平成10年2月 和歌山県議会定例会会議録 第8号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
○議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
27番上野哲弘君。
〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 通告に基づきまして、一般質問を行います。
最初に、長期総合計画についてお伺いいたします。
先月、平成九年度を初年度とする平成二十二年度までの十四年間に及ぶ和歌山県長期総合計画が策定されたところであります。その内容につきましては、それぞれの分野の課題と施策が述べられており、県政の指針となるものであります。個々の問題につきましては各論で行うとして、ここでは基本的県行政について質問いたしたいと思います。
その計画の基本姿勢として、「時代は大きな転換期に入っています。二十世紀の機能や効率を優先した社会から、二十一世紀は、感性や創造性が重視される時代であります」。世界の流れを敏感にとらえながら、「異なる価値観や個性をお互いに認め、尊重し合いながら、生まれ育った地域に愛着を持ち、(中略)地域の特性を生かし、世界に開かれた地域づくりを進め」となっております。
まず計画案についてでありますが、今までの経験から、この手の策定について行政当局は大半をコンサルタント任せで、実体感のない計画になってしまっているのではないかと感じるわけでありますけれども、今回の策定経過についてお伺いいたします。
次に、二十一世紀まであと三年となりました。新たな世紀の到来と長期総合計画の策定と相まって、この三年間が和歌山県にとって重要な時期になることは間違いないところであります。その意味から、県政の基本姿勢と均衡ある県勢の発展を標榜するに足りる理念についてお伺いいたします。
理念とは理性によって得られる最高の概念であり、理性とは物事の道理に従って判断し実行する能力となっています。当然、県民すべてが平等であり、公正に対処されるべきであります。県下五十市町村、それぞれの存在意義を持ち、地域社会をつくり上げているところであります。今日まで県行政も県民の要望を取り入れて公正に行ってきたと思いますが、過去の歴史あるいは各地の状況により多少差異があるものと思っております。
現在、我が国において東京一極集中を是正する論議がなされ、均衡ある国土の発展をスローガンにしているわけでありますが、当和歌山県においても県行政が和歌山市に集中しているのではないかと指摘され、また思うわけであります。特に医療、文化施設、公園等、財政基盤の大きい和歌山市に県立施設が多く見受けられるのはいかなる理念なのか、お伺いいたします。
あわせて、和歌山市における県民文化会館と田辺市における紀南文化会館の取り扱いの違いについてもお願いいたします。
続きまして、広域行政と県行政のあり方についてお伺いいたします。
二十一世紀の行政は、さらなる広域行政になることは間違いないところであります。さきの議会で、少し意味が違ったようでありますが、県なんか要らない、市町村の枠を外さなければならない等、広域行政のあり方について質問いたしました。今回は、二十一世紀の行政のあり方として江戸時代の行政に戻るべきであると提起し、その所見を伺うものであります。当然、民主主義が基本となります。
私が、江戸時代の行政に戻れという意味は、現在の地方自治体の線引きを解消し、江戸期における村単位を県が主体となって行政を行うべきであるということであります。当時の和歌山藩は現在の和歌山県と三重県の約半分を領有していたわけで、その点を考えれば、現在の行政について、広域的には江戸時代より進んでいないように思われます。私は、現在の地方自治体の線引きは、明治維新以降、歴史的あるいは特別な理由もなしに進められたと思っております。その例として二点申し上げます。
