平成4年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(木下義夫議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時五分再開
○副議長(平越孝哉君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(平越孝哉君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 37番木下義夫君。
 〔木下義夫君、登壇〕(拍手)
○木下義夫君 通告した順番に従いまして、質問をいたします。
 まず初めに、南方熊楠先生と国の天然記念物である神島の保存についてであります。
 一八六七年四月十五日、和歌山市でお生まれになられ、幼少のときより天才の名をほしいままにして世界各国で菌類、地衣類を採集・研究し、その学識の深さは古今東西にわたり、碩学の名をほしいままにしたのであります。一九〇四年より田辺市に居を定めて粘菌類の研究に没頭、数千点に及ぶ彩色図を完成させ、一九二九年には昭和天皇陛下を神島にお迎えして、一九四一年に永眠されました。
 田辺市では、ふるさと創生交付金全額を投入し、民間の方々の多大のご協力を得て南方熊楠邸保存顕彰会及び実行委員会の皆さんとともに没後五十周年記念事業を計画し、平成三年十月二十日に南方熊楠翁没後五十周年記念式典を開催するに当たり、市民、県民の誇りとして南方先生の偉業をたたえ、南方熊楠賞を制定したのであります。先生の研究対象であった植物学的分野、民俗学的分野、及び南方熊楠先生自身のことについての研究に顕著な功績のあった学者、研究者を全世界より選考し、賞状及び副賞を贈るものであります。第一回人文の部の南方熊楠賞受賞者として、コロンビア大学教授で中世日本研究所所長のバーバラ・ルーシュさんが選ばれました。
 南方熊楠先生が、今、何ゆえに没後五十年にしてもてはやされているかについては諸説があろうかと思いますが、心の時代を迎えて地球環境の大切さを叫ばれ出したことと相まって、自然の大切さを五十年以上前から唱えていたからであろうかと思います。
 神島について少し述べますと、田辺湾に浮かぶ小さな島が神島と呼ばれて古くから土地の人たちにあがめられてきたのは、島を覆っている深い照葉樹林に神が住むと信じられたからであります。万葉の昔より、田辺の磯間浦から眺める神島は風光明媚な名勝の地だったのであります。神島の陸上生物が学問の対象になったのは江戸時代の本草学からであり、生態学の目で神島を見た最初の研究者は南方熊楠先生だったのであります。
 一九〇六年に神社合祀令が公布されましたが、南方先生は鎮守の森の生態系保護のため猛然と反対運動を始めました。神島明神も新庄村の大潟神社に合祀され、島にご神体がいなくなると森林の大きな樹木は新庄小学校の改築費用のために伐採して売られ出し、それを見た南方先生は、神島の森林がなくなると漁業に悪い影響が出ることや、古くから親しまれてきたハカマカズラの保護などを当時の新庄村の榎本宇三郎村長に訴えました。榎本宇三郎村長は熊楠先生の熱意に打たれて村議会を開き、大英断を持って伐採中止を決定したのであります。そして、保安林だけでは十分保護できないので県に天然記念物の申請をし、一九三〇年五月三十一日、指定されたのであります。
 一九二九年に天皇陛下が海路より南紀に行幸した際、神島に上陸をして生物を調査されました。そのとき、南方先生は軍艦の上でご進講しました。また、この機会に、当時の「大阪毎日新聞」に紀州田辺湾の生物を連載し、神島の生物を紹介したのであります。天皇陛下の行幸を記念して、翌年、南方先生の自詠自筆の「一枝もこころして吹け沖つ風 わが天皇のめでましし森ぞ」の歌碑が神島に建てられましたが、この機会に神島を国の天然記念物にすることを提唱し、その資料をつくるために全島の樹木調査をしたのであります。そして一九三五年、植物学の三好学博士、地質学の脇水鉄五郎博士が神島に渡って調査した結果、一九三五年十二月二十四日付で国の天然記念物に指定されました。
 南方先生は、「この島の草木を天然記念物に申請したのも、この島に何たる特異の珍草珍木ありとのことにあらず。この田辺湾地方の植物は、今や白浜あたりの急変で多く全滅し、また全滅に近づきつつある。しかるに、この島には一通り田辺湾地方の植物を保存してあるから、後日までも保存し続けて、昔、このあたり固有の植物は大抵こんなものであったと知らせたいからである」と、植物生態学から見た神島の重要性を説いているのであります。
 こうして神島は、一九一二年に魚つき保安林、一九三〇年に県指定の天然記念物、一九三五年に国指定天然記念物と、二十三年かけて段階的に法律で保護されるようになりましたが、これは南方先生の神島を愛する情熱とともに、陰で南方先生を支援した毛利清雅氏の協力のたまものであります。
