平成8年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(玉置公良議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成八年三月十三日(水曜日)

○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 25番玉置公良君。
 〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 議長のお許しをいただきましたので、私は四点に絞って一般質問を行ってまいりたいと思います。
 まずは、地方分権についての県の見解を求めてまいりたいと思います。
 昨年五月十五日に、かねてからの念願であった地方分権推進法が成立しました。この法律に基づき、今後五年間のうちに地方分権を実施するための具体的な制度改革が進んでいきます。地方分権改革は、第三の改革あるいは第三の革命と言われています。第一の改革は明治維新であり、第二の改革は第二次世界大戦の敗戦による戦後大改革であります。
 この法律の制定により、今後における地方分権推進に向けた基本的な方向が示されましたが、その具体的な施策の実現に向けて今後さらに議論を深めていくことが重要になってきています。そのためには、地方の立場として、国と地方の関係についての現状をさらに見詰め直し、国と地方の新たな関係の確立に向けた具体的な提言を行っていくことが必要であると思います。
 そうした意味においても、本年三月二十七日には地方分権推進計画の作成のための具体的な方針の中間報告、及び年末に予定されている内閣総理大臣に対する勧告と、大きな山場を迎えています。昨年九月には地方六団体による地方分権推進に関する意見具申や、十月には地方三団体が単なる論理としての地方分権の必要性論から大きく踏み出して、一つ一つ地域の具体的事例を挙げて、これでもかというほど中央集権の弊害と地方分権の必要性を強調してきました。また、九四年十月十日付の「四国新聞」によりますと、全国の都道府県においても、二十七県が庁内組織の研究会を、十三都府県が外部の方も入れた懇談会をつくり、報告や提言を行っているのであります。我が和歌山県の取り組みはどうなのでしょうか。
 以下、四点についてお伺いをします。
 まず第一点は、西口知事が考えている地方分権についてお伺いをします。
 本議会での知事所信の中で、「平成八年はまさに地方分権が実効性のあるものになるか否かの正念場の年と考えております。(中略)地方からの盛り上がりなくして真の地方分権を実現することはできません。(中略)地方分権の推進を県民運動にまで高めたいと考えております」と、力強いあいさつがございました。
 そこで、西口知事としての地方分権とは具体的にどのようにお考えなのか、お伺いをします。
 私は、昨年四月に県議会議員として当選をさせていただき、約一年間、紀南の市町村を訪ね、地方分権を実現していくための市町村と県の関係はどうあるべきなのか、現場での問題点や課題を肌で感じてまいりました。現状の県の業務の約八割は機関委任事務であります。この事務の持つ意味は、国の出先機関の意味合いが強いのであります。しかし、国の出先機関として、規則、要綱などで市町村の主体性を縛るのではなく、逆にそれを最大限尊重した県の取り組みが求められていると思います。国から県、県から市町村へ財源、権限を移譲させ、県民や市町村に目を向けた県政の実現を図ることが真の地方分権を進めていくことになると考えています。
 例えば、補助金行政について見てみますと、確かに全国的に行政レベルを平均化するという意義はありますが、補助金の交付要綱が一律的であるため地方に合った独自性が生かされにくく、超過負担が生じるなど、問題が山積しています。例えば、高齢化社会対応のための老人ホームの建設に当たっては、紀南で二年前に建設された施設では、建築面積が国庫補助基準の一・五倍となり、建築単価についても補助基準が一平方メートル当たり約十五万円であるのに対し、実際の建築単価は二十五万円となっています。
 もちろん、国の行政責任と市町村のそれとは性格が異なっていることは認めるものの、現実は責任と役割が中途半端になっているのであります。こういう状況の中で、県が果たす役割は非常に大きいと言えます。それは、いかに市町村の立場に立って、また住民の立場に立って補助金行政を打ち破っていくかであると思います。決して国の施策を押しつける役に回るのではなく、県民の方へ顔を向け、市町村に目を向けた県政を進めなければならないと思います。
