平成8年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)
県議会の活動
議 事 日 程 第四号 平成八年三月十四日(木曜日)
午前十時開議
第一 議案第一号から議案第八十二号まで(質疑)
第二 一般質問
会議に付した事件
一 議案第一号から議案第八十二号まで(質疑)
二 一般質問
出 席 議 員(四十七人)
1 番 大 沢 広太郎
2 番 木 下 善 之
3 番 小 川 武
4 番 吉 井 和 視
5 番 下 川 俊 樹
6 番 井 出 益 弘
7 番 藁 科 義 清
8 番 門 三佐博
9 番 永 井 佑 治
10 番 新 島 雄
11 番 向 井 嘉久藏
12 番 佐 田 頴 一
13 番 和 田 正 一
14 番 阪 部 菊 雄
15 番 西 本 長 弘
16 番 馬 頭 哲 弥
17 番 谷 洋 一
18 番 長 坂 隆 司
19 番 高 瀬 勝 助
20 番 堀 本 隆 男
21 番 宇治田 栄 蔵
22 番 宗 正 彦
23 番 橋 本 進
24 番 井 谷 勲
25 番 玉 置 公 良
26 番 上 野 哲 弘
27 番 東 山 昭 久
28 番 尾 崎 要 二
29 番 野見山 海
30 番 木 下 秀 男
31 番 町 田 亘
32 番 中 山 豊
33 番 山 下 直 也
34 番 鶴 田 至 弘
35 番 森 正 樹
36 番 村 岡 キミ子
37 番 新 田 和 弘
38 番 平 越 孝 哉
39 番 森 本 明 雄
40 番 神 出 政 巳
41 番 松 本 泰 造
42 番 冨 安 民 浩
43 番 飯 田 敬 文
44 番 中 村 裕 一
45 番 松 本 貞 次
46 番 大 江 康 弘
47 番 和 田 正 人
欠 席 議 員(なし)
説明のため出席した者
知 事 西 口 勇
副知事 梅 田 善 彦
出納長 中 西 伸 雄
知事公室長 野 見 典 展
総務部長 木 村 良 樹
企画部長 藤 谷 茂 樹
民生部長 木 村 栄 行
保健環境部長 鈴 木 英 明
商工労働部長 中 山 次 郎
農林水産部長 日 根 紀 男
土木部長 山 根 一 男
企業局長 中 村 協 二
以下各部次長・財政課長
教育委員会委員 上 野 寛
教育長 西 川 時千代
以下教育次長
公安委員会委員 高 垣 宏
警察本部長 青 山 幸 恭
以下各部長
人事委員会委員長
若 林 弘 澄
人事委員会事務局長
代表監査委員 天 谷 一 郎
監査委員事務局長
選挙管理委員会委員長
谷 口 庄 一
選挙管理委員会書記長
地方労働委員会事務局長
職務のため出席した事務局職員
事務局長 岩 垣 孝
次 長 中 西 俊 二
議事課長 松 田 捷 穂
議事課副課長 佐 竹 欣 司
議事班長 松 谷 秋 男
議事課主査 山 本 保 誠
議事課主事 長 尾 照 雄
総務課長 岡 山 哲 夫
調査課長 柏 木 衛
(速記担当者)
議事課主任 吉 川 欽 二
議事課主査 鎌 田 繁
議事課速記技師 中 尾 祐 一
議事課速記技師 保 田 良 春
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午前十時四分開議
○議長(橋本 進君) これより本日の会議を開きます。
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【日程第一 議案第一号から議案第八十二号まで】
【日程第二 一般質問】
○議長(橋本 進君) 日程第一、議案第一号から議案第八十二号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
1番大沢広太郎君。
〔大沢広太郎君、登壇〕(拍手)
○大沢広太郎君 議長のお許しをいただきましたので、通告に従って一般質問をさせていただきます。
まず最初に、梅の生育不良について質問をいたします。
この問題につきましては、以前より諸先輩議員の皆さん方が質問をされておりますが、しかし一向によくなる気配がないので再度質問をさせてもらうことになりました。
私の現地調査では、ますますその被害が拡大し、事態はまことに深刻であります。梅畑の梅の木すべてが枯れて、作付転換をしたり、他の梅農家へ働きに行っている人も出ているのであります。関係農家の皆さんの心中、察するに余るものがあります。それを裏づけるかのように田辺市では、平成六年までに被害が発生した梅の木は約一万五千本に及び、平成七年には約五千本に発生したと聞いております。十アールに約三十本の木が植わっておりますので、平成七年までに約六十六ヘクタールの梅畑が消えたことになるわけであります。また、田辺市の農家の全作付面積は約二千八百七十ヘクタール、そのうち梅畑は約千百八十ヘクタールあります。平成六年の農業の総生産高が百四十三億円でありまして、そのうち梅の生産額は六十五億円であります。さらに、平成五年の工業統計調査によりますと、田辺市の製造品の総出荷額は四百七十九億円でありまして、そのうち梅の総出荷額は百六十一億円であります。工業統計調査ですので小規模工場は除かれておりますから、推計では二百億円とも二百五十億円とも推測されているのであります。
田辺市は梅産業にいかに依存しているか。田辺市の基幹産業は梅産業を除いては語れないものがあり、このままの状況が続くと田辺市の経済はまことに深刻な事態を招くことになります。また、このような被害は、田辺市にとどまらず近隣町村でも大きな問題となっていると聞いております。このことは、単に紀南の梅農家の問題だけではなく紀南地方の経済にも大きく影響してくるものであり、県として一日も早い原因究明を行い、梅の生育不良についての対策を講じることが必要であります。
県当局からのご指導やお力添えもいただいておりますが、先般、梅生産農家の方から、家族総出で、地区住民総出で頑張っても事態の改善がされない、あるときは農薬業者、肥料業者から何十万円もする農薬や肥料を購入して試験的に使用したがだめだったと、肩を落として話されているのを聞きました。この原因として、一、水不足説、二、なり過ぎ説、三、土壌悪化説、四、病原性バクテリア説、五、大気汚染説などが関係者の間で話が交わされておりますが、それだけに梅の生産者や関係者の不安は募るばかりであります。今の科学技術の粋を結集すれば、原因の究明は難しい話ではないと思うのであります。
梅の出荷額百六十一億円からすれば、二億円、三億円を研究費に充てても、産業経済全体から考えると大きな額ではありません。梅の生育不良についての研究を一日たりとも放置することは、もはや許されないのであります。知事のご英断をお願いし、次の点についてお尋ねをいたします。
一、行政と大学の研究所等による大がかりな原因究明のためのプロジェクトチームを結成し、かかる問題に対応する考えはないのかどうか。
二、県は、現在までにどのような原因究明の調査を実施してきたか。
三、昨年二月二十一日付で紀南農協より知事等あてに提出した要望書について、県当局としてどのように対応されているのか。
以上、三点についてお尋ねをいたします。
続きまして、県民待望の湯浅御坊道路が開通の運びとなり、これで吉備・御坊間十九・四キロが全通整備され、御坊市と和歌山市とはおよそ四十分で結ばれるほか、大阪方面とも一時間半近くで結ばれることになり、西口知事も、時間・距離が大幅に短縮され、産業や観光面で一層の活性化が期待されると報道機関へのコメントを発表し、また地元でも開通に伴うさまざまな波及効果への期待感を高めているところでございます。
この道路は海南湯浅道路の紀南への延長として整備され、吉備・御坊市間の自動車専用の一般有料道路で、制限速度が七十キロの片側一車線道路として開通すると聞いております。また、通行料金は広川・御坊間で四百五十円となり、和歌山市から御坊市までの料金を加算すると二千七十円となります。この広川・御坊間の四百五十円という料金でありますけれども、トンネルが多い海南・吉備間の九百二十円に比べて安いのではとの意見や、吉備・御坊間六百五十円を含めた和歌山・御坊間が二千円を超えるのは高いとの意見など、早くも多様な意見が出され、関心を呼んでおります。
また、御坊・日高地方を初めとする地元では開通に伴う波及効果への期待感が強く、先月九日に御坊市で、御坊市初め日高郡内の一市七町村の各種青年団で組織するハイウエーフェスタ実行委員会が主催した開通を記念するハイウエーフェスタフォーラムを開き、開通に伴う地域の活性施策についてのパネルディスカッションや大学教授の基調講演が開かれるなど、地元の熱い期待が論じられたと聞いております。この中で、基調講演をした大阪大学の鈴木胖工学部長はフォーラムの最後に、「海、山、川があり、気候も温暖で、こんな自然条件の整ったところはなく、地域が発展していくためには核が要る。御坊の町に目玉がないと、中のお客が外へ逃げていく。外のお客も入ってこない。こういうチャンスを生かすも殺すも、地元の人の意思が大切です」と締めくくったと聞いております。
そこで、この道路の開通に合わせて川辺町では六月に天文公園をオープンさせ、京阪神方面から年間六万人の入場者をと期待しております。オープンに向けて多様なイベントを企画しているとのことであります。また龍神村では、観光客の誘致を推進しようと龍神ふぁん倶楽部を五月に発足させ、村外の人たちに龍神のよさを知ってもらおうと計画しているそうであります。
そこで、お尋ねをいたします。
観光立県和歌山を積極的に推進するために、この道路の開通に合わせてのさまざまな取り組みについて、各方面の観光振興を含めた集客イベント等どのような計画があるか、お聞かせをいただきたいと思います。
次に、この道路の開通に合わせて、ことし三月一日から新宮駅と大阪駅を結ぶ夜行バス「ルナメール号」が西日本JRバスによって運行される運びとなりました。この夜行バスは一日一往復で乗客二十九人を乗せ、自動車電話やトイレなどが備えつけられているデラックスバスで、大阪方面へ行く場合、新宮駅を夜十一時半に出発をし、途中、紀伊勝浦駅、そして紀伊田辺駅に停車。紀伊田辺駅を午前二時四十五分に出て、大阪駅桜橋口へ午前六時に到着するのであります。一方、新宮方面へは、大阪を夜十一時半に出発、紀伊田辺駅に午前二時四十一分着、紀伊勝浦駅に五時二十五分着、そして新宮駅へ五時五十六分に到着いたします。料金は、新宮駅から五千五百五十円、紀伊田辺駅から三千三百五十円と、JRの特急料金を利用した場合より千円余り割安になっているということであります。
しかし、交通体系の整備がおくれている紀南地方にとって、この夜行バスは一長一短があると言えます。例えば、夜行バスは新宮駅と紀伊勝浦駅や紀伊田辺駅間の区間でのお客さんの扱いはしないこと、また和歌山市や関空にも通じていないといった不満の声が早くも聞かされております。
そこで、今回の湯浅・御坊の開通を観光振興や経済浮上対策として大いに活用すべきなのは当然のことだと思います。白浜、田辺から和歌山市や関西国際空港を結ぶハイウエー路線バスを運行させ、また西口知事が唱えている県内二時間交通施策によって整備が進められている国道百六十八号線や三百十一号線、あるいは三百七十一号線を経由して湯浅御坊道路の御坊インターに通じるバス路線の運行について、早急に検討し、導入してはいかがなものでしょうか。さきの大学教授が指摘されたように、せっかくのチャンスを生かさないと和歌山の経済浮上はありません。
また、南紀白浜空港が先日オープンいたしましたが、便数が少ないため、関西空港と結ばなければ観光客の誘致はかなえられません。それに加えて、紀南地方の交通の利便性の向上を図るためにもハイウエー路線バスが必要だと言えます。これまで県議会でも、多くの先輩議員さんがJR紀勢線の夜間便や早朝の特急・急行列車の運行をと再三質問されたようですが、余り実現に至っておりません。この三月十六日から、JRのダイヤ改正で日曜・祝日に限って紀伊田辺駅午前六時五十九分発天王寺行きの特急が運行されますが、紀南の地元住民にとっては、まだまだ利便性が向上したとは言いがたいものがあります。
例えば、天王寺方面行きの最終特急便は新宮駅発が十七時二十四分で、紀伊田辺駅発は十九時二十三分と、サラリーマンらが商談や会議で遅くなると特急電車に乗れないというのが現状であります。このため、県においては、白浜駅や紀伊田辺駅を夜九時か十時ごろに発車し、和歌山や関空へと向かう路線バスの運行を導入するといったことを各方面に働きかけてはいかがなものでしょうか。
