平成10年2月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(馬頭哲弥議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時二分開議
○議長(木下秀男君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(木下秀男君) この際、報告いたします。
 過日提出のあった議案第四十三号、議案第四十四号及び議案第六十号は、いずれも職員に関する条例改正案でありますので、地方公務員法第五条第二項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、次のとおり回答がありました。
 職員に回答文を朗読させます。
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                     和人委第410号
                     平成10年3月3日
 和歌山県議会議長  木 下 秀 男 殿
        和歌山県人事委員会委員長  若 林 弘 澄
   職員に関する条例の制定に係る意見について
 平成10年2月27日付け和議会第450号で意見を求められた標記のことについて、地方公務員法第8条第1項第3号の規定により下記のとおり回答します。
               記
 議案第43号  職員等の旅費に関する条例の一部を改正する条例
 議案第44号  職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
 議案第60号  警察職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
             意  見
 上記条例案については、いずれも適当であると認めます。
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○議長(木下秀男君) 次に、お手元に配付のとおり、監査委員から現金出納検査の結果報告がありました。
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○議長(木下秀男君) 次に、報告いたします。
 知事から、議案の追加提出がありました。
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                     財第251号
                     平成10年3月10日
 和歌山県議会議長  木 下 秀 男 殿
              和歌山県知事  西 口   勇
   和歌山県議会平成10年2月定例会追加議案の提出について
 地方自治法(昭和22年法律第67号)第96条の規定に基づく議決事件について、次のとおり議案を提出します。
               記
 議案第78号  平成9年度和歌山県一般会計補正予算
 議案第79号  平成9年度和歌山県中小企業近代化資金特別会計補正予算
 議案第80号  平成9年度和歌山県流域下水道事業特別会計補正予算
 議案第81号  平成9年度和歌山県用地取得事業特別会計補正予算
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  【日程第一 議案第七十八号から議案第八十一号まで】
○議長(木下秀男君) 日程第一、ただいま報告の議案第七十八号から議案第八十一号までを一括して議題といたします。
 議案はお手元に配付しておりますので、まず知事の説明を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) ただいま上程されました議案について、ご説明申し上げます。
 議案第七十八号から八十一号は、平成九年度予算のうち、用地取得の遅延等により本年度内に完了することが困難と見込まれる事業につきまして、平成十年度に繰り越して使用することをお願いするものであります。
 何とぞ、ご審議の上、ご賛同賜りますようお願い申し上げます。
○議長(木下秀男君) 以上で、知事の説明が終わりました。
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  【日程第二 議案第一号から議案第七十七号まで】
  【日程第三 一般質問】
○議長(木下秀男君) 次に日程第二、議案第一号から議案第七十七号までをあわせ一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第三、一般質問を行います。
 16番馬頭哲弥君。
  〔馬頭哲弥君、登壇〕(拍手)
○馬頭哲弥君 おはようございます。
 大変な時代のありさまであります。横綱制度が始まって以来という春場所の横綱の負けっぷり、経済の金融恐慌のありさま、政治の混乱、社会の不安、混沌、とどまるところなき昨今の様相であります。時勢というものがどれほど恐ろしいものであるかを我々は今ようやくにして見せられておる、そんな気がいたします。
 私は自由民主党を代表いたしまして、まず平成十年度予算を中心に私なりの所見を申し述べるとともに、幾つか質問をいたしたいと思います。
 政治の頂点に立つ者は歴史に対する大いなる創造性と確固たる信念、卓越した実行力が求められることは、言うまでもありません。知事は議会初日の所信表明において、我々が直面しているこの時代を歴史的転換期として位置づけ、混沌たる社会情勢の中で、我が郷土和歌山も今まさに産みの苦しみを味わわねばならぬ時期であるとの認識を示されました。さらに、来るべき二十一世紀は感性や創造性が重視され、心の豊かさが求められる時代になるという見通しのもとに、二十一世紀の故郷(くに)づくりという希望のたいまつを高々と掲げ、その政治姿勢を明らかにされたのであります。我々は、世の混迷にいたずらに右顧左べんすることなく、次代の創造者としての気概を持って次の世紀に臨んでいかなければならんと確信するものであります。そういう意味で、知事が示された時代の先駆者たらんとする情熱と凛たる政治姿勢に大いに意を強くするものであります。