 また、ある町の町長さんは、予算時期になると東京出張の日が多く、在庁して執務をする日が少なくなります。これは、陳情しなければ町の事業が行えないからであります。その事業を認める、認めないというときは県が頼りであります。県の言うことを聞かないと事業が進まなくなることもあるのです。その結果は、ある施設建設を行ったとき、実際の利用者からの意見を取り入れて建設されたものではなく、補助金の基準に合わせた建物となってしまうのであります。どこか歯車が食い違っているように思います。県民に顔を向けた県政を市町村との関係で示す必要があります。これができなければ、私は本当の意味での地方分権はなし得ないと思います。
 そこで、知事の地方分権について、抽象的ではなく具体的にどのようなお考えを持っているのか、お伺いをします。
 第二点目は、政府、推進委員会に対し、県の検討会の意見や働きかけについてお伺いします。
 本議会での知事所信の中で、「平成八年はまさに地方分権が実効性のあるものになるか否かの正念場の年と考えております。従来から委員会の勧告に地方の意見が反映されるよう働きかけを行ってきた」とあいさつをしていますが、具体的な報告や提言について、どのような意見があり、どのように働きかけたのか、明らかにされたいと思います。
 また、他府県では具体的に地方分権の必要性を示す事例をまとめて提言をしていますが、我が和歌山県での取り組みについてもお伺いをいたします。
 第三点目は、地方分権を推進していくために、県から県事務所や市町村など地方機関への権限移譲など、足元である和歌山県としての地方分権についてお伺いをします。
 昨年十一月に、島根県地方分権行財政改革審議会の第一次答申が出されました。その中身は、現行制度のままで県から市町村へ権限移譲が可能な二十九項目などを盛り込んでおり、県は条件の整ったものについては平成八年度から実施していきたいとしています。移譲に伴う経費も県から市町村へ交付するよう求めています。さらに、法令改正をすれば県から市町村へ権限移譲できるものなど二十六項目もリストアップしています。さらに、機関委任事務制度は分権推進の妨げになることから、できるだけ早く廃止するよう国に強く働きかけていくことを求めています。答申については、島根県知事は県と市町村の関係の改革に着手し、地方分権の流れを確固たるものにしていきたいと話しています。このような、地方である各府県の具体的な取り組みが、これから既得権を守るために大きな抵抗が予想されてくる国の各省庁に打ちかち、真の地方分権を実現させていくためにも最も重要であると思います。今、和歌山県にもそのことが求められていると思います。
 そこで、本県における市町村や県事務所など地方機関への権限移譲の現状と今後の考え方についてお聞かせいただきたいと思います。
 第四点目は、県民の声の反映と啓発についてお伺いをします。
 地方分権議論の高まりの中で、地方自治体には地方分権の受け皿としての気構えや姿勢を明確にするとともに、分権時代における地域づくりのビジョンを住民にわかりやすく提示していくことが求められていると思います。さらに、地方自治体自身が真の意味での地方自治とは何であるかをもう一度真剣に考え、住民参加のもとに地方自治の質をさらに高めていくことが要請されていると思います。
 このようなことを踏まえ、島根県では、県民の声を聞く地方分権、行政改革についての地域公聴会を七会場で開催し、約百六十人の意見発表者の発言要旨を県民に発表しています。また群馬県では、県民アンケート調査を行い、県民の意見を聞きながら検討を行い、提言をしてきています。
 知事あいさつの中で、「地方分権の推進を県民運動にまで高めたいと考えております」との力強い言葉があり、私自身も大変心強く感じました。しかし本年度の予算を見る限り、地方分権の意義、必要性について県民の理解を得るため講演会等を開催と、二百六十六万五千円が一つだけ計上されています。金額だけで判断するのはどうかと思いますが、これでは残念ながら和歌山県当局の地方分権に対する意欲が見受けられないと感じます。今、求められているのは、分権の受け皿を持つ自治体や住民がしっかりしなくてはならないということであります。そういう意味においても県として県民に対する啓発は大変重要な課題であると考えますが、本年度予算に組まれている内容についてお聞かせいただくとともに、今後県としてどのような取り組みをされていくのか、お伺いをします。
 最後に、地方分権推進委員会が実効ある地方分権を強力に推進されていくために、我が和歌山県議会としても地方分権の推進に関する決議を今議会でしていけるよう同志の皆様のご理解をお願いし、地方分権に関する質問を終わります。
 続きまして、和歌山の地震対策などについて質問いたします。
 昨年一月十七日に起こった阪神・淡路大震災は、昨年十二月二十七日現在で、死者六千三百八人、負傷者四万三千百七十七人、家屋の被害四十三万六千四百十六棟というすさまじい被害をもたらしました。ここに、亡くなられた方々のご冥福を改めてお祈りするとともに、今なお不自由な生活を余儀なくされている皆さんの一日も早い復興を期待せずにはいられません。この大震災は、自然の威力と人知の限界ということを私たちに考えさせてくれたのと同時に、地震を中心とする大きな自然災害によってもたらされる被害を最小限度に食いとめるためにはどのような町づくりをしなければならないのか、また万が一災害が発生したとき、人々の命と生活を守るためにいかなる救助、救援態勢を講じなければならないかということを指し示してくれました。
