平成6年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午後一時八分再開
○副議長(富田 豊君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(富田 豊君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
25番鶴田至弘君。
〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 それでは、通告の順に従いまして質問をさせていただきます。
私は、過去二回、当議場におきまして、和歌山県も地方自治体として非核平和宣言を行い、それにふさわしい施策を積極的に講じる必要のある旨を訴えてまいりました。残念ながら、知事に受け入れられるところとはならず、その思いはいまだに達せられないところでありますが、来年は終戦五十周年と記念すべき年でもあり、いま一度知事の意向を問い、積極的に県民の要望にこたえられることを切望するものであります。
世間では冷戦の終結という言葉が盛んに語られ、世界が一路平和への道を歩んでいるような論調もあります。しかし、ソ連邦の崩壊によりソ連とアメリカの直接的な対決は消滅したとはいえ、アメリカが世界に張りめぐらした軍事網は依然として各地に軍事的な緊張をつくり出し、核兵器を保有する国は核拡散防止という名目でその保有を永続化しようとし、それらのさまざまな軍事的網の目の中に世界第二位あるいは第三位と言われる軍事力を持った日本も、従前より強くその網の目の中に組み込まれようとしております。
戦後五十年、日本国民は戦争の惨禍を忘れず、憲法の恒久平和の理念と国際紛争に軍事力を用いてはならないという一致した思いで今日まで平和を維持してまいりました。一方には、軍事力の拡大とアメリカの戦略への迎合という強い推進力もありましたが、その勢力も公然とは憲法の理念を否定することはできず、常に憲法の理念とそれを守りたいとする世論の前に大きなあつれきを生じてきたところであります。しかし、五十年の歳月は戦争体験を次第に風化させ、憲法の平和理念も過去への反省を込めて新鮮な決意で受け取るという面も少なくなってきつつある状況であります。それだけに、今改めて戦時世代も戦後世代も平和の問題をお互いに学び合わなければならない時代になっているのではないでしょうか。
憲法前文の末尾には、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的──すなわち平和国家の建設と世界平和への献身──を達成することを誓ふ」とうたっております。現下の厳しい情勢と憲法の理想を実らせたいという思いの中から、今、地方自治体の五五%が非核平和の宣言を行い、県下五十市町村のうち三十二市町村が非核自治体宣言を発し、たとえささやかであっても平和の維持のために自治体として独自の施策を実施しているところであります。私は、平和のために戦争の惨禍を語り継ぎ、世界平和を憲法の精神で語り継ぎ、希求する精神を県民の中に涵養することは、地方自治体としての大きな任務の一つではなかろうかと思っております。そして、残念ながら和歌山県行政の中にこのような視点からの施策が見出し得ないと思いますが、知事の所信をお伺いいたします。
また、終戦五十周年を迎えるに当たり、和歌山県として憲法の精神で恒久の平和を願い、不戦を誓い、核兵器の惨禍を二度と地球上に再現させないために、行政サイドから非核平和宣言を発せられることを三たび求めるものでありますが、いかがでございましょうか。
知事は、私の最初の質問の中で、国民的な行為こそが今の平和を守ってきた力だ、県民一人一人の力が今の平和を維持していく上で大きな力になっているんだということを答弁されました。その点は、私の思いと全く同感であります。それだからこそ、さきに述べたように、自治体としての任務も生じてまいると思いますし、その具体化、精神の表明としての非核平和の宣言が求められるところだと信ずるものであります。
また、さらにそれらの具体的な施策として、終戦五十周年を記念して平和のための記念館を県立として建設してはいかがでしょうか。民間団体がつくられた平和記念館もありますが、ごらんになればおわかりのように、いろいろの制約があるように見られます。それをどう評価するか。ここで私が述べることは失礼なことと思いますので差し控えますが、憲法の精神に基づいて太平洋戦争を振り返り、かつ現在の世界に張りめぐらされた核兵器の実態等も明らかにし、その中における日本の政治的、軍事的位置など、見学する人によって評価はさまざまでしょうけれども、客観的な事実のみに基づく資料を、今はやりの映像などを備えて県民の平和を希求する思いにこたえてはいかがでしょうか。