昨年は阪神・淡路大震災が発生して、県内の観光関係者が大きく被害を受けるだろうと心配しておりましたが、昨年の五月の連休を境に観光客は増加し、トータル的には微増していると聞きました。それほど紀州路は観光資源として魅力があり、豊かであります。また、観光立県和歌山という見地から見ますと、和歌山に訪れる観光客が快適に過ごしていただくためにも、御坊から新宮までの間についても、建設省と県が協力して全国に普及している道の駅を誘致してはいかがなものでしょうか。この道の駅は全国に既に二百カ所以上設置されており、花や農林水産物、そして郷土の名産物を即売するなどして観光客等に快適な旅を楽しんでもらっているものであります。
また、湯浅御坊道路の間には吉備湯浅パーキングエリアが設置されておりますが、ここはトイレと電話と自動販売機しか設置されておりません。ここを充実させて、県内各地のふるさと産品を販売するコーナーを設けてはいかがでございましょうか。
次に、過疎化や全国平均を上回る高齢化社会の進行といった大きな課題を抱えた我が和歌山県にあって、この高齢化社会の中で一つの問題を取り上げてみます。それは、高齢者の交通事故対策であります。
昨年一年間に和歌山県で発生した交通事故は、件数で七千五百五十二件、けが人が九千三百四十六人、そのうち二十四時間以内に亡くなられた死亡者の数は百十八人で、特に死亡者の数はこの数年間で三けたの百人を上回っているのが現状であります。このうち県警察の統計による高齢者六十五歳以上の交通事故は、県内では昨年一年間で千三百七十五件発生しており、この中で千十人の方がけがをし、四十人の方が亡くなっておられるわけであります。この高齢者事故の発生件数あるいはけが人の数、死亡者の数を全体の事故と対比してみますと、発生件数で一七・七%、けが人で一〇・八%、死亡者数で三三・九%となっており、特に死亡者数は事故全体の四割近くを占めておるわけでございます。この全体の構成比は年々増加しており、改めて本県の高齢者の事故の深刻さが数字の上でもはっきりとうかがえております。中でも、地域別に見てみますと、高齢化が大きく進行している紀南地方が多く、件数で全体の約二七%、けが人で二八%と、四十万都市和歌山市での件数を少し下回っているだけの数となっており、過疎化が進む紀南地方での高齢者の交通事故がいかに深刻なものかと言えるわけでございます。
ここで高齢者の運転免許証の取得状況を見てみますと、和歌山県では、昨年十二月末現在、全人口の三人に対して二人に当たる六十四万五百三十六人の方が運転免許を持っているのに対し、このうち六十五歳以上の高齢者は九・六%、つまり六万二千七百十五人の方が免許を持っており、都道府県別に見てみても、免許人口に比べて高齢者の免許保有は、トップの島根県から数えて全国七番目になっております。また、県内を地域別に見てみますと、免許人口に対する高齢者の免許保有率は、古座川町が全人口二千二百四十八人に対し二三・九%に当たる五百三十五人の高齢者の方が運転免許を持っており、次いで野上町、北山村、金屋町、熊野川町の順になっております。いずれも過疎化の進む町村で、高齢者の免許保有率が高いことがうかがえます。
そこで、高齢化社会が進行し、平成十二年には高齢化人口が全国平均を大きく上回り、全体の二一・三%になると予想されている本県にあっても、一つの問題点を投げかけられようとしております。
それは、先月十日付の朝日新聞夕刊面トップで、「高齢者 運転免許証の返納制を新設 事故増で警察庁方針」との見出しのついた記事が大きく記載されました。その記事によりますと、まず第一点は、六十五歳以上のドライバーには運転免許証の返納制を新設、第二点は、七十五歳を超えたドライバー免許の有効期限を現行の三年に改めて期間を短縮し、免許更新時には実技の講習を行う、第三点は、高齢者ドライバーを示すシルバーマーク標章制を導入し、一般のドライバーに対してこのマークをつけたドライバーの保護を義務づけ、これを怠った場合罰則を設けるというもので、警察庁では、有識者らの意見を聞いた上で今年中にこれらのことを盛り込んだ道路交通法の一部改正案を次期通常国会に提出する予定となっております。これは、高齢者が運転中にいつも走っていることを忘れるといったケースや、体力の衰えとともに反射能力や視覚、聴力の低下などで高齢者が事故を起こす確率が高くなっている点を統計上からも分析などし、明らかにしたのでございます。
この記事には、高齢者が事故を起こす確率が高いといった点を踏まえて、免許証を返却したり免許更新しなかった場合、都道府県の公安委員会が表彰するなど検討しているとなっておりますが、このような運転免許制度の見直しは、昨年一年間、全国で高齢者による死亡者の数が全体の事故による死亡者の三割を占めるといった我が国史上初めての現象が一つの引き金になっており、それほど高齢者の事故防止対策が避けて通れないものとなってきております。これによって、高齢者の運転免許証の返納や七十五歳以上のドライバーの実技講習制度は、確かによい点もあるかと思われますが、しかし高齢化社会の進む本県の現状には不都合な点もあります。本県では六十五歳以上の方が車のハンドルを握る割合も高く、若者が都会へと流出する町村では農林水産業などに従事するといったケースが数多くあります。また、現役でばりばり働いている六十五歳以上の方を高齢者と呼ぶには本県では余り的を射ていないということも一理あるほか、六十五歳以上の方が働いていかなければならないといった点が現実に置かれた過疎化における町村の現状だとも言えます。
そこで、県警察におかれましては、これまで交通安全協会と協力するなどして高齢者を対象にしたシルバー教室を開いたり、またシミュレーションシステムを搭載した高齢者の交通安全講習に使う移動車両を導入するための予算案を今議会に提案するなどし、取り組まれておりますが、高齢者のペーパードライバーの実態も含めて、本県での高齢者の交通事故対策について何点かお伺いをいたします。
交通事故対策で基本となるものに三Eの原則、いわゆる交通安全教育、交通信号機等の交通安全施設の整備、交通指導取り締まりがあると聞いておりますが、その三Eの原則のうち、一、高齢者を対象とした交通安全教育の推進状況について、二、高齢者は目、耳及びその他身体的に不自由な人が少なくない状況にありますが、高齢者を対象とした交通信号機等の交通安全施設の整備で特に配意している施策についてお伺いをいたします。また、そのほか、高齢者の交通事故防止対策上、和歌山県独自で実施している事項があればお伺いをいたします。
以上をもちまして、私の第一回の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの大沢広太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事西口 勇君。
〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 大沢議員にお答えをいたします。
まず、梅の生育不良についてでございます。
ご質問のように、梅は本県農業の基幹作物でございまして、日高、西牟婁地域を中心に積極的に振興を図っておるところでございます。また、健康食品としての梅干し、梅ジュース等の加工業を含め、梅関連産業は地域の重要な地場産業となっておるわけでございます。それだけに梅の生育不良ということについては大変重要な問題と認識しておりまして、先ごろも現地に赴き、生産者の方々とお会いをしてその実情を承ってきたところでございます。
生産者の方々からは大変厳しいご意見もございました。このために今議会に関連予算をお願いしておりますけれども、試験研究体制を一層充実するとともに、関係機関との連携を強化し、原因の早期究明に取り組むように関係者に強く指示をしているところでございます。
次に、観光問題であります。
このたびの高速道路の紀南延伸あるいは南紀白浜空港のジェット化整備などによって交通網の整備が一段と進むわけでありますけれども、本県の観光もまた飛躍発展の絶好の機会を迎えておると言えると思います。県といたしましても、この機会をとらえて、新しいステップを踏み出そうとしている和歌山を舞台にしてあすの観光のビジョンを和歌山から発信するため、四月十日から十一日にかけて、県内外の観光関係者あるいは本県と友好姉妹提携を結んでいる国々の参加も得て、今・心の観光の創生期ということをテーマに、田辺市において世界観光フォーラムの開催を進めておるところでございます。
このフォーラムを受けて、いにしえにこの地を歩いた人々に思いをはせながら心のふるさと和歌山に触れていただこうと、中辺路町の滝尻王子から熊野本宮大社まで五回に分けて実施する熊野古道ウオークの開催も計画をしておるところでございます。
議員ご指摘のように、この開通を記念して地元関係団体などによる広域的な実行委員会組織が発足し、さまざまなイベントも実施・計画されておりまして、県としても実施に向けて協力をいたしておるところでございます。
今後とも、観光展やキャンペーン、あらゆる機会を通じて関係機関と連携をしながら宣伝活動を展開し、本県の観光振興を図ってまいりたいと考えておるところであります。
以上であります。
○議長(橋本 進君) 農林水産部長日根紀男君。
〔日根紀男君、登壇〕
○農林水産部長(日根紀男君) 梅の生育不良についての県の原因究明調査の経過についてでございます。
梅生育不良の原因究明につきましては、これまで暖地園芸センター、果樹園芸試験場が中心となって、地元の梅病害虫特別対策協議会あるいは国の研究機関や大学等との連携のもとに、栽培及び病理面からの研究や大気環境調査を進めてきたところでございます。
栽培面の取り組みといたしましては、着果量の調節、かん水、土壌改良等の試験に加えまして、発生地域における樹勢回復をねらいとした現地試験等を実施してございます。また病理面では、細菌の病原性や現地発生園での薬剤試験を実施してございます。大気環境調査につきましても、現地の固定局や移動測定車による観測及び酸性雨調査を継続して実施してございます。
次に、地元の農協からの要望等に対する対応についてでございます。
要望の内容につきましては、主に試験研究体制の充実、現地支援対策及び大気環境の調査研究等でございます。これらに対する対応については既に実施をしてきたところでございまして、平成八年度においてさらに試験研究体制の一元化と効率化を図るため、暖地園芸センターを核とする研究チームを組織するとともに改植等の関連施策を充実強化することといたしてございます。
いずれにいたしましても、関係機関との連携を密にして、原因の早期究明とその対策に向けて全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 企画部長藤谷茂樹君。
〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 大沢議員にお答え申し上げます。
この三月の湯浅御坊道路の開通を初め、県下の道路網の整備には目覚ましいものがありますが、こうした道路網の整備に合わせ、高速交通機関の複数化、公共輸送のサービスの多様化、さらには観光振興を図る観点からバス路線の充実を図っていくことが重要であると考えてございます。
議員ご提言の、新宮、田辺、白浜方面からの関西国際空港へのアクセスバスにつきましては、バス事業者において現在実現に向けて積極的に検討されているところであると伺っておりますが、このバス路線が開設されると関西国際空港を使った紀南地方への観光客誘致の大きな弾みにもなるものと考えますので、県としても実現に向けて働きかけているところであります。
次に、国道百六十八号線、三百十一号線などの内陸部を通るバス路線の開設につきましては、需要や道路幅員の問題等により、その運行は現段階において難しい状況であると伺っておりますが、道路整備が着々と進んでいる現在、内陸部におけるバス路線開設について、道路の整備状況に合わせて関係者に働きかけてまいりたいと考えてございます。
次に、高齢者の交通事故防止対策でございます。
議員ご指摘のとおり、高齢者の関係する事故が増加している中、特に高齢免許保有者の増加とともに高齢ドライバーの関係する事故が、十年前に比較すると約二・四倍と大きく増加している厳しい情勢にあります。
県といたしましては、そういった情勢を踏まえ、各季節ごとの交通安全運動などを通じた高齢者の事故防止に関する県民意識の醸成、啓発・広報活動、交通安全教材や啓発資料の配布、市町村担当者に対する指導者研修、反射材の普及などに努めてきたところであります。また、高齢者の方みずからが歩行中や自転車乗車中、さらには自動車運転中の危険性などを実際に体験学習する参加実践型の安全教育につきまして、これまで和歌山市や田辺市など六市町村で実施し、安全知識や技術の一層の向上を図ってきたところでございます。