 神島と南方先生の深い関係は、一九六二年、白浜に行幸された天皇陛下の詠んだ「雨にけふる神島を見て紀伊の国の生みし南方熊楠を思ふ」の御製に象徴されているのであります。
 以上、和歌山県の生んだ世界的学者である南方熊楠先生と神島について仮谷知事はどのように考えるか、お尋ねいたします。
 次に、神島の保存についてであります。
 神島における鳥類のふん害については平成二年十二月定例会で町田亘議員から質問があり、当時の高垣教育長は、「管理者である田辺市から、島の南東部の樹木が白くなっているとの報告を受けてございます。今後、田辺市と十分協議を行うとともに、それぞれ所管する関係部局とも連携を図りながら実態の把握等に努めてまいる」との答弁をしているのであります。その後、一年余りの経過で、南方熊楠先生が命をかけて守り育て、昭和天皇陛下のめでし日本の宝である神島は、今、知事のお手元へお渡ししている写真のような悲惨な状態になってきているのであります。そして、その原因である鵜によって関係者はうろうろさせられている今日であります。
 田辺市教育委員会も、カワウ研究の権威者である東京上野動物園の福田道雄先生を招聘していろいろ指導を受けたり、爆音器を設置したりして対策を立てているようですが、さしたる効果も上がらず、このまま放置するとふん害がますます深刻化して、数年にして神島は死の島になるのではないかと関係者は心配しているのであります。南方熊楠先生も、没後五十年にして記念行事は盛大にしてもらったが、命をかけて守り、天皇陛下にも称賛してもらった神島がこのような悲惨な運命をたどり、死の島と化していくのを大変残念に思っていることと存じます。抜本的な、今までに例のない対策を立てなければならないと思います。
 一九一二年に魚つき保安林、一九三〇年に県指定の天然記念物、一九三五年に国指定の天然記念物にされているので、この問題を解決するためには田辺市と国と密接な連絡をとり、本当に真剣に取り組むべきだと思います。
 そこで、お尋ねをいたします。
 一、田辺市の管理になっているが、その予算の裏づけはどのようになっているか。
 二、高垣教育長答弁後の対策の経過について。
 三、今後どのような対策を立てる計画か。
 四、ふん害によって表土がかたくなり、激しい雨になればその流出が心配されている。表土が流出されるとその島は全く死の島となり、もとの状態には戻らないので表土の流出防止対策を立てるべきだと思うが、いかがか。
 次に、昭和天皇陛下にはこの神島に非常な関心を持っていただいた関係で今上天皇陛下も関心を持っていただいているようなので、国に対し、特別な予算措置を伴った保護対策を講じて死の島とならないように要求すべきだと思うがいかがか、お尋ねいたします。
 次に、アルコール依存症者に対する福祉行政であります。
 社会活動が複雑化され、すべてのことがスピード化されるにつれて、我々に大きなストレスをもたらしてきております。そして、何らかのきっかけで、ストレス等から逃げるためにアルコールに依存するようになるのであります。
 アルコール依存症者とはどのような程度の人のことを言うかについて明確な定義はないようですが、その道の人に尋ねると、体質、性格、環境等によって異なるものの、男子は毎日三合以上十年間、女子は毎日三合以上七年間以上続けて飲酒をすればアルコール依存症者になると言われております。数年前までアルコール依存症者は四十歳代から五十歳代の方が多かったのでありますけれども、最近では二十歳代がふえ、特に婦人の方が増加傾向にあり、大変大きな社会問題となりつつあるのであります。
 アルコール依存症になり、大変な苦労と努力を重ねて立派に立ち直り、今、断酒会の会長としてアルコール依存症者の世話を一生懸命している私の友人がいます。その友人とある公立病院の精神科の先生に教えてもらい、現場の生の声を反映させながら質問をいたします。
 私自身も友人の依頼で断酒会の会合へ参加することがありますが、実際、酒害は我々の想像を超えたものであり、生活の崩壊があり、信用の失墜があり、涙を流しながらの体験談を聞くと、そのたびに、これは大変だ、断酒会の会員だけではなく行政も社会全体も一体となって健康福祉増進、社会の活性化、健全化、家庭生活の健全化のためにも大いに力を入れるべきだと思うわけであります。
 そこでお尋ねいたしますが、県下のアルコール依存症者の現状をどのように把握し、それに対してどのような対策をとっているか、知事、保健環境部長の答弁を求めます。