また、五十周年を記念して幅広く県民が参加できるようなイベント、戦没者を慰霊することをも含め、さまざまな角度から県民的討論ができるシンポジウム的なものを含んだイベントを開催してはいかがでしょうか。若者たちも参加できるような、そしてそこで学べるようなイベントが企画されることを期待したいと思うのですが、いかがでしょうか。世界リゾート博にあれだけの人を集めた力があるわけですから、そのつもりになれば十分できることと思います。いかがでしょうか。
続いて、リゾート博についてお尋ねをいたします。
まず初めに、県政始まって以来の一大イベントに神経をすり減らしながらご苦労された関係者の皆さんに、心からのご慰労を申し上げたいと思います。本当にご苦労さまでございました。博覧会は、人を集めるという点においては文字どおり成功いたしました。同慶の至りであります。
ところで、私は過去二回にわたり、博覧会成功のメルクマールというのか、指標についてただしてまいりました。当局の答弁にもありましたように、まことに当然のことではありますが、多数の参加者を得るという大前提のもとに、この博覧会が掲げたテーマ、理念及び意義がどれだけ満たされたかという面も総括にとって不可欠なことであろうと思います。三百万近い人々が集まったという事実の前に、今申し上げたような側面からの接近がいささか欠如している感が否めません。したがって、その側面からの検証ということでお尋ねをいたします。
地方自治体が中心となって主催する博覧会は、単に人を寄せ集めて楽しんでもらうというだけのものではありません。れっきとした政治目標を持ったイベントであります。その政治目標とは、博覧会の実施計画に掲げられた理念であり、意義であり、テーマであろうかと思います。
さて、私もこの世界リゾート博に三度足を運ばせていただきました。そして、できるだけたくさんのものを見せていただきました。博覧会が掲げた目標がどのように果たされているのかを実際見きわめたかったからであります。
そこで、感想を率直に申し上げます。珍しいものも結構たくさんありましたし、いろいろ注文もありますけれども、おかげで楽しい時間をそれなりに過ごさせていただきました。多くの方々がそう感じられたのだろうと思います。同時に、二十一世紀のリゾート体験という問題意識を持って眺めるとき、どのパビリオンが、あるいはどの展示物が二十一世紀の体験なのか、ほとんどわからずのままでした。従来の地方博と違った側面を持っていたことは確かに事実です。しかし、最大の眼目であった二十一世紀のリゾート体験はどこにあったのか。
実は、会場内の不特定の方々にその問題を提起してみました。多くの方々はそのような問題意識自体余り持っておられませんでしたが、二十一世紀のリゾートを体験したかどうか、圧倒的多数の人がよくわからないという否定的な意味を込めた意見を出されました。また、この世界リゾート博は「21世紀を生きる人間の『幸せ創造のドラマ』をつくりだします。 その中で『世界リゾート博』は、本当の豊かさをつくりだすための具体的な提言メディアとして大きな役割を果たすことになります」と基本理念の中にうたわれたわけでありますが、果たしてそのような任務を果たせたのかどうか、私は大きな疑問を抱きながら観覧をさせていただいたわけであります。また、この博覧会を通じて和歌山のよさをどれだけ訴えられたのだろうか、設けられた諸施設を回りながらそんな疑問も抱きました。
今、当局は、とにかく和歌山に空前の三百万人の人々が集まった、行政はそれを見事にさばき切ったという自信と喜びの声がいっぱいであります。それはそれで結構なことだと思いますが、県費百四十億、その他の自治体の費用を入れますと二百億になんなんという資金が投じられたイベントは、もっと基本的な点から総括されるべきであろうかと思います。私の疑問にお答えいただきたいと思います。
さて、和歌山のリゾート立県の幕あけとして開催されたリゾート博は終わりました。県の燦黒潮リゾート構想は、さまざまな点で多くの困難に見舞われてまいりました。私は、今まで直面してきた困難は、過去幾度かこの場で申し述べてまいりましたように、県民の要求から出発したリゾート政策という面が大きく欠落していたところに起因していると思っております。リゾート博自体も、三年間で十億円をかけた強力な宣伝費と時代にマッチした手軽な行楽ということでたくさんの人を集めるということに成功いたしましたが、県民のリゾート要求にこたえるとか、リゾート開発を県民的規模でともに考えるという側面は、残念ながら薄弱なものであったのではないかと思います。
