わったと言われております。このようなすばらしい学科を紀南地方にも一校設置するべきであると思います。私は、教育については、紀北地方であろうと紀南地方であろうと平等にそのチャンスが与えられるものであると考えます。
本県の教育は大変進んだと思います。しかし、特色ある学校づくりももうこれで終わりかというとそうではなく、今国が言っている、そして他府県ではもう既に設置している中高一貫教育が必要ではないかと考えます。高校受験をなくし、子供が生き生きと中学校、高等学校で学べることは、単に子供だけではなく親にとってもよい制度のように思います。中高一貫教育を行う場合、校舎をどうするのか、市町村と県との関係をどうするのか、種々の問題もありますが、本県の子供の将来を考えたとき、受験戦争のない、しかも子供が生き生きと学べる学校がぜひ必要ではないかと考えます。新しい学科の設置や特色ある学校づくりについては一応めどもつき、これからどう定着させていくかの段階になっています。
しかし一方、和歌山県の教育に大きくかぶさってきている課題もあります。それは、いじめ、不登校、学校崩壊の問題であります。これらの問題は年々増加していると言われていますし、不登校を挙げても、平成十年度は小中学校合わせて千五百四十八人、前年度比一・〇七倍となっています。教育委員会は、この問題を深刻に受けとめ、教育最大の課題として位置づけ、その対策事業費を計上した、そして不登校への対応として、スクールカウンセラーを十八校に、教育相談員を中学校六十六校に配置し、相談体制の充実を図ってきていると九月三日の読売新聞に報道されています。また、授業中に教室で立ち歩く、奇声を発するなどで学級が成り立たないといった学級崩壊の問題が増加しています。この学級崩壊の要因の七割が教師の指導力不足であることが国の調査で明らかになっていると、九月十四日付の産経新聞に載っています。学級崩壊の要因が一番多いのは、先生の学級運営に柔軟性を欠いている、次いで授業の内容や方法に不満を持っている、さらにいじめ、問題行動への適切な対応ができない等となっています。このような問題を解決するために、県は種々の研修を行い、教員を配置して教育の相談体制の充実を図ってきていますが、県内研修や教育相談員を配置すると同時に、こうした問題を解決するために実績を上げている先進県の方法や手段等を学ぶことも大切であると思います。
私が県高P連にいたとき、教育委員会は、奈良県、三重県との三県知事会議の後、三県の教育長会を開き、その席で和歌山県から、互いの県から学び合うために指導主事の先生や学校の先生を交流していこうとの提案をし、合意したと聞いています。こうした人事の交流で他府県から学ぶことは大切であると思います。教育委員会は、去る三月に広島県と人事交流をしたと発表しております。このことは、文教常任委員会でも話し合われたと伺っています。学校で起こっているいじめや不登校、学級崩壊などは、単に学校だけではなく家庭や地域社会も連携して取り組むことが大切であります。しかし、何といっても一番大事なのは先生の指導力を高めることであり、急がなければなりません。先生の指導力が高まることによって子供が先生を尊敬しますし、先生と生徒の人間関係も深まります。そして、その中でこそこれらの問題が未然に防げるものだと考えます。
また、これらの問題は、一学級の人数が多くて先生の目が届かない、先生と生徒の距離が離れてしまうのでいじめ等が起こることも考えられます。そのため、現在の一学級の生徒数を減らしていくことが大切であります。一学級の生徒数を四十人から三十五人に、三十五人から三十人にすることにより授業が教えやすく、わかりやすく、また先生が生徒を十分観察できることも確かであります。さらに国は、一学級の生徒数を四十人にするという法律を廃止し、学級人数は各都道府県の自主性に任せると言っていました。このことは評価すべきですが、同時にこれからは各府県の教育委員会の姿勢が問われることにもなろうかと考えます。
そこで、教育長に次の五点について質問します。
一点目として、さきの議会で教育長は、総合学科を全県的な視野で設置していきたいと答弁しています。昨年、串本高校が、職員会議で決定し、教育委員会へ総合学科を設置してほしいとの申請をしたが許可が出なかったと聞いています。なぜ紀南地方に設置できなかったのか、お伺いします。
二点目として、和歌山県で中高一貫教育をする考えはあるのか。この中高一貫教育をしていくとき、現行の中学区制をどう考えていくのか、学区制について基本的な考え方をお伺いします。
三点目として、いじめ、不登校、学級崩壊の数は全国的に見て本県はどうなのか。全国で一番高いと一部新聞でも報道されたと聞きますが、多いとすればどこに原因があるのか、そしてその対策についてお伺いします。
四点目として、教員の指導力を高めることは急務です。そして、そのために先進県に学ぶことも大切です。そこで、さきの三県教育長会の合意を踏まえて、その後、奈良県、三重県との間でどのように計画的に人事交流をしているのか、さらに広島県との人事交流で、先生に何を研修させているのか、またその期間はどれくらいか、お伺いします。