 財政問題に目を転ずれば、知事は昨年秋に県財政の中期展望を公表し、深刻な財政不足の状況と財政運営の厳しさを県民に明らかにされました。台所事情をあからさまにするということは、なかなか勇気の要ることであります。県民に将来への希望を失わせたり、変に萎縮させてしまうじゃないかといったような意見があるかもしれませんけれども、ここが肝心なところであります。本来、情報公開の基本はここにあると思います。県民にありのままの姿を示し、ともに議論し、勇気を持ってあしたを切り開いていく、県民とともに歩む県政を標榜する西口県政の率直さを、これまた評価するものであります。
 しかしながら、このことだけで終わってしまったのでは責任の放棄であります。世の中の景気がかくのごとく悪くなっているときに、財布が寂しいから予算をカットしますというだけでは行政は通用しない。次のステップ、道筋を示してこそ県民もまたともに次の一歩を踏み出せる、ともに汗をかいてくださると思うのであります。「疾風に勁草を知る」、こういう言葉があります。情勢が厳しいときこそ、腹を据え、知恵を働かせて県全体のやる気を奮い立たせることが県当局に課せられた仕事であろうと考えるのであります。
 そんな観点から十年度の予算編成を見てみると、まず当面する経済、金融情勢に対する処方せんであります。申し上げるまでもなく、経済の語源は「経世済民」であります。すなわち臨機応変、有効適切な政策をもって政治を行い、産業を興し、県民生活の安定と向上を保障することであります。そういった意味で十年度の県予算は、景気、経済対策として、不況対策特別資金の創設五十億円、さらには貸し渋りの実態等を踏まえた信用保証の強化策など、中小企業融資制度を大幅に拡充し伸ばしておることを初めとして、県全体の予算が実質マイナスという中でありながらも商工費が三・六%の増となっておることは評価しなければならんと思います。新規事業も百八十項目あります。これは、まさに西口県政において政策の転換が図られておるということであります。もちろん、経済政策の有効性は国家的規模での政策発動があって初めてその実を上げられるものではありますけれども、県のレベルにおいても適切なる施策を講じ得るはずであり、そのことに積極的に意を用い、予算措置を講じているものと評価するものであります。ただ、投資的事業がマイナスの伸びになっているのは容認しにくい部分もございます。確かに、繰り越しが膨大にあるので実体経済にさほど影響がないという説明や、実質的な事業消化能力の問題や、県債の増発を避けたいという財政改革の観点からは了とせざるを得ないのであろうが、いささかインパクトに欠ける点は否めない。
 政府においても、この一両日の間に十兆円のいわゆる景気対策に本腰を入れて取り組むんだということが発表されております。また、二兆円の減税も行うという思い切った措置が景気対策のてこ入れで行われようとしておりますけれども、県としてもこれで終わりというのではなく、国の動向に合わせて柔軟な機動的な対応ができるようにお願いをしておきたいと思うのであります。この点について、知事の見解を承りたいと思います。
 次に、今申し上げたのは当面の対策でありますが、景気の浮き沈みは古今の常、景気循環の周期説すらあるわけでありますから、根本的にはやはり長期的視点に立って、本当に足腰の強い、少々の不景気に左右されることのない産業構造の構築を図っていかなければならないと思うのであります。したがって、どんどん県内に人材を引きつけるような、税収がふえていくような措置は今後も積極的に続けていただきたいと思うのであります。
 そういった視点から、科学技術開発力といいますか、そういう分野で勝負する先導的な産業の育成、あるいはまた優良な先端企業の立地促進といったスタンスが、これから二十一世紀へかけて絶対不可欠のものであろうと思うのであります。要するに、高付加価値、高生産を目指していかないと、利潤の幅の低いものでは税収は上がるわけではありませんから、頭で勝負する部分に相当比重を置いていただきたいわけであります。この点については十年度予算において、創造的企業の育成支援、あるいはまた思い切った企業立地の優遇措置拡充等も図られておるようでありますので、厳しい財政情勢の中でのめり張りのきかせ方として、産業経済政策としてはまず合格点であろうと思うのであります。念のため、今後の産業政策のあり方についての知事のご所見を承っておきたいと思うのであります。
 知事はこの予算の記者発表で、ことしの予算、特に組織横断型の予算編成について新聞記者の方から質問を受けて、「まずまず百点満点中八十点だろうな」、こう答えられたと仄聞するのであります。私自身も、常々、部局のセクショナリズムを排して協調協力の必要性というのを委員会などでも申し上げてまいったところであります。我が意を得た感じがいたします。組織横断型の予算づくりというのは、ある意味では役所内の垣根を取り払う、そういう従来にない新しい発想の予算編成手法でありますし、そのほかにも随所に工夫の跡もうかがえます。苦しい台所事情にもかかわらず相当数の新規事業もつくり出しておるし、全国に誇れる先進的な取り組みも見られる、県民の声や職員提案によく耳を傾け、あるいはまた議会の意向もよく聞いて事業化なり予算措置がされておるように思うのであります。そういう気配りも随所に見られる。まあ、知事さんはジョークで八十点と言われたようでありますが、私は、時代背景も考慮すると九十点ぐらいは差し上げてもよいと思っておるのであります。これは、決してヨイショではないのであります。あとの十点が問題であります。あとの十点が、これからの執行効果いかんということにしておきたいと思うのであります。
 以上るる申し上げましたが、とにかく県庁マンは、自分たちのつくった予算に自信を持って、これを適時適切、効果的に執行すれば、和歌山県の飛躍につながること間違いなしという気概を持って仕事に邁進していただきたいことを、この予算問題の締めくくりにお願いをしておきたいと思うのであります。もちろん、財政苦しい中でこの予算編成に努力された皆さんのご苦労を多とすることは言うまでもありません。
 なお、今後、主要施策の進捗、成果等について、適宜、議会に対して中間的な報告もされることをこの機会に求めておきたいと思います。
 予算及び財政の展望についての質問は、これで終わります。
 二番目は、農業、林業、水産の三つの基本的な基幹産業としての位置づけについて、最初に知事からそのお考えを承りたいと思います。
 まず、農業から農林水産部長にお尋ねいたします。
