平成6年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(上野哲弘議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

平成六年三月十五日(火曜日)

 午後一時三十二分再開
○副議長(町田 亘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(町田 亘君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 18番上野哲弘君。
 〔上野哲弘君、登壇〕(拍手)
○上野哲弘君 通告に基づきまして一般質問を行います。
 一番目に、地方にもシンクタンクの設置をということで知事にお伺いしたいと思います。仮谷県政における平成六年度の予算編成並びに説明を伺いまして、質問いたします。
 今年度は、申すまでもなく、世界リゾート博の開幕、関西国際空港の開港と、和歌山の時代を標榜する絶好のチャンスとなりました。そのために前年度比八・九%増の総額五千三百四十三億円余の当初予算となっておりますが、この予算の有効かつ効果的な運用をお願いするところであり、また県下五十市町村それぞれが町づくりのため県政の積極的対応に期待しているところでもあります。特に、紀北・紀中・紀南──この分け方は適当でないかもしれませんが──地域のそれぞれの特色を生かした広域行政にも目を向けていただいていると思いますが、より幅広く指導と対応をお願いするところでもあります。
 しかしながら、今議会において答弁されているように、県税収入が三年連続して前年度を下回るというような県財政の状況は、良好であるとは申せません。その中で、副知事を本部長とする県景気・雇用対策本部が設置されましたことは、心強いものがあり、期待するところでもあります。そのような状況から、今年度予算が県下全域の景気浮揚につながり、将来展望が見える予算であってほしいと願っております。
 さて、質問の趣旨でありますが、前段で申し上げましたとおり、県税収入の三年連続しての減収は和歌山県の経済状態が下降線をたどっていると考えるべきで、深刻な社会情勢になっていると言っても過言ではありません。特に県内大手企業の住友金属の人員削減あるいは巴川製紙の合理化等、リストラによる雇用不安を初めとして、将来到来するであろう規制緩和における生産性向上のための人員整理等、日本全国、大都市に限らず地方もその対応を考えなければならないと思います。地方における対応策を考える上で地方にも常設のシンクタンクの必要性があると思いますが、将来展望もあわせて知事の所見をお伺いいたします。
 次に、規制緩和について。規制緩和につきましては、昨年、現政権が打ち出したほやほやの問題でありますので、なかなか具体的に答弁はできないかと思いますが、私なりの質問内容でお答え願いたいと思います。
 現政権が打ち出した規制緩和についてお伺いいたします。
 規制緩和に至った大きな理由として、日本の市場の閉鎖性の打破と、日本の物価と欧米諸国の間の内外価格差を圧縮することにあると言われております。そのため、規制緩和の実行は、大量の失業者を生じさせる反面、新規事業が創設され、その結果、日本経済はプラスの方向へ進むであろうと学者の方は述べられております。そのような観点から、新規事業が地方に及ぶ可能性とその対応について考える必要があります。
 日本も相当の輸入国でありますが、それ以上に貿易黒字を出している現状と内外価格差の是正を考えた場合、ますます輸入が進行するものと思いますけれども、地方における海外貿易の推進についてどのように考えておられるか。
 加えて、規制緩和により地方において新規事業としての海外貿易が実現し、港の活用も含めて第三セクター設立の機運が出てきた場合、県はどのように対応できるのか、商工労働部長にお伺いしたいと思います。
 次に、地域振興と地ビールの製造についてであります。
 情報紙によりますと、現政権が昨年打ち出した規制緩和策のうち、ビール製造免許の取得に必要な最低製造数量、年間二千キロリットルが六十キロリットルに引き下げられるようであります。一部の自治体関係者や地域おこしのグループの熱い注目を浴びている、これが実現すれば地酒と同じように個性ある地ビールが全国各地で誕生する可能性がある、新しい町おこしの材料にもなるとあって早くも原料の栽培に乗り出した地域もある、設備負担も大きく市場規模も限られているなど慎重論もあるが、関係者の期待が高まっているのは間違いない、とあります。
