平成7年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
○議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
34番鶴田至弘君。
〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 お許しをいただきましたので、通告に従って質問をさせていただきます。
まず最初に、戦後五十周年に当たり、知事の所信をお尋ねしたいと思います。
戦後五十年が経過いたしました。地球上のどこかで常に戦禍が絶えない中にあって、日本がここまで直接戦争に巻き込まれることなく平和を維持し得たことは、まことに同慶にたえないところでありますが、ひとえに、過去の忌まわしい歴史を反省し、平和憲法を守ることに大きな国民的意思の統一があったことがその礎になっているところであろうと思います。この五十周年に当たり、国会では国会決議が行われ、我が和歌山県でも平和祈念事業が行われることになりました。
ところで、私は、過日の国会運営上でも極めて異常な形で行われた国会決議がその内容の上でも大きな過誤を犯しているのではないかと考えるものであり、知事がこの決議をどう評価しているのか、すなわち知事が過去の戦争をどう考えているかによって、県が行う平和祈念事業にも、これからのことも含めて影響を与えるものと考え、知事の所信をただすものであります。
以下、国会決議について私の感ずるところを述べておきたいと思います。
本来、戦後五十年の節目の国会に問われていたのは、侵略戦争を引き起こした日本が深い反省と真剣な謝罪の意思を内外に示すことでした。ところが、国会決議は次のように記述されています。すなわち、「世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし、我が国が過去に行ったこうした行為や他国民とくにアジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する」となっています。
「反省」という言葉があるものの、わざわざ冒頭に「世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし」とつけ加え、その上で「我が国が過去に行ったこうした行為」としか述べていません。これは、植民地支配と侵略的行為が世界的に行われていたことが一般的風潮であり、日本もその中にあっただけだという論理であります。これでは、「列強がみんなやっていた。日本だけが悪いことをしたのではない」という論法で、「どっちもどっちだ」と侵略戦争を免罪することになります。侵略国であった日本とその侵略に反対して立ち上がった諸国家を同列に論ずるのは、侵略を開始した天皇制政府の責任を免罪する暴論であります。
当然のことですが、この決議に対して世界のあちこちから批判や非難の声が上がり始めています。マスコミに報道されたその一部を紹介いたしますと、アメリカの「ワシントン・ポスト」は「戦争中の日本の残虐行為への反省がない」と評し、イギリスの「タイムズ」は「他の国々を侵略し、無数の人々を弁解の余地のない残酷さで扱ったという事実を認めることを日本はいまだに拒否しているという疑惑を裏づける」と論評をいたしております。もう一つ、オーストラリアの「シドニー・モーニング・ヘラルド」は、「決議文は日本の植民地支配と侵略的行為について深い反省を表明しているが、その文章は、日本はそのような行為を行った多くの国家の一つにすぎないという意味になっており、いかなる謝罪の言葉もない」と厳しく批判していると伝えています。
このように、決議文は過去への「反省」という言葉はあるものの、「侵略戦争」を認めず、その歴史を「侵略的行為」という言葉に歪曲し、本来の深い反省から遠いものになっていると思います。したがって、当然の帰結として被侵略国に対する謝罪の言葉は一言もないものになっています。まさに、世界に対して開き直ったという感じがあります。
このような決議を知事はどう評価されますか。国会決議は国の運営の方向に影響を与え、我々の生活にも深いつながりがありますから、知事としての所信をお尋ねしておきたいと思うのであります。
また、県が主催する平和祈念行事も近く催され、七月十三日には県下戦争犠牲者への追悼式も行われます。この式には、この国会決議をつくられた県選出の国会議員も参加して追悼の辞を述べられることになっています。知事も式辞を述べられることになっておりますが、いかなる認識のもとにこの式典を主催されるのか、お尋ねをいたします。
なお、この平和祈念事業は、映画会、パネル展示なども行われると聞いています。私は、過去幾度か県がそのような行事を行うことを求めてきたところであり、その点については大いに評価するところでありますが、その内容と規模についてまだまだ不十分だと考えています。百八万の県民を対象とした大きな規模の平和祈念行事があってしかるべきだと思いますし、この夏の一過性の行事にとどまることなく、創意を発揮した反戦・平和の啓発があるべきだと思います。いかがお考えでしょうか、所見をお伺いしたいと思います。