新宮港第二期工事における新宮市佐野地区と那智勝浦町宇久井地区であります。佐野地区は、昭和八年、新宮町と合併して新宮市佐野となり、一方、宇久井地区は、昭和三十年、周辺町村と合併して那智勝浦町宇久井となったわけであります。宇久井地区においては、新宮市との合併を推進される方もおられたようでありますが、住民意思を総括した結果、那智勝浦町宇久井となったわけであります。しかし、航空写真に見られるように、佐野、宇久井は同じ湾内であり、港湾整備における振興策等についても一体に考えるべきであります。所属自治体の違いによりその視点が定まらないとしたら、地域住民にとって本当にいいものができるか考えさせられるところであります。すなわち、私の提起する江戸時代に戻れということは、新宮市佐野は佐野村に、那智勝浦町宇久井は宇久井村になり、それぞれの住民が主体となって地域づくりなり振興策を考えるべきであるということであります。すなわち、新宮市あるいは那智勝浦町という行政単位に縛られることなく論議し、実行すべきであります。そうなりますと、当然、県が指導しなければなりません。広域行政の推進を考える上で、江戸期の行政単位に置きかえてみました。所見をお伺いいたします。
もう一点、これも同じく新宮市ですが、新宮市高田と那智勝浦町那智山への道路整備に絡めて私見を申し上げたいと思います。
高田地区は、昭和三十一年、新宮市と合併いたしましたが、その後の高田地区を見てまいりますと、本当に新宮市と合併してよかったのか疑問に思われます。その第一の理由は、道路整備であります。高田地区には幹線道路として県道がありますが、この道路は途中で中断しているままであります。そのため、高田地区住民はもとより、那智山に接続するということで那智山の住民もその開通に期待しているわけでありますが、これも新宮市と那智勝浦町の行政に阻まれて、なかなか進展しないようであります。高田住民と那智山住民は古くから交流があり、その実現を強く望んでおり、また先輩、下川県議も大いに努力されたと聞いておりますので、特に実行を願うものであります。要は、広域行政を考える上で、従来の高田村と那智村の住民の意思を十分考えていただきたいという趣旨であります。
次に、地域の特性とその利活用についてお伺いいたします。
一昨年、巴川製紙所新宮工場が閉鎖となりました。この工場は、まさしく地域の特性から生まれたものであります。無論、基幹産業として地域の経済を支えてきたわけでありますが、いかんせん、時代の流れとはいえ廃止のやむなきに至りましたのはご存じのとおりであります。聞くところによりますと、港の整備ができていたら撤退しなくて済んだとも言われておりますが、その理由について、まずお伺いいたします。
さて、この跡地利用であります。会社、地元自治体及び県においてそれぞれ対応策を考えておられるようでありますが、その進捗状況について、また今回の長期総合計画では新たな産業の創出が挙げられておりますけれども、企業誘致がたやすくできた高度成長の時代ならいざ知らず、二十一世紀の企業は非常に厳しい状況にあろうと思います。企業誘致に限らず、地域に見合った学校機関あるいは研究所等あらゆる選択肢の中で、県、地元自治体、民間所有者の役割を明確にして対応すべきと思いますが、所見をお伺いいたします。
次に、地域振興における経済三原則と行政の役割についてであります。
現在、地方においては少子高齢化とともに過疎対策が大きな課題となっておりますが、地方都市においては既存商店街の衰退、中山間地域においては放棄農地及び山林等の増大で地域社会そのものが問題視されております。このたびの県長期総合計画では、その打開策として、地域の特性を生かした地域づくり振興策がうたわれておるところでありますが、その対策を講ずる上で地域住民の生活基盤となります産業を確立するためには、経済三原則と言われる人、資本、土地の確保が必要となります。従来ですと大半が民間だけで調達してきたわけでありますが、今日、地方の衰退に歯どめをかけるには民間だけでは不可能に近い状況であろうと考えます。行政において、経済三原則の分野にも大いに乗り出す必要があるのではないか。今後、行政の役割としてどのように考えておられるか、所見をお伺いいたします。
続きまして、南紀熊野体験博についてお伺いいたします。
体験博開催まで、残すところ一年となりました。聞くところによりますと、開催への体制づくりを初め、各地におけるイベントの具体案も出そろってきているようでありますが、この際より充実した体験博を願う一県民として質問いたしたいと思います。
