平成7年12月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(井谷 勲議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 18番井谷 勲君。
 〔井谷 勲君、登壇〕(拍手)
○井谷 勲君 皆さん、おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 歴史と伝統ある和歌山県議会において初めて一般質問の機会を得ましたことを心から厚く御礼申し上げるとともに、今後とも先輩議員、同僚議員を初め皆様のご指導、ご鞭撻のほどをよろしくお願いする次第でございます。
 既にご承知のとおり、十一月三十日の日経新聞によりますと、去る十一月二十九日、国では、首相の諮問機関である経済審議会が一九九五年度から二〇〇〇年度の中期を目指した新しい経済計画として「構造改革のための経済社会計画──活力ある経済・安心できるくらし」を村山首相に答申し、バブル崩壊後の経済の低迷を克服して活力を取り戻すには、規制緩和を進め、企業や生活者が自己責任で自由に活動できる経済社会への改革が急務であると強調しております。
 その計画の骨子は六項目で、「経済社会構造の抜本的改革に伴う痛みは、企業、消費者、国が応分の負担をすべきだ」、「経済的規制は原則自由・例外規制とし、社会的規制は必要最小限にとどめる」、「高コスト構造の是正はエネルギー、物流など十分野で数値目標を含めた行動計画を作成する」、「住宅は平均床面積百平方メートル、建築費の三分の一軽減を目指す」、「成長分野の七業種で二〇〇〇年までに四百二十一万人の新規雇用を創出できる見通し」、「九六年度以降の実質成長率は年平均三%、二〇〇〇年度の完全失業率は二・七五%の見通し。構造改革に失敗すれば、成長率は一・七五%に」と、厳しいものになっております。これを受けて政府は、十二月一日、新計画を閣議決定し、中期的な経済運営の基本方針とするとしております。
 一方、県におきましては、過日、県行政改革推進委員会──会長は前和歌山大学学長の小野朝男──における審議内容とこれまでの検討結果を踏まえ、今後おおむね三年をめどに実施する行政改革の基本的な考え方を和歌山県の「行政改革大綱」として発表されました。
 今回の行政改革は、地方分権の時代を迎え、地方の果たすべき役割がますます重要となっており、全国に先んじて進行する高齢化、過疎化への対策を初め、若者を中心とした県民意識の多様化、産業構造の変化などに対応した簡素で効率的な行政の確立を目指したものであり、その重点項目は以下の六項目であります。事務事業の見直し、組織機構の見直し、定員管理及び給与の適正化推進、職員の能力開発と創造性あふれる職場づくり、行政の情報化の推進など行政サービスの向上、会館等公共施設の設置及び管理運営であります。
 二十一世紀を間近に迎え、新たな国際秩序の模索や経済のボーダーレス化──いわゆる国境なしです──地球環境問題の顕在化に加え、国内的には産業の空洞化や出生率の低下など、社会経済構造が大きな転換期にあるとき、和歌山県に西口新知事が誕生したのでございます。
 厳しく、そして不確実性の時代の中にあって生活を重視し、個性を重んじる、真に豊かさを実感できる生活者重視の社会が求められる今日、県民のための県政を標榜し、開かれた県政、開かれた県庁を三S(スピード・シャープ・サービス)で推進されようとしている西口知事に大きな期待を持つとともに、二十一世紀を和歌山の時代にすべく、強いリーダーシップを遺憾なく発揮していただきたいものと思うのでございます。
 前置きが長くなりましたが、これより四点ばかり質問させていただきます。
 第一点は、府県間道路の整備についてであります。
 今までずっと「関西は京阪神の三極」と言われてきましたが、関西国際空港の開港と世界リゾート博の成功の結果、西口知事の提唱される「関西は京阪神和の四極」構想も実現性を帯びた話となってまいりました。私も、ぜひそうなってほしいものと熱望する一人であります。そのためには、西口知事が知事選で公約された和歌山百万都市圏計画が必要不可欠であります。和歌山県が関西圏の重要な一翼として発展するには、関西国際空港を近くに持つという利点を生かして魅力的な都市圏を建設する必要があります。そのためには、和歌山市から橋本市に至る紀北地域を緑で結ばれた一つの都市圏としてとらえ、大阪湾岸における一大拠点として都市改造を進め、この地を関西の新たな核となる百万都市圏に発展させ、二十一世紀に対応したすぐれた居住圏として位置づけることはもちろん、都市型リゾート産業の拠点をつくる必要があると思います。
