平成7年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(和田正人議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午前十時五分開議
○議長(平越孝哉君) これより本日の会議を開きます。
○議長(平越孝哉君) この際、報告いたします。
 お手元に配付のとおり、監査委員から現金出納検査の結果報告がありましたので、報告いたします。
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○議長(平越孝哉君) 日程第一、議案第一号から議案第八十二号まで、並びに知事専決処分報告報第一号から報第三号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 37番和田正人君。
 〔和田正人君、登壇〕(拍手)
○和田正人君 平成七年度当初議会、本日が一般質問最終日でございます。しばらくご協力を賜りたいと思います。
 通告に従いまして、質問と提言をさせていただきたいと思います。
 一点目は、災害に強い町づくりについてであります。
 一九八九年十月十七日、サンフランシスコ湾岸地震・ロマプリータ地震が発生、テレビの画面からこのときの惨状を見た日本人の多くは、都市型地震の被害状況から日本の建築物や構造物は大丈夫かと話し合ったはずであります。このとき、アメリカ国内での老朽化した高速道路、橋、学校、病院などの公共的な建造物を防災強化につくりかえるだけで約三億五千万トンの鉄が必要と推定され、日本国内に当てはめた場合、約二億八千万トンの鉄が必要と試算されています。
 一九九四年、昨年一月十七日、ロサンゼルス市近郊で発生したノースリッジ地震は、多数の死傷者とともに、高速道路の崩壊、建物の倒壊、火災の発生、電気、ガス、水道の不通等、大きな被害をもたらし、特に大都市の直下で発生した地震ということで、市民生活を初め社会経済活動にもさまざまな影響を及ぼしたのであります。
 ここに、平成二年三月、国土庁防災局が監修したサンフランシスコ地震に派遣をした調査団の記録という出版物がございます。この中に、当時の国土庁防災局長市川一朗さんの「監修のことば」がありますので紹介いたします。
 「我国は、これまで幾多の地震に見舞われてきた歴史を持っており、また、近年の情報化、都市化の進展等、社会経済環境の変化に伴い、地震災害の態様も一層複雑、多様化してきております。 このような状況に対処するため、政府をはじめ各地方公共団体等においては、各種の地震防災対策を推進しているところでありますが、折りしも、一九九○年からは『国際防災の十年』が始まるなど、今後、我国は『防災先進国』として、世界の中でも防災に対する積極的な取組みが期待されるわけであります。このような意味でも世界に目を向け、そこで得られたものを今後の震災対策に役立つような形でまとめていくことは、我国の責務と言っても良いでしょう。─中略─我国政府も、震災対策の一層の推進を図るとともに、世界の地震災害の軽減対策向上に貢献することを目的として調査団を派遣したところであり、─中略─その成果を今後に役立てるうえでも好個の書であると確信する次第であり、本書が、震災対策に携わる方々に幅広く利用され、我国の地震対策の推進に寄与することを期待しております」と結んでいます。
 また平成六年六月に、ノースリッジ──ロサンゼルス地震でありますが──この調査のまとめも地方公共団体調査チームが発表しております。この編集・制作は、自治省消防庁震災対策指導室であります。
 私は地震の専門家ではありませんし、この資料に目を通した程度のつけ焼き刃でありますから、的を射た指摘になる自信はありませんけれども、今回の阪神・淡路大震災に至るまでの日本各地の地震、とりわけ一九九三年釧路沖地震の反省や教訓を生かし得なかった防災体制やシステムづくりについて、これら報告書の言う「防災先進国」などというおごりがこの大惨事となり、諸外国から経済大国日本では考えられない多くの死傷者を出したと批判される結果であり、五千四百人を超えるとうとい犠牲に対し、再び繰り返すことのない災害に強い町づくりを進めることが、地震列島日本に住む私たちの宿命であり、政治にかかわる者の責任ではないでしょうか。せっかくの調査であるのに、その反省と教訓を生かされない温度差があると感じるのは私一人でしょうか。なすべき防災体制や基準の見直し、都市計画のあり方、救援体制、火災に対する消火体制等々、人的原因による二次災害など起こさないよう、この記録と報告書は教訓とすべき幾つかの問題をまとめているのであります。