 今のところ、全国で十数カ所が名のりを上げておるそうですが、特に北海道斜里町では、農業振興と雇用の確保、観光振興などの複合的な地域経済活性化を念頭に入れて第三セクターで行おうとしており、年間百五十万人の観光客と地元消費量を合わせた千キロリットルのうち、二割の二百キロリットルを目標にしているとなっております。また既存の大手メーカーも、それぞれ社内で地ビール対策のチームを編成して今後の対応に備えているとのことであります。また、高知県窪川町では四万十川の清流を生かした事業として計画中であり、都道府県では、長野県がこの計画に手を上げているところであります。
 地ビール製造につきましては、全国各自治体の思いは皆同じで、町おこしや村おこしの地域活性化の一環として考えており、和歌山県下においても当然この計画に参画すべきものと思います。
 質問に当たって抽象論では話になりませんので、具体的に地域を指定し、企業的見地から提案し、答弁をお願いするところであります。ずばり申し上げて、熊野の水をビールに、すなわち那智の滝・源流の水ということになりましょうか。
 地ビールの製造につきましては、それほど簡単ではありませんし、企業として成り立つためには相当の努力が必要かと思いますが、地域活性化の目玉として地ビールが一番可能性があるのではないかと思っております。付加価値をつけて熊野の水が売れれば、この上ない活性化になるのではないかと考えます。
 それでは、地ビール製造に参加すべき理由として次の点を挙げたいと思います。
 第一に、全国にネームバリューのある那智の滝・源流の水として売り込み、那智勝浦町、新宮市、熊野川町を中心に東牟婁全域を対象として第三セクターを設置し、地域の活性化と雇用の拡大を図るというものであります。
 第二に、熊野三山、勝浦、川湯、湯ノ峰、瀞峡等を控え、観光客が相当数見込まれるため、地域での販売が大きく作用する地ビール業には有利と考えます。
 第三に、例えば熊野川町周辺に工場ができるとすれば、国道三百十一号の全面開通により白浜温泉も視野に入れることになり、それなりの体制ができれば拡大する余地が十分あると考えられます。
 以上の観点から、広域行政の推進とそれに伴う第三セクターということになれば県の指導が必要不可欠なものと考えますので、企画部長の見解を伺いたいと思います。
 なお、この質問に関連して、龍神村の水についても現状をお伺いしたいと思います。
 第三点、市田川の導水計画と浄化対策についてお伺いいたします。
 新宮市内を流れる市田川の浄化対策として、現在、国、県の事業として熊野川からの導水のための工事が進行中であり、市民の一人としてこの事業に大きな期待を寄せているところでもあります。
 質問の第一点は、この工事の計画内容と、水質浄化にどのように対応できるのか、土木部長にお伺いいたしたいと思います。
 第二点は、この導水だけでは水質浄化の全面的解決にならないと思いますが、この導水計画と並行して実施すべき対策があれば、この機会にお伺いしたいと思います。
 第三点として、環境問題に携わっている人が言うには、単に汚濁を薄めるだけでは下流あるいは海の汚染は変わらないではないか、もっと根本的な対応が必要ではないかとの指摘がありましたので、質問いたします。
 次に、四国四万十川支流琴平川を抱える高知県窪川町で大型浄化槽を川底に設置するという記事がありましたが、この設備が市田川に適用できないか、土木部長にお伺いいたします。
 参考までに状況を申しますと、次のようであります。
 琴平川は窪川町の中心市街地を流れ、約一千五百世帯の生活排水が流れ込んでいる。水は白濁し、悪臭を放ち、四万十川流域での最大の汚染源となっている。それを解消しようというものであります。
 川底に大型浄化槽を設置する設備の内容については、次のようになっております。支流合流点付近の川底に幅二・五メートル、深さ三・二メートルのコンクリート製の暗渠を長さ八十八メートルにわたって埋め、琴平川の流れをすべてくぐらせるというものであります。暗渠は内部を十七層に仕切り、沈殿槽に空気を送って一部の微生物を活性化させるブロア室、ろ過室をつくります。ろ過室には、木炭を加工したチャコールバイオ、シイタケのほだ木や落ち葉などの炭素系有機物ニトライトという鉱石の自然ろ材、ホスカットと呼ばれるプラスチック片のろ材を詰める。琴平川のBODは現在二二・五ppmであるが、ろ過後は四万十川でのBOD基準の二ppmまで浄化できるというものであります。