まず体験博開催の基本理念でありますが、二十一世紀にはこれまで以上に心のゆとりや安らぎといったものを人々は求めるようになると考えられますという一節がパンフレットに述べられております。また今議会、知事においてその基本的な考え方をお聞きしましたので、この点につきましては重複となりますので、別の角度の質問をいたしたいと思います。
体験博の実行委員会についてお伺いいたします。
実行委員会における予算配分についてでありますが、予算総額二十二億円のうち、田辺、那智勝浦におけるシンボルパークの予算が十一億三千万円と、約五〇%が両地域に配分されます。このことは、体験博開催地十六市町村のうち田辺、那智勝浦がそれぞれ二五%、残り十四市町村は一自治体当たり三・五%となり、実に田辺、那智勝浦の七分の一という予算になります。そのような考え方でこの体験博を推進するならば田辺、那智勝浦にばかり集中し、残り十四市町村においては体験博開催地にもかかわらず人が集まらないで閑古鳥が鳴く体験博になるのではないかと危惧しているところであります。私は、この体験博が十六市町村に満遍なく人々が集まり、すべての地域が体験博をやってよかったと思うような事業であってほしいわけであります。田辺、那智勝浦に五〇%の予算をつぎ込むということは、両地域に七〇ないし八〇%の偏った体験博になろうと思うわけであります。まさか県はそのような考えではないと思いますが、十六市町村、多少の温度差があるにしても全体的成功が望まれるわけでありますので、この際、シンボルパーク予算を大幅に削減し、各市町村のイベントにより多い支援をすべきものと考えます。我々は、ベターよりベストを目指すべきであります。このような南紀熊野体験博は二度とできないことを肝に銘じ、あらゆる発想と知恵を出し合い、ジャパンエキスポに恥じない体験博にすべきと思います。県当局の所見を伺いたいと思います。
続いて、実行委員会の組織とその活動についてであります。例えば、ある具体的提案を行った場合、それを実行するかどうかは別にして、それを聞き流したり、無視したり、あるいは既存の概念で処理したりするのは余り感心しません。提案者にとって重要なのは、その具体案をまないたにのせてもらえるかどうかであります。ベターよりベストであります。あらゆる発想による提案を真剣に検討し、悔いのない体験博にすべきと考えます。今議会、森議員から斬新なアイデアによる体験博に期待している旨の発言がありましたが、まさしくそのとおりかと思います。
さて、提案についてでありますが、多分三つのパターンが考えられます。その一つの自治体単独で行うものについてはここでの論議になりませんので省くとして、複数の自治体に及ぶものと体験博全体で考えられるものがあります。それらの提案について、どの組織が受け皿になっていただけるのか、お伺いするものであります。
続いて、コンサルタントによる総合プロデュースの役割であります。地元では、シンボルパーク関連のイベントにばかり目を向けて、我々単独の自治体イベントに何ら支援がないのか疑問視しております。開催地の十六市町村のみならず、和歌山県全体、さらに三県に波及する体験博でなければならないと思いますが、全員参加の単独自治体イベントに対する総合プロデュースの役割についてお伺いいたします。
続いて、具体的提案についてお伺いいたします。南紀熊野体験博の理念等については、これまでの知事の発言から、その意図するところは全く同感であります。この体験博は、南紀熊野地方の歴史と自然を生かした文化、レジャー、スポーツの祭典としてとらえるべきと考えます。それでは、具体的提案を申し上げたいと思います。
第一点、体験博におけるマラソン大会の開催であります。できれば熊野三山マラソン大会がベストであると思いますが、道路事情により開催できないようであれば、歴史的背景のもと、新宮・神倉神社と熊野市・花窟神社往復の日本書紀マラソンを提案したいと思います。
第二点、大正時代、地元写真館において熊野百景を撮影し、それを絵はがきにして販売した歴史があります。体験博において、全国アマチュアカメラマンによる新熊野百景の撮影大会を提案します。
第三点、熊野には熊野三党という、太古の昔から家系が続いている名字があります。宇井、鈴木、榎本姓であります。この家系は全国で三百万人と言われ、体験博への誘客に無視できない数でありますので、エージェントに働きかけ、全国熊野三党の呼びかけを提案します。同じく、全国熊野神社三千五百社の氏子への呼びかけも考えられます。