五点目として、和歌山県で四十人学級の数はどれくらいか、四十人以下にする考えはあるのか、その考え方をお伺いします。
以上、教育についての質問を終わります。
次に、道路整備についてお伺いします。
日高地方の道路整備については、現在既に近畿道紀勢線の御坊南部線が平成十四年の完成を目指して急ピッチで工事が進められています。南部郷の住民の中には、インターチェンジに通じる周辺アクセス道路に渋滞が生じ、生活道路としての問題が起こるのではないかと不安を持つ声もあるものの、道路の供用に伴って地域経済の活性化、利便さの向上、さらには観光等の地域開発へとつながる期待が大きく膨らんでいます。
南部町には千里海岸、龍神村には龍神温泉、ともに県内外において名高いものではございますが、その二つをつなぐ南部川流域は、自然に恵まれ、風光明媚な景勝地を数多く擁してはいるものの、和歌山市方面、京阪神方面の方々の知名度といった点では大きく劣っております。その原因として、やはり交通道路としての整備の立ちおくれが挙げられます。梅製品、かんきつ類、シイタケ、備長炭と、この区間では数多くの特産品を持っております。梅の里の温泉開発も計画されています。南紀熊野体験博によって、オープンエリア方式のノウハウもつけていただきました。魅力あるこの地方の活性化にただ一つ欠けているものは道路整備であります。道路整備が進めば、これからの農林振興、広域観光など地域経済の活性が見込まれます。住民の願いは大きいものであります。
二十一世紀を迎えるに当たり、宝の眠る龍南線の道路整備計画について基本構想をどのように打ち立てておられるのか、お伺いします。いわゆる龍南線、国道四百二十四号線の整備の中で、特に早期実現が望まれる区間が二つあります。
第一点目として、清川切目辻にあるトンネルであります。このトンネルは、地元において「でこぼこトンネル」と呼ばれるほど老朽化著しいものがあります。観光バスや大型トラックが通ると対面通行ができません。付近の道路も狭いため、Uターンし、ルート変更を余儀なくされる不便さであります。また、トンネル内壁の吹きつけは劣化しており、天井部分が狭隘であり、暗く、歩道もありません。通行において、またトンネルの保守整備の面から言っても、その危険の大きさは申すまでもありません。このトンネルの不便さの改善と事故防止の観点から整備の必要性をご賢察いただき、早期改修に向けての計画をお願いします。
二点目に、南部川清川地内であります。この区域において、農道の整備の方が国道四百二十四号と比べて進んでおります。龍南線を日常利用している地域住民でさえも、この区間は国道からこの農道にルートを変更しています。国道とは名ばかりで、この状況であれば、将来、観光客や訪問客が龍南線を通行する際、要らぬ混乱を招き、事故も懸念されます。このため、地元の方々より早期に整備してほしいとの要望も強く、今後の整備計画の状況についてお伺いします。
このほか、龍南線の一方の起点となる南部郷一帯の道路整備、特にハイウエー近畿道紀勢線の関連でお伺いします。近畿道紀勢線の平成十四年供用に伴う南部平野の中心に位置するインターチェンジ周辺のアクセス道路について、前段で申し上げましたように、生活道路との関連、観光シーズン等の渋滞、旧国道への連結等、地元と十分連携していただき、供用時に混乱のない形でアクセス道路の整備を図る必要から計画に万全を期していただきたい。また、その計画の進捗状況についてお伺いします。
以上、四百二十四号の二区間と関連した整備として三項目を個別に申し上げましたが、四百二十四号線の特に南部川流域全線にわたる道路整備を早期に着工していただきたい。そして、幹線道路として、地域経済の発展、また来る二十一世紀における新しい観光振興の観点からも全線開通を一日も早く実現することは、南部郷、龍神村村民はもとより、県全体の均衡ある発展に欠かすことはできません。
どうか、全線開通に向けての道路整備を一日も早く実現していただきたく、県当局の今後の積極的な取り組みを最後にお願いします。
以上、私の質問を終わります。
○議長(下川俊樹君) ただいまの坂本登君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事西口 勇君。
〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 坂本登議員にお答えをいたします。
お話にございました細川重賢のようにはまいりませんけれども、精いっぱいの努力をいたしたいと考えてございます。
梅問題に対してご質問がございましたが、心して拝聴させていただきました。お話にございましたように、南部郷は古くから梅とともに生きてきた地域であり、私も隣村の出身でございますのでよく承知をしてございます。