マリーナシティは、松下興産がこれから経営に入ります。どうなっていくのか全く未知数ですが、県民がこうむる利益についても全く未知数であります。強力な企業の論理が展開され、県民は置き去りにされ、松下興産の独壇場となる可能性もあります。本来あるべき県民とともに開発するリゾート政策とは縁の薄いものになるのではないかと危惧するところであります。リゾート立県を目指すならば、それは地域住民とともにという基本姿勢があらゆるところで貫かれなければならないと思います。知事も、リゾート博後に一村一保養施設というような思いを披瀝されていましたが、住民とともにという前提があるとすれば、そういう地道な行程こそリゾート立県を創造する基本であろうかと思っています。大きな企業の利潤第一主義に振り回されることのないリゾート開発こそ求められなければなりません。ポストリゾート博の、リゾート政策の基本をお示しいただきたいと思います。
続いて、西防埋め立てに関する県の基本的態度についてお尋ねをいたします。
既に審議会は二度開催され、マスコミにコメントした県の態度なども一部報道されたところでありますが、大変抽象的でありますので、正式にここで具体的なお答えをいただきたいと思います。
コメントによりますと、まず一番に、利用計画の検討に当たって基本となる考え方について協議したとあります。実質的に最初の審議会ですから基本的態度の協議というのは当然のことでしょうが、ここが今後の審議の基本となるところだと思いますので、どのような協議があったのか、また和歌山県がどのような態度で臨んだのか、具体的に説明をしていただきたいと思います。
また、住友金属、和歌山市、和歌山県から西防埋立地利用についての考え方について審議会に説明をしたとあります。説明した三者は、それぞれこの埋め立てに関係した当事者であります。単に審議委員として説明されたわけではありません。特に県、市は行政の代表、すなわち住民の代表として説明をされているわけですから、その内容を住民が知るというのは当然であります。ところが、内容は今のところ報告されておりません。住友金属もこの埋立地転用の直接の当事者ですから、何を考えているのか、当然県民の前に明らかにすべきだと思います。県行政の代表としてこの問題に当たっておられる西口副知事に、詳細な説明を求めたいと思います。
続いて、教育にかかわる三点についてお尋ねをいたします。
教育費を増額し、豊かな教育を子供たちにという願いは全国の父母の共通の願いであり、県教委も現在まで大変努力をされてきたところであろうと思いますが、先生をもっとふやしてほしい、学校の設備を充実してほしい、父母の負担を減らしてほしい等々の教育行政に対する父母の願いは、まだまだ切なるものがあります。しかし、国の教育予算は、建設費や軍事費の伸びに比べ、その伸び率は低く、父母の願いにこたえられていない現状が長く続いているところであり、それがそのまま地方教育行政に反映しているところでもあります。そして、さまざまなゆがみが生じているところも出てまいっております。
和歌山県下の地方教育委員会も相応の努力を続けているところでありますが、とりわけ市町村段階で全国に比して特殊なゆがみが長期にわたって続いている現実があります。それは、教育費の少なさという点であります。文部省発行の地方教育費調査報告書によりますと、教育にかかわる基準財政需要額と実際に支出された教育費を対比した統計がありますが、それによりますと、県下市町村の教育費の実際の支出額の合計は基準財政需要額を下回っているわけであります。ご承知のように、基準財政需要額というのは国として認める行政を行う上で最低の必要額でもあります。それは、実際に行政を行う上では文字どおり最低であり、それを上回らなければ本来の行政が展開できないと言われるほどの基準であります。その基準財政需要額を下回るという現実が、実に長期に続いているわけであります。
統計によりますと、八七年から九二年の平均でありますが、この建築費を除く基準を上回った教育費を支出している市町村は、県下五十市町村中、小学校では九市町村で、四十一市町村は下回っているわけであります。中学校では上回っているのは十三市町村で、三十七市町村が基準より下回っています。そして、市町村の教育費の実支出額を合計いたしますと、基準財政需要額を一とすれば、県下全体で、小学校では○・九二六、中学校では○・八二一と非常に低く、基準財政需要額を満たしていない実情があらわれてまいります。
参考までに、全国的に見てこれがどういう水準にあるかと言いますと、四十七都道府県中、基準財政需要額を満たしていない県は、小中とも青森県と和歌山県の二県だけであります。青森県が四十六番目、和歌山県が四十七番目と、残念ながら最低のランクにあります。もちろん、教育費を基準財政需要額の側面からだけ見て評価するのは一面的であり、他の側面からも当然検討されるべきでありますが、市町村の教育費の合計が政府の言う最低の基準を満たしていないということは事実であり、重要な問題であろうと思います。