 以上につきまして、当局の明快なる答弁をお願い申し上げます。
 以上で終わります。
○副議長(町田 亘君) ただいまの上野哲弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 上野議員にお答え申し上げます。
 大きな時代の流れの中にあってこれに対処するためには地方においても常設のシンクタンクをつくったらどうかということでございます。
 県内では、総合的な研究開発等を行うために、県、市町村、県内企業等の出資によって財団法人和歌山社会経済研究所が昭和五十六年に設置されておりまして、現在、活発に調査研究を行っております。県下の市町村につきましても、長期総合計画の策定や地域活性化の政策形成に当たって、この社会経済研究所を広く活用しているわけでございます。今後とも、時代に合ったシンクタンクのあり方について検討してまいりたいと思います。
 また、そこまでのシンクタンクまでいかなくても、各地域において、市町村の企画、産業等の担当者で地域の振興策等についての会合を持つようにして検討を進めていくということも指導してまいりたいと思っております。
○副議長(町田 亘君) 商工労働部長吉井清純君。
 〔吉井清純君、登壇〕
○商工労働部長(吉井清純君) まず、地方における海外貿易の推進と第三セクター設立の機運が出てきた場合の対応についてお答えをいたします。
 和歌山税関において平成五年一月から十二月までに通関手続がなされた輸入額は二千二百八十二億円で、輸出額は千五百億円と、輸入額の方が大きく上回ってございます。このうち、新宮港では輸出はなく、輸入額は二十九億八千五百万円で、輸入品目はすべて木材関係となっております。
 地方における貿易の拡大については、輸出入に適した産品等が必要であり、貿易産品の開発を目的とした第三セクター設立等の機運が醸成された場合、その動向を見きわめながら対処してまいりたいと存じます。
 続いて、龍神の自然水についてお答えいたします。
 龍神の自然水の販売状況についてでございますが、ふるさと産品の掘り起こしによる新たな産業の創出と雇用の拡大を目指し、財団法人龍神村開発公社で製造・販売されてございます。平成四年度の水の売上高は約二千四百六十万円と聞いてございます。今後とも、龍神村並びに同財団法人とも協議しながら販売促進について支援してまいりたいと考えてございます。
 以上です。
○副議長(町田 亘君) 企画部長佐武廸生君。
 〔佐武廸生君、登壇〕
○企画部長(佐武廸生君) 地域振興と地ビールの製造についてのご質問にお答えいたします。
 現在、県では、熊野地域の将来を担う青年たちの参画を得て、観光部会や農業部会など六つの部会で構成する研究会等を通じ、広範多岐にわたるご意見を伺いながら熊野地域活性化計画の策定に取り組んでいるところでございます。
 とりわけ、地域の個性的な資源を生かした活性化方策については熱心に検討していただいているところでございまして、熊野の伝統文化のイベント化や熊野グッズの商品化、熊野探訪ツアーの事業化などが議論されているところでございます。
 議員ご提案の、熊野の水を使った地ビールの製造につきましては、地元の皆様方とともに研究会において議論を深めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(町田 亘君) 土木部長山田 功君。
 〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 新宮市市田川の導水計画と浄水対策について、一括してお答えをいたします。
 現在実施中の市田川河川浄化対策事業の概要についてご説明をいたします。
 本事業につきましては、建設省事業として、新宮川本川から揚水機により浄化用水を市田川上流に導入する事業と、県事業として、導入された浄化用水の一部を浮島川及び浮島の森に導水する事業から成っております。これにより、市田川、浮島川の現状水質、BODで二十ないし五十ミリグラム・パー・リッターを大幅に改善できるものと思います。