この生育不良は、農業経営を大きく左右させる重大な問題であると認識してございまして、私も大変心を痛めておるところでございます。こうした観点から、梅の生育不良につきましては、第二期県政の最重要課題として位置づけまして、この問題の早期解決に向けて取り組むとともに、生産振興はもちろん、流通加工にわたる各般の施策を通じて地域経済を支える梅産業の振興を図り、若者が二十一世紀に希望の持てるふるさとづくりのために、今後とも精いっぱいの努力をしてまいりたいと考えてございます。
他の問題につきましては関係部長から答弁をいたしますけれども、御坊発電所の脱硫装置などにつきましては、関西電力を強く指導してまいりたいと考えてございます。
次に道路整備の問題でございますけれども、和歌山県内の幹線道路の整備方針といたしましては、県内二時間行動圏構想を基本に進めているところでございます。このうち議員ご指摘の国道四百二十四号の龍神─南部間につきましては、近畿自動車道紀勢線と第二県土軸を結び、三─五軸の横軸の一つを形成する重要な路線でございます。また、龍神・南部地域の域内六十分構想を実現するために軸となる道路でございまして、近畿自動車道紀勢線の南伸とともに、京阪神、和歌山方面から南部川流域、さらには龍神村への時間短縮を図りまして、本地域の観光及び産業の発展などの地域づくり、日常生活の利便性の向上を図る上に必要不可欠な道路と認識してございます。今後は、事業中のインターアクセスの整備促進、沿道集落の利便性を高める区間から順次整備を進めていきたいと考えてございます。
以上であります。
○議長(下川俊樹君) 企画部長安居 要君。
〔安居 要君、登壇〕
○企画部長(安居 要君) 御坊発電所に脱硫装置を設置する計画については、御坊第二発電所計画に関連し、大気環境保全対策について、事業者である関西電力に対して強く要請した結果、関西電力が発電所全体の大気環境保全対策の観点から、既設御坊発電所の三号機へ脱硫装置を設置するとともに、一、二、三号機の脱硝装置及び電気集じん装置の改善を行うことになりました。
脱硫装置につきましては、現在、脱硫装置本体の設計及び設置のための工事が進められており、平成十四年度に完成する予定でございます。また、脱硝装置及び電気集じん装置の改善につきましては、定期検査にあわせて順次工事が行われており、二号機については既に終え、三号機は現在実施中であり、来年度には一号機についても完了する計画で進められてございます。
先ほど知事答弁にもございましたように、今後、私どもといたしましても、計画に沿って実施していくよう強く指導してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 農林水産部長島本隆生君。
〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 坂本議員の梅の生育不良対策につきましてお答え申し上げます。
まず、梅の生育不良対策としての土壌改良と水源の確保についてお答えをいたします。
梅の栽培には良質な土や水の確保が望ましいと考えてございますが、本県のように急峻な地形を平たんな農地にする造成事業では、表土を流用するためには造成地の外に仮置きをするなどの工法が必要となります。また造成地への客土につきましても、近隣で良質な土が大量に確保できるかどうかなどの問題があります。いずれも補助事業の適用が可能ですが、事業費が相当にかさむため、受益者と十分協議しながら、よりよい農地づくりを進めてまいりたいと考えてございます。
次に南紀用水につきましては、現在県営事業として施行中であるかん水が可能な部分は干ばつ時に対応ができるよう体制を整えてございます。今後とも、管理団体の南紀用水土地改良区とともに、早期に効果が発揮できるよう事業推進に努めてまいります。
次に、研究指導体制の強化についてでございます。
農業改良普及センターの体制につきましては、高度化、多様化する課題に対応するため、専門性と地域性をあわせ持った広域普及体制をとっております。特に県農政の最重要課題である梅生育不良対策のため、日高、西牟婁両普及センターにおきまして、それぞれプロジェクトチームを編成してございます。このチームを中心に、試験研究機関や地元の梅対策協議会等と連携を密にしながら、生育不良樹の実態調査や樹勢回復モデル園の設置、並びに現地検討会を開催するなど、普及組織を挙げて取り組んでいるところであります。
なお、着果率の調査に当たっては統一基準に基づいて行っておりますが、今後とも農業者のニーズに対応した普及体制を検討しながら普及活動の強化に努めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 私からは、まず四百二十四号の改良についてお答え申し上げます。
