平成10年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○議長(下川俊樹君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○議長(下川俊樹君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 41番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 議長のお許しをいただきましたので、以下、一点だけ一般質問をやらせていただきます。
 和歌山下津港港湾計画の修正についてであります。
 昨年九月議会で雑賀崎沖の埋め立てについて問題提起をさせていただいてから、同年十二月議会、そしてことし六月議会と計三回の質問を行って、県の港湾行政を問うてまいりました。その間、地区住民を中心に埋め立て論争が一気に大きくなり、景観検討委員会の論議も三回を重ね、ようやく昨年九月十八日の県地方港湾審議会で承認された和歌山下津港港湾計画の待望していた見直し案が提示されました。去る十一月二十八日、和歌山下津港本港沖地区景観検討委員会において、県は番所の鼻から大島との重なり線を基準に二十度の角度を考慮して、従来計画より埋立予定地を北へ九百メートル離し、面積も約三分の二の七十から八十ヘクタールに縮小させて、大島前方へ南西に突き出た分をなくす修正案を提示し、了承されました。
 私も、修正案の形状図、合成写真を新聞等で見せていただきました。原計画の、双子島の島々をどうだと言わんばかりに威圧していた突き出しはなくなり、一番心配していた沖合の上流のせきとめは最小限にとどまったように感じます。約九百メートル後方におさまった緑地帯が大き目の第二の番所庭園のような景観に近くなるよう、県におかれてもさらなる景観への配慮を望みたいと思います。また、大きなポイントであったと思いますが、番所の鼻からの眺望が、万葉に歌われた加太、田倉崎、友ケ島を望み見られる範囲になっております。もちろん、自然景観だけを考えれば、かけがえのない海面の埋め立てなどしない方がよいに決まっております。しかし、和歌山県、和歌山市の将来の発展を考えればこそ、高速交通体系の整備拡大を前提にした和歌山下津港の本格的外貿コンテナ港への港湾整備はなくてはならないものであります。
 今回の港湾計画の目標年次が、ざっと見て二〇一〇年から遅くても二〇一五年とするならば、紀淡海峡大橋による紀淡連絡道路の開通と京奈和自動車道の完成、そして第二阪和国道全面開通、南伸された湾岸高速と紀淡連絡道路との接続、さらには紀淡道路と和歌山下津港を結ぶ湾岸産業道路の整備といった高速交通網の整備によって、必ずや和歌山市域を中心とした背後圏は拡大し、産業も集積されてくるでしょう。広大なコスモパーク加太の土取り跡地利用も考えれば、日本有数の物流拠点としての発展は十分予測可能であります。
 また、現在、和歌山県内で発生する外貿コンテナ貨物の約八十万トンが神戸港、大阪港へドレージ輸送、すなわちコンテナトレーラーで横持ちされておりますが、こうした約二十六億円の輸送コストが削減され、自分の貨物が近くの港湾で船積みされるとなれば安心感も違ってきます。日本の主要ポートには、あまたの船会社、港湾運送業者、通関業者などがひしめき合っております。こうした物流にかかわる産業の集積は地元雇用を促します。
 埋め立てがなされる場合には、建設残土やしゅんせつ土砂が利用されますが、日々大量に発生する廃棄物を、まさに水際で再利用化、再資源化するリサイクル産業も行政主導で臨海の工業団地に誘致すればよいと思います。先ごろ、和歌山県から発生するしゅんせつ土、ヘドロが不法に岬町の山奥へ廃棄されたと岬町議会で問題になったと聞いております。自分の県で発生した廃棄物は、自分のところで処理してしまうのが大原則でありましょう。港湾整備が、ひいてはクリーンな環境づくりに貢献すると考えられます。
 ただ、港湾というコンクリートのだだっ広いスペースをつくるというのではなくて、陸上輸送費用と時間の節減効果、さらに大水深港湾での大型船舶による海上輸送費用と時間の節減効果のみならず、近い将来の地域への経済波及効果、雇用拡大、環境の保全・向上効果、輸送の安全性・安定性の向上効果ももたらされることを見逃してはならないと思います。投資に見合う費用対効果も十分生まれてくると思います。
