平成7年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(東山昭久議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○副議長(木下秀男君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 27番東山昭久君。
 〔東山昭久君、登壇〕(拍手)
○東山昭久君 お許しをいただきましたので、一般質問をいたします。
 さて、本十二月議会は、さきの激しい知事選挙で見事初当選を果たされた西口勇新知事のもとで開催されるわけで、西口丸の船出、二十一世紀に向けての新しい和歌山県政のスタートのときでもあります。
 私にとりましても、四月の県議会議員選挙で県政に参加させていただいてから初めての質問でありまして、微力ながら県勢発展のため全力で頑張りたいと考えています。どうか、先輩議員、各議員の皆さん、西口知事を初め県当局、県職員の皆さんのご指導のほどを、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、住友金属の西防波堤沖埋め立て問題、JR阪和線の高架問題、教育問題について質問をいたします。
 西防埋め立て問題については、今日までこの議場で先輩議員の皆さんが幾度か質問され、論議されておりますが、埋立工事が開始された当時、私は住友金属の社員であり、当時から大変関心のある課題であると同時に、公害源の沖出しという環境保全と環境改善を目的とする埋め立てとして認められたものから、この目的が大きく変更されるという重大な問題でありますので、重複するかもしれませんが、県の考え方を伺いたいと存じます。
 西防の埋め立ては、住友金属和歌山製鉄所の公害発生源の沖出し移転、埋立地施設移転跡地の緑化、紀北地域の廃棄物の最終処分場確保などを目的に八○年八月に着工され、一から三工区で成る百七十六・五ヘクタールの面積を持つものであり、一から二工区が九○年に完成し、高炉滓、転炉滓処理場の移転が終わり、三工区は九六年の完成を目標に工事が進められてきました。
 住友金属は、九一年五月、鉄鋼業をめぐる経済情勢の変化に伴い、沖出し移転計画の見直しをせざるを得ないこと、また六号コークス炉乾式消火設備、第一製鋼工場建屋集じん装置など総額二百億円以上の整備対策、環境改善強化対策の進歩によって現在地で環境改善目標値が達成する見通しがついたとして、埋立利用計画の見直しを発表し、九四年三月三十日に和歌山県に対して申し入れがなされたのであります。九四年五月に西防波堤沖埋立地利用計画検討委員会が設置され、昨年十一月二十八日に中間報告が出されました。
 中間報告によると、配置案として一から二工区には銑鉄所高転炉滓処理関連設備、LNG火力発電所及び廃棄物広域機能を配置し、三工区にはテクノスーパーライナーの母港としての対応可能な多目的埠頭、緑地公園及び環境保健センター等を配置することが適当であるとなっています。三工区については、十一月二十七日の第六回検討委員会で最終報告がまとめられ、テクノスーパーライナーの母港としての多目的埠頭、緑地公園、環境保健センターの利用計画案が知事に報告されるとなっており、二工区のLNG問題は先送りされています。
 それでは、四点にわたり質問をいたします。
 第一は、巨大プロジェクトの経済波及効果についてであります。
 七八年、住友金属による埋立申請当時、埋立総費用三千億円で九千億円の波及効果があると言われていました。和歌山県の大規模プロジェクトの策定に参加された杉浦一平元和歌山大学経済学部教授の調査によると、住友金属の埋め立て、関西電力の御坊火力発電所の二つの巨大プロジェクトとも和歌山県には経済効果はほとんどないという意外な結果になったと言われています。理由として、和歌山県の産業構造の特性にあると言われています。大規模工事があっても、それを受注するのは県外大手企業であり、地元零細企業にはほんの一部の仕事しか回ってこない、せっかく大規模工事を計画しても地元への経済効果はゼロに等しく、他府県を利するだけに終わっていると指摘されています。私たちの生活がどれだけ豊かであるかの一つのバロメーターは、県民所得です。六六年に全国で十位であった県民所得が九二年には四十二位と低下しており、東京都の約半分の二百二十四万円で、全国平均でも七十万円の格差があります。
 そこで、西口知事に、住友金属の埋め立ての巨大プロジェクトの経済効果はどうであったのか、お伺いいたします。
 同時に、和歌山県は中小零細の地場産業が中心であり、大規模投資を直接受注して和歌山県の所得につながる企業が存在しない産業構造では、県民生活の向上のためには、大規模工事ではなくて地元産業向けの中小規模の生活基盤整備などの公共事業の方が経済効果はあり、県民生活の向上につながると思いますが、ご意見を伺います。