 一方、和歌山県においても、大きな被害を受けた昭和二十一年の南海道地震が、京都大学の安藤教授の説によると六十五年周期で起こると予想されています。もうあと十五年しかありません。地震が起これば、本県は海に面した市町村が二十一もあり、その津波対策が重要であります。県としては、このたびの阪神・淡路大震災を教訓として、計画の点検や検討を行うため、和歌山県地域防災計画検討連絡会議を設置し、検討作業が行われ、平成八年度当初予算に防災対策の事業計画がされています。
 私は、昨年十二月に、昭和五十一年以降、東海地震を想定して地震対策を進め、また阪神・淡路大震災から得られた貴重な教訓をもとに地震対策の総点検と行動計画をつくり上げてきた、地震対策では日本一と言われている静岡県を訪れ、県行政の取り組みと現場での県民の生の声を聞き、和歌山県の取り組む幾つかの課題を肌で感じてきました。
 以下、五点について質問と提言を行ってまいりますので、県当局の見解を賜りたいと思います。
 まず第一点目は、県が県民に地震が来る具体的な危険認識を持っていただくために南海道地震の危険度試算をつくり、県民に発表していくことが重要であると考えます。地震対策を有効に行うためには、目標となる具体的な対象、つまりどのような被害が、どの程度、どこで起こるかということを定量的かつ定性的に把握することが先決であると言われています。私自身も、子供のころチリ津波の実際の体験があり、そのときの津波の恐ろしさを忘れることができません。しかし、このような経験のない人や地域では、余りぴんとこないというのが現状であると思います。
 例えば静岡県では、昭和五十三年に東海地震の危険度試算を発表し、県民に地震が自分の足元に来るとの認識を持ってもらったのであります。これは、県、市町村の対策の目標値として、また県民に東海地震の認識を持ってもらうための手がかりとして大変重要な役割を果たしています。和歌山県として、県民に地震が来る具体的な危険認識を持ってもらうためにも、南海道地震の危険度試算をつくって県民に発表していくことを提案しますが、当局の見解を求めます。
 第二点目は、「みずからの命はみずから守る」、「自分の地域はみんなで守る」という県民の自覚と意欲を促す自主防災組織を結成し、実践していくことにぜひとも着手をされたいと思います。
 地震が起こったときに、その被害は広域かつ激甚に及ぶことが考えられ、国や県、市町村の対応だけでは限界があり、早期に実効性のある対応をとることは到底望めません。したがって、地域において住民自身がみずからの命を守り、地域を守るという対策がどうしても必要になってきます。住民の防災に対する心構えや準備をきちんとしておくことが被害を少なくすることに大きく役立つことは、阪神・淡路大震災の経験でも明らかであります。いわば地震対策は、国、県、市町村の行政施策と住民や企業などの地域社会における防災対応とが連携を取り合い、一体となってこそ効果を発揮できるものであると思います。地域住民が自主的な防災活動を行うには、各自がばらばらに行動しても効果はなく、むしろ混雑が増幅するおそれが大きくなります。そこで、地域住民が団結し、組織的に行動することがどうしても必要になってきます。そのためには、地域住民の自主的な結集体である自主防災組織の結成と活動が最も効果的であり、和歌山県にとって大変重要な課題であると、私は考えています。
 例えば静岡県では、昭和五十四年ごろから県として必要な資機材整備のための補助制度を創設したり、講演会や研修会などを開催し、昭和六十三年度からは顔見知りの範囲で二百から三百世帯を一組織として四千九百九十五組織、一○○%の組織を結成し、すばらしい成果を上げています。「みずからの命はみずから守る」、「自分の地域はみんなで守る」という県民の自覚と意欲を促す自主防災組織づくりに向けての知事の見解を求めます。
 第三点目は、和歌山県及び市町村地域防災計画の見直しについての進捗状況とその指導についてお伺いをいたします。
 静岡県では、阪神・淡路大震災後約四カ月で総点検を行い、見直しの課題を県民に公表し、それを踏まえて公表後三百日で行動計画予算をつくり上げ、具体化をし、実行させるよう取り組んでいます。「鉄は熱いうちに打て」と言います。和歌山県及び市町村の地域防災計画の見直しの進捗状況とその指導についてお聞きをしたいと思います。もし、おくれていたり、市町村間での取り組みの格差があるとすれば、その理由は何か明らかにされるとともに、一日も早い防災計画の見直しをされ、具体的な実行ができるよう、県の決意も含めた見解を求めます。