 同時に、港湾は利用されて初めてその機能が果たされるわけですから、利用度が低くて港湾維持費を県が、すなわち県民が負担することのないように、絶えず中長期的視点での当局のチェックが問われることは言うまでもありません。
 和歌山県のもともとの基幹産業である繊維、木材、鉄鋼、化学等、すべて港湾に頼らざるを得ません。こうした既存の産業のほか、最近は機械機器といったゼネラルカーゴも輸出入ともに見逃せないと思います。
 和歌山下津港は、日本における主要な木材船寄港地であります。近年、荷主サイドでは、コスト削減のため寄港地の数を減らしていきたい傾向があると伺います。それだけに、今回の港湾整備によって木材を和歌山下津港に集中して荷おろしするチャンスが生まれてまいります。本年五月より、和歌山下津港も動物検疫指定貨物の受け入れが可能になりました。食肉等、貨物の幅が広がってきております。
 今回の修正案により埋め立て規模が約三分の二に縮小されるのであれば、工業団地用地の広大な残存地域も港湾用地として利用できましょうし、北港沖地区の将来のテクノスーパーライナーによる内貿ターミナルについても、むしろ外貿への転用によって補充は十分可能であると思われます。ポートセールスの立場から言えば、荷主、船会社から注目を受けるためには、コンテナ埠頭の作業効率化のために、ガントリークレーンを備えた大水深岸壁はどうしても複数バース必要であります。このたびの経験を教訓に、県民にご理解をいただくために、早いうちから具体的構想を提示していく姿勢がぜひとも必要であると思います。
 住民の皆様の雑賀崎の海を、自然を、景観を守りたいという思いは、和歌山市民、県民、そして県外の人々の心まで動かし、西口知事を初めとして県当局にまで響かせてくれました。私たち和歌山県民にとってかけがえのない恵まれた自然景観、それにまつわる万葉の昔をしのばせる歴史的価値のとうとさを改めて認識させてくれました。私たちが全国に誇る天与のものですから、これからも最大限県民として守っていかなければならないでしょう。と同時に、和歌山県の将来のためには、和歌山下津港の港湾整備も欠くべからざるものであります。雑賀崎の高台から前方を眺めれば美しい海岸美があり、横を眺めてみると紀淡海峡大橋、そして和歌山港の港夜景といったぐあいに、和歌山市の新しい観光のあり方も生まれてくると思います。必ずや、港湾と自然景観は共存共栄できるものと信じております。
 西口知事、和歌山県にとって行政の遅延は一刻も許されません。景観検討委員会でも具体的な案がいよいよ示されてまいりました上は、ぜひ早くご決断いただいて、委員会の趣旨にのっとって原計画を修正し、地方港湾審議会、中央港湾審議会にかけていただいて、和歌山県の二十年、三十年後の輝かしい未来のために、本格的外貿コンテナ港、和歌山下津港建設に着手してください。ベイフロンティア構想にうたっているように、大阪湾内の港湾とまさに役割分担できるような港湾にしてください。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 一番目、まず西口知事より、平成十年度内の和歌山下津港港湾計画の修正についてご決断のほどをお聞かせください。
 二番目、ことしの大型台風の襲来によって、雑賀崎地先の金属機械製造業団地西側の一部企業が随分と波をかぶったと聞いております。この地に今以上の護岸の整備、そしておくれている緑地の完成をいち早く急いでほしいのはもちろんのこと、このたびの修正案における緑地、護岸についても、周辺からの景観の考慮も入れて、風、波に負けないものをつくっていただきたいが、いかがですか。
 三番目、原計画に比べれば、修正案は潮流に対する影響も図案上は随分緩和されたように見えますが、漁業者にとっては捨ておけない問題であります。潮流の事前調査の計画、手法など、どうお考えですか。
 四番目、高速交通網の整備について先述いたしましたが、付近住民にとって、コンテナトレーラー等の大型車が港湾地域外を走られることが大きな心配の種であります。将来にわたった臨港産業道路と生活道路のすみ分けについてどういった構想をお持ちですか。
 五番目、先週末、台湾の方でポートセールスが行われたと聞いておりますが、状況をお聞かせください。