 第二に、土木部長にお尋ねします。
 住友金属の埋立地の用途変更は、瀬戸内海環境保全特別措置法の精神に反するのではないかという問題であります。
 当該埋め立ては、これまでの県議会での論戦から、公有水面埋立法並びに七四年の運輸省、建設省の共同通達などによって、法律論としては諸条件が満たされれば用途変更はクリアすると言われています。当該地域は瀬戸内法によって原則的に埋め立てが禁止されているが、公害対策ということで例外的に認められた経緯があります。八○年に、和歌山下津港湾内公有水面埋め立てに対して、当時の環境庁長官の意見を付して許可されたものです。先ほど申し上げたように法律論としてはクリアするかもしれませんが、瀬戸内法の基本方針とか、それに基づく和歌山県の計画の精神に反するのではないでしょうか。法の解釈をぎりぎりまでやったとしても、違法とまで言えるかどうかは別として、その精神に反するのではないでしょうか、ご見解を伺います。
 第三は、住友金属の公害の現況について保健環境部長にお尋ねします。
 県も、用途変更の検討方針として埋立地の新たな土地利用については、瀬戸内海環境保全特別措置法の趣旨に照らして、環境保全並びに公共、公益的利用として検討するとなっており、住友金属に対しては工場移転によって確保される水準と同等以上の環境対策を実施させると明らかにされてきました。私も、この埋め立てが公害源の沖出しを目的としたものであることから、環境改善目標値が達成されることが用途変更の絶対的な条件であると思います。住友金属は九一年に、環境改善対策強化充実によって現在地での環境改善目標値を達成したとして、利用計画の見直しを明らかにしました。現在も達成されていると思いますが、九一年から今日までの公害の状況について、その結果を明らかにしていただきたいと存じます。
 第四は、埋立地の安定化、液状化対策について企画部長にお尋ねします。
 液状化現象は新潟地震で注目され、一月十七日の阪神・淡路大震災でも、神戸市ポートアイランド埋立地での地震の激しい揺れによって地盤の液状化現象が広範囲で起き、タンク群が傾いたり道路が陥没するという大きな被害が出ました。このポートアイランドの埋め立てにはさまざまな液状化対策が講じられてきたと言われており、今回の震災でこれまでの対策が不十分であったことが明らかになり、埋立地での安定化、液状化対策の再検討が必要であることを示しました。
 住友金属の埋立地は、一般廃棄物、産業廃棄物などを埋立材として使用しており、場所ごとに埋立材が違うため非常に不安定であると言われています。また、埋立地付近には磯ノ浦活断層があると言われています。中間報告では、第二工区の利用計画案としてLNG火力発電所の配置案が示されています。これからさらに検討が深められていくと思いますが、関西電力株式会社は四月十七日に、関係漁協、漁連の同意、及び地元関係自治会の環境調査に関する了解が得られ、整ったとして環境調査が進められていることと思います。恐らく最終報告も、LNG火力発電所として進められると思われます。安全対策は万全でなければなりません。
 そこで、西防埋立地の安定化、液状化対策をどうするかもあわせて検討していかなければならない課題であると思いますが、ご見解を伺います。
 西防埋め立ての入り口の問題について質問いたしましたが、LNG問題などさらに検討を要する課題でありますので、今後引き続き論議をしていきたいと存じます。
 次に、JR阪和線高架問題についてお尋ねいたします。
 紀の川大堰建設工事が、九九年完成目標で現在進められています。その関連として、JR阪和線の紀の川にかかる鉄橋がかけかえられる計画があり、建設省近畿地建は、本年三月ごろ、設計計画のための事前測量を実施するとして地元関係住民に対する説明会を行いました。JR阪和線の六十谷駅・紀伊中ノ島駅間は四箇郷地区を縦断しており、区間内に大小含め六カ所の踏切があります。四箇郷地区は、近年新興住宅地となり、どんどん住宅がふえ続け、人口も増加しています。また、区間内は道路も狭く、四カ所の踏切は朝夕の電車の本数も多く、いつも遮断機がおりた状態が続きます。通勤、通学で自動車、自転車が満杯となり、大混雑している状態です。地区内には小学校二校、中学校一校があり、学童、生徒の通学も大変危険な状況にあります。四箇郷連合自治会も、地元要求として和歌山市に対して要望を出しています。紀の川大堰建設に伴う紀の川鉄橋のかけかえ関連事業として、県市協調して早期事業化に向け、国、JRに対して早期に協議を進められ、高架化を早期実現されることを強く求めたいと思います。土木部長の前向きのご答弁を求めます。