第四点、体験博では十万人の熊野古道ウオークが計画されておりますが、同じやるなら皇太子殿下の参加と平安期の藤原宗忠日記「中右記」及び鎌倉期の藤原定家日記「明月記」における熊野古道追跡を提案します。
第五点、後鳥羽上皇の時代、京都から熊野までの旅情を慰めるため王子社において歌会が催され、現在、熊野懐紙として三十四枚が残されていること、また熊野川町宮井生まれで平家方の大将の平忠度は文武両道に秀でた武人、歌人であります。全国の和歌愛好家の参加の呼びかけを提案します。
これらの点について、生活文化部長の答弁をお願いいたします。
続いて、体験博における教育関係の具体的事業について提案し、教育長の所見を伺うものであります。
二十一世紀は心の時代と言われる反面、間近に迫った今日、教師、児童生徒それぞれに精神面の問題があり、大きな悩みを含んでいるところであります。今議会、飯田議員の発言にあるとおり、教育関係の悲惨な事件が多発しているところであります。私は、このような日本社会のゆがみを是正する意味で、この南紀熊野体験博を絶好の教材として活用するべきであると思っております。具体的提案として、児童生徒の不登校を取り上げてみたいと思います。
聞くところによりますと、平成八年度、小中学生で三十日以上の不登校児童生徒は全国で九万四千名に及んでいると言われております。二十一世紀の人づくり、国づくりの担い手であるこれらの教師及び生徒の心のいやしが日本の社会にとって急務となっております。その意味から、この体験博を心の問題を解決する実践の場として多くの国民に活用を願うところであります。さらに、南紀熊野地域の特性を生かす意味で、二十一世紀の教育における教師問題、生徒問題に真っ正面から取り組める施設の設置も考えられると思います。南紀熊野体験博を契機に、当地域の利活用を進める上で重要な選択肢であると思っております。所見をお伺いいたします。
以上、歴史、文化、スポーツの体験博の具体的提案をいたしました。これらは既に具体案として計画書に載せられているものもあると思いますが、所見をお伺いいたします。
続きまして、知事に源平合戦についてお伺いいたします。
去る十二月議会、知事は、南紀熊野体験博とのかかわりで那智勝浦町色川地区住民から聞いたとして、平家物語の重要人物、平維盛の話をされたところであります。私はちょうどそのとき、南紀熊野体験博開催における南紀熊野の歴史として源平合戦を取り上げることができないかどうか思いをめぐらしていたところであります。今回、平維盛の話から少し紀の国関係の源平の歴史を調べてみましたところ、格好の材料が見つかりましたので、紀の国版源平合戦を提唱するものであります。
ご存じのとおり、源平合戦の全体像は、一一五六年の保元の乱、一一五九年の平治の乱に始まり、義経による一ノ谷、屋島、壇ノ浦での合戦で平家が滅亡し、一一八五年終結したものであります。それは、三十年に及ぶ歴史絵巻となっております。その合戦について調べた結果、すべてに登場するのが熊野別当に関係のある源行家であります。行家は、頼朝、義経のおじであり、平家追討の先駆者と言われております。源平合戦の中心人物は、平清盛、源頼朝、木曽義仲、源義経等が挙げられますが、このたび提唱する行家を通じての源平合戦では、当然この人たちはわき役となります。このことが全国の人々に紀の国の人物を描く紀の国版源平合戦の話題を提供することになれば、南紀熊野体験博に花を添えるものと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、体験博にどのように取り上げていただくかでありますが、源平合戦は史実としてその構成は既にでき上がっておりますので、紀の国源平作品として新たに歴史作家にお願いするというものであります。その登場人物を列記すると、次のようになります。和歌山市関係は、紀の国の国主である平頼盛、海南市は鈴木三郎重家、亀井六郎──これは義経の家来であります。田辺市は弁慶及び別当湛増、新宮市は源行家、熊野別当及び丹鶴姫、本宮町は大江法眼、紀和町は後白河法皇、熊野川町は平忠度──これは平清盛の弟であります。那智勝浦町は平維盛、文覚上人、北条政子、湯浅町は湯浅宗重、金屋町は明恵上人、高野山は石童丸がおります。この人については苅萱道心物語がありますが、平家物語では石童丸は平維盛とともに那智の浜に入水したとなっております。