 知事も言われている、果樹王国和歌山のタイトルを今後とも堅持するためにどう対処すべきかという一つの瀬戸際が迫っておると思います。石油や化学肥料に重点を置いた工業化農業は、ある意味では限界に来た感があります。改善が急がれる分野についてご説明をお願いしたいと思います。
 次に、本年度予算で中山間地帯への前向きな取り組みが示され、安心をいたしました。中山間地帯と呼ばれる紀伊山脈のいわば屋台骨とも言うべき地帯は、県土のおよそ八〇%を占める山村であります。この地域においても、若干の稲作と梅の生産や畜産などが行われていますが、一方の基幹産業である林業が振るわない。そういうこともあって年々山間地の人口が減り、しかも高齢化が進んで、現状を維持するのがやっとの状態にあるわけであります。県土保全、環境重視の幅広い視点から、これら山村への新たな社会資本の投資が必要でございます。紀伊半島を横断する農道や林道の整備とともに、中山間地域の立地を生かした農林業を振興することによって、ふるさとを守る人々が戻ってくる、あるいはまた新しい人たちが入ってくる、そういうふうな状況が出現すれば将来の県益につながるものと考えるのであります。我が県農政のUR対策はここに重点が置かれるべきであると考えるのであります。お考えをお示しいただきたいと思います。
 三つ目は、よい作物を生産しようとしたら、やはり土に問題があってはいいものができない、これは基本であります。土壌のよしあしであります。つまり、地力の回復であります。あらゆる有機質の廃棄物を集めて活用する。既にもう群馬県、静岡県、あるいは宮崎県でも、そういう土づくりにどんどんかかっております。土を製造するのであります。リサイクルによって新しい土壌生産を図ることは社会環境の上からも大きなメリットがあることで、莫大な処理物などに血道を上げるのはむしろナンセンスではないかと思うのであります。最近のニュースによりますと、既に掛川市などでは焼却炉を全面廃止して紙のリサイクルに転換するという、思い切った政策転換が図られたようであります。特に生ごみを微生物処理して有機肥料をつくるなどは、比較的高温多湿な我が県などでは条件的には十分可能だということであります。一般ごみや食品かす、家畜ふん尿、木材のくず、建築廃材など、ありとあらゆる有機質の廃棄物をこういうふうに処理して新しい土をつくるということになれば、百分の一の予算にも満たない資金でやれると思うのであります。焼却炉をつくるといっても何十億もかかるという、そういうことから考えたら安いものだと思う。そして、安い土を農家に提供できるようにする。微生物がたっぷり含まれた土壌によって和歌山県の果樹生産が日本一のタイトルを常に保持できるような体制というのは、資源にとっても、将来の農業にとっても一石何鳥かの効果があると思うのであります。これらについて、ひとつ農林水産部長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 林業問題に移ります。
 今、林野庁の存否が問われて厳しい状況下に置かれております。実は、林野庁なんかもう要らんのやという論議も現実にあるわけであります。しかし我が県は、特産の林業の不振が長期にわたって続いております。しかし、幸いなるかな、時代は国土保全や環境対策へといった、緩やかながらも追い風が吹いておることも事実でありますから、私はこの機会にかくのごとき方向で行政改革が力強く進められることを期待しておる一人でございます。
 以下、お尋ねをいたします。
 紀州材のブランド化を図る上で、高い生産性と高付加価値は必然のものであります。和歌山県内には各種道路も相当できてまいりました。伐採した木材の搬出は余り時間がかからなくなりまして、スムーズに搬出ができるようになってまいりました。各地に点在する製材工場をこの際思い切って二、三カ所に集約し、植林から山の管理及び完成品まで、いわゆるブランド化を図り、一貫工程に乗せて紀州材を世に出すという一つの経済のサイクルをもう一遍確認をして紀州材総合センターのようなものをつくるお考えはないか。山に対する経済効果は、常に新しい投資の機会をつくることによって雇用を生み、林産業の生命は次の代まで、またその次の代まで緑豊かなものに脈々として引き継がれていくと思うのであります。いかがでありましょうか。
 三点目は、水産業の振興であります。
 統計から見ると、平成に入って魚類の水揚げはだんだん減少の傾向にあります。それに伴って売り上げも低下しております。和歌山県から魚の影が薄くなったら、人は余りやってこんようになるのではないかと思うのであります。都会の友人から電話がかかってくるとき、魚のうまいのが食べたいというのが、あいさつの次におっしゃることであります。和歌山県は、水産を今以上に基盤整備もやり、魚がとれるように、魚が育つようにしなければならんと思うのであります。漁業先進県でありますから、その威信にかけても六百キロの海岸線を生かした水産業振興への対策と決意をこの機会にお聞かせおきいただきたいと思うのであります。
 地方分権についてお尋ねをいたします。
 地方分権論が平成七年の法制化に伴い、盛んになってまいりました。全国知事会議あたりでも相当論議が出されておると思うのであります。地方自治体は民主主義の道場であると言われて久しいのでありますが、知事は、地方分権の基本理念をどう受けとめ、解釈されておりますか、ご説明をいただきたいと思います。
 二つ目、地方分権が具体的に進んでまいりますと、その事務は実に煩多なものになることが予想されます。県を初め自治体に、果たしてその負担と責任、体力と能力というものが伴っていくであろうかという懸念があるのであります。中央は、もうやかましく言われれば、そういうふうな規制についても、どうでもいいようなことから地方へどんどん振ってくると思う。中央は軽くなるか知らんが、こっちは重くなるということを心配するのであります。必ずしも地方分権というのが喜んで全部受け入れていけるものであるかどうか、ここら辺に我々は疑問もしっかり持っておかなければならないのではないか。今後論議されることになると思いますけれども、そういうふうに地方にかかってまいる比重というものが必然的に起こってくることが考えられます。また、住民自身の意識についてもその向上が求められていかなければならない。本当の意味での地方自治のスタンスはどういうものであるか、こういうことについて総務部長からご説明あるいはまたお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 三つ目は、地方公共団体の職員──これはすべての職員を指すのでありますが、私は常に県民の先頭に立っていくべきものと考えております。これが使命であります。しかも、過去の慣例や成功例にとらわれない感性を持っていってもらいたい。昔の常識は今の非常識というぐらい世の中が変わっていっているわけでありますから、余りそういうふうな成功例を前例を引いて考えたり、物言うたりするようなことは役に立たんのではないかと思います。