 次に、教育問題についてお伺いいたします。
 戦後五十年のこの年、日本社会の安全神話を崩壊させるような出来事が相次ぎました。一月の阪神・淡路大震災、オウム真理教による一連の事件、金融業のたび重なる不祥事など、また子供や教育をめぐる状況は、学歴偏重社会を背景に、過度の受験競争の中で、いじめ、自殺、不登校、中途退学、体罰、校内暴力など、依然として解決していかなければならない課題が山積しています。日本の政治、経済、社会と文化のあり方とともに、日本の教育のあり方が今日ほど問われているときはないでしょう。いじめによってみずから命を絶つという痛ましい出来事がこれ以上起きないようにするため、また二十一世紀のゆとりある豊かな人間優先の社会を担う人材育成のため、子供はいつの時代にあっても社会を変えていく担い手であり、希望であり、未来であります。
 戦後の日本は、ひたすら歩み続けてきました。その他の国が普通の歩道を歩んでいくのに対して、日本の場合は動く歩道の上をさらに早足で歩いてきたようなものです。戦後の廃墟の中から経済復興を遂げ、七○年代は世界の工場、八○年代は世界の金庫と言われ、経済大国、世界第一の債権国になった日本であります。だが、今世紀後半、時計の針を早く回し過ぎてしまった我が国には、さまざまな矛盾と病弊が生まれました。富を大きくする決め手は効率であり、効率が殺し文句となってあらゆる社会活動に浸透し、国も社会も人々も空前の速度と密度で動く、猛烈に忙しい世紀を生み出しました。経済、生産優先の社会の中で、人々は立ちどまることを許されず、なぜ普通の歩道ではなく動く歩道を早足で歩くのかと問われても、自分ははっきりせず、その上を歩くこと自体が目的のようになっている感じさえします。
 教育は、その社会のありように支配されやすいものです。特に日本の学校教育のように、個々人の自己の実現より国家社会の目的に沿うことを求められる傾向が強い中では、それはよりはっきりと現実の政治、経済、社会によって規定されると言っても過言ではありません。戦後の一時期を除いては、日本の教育の目的は、動く歩道の上をうまくバランスをとり、ひたむきに前に進んでいく人間の育成を目指したと言えるでしょう。テストと偏差値で子供を追い立て、激しい受験競争に巻き込みながら高学歴社会を築きました。教育内容は膨らみ、教員は集団駆け足授業を余儀なくされ、そのため落ちこぼれた子供を救えず、いじめ、登校拒否の子供をふやし、高校中退者を増加させ、ともに生きることの苦手な子供をつくり出すことになったと言えます。各教育機関では、ゆとり教育、個性、創造性の尊重、学校五日制の導入など教育の見直しの動きがありますが、肝心の受験改革はおくれています。
 人間形成にとって極めて重要な教育が受験競争と詰め込みの管理主義教育の中でゆがめられ、子供たちは子供時代を自分らしく生きられない状況になっています。二十一世紀へのカウントダウンが始まった今日、日本は今世紀の繁栄のひずみをさらに拡大しながら行き詰まっていくのか、それとも国民一人一人が豊かさを享受し、個人、個性を開花させる社会へ転換できるのかの分岐点に立っています。効率、能率中心の生活から、快適でゆとりある心豊かな社会、バランスのとれた生活への転換であります。子供たちが、遊びを通じて人間関係を学び、豊かな試行錯誤の中で自己を内省し、次の問題を解決する力を見つけるのです。子供たちにゆとりと自主的、創造的な活動を保障するためには、教育内容や授業時間数の削減、入試制度の改善、これまでの競争と選別の教育から、個性を尊重し、ともに学び励まし合う共生の教育に転換を図るとともに、子供の権利条約や女性差別撤廃条約の理念を生かし、学校や地域でその具体化が問われています。
 教育の現状について申し上げましたが、教育問題の四点に関し、知事並びに教育委員会のご見解を伺いたいと存じます。
 まず、西口知事にお尋ねします。
 西口知事は、さきの選挙公約で、「未来を担う青少年のために」、「健やかにたくましく、子どもたちの夢を育み、若者の能力と創造性を伸ばすため、保・幼・小・中・高校教育を一層充実し、併せて大学をはじめ全ての教育施設を整備します。また、生涯学習をさらに振興し、地域を支える人材を育成する環境づくりを進めます」と述べられ、紀州っ子すこやか保育プロジェクトの推進、のびのび紀州っ子の育成、総合教育センターの建設等を政策として掲げられています。
 そこで、教育改革をどう進められ、選挙公約をどう具体化していかれるのかを伺いたいと存じます。
 あわせて教育長には、日本の教育の現状をどう認識されているのか、お尋ねいたします。