高齢化社会と車社会のますますの進展にかんがみ、警察など関係機関、団体とも協力いたしまして、今後とも交通弱者並びに運転者対策の両面から高齢者交通安全対策の充実強化に努めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 土木部長山根一男君。
〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 大沢議員にお答えいたします。
道の駅につきましては、国道四十二号沿いで志原海岸、イノブータンランドすさみ、またそのほかに龍神、サンピン中津、ふるさとセンター大塔、牛馬童子ふれあいパーキング、道の駅しみずが開設されております。さらに、紀北地方ではございますが、昨年十一月、かつらぎ町の国道二十四号沿いに紀の川万葉の里がオープンしたところでございます。
吉備湯浅パーキングエリアにつきましては、現在、日本道路公団及び地元関係者の方々とともに、地場産品の販売所を設置するなどの活用方針について検討中でございます。
今後、道の駅や御坊以南の高速道路に設置されるサービスエリアなどにつきましては、観光案内や地場産品のPRを行う場としての機能を持たせ、地域振興に寄与できるよう努力してまいります。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 警察本部長青山幸恭君。
〔青山幸恭君、登壇〕
○警察本部長(青山幸恭君) 大沢議員のご質問にお答え申し上げます。
議員ご指摘のとおり、高齢者の交通事故は年々増加傾向にございまして、このため、高齢者の交通安全教育の実施に当たっては、交通事故の実態等を踏まえ、参加・体験・実践型の交通安全教育など、常に新しい視点に立ってより効果的な推進に努めているところでございます。
具体的には、高齢者ドライバー対策としてのシルバー教室の実施、いきいき長寿社会センターの協力を得ての老人の船における洋上安全教室の実施、各老人クラブの会合等を活用した交通安全教室の開催等でございまして、平成七年にはこうした安全教育を含め約四百回、全部で二万三千人の方々の高齢者に対する交通安全教育を実施したところでございます。今後とも、関係機関、団体と連携の上、一層の推進に努めてまいりたいと思っております。
次に、高齢者を対象とした交通安全施設の整備についてでございますが、その内容といたしましては、視力などの低下を補うための音の出る信号機、青の時間が延長する思いやり信号──これは弱者感応化でございます──信号の残り秒数を表示する残秒表示つきの信号機等でございまして、これらの安全施設の整備によって高齢者の事故防止に努めているところでございます。
次に県独自の対策といたしましては、思いやりのある交通環境づくりを推進するため、平成七年の五月から毎月十五日を「交通弱者にやさしい日」と指定して県下一斉に高齢者の保護対策を推進しているほか、歩道の足元付近に信号灯を埋め込んだ、いわゆる喜の国信号の設置などを行っております。
なお、議員ご指摘の交通安全教育車につきましては、科学的適性検査機器を搭載した運転者教育用の車両でございまして、本議会にご提案させていただいているところでございます。この車の導入によりまして、郡部における高齢者の交通安全教育をより効果的に実施することができ、高齢者自身の安全教育あるいは技術の習得に大きく役立つものと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
1番大沢広太郎君。
○大沢広太郎君 ただいま、知事初め関係部長から答弁をいただきました。しかし、簡単ですけれども、三点ばかり要望させていただきたいと思います。
まず梅の問題ですが、バブル時代を含め、平成景気など経済成長に支えられて食品も美食や健康食、自然食ブームに乗り、梅消費者が大変拡大し続けています。この中で、梅農家は消費者ニーズにこたえるために生産に追われてきたのが昨今の実情だと思います。しかし、過疎化や農業人口の高齢化が進み、若い働き手が少ない農家もあり、農家での土壌の手入れなど、体力を伴う作業ができなくなってきているのも現状でございます。そこで、梅農家の後継者対策についても取り組んでいただきたいと思います。
また、原因説については、さきの議会で同僚議員がモグラによる原因説を新説として発言されておりましたが、農家の人たちは、原因がはっきりしないから、大気汚染説が浮上するとそれに不安を持ち、またバクテリア説が出てくるとこれにも不安を持ち、またさらに新しい説が出てくるとこれにも不安を持つといったような状況が今後も起こると予想されますので、県当局におかれては総合的かつ本格的に対策をお願いいたします。
また、聞くところによりますと、これらの生育不良は関西電力御坊発電所が稼働した昭和五十九年以前にも発生していたということですが、もし大気汚染が原因とされるならば、自然食品、健康食品として梅が重宝がられているときに、和歌山の梅にとっても将来はありません。もしそうでありますと、発電所の操業停止も視野に入れながら考えなければなりません。また、それがだめな場合には、全国最高水準を誇る和歌山の梅の生産技術を最大限に生かすためにも、産業の空洞化時代に合わせて海外での梅栽培についても考えていかなくてはなりません。梅産業の振興発展のために県のさらなるご尽力に期待をいたします。
次にハイウエーバスでございますけれども、紀南の区間を初め和歌山市には停車しないといったような車は観光客を中心に考えた運輸行政でありまして、地元の生活優先のものではなく、大変残念に思います。県経済の活性化、観光立県和歌山のためにも紀南と和歌山市、それに紀南と関空や京阪神を結ぶハイウエーバス路線がぜひとも必要であります。特に関空への電車の乗り継ぎが不便な点もあることから、採算面も前提条件にしながら取り組んでほしいものでございます。
最後に高齢者の交通事故対策でありますけれども、警察では、高齢者は六十歳以上と昭和六十三年まで決めておりました。また、以前は六十歳以上の方を「高齢者」とは言わずに「老人」あるいは「お年寄り」、例えば「老人の交通事故対策」といった表現をすると言ってきたと聞いております。つまり、高齢者の概念には難しいものがあります。
新免許証制度の導入ですが、一つ気になるのは、六十五歳以上のドライバーがシルバーマークをつけていることによってお年寄り扱いされると再就職が難しくなるなど、高齢者の生きる権利や人権を侵すケースも考えられるのではないでしょうか。こういったシルバーマークを警察が法的に義務化、強制化するというのは余り好ましくないと思います。高齢者の安全のためにも県が中心になって、強制的にではなく、温かく指導していくといったケースが必要だと思います。高齢社会政策課を持つ民生部や交通政策課を持つ企画部、それに道路関係の課を持つ土木部などを含めたプロジェクトチームを結成していただき、警察や県教育委員会の社会教育課を含めた対策協議会のようなものを設けてはいかがなものでしょうか。戦前戦後の日本を支えてきた高齢者の方々に楽しく人生を過ごしていただくためにも諸施策を講じていただきたいと思います。
以上三点要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で大沢広太郎君の質問が終了いたしました。
○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
34番鶴田至弘君。
〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 議長のお許しをいただきましたので、質疑並びに一般質問をさせていただきます。
まず、住友金属工業の合理化計画の進行と和歌山県経済への影響についてお尋ねをいたします。
平成五年二月議会におきまして、私は、同社が行おうとしている人員削減計画に対して、不況下で職をやめざるを得なくなった方々の再就職は極めて難しいこと、あるいは同社が多角的な産業分野に進出することは市内の中小企業に多大の不利益をもたらすこと、またそれがそこで働く人々に労働条件の悪化を招くという理由で、その人員削減計画を中止されるよう県として同社に申し入れ、その実行を求められたいと質問をしたところでございます。当時の商工労働部長は、「人員削減計画が事実とするならば、和歌山製鉄所への影響も十分考えられることでございます。県としても、従来より従業員や下請企業等に十分配慮するよう申し入れてきたところでありますが、さらに強く要望してまいりたい」と答弁をされたところであります。
県としては、その後、住友金属に対してどのように対応してこられましたか。そして、同社はその申し入れに対してどのようにこたえ、対応されてきたか、明らかにしていただきたいと思います。
人員削減数、出向数、再就職の状況、この間に行われた地場産業への影響等、どのように県は掌握されておりますか。
同社は、和歌山県においても飛び抜けて大きな企業でありました。かつて県や市は、この企業の育成に莫大な財政資金を投じて港湾を整備し、道路を建設し、税制においてもさまざまな優遇措置を講じてまいりました。大企業が繁栄すれば、その影響で下請もふえ、仕事もふえ、雇用もふえて県は繁栄する、とりわけ和歌山市は企業城下町として繁栄するという論理でありました。そしてその論理は、一時的に確かに有効に働きました。同社は、みずからを地域経済の重要な担い手として位置づけておりました。
次に紹介する文言は、同社がその繁栄を誇りながら西防沖埋め立てを発表した際の「埋立計画要約書」という文書の一節でありますが、次のように述べております。
「当製鉄所の和歌山地域における経済的位置をみると、従業員は市内就業人口の約一五%、製品出荷額は約六四%を占めている(中略)また、当製鉄所が県内企業に支払う物品購入費、運送費、工事費や、従業員が日常生活上支出する金額の合計は、概算年間七百五十億円と推定されるが、この金額を県・市の予算総額(昭和五十二年度当初予算県二千三百七億円、七百二十九億円)と比較すると地域経済に対する貢献度が容易に推定できる。 従ってもし本計画──埋め立てのことであります──が実施できずに当製鉄所の生産規模を大幅に縮少せざるを得ない場合は、地域経済に甚大な影響を与える」、逆に言えば、埋め立てを進めることは地域経済に大きなメリットを与えると言わなければならないと豪語し、埋め立ての承認を迫っていたわけです。ここには、みずからの経済社会における社会的地位を明確に述べているわけであります。さらに、「かねてから地域社会との共存共栄を基本的な経営方針とし、三分の一世紀にわたって和歌山市と共に歩み、共に栄えてきた当製鉄所は──埋め立てができるかどうか──今や重大な岐路に立っている」として、「この選択は、単に一企業の問題ではなく、当製鉄所と共に歩む地域社会にとっても極めて重要な命題である」として、みずからその社会的責任、地域に対する責任を表明しているところであります。
長くなりますが、もう少し引用いたします。「企業が地域社会のよき隣人として、否、その一員として、行政も住民も企業もひとしく運命共同体の構成員として、自らの社会をよりよきものにしたい願いには何ら変わりのある筈がない」、それは「企業の社会的責任でもある」と、格調高く論じているところであります。ほかにも珠玉のごとき言葉が散見できますが、以上にとどめます。
大企業の社会的責任は、好況・不況によってその果たし方は変わることがあるでしょうが、果たさなければならないということについては、この文書自体が物語っているところであります。その限りにおいて、この文言では、同社の意思はまさに崇高であります。しかし、世界的な鉄鋼不況と称せられる環境に置かれるや、その言葉は簡単にほごにされてしまいました。
かつての一万数千人の社員は、昨年の五月段階では、出向者も含めて約八千名と言われ、構内現場で働く人々は五千名を下るときもあると言われています。平成七年度中には、さらに一千名を超える方々が離職を余儀なくされました。この不況下で新たな職を求めなければならなくなっていると言われています。出向者三千数百名の方々が鉄鋼とはまるで関係のない、なれない仕事場の中で、もともとそこで働いていた労働者との間で苦しい競合を強いられていると聞きます。もちろん、うまく転職し、新しい道を見つけ出した方もおられますが、多くの方々はそうではなかったようであります。