 第四点目は、和歌山県がいち早く取り組む決意とリーダーシップを示すためにも、まず地震対策専門の地震対策班のような組織体制をつくることを提言いたします。
 例えば静岡県では、昭和五十一年に消防防災課に地震対策班を発足させ、昭和五十二年には地震対策課が専門課として位置づけられ、現在二十六名の職員体制がしかれています。知事が直ちに取り組んだその政治判断は、県民に高く評価されています。前段で述べた三点の対策をしていくためにも、新たに地震対策課をつくれとは申しませんけれども、今の消防防災課の中に地震対策班を設け、専門的に取り組んでいける体制をつくることが大変重要だと考えますが、県当局の見解を求めます。
 五点目は、消防職員委員会についてお伺いいたします。
 昨年十月二十七日に消防組織法の一部を改正する法律が施行され、交付の日から起算して一年を超えない範囲において、政令が定める日から各消防本部に消防職員委員会を置くこととなりました。これを受けて、和歌山県下においては二十一の消防本部に消防職員委員会が設置されることになります。この消防職員委員会は、消防職場のさまざまな問題点を消防職員が話し合う中で解決するために制度化されたものであります。消防職場は、常に災害に備え、昼夜を問わず、二十四時間迅速に対応できる体制が不可欠なことは言うまでもありません。阪神・淡路大震災においても、消防職員は被災地で昼夜を問わない救援活動に携わったことはご承知のとおりであります。いざというとき最大限の力を発揮するためにも、消防職員の職場士気の高揚、体制整備は大変重要なものであると考えます。今回制度化される消防職員委員会は、この体制整備には大変有効なものであると考えられます。そうした意味からも、職員委員会の設置に当たっては、委員会構成及び運営について職員との意思疎通を十分図られることが基本であると考えますので、そうしたことに留意をして指導されるよう要望するとともに、県当局の見解を伺いたいと思います。
 続きまして、紀南地域の活性化について知事に質問をしたいと思います。
 私は、和歌山県が均衡ある発展をしていくために、北高南低と言われる状況を打ち破っていかなければならないと考えております。これは経済的な施策だけではなく、総合的な施策で取り組むべき課題だと思いますが、最初に西口知事に紀南地域の現状をどう考え、施策に生かしていこうとしているのかの所信をお伺いしたいと思います。
 平成七年四月一日現在の和歌山県における高齢化の現状によると、六十五歳以上の人口は、古座川町三五・五%を筆頭に、上位に紀南地域の町村が顔を並べています。これは、長寿の町だという喜ばしい面だけでなく、若者が町にいないという状況を示しています。高齢者に対する福祉的措置だけでは解決できない問題であります。また先日、地方紙に熊野川町の小口小学校が今春の終業式で閉校になり、ピーク時十校あった小学校もついに一校だけになってしまうと伝えていました。これから町を背負っていく若い世代がだんだん少なくなってきており、このまま放置することはこの地域の存在そのものが危機にさらされることになります。反面、和歌山市周辺には人口が集中し、リゾート博や関西空港の開港等のビッグプロジェクトにより、さも和歌山県が発展していけるというイメージを出しています。
 私は、本県紀南地方の魅力はすばらしい自然環境にあると思います。しかし、この自然環境を生かし、地域として活性化させる仕組みが整備されていないのが現状であります。今回の新年度予算においては、輝けわかやま・二十一世紀ふるさとづくりや紀南地域の活性化を図るため、平成十一年度ごろをめどに、この地域で広域展開の大規模イベントを開催するという新規事業や基本計画等も打ち出していますが、単に市町村を支援するだけでなく県が主体となって広域的な地域活性化事業に取り組むべきだと考えます。この地域には豊かな自然環境と歴史があり、それがもたらす付加価値はこれからの時代にまことに貴重なもので、これらのものをただ手をこまねいて地域そのものを崩壊させてしまってはいけません。
 例えば、梅関連産業、水産関連産業、林業関連産業、また熊野信仰を核とした熊野古道整備等による、従来とは異なる観光産業などのさまざまな活性化の糸口があると考えております。若者を町に取り戻し、地域が永続的に発展していける仕組みを県が主体となってつくり、市町村を単に支援するだけでなく、例えば本庁はもちろん、地域に根づいた県事務所内に活性化プロジェクトチームをつくり、広域的、総合的に取り組みを進めることが必要ではないかと思いますが、知事のご見解をお伺いしたいと思います。
 知事もご存じのように、現在、当該地域におられる方々の努力で、その地域が今まで営々と営みを続けてきました。少数ではあるが、これらの方々の貴重な意見に耳を傾け、県政をとり行っていただきたいと思います。また、今後この問題については、例えば、サッカースタジアムを兼ねた第一種国際公認陸上競技場の整備等でのスポーツによる地域振興や、熊野古道文化を保全し伝統文化を大切にする町づくり、南紀白浜空港跡地利用による紀南の活性化、さらには昨年六月議会で私が提言させていただいた福祉専門学校の設置等について具体的に質問していきたいと考えております。