 まず前兆現象でありますが、地震観測に関しては前兆とみなせる地震活動は観測されていず、長期的にはサンフランシスコ地震の震源域は地震活動の空白域であったとされています。
 最悪の事態となった阪神・淡路大震災の後、指摘される専門家などの意見に、関西地方ではこれまで大規模な地震が比較的少なく、経験のなさという声、さらに耐震規定が改善された一九七○年以前の建築物は以後のものに比較するとどうしても耐震性に劣る、地震被害に免疫のなかった関西では再三震災に見舞われた地域よりも耐震性の悪い住居が数多く残っていたこと、住人の備えが不十分だったことも被害を広げる結果につながったこと、地震の揺れが増幅される地盤の弱さ、それに加え、早朝に地震が発生し逃げおくれた人が多かったこと、しかし、地震への備えが不十分で、めったに地震など来ないだろうという行政側の油断こそ最も懸念すべき災害の予兆とも言えると厳しく指摘されているのであります。
 具体的な点に、幾つか触れてみたいと思います。
 液状化現象については、サンフランシスコ地震において、マリーナ地区の液状化によって家屋、ガス管に被害、オークランド港、オークランド空港でコンテナクレーンの基礎が沈下、滑走路北側に噴砂が発生、しかし埋立地盤でも、地盤改良が行われた区域では液状化現象は見られなかったとあります。今後、地盤改良の詳細な内容、及び液状化抑止効果の調査が望まれるとあり、その結果は我が国の液状化対策の向上につながると報告されています。
 次にガスに起因する火災でありますが、ロス地震の場合、停電していた家屋に通電した際、漏れていたガスに引火して火災が発生したものが多いと考えられています。しかし、今日までの地震災害の経験から、この二十二年間に約二億ドルを投じ、耐震性の低い鋳鉄管、鋼管の施設がえを実施していたこと、さらに輸送幹線については、自動遮断バルブの作動、配給管には需要家約三万件を一つの単位とするブロック化などの対策を事前に準備していたこと、この地震時には漏えいした管の両側を閉止することにより、部分的に漏えいをとめたことによって、火災が発生したものの、結果的には被害を最小限にとめ得たとしています。
 今回の長田区を中心とした火災が予想以上に大きな被害となった原因は、現地を視察した消防庁長官が述べたように、戦災を免れたような古い木造家屋の密集地域が残っており、それらが地震の発生で倒壊、同時発生的な火災に結びついた、さらに火災の発生現場が百カ所以上と広範囲にわたったため、初期消火で鎮火できなかったせいでもある。火の回りが早く、住民たちは井戸水や冷蔵庫のミネラルウオーター、牛乳まで使って懸命に消火に努めたが、火の勢いはとどまるところを知らず延焼していったと、ある週刊誌は生々しく報道しています。
 三浦山口大学教授は──耐震工学の専門家でありますが──北海道の地震などを後で調べると、やけどをしながらも火元を消した人が多い、関西は地震なれしておらず、そこまでできなかったのではと指摘。高野東北芸術工科大学教授は──都市防災の専門家でありますが──広範囲にガス漏れが起きたからではないか、火災の同時多発は予測していたが、実際、我々専門家も楽観視していたと語っています。
 ロス地震の直後から、一時間の間に約百件の火災が同時多発で発生したようでありますが、そのうち延焼した火災は七件程度、火災の多くはぼやで市街地延焼火災とならなかったと報告され、延焼火災の少なかったことについては、迅速な消防活動のほかに、アメリカにおける市街地環境、すなわち隣棟間隔が日本と比べ相当に広いことも要因の一つとして考えられるとされています。
 密集した建物、民家、我が和歌山においても、開発された団地へ入る狭い進入路、市街地においても消防車が入れない箇所も多く、今回の阪神・淡路大震災は、実にたくさんの教訓と改善すべき点を私どもに提起しているのであります。
 とうとい犠牲者のみたまにこたえるためにも、地震列島と言われる日本であるがゆえに、多くの教訓を生かし、なすべき改善を公的な面から積極的に今進めておく必要があります。それは、財政負担も含め大事業になるとしても、大惨事となって八兆円とも十兆円とも言われる被災総額をトータルで考えるならば、県民の安全と財産を守る観点から、計画的に進めるならば許容される投資ではないか。そして、社会資本の整備につながるものであります。対岸の火事で済まされないのであります。