 紀の川流域の百万都市圏を形成するためには、京奈和自動車道を早期に完成させ、和歌山市と橋本市間の交通機能を強化することが必要であると考えております。また、この地域のより一層の活性化を図るためには、和歌山市、橋本市を経て京都市、大阪市、神戸市を環状に結ぶ関西大環状道路の形成や紀淡連絡道路を含む太平洋新国土軸の早期事業化がぜひとも必要であります。その上、大阪と和歌山の時間距離をいかに短縮するかが必要であると、紀北方面の住民はもちろんのこと、県民の大多数の人が考えており、その核となる府県間道路の整備が急務であります。
 県当局においては、昭和六十二年に締結された紀の川利水に関する協定等を踏まえ、阪和開発連絡協議会等の場で両府県が協力して府県間道路の整備に努めておられますが、府県間道路の進捗状況について土木部長にお尋ねいたします。
 一、県道泉佐野岩出線の根来バイパスについては、急ピッチで工事が進められ、近く完成するように聞いておりますが、その時期と根来工区以南、和歌山バイパスまでの区間の進捗状況並びに今後の見通しをお聞かせ願いたい。また、未着手となっている根来から府県境までの区間における事業化の時期並びに今後の見通しについて、あわせてお願いいたします。
 二、県道泉佐野打田線については、和歌山県側は一次改良がほとんど完成しており、残っていた府県境部の一部も工事が進んでおりますが、特に犬鳴山付近の大阪府側の進捗状況をお聞かせ願いたい。
 三、平成五年度に国道昇格された国道四百八十号については、平道路が既に事業化されておりますが、今後の進め方及び大阪府の状況についてお伺いしたい。
 最後に国道三百七十一号の橋本バイパスについて質問を予定しておりましたが、昨日、地元先輩である向井議員が質問され、知事及び土木部長より前向きな答弁をいただきましたので、事業の促進要望にとどめておきます。
 第二点として、紀の川流域の農業についてお尋ねいたします。
 戦前・戦後の農業の動きを直接肌で感じてきた私には、人一倍、農業に対する情念とも言うべき熱い思い入れがあります。昭和五十年に農協組合長に就任して以来、これまで二十年間農業の現場で農家とともに汗を流し、知恵を絞りながら地域農業の振興に懸命に取り組んでまいりました。この間、農業を取り巻く新しい波は、地域を越え、県を越え、そして国を越え、大きく国際化の波となって怒濤のように押し寄せてまいっております。それは、昭和六十一年のグレープフルーツジュースを初め、平成三年の生鮮オレンジ、平成四年の果汁の自由化であり、先般のガット・ウルグアイ・ラウンドの農業合意に見られる米の部分開放や農林水産物の関税引き下げであり、さらには地域環境問題などであります。
 一方、私の住む紀の川流域に目を移しますと、より一層現実的な波を見ることができるのであります。都市化の進展などに伴い、農家数は昭和五十年の三万三十一戸から平成七年には二万一千百八十五戸へと二九%減少し、また農地を見ますと、昭和五十年の二万三千四百五十ヘクタールから平成五年には一万九千三百三ヘクタールへと一八%減少しております。さらに、いずこも同じように若い後継者が不足し、あるいは基盤整備の立ちおくれが見られるなど、その環境には厳しいものがございます。
 しかし、悲観したものでもございません。農業を取り巻く厳しい環境下にあって紀の川流域の農業には力強さがあり、これまで時代とともに歩みながらその質を変え、しぶとく生き残り、そして今日、品目によっては全国有数の産地を形成するに至っております。例えば、意欲ある後継者を中心に、カーネーションやバラの産地形成、またミカン園地再編対策事業を契機としたミカン、ハッサクから桃、柿の落葉果樹への一大転換、加えてホウレンソウやミツバに代表される軟弱野菜など、施設園芸の導入などによって紀の川流域の農業生産は依然として維持されておるのであります。
 このように、地の利を生かした農業生産が今日も営まれておりますことは、県当局初め市町村、農業団体、生産者が一つのスクラムのもとに結集したたまものであり、改めて関係者の努力に対し敬意を表するものであります。
 しかしながら、二十一世紀の農業に思いをはせるとき、農業は今、戦後最大の大きな転換期を迎えていると言っても過言ではないのであります。農業に押し寄せる自由化の波とともに、農業構造の持つ内部崩壊の危機をいかに乗り越え、二十一世紀に希望の持てる農業をいかに構築していくかが問われているのであります。紀の川流域の農業もこの例外ではございません。これまで農業とかかわりを持ち、農業への思い入れが強い一人としてその責任を痛感するとともに、真に考え、アクティブに行動していく時期にあると認識しております。
 そこで、農林水産部長にお尋ねいたします。二十一世紀に向かって紀の川流域の農業をどのように振興されようとしているのか、そのお考えをお示し願いたい。