経営面では、下請への外注費の削減が図られ、単価の一方的な切り下げが行われました。それは有無を言わせぬ過酷なものであり、多くの下請零細企業は泣きながら耐えるか、時には廃業のやむなきに至りました。和歌山市の経済状況は深刻な影響を受けたのであります。そこには、地域社会との運命共同体の思想も、共存共栄の思想も見られず、企業の社会的責任の片りんもなく、徹底した資本の論理が貫徹されたのでした。もちろん、このような資本の論理は同社にだけ働いたわけでなく、不況に見舞われた大企業のすべてを貫徹したものでしたが、それはまさに地域社会への責任を放棄したものであったと言えるでしょう。
本来は、国として、このような大企業の横暴に対して民主的規制をかけ、労働者の雇用と権利、地域経済への貢献を義務づけるべきだと考えますが、国の姿勢は全くその逆で、資本の応援団を積極的に買っている現状であります。このようなとき、地域経済への多大の貢献を期待して、過去に多大の支援を与えた自治体として、また大企業に対しては弱者である労働者や小零細企業を守る立場から、地方公共団体としての県や市は、同社に対して弱者へのしわ寄せをしないよう必要な対応をすべきだと思います。当局は、大企業の地域社会に対する責務をどのように考えておられますか。その責務にこたえるべく指導する任務は当局にあろうかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
同社は、本年に入ってからも全社で三千四百名の削減を図るリストラ計画を発表し、和歌山でも一千名がその対象になると言われています。首切り、下請への出向、下請企業へのさまざまな負担の転嫁、それによる下請、孫請の経営的困難、そこでの労働者の解雇、そのような連鎖が考えられるところであります。新しいリストラ計画での地域経済への影響をどう考えられますか。地域経済への悪影響を未然に防止し、また最小限にとどめるために、県当局のその大きな努力を住友金属の指導に当てられるよう求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
次に、西防沖の埋め立てについて、原点に関連してお尋ねをいたします。
埋め立ての目的は、現在もなお公害工場の沖出しということになっています。しかし、埋め立てている当事者も、それを免許した者も、免許条件の工場沖出しなど既に全く念頭になく、新たな利用の準備に大わらわになっています。ここ五年間、法と行政が許したことと全く別のことが現実に進行しています。この矛盾を私は平成五年の六月議会でただしたところ、土木部長は「これは埋立権を所有する者としての──転用という──希望を述べたものであって、県としては、具体的な変更申請がなされない以上、従来の免許は依然有効であろう」と答弁されました。単に希望を述べたものではなかったことぐらいはだれでもわかっておりましたが、土木部長はあえてそう答弁をされました。
それから以降、免許庁の県当局自身が埋立用地の利用検討委員会をつくり、幾つかの内実を伴った答申を受け、それに沿って利用方の研究調査を開始し、関西電力はLNG発電所やLNG基地建設のためのアセスメントを行うなど、そういう段階に入っています。もはや、住友金属が希望を述べたというような段階でないことは、万人が認めるところであります。しかし、この時点でもなお西防沖は公害工場沖出しのために埋立工事が精力的に行われているし、免許庁はそれを条件に許しているわけであります。免許権者及び免許庁は、公害工場沖出しを目的に埋め立てを許可し、みずから別の目的を持って埋め立ての進行を認知しているわけです。これは、明らかに不法行為ではないでしょうか。
私は、平成五年の時点──ちょうど第二工区が竣功した時点でしたが──第三工区については、この時点で目的が異なったのだから埋立工事を中止し、新たな判断を新たに下すべきだと申し上げましたが、それは退けられました。廃棄物の処理という大きな課題もあり、困難な事情があっても、明らかに法の許可したものと異なった工事をすることは法に対する背信だと考えたからでありますが、それは退けられました。現時点では、県と和歌山市、住友金属、関西電力が合議の上で法の定めた目的と異なった方向に動いているということは、法治国における行為としては極めて残念であると考えるのですが、いかがでしょうか。
公害がなくなったので工場沖出しを中止するという住友金属の申し出そのものに対しても十分な検討がなされたのか。さきに紹介いたしましたように、埋め立て前は、地域への責任のためにもと豪語しながら、その埋め立てを県民、市民に求めましたが、不況になれば鮮やかに方向転換をいたしました。将来、同社の好況期に、またまた公害発生という可能性がないとは断言できません。再び鮮やかな転換があるやもわかりません。これらを客観的に判断することなく企業も県も既成事実をつくり上げて、転用、転売へと進んでいるのはいかにも安直ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
ところで、今改めてお聞きいたしますが、公害工場沖出し中止、その埋立地を目的外に転用せざるを得ないとした住友金属は、どのような形でこの責任をとるのでしょうか。県はどのようにその責任をとらそうとしているのですか。
住金が埋め立てのため莫大な投資をした、それで責任が果たせるとするならば、埋め立てに要した経費がそもそも幾らであったかも明らかにさせるべきで、関電への転売で幾らその投資を補てんしようとしているのかも公開すべきだと思いますが、いかがでしょうか。県の知り得ている情報も含めて明らかにしていただきたいと思います。単に第三工区を公共の用に提供されたからと、それでうやむやにしてよいとは思いません。
また、上程された予算案の中に、八千万円を投じて紀北、紀中の発電による環境影響調査なるものが計上されていますが、県としては西防沖埋立地へのLNG発電所の建設に積極的に対応しようということですか。関電もアセスメントを行っていると聞きますが、それとの関係、調査項目など、明らかにしていただきたいと思います。
次に、同和対策についてお尋ねをいたします。
昨日の同僚議員の質問と重複する部分がございますが、論旨の関係上、あえて承知の上で進めますので、ご了解をお願いしたいと思います。
地対財特法が最終年度を迎えまして、県の各セクションもその残事業の完遂に向けて大いに頑張っておられることと思いますが、来年度も百三十六億七千万円余が同和問題解決のために計上されています。これに係る諸事業の完了への展望をいかにお持ちになっておられますか。総括して知事にお尋ねをしたいと思います。
また、去る十二月議会において、知事は議員の質問に答え、「県下全体を見てみますと、なお物的、非物的の面において幾つかの課題のあることも事実でございます。私は、部落差別の存在する限り同和対策を続けていかなければならないことを基本にしながら、差別のない社会を早急に実現するために積極的に取り組んでまいりたい」と答弁をされました。
私は、かねがね、部落差別の現状認識について、昭和六十一年(一九八六年)の地対協意見具申のいう、「同和地区の実態が大幅に改善され、実態の劣悪性が差別的な偏見を生むという一般的な状況がなくなってきている」という評価を肯定的に受けとめるものでありますが、この意見具申が出てから既に十年近くが経過し、状況はまた一段と前進をいたしました。したがって、来年度をもって本県としても同和事業を完結し、残された課題は、昨年の地域改善対策協議会総括部会が言うように、一般対策に必要な工夫を加えつつ対応するという基本に立つべきだと考えます。
ところで、過日の知事の答弁の「部落差別がある限り同和対策を続けていく」という意味は、この地対協総括部会の基本姿勢との関係でどう理解したらよいのでしょうか。また、差別意識もまだ部分的にはさまざまな形で残存するでしょうが、あくまでも部分的であって、普遍的なものではなくなってきています。そのような実態の中で、あえて特定地域を同和地区と指定し、同和対策と銘打って行う事業は、今の段階では有効な手だてとは考えられないようになっていると思いますが、いかがでしょうか。一般地区のおくれの克服と共通課題としてこそ有効に働くのではないでしょうか。
また、同和対策の一般行政への円滑な移行を図ることについては、今までも述べられてきたところでありますが、そのための手だてはどのように講じられてきているのでしょうか。平成五年の質問の際、移行への準備を始めるべきだと申し上げました。余り進捗したという話は聞かないようですが、現況と来年度中になすべき準備など、どのようにお考えになっているのか、お示しいただきたいと思います。
特に現段階では、県単独事業で個人給付的事業などは基本的に廃止の方向が望ましいのではないでしょうか。これも、検討すると言われていましたが、どこまで進められてきているのでしょうか。
例えば子供会の事業など、成功している例では、周辺地区住民との共同の子供会として進められていますが、地区内の子供たちだけの子供会では、なぜという新たな疑問を子供たちの中にも生んでいるようなところもあります。今まで果たしてきた役割を評価しつつ、現段階では一般地区の母親・子供クラブとの合流を積極的に図るなどして、制度的に水平化していくべきときではないでしょうか。
同和教育のあり方にも検討が加えられるべき時期に来ていると思います。和歌山県の同和教育は、文字どおり偉大な成果を上げてまいりました。今、県民の中で部落差別の意識がほとんど解消されているという現実は、まさに同和行政の諸施策と同和教育の成果であろうと思います。今、和歌山県同和教育基本方針を読みますと、それを制定した時点での決意、意気込みが改めて感じられ、感動を呼ぶものでありますが、現状認識等では、二十数年の歴史を経過して、現実との格差を感じます。
差別をなくす教育を推し進めることは今後ともなお一層求められますが、行政的措置として、教員の加配など漫然と続けるのではなく、現実に即して、一般地区の抱えている問題と共通の困難克服へと発展させていくべき時期ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
教育界には、過去には考えられなかったようないじめ・不登校問題も起こっているときです。効果的な見直しが必要ではないでしょうか。もちろん、一部ではあれ、差別意識の残存が見られる中で、差別をなくす教育は今後とも大いに必要ではありましょう。今時点では、特に同和というジャンルを設けてそれを追求するのではなく、広く憲法の精神、民主主義の精神の涵養の中で、あらゆる差別の克服を追求する一環として進められるのが望ましいと思われますが、いかがでしょうか。
続いて、同和問題で、市町村事業について触れたいと思います。
市町村で行われている独自の同和対策について、市町村の行政に介入するという意味ではなく、県としてもよく検討してみる段階にあると思われます。
例えば、同和対策事業として同和住宅が建設されていますが、その家賃の問題などで周辺住民の理解が得られない状況が生まれています。ある種の新しいマンション風の立派な住宅が、同規模の付近の民営マンションの五分の一ぐらいの低家賃であります。住居を求める若い方たちは、この格差が理解できないと言っています。
ある市では、国民健康保険料金が、収入の多少にかかわらず、同和地区では一律四七%減免されています。国民健康保険の市民負担が高いという中で、自分より収入の多い方々の保険料がなぜ自分よりはるかに安いのだろうかと疑念を持ち、同和行政のあり方に、このままでいいのだろうかという疑問も出ております。あるいは、固定資産税があるところでは五〇%減額されるのに、自分は収入も少ないのになぜ減免がないのだろうかと、この税制に対して不満を抱いています。
これらの措置は、過去においてはある程度説得力を持っていました。その措置が果たしてきた役割も決して小さなものではなかったと、私は考えています。しかし、現在の時点では、同和地区だけを特定して行う特別措置としては、非常に大きな問題を抱えているのではないでしょうか。このような措置は、差別をなくすという目的とは逆の作用をしかねません。一般地区の経済的困窮者を含めた援助政策に改めていくべきだと考えます。
そのほか、ある市では、ことし改めて五十二億円という巨費を投じて共同作業所を計画されようとしていますが、過去の苦い経験が決して少なくないという状況の中で、これらの教訓が余り学ばれないままに行政化されようとしています。