 次に、現在、県下に二つの断酒会があります。和歌山県断酒会友綱、紀南新生断酒会であります。この四月一日より県断酒会友綱がよりきめの細かい活動をし、より効果的なものにするために次の四つに分割されて、紀南新生断酒会を入れて和歌山県断酒連合会を結成するようであります。和歌山市断酒会友綱、紀北断酒会友綱、紀の国断酒会友綱、三熊野断酒会友綱の四つであります。
 先日、私の家にアルコール依存症者から、午後十時ごろより一時間余りの間に約二十回以上の電話がありました。家内が、主人が帰ってきたら電話するから待ってほしいと言うと、よし、わかったと言って電話を切るが、また二分もしないうちに、帰ってきたかと言って電話がかかるという状態でありました。帰ってから本人に電話をすると、断酒病院へ入院したいが相談に乗ってほしいと言うので、断酒会の会長さんのところと田辺市の福祉事務所へ手配して相談に乗ってもらいました。この本人は今まで何回も何回も入退院を繰り返して家庭生活も崩壊している状態でありますが、とにかく本人は一生懸命立ち直ろうと頑張っているのに長続きがしない。そのたびに入退院の世話をしているのが断酒会の役員さんたちであります。相談に乗れば、入院の手続、病院までの送り役や生活の心配等、大変なものです。その上、断酒会の役員さん等は、自分の本業を休んで、自己負担で仲間を病院まで連れていく。その時間的、経済的負担は大変なものです。しかし、断酒会の役員さんたちも、自分自身、酒害地獄から立ち直ってきたので、本当に自分のこと以上にお世話をやいてくれています。心から頭の下がる思いがするのであります。
 今、知事にお渡ししたのは断酒会結成記念大会のパンフレットであります。三重断酒新生会結成記念大会、高槻市断酒会結成記念大会、和歌山県紀南新生断酒会結成記念大会のものであります。見ていただくとわかりますが、三重断酒新生会のものは、三重県久居保健所のアルコール健康劇「おいらの人生酒なし…そして悔いなし」において西井次長さんを筆頭に職員の皆さんが熱演し、三重断酒新生会が協力をしているというものであります。また高槻市の場合は、主催は高槻市断酒会であり、高槻市が後援をしています。我が和歌山県は和歌山県紀南新生断酒会主催で、行政の後援もない状態であります。このことを当局はどのように考え、現在どのような支援活動をしているか、また今後の支援活動をどのようにするかについてお尋ねをいたします。
 次に、アルコール専門の医療体制の確立についてであります。
 アルコール依存症者本人及びその家族の悲惨さを考えるとき、アルコール害をこの世からなくして明るく健康的な地域社会、家庭生活をつくるためには、アルコール依存症の早期発見、早期治療が必要であります。そのためには、クリニック形式の診療所とその後の治療のための受け入れ病院、そしてそれらの連携をスムーズにいかすための専門家の養成がぜひ必要であると思います。和歌山県立医科大学附属病院または五稜病院を活用して早急にアルコール専門の医療体制の確立を図り、健康福祉和歌山の実現を目指すべきだと思いますので、仮谷知事の答弁を求めます。
 次に、精神保健相談員の増員についてであります。
 先日、田辺市で発行されている「紀州新報」において、県下で二人目の精神保健相談員が田辺保健所に着任したと大きく取り上げられていました。栗田直嗣君で、その管轄は田辺保健所と御坊保健所管内と、非常に広範囲にわたるものであります。健康対策課にも高橋桂一君がおられて岩出保健所と兼任で頑張ってくれており、その活躍ぶりには頭の下がる思いであります。
 和歌山県の精神障害者の在院日数が今でも全国一、二を競っています。長期入院患者の地域開放化治療、社会参加促進、まただんだん低年齢化してくるアルコール依存症者の早期発見、早期治療をするためにも、各保健所に少なくとも最低一人の精神保健相談員を早急に配置すべきであると提案し、当局の答弁を求めます。
 三番目は、県立南紀高等学校のあり方とその振興についてであります。
 この問題については、先日、浜本議員及び一部について富田議員から質問がありましたが、私は私の立場で質問をさせていただきたいと思います。
 定時制教育については昭和五十九年九月、南紀高校の専攻科については平成三年六月に質問させていただいております。紀南地方における看護婦の不足対策について、南紀高等学校の専攻科の定員増、推薦制の取り入れ、入学試験日の繰り上げについてお願いを申し上げましたところ、教育委員会の英断により今春より早速実施していただいてすばらしい効果を上げており、関係者の皆さんに大変喜ばれております。まず、心から御礼を申し上げたいと存じます。