 今回は、これらのことも含めて紀南地域の活性化という課題にどう対応していくのか、知事の基本的な見解についてお伺いをいたします。
 続いて、紀南地域の活性化の中の一つとして、南紀白浜空港跡地利用の計画について県当局にお伺いをいたします。
 まず、南紀白浜空港のジェット化については、県当局を初め県議会、地元周辺市町村、地元関係者など数多くのご尽力で三月九日開港いたしました。関係者の皆様方に、地元出身の議員として心からお礼を申し上げます。新空港の利用促進を図るためにも、隣接する空港跡地約四十七ヘクタールに及ぶ広大な用地の有効活用は大変重要であります。また、この広大な用地は紀南地方全体にとって貴重な資源であり、紀南地域全体の活性化に大きな意味を持つものであると考えます。一方、跡地利用をしていくための問題点として、高さ制限、公図が混乱していること、経済情勢などで、直ちに恒久的な利用案の結論を出すよりも跡地をできる限り現状のまま活用していく暫定利用の方向で検討されていると聞いています。私は、このような問題点があるから消極的になるのではなく、新空港の利用促進につなげていく、また紀南地域全体の活性化を図るためにも、むしろ恒久的な利用案を県が積極的、主体的に進めていかなければならないと考えるのであります。地元住民の声を大事にしていただき、百年の計に立って積極的な跡地利用を進めていただきたいと考えますが、県の見解を伺いたいと思います。
 また、平成十一年に計画されている紀南地域における大規模イベントの中の一つにこの跡地利用計画の実現を位置づけられるよう県の取り組みを要請し、この質問を終わります。
 最後の質問になりますが、古座保健所の廃止問題について西口知事にお伺いをいたします。
 私は、昨年来、地元の方々から、古座保健所がなくなるのではとよく尋ねられる中で、昨年の九月と十二月の厚生委員会において県としての考え方をお聞きしたり、存続に向けての意見を述べてきましたが、今時点において緊急な問題となってきましたので、あえて今議会での一般質問で知事の見解を求めたいと思います。
 この問題は、平成六年に地域保健法が改正され、保健所の所管区域の見直しについて、平成八年三月までに県は厚生省と協議することと聞いています。保健所所管区域を県老人保健福祉圏域または二次医療圏域に合わせるという考え方について、県地域保健対策会議を設置して検討されていると聞いています。しかしながら、この対策会議の中に古座保健所管内の実情を熟知する委員が入っていません。県老人保健福祉圏域に合わせることになると、現在の所管区域の串本町、すさみ町が田辺保健所所管区域、古座町、古座川町は新宮保健所所管区域になり、古座保健所は廃止されることになります。私は、このような画一的なことをするのではなく、より地域の実情に即した、地元の方々の意見を十分尊重した所管区域のあり方を考えるべきであると思います。
 既に、保健所管内の四人の町長さん、住民の方々、関係団体からも、存続の陳情が知事に来ていると聞いています。なぜ存続を希望するのか、私は次のように考えています。
 その第一の理由は、古座保健所所管区域は、公共交通機関の恩恵を受けない山間僻地と無医地区を多く抱え、高齢化と過疎が急激に進み、行政による支援が特に必要な地域であるということであります。生活や医療面をとっても、独自の圏域を構成しています。例えば古座川町の場合、その高齢化率は三五%を超え、県下一であります。同町の奥地から新宮保健所に用があって出かけたとすると、到着するまでの所要時間は二時間を超えることもあります。何よりも、緊急時の対応のおくれは明白であります。身近に保健所があることからくる住民の利便性、親しみやすさの低下は、残念ながら確実になると思います。
 第二の理由は、昭和二十三年に設置されて以来、地域の保健衛生の向上、並びに健康増進を図る中心的な保健機関として大きな役割を果たしており、平成二年に新庁舎が完成して、ますます地域の人々から信頼と期待を寄せられていることであります。古座保健所では、昭和六十三年度より高校生が赤ちゃんをだっこする体験を通じて、命の尊重と母性、父性の高揚を図ることを目的として、県立古座高校との連携による乳児体験学習や性教育を行い、平成六年には日本公衆衛生学会で発表するという、全国的に高い評価を受けている保健所でもあります。隣の三重県では、熊野市や尾鷲市が古座保健所と同じような対象になっていましたが、地元の強い存続要望の中で、県として存続をさせていくことを決めたと聞いています。