市町村で行われる独自の同和対策事業はまだまだ多くあり、現時点で検討し直すべきだと思われる施策が随分あるように思います。市町村は独立した団体ですから、県が一方的に市町村の行政にくちばしを入れるべきでないのは当然のことではありますが、一日も早く差別のない世の中をつくろうという共通の努力をしているわけですから、十分意見交換をすべきだと思います。
南部町に続いて吉備町が、私たちの町にはもう同和地区はなくなったのだと、高らかに宣言をいたしました。本当に感動的なことでした。県としても、これらの町の業績を高く評価し、このような終結宣言を市町村が主体的に発することができるよう、指導性を発揮すべきだと思います。紹介した幾つかの事象も含めてどうお考えになっているか、民生部長の答弁を求めます。
続いて、教育関係について質問をいたします。
第一点目は、いじめと不登校の問題であります。
この問題に関連して過去幾人もの同僚議員が質問をし、かつ教育長がそれに答えられておりますので、あるいは重複する点があるやもわかりませんが、新たにいじめ・不登校対策の予算も上程されておりますので、改めてお尋ねをしたいと思います。
私は、去る九四年(平成六年)の十二月議会において、主として不登校問題に焦点を当て、これに対する教育委員会の所信をただし、現実は教育委員会の対応以上に進行しており、その対応のスピードを速めるよう対策の抜本的強化を求めたところでありました。しかし、この間、心配していたとおり事態は一層深刻さを増し、県教委の統計によりますと、平成六年度の県下のいじめ発生件数は、小学校八十八件、中学校百四十九件、高校三十六件とあり、平成五年度を五〇%も上回る二百七十三件に達しています。いじめ特有の、隠される、隠ぺいされるという性格からして、現実はさらに上回るものと考えられます。
また、いじめなども密接に関係すると言われる不登校も、平成六年度で小学校は二百六十一人、中学校六百四十三人、合計九百四人と集約され、年に一二、三%ずつふえている状況であります。まさに、学校の中に何かが起こっているという感じであります。
教育委員会は、この間、いじめ・不登校に対するさまざまな対応をしてまいりました。学校内での指導の充実やカウンセラーの配置、あるいは各種相談員の配置等が見られます。しかし、現実はその体制を超えて悪化していることは、数字が物語っています。問題を究明し、対策を検討する委員会も設置されて十カ月ほどになりますが、まだ有効な提言はされていないようであります。
先日、文部大臣のいじめ問題に関する緊急アピールというものを読ませてもらいました。文言は確かに切々としたものであり、一国の文部大臣が発したアピールですから、それなりに有効に働くかもわかりませんが、読み終えて少々物足りなさを感じざるを得ませんでした。それは、いじめなどが起こってくる根本的な原因に、全くと言っていいほど触れられていないからであります。これでは、対症療法的対応はできても──もちろん対症療法も大いに必要だという前提ではありますが──根本的な対応を欠くことになります。
県教委の発行した「和歌山県の教育」という冊子には、「近年の急激な社会環境の変化や物質的な豊かさの中で、大人も含め、子供たちが他人を思いやる心、物を大切にする心を失いがちになっており、知育偏重の社会的風潮、家庭における過干渉や過保護、さらには進路希望の挫折、学習不適応、疎外感、教職員の指導や学校の規則等への反発など、さまざまな要因が複雑に絡み合っている」と、直接的な原因に迫った記述があり、私もその判断を肯定的に受けとめるわけですが、いま一歩、さらになぜそのような屈折が起こるのかという点で、現在の学習指導要領やそれに基づく学習指導、教師たちが自由な討論や連帯をしにくくしている管理主義的な学校運営があるのではないかと思っています。
子供たちは、学校が楽しくなくなっている、今の学習指導要領の体系では、子供たちがその能力に応じて学習がしにくく、学ぶという一番根本的なところでフラストレーションを起こしているのではないでしょうか。教師たちも、その過密な学習指導要領をこなし切れず,追われるような、あえぐような状況に追い込まれていると言われています。そんな中で、子供たちの発するSOSをキャッチできず、事が複雑になるまで対応できないということさえ起こっているようであります。したがって、根本的な対策として、県教委としても学習指導要領を直ちに全面的に見直すことを国に求め、それの実現までは教育における地方自治の精神を発揮し、その弾力的運用も大いに検討すべきではないでしょうか。また、子供たちに伸びやかに学ぶ場を保障するため、一日も早く三十五人学級の実現を図るべきだと思います。改めて教師をふやさなくても、今は生徒が減っているのですから、減らさなければその実現は段階的にでも進みます。それを強力に国に求めるべきだと思います。また、県教委独自に加配教員の配置を大胆に行うことが必要ではないでしょうか。
前の質問のときにも申しましたが、不況の際には莫大な不況対策が財政的に行われるのです。国が今いじめ対策としてやっていることといえば、各県の小・中・高に一名ずつ、わずか県に三名の教員を配置するだけで、余りにもお粗末過ぎると思うのですが、いかがでしょうか。対症療法的手だても含みますが、それ以外のさまざまな対応が、子供に対して、学校に対して、社会に対して必要でしょう。
県教委は、今年度予算に新たに五百八十万円の対策費を計上されました。ポスター、パンフレット、あるいは研究会に必要な費用に充てるとのことであります。積極的に計上された努力を多とするところですが、私は、この五百八十万円という金額が大変不満であります。全県の世論を盛り上げたいと、県の各部局が時々大きな集会などを行います。その予算を見ればわかるように、一回やれば百万円では済みません。いじめをなくし不登校を生まない世論づくり、環境づくりのために一回集会でもやろうかと思えば、この予算はあっという間に消えてしまいます。もう少し抜本的に諸対策を組んで必要な予算措置をする必要があるのではないでしょうか。
埼玉県は、いじめの対策費に八億五千万円もの予算を今年度計上しています。人口が六百六十万人の県ですし、いじめ事件そのものも和歌山よりはるかに多く起こっていますから大胆な対応をしているのでしょうが、和歌山県の人口比に換算しても、約一億円になります。その内容を詳細に紹介する余裕はありませんが、五カ年計画ですべての学校に、生徒の悩みを聞いたり、いじめの予防や不登校生徒に対応する指導員を配置するとのことです。すべての学校にというところに、その構えの大きさがうかがえます。そのほか、父兄に対する施策、社会一般に対する施策と、相当壮大なものであります。金を多くかければそれでよしとするものではありませんが、必要な金を使うという姿勢は結構なことと感じた次第です。また、父母や教師OBのボランティア的活動も、大いに励ます必要があろうかと思います。登校拒否の学童を持つ方々やそれを克服しようと頑張っておられる方々がささやかな要望を教育委員会に上げています。直ちに、すべてではなくとも聞き入れてあげて、ともに不登校を克服していこうという姿勢を示されてはいかがでしょうか。この種の問題は、父母や地域社会との共同なくしては進みません。必要だと思われ、やれると思われることはともに何でもやろう、そういう姿勢で教育委員会も対応することが必要ではないでしょうか。お尋ねをいたしまして、私の第一問を終わらせていただきます。
○議長(橋本 進君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事西口 勇君。
〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えをいたします。
まず、西防の埋め立てに関するご質問でございます。
埋立工事中の三工区につきましては、貴重な廃棄物処分場として極めて重要な役割を果たしているということから、埋め立てを継続しているものでございます。また、平成六年三月に住友金属から、竣功後は県において公共の用に供していただきたいとの申し入れがございましたので、竣功後、県に帰属させた上で公共の用に供することを前提として埋め立ての継続を認めておるところでございます。
第二点の、住友金属工業株式会社からの一部施設の沖合移転中止の申し出でございます。
県といたしましては、ただいまの鉄鋼業の取り巻く情勢の変化、並びに当初の環境改善目標が現況において達成されておりまして、同社が将来にわたって、この目標の達成はもとより、さらに良好な環境の創出を目指して努力していくことを確約しておることなどにかんがみて、やむを得ないものと考えてございます。
埋立地の新たな土地利用計画につきましては、ご承知のように、公共、公益的利用の観点から西防波堤沖埋立地利用計画検討委員会にお諮りをして、目下検討いただいておるところでございます。
第三点の、埋立地を目的外転用する住金の責任ということであります。
住友金属の責任につきましては、ただいま申し上げましたように、当初の目的どおりの利用ができないわけでありますが、三工区への廃棄物の受け入れ、竣功後、公共への利用に供することとしていることなどから、やむを得ないことではないかと考えております。
次に、同和対策に関するご質問であります。
現行地対財特法が施行されてから四年を経過するわけでありますが、和歌山県同和対策総合推進計画に基づき、県、市町村が一体となって各種施策を積極的に推進をしているところでございます。
平成八年度は、現行法の最終年度という大変重要な年であるということを認識いたしまして、同和問題の早期解決のために積極的な予算編成を行ったところでございます。
また、昨年十二月に地対協総括部会長から、特別対策の終了、すなわち一般対策への移行が同和問題の早期解決を目指す取り組みの放棄を意味するものではないという基本姿勢が示されたわけであります。昨年の答弁で私は、部落差別がある限り同和対策を続けていくということを申し上げたわけでありますが、その姿勢については変わりがないと考えております。ただ、同和対策という名称を将来とも使うかどうか、その辺については議論のあるところだと考えております。
以上であります。
○議長(橋本 進君) 商工労働部長中山次郎君。
〔中山次郎君、登壇〕
○商工労働部長(中山次郎君) 住友金属の合理化に伴う県経済への影響についての三点にお答えします。
まず、同社にどう対応したか、地元産業への影響はどうかということでございます。
県といたしましては、住友金属工業株式会社の経営合理化計画に対し、口頭及び文書で、その実施に当たって従業員の意思を十分尊重し、雇用の確保を図るよう強く要請し、下請関連企業等の経営安定についても責任ある対応を求めてきたところでございます。しかしながら、その後、予想もしなかった激しい円高等もございまして、住友金属工業株式会社においては、在庫の圧縮等、コストの削減に努める一方、鉄鋼事業の基盤強化に向けた努力が続けられているところでございます。
和歌山製鉄所の平成七年度の粗鋼生産量は約三百二十万トンになる予定であり、ここ数年、ほぼ横ばいとなってございます。従業員数では、平成八年二月末現在、八千五百七名で、うち出向者は三千四百四名となっており、この三カ年で約千二百名の人員減となってございます。
再就職等については県としても努力を行っており、多角化事業の地元産業への影響につきましては、影響も考えられますが、地元産業にできるだけ影響を与えないよう要請しているところでございます。今後も、引き続き要請してまいりたいと考えてございます。
次に、地域社会への責務等についてでございます。
和歌山製鉄所におきましては、さまざまなコストの削減を行う一方、鉄鋼事業の維持発展を図ることが責務であるということから、多額の投資と最新技術が投入されているところでございます。このため、新シームレスミルの建設、高級鋼板生産のための設備改善に続き、先般、新製鋼工場の建設も計画されるなど、和歌山製鉄所は住友金属の西の拠点として、国際的にも高品質、高付加価値製品を製造する製鉄所へとリフレッシュ化が推進されてございます。
和歌山製鉄所の事業基盤を強化することが生産性及び収益性の向上となり、そのことが今後の雇用の安定と下請企業等との円滑な関係を維持することにつながるものと期待しているところでございます。
次に、新しいリストラ計画での地域経済への影響等についてでございます。
新たな合理化計画につきましては、本年一月、国際競争力強化と一層の成長を基本に、平成七年度末をスタートの基準としまして、平成九年度までの新中期経営計画が打ち出されております。今回の計画では、人員の合理化と和歌山製鉄所に新製鋼工場の建設を行い、二十一世紀への積極姿勢を図っているとしているところでございます。