危険校舎学校比率、校舎不足学校比率、プール設置学校比率等、いろんな指標があります。さらに、特別活動修学旅行費、設備備品費、光熱水費、図書購入費、消耗品費等で小中学校のいずれもが全国のワーストテンに入っているという状況は、このような教育費の実支出の少なさが大きく原因していることは否めないのではないかと思われます。
以上、申し上げた問題は主として県下市町村教育委員会が主体的に考えるべき問題でありますが、県下全体にこのような状況が生まれているということになれば、県教育委員会としても市町村教育委員会ともどもに考えるべき重要な問題であろうと思われます。かかる現状に対する教育長の所感をお伺いしたいと思います。
続いて、免許外教科担任の先生の問題について、その改善方を求めてお尋ねをいたします。
過日、国会の参議院決算委員会でこの問題について論議があったように聞いているところでありますが、文部省の方としても積極的にこの問題解決に臨むという方針を示されたようであります。免許外教科担任の先生の問題については計画的に解消に努めなければならないところであることは、論をまつまでもないことだと思います。
私は、数名の免許外教科を担当されている先生にお話を伺いましたが、とにかく生徒以上に予習、復習しなければならないし、系統的な勉強も新たにしなければならず、大変だと申されておりました。同時に、それ以上に、生徒たちに十分わかってもらえたのかどうかという不安をいつも抱かざるを得ないというお話をされておりました。生徒への影響も決して少ないものではなかろうと思います。
この免許外教科担任というのは、一時的、経過的な措置だとされています。しかし文部省自身も、その一時的、経過的な措置を積極的に解決しようとはしないで今日に至っているわけであります。最近、非常勤講師の導入などで若干の手だてを行っているようですが、まだまだ不十分で、責任の大半が地方教育委員会にしわ寄せされているのが現実であります。この免許外担任は、今全国で三万六百人いるそうです。昨年度は若干減りましたが、ここ十数年来横ばい状況で、来年度でどれだけ減らせるのか、今のところ未知数とのことであります。
ところで本県の場合、免許外担任は七百五十人を超すと言われております。和歌山県の人口規模、財政規模から見て、行政の指標は大体全国の百分の一という数字を当てるのが通例であります。全国が三万余人ですから、三百人前後ではと推定していたのですが、その倍を上回る数字になっております。これは、和歌山県が人口過疎地を多く持つ地であるという特殊性のもたらす点があろうかと思いますが、それにしても大き過ぎる数字であります。平成元年度においては八百七十八人おられたのが現在七百六十四人に減ったわけですから、六年間で百人減っている点は評価されるところでありますが、しかし生徒の減少状況や増減の途中経過を見ると、必ずしも計画的な措置とは見られない状況であります。平成五年から六年への間に八十人減少するという大きな変化がありますが、あとは十人前後の減少率です。この調子だと、いつになったらこの経過的措置が完了するのか、全くわからない状況であります。もちろん、教員相互間の持ち時間の均等化という問題もあり、その点は学校内で十分論議をされなければなりませんが、教育委員会の直接の責任で解決せねばならぬ重要な問題であろうかと考えます。教育委員会として免許外担任教員をどのように考えておられるか、また和歌山県が他府県に比して非常に高い比率になっているのはなぜなのか、現状克服の方向をお示しいただきたいと思います。
最後に、学校図書についてお尋ねをいたします。
児童生徒の読書量が年ごとに減少してきていることが、読書の秋ともなるとしきりに嘆かれる昨今であります。私は、この問題で過去に二度ほど司書教諭の配置や公共図書館を充実させることについて質問をいたしてまいりました。その後、県当局、教育委員会の努力の中で立派な図書館も開館し、多くの県民の読書にいそしむ姿が目につきます。また、紀の川筋には三町が新たに図書館を持ったというお話もお聞きいたしました。それぞれの努力に敬意を表するものでありますが、今回は学校図書の充実ということで教育長の見解をお伺いする次第であります。