以上が主な登場人物になろうかと思いますが、具体的には紀の国源平作品の選考会を体験博期間中に行うというものであり、できれば近い将来大河ドラマ化も視野に入れ、すばらしい作品になるよう願うところであります。
知事、井伊直弼に「一期一会」という言葉があります。このような体験博は二度とできません。この際、あらゆる可能性を求めて、これしかないことを肝に銘じて活動することが南紀熊野体験博の成功につながるものと考えますが、熊野の歴史と大いに関係のある源平合戦について所見をお伺いするものであります。
続きまして、体験博における農林水産部の対応についてお伺いいたします。
この体験博開催は、県行政のあらゆる部門に関連するものと思われますが、特に農林水産部の関与に大きいものがあろうと思います。それらについて部長の答弁をお願いするものであります。
第一点の農産物でありますが、紀州和歌山は梅を初めミカン等、特産品が多数そろうものと思います。体験博開催による地元産品のPR及び販売について今後どのような対応をなされるのか、お伺いいたします。
第二点、林産品でありますが、ご承知のとおり、現在、木材の価格が大幅に下落しているところであります。その結果、間伐材等が放置されたままになっております。これらは林業振興の上で大きな弊害となっております。この際、思い切って自治体所有林及び民間所有林をこの体験博参加者に提供し、ログハウスや間伐材利用の組み立て休憩所等の活用を提案するものであります。
第三点、水産物につきましては、先日、マグロ祭りが勝浦で開催されたところ、大変人気がよかったと聞いておりますが、紀の国水産物の充実に向けてどのような対応を考えておられるのか、お伺いいたします。
以上で、一般質問を終わります。
○議長(木下秀男君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事西口 勇君。
〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 上野議員にお答えをいたします。
紀の国版源平合戦についてのお尋ねであります。
和歌山県の最も大きな魅力の一つに、神話の時代からの豊かな歴史、文化、それをはぐくんできたすばらしい自然があります。とりわけ熊野地域は歴史文化資源の宝庫であるとの議員のご認識は、私も同感であります。
これまでにも、全国的に関心を持たれた本県ゆかりの歴史上の人物は多々ございますけれども、議員お話しの源行家を主役とする紀の国源平合戦という着想は、県下各地域を結び、さらには三重県にまで視野を広げる歴史物語という点からも興味深く伺いました。また、上野議員が地元紙に詳しく寄稿されている源行家に関する文章も読ませていただきました。これらを題材とした創作につきましては、大変貴重なご提言と受けとめさせていただきたいと思います。
以上であります。
○議長(木下秀男君) 企画部長藤谷茂樹君。
〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 上野議員にお答え申し上げます。
今回の長期総合計画の策定経過でございますが、平成八年二月に和歌山県長期総合計画審議会に諮問し、二年間の慎重な審議を経て本年二月に答申をいただきました。審議会での答申作成に当たりましては、審議会の中に五つの委員会を設け、分野ごとの検討を行い、それをもとに審議をしていただきました。また、庁内に副知事をキャップとする策定本部を組織し、それぞれの委員会に関係する庁内各課室が検討を重ねてまいったところであり、外部への委託といった手法は用いておりません。さらに、二度にわたり市町村長、地域のオピニオンリーダーの方々との地域別意見交換会を開催し、地域の方々のご意見をできる限り計画に反映するよう努めたところでございます。こうした経過を踏まえまして、本年二月二十五日に計画決定をしたところでございます。
次に県土の均衡ある発展についてでありますが、県内のどの地域に住んでいても快適で安定した暮らしを営むことができる自立的な定住環境を整えるとともに、住む人が誇りを持ちながら、価値観に応じた豊かさを実感でき、独自の輝きを持った個性ある地域を形成することが重要であると考えております。