この新製鋼工場建設に五百億円、その他既存工場の改造、更新等の投資も行われることにより、関連企業、下請企業、地域経済への波及効果は相当期待できるものと思われます。
人員の合理化につきましては、住友金属工業株式会社全体で三千四百人の計画でございますが、和歌山製鉄所の人員についてはいまだ確定していないとのことでございます。
県といたしましては、これまでも和歌山製鉄所の雇用に関し、雇用確保を図るよう要請するとともに、下請関連企業の経営安定についても地域経済のリーディング企業として責任ある対応を求めてきているところでございますが、企業としての経営方針もあることから、今後も和歌山県の実情をできるだけ理解してもらえるよう努めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 土木部長山根一男君。
〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 鶴田議員の西防埋立工事に関連して、転売予定、埋め立て経費を公開すべきとのご質問にお答えします。
この点に関しましては、現在、電源立地の可能性を探るため、関西電力が環境調査を行っているところであります。その結果を踏まえて公有水面埋立法の規定に基づく埋立地の譲渡申請がなされれば、その段階で埋め立てに要した費用等を勘案し、譲渡価格等を法律の規定に基づき審査することとなります。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 保健環境部長鈴木英明君。
〔鈴木英明君、登壇〕
○保健環境部長(鈴木英明君) 西防の埋立工事についてのご質問のうち、環境影響調査についてお答えをいたします。
保健環境部の平成八年度事業として、大気環境影響予測調査八千万円を計上してございます。これは、火力発電所の立地計画に伴い、事業者が行う環境影響調査結果の審査に関連し、国の電源立地環境審査補助金の制度を利用して、県において検討、評価するために必要な調査を行うものでございます。
内容といたしましては、和歌山火力発電所計画と御坊第二火力発電所計画を対象に、半径約三十キロメートルの範囲で、それぞれ硫黄酸化物及び窒素酸化物について大気拡散シミュレーションを実施するものであり、事業者が実施する環境影響調査結果が適正かどうか、また他の発生源も含め、将来の大気環境に支障を及ぼすおそれがないかどうかを検討するための調査でございます。
以上です。
○議長(橋本 進君) 民生部長木村栄行君。
〔木村栄行君、登壇〕
○民生部長(木村栄行君) 鶴田議員にお答えいたします。
残事業と一般行政への移行のための取り組み、及び個人給付的事業につきましては、一括してお答えをさせていただきます。
法期限後に残された課題でありますが、物的な面につきましては、全体的に見ればおおむね格差は是正されているものの、一部には取り組みのおくれているところもあり、法期限後に持ち越さざるを得ない事業もございます。これらの事業は、行政が責任を持って完遂しなければならないと考えております。
一方、非物的な面につきましては、国及び県が実施した同和地区実態調査について、現在、分析検討作業を鋭意行っているところでございますが、現時点で見る限り、経済環境の変化に影響を受けやすい小規模零細企業や個人経営が多く見られることや、中高年齢層を中心とした不安定就労の問題、高校や大学への進学率の格差、また差別事件が依然として発生しているなどの課題がございます。これらの課題につきまして、県民の方々のご理解を得ながら行政の責務として解決していくことが同和問題の早期解決につながるものと考えております。
また、同和対策は永続的に講ぜられるべき性格のものではなく、迅速な事業の実施によってできる限り早期に目的の達成が図られ、一般対策へ移行されるべき性格のものであるという考え方を基本としながら、これまでの事業の成果が損なわれるなどの支障が生ずることのないよう、県単独事業等も含め、現在残されている課題を整理分析し、解決への方策について検討しているところでございます。
続きまして、市町村に対する指導についてでございます。
同和対策を今日まで二十七年間にわたって実施してきた結果、相当の成果が得られる中で、すべての同和地区が同じような状況ではなく、地区間格差もあらわれています。
もとより、今後の同和対策は幅広く県民のコンセンサスを得ながら進めていくことが重要であり、施策の公平な適用という観点からも、著しく均衡を失した低家賃、国民健康保険を含めた税の減免等々についての是正に取り組まなければならない時期であろうと認識しており、今後市町村とも検討を重ねてまいりたいと考えております。
一方、事業によっては課題が解決される状況を迎えている市町村もございます。しかし、教育・啓発等につきましては、広域的に取り組まなければならない重要な課題であると考えております。
なお、今後とも、残された課題解決のために同和対策を推進しなければならないと考えております。
また、同和教育子供会は、四十四年間にわたる活動の中で、同和問題が提起する課題、つまり子供たちがその持てる能力を十分に発揮できる条件を阻害している諸問題の解決に、相当な成果を上げてまいりました。しかしながら、今もなおそれぞれの地域において抱えている課題があることも事実であります。一方、課題が解決されたとする子供会については、設置主体である市町村の意見等も踏まえて、地域子供会への移行も念頭に置きながら、あるべき姿を検討してまいります。
以上です。
○議長(橋本 進君) 教育長西川時千代君。
〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) いじめ・不登校問題四点と同和教育のあり方についてお答えいたします。
まず、いじめ・不登校問題ですが、一昨年末からいじめによる自殺が全国で相次いでおります。また、登校拒否についても年々増加の傾向にございまして、しかも長期化しつつあることに対しまして心を痛めてございます。
その原因や背景につきましては、学校、家庭、地域社会の状況が複雑に絡み合っていると考えております。そのため、昨年四月に登校拒否・いじめ問題に関する検討委員会を設置いたしまして、核家族化の問題、少子化の問題、また遊びの減少の問題、自然体験の不足、さらには生命への畏敬の念の希薄化の問題等々、諸要因について集中的に論議をいたしてまいりました。
また、学校における子供理解や教職員の共通理解と協力体制など、具体的な指導のあり方について協議するとともに、緊急に施策を講じるべきものについて、あるいはまたある一定時間をかけて段階的に取り組むべきものについて、それぞれさまざまな立場からご意見をいただきました。その結果、緊急的な措置といたしましては、いち早く本県独自の緊急アピールを発していじめの実態把握や防止に努めるとともに、教育相談電話の活用について周知もいたしました。また同時に、教育相談体制を充実させるために、地方教育相談推進委員を八名から二十名に増員いたしました。
また、現代教育問題特別講座など、あらゆる機会をとらえていじめ防止に関する研修を行うとともに、市町村教育委員長・教育長会議などを初め、さまざまな会議等において積極的な取り組みの展開を訴えてまいりました。こうした中で、校長会やPTAなどでも独自のアピールを出したり、子供たちの自発的ないじめ根絶の取り組みなども広がってきております。
さらに、平成八年度予算におきまして、ポスターやリーフレットなどの作成・配布、あるいは県下八地方でのシンポジウム等の開催、専門的な指導者を派遣して相談に応じるカウンセラー派遣事業、県独自の実態調査の実施等について、今議会でご審議をお願いしてございます。
各学校における教育活動については、一人一人の子供に目を向け、学校の実態や課題に即した、弾力的で魅力ある教育課程の編成を指導しているところであります。
また、学習指導要領につきましては、これまでも、学校週五日制との関連で、見直しが必要であることを全国教育長協議会等で機会あるごとに要望してきてございます。
三十五人学級につきましては、法定数とのかかわりから困難でありますが、生徒指導等に関する教員の加配につきましては、それぞれの実情に応じ、できる限りの配慮をしているところでございます。
今後、こうしたさまざまな取り組みを見きわめ、ご紹介のありました他府県の事例なども参考にしながら、また県民の方々からのご要望も踏まえ、本県の実態に即した効果的な施策や学校での指導のあり方を検討して、できるものから実施してまいりたいと考えてございます。
次に、同和教育のあり方についてお答えいたします。
本県におきましては、これまで県同和教育基本方針に示されておりますように、憲法や教育基本法の精神に基づき、部落差別を取り除く人間を育成するため、積極的に同和教育を推進してきたところであります。
昨年十二月二十日に出された地対協総括部会長の談話におきましては、今後、なお存在している格差への対応とともに、差別意識の解消に向けた教育及び啓発をさらに積極的に推進すべきであると述べております。
教育委員会といたしましても、平成四年に実施した学習状況調査の結果や高校、大学への進学率に見られる格差、あるいは県民の意識調査の結果等から、教育面で解決しなければならない課題が残されているととらえております。こうしたことから、地域改善対策協議会での協議に注目するとともに、県同和教育推進協議会等において幅広いご意見をいただきながら、今後とも子供の実態や地域の実情に即し、積極的に同和教育の推進に努めてまいりたいと考えてございます。
同和教育推進教員につきましては、各学校において、同和教育推進の中心となって同和問題解決のために取り組んでいるところであります。そのことが、いじめ問題など、子供の人権にかかわる問題の解決にもつながるものと考えてございますので、今後ともその任務と位置づけを明確にしながら配置してまいる所存であります。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
34番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、再質問をさせていただきます。
まず、知事にお尋ねをいたします。
埋め立て条件と現実との乖離ということについて答弁をいただきましたが、私は、十分に納得できません。私も、頑固に、公害工場の沖出しをやみくもに求めているものではありません。やむを得ないときにはやむを得ない事情というのが生まれるであろうということも、客観的に、理論としては起こり得ることだと思っております。しかし今、埋め立て条件と全く異なった事態が進行している。
住友金属の方から括弧つきの希望というのが出されて以来、公害工場の沖出しという目的と、もう一つの廃棄物の処理という問題とが一緒になって、片一方の柱がなくなったにもかかわらず、廃棄物の処理という課題もあるから、それは当然進められていいんだということは、埋立免許との関係で明らかに違うわけですから、ここは明確にすべきだと思うのです。けじめがありません。要するに、「遺憾だがやむを得ない」と。最近、私は非常に便利な言葉だとつくづく感じるようになったのですが、遺憾だがやむを得ないということで何でもそういうことが進められるのか。これは大変不思議な事態です。そういうことですべてが許されてよいものでしょうか。この点、私はどうも県と大企業との間に一種のなれ合いが生まれているのではないかと。
世界的な鉄鋼不況という問題は確かにありますし、住金には住金なりの事情もあるでしょう。しかしそこは、埋立免許の条件と現実との違いを明確にして、法的にあるいは行政的にきちんと措置をし、次の段階に進めていくべきだというふうに思います。
「遺憾だがやむを得ない」ということでずるずると既成事実をつくって進めるというのは、現在の法には違法ではないけれども、法律の精神に反する行いだと思います。その点についてどうお考えなのか、改めてお尋ねしたいと思います。
もう一つ、責任の問題であります。
私は、当然、住友金属に責任を求めるべきであると思います。どのような責任のとり方をするのかということについては、それは議論のあるところであって、これから大いに論議をしたらいいと思いますが、経済事情が悪くなっているから仕方がない、第三工区を公共に提供しているからそれをもって責任はないと、こういう論理はないと思います。やはり責任は責任として明らかにし、どのような責任をとるのか。それは、第三工区への公共への提供ということでその責任のとらせ方をしているのかどうか。そういうところが明確になっていないように思います。