 ご指摘のとおり、湖、湾などの閉鎖性水域に対する浄化対策としては負荷量の削減が必要であり、希釈対策である浄化用水の導入では閉鎖性水域の汚濁対策としては不十分であります。しかしながら、幸いにも新宮川河口部及び周辺の海域では市田川合流点部を除けば良好な水質状況を保っており、現在の市田川の浄化対策で対応できると考えております。
 次に、議員ご提言の河川内大型浄化施設の市田川への適用についてでございますが、一般的に汚濁負荷を減少させる浄化対策については、河川に流入する前の少量・高濃度で対処することが効率的であり、下水道整備が基本となります。また河川内の施設については、洪水等の流水の影響を受けやすく、維持管理上、課題がございます。
 さらに、市田川は勾配が緩く、海水の影響を受けていること、地盤が軟弱であることから浄化効果や施設の施工に大きな問題があり、同様なものをそのままここに適用するということは難しいと考えております。
 今後、さらに市田川の環境改善に向け、国、県、市が協調して浄化対策の勉強を行うとともに、住民の河川環境意識高揚のために諸活動を行ってまいりたいと考えております。
○副議長(町田 亘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 18番上野哲弘君。
○上野哲弘君 企画部長、地ビールについては最近の話で、なかなか詳しい情報もないかと思いますし、企業ですから、そう簡単にいくものでないことは百も承知で申し上げているのですが。
 一般的には、ビールが一本千円ぐらいになるんじゃないかという話も聞いています。実は酒造メーカーにちょっと聞きますと、今、一升が二級の小売で千五百四十円らしいのですが、それがメーカー出しで千円ぐらいじゃないかという話です。それを単純に割りますと、大瓶一本が六百三十三ミリリットルですか、そういうことになると三分の一ということになりますので、千円という判断はちょっとオーバーではないかと、そのような感じを持っているわけです。そういう面で、大手あるいは商社や各地の自治体のいろんな情報がこれからどんどん出てくると思いますが、物になるかどうか、ぜひ研究していただいて、できればそういう形でひとつ推進していただきたいと思います。
 それで、本来ならここで要望で終わるんですが、六月に再度このことを質問いたしたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それと、海外貿易という問題も規制緩和の中で申し上げたのですが、例えばビールの原料は、日本の場合、世界のあれからすると三倍以上かかるみたいです。今もちょっと聞きますと、農家で買い取るのが十六万ぐらい、メーカーに売るのが、食管になっているので三万二千五百円。十六万で買い入れて三万二千五百円で売るというむちゃくちゃなことをやっており、規制緩和も出てくると思うんですが、これからますますこういう面で、海外での格差是正のために、そういう貿易が含まれてくるんじゃないかと。そういう面で、港の利用もあわせてこういう面にもひとつ目を向けていただきたいと思います。
 それと広域行政なんですが、市町村の数は、幕末以後、七万一千四百九十七という数字になっているみたいです。それが、明治二十二年の市町村合併で一万五千八百五十九となり、現在では三千二百三十五の市町村が存在しているみたいです。やっぱり時代も違いますし、これから広域行政というのが非常に重要になってくるんじゃないかと。そういう面で、どうしても単なる縦割り行政じゃなしに横の連絡とかいろんな面で県の指導が必要じゃないかと思いますし、できるだけ地域の皆さんが一緒になってできる形をこういう事業にも生かしていただきたいと、そのような思いがしてそういう質問をいたしました。
 今後ともぜひ県当局のご指導をお願いしまして、質問を終わります。
○副議長(町田 亘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で上野哲弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(町田 亘君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後一時五十八分散会

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