 日本教職員組合の結成綱領は、「我々は平和と自由を愛する民主国家建設のため」と宣言して、「教え子を再び戦場に送るな」や「平和・人権・環境・民主主義」の方針のもと、教職員の地位の確立、民主教育の発展、そして民主的な社会の建設を目指してきました。敗戦後の教育の復興は、民主的な日本の建設の希望であった。新しい教育方針が定められ、国家による統制ではなく、地方の教育づくりやさまざまな試みが奨励されました。その後、東西冷戦の中でアメリカの対日占領政策が変更となり、教育界も激しい対立が続いてきました。教科書問題や特設道徳の導入などイデオロギー対立が前面に出て、同時に戦後の復興とかかわって教育が経済成長の手段となり、均一で安価な労働力を大量に求める施策はやがて入学競争を激化させ、偏差値という教育界独特の物差しを誕生させるに至りました。それ以降、日教組は抵抗と反対闘争を今日まで進めてきました。この間、民主教育の実現のため一定の役割を果たしたことは事実であります。
 日教組は、九月に第八十回大会を開催して、教育の場における激しい対立は、学校という教職員組織の分断を招き、教職員の意欲を喪失させ、総じて学校が活性化せず、教育界が重苦しい停滞を重ねているのも対立と抗争の構造に起因していると総括して、教育界の対立を解消し、教育と福祉を社会問題の中心に据え、教育改革の国民的合意を形成しようと、すべての教育機関に対して子供を中心とした共同討議を呼びかけ、教育改革を目指して緊張感ある対話路線を決定しました。その初めとして、十一月十五日、経済四団体と「二十一世紀の社会と教育を考える教育改革フォーラム」パートワンを開催して対話がスタートいたしました。この日教組の新路線に対する県教育委員会のご見解をお伺いします。
 同時に、本県では教職員組合は大別して二組合があります。日教組の方針のもと、日教組和歌山が組織されています。教育界の対立を解消し教育の再生を図るため、日教組和歌山との対話、連携を今後どう具体的に進めていくかをお伺いしたいと存じます。
 第二点は、学校五日制に関して質問します。
 学校五日制実現の歩みを振り返ってみると、世界各国の現状は、アメリカ、イギリス、フランス、オランダ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどは近代教育制度が成立して以来学校五日制ですから、歴史は大変古いものがあります。東ヨーロッパ諸国でも、六日制から五日制へと切りかえる傾向にあります。
 日本では、近代教育制度発足以来、ごく例外を除き、ずっと六日制で歩んできました。九二年に月一回、ことし四月から月二回の学校五日制が導入されました。学校五日制の論議が本格的に始まったのは、一九七○年代に入ってからのことです。七二年の日教組第四十一回大会で、「学校五日制実現」という言葉が登場してきました。このときは労働時間短縮の観点からの提起であり、七三年の四十三回大会で教育改革という観点からの提起となりました。八七年十二月に教育課程審議会の答申で導入の方針が示され、八九年、文部省が学校五日制の実験校として九都県六十八校を指定して実験がスタートしました。八九年に連合が重点課題として学校五日制実現を取り上げ、大規模なキャンペーンを展開して大きく世論も盛り上がりました。
 学校五日制の理念・意義は、第一に、学校の役割を整理し、家庭や地域の教育における機能を高めること。豊かな教育は、量的なものでなく質的なものが求められています。家庭、地域の教育機能を高めることは、保護者の責任を高め、地域の活性化にもつながります。第二は、子供たちがもう少し自由な時間を持てるようにしようとするものであり、自分で考え、自分で責任を持つ自立した子供をつくることにつながります。第三は、学校で働く教職員の労働時間短縮と全労働者の労働時間短縮につながる重要な意義を持っています。
 以上、学校五日制の歩みと理念を申し上げましたが、四点について質問いたします。
 一、学校五日制の理念・意義をどうとらえられているのか。月二回となって八カ月が経過しましたが、理念、意義は生かされているのか。
 二、月二回の導入によって他の曜日へのしわ寄せはないのか。例えば、夏季短縮時間の削減などは起きていないか、起きていれば、起きないように行政指導すべきだと思うがどうか。
 三、私立校の現状はどうか、私立校の授業時間の差による格差はないのか、私立校への指導はどうしているのか。
 四、休日に子供たちが自由に伸び伸びと過ごすための公共施設、有効に活用できる安全な遊び場は保障されているのか。活用できる施設の拡充を強く求めたいと思います。
 三点目は、高校中退者に対する対応について伺います。
 厳しい受験競争を勝ち抜いて合格し、楽しい高校生活に希望を持って入学したのに、さまざまな要因によって中退を余儀なくされる生徒は年々増加しており、昨年一年間で全国で十二万人を超えたと言われています。県下でも、全日制五百三十九名、定時制百二十八名と聞いていますが実数はどうか、中退者はその後どうなっているのか、また要因を究明して対策を講じ中退者をなくするように努力することは当然でありますが、その後の動態はどうなっているのか、進路の相談、指導をどうしているのか、伺いたいと存じます。