 三点目でございますが、農業振興に関連し、近畿大学における農業関係専門学科の設置についてであります。
 和歌山県は果樹王国と言われますように、非常に農業の盛んな県であります。例えば平成四年度の統計でありますが、果実の粗生産額は千五十五億円で全国一位、また十アール当たり生産農業所得で全国平均の二倍の十九万円のほか、専業農家率についても二〇%を超え、他府県に比べて高いものとなっております。しかし、地域の実情を見ますと、高齢化が進む中で農業生産の担い手が不足してきております。加えて、本県特有の急傾斜地に広がる果樹園という厳しい現状がございます。また、輸入農産物が増加する中で、安全やおいしさを求める消費者ニーズに対応した農業生産が求められています。こうした課題の中で、本県農業の将来にとって、地域の核となる若い担い手を確保していくことが発展の最大のかぎを握っていると言っても過言ではありません。
 そこで私は、高度な農業技術を開発する高等教育機関がこの和歌山にできないものか、そして現在ある県の研究試験機関と共同で本県農業の生産性、収益性の向上につながる研究や技術開発ができないものかと考えるわけです。研究成果や開発される技術が農家経営に反映され、農業が魅力あるものになってこそ農業後継者が育っていくかと思うからです。
 幸い、那賀郡に近畿大学が開学しております。平成九年四月には現在の生物理工学部に二学科が増設され、さらに農学部に水産関連二学科が設置されるなど、子供数の減少により学科増設が難しい中、大学側も和歌山キャンパスの充実には非常に力を注いでいるように聞き及んでおります。これはこれとしてぜひとも実現していただきたいのですが、今後の課題として、将来、和歌山キャンパスに果樹や野菜、花卉等の園芸学科など農業関係の専門学科を設置していただくよう大学側に要請していってほしいものと考えるわけでございます。企画部長のお考えをお聞きしたいと思います。
 四点目、下水道問題でございます。
 那賀郡は、今、県都和歌山市に隣接しているという立地条件もあって、ベッドタウン化が進んでおります。さらにまた、関西新空港の開港のインパクトを受けて幹線道路網の整備が進み、大阪都心部から一時間以内の通勤圏に位置しております。このため大阪からの転入者も多いと聞いており、人口増加には目をみはるものがあります。まさに那賀郡は関西の人口集中地の一つに入ろうとしていると言っても過言ではありません。
 こうした都市化の進展に伴い、生活排水等の汚水が増大し、さらにまた産業排水等の汚水と相まって、河川など公共用水域の水質汚濁が進んでいることも否めない事実であります。このため、下水道の整備は急務の課題であります。しかしながら、流域下水道事業は長期間にわたる事業であり、また終末処理場を含む広い用地を必要とするだけに、地元の理解と協力が何よりも事業のかなめとなることは申すまでもございません。
 このような状況の中で県は、紀の川上流部の紀の川流域下水道伊都処理区については、関連する一市三町や関係機関と連携を密にし、早期供用開始を目指して意欲的に努力しておられると伺っておりますが、紀の川中流部の那賀郡六町を対象とした紀の川第二流域下水道那賀処理区の事業着手時期、関係六町の取り組みなどについて、現在の進捗状況を土木部長にお伺いいたします。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(橋本 進君) ただいまの井谷勲君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 井谷議員にお答えいたします。
 まず、府県間道路の整備に関するご質問の三点についてでございます。
 第一点目の県道泉佐野岩出線の道路整備につきましては、重点事業として取り組んでいるところでありまして、大阪府県境までの六・五キロメートルを四工区に分割して促進を図っております。
 粉河加太線より北側の一・二キロメートルは、根来バイパスとして平成八年度供用の予定としております。また、粉河加太線より南側、和歌山バイパスまでを、森工区の一・四キロメートル、備前工区の〇・八キロメートルについて、それぞれ用地買収を進めております。この両工区の用地買収の進捗率は、面積で約五〇%となっております。また、未着手となっている府県境までの押川工区三・一キロメートルにつきましては、現在公図訂正の作業を行っており、平成八年度より事業着手できますよう、国に対し要望しております。
 今後とも、これらの工区について、大阪府とも連携しつつ、早期整備に向けて鋭意努力していきたいと考えております。