 ロス地震の調査団は、教訓と課題として、直下型地震への警告と対策を進める上で参考となるまとめを六項目、二十一点に分けて行っています。全部を紹介する時間がありませんので、今日までの質問に対する答弁以外の指摘を、一部重複するかもしれませんけれども、質問として取り上げてみたいと思います。
 地震時には延焼シミュレーションの実施や無線通信回線の活用が重要であり、コンピューターや通信設備を含めた周辺機器の耐震性について県の現状はどうか。同時に多数の火災が発生したため、消防隊の無線交信がふくそうし、災害情報伝達の障害となったとされており、携帯電話が有効に活用されたようで、今後積極的に検討する必要があると思うが、いかがでしょうか。
 次に、災害発生時の中枢施設となる防災本部、警察庁舎、消防庁舎は、震災時には災害応急対策の拠点として機能しなければならない核であり、地震により被災することがあれば消防力の著しい低下を来すことはもちろん、延焼の原因にもなるわけであります。そこで、これら施設の耐震診断、補強や新築の際の耐震化に積極的に取り組む必要はないか、お伺いするものであります。
 次に、消火栓が使用不能になったときの事態にどう備えておくのか。タンク車、防火水槽、他の消防水利の確保は当然でありますが、阪神・淡路大震災は防火水利の確保に大きな反省と教訓を残したのであります。ロサンゼルス市消防局では、送水を容易に行える搬送可能な中継送水システムを用いて、隣接する使用可能な消火栓のある区域から送水を可能にしているようであり、サンフランシスコ市では、市内にある三カ所の大型貯水槽から送水する管を地中埋設した専用管とし、配管が破損しても他のルートで送水できるようにループ状に計画されていること、また、非常時を考慮し無限水利の海水を送水できるよう港湾施設に二カ所の送水施設を設置していることなど参考にすべき点が多く、和歌山県も水利に恵まれているとはいえ、非常時に備え消火水利の確保と施設整備を進める必要があると考えますが、お伺いするものであります。
 ここまでの質問に加えて、公的、公立及び私立病院の震災対策は大丈夫か。また、壊れない病院でも患者、けが人の治療が可能かどうか。入院、手術ができる状態がとれるか。また六甲アイランドの市立中央病院では、今回の地震の後、人工透析を受ける患者に対して水確保ができず、亡くなった方もいらっしゃいます。その措置に大変苦慮したとのことですが、緊急造水車ブルーフロンティア号を導入したそうです。ボランティアで現地に来た車であります。これは、強力な殺菌作用を持つオゾン処理を採用した前処理車、海水中の塩分除去に逆浸透法を採用し、海水、地下水、河川水、湖、沼の水を淡水化及び飲用化できる機能を備え、二台の連結で二十四時間に約百トンの浄化造水をつくり出す車であります。知事、参考までにごらんになってください。──これを災害時の緊急造水に、また昨年夏のような渇水被害の対策用に購入してはと提言するものであります。
 次に、外国からボランティアとして救援活動に見えられ活躍していただいた中に、崩壊したビル、建物の内部に閉じ込められた人を救出する検索救助が、捜査犬のみでなく教育と訓練を積んだ人たちで構成された専門家による救助隊であることを参考にし、今後、犬の訓練と専門家の組織化を進めてはどうか、お伺いするものであります。
 また、被災後の二次災害を防止する大きな役割として、今次災害でも各地からボランティアとして被災建物の応急危険度判定をされた皆さんの活躍が、地味ではありますが評価をされています。県においても、安全管理に留意した業務として、消防職員を初め建築構造等にすぐれた技術者の積極的な参画を要請し、非常時には直ちにチーム編成がされ、災害現場で活動できるよう準備することについてもお伺いしたいのであります。
 次に、危険物施設等の保安管理の徹底は当然でありますけれども、日本における火災予防条例等により、容器の転倒、落下及び混触発火防止装置等は指導されているところですけれども、高校、大学、工場等で、化学薬品の落下破損等により混触発火と推定される火災や流出事故が多数発生している過去の事例が数多くある以上、薬品棚の耐震対策など指導すべき盲点はないかどうか、関係するすべてに改めて調査、指導を進めるべきであると考えますが、いかがでありましょうか。
 これらと同様に、個別においても家具転倒、落下防止に対応する責務があります。さらに、ガラス等の破損落下防止対策、ブロック塀の倒壊防止装置、地域防災力の向上と初期消火活動能力の向上、夜間発生時の防災行動力の向上、応急救護技術の普及、そして被災地域での飲料水の不足に対応するためにも、各家庭において最低、家族三日分程度の飲料水、非常食の確保を指導すべきであると、報告書はまとめているのであります。