 西口知事は、昨年十一月二十四日の初登庁の日の訓示で、「県政と県民が乖離している。地域に出かけ、現場を確かめて仕事をしてほしい」と話をされたと聞いています。平成八年度予算の中にも、西口知事のそうした考え方が随所に反映されており、私自身も強く共感を覚えるものであります。県内の現場をくまなく歩き、地域の実情を強く感じられた西口知事におかれては、古座保健所所管地域における特別な事情を考えていただき、住民の保健衛生を推進する第一線の行政機関として古座保健所を存続していただくよう心から願い、知事の見解を求め一般質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 玉置議員にお答えをいたします。
 まず、地方分権であります。
 私は常に、市町村の発展なくして県の発展はあり得ないのだという持論を展開しているところであります。議員ご指摘のように、国が定めた基準が障害となって市町村の実情に沿った施策が展開できないようなことが生じた場合には市町村の考え方が優先されるシステムの構築が必要であると、いつも考えておるところであります。このため、必要以上の国の関与をなくして、国から地方への権限移譲と地方自主財源の確立を行うことによって、県民の立場に立った県政を推進していくことができる、真の意味での地方分権が必要であろうと考えています。
 また県内においても、住民に身近な行政はできる限り住民に身近なところで処理できることを基本として、県と市町村それぞれが主体性を持って、対等な立場で相互に協力していく体制を早期につくり上げていきたいという考え方が基本であります。
 ただ、率直に申しまして、現在の地方分権が名ばかりの地方分権になってしまっては困る、財政や税制が確立されていないと地方は余計に困るわけでありますから、そういうことについても強く要請をしていかなければならんと思っております。
 現在までの取り組みなどについては、総務部長から答弁をさせていただきます。
 次に、地震対策であります。
 県民の自主防災組織づくりについては、昨年の阪神・淡路大震災を見ても、県や市町村等の行政機関による防災活動には限界があり、地域住民による自発的な防災活動が非常に重要であることが明らかになったわけであります。
 県といたしましては、県民の防災意識の高揚を図るために、テレビ、ラジオを初めとするマスコミを通じて、また講演会や防災訓練の場などを活用いたしまして、さまざまな方法や啓発活動を実施しているところでございます。市町村に対しても、あらゆる機会をとらえて自主防災組織の育成を初めとする住民の防災体制の強化について指導を行っておるところでございます。
 いずれにいたしましても、自主防災組織の育成強化は緊急の課題でございます。県といたしましては、地震対策の先進県である静岡県の例なども参考としながら、防災の最重点課題の一つとして積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、紀南地域の活性化ということであります。
 ただいま玉置議員のお話にもございましたけれども、地域を回ったときに特に紀南地方の方からは、紀南地方の活性化をいかにするのかという大変切実な訴えを何カ所でもお聞きしてきたところであります。その方策について、今県においてもさまざまな検討をしているところであります。
 しかし、議員ご指摘のように、紀南地方の魅力は何といっても我が国でも有数の温暖な気候、豊かな自然、文化資源などでございます。余暇の増大、人々の自然志向、文化志向が強まる中で、今後その価値が一層高まって注目されてくると思います。こうした意味においても、現在積極的に取り組んでいる交通体系の整備をインパクトとしながら、海洋、森林、河川、温泉等の活用、熊野を初めとする文化資源の活用など、紀南地方の魅力を最大限に生かしていくことが大変重要であろうかと思うわけでございます。そのため、良好なリゾート地の形成を進め、さまざまな分野での交流を促進し、産業の活性化や良好な生活環境の形成を図るなど、若い人たちが定住できる地域づくりを進めていかなければならないと思います。
 また、活性化を推進する上では、地域の個性を最大限に生かすという考え方、市町村の枠や従来の行政分野にとらわれない取り組み、県、市町村、民間の協力、連携が今後一層大事になると思うわけであります。そのため、県といたしましては、まず地域の自主的な活動を支援いたしたい、さらに各県事務所に地域の活性化施策を企画調整する担当者を配置いたしまして、各方面の調整を図りながら広域的、総合的な取り組みを進めてまいりたいと思います。いずれにいたしましても、活性化方策などについては各部局で非常に真剣になって取り組んでいるわけでありますが、大変残念ながら、今までにこれだという起爆剤がないという悩みもございます。さらに精力的に進めていきたいと考えております。
 さらに、古座保健所の廃止問題であります。
 これからご説明申し上げることは保健環境部長サイドの解釈がありますので、地域保健法という立場の説明を少しさせていただきたいと思います。