 二点目の泉佐野打田線につきましては、和歌山県側はおおむね一次改良済みとなっておりますが、現在、府県境付近の線形不良区間の整備を大阪府とともに行っているところであります。また大阪府では、この工区のほか、大木一工区の六百メートル、野田工区の一キロメートルで整備を行っておりますが、これらの工区のうち約八百メートルは既に供用済みとなっております。残る区間は地籍が混乱しておりまして、現在も鋭意公図訂正の作業を進めており、終了した箇所から順次用地買収を行っているところでございます。
 今後とも、大阪府に対し、早期整備ができますよう働きかけてまいります。
 三点目の国道四百八十号につきましては、平道路を平成六年度に事業化いたしまして、現在、用地測量及び土質調査を実施するとともに、一部用地買収にも着手することとしております。大阪府側につきましても、路線測量、詳細設計を実施し、さらに平成七年度から用地買収に着手することとしております。また、府県境から国道百七十号までの区間を公共事業として平成八年度に新規採択されますよう、国に要望中であると聞いております。
 今後とも、府県間道路は重要でございますので、大阪府とも相協力しながら早期整備に全力を尽くしてまいります。
 次に、紀の川第二流域下水道那賀処理区の進捗状況についてでございます。
 下水道整備は、その整備を急務として積極的に進めているところでございます。那賀郡六町を対象とした紀の川第二流域下水道那賀処理区につきましては、関係六町で推進協議会を設置していただいておりまして、これを通じて協議調整を進めているところでございます。基本計画の策定をほぼ終了し、現在、終末処理場、ポンプ場の位置等について関係町と検討を行っているところであります。
 今後、終末処理場、ポンプ場の計画を固めますとともに、地元との連携が必要でございますので、地元調整等を十分に行い、都市計画決定等の法手続を進め、早期に事業着手できるよう取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 農林水産部長日根紀男君。
 〔日根紀男君、登壇〕
○農林水産部長(日根紀男君) 紀の川流域の農業振興についてお答えいたします。
 二十一世紀を控え、オレンジの輸入自由化やウルグアイ・ラウンド農業合意に見られる国際化の進展、また担い手の問題など、農業は非常に重要な時期を迎えていると認識しております。
 こうした中で、国におきましては、二十一世紀に向けた新しい農政の方向として新政策が打ち出され、土地利用型を中心とした農政が展開されつつございます。県におきましても、将来に向けて力強い農業を切り開いていくため、地域の農業者や学識経験者の方々のご意見もいただきながら、二〇一〇年を目標に人と基盤の整備に重点を置き、本県の独自性を生かした二十一世紀農業振興計画を本年五月に策定したところでございます。この中で、県内を四地域に区分した地域別の生産振興方向を示し、紀の川流域におきましては、大都市圏に近いという特性を生かした、野菜、花の施設園芸などによる都市近郊型農業の推進、桃や柿を主体とした落葉果樹産地の育成などを図ってまいることとしてございます。また、農業生産の核となる中核農家の経営モデルとして、農業所得一千万円、労働時間千八百時間の実現を目指した、水耕トマトによる野菜経営や桃とバラの複合経営などを示してございます。
 これらの実現を図るため、農道や園地改良などの生産基盤の整備、農家の近代的な資本装備を進めるとともに、さらにウルグアイ・ラウンド国内対策を有効に取り入れながら紀の川流域の農業振興に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 井谷議員にお答え申し上げます。
 議員お話しのように、今回、近畿大学当局のご理解により、水産関連二学科を設置していただくことになっております。奈良市にある近畿大学農学部は平成元年に移転整備されたばかりでありますので、さらに本県に農業関係の学科を設置していただくことは近々には難しい状況ではなかろうかと考えますが、本県農業の振興のためには高等教育・研究機関との連携が必要と認識しておりますので、既存の施設における研究機能の拡充といったことを含めて、議員ご提案の趣旨は大学側に伝えてまいりたいと存じます。
 なお、今回のキャンパス拡充では遺伝子工学科の設置が予定されておりますので、農業関係の研究も行っていただけるものと期待しております。
 以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(橋本 進君) 再質問がございませんので、以上で井谷勲君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時三十分休憩
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