 県職員の皆さんと言えば、気を悪くされるかもしれませんが、一回試験に受かったら、ずっと一生安全保障されたお立場であります。我々は、知事も含めてでありますが、四年に一遍えらい目に遭うわけであります。この試験、この手形を落とすということに、我々は四苦八苦するわけであります。知事は、まだ忘れていないと思う。ついこの間のことであります。そういうことから考えたら、県職員、公務員の皆さんは、それだけ頑張っていただかなかったらいかんのじゃないか、こういうふうなことを考えます。
 工夫改善や職員研修なんかも一遍見直されたらどうか。その実を上げるために、効果的に人間づくりもやりながら、勇気を持って県民の先頭に立って汗をかいていただきたい。平越先生が後ろにおられますが、高野山で座禅を組むお世話もしてあげてほしいし、あるいはまた今以上に外国、企業、市町村などとの人的交流も促進されたらいいと思う。人間形成の上で大いに幅の広い人材が、今後、県職員、地方公務員の中に求められる条件的な要素であろうと考えます。そういう研修の実を上げることについてのご答弁を賜りたいと思います。
 教育改革について若干申し上げます。
 まず最初に、こんな実話をどう思われますか。学習塾に通っている子供たちの親の職業を調べてみますと、一番多いのが教員であります。その次が公務員であります。義務教育を余り信頼していない、そのことを知っている人たちの子供さんはさっさと塾へ行っておる。お父さんは学校の先生であったり公務員であったり、こういう話。それから学習塾の経営者の談でありますが、いろんな人を先生に雇ってみた。しかし、学校の先生を雇うと余り使い物にならんと言う。この二点は、お答えいただかなくて結構であります。ただし、これに反発して腹を立てる先生方がおったら、恐らく今の二点の条件に当てはまる人じゃないかなと、意地の悪いことを私は考えておるのであります。
 質問に入ります。
 早くから言われていることでありますが、教育長さん、もうそろそろ通学区域の塀を取り除いて、生徒たちの自由な選択にお任せにするころではないか。生徒たちが自分の行きたい学校が選べるように、そういう学校区というものが解除されたら、ひっきょう学校も先生方も競争らしい競争の原理を実践する必要に迫られると思うのであります。人事の刺激も起こり、時代に合った状況が生まれると思いますが、その点はいかがでありましょう。
 二つ目、教育現場におけるいわゆる平均主義、平等主義、そういった事なかれ教育が、もう今完全に否定されつつあると思います。教師の人生も一般公務員と同様、一度試験に合格すれば一生保障されておりますから、余り激しい競争の場にさらされておるということではないと思うのであります。つまり、ぬるま湯の状況が戦後ずっと続いてきたと思うのであります。一般社会では、打ち続く不況のために、有能であるとか無能であるとか、そんなことは度外視してリストラのあらしが吹き荒れておるんです。そういう現実を見るときに、使命感なき教師の無責任に対するお考えというのはどういうことであろうかと思うのであります。
 三つ目、教育の礎は、申し上げるまでもなく知・徳・体であります。相撲の世界ではこれを心・技・体と言いますが、いずれも人間形成の上で欠くことのできない三大要素であることは申し上げるまでもありません。
 最近の顕著な傾向を申し上げますと、知育主義でよい学校、よい就職、そして例えば中央官庁・霞ケ関に入って大蔵省へ行ってという、いわゆるトップリーダーを目指した、どちらかというと知育に非常に重点を置いた教育の結果が、今、政官界や一流銀行に幾らでも見られる秀才たちの醜態ぶりにあると思うのであります。これは失敗したのと違うかという反省も当然ここに出ておるわけであります。特に、現代のような破天荒な激動期に入ると答えが出せないんです。答えのある問題には、すらすらと苦もなく試験を通ってきた。まあ試験のベテランという言葉が出ておりますけれども、わけのわからん問題が出てきたときに、はたと困っちゃう。自殺する人だってどんどんあるわけであります。不思議なんです。我々、勉強が余りできなかった者からすると不思議なことが起こってくるんですね。なぜ死ぬのか。まさに、新井将敬代議士らもそうではなかったかなと思うのであります。私は、この答えの割り出せない出来事に対してろうばいなすところなしの姿が、知育偏重教育のある意味では結果じゃないかなと思うのであります。こうなると、中小企業の経営者たちの方が腹が座っているし勘も鋭いから、大蔵省のエリートがわけのわからん問題に直面して周章ろうばいしているのを見ていながら、片方は答えを求めつつ既に行動に移るというようなしたたかさがある。
 そういうことを考えると、漱石がいみじくも「草枕」の中で「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される」、何とうまいことを言うているじゃありませんか。知・徳・体のバランスのとれた分厚い人間形成のための教育、つまり人間が人間をつくり育てる地道な作業行程を一日も早く確立していただきたいものだと願っておる一人であります。
 四つ目、これからの時代というより今日ただいま、明らかに人間の創造性や感性、独自性、スキルが求められる時代であると思います。教育の現場も、従来の点数一辺倒の採点主義から思い切って幅を広げて、点数を度外視した適応力を生徒自身が発見できるような自由な学習環境を考えていただけないものか。一昔前、私は、「生徒たちを野に放て」という意味の質問を申し上げたこともございました。田植えをやったり稲刈りをやったりした成果であるモチ米でおもちをついて老人ホームに持っていったりということで、教育現場の外へ出した子供たちは喜々としてそういう作業を一生懸命やるという人気のある野外授業であったと思います。今もやってくれております。