 幾つかの他府県で中退者専門の相談窓口を設置して対応していると聞いているが、県としても専門の相談窓口を設置し、中退者の進路相談に対応すべきであります。ぜひとも設置するよう強く求め、見解を伺います。
 四点目は、いじめ防止対策について伺います。
 十一月二十六日付、毎日新聞のトップで、大変ショッキングな記事を載せていました。「いじめ苦に九人が自殺 『清輝君』から一年」という記事です。毎日新聞の調査によると、大河内清輝君(当時十三歳)がいじめを苦にして自殺した事件から、一年間で全国で九人がみずからとうとい命を絶ったという結果を明らかにしています。
 「『もっと弱い人間だったら、もうとっくに死んでいただろう』 こんな日記を残し、奈良県橿原市立橿原中二年、坂田健作君(当時十三歳)が自宅で首をつって自殺したのは今年四月二十七日。(中略)自殺直前の四月十九日から二十一日までの三日間だけつづられた日記には、『お母さんは、ぼくのたちばや、しんどさをしらない。らくになるならぜんぶ話そうと思う』『いましんだら、今まで苦ろうしてきたことが水のあわになる』と、一人で悩んでいた様子がうかがえる」。
 そして、清輝君の一周忌に当たることしの十一月二十七日に、新潟と鳥取で二人の中学生が自殺しました。新潟県上越市立春日中一年、伊藤準君(当時十三歳)が、実名を挙げて、「あいつらは僕の人生そのものを奪っていきました。僕は生きて行くのがいやになったので死なせて下さい」という遺書を残して、いじめを苦にみずからの命を絶つという事件が起こりました。だれにも相談できず、一人で悩み、苦しんでいる子供の声が届かない社会になってしまっているのではないでしょうか。
 文部省のまとめによると、いじめ件数は、九三年度は全国で二万一千五百九十八件で、九四年度は全国集計で前年度を大幅に上回る見込みだと言われています。県下では不幸な事件は起きていませんが、教育現場では深刻な現状にあるのではないかと思われます。いじめ防止対策は、極めて難しい課題であると同時に、早期発見、早期対策が必要であります。学校、家庭、地域でともに取り組んでいかなければならない課題でもあります。
 そこで、お尋ねします。昨年十二月、いじめ緊急会議は、全国の公立学校にいじめ総点検を促す緊急アピールを出しました。これを受けて、県教育委員会でも総点検されたことと思います。その結果を明らかにしていただきたいと存じます。
 全国の自治体で、さまざまないじめ防止対策が実施されています。大阪府では四月から各教育事務所に五人ずつ学生ボランティアを置いた、北海道では国のスクールカウンセラー派遣事業に独自に予算を上乗せして派遣先をふやした、福井県では教師二十人を大学に半年間国内留学させるカウンセラー養成制度を開始したなど、いじめ防止対策に力を入れ、徐々に成果が出ていると言われています。県としてのいじめ防止対策はどう進められているのかお伺いすると同時に、不幸な事件が起こらないように万全な対策を強く求めたいと思います。
 五点目は、同和教育について伺います。
 県教育委員会が九二年六月に県下の小中学校で実施した「学習状況調査報告書」が昨年三月に出されました。「調査の目的」として、「同和教育の取り組みの到達点及び成果を明らかにしながら、今日残されている課題は何かを、学習と生活とのかかわりにおいて総合的に究明しようとするものである」となっており、同和教育の成果と課題を明らかにすることにあるとしています。
 今回の状況調査で明らかになったことは、地区生と地区外の児童生徒の学力格差は前回よりわずかながら縮まったとはいえ、依然として同和地区児童生徒の学力は低位な状態に置かれていることであります。格差は、紀中、紀南の方が紀北地方よりも大きくなり、また小学校よりも中学校の方が大きくなっています。これらのことは、高校進学率や大学進学率、大企業への就職率などにあらわれており、同和地区児童生徒の進路保障の課題が依然として残されていることをあらわしています。この調査結果が絶対的なものでないことは言うまでもありません。