 この問題の最後に、以下の質問をいたします。
 南海道地震発生以来、約四十九年経過しているわけでありますが、特定観測地域または観測強化地域の指定を受けるよう関係機関に働きかけるべきと思うわけですが、ご所見をお伺いします。
 また、南海道地震の地殻変動に二十年余も取り組んでいる関係大学の先生を県職員として迎え入れ、地震対策室を新たに設置するなど積極的な防災対策に取り組んではどうか、さらに地域防災計画の見直しについても、防災担当審議監を置くぐらいの意気込みで取り組むのも一つの方法だと思いますけれども、いかがでしょうか。
 以上の諸点について、知事、総務部長、保健環境部長、土木部長の答弁を求めます。
 次に、災害に強い町づくりの一つの方策として、今、円高利益の還元と町並み整備、美観の実現に、国、県、企業の三者負担によるキャブ工事が進められています。私は、過去にも共同溝方式の採用を意見として出し、むしろ広い通りよりも、狭い水道道と称される道の両側にある電柱をなくして電線を地中に埋設する方が車も走りやすく、区画整理もままならない現状を見るとき、この方が必要な箇所としてキャブ工事をする姿勢を求めた経過があります。
 確かに、和歌山市内のメーン通りは電線が地中に埋設され、きれいになったのも事実であります。改めて今回の大火災の被害を見るとき、道の両側の電柱が倒れ、切れた架線がショートして引火した火災も考えられています。それだけに、これからはミニキャブから共同溝方式に切りかえ、電線、電話線、ガス管、水道管、下水道管など、すべて共同溝で地中埋設し、しっかりとした舗装をすることが防災面でも重要と考えますが、土木部長の答弁を求めるところであります。
 先日、横浜市で国際女子駅伝が行われました。この一区の走者と二区の走者の間に、横浜市が今進めている大規模な共同溝の工事内容がテレビの画面で紹介をされていました。確かにお金もかかります。企業側の考え方もあるでしょう。しかし、先ほど申し上げたように一たん大きな災害が起こったときにどれだけの被害に至るか、トータルで考えるならば、二十一世紀への私たちの社会資本整備とし、また県民の安全と財産を守る観点から積極的な答弁を求めるものであります。
 二点目の問題は、和歌山大学新駅設置と新駅周辺整備の早期実現についてであります。
 さまざまな理由から、請願駅としての取り組みと運動を続けていますけれども、和歌山市河西地区での南海本線の駅は紀ノ川駅のみで、駅周辺はミニ開発が繰り返され、周辺道路や駐車場など、駅機能の施設整備ができる状況にないことは、ご案内のとおりであります。他方、河西地区は、和歌山市の進めているつつじが丘団地、コスモパーク加太の今後の進展、民間宅地開発等、さらに関西新空港開港後の経済効果を受け、ますます人口増加が見込まれているのであります。和大新駅には多くの住民が期待をしているところであり、新駅及び周辺地域を区画整理事業などの手法により、官民一体で地域整備の促進を図ることが望まれるのであります。今後の展望について、企画部長の答弁を求めます。
 三点目は、紀泉南丘陵には、県のコスモパーク加太計画を初め、前述した開発計画が幾つかあることはご承知のとおりであります。河西地区における東西幹線道路は、粉河加太線、西脇山口線で慢性的な交通渋滞が発生している状況も、よくご承知のことと思います。今後、交通渋滞の緩和と人口増加に対処していく上で、和大新駅など交通拠点の整備と計画検討中の東西幹線道路について早期に実施する必要があると考えるとともに、和興開発問題の経過はありますけれども、フォレストシティ計画の県の今後取り組む姿勢について、土木部長に伺うものであります。
 最後になりましたが、四点目に、先輩に贈る言葉を申し上げたいと思います。
 改選期のこの議会は、既に発言をされた議員、私の後、予定されているお二人の先輩も含め、実に多くの議員が勇退をされるわけであります。今日までのご労苦に、まず感謝をする次第であります。
 それぞれの立場や選挙区の違いを超えて、ともにあすの県政や今日的課題について議論のできたこと、勉強させていただいたこと、後輩として心より厚く御礼申し上げるものであります。後輩が先輩を送るのは通常社会の姿でありますけれども、選挙の洗礼を受ける議員は年齢の関係はないわけで、当選回数が物を言う社会とも言われます。しかし私は、人生の先輩として敬うべきは敬うという信条で今日まで生きてきたつもりであります。