続いて、地震防災についてお尋ねをいたします。
去る二月議会では多数の方々が地震防災について質問をされ、当局もその時点での到達点について答弁をされました。阪神大震災から積極的に教訓を学び、真剣に対応していこうとされた点については深く共感するところではありましたが、幾つかの点では首をかしげざるを得ない点も残されました。ついては、さきの議会での当局の答弁の上に立って、私なりに幾つかの質問をさせていただきます。
防災計画の見直しと公的・私的建造物の耐震力の点検と改善の指導、地震防災対策の完備についてでありますが、その時間的リミットを明確にする必要があるのではないでしょうか。地震は必ず起こるということはわかっていますが、いつ起こるかはわからない。百年、千年の幅を持ってその危険が予知されるというまことに漠たるものであります。したがって、防災計画がつくられても、いつその対策が完了するかわからないままであったり、緊急性がなかなか実感として伴わないという面があります。
大災害を目の当たりにしたときは「すわ一大事」と意気込むけれども、時間が経過するとだんだんと忘れてくる。震度七を予測する防災計画を持っている和歌山県が地震災害のために備蓄していた毛布やズボンがわずかしかなかったことは、その端的な例かもわかりません。あるいは、県民への防災啓発パンフレットも発行していながら、相当年月を経過し、その存在すら県民に余り知られていないということなども例になるかもしれません。このような例は気がつけば直ちに正すことができる性質のものでありますが、震度七で想定された被害への対策、その被害を出さないためのインフラ整備や津波対策など、必要とされる数多くの大きな対策について考えてみますと、そのテンポの遅さにまことに胸を痛めるものであります。
津波対策やライフライン等、既に論じられてきたところでありますが、防災計画で必要とされてきた研究テーマ一つとっても、掲げられただけでほとんど研究されないままに十年を経過しているという事実は、防災とは忘れられやすいテーマであることを物語っています。阪神大震災直後のことだけに今は「そんなことはない」「おろそかにされることはない」と言っても、現実は今日の決意どおりにはいかないという過去の歴史があります。このような轍を踏まないためにも、私は県が防災対策年次計画を策定し、着実にそれを追求することが必要だと思います。そして、その防災事業の完成年度を、予測される中では最も近いと言われる南海道大地震を視野に置いて、「政治の責任における災害はゼロである」と言い得る体制を完備していくことが必要ではなかろうかと思います。
地震がいつ来るかは、今のところわかりません。南海大地震以前にも直下型のそれがあるかもわかりません。したがって、一定のめどは恣意的につくって対応することが必要となります。政治としては、その仕事のために一定の想定が必要であります。その点をどのように考えておられるか。南海大地震襲来の危険性については、平成五年の中村裕一議員や本年二月の幾人かの議員の質問で、早ければ二〇一〇年説もあるとされています。学説によっていろいろありますが、大体このあたりを視野に入れて必要なあらゆる対策に着手することが必要ではないでしょうか。もちろん、多額の資金も必要となるでしょうが、年次計画を持って進めている先進県もあるわけですから、当局の考えをお伺いしたいと思います。
次に、防災計画の策定に当たっては住民の参加が不可欠であろうと思いますので、その点についてお尋ねをいたします。
県レベルで行う防災行政と市町村の行う防災行政の役割分担はおのずから違いますし、住民との直接的なかかわりは市町村により多くゆだねられるところでありますが、その違いを超えて大所高所からの責任は県が負わなければなりませんので、あえて市町村の役割に当たる点も含めてお尋ねをいたします。
防災計画の策定に当たっては、高度な専門的知識が必要です。その専門家によって防災の骨格をつくることは当然必要なことではありますが、災害から守られるべきは住民であります。住民の意向がどれだけ生かされるか、それがどれだけ反映しているかは非常に大切なことであろうと思われます。
避難場所一つとってみても、そこに到達するまでにいろいろな障害がある。障害者や高齢者の要望は、健常な人が考えつかない思いがあります。昼間の災害であれば、家庭と職場に切り離されている人々の要求はまた違ったものがあります。このような面を考えると、住民の知恵と協力なしには防災計画に緻密さは生まれないし、実効を伴わないことになります。一たん大災害が起こるようなことになれば、逆に行政の方から住民にさまざまな協力の要請もしなければなりません。行政と住民の一体となった取り組みが必要で、したがって防災計画の段階から住民参加が求められます。防災計画作成に住民参加をどう生かそうとされているのか、お伺いいたします。
次は、消防防災課に専門職員を配置すること、並びに県及び県下市町村を含め、防災関係職員を大幅増員すること等を求めてお尋ねをいたします。