 また最近、山形県の中学生たちが、修学旅行で神戸の被災者住宅を訪問する計画をして、庄内米千二百キロを提げて被災者のお年寄りたちを慰問激励をしたという。これ、すごいニュースじゃありませんか。そういうことができるのは、農村が持っておる教育的な土壌という基盤というものが生徒たちに優しさを与え、勇気を与えておる。日本民族の原点がそういうところにあるのではないか。実に明るい美談にうれしくなってしまったわけでございます。これを見ても、教育は農業の営みの中から学ぶところが大きいと確信いたします。家庭教育のあり方とともに、生徒の自立心や能力の触発に知恵を絞って実績を上げられた教育長に、こういったことに対するお考えをお尋ねしておきたいと思います。
 五つ目、ごく最近、日教組のアンケートが発表せられました。キレる子供、何をしでかすかわからない生徒たちの悩みの深さをあらわしております。先生たちの一番の悩みは何かと、このアンケートで尋ねると、生徒たちとの価値観や常識のずれ、意思疎通のむなしさを感じておるというのが圧倒的に多かった。もうこうなると、学校の先生の言い分を信じられなくなる。先生が、もう教室を信じていけない、生徒たちに信頼感が保てない、意思疎通が図れないと言って投げているわけであります。
 日教組は、戦後教育の手段に職場を放棄して頻繁にストライキをやった。これは事実であります。教師としての自覚や責任よりも、唯物史観に基づく階級闘争、賃金闘争、イデオロギー論争の道を選んだのであります。まだ、その尾を引いておる。何でそんなに闘争、闘争と言わなければならんのか。何と闘うと言うのか。だれと闘うと言うのか。道徳を教えることを断固拒否した。祖国を侵略国家だと決めつけたり、国家であるとか、国旗であるとか、「君が代」であるとかを拒否して、慕い寄る子供たちを突き放すようなことをやったのは日教組ではなかったのか。私は、そのツケが今こういった凶悪な事件、子供たちの反逆に遭ってうろたえ騒ぐありさまになってきたのではないかと思うのであります。決して、日教組ばかりが悪かったんではない。しかし、その先頭に立って常に闘争を繰り返してきた。いたずらに興奮を巻き起こして、理性的に教育の場で子供たちを慈しみ育てるという基本をいつの間にか忘れてきたんではないか。ましてや、日本という国の歴史を歪曲し、あらゆる分野の対立を好み、社会主義政権の実現を叫んだのは日教組だったはずであります。違うと言うんだったら、そう言うてもらいたいと思うのであります。今、このことは間違っていたという謙虚な反省が必要だと考えます。
 一万人の先生たちにアンケートを求めました。答えたのは二二%です。答えられなかった先生たちが大多数であります。返事のしようがなかったのではないか。そういうことに対する反省から、やや理性が戻ってきつつあるのではないか。私は、答えられなかった先生方の中に、やや教師としての自覚や人間味を感じていきたいという気持ちを持ったのであります。これが、自由と平等主義の取り違えから来た一つの現象であると思います。しかし、組合の内外を問わず、毎日真剣に教室で頑張ってくださっている先生方が圧倒的に多いと思う。そう信じたい。悪貨が良貨を駆逐するようなことが絶対にあってはならんからであります。今日の教育現場のありさまを見るにつけても、沈黙しておるときではないと思うのであります。行動に移し、事の正否をただしていくことが、教育委員会にも文部省にも当然求められておる国民の声であります。
 六つ目、神戸のタンク山事件。犯罪史上、あんなおとなしい、色の白い、賢いと言われる子供が凶悪な事件を平然と表情も変えないでやってのけるというようなこと。調べてみると、全国の少年少女の殺人、強盗、放火、強姦等々凶悪事件は、平成八年から九年の二年だけで三千七百五十九件もあるのであります。きのうも起こっておる。校長さんにしかられたら熱湯をぶっかけたと、けさ見つけた新聞であります。大変な事件が次々、毎日起こっております。ナイフによって刺殺された女性教師は、これは殉職だと思うのであります。これらの事件をきっかけに、ナイフの所持を検査するかしないかで、また議論が起こってくる。二人組の女子中学生が、白昼お世話になった老人に暴力を振るって殺すというような残虐非道ぶりも見せられた。援助交際、覚せい剤、恐喝、放火、詐欺、たかり、何でも来いなんです。もう人権問題とは次元の違う話なんです。人権問題じゃないんであります。殺人事件なんであります。凶悪事件なんであります。このことについて阻害要因排除の決意が求められていると思うが、教育委員会はこの世論にどうこたえられるか。
 また、少年法の問題なども含めて県警本部長からお答えをいただきたい。
 時間が参りましたので、飛ばします。
 一番の心配は、この世代の子供たちがどう育っていくか、まさに国民的課題であろうと思います。
 少子化社会、高齢化社会の対応などについてもお尋ねをいたしたかった。特に高齢化社会というのは、次の少子社会で働く人たちの上にのしかかってくる重荷になりはしないかという懸念を申し上げたかったのでありますが、これも省略いたします。
 熊野博を成功させよう、知事、このことについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 以上で、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの馬頭哲弥君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 馬頭議員にお答えをいたします。
 まず、平成十年度予算についてであります。
 景気、経済対策について、本議会の冒頭で申し上げたわけでありますが、二十一世紀の故郷(くに)づくりを推進していくためには、その原動力となる経済活動の活性化こそが何よりも重要であると、私は考えております。したがいまして、平成十年度予算においても、新規産業の創出を初め企業立地施策の思い切った拡充など、長期的視点に立った産業育成、産業基盤整備の強化を打ち出したところでございます。一方で、現下の経済、金融情勢に即応した対策として、県民の皆さんの間にある金融不安や景気後退への懸念を払拭するため、中小企業者に対する融資制度を質量ともに充実するなどの積極的な施策を盛り込んだところでございます。