今回の長期総合計画では、県内を六つの圏域に分け、それぞれの圏域で産業基盤や地域特性に合った生活基盤を整備するとともに、地域住民が医療、福祉、教育、文化などの日常生活において必要となる一定水準の機能を圏域内で享受できるよう地域整備を進めることを基本的な考えとしております。県の施設につきましては、それぞれの行政目的に応じて広域的な利用を確保しつつ、財政負担や立地環境等を考慮して配置されております。今後とも、長期総合計画を推進する立場から、こうした観点とともに、均衡のとれた県土の形成を目指し、各種プロジェクトや施設計画を進めてまいりたいと考えております。
次に経済活動における行政の役割でございますが、地域経済の活性化のためには産業振興が大きな課題であり、民間の産業振興を支える道路、港湾といった基盤整備や制度融資、企業誘致等を行ってきたところでございます。新しい長期総合計画においても、重点的な取り組みを行う「新時代を拓く戦略的構想」の中に、地域産業の高度化、新分野への進出、新規産業の導入、支援などによる新産業の創出・育成を掲げ、主要施策を位置づけたところでございます。また、県行政の企業活動へのかかわりにつきましては、第三セクターへの人の派遣や出資という形で参加しておりますが、今後とも公共性や地域の振興を考慮した対応が必要であると考えてございます。
以上でございます。
○議長(木下秀男君) 生活文化部長中村協二君。
〔中村協二君、登壇〕
○生活文化部長(中村協二君) 上野議員にお答えをいたします。
まず長期総合計画の中の県政の基本姿勢と均衡ある発展についてのご質問のうち、県民文化会館と紀南文化会館についてでございます。
県民文化会館は、県民の文化の殿堂としてより多くの県民の皆様にご利用いただくという使命を担っており、利用人口、利便性等を考慮して現在地に建設されております。一方、紀南文化会館は、主に田辺市及び周辺地域の皆様に利用される文化施設として地元の強い要望もあり設置されたものでございまして、運営管理は地元にお願いしているところでございます。
続きまして南紀熊野体験博について、まず実行委員会における予算配分についてお答えをいたします。
南紀熊野体験博は、従来にない熊野地域全体を会場として広域展開するものであり、それぞれの地域の人々の積極的な取り組みが必要であると考えております。
市町村におきましては、体験博以降の継続も視野に入れた体験イベントや地域ネットワークイベントの企画、実施をしていただき、民間団体におきましては、地域の担い手として市町村等と連携を図りながら体験博に参加していただきたいと考えてございます。これに対し実行委員会は、県内外における体験博の広報宣伝やテーマイベントの企画実施を行うとともに、シンボルパークの建設、運営を行うことになっております。
そうした中でシンボルパークは、南紀熊野体験博のテーマを象徴的にアピールする場所であり、各地域の体験イベントや熊野の魅力といった情報の集約、発信を効果的に行うものでございます。そして、テーマ館や情報センターといった施設を設置し、熊野地域全体に広域展開していくオープンエリア型博覧会の玄関口として位置づけてございます。したがって、このような施設は平成十年度に整備、完成させる必要があるため、結果として実行委員会の予算が議員のご指摘されたような形になってございますが、平成十一年度には民間団体等の積極的な参加をいただき、各種、各地域のイベントの充実を図ってまいる予定でございますので、ご理解をお願い申し上げます。
続きまして、実行委員会の組織と活動についてお答えをいたします。
この体験博は、県全体で構成されております南紀熊野体験博実行委員会と直接対象地域の市町村において自主的に組織された地域の実行委員会で実施してまいります。こうした中で、それぞれの地域の魅力を知り尽くした住民の皆様からの市町村単位のイベントを初めとしたあらゆる種類のイベントの提案を受け入れ検討することは非常に重要であると認識してございまして、実行委員会では昨年八月にイベントアイデアの公募も行っているところでございます。イベントの提案に関しましては、実行委員会と地域の実行委員会が相互に連携して、いずれの組織においても受け入れを行い、実施に関し検討するべきであり、これからもそのように進めてまいる所存でございます。