 先輩方に対しては、カメの甲より年の功、勇退される先輩方は、いずれも春秋に富み、味わいある皆さん方であります。とりわけ、和歌山市選挙区でともに選挙をさせていただいた岡本、富田両先生には、議員歴三十六年間を通じて、和歌山の発展へのレールづくりに懸命に努力をいただいたと信じています。県勢発展への情熱を、この壇上から、また委員会において披瀝されましたこと、時には立場の違いから岡本先生の機嫌を損じたこともあります。しかし、県勢発展を願う気持ちから起こったこととして、今はよき思い出にしたいものであります。
 関空の実現、リゾート博の成功、県勢へのインパクトを形として実現したもの、先輩の皆さんが種をまいたもの、これから花を開くものに向けて、常に先輩として関心を持っていただき、適切なご助言をいただくことを切に願うものであります。どうか、健康に留意をされ、今、光り輝きを見せ始めた和歌山の二十一世紀をともに喜べるよう、今後のご活躍を祈念し、私の贈る言葉とさせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(平越孝哉君) ただいまの和田正人君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 和田議員にお答えいたします。
 今次の災害に関して、災害に強い町づくりについての質問なり提言をいただいたわけでございます。
 私から、防災対策のための組織強化という提言について答えさせていただきます。
 全国的に見ても、特別に震災対策課を設置しているのは、東京都、千葉県、静岡県、福井県の一都三県となっております。今回の大震災を経験して、私も先日から述べているように、改めて地震防災対策の重要性を再認識したところでございます。お話ございました組織強化の必要性についても、和田議員からの提案なども参考にしながら研究を進めてまいりたいと思っております。
 他の問題については、関係部長から答弁させていただきます。
○議長(平越孝哉君) 総務部長木村良樹君。
 〔木村良樹君、登壇〕
○総務部長(木村良樹君) 災害に強い町づくりのうち、六点についてお答え申し上げます。
 まず、情報伝達手段の確保についてでございます。
 今回の大震災では、防災関係施設の建物が崩れ、通信機器にも被害が発生したため、情報の収集伝達が十分できなかったという問題が指摘されております。
 本県においても、議員ご指摘のように、コンピューターや無線通信用の諸施設が破壊された場合、災害への対応に支障を来すことは間違いございません。言うまでもなく、県のコンピューターであるとか防災行政無線、また中継局等については現行の耐震基準をクリアしているところではございますけれども、今後、建物を含めた耐震性を調査検討し、必要な措置を講ずるとともに、特に通信経路については、複数ルートの情報伝達手段を確保し、災害が発生した場合に連絡がとれないということが起こらないよう十分検討してまいりたいと考えております。
 また、今回の大震災では消防無線の同時使用によるふくそうということが問題視されておりますが、この点について、国における対応状況を見ながら防災計画の見直しの中に生かしてまいりたいと考えております。
 さらに、携帯電話が今次非常に有効であったということは議員ご指摘のとおりでございますので、今後、消防機関と協議の上、携帯機器の使用につき前向きに検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、防災中枢施設の耐震化についてでございます。
 議員ご指摘のように、災害対策本部を設置する建物や警察、消防の庁舎は災害発生時に活動の拠点となるところでございまして、当該施設が被災すれば、初動対策におくれが生じて被害が拡大することは明らかなことでございます。
 このため本県といたしましても、今回の大震災において、警察や消防の庁舎等がどのような被害を受けたかということを十分調査し、この調査結果をもとに県内の関係施設の耐震性を調べ、必要があれば関係機関とも協議の上、対応策を検討してまいりたいと考えております。
 次に、消火栓を初めとする防火施設についてのご質問でございます。
 今次の大震災においては、消火栓が地下で破断し、水が出ないということが大きな問題となりました。本県の消防水利の状況を見ても、消火栓に多くの部分を頼っているのが現状でございまして、今後、消防水利のあり方については国の統一的な方針も示されると考えておりますけれども、和田議員ご指摘のアメリカの先進的な例というようなものも十分参考にしながら、市町村消防に対し助成、指導をしてまいりたいと考えております。
 それから、救助犬の訓練と組織化についてのご質問でございます。