 お尋ねの公共投資につきましても、昨年の当初予算と比較すれば減少しておりますけれども、九年度二月補正予算で措置しております災害関連やウルグアイ・ラウンド対策関連の事業費、また本日提案いたしました繰越明許費を勘案いたしますと、実質的な年間の事業量としては前年並みの規模を確保したところでございます。あわせて債務負担行為、いわゆるゼロ国債を活用した公共事業の前倒しなどによりまして、切れ目のない事業発注にも配意をしたところでございます。極めて厳しい財政状況の中で、現時点においては県として最善を尽くしたものと考えてございます。
 ただ、経済は生き物でございまして、その時々の情勢に即応して臨機応変の措置を講じなければならないことは議員ご指摘のとおりでございます。今後のことにつきましては、目下国においても議論が重ねられておりますので、国の政策動向を注意深く見守りながら、これと軌を一にした適時適切な対応を図っていきたいと考えております。
 次に、今後の産業政策のあり方についてであります。
 本県産業を高度化、高付加価値化していくためには、議員お話しのように、技術の研究開発を主眼とした産業振興、また先端技術などを有する企業立地の促進が重要であると考えております。したがいまして、今後の産業政策としてもこのことを基調にして進めてまいりたいと考えてございます。
 新しい長期総合計画においては、六つの新時代を開く戦略的構想の一つに新産業の創出・育成を位置づけてございます。地域産業の高度化、新分野への進出、新規創業の支援、あるいは新規産業の導入などについて重点的に推進することにしております。また、いま一つの重要な視点といたしまして、経済の国際化への取り組みが挙げられると思います。昨年の夏以来、アジア地域におきましては経済不安が広まってございまして、中長期的に見れば、まだまだ世界経済で重要な役割を担うことには変わりはないと思っております。
 本県の地域産業が二十一世紀に向けて大きく飛躍するためには、このアジア地域を中心として発展する世界市場に対し積極的に対応していかなければならない、その考えは変わっていないわけでございます。このために、一昨年に設置した香港駐在員事務所を初め、今後一層、本県の海外情報収集力の充実、強化、海外市場の開拓等を通じて企業の国際的事業活動を強力に支援してまいりたいと考えております。
 次に、農林水産業に対する私の考え方であります。
 農林水産業は、申し上げるまでもなく国のもとでございまして、生活に不可欠な食糧等の供給、地域経済の担い手として重要な役割を果たしておるわけであります。また一方、国土の保全や地域文化の発信といった機能も発揮するなど、経済、福祉、教育、地域社会等の幅広い分野で貢献をしているものと考えてございます。
 本県におきましても、農林水産業は地域経済を支える重要な産業でございまして、その振興を県政の柱と位置づけて積極的な取り組みを行ってございます。その結果、全国一の果樹、杉やヒノキの優良林地の形成、黒潮の恵みに支えられた漁業など、全国に誇り得る産業として発展をしてきたところでございます。今後も、本県の基幹産業である農林水産業の健全な発展なくして県勢の伸展はないとの認識のもとに、中山間地域対策の充実を図るなど各般の施策展開に努めながら、本県の特性を生かした農林水産業を一層推進してまいる決意でございます。
 次に、地方分権に対する理念でございます。
 私は、常々、県政究極の目標は、県民の皆様が和歌山に住んでよかったと言えるふるさとを築いていくことだと申し上げておるわけでございます。そのためには、みずからの創意と責任のもとに施策を展開できる体制づくり、つまり地方分権を進めることが不可欠であると考えてございます。こういった意味で、昨年提出された地方分権推進委員会の四次にわたる勧告は大変意義深いものと評価をしておるところでございます。これらの勧告を受けて、政府がことしの六月ごろを目途に地方分権推進計画を策定する予定となってございます。しかしながら、お話にもございましたように、現実には財政問題を初めまだまだ多くの課題が残っておることも事実であります。来るべき分権型社会におきましては、地域に住む私たち自身が地域をよくする方策を考えながら、自主的にかつ主体的に地域づくりを進めていかなければなりません。
 本県におきましても、従来に増して地域の行政に対して責任を有することとなりますので、職員の意識改革を進め、あわせてこれからのふるさとはみずから汗をかきながらつくっていくのだという強い意欲を持って県政を進めるべきであると考え、「二十一世紀の故郷(くに)づくり」は新しい感覚と発想でということで職員に提唱したところでございます。これからは、行政と住民が一体となって一つの故郷(くに)をつくるという考え方で、和歌山県の持つ歴史、文化、自然を生かし、繰り返し申し上げますが、住んでよかったと言える地域づくりを進めていかなければならない、そのように考えております。
 高齢化、少子化は、質問通告にございましたが、省かれておりますので。
 熊野博についてちょっとお触れになりましたので、私の考え方を申し上げたいと思います。
 熊野は、日本の原郷とも言われているとおり、いにしえから人々が心と体のいやしを求めた場所でございまして、悠久の自然の中で独特の歴史と文化をはぐくんでまいりました。物の豊かさより心の豊かさが求められるこれからの時代、日本人の心のふるさとである熊野地域、また紀伊半島はますますその価値を高めており、世界に誇るべきものであると確信をしております。
 南紀熊野体験博の意義は、こうした熊野の魅力を、さらに紀伊半島全体を私たち自身が再認識するとともに、国内外に情報発信していくことであり、訪れた人々の心と体をいやし、満たし、新たな活力を生み出す安らぎの地であることを体験し、実感をしていただくことであろうと思っております。そういうことで、この体験博においては、本県の魅力を十分に発揮するとともに、この地域における積極的な取り組みこそが地方分権時代の、そして二十一世紀型の地域づくりには不可欠なものであり、その意味でこの博覧会を成功させ、さらにそのことが二十一世紀に継続して引き継がれることを期待して頑張ってまいりたいと思っております。
 以上であります。
○議長(木下秀男君) 農林水産部長平松俊次君。
  〔平松俊次君、登壇〕
○農林水産部長(平松俊次君) 農林水産業の振興を図れという中で、農業の振興でございます。