第三工区を公共に提供した、経済的に苦しい状況にある、したがって責任を問わないという論理は、逆になっているように思うんです。そういう点で、やはり責任の所在、責任のとり方というのを明確にしていくことが必要ではないかと思いますので、再度答弁を求めたいと思います。
いじめ・不登校問題につきまして、教育長から答弁をいただきました。
随分とご苦労をされていることについては、私も十分承知をいたしております。どうか、予算的な措置も大胆に組まれて、必要な措置はどんどんとやっていく、やれることは何でもやっていこうという姿勢にお立ちになって大いに頑張っていただきたいと思います。
父兄との協力、地域社会との協力、いろんなことがこれから求められてくると思います。そういう中で、一九九六年という年、平成八年という年が、和歌山県の子供たちの社会の中で不登校、いじめなど克服していけるんだという展望の見える年に──この年はそれを克服していける展望の見える年だったんだと、そういうふうに言えるような平成八年度、一九九六年度にしていっていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
以上で、第二問を終わります。
○議長(橋本 進君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事西口 勇君。
〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員の再質問にお答えをいたしたいと思います。
その辺のけじめがはっきりついていないではないかというお話でもありますが、先ほどもご答弁をさせていただきましたけれども、工場の移転によって達成することとされていた環境改善目標は一応達成をされております。
それから三工区の埋め立て継続につきましては、当初の埋め立て目的の中には、先ほどの公害発生源の移転ということもございますけれども、さらに廃棄物の最終処分場の確保、それから緑化の促進、港湾設備の改善などということもあるわけでございます。そういう意味におきまして、埋め立て目的の一つである廃棄物の処分場として利用されるということなども、事情としてはございます。
竣功後、県に帰属させて公共の用に供するという前提にしておりまして、埋立法の趣旨に反してはいないということで今後対応してまいりたいと思います。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──以上で、鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
午前十一時五十六分休憩
─────────────────────
午後一時五分再開
○副議長(木下秀男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
26番上野哲弘君。
〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 通告に基づきまして一般質問を行います。
まず第一点の、和歌山県政における広域行政について、知事及び関係部長の所見を伺うものであります。
平成八年度予算案が今議会に上程されました。その中で、西口知事にとって初めての予算であり、和歌山新時代の創造に向けたスタートの年として編成されたものであると述べられております。その基本方針として、飛躍への基盤づくり、明るい社会づくり、活力ある産業づくり、快適な暮らしづくり、心豊かな人づくりを提唱されたところであります。新知事誕生以来、和歌山県政における新たな体制づくりが着々と進められ、このたびの予算案にも反映されているものと感じております。
私は、前仮谷県政において、和歌山県の発展は和歌山県を構成する地域地域がそれぞれの特色を出し、新たな発想による地域づくりを進めることが基本であり重要であると申してまいりました。今回、西口知事におかれても同様の趣旨が述べられたところであります。そのような観点から、新体制の県政について、特に広域的側面から質問いたしたいと存じます。
まず、知事公約の、知事と語ろう あすの「ふるさと」事業についてお伺いいたします。
この事業の一番のポイントは、それぞれの地域住民が知事と何を語ろうとするのかであります。従来のパターンを申し上げるならば、地域にとって政治的要望を満たすために陳情方式がとられてまいりました。それも一方法かと思いますが、私はそのような通り一遍的な建前だけに終始する時代は過去のものとの認識に至っておるところであります。今、二十一世紀を目前にして地域の新たな活路を模索する中で、この事業が本当に実のある成果を期待できるとしたら、県当局の姿勢と地域の体制、双方のマッチングが必要不可欠な要素と考えます。やはり、地域の発展、活性化は地域住民の熱意がなければその目的は達成されません。それぞれ地域を構成する住民が汗をかき、知恵を出し、新たな発想を提起しなければ、本当の意味での活性化にならないと考えます。県として、地域の熱意をどのようにして引き出し、指導されようとしておられるのか、お伺いいたします。
また、知事が予算説明の中で申されているように、世界はボーダーレスの時代に入り、その典型としてヨーロッパは一つになろうとしております。このような時代、特に狭い日本、地方行政においても市町村単位で物事を考え、処理すべきものではありません。その先駆けとして、ある著名人などは行政単位を徳川時代の幕藩体制にすべきであると言われております。今まさに、広域行政の推進があすの地方をつくり上げる原動力と考えます。その指導者としての役割が県にあろうかと思いますが、広域行政についてあわせて所見を伺います。
次に、三県サミットの基本理念についてお伺いいたします。
昭和五十六年、那智勝浦町において第一回の三重、奈良、和歌山三県の知事が一堂に会し、それぞれの連携を深めるために三県サミットが開催されたところであります。その主な議題として、広域総合交通体系の整備、広域観光の振興等が提起されたと伺っております。その後、紀伊半島の振興計画の一環として六度の三県サミットが開催されました。このたび第七回目のサミットが開催されるに当たり、その重点課題についてお伺いいたします。
あわせて、事業化において、お互いに県の枠を超えた施策に発展すべきと考えておりますが、その点についてもお伺いいたします。
続きまして、地域振興における各項目について質問いたします。
第一点の、紀南地域におけるイベントについてお伺いいたします。
このたび、平成十一年を目途に地域活性化の一環として、紀南地域においてイベントを開催する旨、発表されました。我々の拠点である紀南地域、特に熊野地域の活力が減退しつつある中、県提唱による広域イベントは、まさに地域の活性化の呼び水になるものと大いに期待しているところであります。さきの議会でも申しましたように、これらの事業は、イベント開催もさりながら、それに至るまでの過程が重要であります。我々地元の熱意が十分に生かされた事業計画でなければ一過性のイベントに終わってしまい、将来何の意味も持たないものになってしまいます。県当局が地元の熱意あるいは発想に対してどのような提起をされようとしているのか、企画部長にお伺いいたします。
また、このイベント計画の要因の一つとして、紀南地域における道路網の整備がある程度達成されるものと聞いておりますが、その点について土木部長にお伺いいたします。
なお、このようなイベント開催の基盤となるのは、やはり熊野三山及び吉野熊野国立公園になろうかと思いますが、公園整備についてお伺いいたしたいと思います。
当公園は、ご存じのとおり、三重、奈良、和歌山県にまたがっており、それぞれ山岳レクリエーションや観光面で多くの人々に利用されているところであります。三県サミットにおいても、国際リゾートとして紀伊半島の活用を図るべく論議されているところでもあります。そのためにも、さらなる吉野熊野国立公園の整備が必要と考えますが、当地域に指定された園地整備等、新たな紀伊半島観光ネットワークづくりについて、その所見を商工労働部長にお伺いいたします。
続きまして、インターネットについてお伺いいたします。
インターネットによる地域活性化についてでありますが、情報社会におけるインターネットの活用が全世界で注目の的になっております。その主な理由として、全世界の情報源としてのインターネットはあらゆる分野での活用が期待できるところであり、その最大のメリットは低料金で全世界と通信できることであります。特に地方においてはその恩恵が高く、都市と地方の格差を是正し、地方の持つハンディを解消するであろうと言われております。まさに、インターネットが地域活性化の切り札と言われるゆえんであります。
なお、この件に関しては、詳細についてさきに森議員、木下議員さんが一般質問されておりますので、私の方はもうこの程度にいたします。
このインターネットについてでありますが、新宮・東牟婁及び三重県南牟婁郡においてはインターネットにアクセスするまでの費用が高く、地域格差となってその進展を阻んでいるのが現状であります。現在、インターネットアクセス会社、いわゆるプロバイダー事業者が全国各地で設立されております。また、県下で田辺市においてもこの六月に事業開始と聞いております。二十一世紀最大の情報源になろうとしているインターネットについての県当局の所見と新宮・東牟婁地域の格差についてお伺いいたします。
続きまして、紀南ヘリポートの活用についてお伺いいたします。
去る九日、白浜新空港が開港し、紀南における空の運航が大きく前進しようとしております。また、それに並行して防災ヘリを配備しての大規模の災害や山林火災の消火、救援物資の搬送、山岳遭難者の救助、事故時の救急救命患者の搬送等、ヘリの活用は広く県民の期待されるところであります。
今回、私の質問は、熊野川河口に第三セクターにより設置されたヘリポートの活用について県の所見を伺うものであります。
伺いますと、当初このヘリポートは建設省の指導により防災ヘリから出発したようでありますが、管理運営の面から多目的活用を目指すことになり、第三セクターの設立になったようであります。御多分に漏れず、ヘリポートの維持管理には相当の費用がかかります。その運営は非常に厳しいものがあります。第三セクター自身の努力はもとより、国、県の支援も大いに望まれるところであります。すなわち、運営は離発着の回数にその命運がかかっておるからであります。この熊野川河口に設置された紀南ヘリポートが、防災、救急救命において、白浜空港配備のヘリとの関連性と第三セクターの出資者である三重県側の紀宝町、鵜殿村の関係において、その活用をどのように考えておられるか、見解を伺います。
特に、紀南地域の医療は三重県側とも重なって運営されておりますので、救急救命についても他県とも連携すべきと考えますが、その所見を伺うものであります。
次に、平成三年に県下ヘリネットワーク整備のための試験飛行以来中断されたままになっておりますが、今後の対応についてお伺いいたします。
あわせて、各地の観光ヘリの状況、さらに森林資源のヘリによる搬送、フライト農水産物の搬送等についての現状と可能性を担当部長にお伺いいたします。
続きまして、地域医療についてお伺いいたします。
長年、紀南地域の中核医療施設として運営されてきた新宮市民病院が、このたび改築したい旨の計画がなされたように聞いておりますが、その点に関連して、将来、紀南地域の医療体制が地域住民にとって最も望ましい姿について提言し、県当局の所見を伺うものであります。
まず、市民病院の現状について申し上げます。
患者数は、延べ年間二十四万五千名で、その内訳は新宮市内五五%、市外四五%となっております。そのうち、市外の四五%については、東牟婁郡一五%、三重県側の南牟婁郡二五%、その他が五%であります。中でも、紀宝町、鵜殿村に代表される三重県民が多数を占めているのが特徴となっておりますが、双方の町村民は旧新宮市民が多く含まれているのが現状であります。病院の改築には、新たな場所が必要になってまいります。当然、用地の選定や取得で相当の問題処理や費用がかさみますし、さらに医療問題は広域的要素が多大に含まれる関係上、よほどの計画性が必要と考えます。