 我が国では、現在のところ、災害救助犬なるものは採用されておりません。しかしながら、阪神・淡路大震災においてスイスから来た災害救助犬が大活躍したことは報道等にも詳しいところでございまして、本県といたしましても災害に備え、このような救助犬について、ボランティアの組織化による育成の可能性やその活用方法につき、今後関係機関とも協議してまいりたいと存じております。
 次に、危険物施設の保安対策についてでございます。
 従来、高校、大学、工場等に保存されている少量の危険物については、火災予防条例や消防庁の通知に従い、保管場所、保管方法、緊急時の措置について指導を行ってきているところでございます。しかしながら、今回の大震災を契機に、これら危険物の保管について、特に地震の揺れへの対応という観点から必要な改善措置を講ずるよう指導してまいりたいと考えております。
 最後でございますが、特定観測地域の指定を働きかけるべきではないかとのご質問でございます。
 現在、観測強化地域、特定観測地域の指定については、建設省国土地理院等の諮問機関である地震予知連絡会が行っているところでございます。観測強化地域については東海地域と南関東地域の二地域、また特定観測地域については全国で八カ所が指定されております。
 議員ご指摘のように、本県でも四十九年前に南海道地震を経験しており、地震活動の観測体制の強化を図ることは、言うまでもなく非常に重要なことでございますので、阪神・淡路大震災が発生したこの機会をとらえて、特定観測地域や観測強化地域の指定に向け、関係機関に強く働きかけてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 保健環境部長江口弘久君。
 〔江口弘久君、登壇〕 
○保健環境部長(江口弘久君) 和田正人議員ご質問の、医療機関の震災対策についてお答えいたします。
 医療法は、病院の構造、設備の基準を規定してございますが、その構造強度、安全性に関して、必要な技術基準については建築基準法の規制を受けることとなってございます。県民の生命に深いかかわりを持つ病院は、災害時においてもその機能の維持が求められますので、その設立主体にかかわらず、災害時の安全の確保については特に留意すべきことと考えております。
 今後、医薬品ケース、備品等の倒壊防止など内部設備の安全対策の指導に努めるとともに、この貴重な体験を踏まえた国等の動向をも見ながら安全確保に努めてまいりたいと考えてございます。
 建物としての病院が耐震性等にすぐれ、倒壊等を免れたとしても、病院機能を維持し医療活動を継続するためには、必ずしも物理的な耐震性のみでは十分ではなく、医療スタッフや医薬品とともに、清浄な水や医療機器の電源等、ライフラインの確保が必要でございます。
 議員ご指摘の緊急造水車は、震災時の医療確保対策としてばかりではなく、異常渇水時の給水対策など幅広い用途にも活用の可能性が考えられます。今後の総合的な防災対策の検討と絡め、災害時における有効活用の可能性や経済的効率の問題も含めて検討課題であると考えてございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 土木部長山根一男君。
 〔山根一男君、登壇〕
○土木部長(山根一男君) 和田議員のご質問のうち、まず災害関連のご質問二点についてお答えいたします。
 第一点目として、応急危険度判定のための体制づくりについてでございます。
 大規模な地震災害が都市を襲うような場合、多くの建物が大きいダメージを受けるため、建築物への立ち入りや使用の可否を緊急に判定し、市民に情報を提供することにより、余震時などの建築物の倒壊や落下物による二次災害を最小限に食いとめることが不可欠となってまいります。
 既に、静岡、神奈川両県には、こういった観点から応急危険度判定士の制度が設けられていると聞いてございます。今回の震災においては、神戸市、西宮市、芦屋市、宝塚市など阪神間の被災都市からの要請に応じ、建設省を中心として全国各都道府県からの支援により、被災地における建築物の応急危険度判定が実施されており、和歌山県からも県庁職員、和歌山市職員、設計事務所から、延べ百名余りの建築関係の技術者を派遣してございます。
 今回の危険度判定は、災害直後の住民からの切実なニーズにこたえることができたものであり、和歌山県においても、初動段階の防災体制づくりの一環として必要なものと考えております。今後、応急危険度判定士の制度化と動員体制などについて、関係機関等と具体的に協議してまいりたいと思っております。