国道四百二十四号では、南部町南道から南部川村徳蔵地内で南部拡幅工区と南部川村西本庄から島之瀬地区内で南部川谷拡幅工区の整備を進めており、投資効果の早期発揮ができるよう集中投資を行っているところであります。清川地区内の改良につきましては、事業中の南部拡幅工区と南部川谷拡幅工区の事業進捗を見ながら事業化に向けて努力してまいります。また切目辻トンネルの改良につきましては、現況交通量から判断して、当面、現トンネルの補修で対応してまいりたいと考えております。
今後は、将来の交通需要、さらには周辺道路の進捗等を勘案しながら検討してまいりたいと考えております。
ご要望の区間の当面の対策といたしましては、特に通行の支障となる箇所を局部改良等で対応してまいります。
次に、南部平野内のインターチェンジ周辺アクセスについてお答えします。
近畿自動車道紀勢線の御坊から南部間につきましては、現在早期開通を目指して鋭意事業が進められているところでございます。その開通時の端末インターとなる南部インターから国道四十二号への主要なアクセス道路としては国道四百二十四号となります。
国道四百二十四号につきましては、南部拡幅として国道四十二号から南部インターまで千五百五十メートルを平成九年度に事業着手し、現在、用地買収を重点的に進めております。開通時に交通渋滞等のないよう、国道四百二十四号を初め県道上富田南部線等のアクセス道路について、今後とも地元の協力をいただきながら事業の促進を図ってまいります。
以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 坂本議員の教育に関する五点の質問に対してお答え申し上げます。
まず総合学科の紀南地方への設置に関してでございますが、本県では、平成六年度に和歌山高校に、九年度に有田中央高校にそれぞれ総合学科を設置し、多様な選択科目の中から、生徒が興味、関心や進路等に応じて科目を選択し、主体的に生き生きと学習に取り組むなど、個性を伸ばす教育が実践され、大きな成果を上げてきております。
紀南地方においては、従前から田辺、西牟婁地方の中学校PTA等の皆さん方から要望が出されていることは十分承知しております。今後も、引き続き総合学科の計画的な整備を進めてまいりたいと考えているところでございます。
次に中高一貫教育についてでありますが、本年十月現在、全国では四十二都道府県、三指定都市で二百五十七校が国の指定を受け、実践研究を行っております。また、本年四月から宮崎、岡山、三重の三県において中高一貫教育が始まっております。
本県では、これまで四つの地方で中・高連携推進支援モデル事業を実施し、英語や数学の授業を中高合同で行ったり、生徒指導や進路指導について協議するなど、これまで以上に円滑な連携が図られ、多くの成果を上げてきております。こうした本県独自の実績を踏まえ、庁内に中高一貫教育検討プロジェクトチームを設置し、全県的な視野から検討を行ってきております。
その中で、まず古座、古座川地域の中学校と高等学校の活性化を図ることを大きなねらいとして、連携型の中高一貫教育のあり方について研究を進めることといたしました。
また、学区制との関連につきましては、今後の重要な検討課題と考えております。
次に、いじめ、不登校といわゆる学級崩壊についてお答えいたします。
少子核家族化や情報化などが進展し、子供たちを取り巻く状況が大きく変化する中で、こうした問題が発生してくる背景には、学校、家庭、地域社会などさまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられます。
本県におけるいじめの状況につきましては、平成十年度は百十六件でピーク時と比べて大幅に減少しており、全国的に見ても低い状況にございます。しかしながら、不登校につきましては、近年増加傾向を示しており、平成十年度は小中学校合わせて千五百余名を数え、全児童生徒に占める割合は全国的にも高く、まことに憂慮すべき状況にあると認識いたしております。
このため、臨床心理士の資格を持つスクールカウンセラーや心の教室相談員を派遣するとともに、教育相談主事を県内八地方へそれぞれ二名配置するなど、不登校児童生徒の心の対応についても方策を講じているところであります。さらに、各学校における教育相談体制の確立、並びに学校、家庭、関係機関等の連携協力体制の強化を図っております。
今後も、こうした取り組みを一層進めるとともに、児童生徒一人一人が充実感を持ち、生き生きと学ぶことのできる魅力ある学校づくりに努めてまいりたいと考えております。
続いて、いわゆる学級崩壊につきましては、平成十年度で、本県の小学校十一校十三学級で授業が成立しない状況があると報告されました。これらの学校では、校長、教頭の指導や他の教員とのチームティーチングなどによる指導方法の工夫改善、さらには保護者等との緊密な連携により、大半が落ちついて学習できる状況となってまいりました。
議員ご指摘のとおり、こうした課題は教員の指導力に負うところも大きいことから、教育研修センター等において教員の資質の向上に取り組むとともに、地域や家庭との連携を含む多面的な取り組みを進めてまいる所存であります。