 「学習状況調査報告書」の「利用上の留意点」で述べられている「調査は、限られた条件の下で実施されたものである。したがって、この調査結果から、児童生徒の学習や生活状況等のすべての実態が把握できるということではなく、その傾向をとらえることができるものであるという点を考慮する必要がある」と言われているように、一つの傾向を示していると思います。前回の調査に比べて同和地区児童生徒と全体の学力差がわずかながら縮まっていることは、現在までの諸施策の成果であると思いますが、部落問題が提起する教育課題は依然として存在することが今回の調査でも明らかになっており、その対策が強く求められていると思います。今回の学習状況調査で明らかになった課題とは何か、その結果を踏まえてどう対応されているのかお尋ねして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○副議長(木下秀男君) ただいまの東山昭久君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
 〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 東山議員にお答えをいたします。
 住友金属の埋め立てによる経済効果であります。
 住友金属の西防波堤沖埋立工事については、公害発生源の移転などを目的として、住友金属が昭和五十三年に公有水面埋立申請を行い、昭和五十五年に埋立免許を取得した後に護岸工事に着手したものでございます。一工区が昭和五十九年二月に、二工区が平成四年十一月にそれぞれ竣功いたしております。三工区については、現在、埋立土砂の投入を行っているところでございます。
 本工事による経済効果については、民間主体でかつ継続中の埋立工事でもあり、特に調査いたしておりませんけれども、大規模な港湾土木工事でもあり、資材の調達、工事の下請、地元雇用等の面で相当の経済波及効果がもたらされているものと考えております。
 なお、公共事業は、社会資本の整備を図るという本来の目的のほかに、地域経済を支えるという重要な経済対策としての一面もございます。その観点から、事業予算の確保はもちろん、県内業者、中小業者の受注機会の増大が図れるように、今後とも十分配慮しながら、積極的に公共事業を進めたいと考えております。
 次に、教育についてでございます。
 未来を担う人材を育成する教育の充実・振興は、あすの和歌山を築いていく上で極めて重要な課題でございます。さらに、二十一世紀を間近に控えて、科学技術の進歩、産業構造の変化、高齢化、少子化など、社会が急激に変化する時代にあって、新しい教育の創造に向けた改革の推進が強く求められていると認識しております。
 そのため、このたび私の提案の中に、ライフワーク・カレッジやふるさと塾の創設等による生涯学習の振興を初め、幼稚園から高等学校に至る教育の充実を目指すとともに、心身障害児の教育を充実するための養護学校の新設、すぐれた指導者の養成を図る総合教育センターの建設などを進めていくためのプロジェクトを発表したところでございます。
 今後、こうしたことについて十分な検討を加えながら教育環境づくりを進めてまいりたいと考えております。
 以上であります。
○副議長(木下秀男君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 東山議員にお答えいたします。
 まず、住友金属の西防沖埋立地の用途変更についてでございます。
 現在、平成六年三月の住友金属からの申し出を受けて、新たな土地利用について西防波堤沖埋立地利用計画検討委員会を設置し、環境保全と公共、公益的利用の観点から検討しているところでございます。新たな利用について、事業主体である住友金属から公有水面埋立法の用途変更の申請等がなされた段階で、瀬戸内海環境保全特別措置法との関係を十分踏まえながら判断してまいりたいと考えております。
 次に、JR阪和線の高架化についてでございます。
 海南市において進めているような連続立体交差事業による場合は、交差道路数、交通量の要件のほかに、周辺の区画整理などの面整備が進められている必要がございます。事業化に当たって、これらの点を和歌山市において進めていただかなければなりませんが、相当な困難がございます。
 また、鉄道を高架化するもう一つの方法として、幹線道路を立体化するのに必要な額相当分を国庫補助事業により、残りを市の単独事業で対応する方法がございますが、そのための単独事業費は膨大なものになると考えられます。
 いずれにいたしましても、和歌山市の積極的な対応が不可欠でございまして、市の意向を踏まえ、今後研究してまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 保健環境部長鈴木英明君。
 〔鈴木英明君、登壇〕
○保健環境部長(鈴木英明君) 住友金属の公害の現況についてお答えいたします。