 第二点目の、共同溝方式の採用についてでございます。
 阪神・淡路大震災においては、電気、ガス、水道等のいわゆるライフラインの被害は大きいものがありましたが、特に電柱の倒壊は、周辺への被害、道路の遮断などにより緊急な防災活動を著しく阻害することとなりました。
 県といたしましては、災害に強い町づくりとして、小型の共同溝に当たる電線類を収容するケーブルボックスいわゆるキャブシステムの整備を、和歌山市の中心市街地などで進めているところでございます。このキャブシステムについては、今回の大震災においても耐震性を発揮され、その効果が大いに認められたところでございます。
 議員ご指摘の共同溝は、電気、ガス、上下水道などライフラインを一括して収容するもので、防災都市の建設や都市景観形成の上からも大変有効な手段でございます。また、耐震性も高いものでありますが、建設するためには多額の費用が必要であり、電気、ガス、上下水道等の占用企業者に多くの経費負担がかかることから、企業者の協力がなかなか得られないのも実情でございます。震災時の電柱倒壊による被害を防ぐ上からも電線類の地中化は大変重要でございまして、今後とも耐震性に十分配慮した安全なキャブ事業を進めてまいるとともに、ご提案の共同溝についても、ご趣旨を踏まえながら検討してまいりたいと思っております。
 次に、フォレストシティに関連した二点のご質問についてでございます。
 まず東西幹線道路の建設については、東西幹線道路が計画されている紀泉南丘陵地域には大阪湾環状道路の一環である紀淡連絡道路並びに京奈和自動車道が計画されております。東西幹線道路はこれらの道路と一体となるものであり、また周辺には関西国際空港のインパクトを受けて、コスモパーク加太を初めとする多くの官・民によるプロジェクトが進展しております。
 ご提言の道路は、これらのプロジェクトを相互に結ぶことにより土地利用の向上が図られるとともに、和歌山市の基幹となる道路網を形成する上でも大変重要なものと考えております。現在、この道路の導入空間について調査、調整を進めるとともに、東西幹線道路の事業主体、事業手法などについてもあわせて検討を進めているところであります。
 なお、東西幹線道路の計画を進めていくには、紀淡連絡道路、京奈和自動車道と一体として考えていくべきであり、早期にこれらのルートの決定がなされるように国に要望してまいりたいと思っております。
 次に、今後の姿勢についてでございます。
 フォレストシティ計画については、現在、都市計画法などの技術基準に照らして計画内容など審査を行っているところであります。計画が大規模であること、耐震性に十分配慮すべきことなど、審査に当たっては慎重を期する必要があると考えております。また、今回の地震の後、建設省などで被害状況の調査が進められていると聞いております。この調査結果に応じて必要な対策が講じられるものと思われますが、県といたしましては、事業者に対して地震時における安全性の確保を図るため、重要構造物などの挙動について再チェックを求めているところでございます。このような点を踏まえつつ、安全かつ円滑に開発事業ができるかどうかについて十分な審査を行うこととしているところでございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 企画部長宮市武彦君。
 〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 和田正人議員にお答えいたします。
 和歌山大学新駅設置についてでございます。
 本県といたしましては、重要な課題として取り組んでおり、平成三年には、県、和歌山市、和歌山大学駅設置促進協議会により、和歌山大学周辺地域における鉄道需要等に関する調査を実施するとともに、平成四年三月には、新駅設置について検討する組織として、和歌山市を事務局とした県、市、近畿運輸局、南海電気鉄道株式会社、和歌山大学駅設置促進協議会で構成される新駅設置調整会議を設立し、南海電気鉄道株式会社や関係機関等に対し実現化の働きかけを行ってきたところでございます。その結果、平成四年九月に南海電気鉄道株式会社から、請願方式を前提とした新駅設置に関する諸条件について具体的に協議を進めたいとの回答を得たところでございます。
 現在、この回答結果を踏まえ、和歌山大学駅設置促進協議会が事務局となって区画整理事業の基本計画策定調査に取り組んでいるところでございます。今後は、新駅設置の事業計画案について新駅設置調整会議において検討を深め、早期実現化を図れるよう積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 37番和田正人君。