以上のような観点から、移転場所を新宮市佐野地区、特に県立なぎ看護学校に連接する蜂伏の県開発公社用地が最もふさわしい場所ではないかと思っております。その理由として、さきに申しましたように、本来、地域医療は広域で考えるべきであり、県が大局的見地から指導すべきものであります。場所選定においても、県当局は、新宮市民病院の移転に大きく関与すべきであり、しなければならない状況にあろうかと思います。特に看護学校は、新宮市民病院の実習病院として、また用地取得の面で県当局との接点が図られ、地域医療の拠点として充実するものと思います。さらに、佐野地区は那智勝浦町と隣接し、その利用はますます拡大するものと思います。そのことが救急医療体制にもつながり、地域住民にとって安心できる医療体制になると考えますが、県当局の所見をお伺いいたします。
以上で、第一回を終わります。
○副議長(木下秀男君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事西口 勇君。
〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 上野議員にお答えをいたします。
和歌山県における広域行政に関して、地域の熱意をどのように引き出そうしているのかというご質問でございます。
県政の基本は、常に申し上げていることでありますけれども、和歌山県に住んでいるすべての人々が、どの地域にあっても和歌山に住んでよかったと言えるような心温まる和歌山県を築くことであります。そのためには、議会の皆さん方、県民の皆さん方とともに、手を携えて県勢の発展を図ってまいることが大変重要でございます。私は、知事就任時に政治姿勢として、心の通う県政、開かれた県政の推進を提唱いたしたところでございます。
ご質問にございました知事と語ろう あすの「ふるさと」事業についても、心の通う県政、開かれた県政推進の一つとして、地域の皆さんと直接ひざを交え、各地域の課題や未来づくりについて、広域的な観点も含めて一緒になって考えてまいろうという趣旨でございます。議員お話しのように、陳情的なものではなくて、議会の皆さん方のご理解、ご協力も得ながら、地域の皆さん方の熱意を県政に反映し、地域の発展、活性化に資することができるような実りのあるものにいたしたいと考えてございます。
次に、三県サミットの基本理念でございます。
三県サミットの基本理念については、三県の知事が紀伊半島地域に共通する諸課題について討議し、本地域の振興に向けての施策の一体的、総合的な展開を図ることを目的としておるわけでございます。
今回は、本年五月に紀南地域での開催を予定しております。その議題については、現在三県で調整中でございますけれども、本県からは、重点課題として、総合交通体系の整備、紀南地域の振興を視野に入れた広域連携プロジェクトなどの提案をしたいと検討しているところであります。県境を越えた広域的な事業推進には三県の協力が不可欠でございまして、知事会議で具体的内容を詰めてまいりたいと考えております。
なお、去る二月十八日に非公式に三県の知事が懇談をいたしました。その際に、今回の知事会議は、形式にとらわれずに実りの多い会議にしよう、ざっくばらんな話も含めてやろうという申し合わせをしたところでございます。
以上であります。
○副議長(木下秀男君) 総務部長木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 和歌山県における広域行政の、県としての指導についての質問でございます。
ご指摘のとおり、地域振興等、多岐にわたる行政施策を効率的に実施していくためには、市町村の区域を超えた広域行政の推進が今後ますます重要になってくると考えております。この場合、施策によりましては、市町村の枠にとどまらず、今後は県域を超えた協力ということも十分考えていく必要があると思います。そして、市町村が広域行政を推進する手法としては、これまで一部事務組合とか協議会とか、地方自治法に定められた制度の活用が中心になっておりましたけれども、一昨年の自治法の改正によりまして広域連合という制度が創設されるなど、協力の方法も非常に多様化してきております。今後は、それぞれの市町村の置かれた地域の状況も勘案しながら、より効果的な広域行政が展開されるよう、県としても適切な指導をしてまいりたいと考えております。
次に、紀南ヘリポートと今度配置した防災ヘリとの関係でございます。
この三月九日に運航開始した防災ヘリコプターは、新南紀白浜空港を基地として、救急救命活動や災害時における対応を図ることを目的といたしております。ご質問の紀南地域では、既に一部の市町村が三重県の町村との間で消防相互応援協定を結んでおりまして、救命救急に関して、これまでも非常に緊密な連携が図られてきたということでございます。今後、防災ヘリコプターを活用した消防防災活動において、新宮市、三重県の町村、地元企業等が共同して管理する紀南ヘリポート──これは仮称でございますけれども──は、この地域の消防防災活動に大いに貢献するものと期待しているところでございます。
○副議長(木下秀男君) 企画部長藤谷茂樹君。
〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 上野議員にお答え申し上げます。
南紀活性化イベントには、地域の発想、熱意を生かした取り組みをとの質問でございますが、今回検討しておりますイベントは、地域の将来像を見据えた個性と活力ある地域づくりのきっかけとなるものでなければならないと考えてございます。したがいまして、県といたしましては、企画立案の段階から地域住民が主体的に地域のあり方や地域づくりの方向を考えていく中でイベント計画を練り上げていくこととしたい考えであり、地域資源を最大限に生かし、紀南地域の新たな可能性を見出していけるよう図ってまいる所存であります。
次に、インターネットについての所見でございます。
インターネットの利用については、自治体の情報発信への活用も含めて急激に普及してまいっているところでございます。インターネットでは、従来の文字情報に加えて画像や音声も同時に通信できることが特徴でございまして、これらを組み合わせることにより、今までにない情報受発信の能力が期待できるものでございます。今後とも、産業振興や地域の活性化を図るため、さまざまな分野でのインターネットの活用策について、関係部局と連携しながら推進を図ってまいりたいと考えてございます。
次に、通信料金の地域格差でございます。
現在の通信料金体系は距離によって定められておりますが、先月末に出された郵政省の電気通信審議会答申において、「国民利用者にとって望ましい姿」という項目の中で、通信料金の低廉化のため遠近格差の抜本的是正などが必要であると例示されているところでございます。県内通信料金の低廉、均等化については、近畿ブロック知事会を通じて国に要望しているところでございますが、今後も引き続き要望してまいりたいと考えてございます。
次に、ヘリネットワーク整備の今後の対応についてでございます。
議員ご指摘のとおり、平成三年度にヘリコプターによるネットワーク化を図り、高速交通空白地帯を解消することを目的にヘリコミューターの実験運航を実施したところ、運航事業者の都合により中断するという結果になりましたが、その際の利用者意向調査において一年じゅう運航を希望される方が七○%に及ぶなど、ヘリネットワーク整備に対する期待が大きいことを確認いたしました。そのため、和歌山県長期総合計画の第三次中期実施計画において、紀北、紀中、紀南にそれぞれ中核となるヘリポートを配置したヘリネットワークの構築を位置づけたところでございます。現状においては、中核ヘリポートのうち、紀中地域では新南紀白浜空港が三月九日に開港し、紀南地域ではお話の紀南ヘリポートが本年夏ごろ開港される予定と聞いてございます。今後は、残る紀北地域でのヘリポートの整備を積極的に推進し、ヘリネットワークの構築を図ってまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 土木部長山根一男君。
〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 上野議員にお答えいたします。
紀南地域の道路整備については、広域的な幹線道路として国道四十二号日置川道路が平成九年度の完成を目途に整備が進められております。また、国道百六十九号奥瀞道路の一期工事が本年の夏ごろには完成し、交通不能区間が解消されます。さらに、国道三百十一号については、一番ネックとなっている本宮町と中辺路町の境界付近における未改良区間で鋭意工事中であり、平成十年度には完成の予定で促進しているところでございます。大島大橋についても、現在ループ橋や島内の改良工事を促進しており、新年度には橋梁本体の上部工に着手し、早期完成を目指して鋭意整備を進めているところでございます。いずれにいたしましても、関連する道路については今後、イベントの具体化にあわせて積極的に整備に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 商工労働部長中山次郎君。
〔中山次郎君、登壇〕
○商工労働部長(中山次郎君) 地域振興の二点についてお答えいたします。
吉野熊野国立公園の整備については、国立、国定公園利用者の利便を図る施設として、園地、歩道、野営場、公衆トイレ、駐車場等の利用拠点施設の整備を初め、本宮町のふるさといきものふれあいの里整備など自然学習施設の整備補助も行ったところでございます。
ここ三カ年を見ても、平成六年度は三カ所の整備で一億八千百八十万円、平成七年度は六カ所二億五千万円で整備しており、平成八年度は七カ所二億六千九十万円を計上させていただいているところでございます。
こうした整備を各県が進める中、利用のソフト面でも紀伊半島に位置する三重県、奈良県、和歌山県の三県と交通機関、関係市町村それぞれで組織する団体が協調して紀伊半島の観光キャンペーンや観光展を実施するとともに、三県にまたがる観光ルートの開発を検討してございまして、紀伊半島三県にわたり広く分布する自然や景観、文化、歴史、味覚等、さまざまな観光資源や観光施設のネットワーク化に取り組んでまいりたいと存じます。
次に、観光ヘリコプターの活用状況についてでございます。
ヘリコプターによる観光地の遊覧飛行が、近府県でも何カ所かで行われてございます。三重県では、鳥羽展望台と長島温泉で遊覧飛行が行われてございます。岡山県では与島から瀬戸大橋周辺で、また大阪府では航空会社の三社が八尾空港で遊覧飛行が行われてございます。また遊覧飛行以外では、神戸市のポートアイランドから湯村温泉までの間、チャーター便による輸送運航が行われてございます。
以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 農林水産部長日根紀男君。
〔日根紀男君、登壇〕
○農林水産部長(日根紀男君) 紀南ヘリポートの活用策として、森林資源や農水産物の搬送にヘリコプターを利用することの現状と可能性はどうかというご質問でございます。
ヘリコプター利用については、これまで木材搬出を対象に試験的に実施された経緯がございます。しかしながら、陸上輸送に比較して輸送コストの面や安定的な出荷量の確保の点で実施面で難しいところがございます。したがいまして、木材や農水産物の輸送については、関係者の方々の意見を聞きながら今後研究してまいりたいと思います。
○副議長(木下秀男君) 保健環境部長鈴木英明君。
〔鈴木英明君、登壇〕
○保健環境部長(鈴木英明君) 地域医療についてのご質問にお答えいたします。
新宮市では、築後三十有余年を経過した新宮市立市民病院の老朽化等のため、改築構想について検討されていると伺っております。同病院は、医療法第四条に規定された総合病院であり、和歌山県地域保健医療計画における新宮医療圏の基幹病院として、地域の医療サービス提供の中心的な役割を担っていただいているところでございます。
議員ご指摘のとおり、新宮医療圏はもとより、三重県南牟婁郡等からも患者を受け入れており、また県立なぎ看護学校の実習病院としての機能を果たしていただけることとなっております。こうした中で、県といたしましては、今後とも新宮医療圏の基幹病院として改築を機により一層の機能充実を図られ、地域の中核的な役割を果たしていただけるよう期待しているところでございます。
以上です。
○副議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(木下秀男君) 再質問がございませんので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(木下秀男君) 本日は、これをもって散会いたします。
午後一時四十分散会