さて、昨年の文部省の調査によりますと、小中学生の読書量は学年が高くなればなるほど少なくなって、昨年二月では、一冊も読まないという生徒が小学校五年で一○%、中学生では四四%にもなっていると言われています。また、その傾向が漸次高まりつつあるようであります。また、学校図書館に月に一度も行かなかった小学生は二○%、中学生は五一%と、これも非常に高い数値を占めております。県下の児童生徒についても恐らくこの傾向の中にあるのではないかと思われますが、お調べになったことはあるでしょうか、調査等があればお示しいただきたいと思います。それに対して、具体的な方針をどう持たれているかをお示しいただきたいと思います。
さて、そのような子供たちの読書離れに対する対応策としてでしょうか、文部省は昨年、全国の学校の蔵書を今の基準より一・五倍にふやすべく、その標準目標を設定いたしました。五カ年計画で予算を組む方針を明らかにしているわけです。この蔵書の現在の標準数は一九五九年に設定されたもので、実に三十四年ぶりの改定だそうです。文部省自身が図書館教育にいかに不熱心であったかを物語るものであり、子供の読書離れの責任の一端を文部省自身が負っていたと思うわけですが、おくればせながらでも図書をふやさねばならないと気づき、その方針を打ち出されたことは結構なことであります。
さて、和歌山県下の小中学校の蔵書も決して豊かなものではないと危惧いたしております。いかがなものでしょうか。また、文部省の方針によって県下各教育委員会は今どのような対応をされているでしょうか。蔵書をふやし、子供の読書意欲を引き出す、行政上の絶好のチャンスです。どのような指導を徹底されておられますか。
私がこのような問題をあえて提起いたしましたのは、幾つかの理由があります。
その一つは、さきに申し上げたような教育費の貧弱さです。図書費として計算され交付された地方交付税も、一般財源の中にどんぶり勘定され、またどこか他の分野に紛れ込んでしまいはしないだろうか、実際の図書にならない可能性もあるのではないかと、そんな心配をしているからであります。そんなことのないように、しっかりした方針を持っていただきたいと思うからでもあります。
二つ目は、従来の県下の図書費も、全国比で見て低位にあるからであります。県下の学校図書購入費は、さきの文部省刊の地方教育費調査報告書によりますと、九一年度(平成三年)全国比で小学校、中学校とも四十三位という低いランクに位置しています。また、一校当たりの教育費の項目別予算──教育費の中のいろんな費用がありますが、その図書費という項目予算が、県下の学校は全国比で下から五番目、四十二位という位置にあります。残念ながら、どの角度から見ても自慢できない状況であります。こういう実情ですから、相当頑張っていただかないと目標は達成されないのではないかと思うわけであります。県教委の一段のご努力を期待しながら教育関係の質問といたしまして、私の第一問を終わります。
○副議長(富田 豊君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
戦後五十周年を迎えて、平和への意思をはぐくむ自治体の任務ということでございます。
恒久の平和はすべての人のひとしく望むところであり、日本国憲法の精神は当然ながら尊重しなければならないものでございます。昭和三十四年九月議会において平和宣言がなされており、それに基づき、県行政の執行に当たって、これまでもそれぞれに取り組んでまいったところでございます。
次に、非核平和意思表明としての宣言でございます。
平和の問題については、従来から繰り返しお答えしているとおり、国民一人一人が平和のとうとさを十分理解することが大切でございます。また、平和を支える柱として自由と民主主義が必要で、行政の中で積極的に取り組んでいるところでもございます。ご提言の非核平和宣言については、ご意見として承っておきたいと思います。
他の問題は、部長から答弁いたします。
○副議長(富田 豊君) 副知事西口 勇君。
〔西口 勇君、登壇〕
○副知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えいたします。
住友金属西防埋立地に関する問題であります。
西防沖埋立地の利用については、議員ご承知のように、さきに知事の諮問機関として検討委員会を設置しております。現在、その委員会において検討をいただいているところでありますけれども、私も委員として参加させていただいております。
ご質問の、利用計画の検討に当たっての基本的な考え方については、公表の際にも申し上げているところでありますけれども、その内容は公有水面埋立法等に規定されている用途変更許可条件に合致すること、瀬戸内海環境保全特別措置法の趣旨を踏まえ環境保全に留意すること、特定重要港湾和歌山下津港内にあって良好な港湾機能を有しておることからその活用を図ること、及び位置、周辺環境、交通アクセス等の立地条件を前提として、本県の活性化と県民福祉の向上を目指して、実現可能なものについて慎重に検討することを申し合わせたところでございます。