防災に関する専門職員を県に配置すること等については、去る二月議会においても議員の方から、震災対策室の設置を含め提言のあったところであります。当局の答弁は「参考にしながら研究する」というもので、余り積極的な答弁ではなく、実際、新年度に当たっても職員三名が消防防災課に増員されたと聞くにとどまりました。
実際にそのような課なり室を置いているところは、大地震を経験した福井とか東海大地震を迎え撃つ東京、静岡、千葉あたりと聞きますが、和歌山県がおくれをとってよいという理由は何もありません。県は国に対して地震防災対策強化地域に指定されることを求めましたが、ならば、みずからもその行政において積極的、先進的な姿勢を示すべきだと思います。
私は、さしあたり消防防災課に防災の専門的知識を持った方、あるいはそのような方が得られないならば、そのような専門家を養成する立場で特別な任務を持った職員を配置し、知識と経験を蓄積していくような体制をつくるべきだと思います。そのような措置こそが防災対策に大きな活を入れる手段にもなろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
また、消防防災課には二十四時間体制がしかれるべきだと思いますが、いかがでしょうか。去る六月六日、幾度か強い地震が和歌山市周辺にありました。深夜には震度四を記録したとお聞きしましたが、その際、消防防災課の職員が四名、深夜県庁にはせ参じたそうであります。我々が不安を抱きながらも家で眠りの続きをむさぼっていたときに職員の皆さんが寝ずの体制をしかれたと聞いて、大変心を打たれました。この部署に当たられている職員の皆さんに心からの御礼を申し上げたいと思います。
同時に、今申し上げたように、この部署には二十四時間体制がしかれるべきではないかという思いを新たにした次第です。夜間勤務の必要なところでは、どこでも人は配置されます。消防防災課に配置されていないというのは、その必要が認められていないということでしょうか。地震は夜来ないという前提になっているのです。そこに油断はないでしょうか。そこまで人を配置するのはもったいない、そこまでする金はないという思いはわからないわけではありませんが、そこに防災対策の特殊性があります。極端に言えば、大地震が起こらない限り、地震対策の措置というのはほとんどがむだなものです。そのむだを承知の上で行うのが防災行政というものではないでしょうか。最低限、二十四時間体制をしかれるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
また、県下の消防職員の体制も、残念ながら随分と不足しています。これは二月議会でも指摘されたところでありまして、国の基準に照らしても県下では約八百人も不足しています。県の消防学校などでも、人員不足が常々言われています。行政改革という人減らし政策がこういう面で否定的な影響を及ぼしていますが、県民の安全を守るということは行政の第一義的任務であります。人を惜しんではなりません。今後の方針をお聞かせください。
続いて、県や市町村職員の防災意識の向上と知識の向上、訓練等についてお尋ねをいたします。
一たん大震災に見舞われたときは、県や市町村で働く方々の役割や任務というのは極めて大きなものがあります。とりわけ大災害に見舞われれば、庶民にとって県庁や市町村に勤める方々はまさに頼みの綱であり、命の綱とさえ思えます。この期待にこたえていただかなくてはなりません。
阪神・淡路大震災で県庁や市役所の職員が集まれたのは数時間後で、二〇%前後と聞かされました。みずからも傷つき、家族を失った職員の方々も多数おられるでしょうから単純に論ずるわけにはまいりませんが、兵庫県庁や神戸市役所があの危機に際してその指導力を十分に発揮できなかったことは事実であります。
私自身、あのような大災害の中に身を置けば、おのれの責務をどれだけ全うできたか、まことに心もとないところでありますが、災害が大であればあるほどに、全体の奉仕者たる公務員の任務は、職員に対する住民の期待は大きくなってまいります。その期待にこたえられるように、職員の防災教育は充実されなければなりません。全体の奉仕者たる方々のその職場、持ち場における研修とともに、県のあるいは市町村の防災対策なり計画なりを熟知されていることが危機に当たっての大きな力になろうかと思います。
ついては、そのような立場からの日常的な研修が必要であろうと思いますが、当局のお考えと施策を明らかにしていただきたいと思います。
引き続き、学校における防災、特に大地震への対応についてお尋ねをいたします。
阪神大震災後、幾人かの教育関係者にお目にかかり、子供を預かっている時間帯にあのような大地震に遭遇したら十分な対応ができるだろうかと話し合いましたが、大方のところは非常に困難だとの感想を抱きました。私たちはまだ、子供の在校時の大震災の経験を幸いにも持ってはおりません。しかし、それは同時に、いかなる事態が発生するか、教師はどう対応して子供を導くか、全く経験がないということでもあり、まことに不安でもあります。