 本県の中山間地域は県土の八割を超える広大な面積を有し、その振興は県土の均衡ある発展を図る上からも極めて重要であると認識してございます。本県の中山間地域には厳しいところもございますが、これまで先人のたゆまぬ努力により、限られた耕地を有効に活用した梅やカキなどの果樹農業、また杉、ヒノキの優良紀州材など、全国をリードする力強い産地を形成してございます。またこの地域には、恵まれた自然環境や歴史、文化遺産などの資源も有しており、自然との共生の時代を担う地域として整備と活用が急がれてございます。
 このような中で地域の特性を十分発揮させるべく、これまでも農林道や農業集落排水の整備、また果樹や熊野牛の振興対策等を実施し、地域の農林業の振興や定住条件の整備に努めてきたところでございます。今後とも、地域の持つ豊かな環境の活用や県土の保全等にも十分配慮し、議員お話しのウルグアイ・ラウンド対策も積極的に活用しつつ、基幹産業である農林業の振興や魅力ある地域づくりに努めるなど、中山間地域の振興に一層取り組んでまいる所存でございます。
 次に土づくりでございますが、土づくりは農業の基本でございます。県では、二十一世紀農業振興計画において、自然との共生を柱に、土づくりや化学肥料、農薬等の削減を骨子とした環境保全型農業の推進を位置づけ、これまで意識の啓発を初め、堆肥製造施設等の整備に努めてまいったところでございます。
 議員お話しの生ごみ等を利用した土づくりについては、現段階ではコスト面等で問題がございますが、資源リサイクルの観点からも重要なことではないかと考えてございます。
 次に、林業の振興でございます。
 全国的にも国産材資源が成熟期を迎える中で、今後、産地間競争のますますの激化が予想され、この状況に対処するためには、生産段階や流通段階での低コスト化を図るとともに、安定的な価格、品質、量を兼ね備え、市場に耐え得る紀州材のブランドを明らかにすることが急務と考えてございます。
 このため、現在、紀北、紀中、紀南の三流域において林業家や森林組合及び製材業者などの林材業関係者、さらに住宅関係者との連携のもと、県産材の生産から流通加工に至る総合的な体制整備、さらには県産材の高付加価値化を目指した県の木材流通加工ビジョンの策定を急いでいるところでございます。
 今後、議員ご提案の紀州材総合センター構想についても、林業関係者等を中心に、その趣旨を十分視野に入れた検討を行い、林業の振興と山村の活性化に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、水産業の振興でございます。
 水産業の現状については、議員お話しのとおり、非常に厳しいものがございます。古来より本県漁業者は進取の気性に富み、その技術は県内外に広く伝えられ、その文化は小型捕鯨、ケンケン漁として今も受け継がれているところでございます。県においては、海の資源を守り、育て、提供する黒潮産業への飛躍を基本テーマとして、水産資源の維持と漁業経営の安定を図るとともに、海洋文化の伝承をも取り入れた、新時代に対応できる水産業の発展に努めてまいりたいと考えております。
 以上であります。
○議長(木下秀男君) 総務部長中山次郎君。
  〔中山次郎君、登壇〕
○総務部長(中山次郎君) 職員研修で資質の向上についてお答えします。
 昨年提出された地方分権推進委員会の勧告では、機関委任事務制度を見直し、多くを自治事務にすることにより、地方自治体の自己決定権が拡充するとともに自己責任が拡大することになります。本県といたしましても、この新たな役割を担うにふさわしい行政体制の整備を進めるとともに、特に時代の変化に対応できる創造的能力と政策形成能力を有する意欲ある職員を育成するため、職員研修所における能力開発研修の充実はもちろんのこと、高度な専門知識の習得と異分野での体験などのため、民間企業や国への派遣研修、海外研修にも取り組んでいるところでございます。また、平成十年度から公務員倫理研修を拡充し、新たに意識改革研修を取り入れるなど、従来にも増して、人格形成面での研修内容についても充実してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 教育長西川時千代君。
  〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育改革九点についてお答えいたします。
 教育におきましては、社会の急激な変化に押し流されることなく、豊かな心を持ち、明るく、たくましく生き抜く子供を育成することが基本的な使命であると考えます。また教育の場においては、常に時代の進展と子供の現実を踏まえ、制度や基準の見直しを図り、改めるべきものは勇気を持って改めていく必要があると認識してございます。
 県立高校の通学区域についてでございますが、これまで一つの学区につき全日制普通科高校を二校ないし三校程度とする中学区制をベターとしながら、全県一区の特色ある専門学科の設置や学校間連携等を積極的に進めてきたところであります。こうしたことにより、学区間の壁は従前よりも低くなり、生徒の学校選択の幅も拡大してきております。通学区域の見直しにつきましては、中学校、高等学校教育等への影響が極めて大きいことから、生徒や保護者の願いを十分把握するとともに、学校選択の自由、通学事情、生徒数の推移等に留意する必要がございます。こうした点を踏まえ、この議会に予算をお願いしているきのくに学校教育振興協議会等において、県民の幅広いご意見をお聞きしながら総合的に研究してまいりたいと考えます。
 次に、ご指摘をいただきました知・徳・体のバランスのとれた教育は、子供の全面的な発達にとって不可欠であり、教育の基本原理であります。したがいまして、こうした考え方に基づき、教育の本質を大切にしながら、社会の変化に対応した教育を目指して総合学科の設置や特色ある学科の新設・改編など、さまざまな教育改革を進めてきたところであります。しかしながら、近年の児童生徒の状況は、凶器を使った暴力事件など深刻な事態が広がり、その背景には共通して心の問題があると指摘されております。このことは、我が国の社会が物質的な豊かさを追求する余り、心の豊かさを見失ってきたことや、学歴偏重と言われる風潮の中で徳育や体育が軽視されてきたことの結果であるとも考えられます。心の教育を進める上で何よりも大切なことは、家庭においては親と子が、学校においては教師と子供、子供同士がもっと真っ正面から向き合い、愛情と心の交流を深めることであります。さらに、人間の五感を通じて生きた知恵を体得するため、ご指摘の農業体験や自然体験、ボランティア活動などを重視し、自然や生命に対する畏敬の念、協調性、家族を愛し、郷土や国を愛する心、社会に奉仕する心構えなどを培う教育を一層推進してまいります。