 平成四年度から、定時制・通信制教育の活性化を図るとともに、教育内容、方法等の充実や履修形態の多様化、弾力化を図ることによって生徒一人一人が自己の興味、関心、能力、適性、進路希望及び生活形態等に応じて科目を自主的に選択し、意欲的に学習できるようにする、また生涯学習の推進にふさわしい、地域に開かれた豊かな教育の機会を提供するために紀の川高校、青陵高校、南紀高校に単位制高校教育を実施することとしているのであります。このことは大変よいことだと思いますが、そのために、定時制である単位制の普通科、全日制の衛生看護科、専攻科と、南紀高校の性格というか組織というか、非常に複雑になってきて円滑な学校運営ができかねるのではないかと懸念されております。
 そこで、以下、二つの観点から質問をさせていただきたいと思います。
 まず、単位制の教育についてであります。普通科定時制課程定員三十名となっておりますが、単位制の教育については、生涯学習の推進ということを含めて生徒一人一人の生活形態に応じた授業をしなければ本当に効果的な教育はできません。定時制だけでなく、昼間部課程、通信制課程を併設しなければ、仏つくって魂入れずになります。そこで、紀南地方の定時制教育、生涯学習推進のために、ぜひ単位制の昼間部課程、通信制課程を南紀高校に設置すべきであると思うが、西川教育長の答弁を求めます。
 次に、南紀高校を職業専門高校として分離・独立さすことを提案いたします。
 看護婦不足が叫ばれて久しく、ますます深刻化しております。平成四年度において、紀南地方に看護婦養成所を設置するための調査費百万円が計上されています。高齢化社会が進む中で、ますます看護婦の増員が必要になってきますが、一方、看護婦になろうとする若年層が少なくなってくるので、全国からでも希望者を募集できるような看護婦養成機関が必要になってくる。また、社会が複雑化されるにつれて、種々な技術者、技能者の養成も必要になってきます。例えば、歯科衛生士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士などであります。
 歯科医師会の先生方に教えてもらいましたが、「八〇二〇運動」というものがあるそうです。これは、高齢化が進む中で、八十歳のときに自分の健康な歯が二十本あるようにするというものであります。二十八本のうち自分の歯を二十本保つには平素から歯の健康について注意しなければならない、歯が丈夫であれば身体の健康が保持されるので、そのためにも歯科衛生士の養成が必要になってくる、将来的には保健所へ歯科衛生士を一人は置くべきであると言われておりました。
 以上のことから、南紀高校を職業学校として分離・独立させて、看護婦不足対策、健康対策、職業対策を実施すべきであると存じますので、西川教育長の答弁を求めます。
 最後に、テクノスーパーライナーの開発状況と県の取り組みについてであります。
 先般、議会運営委員会で石川県へ視察に行った際、「北陸新聞」に、石川県の平成四年度の新予算でテクノスーパーライナーの母港の指定を受けるため費用計上されているのが大きく報道されていました。我が和歌山県はどうかと思って平成四年度の予算を見ると、海の交通網整備の新規予算としてインターナショナル・コンプレックス・トランスポーテーション(国際複合輸送)拠点整備推進調査費一千万円が計上されているのであります。時宜を得た、大変よいものであると思います。
 二十一世紀に向けて世界の経済社会が活力ある発展をするためには物流体系の飛躍的な進展が望まれ、高速化すなわち輸送時間の短縮化が強く求められています。テクノスーパーライナーは、従来の船舶の限界を超えた性能に挑戦しようとするものであります。そのために民間の技術力を統合し、研究開発を総合的かつ効率的に推進して一段と飛躍した新形式超高速船のテクノロジーの開発を目指すため、運輸省の指導により、鉱工業技術研究組合法に基づいて平成元年七月にテクノスーパーライナー技術研究組合を設立しました。世界的に高いポテンシャルを誇る我が国の造船技術を結集し、平成五年度までに新形式超高速船の基礎的な技術開発と試験を行い、設計技術を確立することを目的としているのであります。
 和歌山県は紀伊半島に位置し、昔から海の交通拠点でありましたが、関西国際空港の平成六年夏の開港を間近に迎え、ますます国際化されていく中で海の活用もますます重要になってきます。そこで、現在のテクノスーパーライナーの開発状況と県の取り組みの現状について、仮谷知事及び企画部長の答弁を求めます。
 以上で、第一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの木下義夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 木下義夫議員にお答え申し上げます。
 神島の保存の問題についてでございます。
 お話のように、南方熊楠氏は本県を代表する世界的な偉人でございますし、また先生と神島との関係については、ただいまご説明いただいたように非常に深い仲であり、関係があるわけでございます。