 地域保健法等に基づいて、保健、医療、福祉の連携を図るために、保健所の所管区域は二次医療圏または老人保健福祉圏におおむね一致させることとされておるわけであります。また、母子保健等の身近な保健サービスが市町村に事務移譲されることにより、保健所は専門的、技術的、広域的機能を強化するなど、その役割分担も変化をしてくるわけであります。このため、県内の関係団体や市町村の代表、及び学識経験者等で構成する和歌山県地域保健対策会議を設置し、保健所の所管区域等のご審議をいただいており、議員ご指摘の古座保健所についても検討対象となっておるわけでございます。これからの保健所はどうあるべきかについて、地元の意見も伺いながら、人口規模、管内面積などの地域特性を考慮し、市町村を含めた保健サービスのあり方等、総合的に検討していただけることになっておるわけであります。
 しかし、私も現実にあの地方を回りまして、数少ない県立施設であり、過疎の地域で大変悩んでおられるさまざまな状況などもございますし町村長からも強い要請がございますので、これからの方策をしっかりと検討していきたいと思っております。
 以上です。
○議長(橋本 進君) 総務部長木村良樹君。
 〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 地方分権に対する県の働きかけについてのご質問でございます。
 地方分権の推進に関しては、従来、国への働きかけを行ってきたところでございますけれども、昨年十二月に地方分権推進委員会に対して、地方分権推進計画作成のための指針が地方公共団体の意見を十分取り入れた内容となるよう要望に参ったところでございます。その際、内容といたしましては、国と地方を通じる事務配分の抜本的な見直し、地方に対する思い切った権限と財源の移譲、機関委任事務の廃止、地方公共団体の事務処理に対する国の関与の極力廃止を要望いたしました。
 なお、現在、和歌山県にとって望ましい地方分権のあり方はどういうことかについて全庁的に検討を進めているところでございまして、今月中に出される予定の地方分権推進委員会の中間報告の内容も勘案しながら、引き続き国へ働きかけてまいりたいと考えております。
 次に、本県での市町村への権限移譲でございます。
 従来、行政サービスの向上の観点から、本庁から地方機関へ、また県から市町村への権限移譲を積極的に行ってきたところでございまして、現在、地方機関へは約千項目、市町村へは都市計画法に基づく建築行為の許可等八十五項目の権限を移譲しておりますし、平成八年度についても国有財産の管理事務の一部を市町村に移譲することといたしております。今後とも、住民に身近な行政はできる限り住民に身近なところでを基本にして、県の事務手続の見直しや市町村への権限移譲を積極的に進めてまいりたいと考えております。
 次に、地方分権への県民の声の反映ということでございます。
 ご指摘のとおり、地方分権の推進には世論の高まりが不可欠でございます。しかしながら、県内を見ても地方分権への関心はいまひとつでございますので、平成八年度にはテレビスポットやパンフレットによる啓発、市町村との共催による講演会の実施などにより地方分権の意義等について県民の皆様にも議論を深めていただき、来るべき地方分権の時代にふさわしい県政の実現を目指してまいりたいと考えております。
 次に、地震対策を中心とする消防防災関係のご質問でございます。
 まず、南海道地震の危険度試算をつくって県民に公表してはどうかということでございます。
 和歌山県でも、静岡県が行っているのと同内容の調査を昭和五十八年から昭和六十二年まで五年間をかけて実施しておりまして、その内容を平成二年度の地域防災計画に掲載して公表しているところでございます。また、阪神・淡路大震災を契機として、平成七年度には地質及び建物調査等を行うとともに、地震が発生した直後の被害状況を即座に想定できる地震被害予測システムを現在開発中でございまして、この内容を県地域防災計画に反映させるとともに、県下の市町村に対してもこれを有効に利用していただけるよう働きかけをしてまいりたいと考えております。
 次に、和歌山県と市町村の地域防災計画の進捗状況でございます。
 県では、昨年の阪神・淡路大震災を教訓に、大震災後の平成七年二月に、副知事を会長として和歌山県地域防災計画検討連絡会を設置し、全庁的な見直しを鋭意進めてまいったところでございます。この結果、職員による初動体制の確立、学校等の耐震調査の実施、防災拠点の整備充実、応急危険度判定制度の確立、耐震相談窓口の設置、近畿府県による広域応援体制の整備などをこの中で実施することといたしまして、近く開催する和歌山県防災会議に諮り、公表していきたいと考えております。