 体育に関しては、ひたむきにスポーツに打ち込み、汗することを通して心身を鍛えるとともに、喜びや苦しみを分かち合い、感動する心、互いに支え合う精神、社会的な規範を大切にする態度などをはぐくむことが今後一層重要であります。先日長野で行われた冬季オリンピックでは、本県出身の選手を初め多くの若者が活躍し、私たちに大きな感動を与えてくれました。このように自分の夢や可能性に向かって挑戦するたくましい青少年を育てる上でも、スポーツの振興を重要課題に位置づけ、取り組んでまいりたいと考えます。
 次に、少年による凶悪な事件への対応と正義感を育てる教育についてであります。
 教育委員会といたしましては、この事態を重視し、児童生徒の実態の把握や規範意識の啓発、街頭指導や通学路の安全確保などを具体的に指示し、学校、家庭、地域が一体となった取り組みを進めるよう、危機感を持って指導してきてございます。とりわけ、幼児期からの家庭でのしつけを通じて、思いやりの心や善悪を判断する力を育てることが重要であり、PTA関係団体とも連携して取り組んでまいります。また学校においては、あらゆる教育活動を通して、生命を尊重する心、正義感の育成に努め、問題行動に対する毅然とした対応ができるよう、教職員の一致した指導体制を進めてまいる所存であります。
 日教組のアンケートを例に挙げてご指摘いただいた教員としてのあり方や資質に関しては、個人としての思想、信条の自由は尊重しなければなりませんが、それを公教育の場に持ち込むことがあってはならないと考えます。
 また、指導力や子供の気持ちを敏感に受けとめる感性を高めることは、教員として当然の義務であります。教育に対する情熱や公教育を担う者としての自覚は、基本的な資質であります。さらに、教育に対する期待と関心が一層高まっている今日の状況から、教職員には幅広い社会性を持ち、保護者や地域の方々との信頼関係を築くとともに、教育的な価値をみずから体現していく努力が求められます。そのため、校長のリーダーシップと率先垂範により教職員が進んで自己研さんを重ねるよう指導するとともに、あらゆる機会を通して資質の向上に努め、教員としてのあるべき姿を厳しく求めてまいります。
 子供の問題は、大人社会の問題の反映でもあります。このため、まず教育関係者が、そして社会全体が、従来の価値観と生き方を変革し、学校、家庭、地域が一体となって子供を育てる体制づくりを進めていかなければならないと考えてございます。
 三つの楽しみと書いて「三楽」という言葉があります。親と子と楽しむ、師と友と楽しむ、社会とともに楽しむ、人間は人間に会うことによって人間となると言われます。その人間的な触れ合いを楽しむというゆとりを持ち、心が通い合うときの喜びや感動の中でこそ、子供たちは健やかに成長し、社会に貢献する人材へと育つものと考えます。このような展望と使命感を持って教育を支えるため、今後とも懸命の努力を重ねてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 警察本部長米田 壯君。
  〔米田 壯君、登壇〕
○警察本部長(米田 壯君) 馬頭議員のご質問にお答えをいたします。
 最近の少年非行情勢は、少年人口の減少にもかかわらず全国的に増加を続けており、中でも昨年、凶悪犯が十六年ぶりに二千人の大台を突破するなど極めて憂慮すべき情勢にありますが、本年に入っても中学生等によるナイフ等の刃物類を使用した殺傷事件等が相次いで発生し、社会不安を抱かせるとともに、さまざまな問題を提起しているところであります。
 その原因背景を端的に申し上げることは難しいのでありますが、大きく分けると、規範意識の低下、克己心の欠如等の少年自身の問題、核家族化や少子化の進展に伴い、親が子供のしつけに自信を持てないなどの家庭の問題、いじめ事案、校内暴力事件等に見られるような学校における問題、享楽的社会風潮を反映した有害環境の増大や非行抑止機能の低下といった社会環境の問題などが複雑に絡み合って少年非行の要因となっているのではないかと考えております。
 このような昨今の厳しい情勢を踏まえて、警察といたしましては、強く優しい少年警察運営という基本方針のもとに、悪質な非行に対しては厳正に対処していくという強さも、ひいては少年を善導するという優しさに結びつくものとの認識に立って、今後とも引き続き関係機関、団体等との連携のもとに、パトカーや制服警察官による街頭活動の強化、集中的な街頭補導活動の実施、たまり場等の環境整備等の施策に積極的に取り組んでまいる所存であります。
 なお、少年法の問題でありますけれども、現行少年法は、ご承知のとおり少年の健全な育成と保護を基本理念としておりますが、警察といたしましては現行法制に基づいて今後とも適切に対処してまいりたいと考えております。
 少年法の改正問題については、現在、少年審判の事実認定手続を中心として、法曹各界を初め各分野においてさまざまな論議が展開されていることは承知しております。警察としても、現下の厳しい少年非行情勢を踏まえて、少年法制のあり方について議論が深まることを期待しております。
 以上でございます。
○議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 16番馬頭哲弥君。
○馬頭哲弥君 教育長さん、現時点における最大級のご答弁ありがとうございました。
 私は、あなたが長年和歌山県教育のためにご心労をいただいて今回ご勇退されるのではないかという寂しさも感じておるところであります。せめて学浅き私は西川時千代先生に、私の大好きな田園詩人・陶淵明の「帰りなんいざ 田園将に蕪れんとす 胡ぞ帰らざる」、こういう含蓄深き詩をお贈りいたしたいと思います。「帰りなんいざ 田園将に蕪れんとす 胡ぞ帰らざる 既に自ら心を以て形の役と為す 奚ぞ惆悵として独り悲しまん 已往の諌められざるを悟り 来者の追うべきを知る 実に塗に迷うこと 其れ未だ遠からず 今の是にして昨の非なりしを覚る」。
 終わります。ありがとうございました。
○議長(木下秀男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で馬頭哲弥君の質問が終了いたしました。

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