過日、新聞で東京・新宿の子供たちが防空ずきんをかぶって避難訓練をしている報道がありました。私も戦時中、幼稚園、小学校一年生のときには防空ずきんをかぶって地に伏せる訓練を幾度も幾度も受けたことを思い出し、いささか暗い気持ちをよぎらせたわけでありますが、訓練とはそのようなものだと思います。災害時に身を守るためにこのような防災教育をどう実施するか、教員はどのように対応すべきなのか、学校の施設のあり方はこれでいいのか等々、生活経験の少ない子供を預かっているところですから、特殊な対応が必要であろうかと思いますし、また家庭の方でも、子供を預けている学校にどう対応していくべきなのかも全く未知の分野であります。
これらの点を関係当局はどのようにお考えになり、どのような施策を講じようとされているのか、現在時点でのお考えをお示しいただきたいと思います。
また同時に、学校に学ぶ児童生徒は未来の社会の中心的な構成者になるわけです。彼らが防災に対してどのような思想や知識を持って社会生活を営んでいくか、それは行政にも直接反映するわけですから、ある意味では極めて大きな影響を持つと言えるでしょう。そういう意味においての防災教育をどう考えておられるのか、お示しいただきたいと思います。
続いて、進行中、企画中の幾つかの大規模開発、大型建造物に関してお尋ねをいたします。このうちの幾つかは去る二月議会でも論じられたところでありますが、納得のいかない点がありますので、重ねてお尋ねします。
一番目は、和泉山脈の開発・フォレストシティ開発を中心とした問題です。これらの開発計画の直下には中央構造線が走っており、それを軸にして数多くの活断層の存在が確認されています。幾度も指摘し、当局も承知しているところでありますが、阪神・淡路大震災の悲劇の大きな原因の一つには、この活断層への対応の仕方が極めて不適切であったこと、卑近な言葉で言えば活断層をなめてかかったところにも大きな原因がありました。私たちが二度とその轍を踏まないためには、活断層の徹底調査とその上への建造物を抑制することであります。
そこで、さきの議会で、そうした地域の開発については完全な調査によって安全対策がとられるまでは開発の対象地にすべきではない、開発計画は凍結すべしと要望してきたわけであります。それに対する答弁は、「関係部局から事業者に注意喚起を促す」とか「十分な耐震設計を行うよう事業者を指導する」と言うにとどまりました。これで、阪神・淡路大震災からの教訓を学んだということになるでしょうか。
国の方で詳細な検討が今加えられているときでもあります。したがって、開発申請中のものは、その審査は新しく改変される法や基準のもとで行い、事業が進行中のものについても凍結し、この地の開発等は基本的に検討し直すべきではないかと考えるわけです。わざわざ活断層の上や周辺の開発です。阪神大震災の教訓を学び、百年の後に悔いを残さぬためには、慎重過ぎることはありません。いま一度お尋ねいたしますが、このような危険があらかじめ予測し得るところへの開発計画は当面凍結されるよう指導されるのが、住民の安全、県民の安全を守る上での行政の責任ではないでしょうか。
次は、土地の液状化等で心配されることについてお尋ねをいたします。
和歌山市の人工島マリーナシティに、近くマンションの建設が予定されていると聞きます。やわらかな埋立地盤の上に大きな建造物をつくることは、土地の液状化による危険が最近とみに明らかになってきていますし、阪神大震災におけるポートアイランドの現実はその端的な例であろうかと思います。
マリーナシティは大丈夫かというのは、近在の者の共通した危惧であります。こういう危惧のあるところでの建設等は、造成地の液状化とその被害の教訓を酌み尽くした上でなされるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
また、新しく建設されつつある医科大学の建設地も、河口に面した砂地あるいは沼地だったところであります。もちろん、近代建築技術の粋を結集して建設されるのであろうとは思いますが、二十五日の新聞の報ずるところによれば、阪神大震災の際の建造物の破損の原因が鉄とコンクリート相互の化学作用にあるというふうな新しい説も紹介されています。まだまだ教訓とすべき科学技術上の問題も出てこようと思いますが、そのような研究成果をどう取り入れながらこの進行中のプロジェクトに対応していくのか、軟弱地盤への対策等をどうクリアしようとしているのか、お示しいただきたいと思います。
地震対策関係として、最後に、和歌山市と関西電力によって進められようとしている西防埋立地へのLNG基地並びに発電所についてお尋ねをいたします。
かの埋立地は、埋立資材が建築廃材等が相当部分を占め、マリーナシティ等と比べても不安定な地盤であることが素人なりにわかります。このような不安定な地盤の上にLNG基地等を建設することは、危険この上ないものと考えられます。
LNGについては、当局の皆さん方は随分と安全なガスということを強調されますが、LNGの安全神話に相当侵されているようにも思います。LNGが一万キロリットル流出し、LNG特有のファイアボール現象──「火の玉現象」と言われる現象ですが──が起こったとき、直径九百メートルの火の玉となって一分半燃え続き、半径七キロメートル、したがって直径十四キロメートル以内の人間がやけどを負い、五キロメートル以内では人間は重度の火傷を負い、木造家屋は全焼すると言われ、それが爆発を伴えば隣接するLNGタンクの爆発をも誘導するという研究もあります。