 また、市町村の見直し状況でございますが、昨年の六月と十二月に防災担当の課長会議を開催いたしまして、初動体制の確立や避難場所の再点検等を内容とする十八の点検項目について指導をいたしております。現在、県下のすべての市町村が見直しに着手しているところでございますが、今後とも適切な内容の地域防災計画となるよう指導してまいりたいと考えております。
 それから、消防防災課の機能強化についてのご質問でございます。
 消防防災課については、昨年の大震災後、地震防災対策を主たる目的として防災担当者を三名増員いたしております。また本年度についても、震災時の人命救助等に役立たせるために、防災ヘリコプターを導入するとともに防災航空隊を発足させました。さらに、専門的な面でも防災会議の地震部会を充実強化いたしておりまして、地震研究所や大学の先生方から専門的な知識を得る体制づくりも進めているところでございます。今後とも、ご提言の趣旨を踏まえ、県の消防関係組織のあり方については検討を加えてまいりたいと考えております。
 最後に、消防職員委員会についてでございます。
 この消防職員委員会を設ける趣旨といたしましては、消防職員間の意思疎通を図るとともに、消防職員の勤務条件、福利厚生等に対する意見を消防事務に反映しやすくすることによって職員の士気を高め、もって消防事務の円滑な運営に資することであろうかと考えております。
 この消防職員委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、消防庁の定める基準に従い、市町村の規則で定めることになっており、消防庁ではことしの七月ごろをめどに基準を示す予定と聞いております。県といたしましては、この国の基準に従い、県下消防本部における委員会の設置と運営が適切に行われるよう、消防庁とも十分連絡をとりながら鋭意指導してまいりたいと考えております。
○議長(橋本 進君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 玉置議員にお答え申し上げます。
 旧南紀白浜空港の跡地利用については、議員ご指摘のように、紀南地域の活性化に大きな意義を持つものであると認識しており、広域的な波及効果、新空港の利用促進を基本に、できる限り民間活力を導入した整備手法により跡地の利活用を図ってまいりたい。また、県として主体的かつ積極的に取り組んでまいる所存であります。ただ、民間資本の導入を軸とした恒久的整備には、なおクリアすべき諸課題があり、ある程度の時間を要するものと思われますので、跡地の有効活用の観点から当面の利用方策についても早急に固める必要があると考え、目下検討しているところであります。
 なお、平成十一年度開催を目途に検討している南紀活性化イベントにおいても、将来的な整備ビジョンを十分視野に入れて跡地の活用を検討してまいりたいと存じます。
 以上です。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 25番玉置公良君。
○玉置公良君 残り時間がございませんので、簡単に要望だけを述べておきたいと思います。
 全般的に前向きなご答弁、ありがとうございました。ただ、二点ほど。
 一つは、古座保健所の廃止問題についてであります。
 私の考え方も、地域保健法については基本的には賛成でございます。それは、妊産婦の健診とか三歳児の健診など、市町村の身近なところに移管をしていくとか、古座保健所を専門的に機能強化していく、こういうことについては賛成でございます。ただ、いわゆる所管区域については若干問題があるということで今回述べさせてもらったわけであります。
 そういった中で、知事から大変心強い言葉をいただきましたので、もう多くは申しませんけれども、これから存続に向けて厚生委員会の中でもお願いをしてまいりたいと思っています。
 それと、地方分権についてであります。
 これについては、決意は大変いいわけですけれども、実際に取り組んでいる中身はと聞きますと、やっぱり和歌山県は弱いのではないかと感じました。あと四年でございます。二十一世紀の初年から地方分権推進法が発効していきます。そういった中で、いずれにしても和歌山県当局のこれからの積極的な取り組みをお願いしたいという要望を申し上げておきたいと思います。
 最後に第三点目は、和歌山県の地震対策等について、私の提案に対して大変積極的な取り組みと答弁をいただきまして、ありがとうございます。三回目で初めてです、こんないい答弁をいただきましたのは。それぐらい関心を持ってくれておるということも含めて──静岡県では自主防災組織を五年をかけてつくったんですけれども、私自身も頑張りますが、どうか県当局もこの成功に向けてよろしくお願いし、要望といたしまして質問を終わります。
 ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時四十六分休憩
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