 現在、この神島が鳥のふん害で非常に困っているという状況については私も新聞等で拝見させていただいており、被害が出ていることに対して心を痛めているところでございます。
 今後の保存につきましては、鳥獣保護、自然保護、環境保全等の面からも十分研究しながら、所有者である田辺市とも十分協議するとともに、国と連携を密にして積極的に対処してまいりたいと存じているところでございます。
 それから、アルコール依存症者に対する現状把握と対策、また専門医療体制の確立でございます。
 最近の飲酒人口の増加、また消費量の増大に伴って、お話ございましたようなアルコール関連疾患やアルコール依存症等の健康障害が増加しているということを私も知っております。現在、保健所において、断酒会の協力を得ながら相談を実施しており、今後とも相談指導の充実に努めてまいりたいと思っております。
 私も、昨年、断酒会の皆さんと懇談させていただき、いろいろな事情も承らせていただきました。また、現在、由良町において断酒道場があり、そうした皆さんの訓練をやっておられますけれども、専門医療体制の確立の問題については、五稜病院の中に運営検討委員会があり、この中で課題の一つとして取り組んで検討してまいりたいと思っております。
 テクノスーパーライナーの開発の件でございます。
 テクノスーパーライナーは次代の海上物流に大きな役割が期待される超高速の貨物船であり、お話ございましたように、現在、運輸省において研究開発がされつつあるわけでございます。県としましても、海洋に面しているという本県の特質を生かし、関西国際空港、白浜空港、また第二国土軸とか高速道路等の連係をなお一層密にするために今後とも積極的に取り組んでまいりたいと思っているところでございます。
○副議長(平越孝哉君) 保健環境部長遠藤 明君。
 〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) アルコール依存症者に対する福祉行政についてのご質問にお答えを申し上げます。
 アルコール依存症者の現状把握とその対策についてでございますが、近年の経済成長に伴う国民所得の増加や都市化による人口集中、核家族化等の生活様式の変化によって飲酒人口が増加してきており、アルコール関連疾患やアルコール依存症等、アルコール飲料に起因する健康障害も増加してきております。さらには家庭の崩壊や労働上の障害等が社会問題として顕在化しており、特に最近では未成年者飲酒、飲酒による胎児への悪影響、キッチンドリンカー、高齢者のアルコール依存問題等が新たな問題となってきてございます。
 現在、各保健所において酒害相談を実施し、日常相談、電話相談、家庭への巡回相談等を実施しているところでございますが、今後さらにこれらを充実させ、早期に適切な処遇を行うとともに、適正飲酒の普及啓発に努めてまいりたいと考えております。
 次に、断酒会活動に対する評価と支援活動についてでございますが、断酒会は、アルコール依存症者にとって相互支援による再発を防止するための地域における中心的な機関として、その活動を高く評価しているところであります。
 また、断酒会への支援状況についてでございますが、集団療法の基本として行っている断酒例会、酒害対策講習会等に対して一部補助を行っておりますが、今後の活動支援についても検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、精神保健相談員の増員についてでございますが、現在、二名が配置されており、近くもう一名を配置する予定でございます。
 今後、アルコール問題を含め、精神保健活動をより積極的に推進するためにも、議員ご提案の趣旨を踏まえ、指導体制の強化を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) テクノスーパーライナーの開発状況についてお答えを申し上げます。
 テクノスーパーライナーは、速力五十ノット、時速に直すと約九十キロ、貨物積載量千トン以上の性能を持つ新形式の超高速貨物船でございまして、これが実現されると、日本国内はもとより、東南アジア方面を含めた海上物流に大きな変革をもたらすものと言われております。
 現在、運輸省におきまして、二十一世紀に向け、労働力不足、交通渋滞等に対応するため海上貨物輸送への転換が検討されておりまして、テクノスーパーライナーについても、平成元年度から高度船舶技術研究開発の一環として調査研究開発が進められているところでございます。来年度からは実験船の建造が開始されるとともに、テクノスーパーライナーを活用するための輸送システムの研究にも着手すると聞いております。