続きまして、総合プロデュースの役割と活動内容についてお答えをいたします。
この体験博におきましては、地域の多様な資源を活用し、熊野地域全域で多数のイベントを実施してまいります。その中には、県の実行委員会が中心となって展開するものもあれば、地域の人々がアイデアを出し主体的に実施していくものもございます。それら多種多様な形態のイベントを博覧会として統一的に構成し運営することや、会場として熊野地域全体を演出していくこと、さらに効果的な広報展開を実施していくことが総合プロデュースでございます。とりわけ、この体験博では住民主導の体験型イベントを重視しておりまして、こうした地域の人々の取り組みが体験博終了後もその地域に根づいていくことを視野に入れ、地域の実行委員会と連携した総合プロデュースに努めてまいりたいと存じます。
続きまして、具体的な提案についてお答えをいたします。
この体験博のイベントの特徴は、来訪者に参加体験を通してこの地域のすばらしさに触れていただくという体験重視の考え方でございます。現在、熊野地域の魅力を余すことなく訴えていきたいとの考えのもとに、さまざまなイベントを県実行委員会や地域実行委員会で企画しているところでございます。その中にはスポーツイベントや歴史文化に由来するイベントも多数含まれてございますが、議員のご提案も踏まえ、さらに検討いたしたいと存じます。
また、その具体例の一つとして、熊野三山のゆかりの神社がすべての都道府県に及び、その数も三千社以上あるという事実を重視いたしまして、仮称ではございますが、熊野比丘尼隊というキャンペーン隊を全国に派遣することを企画いたしており、広く全国各地に当博覧会を広報宣伝いたしたいと準備を進めているところでございます。
以上でございます。
○議長(木下秀男君) 総務部長中山次郎君。
〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 広域行政における県行政のあり方についてお答えします。
地域振興を考えるとき、地域の住民の方々の意向を十分反映させながら、市町村の区域を超えた一体的な地域振興策が大切でございます。そのような意味で、市町村がその区域にとらわれず、互いに協力し合い、広域行政を推進していくことは地方分権の時代にかなったことでございます。また一方、市町村が地方分権の担い手としてふさわしい行財政能力を強化していくことも必要でございます。
いずれにいたしましても、広域行政の推進は時代の要請でもございますので、県といたしましては、これまでも広域行政推進セミナーや広域行政検討会などを実施いたしましたが、さらに地域の状況を勘案し、効率的な広域行政が展開できるよう適切な指導を行ってまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(木下秀男君) 商工労働部長上山義彦君。
〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 長期総合計画についてのうち、地域の特性とその利活用についてお答えします。
巴川製紙所新宮工場の撤退理由と跡地利用についてでございますが、同社は、昭和二十年に地域の豊富な木材、水資源等を活用した工場として立地し、以来、新宮地域の基幹産業として約半世紀にわたり地元経済発展の重要な役割を担ってきました。しかし、円高の進行等による国際競争の激化、商品需要の変化、流通のコスト高等さまざまな要因に対応するため、経営の合理化による改善努力を行ってきましたが、予想を上回る紙パルプの市況の悪化等により、平成七年にパルプ部門からの撤退による新宮工場の閉鎖を決定したと聞いてございます。
同工場の操業停止は、地元はもちろんのこと、本県経済にとりましても大変な痛手であり、その跡地の活用を図るため、製紙関連会社や住宅関連会社への企業訪問や、大阪市、名古屋市での企業立地説明会での用地紹介等、企業誘致を積極的に推進しているところですが、現状は厳しい状況にあります。巴川製紙所においても地域の振興に結びつく売却先を探しており、議員ご指摘のとおり、今後とも地元新宮市、同社との連携を密にしながら、地域の活性化を図るという観点から積極的に取り組んでまいる所存でございます。