○和田正人君 知事初め、それぞれ前向きにご答弁をいただきましたが、その内容について幾つかさらにご要望申し上げたいと思います。
 知事に答弁をいただきました震災対策課または室の設置については、一都三県ということでございました。いずれも、震災の体験または想定される地域として、それぞれの立場から設置をされていると理解いたします。
 南海道地震で大きな被害を受けた私どもの経験からして、この既に設置をされている各都県の内容なども十分検討していただいて、和歌山県も積極的に取り入れていただきたい。さらに、南海道地震に長年取り組んでこられた先生を招致して、こういうものをつくってはどうかという提言をさせていただき、さらには防災担当審議監を置いてはという提言もさせていただきました。これは、来るかもしれない地震に対してでき得る限りの調査研究を行う、そして可能な防災体制をつくっておくという積極的な県の姿勢のあらわれになるのではないかと思います。必要な考え方として、ぜひ早急に結論を出していただくよう、強く要望するものであります。
 さらに、予防保全という考え方について。おおむね目に見える箇所の点検や補強を進めるというのはやりやすいわけです。しかし、過去の事例を参考に盲点はないのかどうか、こういうことを専門的な立場から必要な措置として速やかに講じておくことが必要だと思います。「備えなくして憂いあり」では困るのであります。結果的には大きな損失につながります。特に消防、水利等については今後種々ご検討いただけると思いますけれども、無限水利の海水を活用する、こういうアメリカでの例を参考にして検討したいという総務部長のご答弁がありましたが、消防は市町村ということではなくて、水利確保は県がやると、こういう姿勢を位置づけてほしいわけでございます。
 それから、保健環境部長のお答えにも幾つか前向きに検討するという姿勢を伺ったわけでございますが、先ほど知事にごらんいただいた緊急造水車、この関連の記事が二月二十日の朝日新聞に出ております。大きな見出しで「病院、各地で機能停止 給水タンクもろかった 耐震性不十分 貯水槽使えず」、以下、内容的にはそれぞれの病院の実情について記事として紹介をされております。この中に「地震発生五日目からは、海水を飲用水に変える淡水化プラントを借り、水道復旧の十四日まで毎日六十トンを確保した」、こういう記事がございます。また一方、「厚生省健康政策局指導課によると、医療機関の給水タンクや貯水槽など給水設備について、地震など防災対策の基準はないという」ことも紹介されています。
 この二台セットで約九千五百万円、今回の阪神・淡路大震災にはボランティアとしてこの車が派遣されたと聞いております。災害はない方がいいわけであります。しかし一たん起こったときに、我々の現在の環境を考えると、「経済的効率」という表現もございましたが、むだな投資になるのか、県民の命と財産を守っていくために必要な投資というとらまえ方をして検討するのか。間違っても、災害が起こったときにリースできないかというような考え方は持ってほしくないわけであります。これを開発した会社は、何台も何台も慈善事業のようにつくっているわけではないのです。本当に必要な機械であるかどうか、水利に恵まれている和歌山であるとはいえ、もしという事態を想定して積極的にご検討いただきたい、このようにご要望申し上げておきたいと思います。
 防災関係について、多くのアメリカでの参考例を示しながら、質問、提言をさせていただきました。多くの議員の皆さん方も、今日までの質問の中で、和歌山県の今日の状況、将来の防災体制について、それぞれ見識ある立場から多くの意見を出されました。どうか、災害が起こったときに、本当の意味で災害に強い和歌山という二十一世紀になりますように、今から準備をしていただきたいのであります。いつ来るかわからない。検討する余裕すらないというのが県民の気持ちではないでしょうか。
 そういう意味で、今回の議会の中で多く出された防災にかかわる意見を尊重していただき、知事初め積極的に、前向きに速やかに検討をしていただきますことをご要望して、私の質問を終わらせていただきます。
 以上です。
○議長(平越孝哉君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で和田正人君の質問が終了いたしました。

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