 住友金属工業株式会社和歌山製鉄所に係る環境改善目標値の達成状況についてでございますが、環境改善対策の実施等により、目標値を満足してございます。例えば、硫黄酸化物排出量については、時間当たり五百五十立方メートルの目標値に対して平成四年度が三百三十七、平成六年度が三百六十一となっております。また、窒素酸化物排出量についても、時間当たり六百三十立方メートルの目標値に対して平成四年度が四百三十二、平成六年度が四百四十七となっており、製鉄所の稼働状況によって変動はございますが、環境改善目標値をいずれも満足してございます。今後も、環境改善目標値を達成するよう必要な指導を行ってまいります。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 企画部長藤谷茂樹君。
 〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 東山議員にお答え申し上げます。
 LNG火力発電所の立地については、西防波堤沖埋立地利用計画検討委員会の中間報告で、最終判断のためには通商産業省の環境影響評価要綱等に基づく調査の実施が必要であるとされております。これを受けて、平成七年四月から事業者により環境調査とともに、阪神・淡路大震災を踏まえ、液状化等の地震対策を含む安全性の検討も実施されているところであります。
 県といたしましては、検討委員会の最終答申を待って、電源立地の県の判断基準の一つである安全性について、ご質問の地質や活断層の問題を前提とした液状化、構造物の耐震性、防災保安対策等を含め、建築基準法、消防法、高圧ガス取締法、港湾施設の技術上の基準、及び火力発電所の耐震設計指針等の規定に照らして慎重に対応してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 総務部長木村良樹君。
 〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 私立学校における学校週五日制の取り組み状況でございます。
 高等学校では八校のうち五校、中学校では七校のうち四校、小学校では一○○%──これは一校だけでございますけれども──幼稚園では四十七園のうち四十六園が月一回以上実施しているところでございます。また、月二回以上の実施率は私立学校全体で約六○%となっております。
 私立学校については、各学校の自主的な判断を尊重しつつ、本制度の実施が時代の趨勢であることにかんがみまして、従来から実施についての要請を行ってきたところでございます。
 なお、学校週五日制の未実施に伴う私立と公立との授業時間数の格差については、学校経営上の観点とか保護者の要望等、難しい問題がございますけれども、和歌山県公私立高等学校協議会の場等において種々協議を行っているところでございます。
○副議長(木下秀男君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題、六点についてお答えいたします。
 まず、教育の現状についてであります。
 もとより教育は、知・徳・体にわたる豊かな人間形成を目指す活動であり、時代を超えて変わらない価値を追求する営みであります。同時にまた、国際化、情報化など社会の急速な変化に柔軟かつ的確に対応することが求められております。今日の教育には、過度の受験競争、偏差値偏重による安易な進路指導がもたらす弊害、また社会体験や自然体験の不足などさまざまな課題がございます。
 今後の学校教育においては、これらの諸課題にきめ細かく対応するとともに、特に子供たちの個性を伸ばすために、新しい発想に基づき、幅広く柔軟な教育を推進する必要があると考えてございます。このため本県においては、やわらかい制度と温かい援助を基本理念として、学科の新設、改編、総合学科の創設、高等学校間の連携、入学者選抜の改善など、教育改革に係る諸施策を積極的に展開し、魅力と特色のある学校づくりを推進してきているところであります。また、本県教育の水準を一層引き上げる決め手は中学校教育の充実にあるとの観点に立って、本年度から庁内に中学校教育活性化プロジェクトチームを設置いたしました。この中で、選択履修幅の拡大、チームティーチングの導入、情報教育の充実、さらに中学校と高等学校間の連携など、幅広く検討を行っているところであります。
 次に、日教組第八十回定期大会における運動方針については、私は従前から、教育界に分裂や対立を生じさせたり、ただ批判することだけでは結果として子供たちのためには好ましくないと考えており、このたびの日教組の路線変更については、子供に視点を当て、時代の要請にこたえる新しい教育の創造という観点から評価できると受けとめてございます。
 今後、積極的、建設的な提言等に対しては謙虚に耳を傾け、関係者と一体となって教育改革等を推進してまいりたいと考えます。
 次に、学校週五日制についてであります。