なお、県といたしましては、運輸省、建設省、環境庁との協議を踏まえて、これらと同じ趣旨で臨んでいるところでございます。
次に、県、市、住友金属の土地利用の考え方についてでございます。
この考え方については、三者ともに環境保全を共通の認識といたしております。県は公共及び公益的利用について、和歌山市は地域活性化のための利用について、住友金属工業株式会社は自社所有地の有効利用について、それぞれ担当者から説明があったところでございます。目下、継続して専門的な立場から、またさまざまな角度からご検討をいただいているところであります。次回は十月十七日に開催を予定されておりますので、現段階として以上でご了承を賜りたいと存じます。
いずれにいたしましても、県といたしましては検討委員会の検討結果をまって判断いたしたいと考えております。
以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 民生部長南出紀男君。
〔南出紀男君、登壇〕
○民生部長(南出紀男君) 鶴田議員の、戦後五十周年を記念して記念館の建設とイベントの開催についてお答え申し上げます。
記念館につきましては、現在、和歌山市西高松に平和会館が建設されており、二度と戦争の惨禍を繰り返すことのないよう、また平和のとうとさを認識していただくため、戦争関係者の資料等を保存展示しております。今後、県民の皆さんに広く利用していただけるよう、県民への啓発、利用の手法等について会館と協議してまいりたいと思います。
終戦五十周年記念事業については、広く県民の参加を得て、平和を祈念するための行事等を検討してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 知事公室長中西伸雄君。
〔中西伸雄君、登壇〕
○知事公室長(中西伸雄君) 鶴田議員の世界リゾート博を振り返って、その掲げた目標は達成できたかというご質問でございます。
この博覧会は、二十一世紀のリゾート体験をメーンテーマに、他博にはない参加体験型、そして環境重視型の博覧会として開催したところでございます。四方を海に囲まれた人工島において、本県の恵まれた自然のもとで、帆船クルージング、カヌー、ヨットなどマリンスポーツの体験、温泉、フィッシングなど和歌山らしいリゾートの体験、オートキャンプ場や大型帆船による宿泊体験など、多くの方々に参加、体験を楽しんでいただきました。また、この博覧会において物と心、肉体と精神のバランスのとれた充実感としてウェルネスの大切さを強調し、その実現のための方法としてリゾートを提案し、本県のリゾート地としてのすぐれた適地性をアピールしたところでございます。
会場内では、和歌山の豊かな自然、歴史、文化、産物などを、わかやま館、和歌山プラザにおいて、さらに市町村イベントなどにより多彩に紹介するとともに、コンパニオン、ボランティアを初め県民こぞって参加をいただき、和歌山県人の人情とぬくもりを感じ取っていただけたものと思います。また、関西国際空港の開港、高速道路の開通により近くなった和歌山をイメージづけることもでき、和歌山のよさをあらゆる面から印象づけたものと確信をいたしてございます。さらには、県内外及び海外から三百万人に近い多くの方々に会場にお越しいただき、マスコミ等でも博覧会の模様が連日取り上げられるなど、これからの二十一世紀のリゾートのあり方をいろいろな角度で展示、提案している世界リゾート博から内外に大きく情報発信できたものと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 企画部長宮市武彦君。
〔宮市武彦君、登壇〕
○企画部長(宮市武彦君) 鶴田議員にお答えいたします。
県民本位のリゾート政策をということでございます。
リゾート整備につきましては、従来より地域づくり、地域活性化という基本理念に基づき、地域との連携を考慮しながら取り組んできたところでございます。また、最近の国民の余暇需要への対応や本県の資源活用を図るため、リゾート博の一環として本年二月にグリーンツーリズムをテーマとするシンポジウムを国土庁と共催で実施したところでございます。七月には世界リゾートシンポジウムを開催し、二十一世紀の日本のリゾートのあり方や和歌山県におけるリゾート等について検討したところでございます。
今後は、これらシンポジウムの結果や、好評を得たオートキャンプやカヌー、ヨットの体験等、世界リゾート博の成果も踏まえ、農山漁村の特色を生かしたリゾート整備やアウトドアのような参加体験型リゾート、あるいは低廉で長期滞在できる施設の整備についても検討してまいりたいと考えております。