LNGは、公害という面では重油などよりもはるかに低公害で十分活用されるべき資源であるとは考えますが、地震災害を考えるとき、あえてこのような軟弱な地盤で、かつ活断層付近に設置することは安全対策上危惧されるところであり、導入されるべきではないと思われます。関西電力と和歌山市が行おうとしているLNG基地と発電所の誘致は、考え直すよう指導されるべきではないでしょうか。
以上をお尋ねして、第一問といたします。
○議長(橋本 進君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
戦後五十年に当たっての国会の決議等についての質問でございます。
国会決議につきましては、過去の戦争を反省し、未来の平和への決意を表明する目的でなされたものと承知してございます。
さきの戦争が多くの犠牲者を伴った悲惨な戦争でございますし、また私も、終戦を外地で迎え、戦争被害の最大であった世代でございます。それゆえに、再びこのような戦争を繰り返さないためにも、県民一人一人が平和のとうとさを十分理解することが大切であり、平和を支える柱として自由と民主主義をなお一層進めていかなければならないと思っております。
追悼式においては、ただいま申し上げた認識に立って祈念してまいりたいと思います。なお、七月には映画会、写真パネルの展示等の祈念事業を実施することにいたしております。
○議長(橋本 進君) 総務部長木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 地震防災対策についてのご質問でございます。
第一点、防災対策事業について年次計画を定めてはどうかというご質問でございますが、本県の防災対策については、県地域防災計画の中で特に「震災対策計画編」を策定し、直下型地震及び南海道地震を想定した地震発生後の応急対策を定めているところでございます。
この計画については毎年見直しを図っているところでございますが、このたびの大震災を教訓に、去る二月に庁内に和歌山県地域防災計画検討連絡会議なるものを設置し、職員の動員配備体制、情報収集・伝達体制、広域防災体制、防災設備の整備等々について委員のご意見等を伺いながら、現在見直し作業を実施しているところでございます。また既存建築物の耐震性のチェックについても、建築関係団体と連携して相談窓口を設置することといたしております。
次に、防災計画の策定に住民の意見をということでございますが、災害時における人命の安全確保を図る上で、住民組織の果たす役割は極めて大きいと考えております。
県は、地域防災計画の中でも自主防災組織の位置づけを定めていますけれども、今回の大震災にかんがみ、県下の自治会、防火クラブ、各企業の自主防災組織等の関係団体の育成にこれまで以上に努めているところでございます。また、防災計画の策定に際しては、これらの団体を含め、住民の方々のご意見を十分取り入れてまいりたいと考えております。
それから、消防防災課に専門的知識の蓄積をということでございますけれども、消防防災課には防災経験を考慮しながら職員の配置をしているところでございまして、また専門的な知識の面については、地震研究所や各大学の教授等から知識を得るという形で、日常、専門的知識の習得に努めているところでございます。
次に防災職員の体制についてでございますけれども、県下の防災担当職員約三十名にポケットベルを常時携帯させるとともに、コンピューターと電話回線を接続した県防災職員緊急通報システムというものを形づくって緊急時に備えております。さらには、今回の大震災を教訓に、緊急を要する地震災害については、近くに居住している職員を直ちに登庁させ応急対策をとれる体制づくりを現在鋭意進めているところでございます。
それから、職員の防災意識の高揚でございますけれども、今年度の新規事業として職員用の防災ハンドブックを作成し、これを活用した防災研修を実施するなど、積極的な取り組みを行っているところでございます。
それから、防災のための職員の増員をというご提言でございますけれども、防災関係職員の増員については、このたびの大震災の教訓を生かして、去る四月一日付で消防防災課に新たに防災担当課長補佐を一名、防災担当職員を二名、そしてまた防災ヘリコプターの導入準備ということで派遣消防職員二名の計五名を増員し、消防組織の強化を図っているところでございます。
また、市町村等の消防職員の体制については、効率的な勤務体制をとることにより通常の火災や事故等には現在十分対応できるようになっているわけでございますけれども、今後とも関係機関に対し、消防力の充実に努めるよう、これまで以上に指導してまいりたいと考えております。