以上でございます。
○議長(木下秀男君) 農林水産部長平松俊次君。
〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 南紀熊野体験博のうち、農林水産部の対応についてでございます。
議員お話しのとおり、本県は全国に誇り得る農林水産物が数多くございます。南紀熊野体験博においてこれらの産品をPR、販売することは、本県の農林水産業を振興する上で絶好の機会であると認識してございます。このため現在、南紀熊野体験博推進本部内に設置した物産物流部会におきまして、世界リゾート博での経験なども生かしつつ、二カ所のシンボルパークを中心に農林水産物のPRや販売の計画、調整を進めているところでございます。
ログハウス等への間伐材利用につきましては、地域材の利活用の推進という観点からも意義あることと考え、関係市町村等で十分検討していただけるよう働きかけを行ってまいりたいと考えてございます。
また、農林水産業に関連したイベントの開催につきましては、体験博のテーマイベントの一つである十万人の熊野もうでの参加者の皆様に、熊野の地ゆかりの照葉樹等を記念植樹していただくことなどを計画してございまして、今後、議員お話しのマグロ祭りなど、和歌山の農林水産業の魅力を全国に発信できる関連イベントの充実に努めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(木下秀男君) 教育長西川時千代君。
〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 熊野体験博と心の教育の関連についてお答えいたします。
全国的に、中学生、高校生による深刻な事件が相次ぎ、大きな社会問題となっております。こうした事件が起こる大きな要因の一つに、子供の心の荒廃がございます。子供を育てる上で心の教育は最も重要な課題であり、紀南地方の豊かな自然や日本の精神文化の源とも言える歴史を心の教育に役立てることは、まことに意義深いと考えてございます。
教育委員会では、昨年十月に本宮町において紀伊半島民俗芸能サミットを開催し、郷土の文化や伝統のすばらしさとその伝承や保存についても再認識したところであります。また、新宮地方において紀伊半島三県高等学校ネットワーク推進事業を実施し、三重、奈良、和歌山の高校生が紀伊半島の歴史、文化、自然についての学習や交流を行ってございます。さらに、平成十年度からふるさと教育推進大会を開催し、紀州の自然や伝統を愛し、豊かな心をはぐくむ教育の推進に努めてまいりたいと考えてございます。
南紀熊野体験博につきましては、プレイベントとしてオリンピック選手と一緒に走るオリンピックデーランを六月に田辺市で実施するほか、紀南を中心に紀の国アウトドアスポーツフェアの開催を予定してございます。平成十一年には、外国語指導助手(ALT)の中間期研修会を初め各種の研修会や会議等を紀南地方で開催し、その機会をとらえて外国人を含む多数の参加者に紀南のよさをアピールするとともに、同博覧会への児童生徒の参加を促し、心の教育に役立てていきたいと存じます。
なお、紀南地方への教育関係施設の設置につきましては、関係機関とも連携し、今後の研究課題にしてまいりたいと考えます。
以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
27番上野哲弘君。
○上野哲弘君 一点だけ知事に。
源平合戦の話をさせていただきましたが、今、「徳川慶喜」のテレビ番組でも、ロケとかセットを用意しないとなかなか大河ドラマにしてもらえないという話があるんですね。そういう面で、今、県において熊野学研究センターが計画されておりますので、それとセットになるような形でつくれば大河ドラマの可能性は九〇%ぐらいいくんではないかと期待をしておりますので、ひとつ知事においてよろしくお願いしたいと思います。
以上で、終わります。
○議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(木下秀男君) この際、暫時休憩いたします。
午前十一時三十三分休憩
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