なお、これらの整備に当たっては、地域の主体的取り組みや創意工夫が不可欠でございますので、地域の皆様にもご参加いただけるような展開を市町村とともに図ってまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 教育長西川時千代君。
〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題三点についてお答えいたします。
市町村教育費についてでございますが、基準財政需要額に対する実支出額の割合は、本県の場合、全国的に見て低い状況でございます。しかしながら、平成三年度の地方教育費調査によりますと、本県の市町村立小中学校の予算では、小学校において児童一人当たりの教育費が七十六万九千円で全国第九位、中学校においては八十万九千円で全国第十七位の水準にあるという結果も出てございます。教育委員会といたしましては、従来から教育予算の確保については市町村の独自性を尊重しながら指導助言をしているところでございますが、今後ともさらに充実するよう努めてまいりたいと考えております。
次に、免許外教科担任についてでありますが、本県の場合、僻地校及び小規模校を合わせると中学校全体の約四○%となり、全国的に見ても高い割合となっております。このため、教員が所有免許以外の教科をやむを得ず指導しなければならない場合が生じてまいります。また、時間割り編成等から免許外の教科を担当している場合もございます。今後は、こうした状況を改善するため、適正な教員配置に努めるとともに、さらに非常勤講師制度を中学校に導入することや、持ち時間数の調整のために免許外教科担任を行わないよう指導を一層強化することにより、免許外教科担任の削減を計画的に推進してまいりたいと考えております。
続いて、学校図書の充実についてお答えいたします。
児童生徒の読書傾向につきましては、近年、子供たちの生活が変化し、多様なメディアが浸透するにつれて活字離れの傾向が指摘されております。本県の児童生徒についても、同様の傾向が研究会等で報告されてまいりました。読書指導の重要さについては、平成四年六月の県議会において議員からご指摘いただき、その後、各学校を指導し、図書館利用の促進を図ってまいりました。その結果、平成五年度の県立高校における図書の貸し出し冊数を見ると、半数近くの十七校で増加しており、全体で約一万冊の増加となってございます。好ましい読書の習慣を身につけるには何よりも読書の楽しさを体験させることが重要と考えますので、読書指導を多様な教育活動の中に計画的に位置づけ、学校図書館の活用を図るよう促進してまいりたいと考えます。
次に蔵書の実態についてでありますが、平成四年の文部省調査では、一人当たりの冊数では小学校、中学校ともに全国平均を上回っておりますが、図書購入予算等の面では全国平均を下回る結果となってございます。こうしたことから、平成五年に文部省が示した図書標準の冊数に近づくよう、市町村に対し指導に努めているところであります。学校における読書指導は、子供の深い思考力と豊かな感性などを育て、生涯学習の基礎を培うという観点から、今後実態把握に努め、一層の指導に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○副議長(富田 豊君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
25番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、再質問をさせていただきたいと思います。
知事に答弁をいただきました。前回と同じ答弁でございまして、残念ながら私の意を酌み取っていただけなかったように思います。
私が今回改めて強調させていただいたのは、地方行政というのは、憲法を守り平和を守っていくという県民の自覚というか、そういうものを涵養していく上で積極的な役割を果たさなければならないのではないかということを言わせていただいたわけです。そういう点で、残念ながら知事さんがおっしゃるように、今の県行政がそういうふうになっているとは受け取れないわけです。
知事には知事のお考えもあろうかと思いますけれども、あらゆる行政分野を通じて、そういう機会をもっともっと大きく持っていくということをお考えいただきたい。平和の問題、憲法の問題というのは、日本国民として最低の、そしてこれからずっと堅持していかなければならない思いであろうかと思いますので、そういう点をすべての行政の中に生かしていただけるように、要望をいたしておきたいと思います。