最後に、県立医大の施設の地震防災対策の関係でございますけれども、医科大学移転整備事業における各施設の耐震防災性能については、大震災時においても人命の安全を確保できることを前提に、建物の崩壊あるいは内装仕上げ材や設備機器の崩落を防止できるよう設計しているところでございます。また建設地の地盤の関係についても、計画当初から調査して十分把握しており、附属病院の液状化対策についても、建築躯体をできるだけ軽くするよう鉄骨構造とするとともに、基礎ぐいを鋼管で補強し、十分な変形性能を有する構造になっております。
なお、建設技術への新しい提案については、その都度国から適切な対応策が示されますので、建設中ではございますけれども、可能な限りこういうものにも対応してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 企画部長藤谷茂樹君。
〔藤谷茂樹君、登壇〕
○企画部長(藤谷茂樹君) 地震防災対策についてのご質問で、住友金属工業埋立地へのLNG火力発電所の立地についてでございます。
西防波堤沖埋立地利用計画検討委員会の中間報告では、最終判断のためには通商産業省の環境影響調査要綱等に基づく調査の実施が必要であるとされております。これを受けて、平成七年四月に事業者から、地元の同意等が整った旨、及び阪神・淡路大震災を踏まえ環境調査とともに安全性の検討も実施する旨の報告がなされています。
なお、LNG発電所の立地については、今後、環境影響評価の手続、検討委員会の判断等、さまざまな段階があるものと認識しております。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 土木部長山根一男君。
〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 鶴田議員の大規模開発についてのご質問にお答えいたします。
都市計画法では開発行為に係る技術基準が定められており、これに基づいて安全性などの審査を行っております。さきの阪神・淡路大震災の後、開発事業の安全確保について建設省などで調査検討が進められていると聞いており、県としてもこの動向を踏まえ、耐震安全性の確保について慎重に対処する必要があると考えてございます。
フォレストシティ計画についても、都市計画法に基づいた審査に加え、開発地域における断層の分布などの地質調査を行うとともに、大地震時の安全性の再確認を行うよう求めているところでございます。今後とも十分な対策により安全性が確保されるよう、引き続き事業者を指導してまいります。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 企業局長中村協二君。
〔中村協二君、登壇〕
○企業局長(中村協二君) 鶴田議員の地震防災対策についてのご質問のうち、マリーナシティの造成地盤の液状化対策についてお答えをいたします。
地盤の液状化は、埋め立てた土砂の粒径が〇・一ミリメートルから一ミリメートル程度の範囲の場合に起こりやすくなると言われておりますが、当マリーナシティの建設に当たっては、液状化の起こりにくい粒径の大きい土を多く使用しております。わかやま館建設時に行った地質調査においても粒径が二ミリメートル以上の礫が約六〇%を占めており、液状化に対しての特別な対策を必要とせずに建設できております。
今後、建設を予定しているマンション、ホテル等の設計時には、阪神・淡路大震災での被災状況等を踏まえた液状化の検討はもちろん必要となりますが、さきに行った地質調査の上からも、マリーナシティは液状化の起こりにくい地盤であると考えてございます。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 教育長西川時千代君。
〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 学校での防災教育と訓練についてお答えいたします。
教育委員会といたしましては、今回の震災直後、学校に対し文書で通知を出すとともに、学校安全担当者研究協議会を通じ、指導の強化と徹底を図っているところでございます。
学校においては、防災教育に関する教職員の認識を一層高めるとともに、防災本部を設け、通報連絡班、避難連絡班などの組織の設置はもちろんのこと、平素から薬品棚やロッカー、あるいは体育施設などの落下転倒防止のための固定化や補修など、校舎内外の安全点検を行うこと、さらには、議員ご指摘の家庭や地域社会と連携した防災教育活動にも取り組むことが必要であると考えます。
特に、児童生徒に対する今後の指導については、今回の大震災を教訓として、災害の現状等を正確に伝え、より一層の理解を深めさせるとともに、大地震などの災害はいつでもどこでも起こり得ることを前提に、授業などの教育活動中や登下校時を想定した避難訓練を計画的に実施し、災害時には被害を最小限に食いとめるため安全かつ迅速に避難することが重要であるとの観点から、従来の指導内容等を再点検し、見直しを図ってまいりたいと考えてございます。
また、防災教育の教材については、従前からの地域に根差した、例えば「稲むらの火」などの教材や本県における過去の災害の歴史や教訓からも学ぶとともに、今後新しい教材を積極的に活用し、開発するよう指導してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