 これは、生涯学習社会等を視野に入れ、学校、家庭及び地域社会の教育全体のあり方を見直し、生活や遊び、自然との触れ合い、ボランティア活動などさまざまな体験を通して、心豊かでたくましい子供の育成を図る観点から実施しているところであります。
 こうした趣旨を生かすために、各学校では、野菜や米づくりなどの体験的な学習、社会科や理科等で問題解決的な学習を取り入れるとともに、有意義な余暇の過ごし方についても指導しているところであります。また本年度から、全国で初めての学校外活動推進モデル事業を実施し、子供たちの豊かな交流が行われる場の提供を進めているところであります。各種アンケートの結果によると、親子の触れ合いの時間がふえたこと、好きな遊びができたことなど、それぞれにゆとりを活用している様子がうかがえます。
 学校週五日制と授業時数のかかわりについては、本県では従前から授業日数等が全国水準より低い実態があることを踏まえ、年間を通じて学校行事等の精選、短縮授業の見直しなどを行い、授業時数を確保するよう指導してきたところであります。余暇活動の場につきましては、学校施設の活用はもちろんのこと、県立、市町村立の施設の活用を進めてございます。今後、関係機関との連携のもとに、一層の拡充に努めてまいりたいと考えます。
 高校生の中途退学につきましては、平成六年度、県立高等学校では、全日制で五百三十九名、在籍生徒数に対する比率は一・六%で、ここ数年横ばいの状態が続いてございます。退学後の動向については、就職五二・一%、専修学校等への進学及び他校への転学が一四・七%で、特に単位制課程を置く定時制高校への転学等を希望する生徒が増加しております。
 主な対策としては、各学校において中退者対策委員会等を設け、一人一人に視点を当てた学習指導の充実によって中途退学の防止を図るとともに、生徒や保護者との連絡を密にして、個々の生徒の希望に沿った進路の確保にも努めております。相談窓口の設置につきましては、各学校における取り組みや関係機関との連携を考慮しながら研究してまいりたいと考えます。
 いじめ対策につきましては、本年一月、総点検を実施いたしましたところ、いじめの件数は小学校で四十八件、中学校で四十四件、高校で五件でございました。
 教育委員会といたしましては、この問題の解決は緊急かつ重大な課題であると受けとめ、本年一月、庁内に登校拒否・いじめ問題に関するプロジェクトチームを設置し、さらに本年四月には、精神科医や教育相談の専門家等により構成する登校拒否・いじめ問題に関する検討委員会を発足させております。ここでの協議を踏まえ、教育相談電話の活用を初め、地方教育相談推進委員を八名から二十名に増員するとともに、PTA研修会や家庭教育研究協議会などにおいて積極的にいじめの問題を取り上げるなど、問題解決への取り組みに努めております。
 今後は、従前のような調査等にとどまらず、専門家等の意見を踏まえた、より綿密な実態調査の実施やポスター、パンフレット等による啓発に努めるとともに、いじめを早期発見し、子供の気持ちを温かく受けとめて解決を図れるよう、教員の資質向上と、学校内はもとより、家庭、地域を含めた協力体制の確立に努めてまいりたいと考えております。
 最後に、同和教育に関してであります。
 先般行った「学習状況調査」の結果によりますと、昭和五十三年の調査と比較して全般的に総合正答率が向上しており、全体の児童生徒と地区児童生徒の差が若干縮小しているものの、依然として差があることを厳しく受けとめてございます。特に、保護家庭や母子、父子、両親がいないという条件が重なった場合、さらに正答率が低くなっている状況がうかがえます。
 こうした点を踏まえ、地域の実情や地区児童生徒の実態に即した学力向上の取り組みが重要であると考え、本年度、全県的に同和教育推進教員の配置や任務の再認識を行うとともに、学力向上特別対策教員の重点配置を行ったところであります。
 今後とも、学校長や同和教育推進教員はもとより、担任を初めすべての教職員が同和教育の重要性を再認識し、家庭や地域及び関係諸機関と連携を図りながら、課題の解決に向けて一層努力するよう学校を指導するとともに、必要な行政施策を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(木下秀男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(木下秀男君) 再質問がございませんので、以上で東山昭久君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(木下秀男君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時四十五分散会

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