 現在、韓国釜山港との間に週二回の定期コンテナ船航路が開設されておりますが、その貨物には東南アジア、欧州方面へのトランジット貨物も多いと聞きます。同じトランジットを行うのであれば、台湾、香港でのトランジットの方がメリットがあるのではないかと思われます。大阪港で陸揚げされて和歌山へ横持ちされる貨物の中には、中国、台湾方面からの梅干し用の梅があります。年間、コンテナ一千本ぐらいあるということですが、これも和歌山下津港にとって見逃せないものだと思います。それに関連して、地方圏の港湾においては、近年、コンテナ貨物量が顕著な伸びを示しております。その中に、四国に松山港という重要港湾がありますが、背後圏に人口四十六万人の松山市のほか、周辺市町村を含めて約六十万人を擁しております。松山港の取扱貨物量は平成九年で二千三百十二万トンと、和歌山下津港の半分にも満たない取扱量ですが、平成六年七月以降、釜山、台湾、大連、寧波などとの定期コンテナ貨物航路を開設しております。和歌山下津港は輸入が多く、松山港は輸出が多い港であります。和歌山県で発生、消費される外貿コンテナ貨物には中国、台湾方面の貨物もかなりの割合であるのですから、相互に補完できる松山港との共同配船を考えてみてもよいのではないでしょうか。
 六番目、先ほどの松山港は、平成五年にFAZ──フォーリンアクセスゾーン(輸入促進地域)の指定を受けておりますが、市民、県民の憩える国際見本市開催などの国際交流を考えた国のFAZの指定を和歌山下津港が受けることについて、どうお考えですか。
 今まで雑賀崎沖の埋立問題について自分なりに追いかけてまいりましたが、私のいただいている任期を全うするまでの間に一つのけじめをつけるときが来たと思いまして、あえて一つのポイントに絞って質問をさせていただきました。西口知事、長沢土木部長の誠意ある前向きな答弁を切にお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 長坂議員にお答えをいたします。
 和歌山下津港の問題でありますけれども、私はかねてから和歌山下津港港湾計画につきましては、本港沖埋立計画の位置や形状について関係各位の意見をお聞きしながら柔軟に対応するとの姿勢で臨んでまいりました。具体的には、本年五月に和歌山下津港本港沖地区景観検討委員会を設置し、景観面からの検討を行うとともに、港湾機能面についても七月及び八月に地方港湾審議会を開催し、審議会のご意見もいただいております。また、私自身も地元の方々に直接お会いをしてさまざまなご意見をいただいております。こうした中で、去る十一月二十八日、第三回景観検討委員会が開催され、最大限に景観保全に配慮した案についてご議論をいただいたところでございます。
 和歌山下津港を初めとする県内の港湾整備は、輸送コストの低減、県内企業の市場競争力の向上、消費物資の価格低下につながるものでございまして、また流通産業等の集積を初めとする産業立地の促進、地元雇用機会の増大、県経済活性化のためにも港湾整備は重要なものでございます。また一方、私は常々、本県のすばらしい自然、古い歴史文化を大切にしながら、同時に地方の活性化に資するような整備は必要であると申してございます。今回の案については、評価いただけるものではないかと考えてございます。
 今後の予定といたしましては、さらに最終の景観検討委員会を開催し、その議論を踏まえ、地元の方々、関係の方々のご理解を得られるような努力をし、その後、地方港湾審議会、国の港湾審議会で審議いただく必要があろうと考えてございます。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 土木部長長沢小太郎君。
  〔長沢小太郎君、登壇〕
○土木部長(長沢小太郎君) ご質問にお答えいたします。
 二点目になるわけですが、まず風波に負けない緑地、護岸をというご質問でございます。
 雑賀崎地先の金属機械工業団地の護岸の整備につきましては、台風時における越波対策として、現在、消波ブロックの設置工事などを行っているところでございます。また、緑地につきましては、今申し上げました消波ブロックの設置に並行して散水用の水道の配管工事などを行っておりましたけれども、来年三月より本格的に植栽の工事に着手することにしており、おおむね三年間で完成させたいと考えております。本港沖地区の緑地につきましては、雑賀崎地区からの景観に配慮するとともに、風浪から背後地を防御する目的をもあわせ持った緑の多い築山状の緑地としたいと考えておりますが、護岸の構造等につきましては、今後実施に当たり詳細に検討してまいりたいと考えております。