34番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、再質問をさせていただきます。
まず最初に、知事にお尋ねをしたいと思います。
国会決議の評価をお尋ねしたわけでございますが、知事の答弁は、この決議は過去の戦争を反省して未来の平和への決意を表明したものだとおっしゃられました。私がこの決議にどういう点で危惧を抱いたかは第一問の中で申し述べましたけれども、いま一度お聞きいただきたいのは、なぜこの決議の冒頭に「世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし」という文言が入れられているかということです。日本が過去にみずから引き起こした侵略戦争を本当に反省しているかどうかが問われていると思うんですが、ここにこういうような文言を入れることによって、「どっちもどっちだ。自分らも悪かったか知らんけれども、よそも悪いやないか」という開き直りがある、本当の反省がされていないという問題があるのではないかという指摘を私はしておるわけです。また、日本の侵略戦争を反省し、被侵略国に率直に謝罪するということが欠落しておる。そこに本当の反省が行われていないのではないかと私は危惧すると申し上げたわけです。知事はそういう点については触れられませんでしたが、いかがお考えでしょうか。本来、日本の過去のあの戦争が侵略戦争であったと知事自身お認めになるのかどうか、そういう点も含めてご答弁をいただきたいと思います。
ご案内いただいた五十周年の平和祈念事業の実施要項には、「戦争で亡くなられた方々に追悼の意をささげるとともに、戦争と平和に関する県民の意識を高揚していく」とあります。結構なことだと思うんですが、さきに申し上げたように、そういう戦争に対してどのような評価をされているのか。その知事のお考え次第で、このような今後の行政にも大きな影響を与えていくだろうと、私はそう思うわけです。したがってお聞きしておるわけですので、どうかよろしくお願いをしたいと思います。
私は今回、七月に企画されている県の行事について、多くの点で同意を表明したいと思います。ただ、過去を反省し、今後の平和な世界を建設していくという上で、百八万県民を対象とするようなもっと規模の大きな企画があってもいいのではないかと思うわけです。和歌山県の反戦・平和の事業が一層進められていくことを望むわけでありますが、そういう点も含めてお答えをいただければと思います。
次に、防災計画でございます。
総務部長の答弁では、私のお伺いしたいことが少しそらされております。一つは、私は南海大地震を視野に入れ、年次計画として防災計画を策定する必要がないのかとお聞きしているわけです。防災というものは非常に息の長い課題でもあり、また同時に忘れ去られていく、希薄になっていくという面がありますから、やはり明確な計画を持って着実に進めていかないと事は進展しないだろうと。そういうことを根拠に、年次計画を持ってはどうかと申し上げておるわけです。その点についてどうお考えになるか、お答えいただきたいと思います。
それから、県の体制、市町村の体制についてです。
この春、県の消防防災課に数名の職員をふやしたことについては、私も承知しているところであります。私が求めているのは、それ以上に人が必要なのではないか、人をふやすことを惜しまないという決意が行政当局に必要なのではないかということをお尋ね申し上げているわけです。本当に今の体制で大丈夫だというのだったら、先ほどの答弁でいいんです。しかし、そうじゃないでしょう。やはりもっと人が欲しいという思いがあると思うんです。無制限にふやせと言っているわけではないんです。しかし、必要ならば、その必要性を認めてどうふやしていくかという行政がなければならないと思いますので、その点をお聞きしたいと思います。
二十四時間の体制にも触れましたが、これについても、県民の立場から見れば当然そうあってほしいと思うんです。いろんな制約がある点についてはわかるわけですが、あえて防災については人を惜しんではならないと申し上げているところであります。こういう点も、阪神大震災の教訓を本当に深めていくという立場に立てば、そういう方向が出てくるのではないかと思います。
市町村の体制については、二月の議会でもお話がありましたけれども、総務部長の答弁は二月の答弁と微妙に──やはりもう既に決意が緩んできていますよ。二月の答弁はこうなんです。「これについても、国の基準をもとに充実に努めるよう指導し、──ここからです──必要な財源については、国に対してこれまで以上に要望を強めてまいりたい」と、ここまで言っているんです。今度はそれがないですね。やはりもう、だんだんと希薄になってきているんです。和歌山県の総務部長として、県民に完全に責任を持ち切るというところに立っておられないんですよ。そういう点をひとつご反省をいただきたいと思いますし、さらにどういう姿勢で進めていくかということについてお尋ねをいたします。