他県との人事交流についてでございますが、教員が異なる教育風土を体験し、視野を広めることにより資質向上を図るとともに、本県教育の活性化に資する上で意義あるものと考えております。
これまで相互に協議を重ねてまいりました奈良県、三重県との三県間では諸条件が整うまでに至らず、現在のところ実現しておりませんが、広島県との間で、今年度からまず二年間の予定で中学校一名、高等学校一名の教員計二名を互いに派遣し合っているところであります。現在、派遣している教員の研修の成果や受け入れ校での評価を見きわめながら、三重、奈良との三県間の交流を含め、今後のあり方についてさらに検討を加えてまいりたいと考えております。
次に、一学級に四十人の児童生徒が在籍する学級は、現在小学校が四十一学級で小学校の全学級に占める割合は一・六%、中学校では七十九学級で七・一%となっており、その多くは三十九人以下学級でございます。
また、学級編制基準を三十九人以下にするいわゆる弾力化につきましては、中央教育審議会答申で提言されたことに伴い、現在国において教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議を設け、平成十三年度以降の教職員定数や学級編制基準のあり方について検討がなされていると聞いております。
県といたしましては、全国都道府県教育長協議会等を通じて、個に応じた多様な教育の充実や新たな教育課題に対応するため、次期教職員配置改善計画を早期に策定することを要望しているところであり、国の動向を見守りながら対応してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
九番坂本 登君。
○坂本 登君 ありがとうございました。
しかし、教育長の答弁には全く誠意がなく、唖然としています。私は、PTAの立場でこんな教育委員会に協力してきたかと思うと残念に思います。
四点について、再質問します。
私は、串本高校に総合学科を置くことを許可しなかったのはなぜということ、紀南地方に設置しなかったのはなぜかと聞いているんです。答えになっていません。
二番目に、中高一貫教育をする場合、その学区制をどう考えているのかと聞いているんです。
三番目に、不登校が全国一と言われているその原因と対策を聞いているんです。答えになっていません。
さらに、四十人学級についても、国が県の自主性にと言っているのに、国の動向を見てと答えている。これでは答えになっていません。まことに残念です。
再質問を終わります。
○議長(下川俊樹君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 坂本議員の再質問にお答え申し上げます。
まず総合学科に関する件でございますが、確かに串本高校から要望がございました。しかしながら、さまざまな検討をする中で、予算的な事情も一部にはございましたし、年次的な問題もございました。結果的には成立に至らなかったことは大変残念であると考えております。
今後、紀南地方への総合学科の設置をどう考えているかということでございますけれども、今まで一校目、二校目を進めてきた経過の中から、三校目はやはり紀南地方を十分にその視野の中に入れて、できるだけ早期に設置できるように努力してまいりたいと考えております。
それから中高一貫教育と学区制の関係でございますが、現在きのくに教育協議会で検討しております学区制は全県的な普通科についての学区制の問題でございます。中高一貫教育は、先ほど申し上げました古座地域では普通科の学区制でございますので、そのこととの関連の中で十分な課題意識を持って研究していきたいと考えております。
次に不登校につきましては、先ほど申し上げましたとおり、非常に多い状況にあります。この原因というご質問でございますが、非常に難しい要素がたくさんありまして、一概にこれが唯一の原因だと申し上げることは、残念ながら現段階での分析がそこまでは至っておりません。今後とも、各学校の細かい状況を十分把握しながら、相談体制の対応を考えながら、さらに勉強してまいりたいと思っております。
それから学級定員を弾力化する問題でございますけれども、現在、小中学校の場合は教職員定数配置に関する法律がありまして、その弾力化の方向が今ようやく示されてきている。ただその場合、どういう弾力化、人数を減らすかということに伴って、教職員定数の再検討が必要でございます。このことは、教職員の人件費の問題もございますので、国の動向を見ながら和歌山県としての最も望ましいあり方を研究していくということは当然でございまして、このことを抜きに、今の状況の中で、いつから、どういう形で人数を減らすかということは、残念ながらそこまでの段階に至っておりません。これは全国的な課題でもございますので、それぞれの関係府県、全国的な教育長協議会、並びに教育委員長協議会等との連携を図りながら和歌山県としてのあり方を追求してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。