それから、平和記念館の問題について民生部長から答弁がありましたけれども、民間団体がつくっておられる現存の記念館の評価についてはいろいろあろうかと思います。私もその評価については差し控えさせていただきましたが、単に遺品を展示するとか、戦争のときの生活状況を展示するとかということだけではなしに、現在の世界なり日本なりが、今地球上で、平和と戦争の関係でどういう状態に置かれているのかということを、だれがどう評価しようと別ですけれども、客観的に現時点の段階で考えられる場として県立の平和記念館というのがあってしかるべきではないかと思うわけです。幾度も申し上げておりますけれども、憲法の問題なんかも今学ぶ機会が非常に少なくなっているんです。だから、学ぶ機会としてそういう場を設けるというのも県行政の中での一つの大きな仕事ではないかと思います。
今ここで民生部長に、だからどうしろと改めてお尋ねをしても回答がなかろうと思いますので、要望しておきます。また、別の機会に尋ねさせていただきます。ぜひご検討をいただきたいと思います。
それから、イベントにつきましては、五十周年を記念して何かを行っていきたいという答弁がありました。期待をしたいと思います。もちろん、戦没者を慰霊するということは非常に大切なことだと思います。それと同時に、現在の情勢にマッチした、私たちの平和への意思を涵養するような内容を盛り込んでいただきたい。特に、若者がうんと参加できるようなことを考えていただきたいと思います。
リゾート博の問題について、お二人の方から答弁をいただきました。若干評価の違いがありますが、その評価は今後の県政が証明していくことであろうかと思いますので、再質問ということにはいたしません。
いずれにしろ、マリーナシティはこれから直ちに松下興産の経営に入って新たなリゾート地というものも開けていくようになるそうですけれども、松下興産の夢の島ではなくて本当に県益を生ずるものとしてどうしていくのか、特にその地域、周辺がそれによってどう益を受けていくのかという視点をぜひ貫いていただきたいと思うんです。五百数十億をかけた島がこれから動き出すわけです。大きな企業がその中でぬくぬくというようなことのないように、県民の喜びがその中からどう生まれるか、そこのあたりを考えて追求していただかないと、マリーナシティが単に大きな企業だけの夢の産地ということになりかねないと思います。そういう点で留意をしていただきたいと思います。
埋め立てにつきましては、県は公共的、公益的立場から意見を述べた、市は地域振興の立場から、住友金属は自社の立場からという答弁がありましたけれども、それがどういう内容だということは少しも言ってくれません。私はそれを聞いていたんですよ。
審議委員の立場からそういうことは言えないという話を従前から聞いておりました。私は、せめてそういうことぐらいはちゃんと県民の前に明らかにしていくことが必要だと思うんです。三者が県民の目の届かないところ、耳の届かないところで何か論議をしているという状態は、民主主義にもとる態度だと思います。
十七日に審議会があるそうですけれども、その後、今、県行政なり、和歌山市なり、あるいは住友金属なりが何を考え、どのような態度であそこに対応しようとしているのか、県民に明快にわかるような格好で公表されることを要望しておきたいと思います。
教育長、大変、努力をされているご答弁をいただきました。今後大いに頑張っていただきたいと思うんですが、和歌山県の数字というのは人口が三分の一以上和歌山市に集まっておりますから、平均してしまうといろいろとわかりにくい数字になってまいります。
先ほど、学校の教育費が一人当たり九位、十七位というようなお話もございました。ところが、これは学級当たりの費用ということで勘定しますと、また四十番台に落ちてしまうんです。だから、そういう一人当たりの教育費という順位に惑わされるされることなく絶対額をどう強めていくかということで、ぜひよろしくお願いを申し上げます。
図書の問題について積極的なご答弁もいただきました。一言つけ加えさせてください。
読書教育には司書教諭というのが絶対だと思います。なければできないというわけではありませんが、これが配置されることが読書教育に決定的な役割を果たすであろうということは、私がもうここであえて言わなくても十分ご承知いただいていることと思います。国の施策という問題もあって直ちに全面的にとはいかないということは私も承知しておりますけれども、県行政の独自の努力の中で活路を見出していただきたい。そういうことを訴えまして、すべて要望としておきます。
○副議長(富田 豊君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。