 次に、修正案における潮流の事前調査の計画、手法はというご質問でございます。
 潮流の事前調査につきましては、昨年の港湾計画の改定に際して調査を行い、現況を把握しております。議員ご指摘のように、今回の案では沖出しを極力抑えた形となっておりますので、昨年改定した計画よりも影響は軽微になるものと考えてございますが、改めてシミュレーションを実施させていただいて、潮流に対する影響を再度確認してまいりたいと考えております。
 次に、将来の臨港産業道路と生活道路のすみ分けをとのご質問でございます。
 港湾における交通の円滑化を図るとともに、港湾と背後地とを結ぶため、昨年の港湾計画改定に際し、臨港道路として紀の川右岸線や西浜線など七路線を計画しております。また、今後の物流の広域化や迅速化に対応するため、港湾と高速道路等の高規格な道路の直結が必要となっております。このため、本年六月に本港区と北工区を結び、紀淡連絡道路や近畿自動車道紀勢線と連絡する和歌山環状道路が地域高規格道路の候補路線として指定されまして、このうち湾岸部分については、和歌山環状道路臨海線として物流機能を強化する路線という位置づけがなされております。今後、さらに和歌山市周辺の通過交通と生活交通の適切な分離を図ることによりまして、快適で安全な道路環境を目指し、地域経済の活性化に資する道路整備を行ってまいりたいと考えております。
 次に、台湾でのポートセールスの状況と松山港との共同配船の問題でございます。
 和歌山県発着の貨物につきましては、現在、大半が神戸港、大阪港で積みおろしされておるわけでございますが、そのうち中国、東南アジア地域と和歌山との間の貨物量も多いということから、既に開設されております釜山港と和歌山下津港との航路に加えて、この方面との新しい航路を誘致したいと考えております。こういうことから、船会社や荷主の和歌山下津港に対する認知度を高め、和歌山下津港との間に航路の開設を図ることを目的といたしまして、去る十二月二日から五日にかけて台湾においてポートセールスを実施したところでございます。
 内容としましては、当地在住の船会社、商社等を対象にした和歌山下津港の説明会を開催するとともに、個別に船会社を訪問して和歌山下津港のPRを行ったところでございます。
 なお、外貿コンテナ航路は幾つかの港に寄港しながら貨物の積みおろしを行っており、議員ご指摘にございます松山港を初め、現在、日本の地方港に寄港している船会社に対しても和歌山下津港への寄港を働きかけてまいる所存でございます。
 最後に、和歌山下津港にもFAZの指定をとのご質問でございます。
 FAZ──輸入促進地域でございますけれども、これは輸入促進法に基づいて輸入の促進や流通の円滑化を図るため、関連する施設や活動を集積させる地域ということになっております。輸入促進法によります地域指定がなされますと、事業主体となる第三セクター、あるいは企業に対する支援措置がとられることになります。県では、その適用の可能性を調査したところでございますけれども、今後も引き続き外貿コンテナ関連施設の整備とあわせて検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 41番長坂隆司君。
○長坂隆司君 ご答弁ありがとうございました。
 着実な前進を感じさせる知事のご決断を聞かせていただきました。ぜひとも、年度内に港湾計画が修正されますようご尽力いただきたいと思います。今後、修正案に対する環境庁の見解も出てきましょうが、ぜひ地元の皆様にも知事の決断がご理解いただけるよう、和歌山県の長期的将来展望を身近に訴えていっていただく努力を要望いたしまして、私の一般質問を終わらせていただきます。
○議長(下川俊樹君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
      ─────────────────────
○議長(下川俊樹君) 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時三十分散会

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