マリーナシティ、それから医大、LNG等の問題については、時間の関係がありますので、また別の機会にお尋ねをいたします。
フォレストシティと和泉山脈の開発についてです。
土木部長にお尋ねをいたしますが、先ほどのような姿勢で本当に県民の安全を保障していただけますか。十分な耐震設計を行うように指導する、業者に注意を喚起するということだけで本当にいいと思われますか。
今、国の方で詳細に調査をして新しい基準をつくろうかという段階になっているんですが、そういう基準ができない間でも事は進んでいるんです。そういう状況にあるわけですから、一たんその段階でストップして、新しい基準なり今後深められた教訓なりをもって対応していくと。活断層の真上にある事業ですから、当局としては、現在進行中のものについては新たな基準ができるまではせめてストップをして、活断層上の建設そのものを全体として考え直していく、見直していくという態度が必要ではないのかと私は思うんです。そうでないと、住民の安全を考えた、本当に県民に責任を持つという姿勢ではないのではないかと思うんです。私たちはあなたに命を預けているわけですから。
そういう立場でお願いをしたいと思うんです。行政というのはそういうことなんですね。住民の安全に行政が責任を持つ、この姿勢がどこまで貫かれるか、この視点から県行政を進めていただきたいと思いまして、いま一度の答弁を求めるところであります。
○議長(橋本 進君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
国会決議の問題ですけれども、先ほど答弁したとおりでございます。
○議長(橋本 進君) 総務部長木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 防災計画の年次計画をということでございますが、防災計画の見直しに際しては、今、緊急を要するものと中長期を要するものに具体的に分けて検討しているところであり、この検討結果が出てくれば、それぞれの施策についていつごろまでにやるかということもまたおのずから明らかになってまいりますし、六月に地震防災対策特別措置法なるものが新しく制定され、この中で五カ年計画をつくっていくことになっておりますので、こういうものとの関連も見ながら対応してまいりたいと存じます。
それから職員の増員の関係でございますが、これについては限られた定数の中で対応しているところでございます。しかしながら、できるだけ経験のある職員を配置していこうと考えておりますし、またこのようにして配置された職員についても、早期に専門的な知識を獲得できるよう、国での研修を受けたり、また大学教授、専門家等々との日常の接触の中で専門的な知識の修得に努めているところでございます。
次に二十四時間体制はということでございますが、先ほどもお答えしましたように、県としては可能な中で即応体制をとっておりますし、また今回の震災にかんがみ、さらに強力な即応体制をとる方向で現在検討を進めております。ご質問の趣旨については、全国的な動きも見ながら今後研究してまいりたいと考えております。
それから市町村の体制で、先ほど後退しているのではないかという話がありましたが、同じことを何回も繰り返しては失礼かと思ってあえて申さなかったわけでございまして、いずれにしても、市町村についても市町村の消防力の基準を充足していくよう強力に指導していきたいと考えております。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 土木部長山根一男君。
〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) お答えいたします。
計画の審査においては、先ほどお答えしたように、都市計画法に基づく技術基準による審査はもちろんのこと、大地震による二次的災害が生じないよう、重要な構造物等について耐震性能の再確認を行わせるとともに、区域内の断層の分布等の確認のための地質調査も行わせているところでございます。現在、建設省などで被害状況を把握するための調査検討も行われており、今後その結果を受けて必要に応じて基準の見直しなどがなされるものと考えております。
基本的には申請時点の基準で審査を行うこととなっておりますが、より安全な宅地開発が行われるような基準改正があれば、これに基づき適切な指導を行ってまいりたいと考えておるところでございます。
いずれにしても、これらを踏まえて十分な安全性を確保した開発事業が行われるよう、安全性を確保する観点から引き続き事業者を指導していきたいと思っております。
以上でございます。
○議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(橋本 進君) 以上で、鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(橋本 進君) この際、暫時休憩いたします。
午前十一時二十六分休憩
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