 テクノスーパーライナーの実現にはまだまだ多くの課題があると考えますが、外洋に面する港湾を有するという本県の優位性や京阪神、関西国際空港等への近接性などの利点を活用して本県のさらなる活性化を図るため、このテクノスーパーライナーの取り組みについて積極的に対応してまいりたいと考えてございます。
 このため、新年度にはテクノスーパーライナーの導入可能性、さらには複合輸送拠点整備のあり方等について調査を進めるとともに、早い時期にその推進に向けてのシンポジウム等を開催いたしたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 教育長西川時千代君。
 〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 二点についてお答えいたします。
 世界的な博物学者である南方熊楠翁の貢献によって国の天然記念物に指定されている神島は、近年、飛来する鳥類の多量のふんによって樹木、土壌、陸生貝類などに被害が及んでございます。
 県教育委員会といたしましては、平成三年一月に管理者である田辺市とともに現地調査を行い、被害の防止と植物の保全について協議を重ねてきたところであります。その対策としては、田辺市の経常経費により、平成三年四月に養殖場にトリペラを四基設置し、次いで同年十一月には自動爆音器を設置するなど、鳥類の飛来防止に努めているところでございます。また、文化庁に依頼し、去る二月二十三日に専門家による現地調査を行い、野鳥の嫌う吹き流しや超音波発振器などの設置について具体的な方法を考えているところであります。
 次に表土の流失防止策でございますが、平木による矢板を打ち込み、下草の自生を促すなどの方策を考慮しているところであります。また、飛んでくる野鳥の数やその種類、ふんの量の測定、土壌、植物の被害の程度などの調査を定期的に実施し、野鳥の飛来防止と島の植物の保護再生策など、その対策について検討することにしております。
 県教育委員会といたしましては、文化庁の指導のもとに田辺市教育委員会及び県の関係部局と協議を行いながら、神島の保全について引き続いて取り組んでまいりたいと存じます。また、国に対しては、神島の保全対策の実施の段階でその助成等について働きかけてまいりたいと考えます。
 次に単位制高校の件につきましては、定時制・通信制教育を一層活性化するとともに、生徒の特性に応じた教育が推進できること、さらに生涯学習の観点を取り入れて地域に開かれた豊かな教育の機会を提供することを目的としたものであります。
 本県におきましては、地理的条件を勘案して、平成四年度から県下に三校を設置することに決定いたしました。紀南地方においては、定時制教育の中心校として大きな役割を担ってきた南紀高校に単位制を導入したところであります。
 南紀高校につきましては、単位制の趣旨を生かす観点から、社会人を対象とした特別講座を開講するとともに、新たに通信制の陵雲高校の協力校に指定し、南紀高校においても通信制の授業がとれるよう措置したところでございます。
 今後、同校に単位制の昼間部及び通信制の課程が設置できるかどうかにつきましては、中学校卒業生徒数の推移や紀南地方の生徒の志望状況などを勘案しながら、社会人を対象としたパソコンや英会話等の特別講座の充実をも含め、さらに鋭意研究してまいりたいと考えてございます。
 県下の、特に紀南地方における看護婦不足に対応するため、看護婦の養成が切望されております。こうした状況を踏まえ、平成四年度の専攻科の募集定員については、現行の三十人を四十人に増員するとともに、新たに推薦入学制度の導入を図ったところであります。
 南紀高校の衛生看護科、専攻科を分離・独立させる件につきましては、県下の看護婦不足等の状況や南紀高校の実態を勘案するとともに、看護及び医療技術に係る教育の充実という観点を踏まえ、全県的な視野から関係部局とともに総合的に研究してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 37番木下義夫君。
○木下義夫君 ただいま答弁をいただきました。
 一点目の神島の保存についてであります。
 一歩進んだ答弁をいただきましたが、今も申しましたように、南方熊楠先生が命をかけて保護し、昭和天皇陛下に愛された神島を本当に健全な状態で保存するためには今までと違った発想の転換が必要であろうと思いますので、ぜひここで発想の転換を図っていただいて、後世にすばらしい神島を引き継いでいただくよう要望いたします。
 次に、アルコール依存症者の福祉についてであります。
 今も非常に配慮した答弁をいただきましたが、いま一段温かい配慮をお願いいたしたいし、また、今、断酒会の役員さんが自己負担で会員を病院へ連れていったりしていることについても配慮願いたいと思います。
 知事から答弁がありましたが、今後、五稜病院にアルコール専門病棟の設置を同病院運営検討委員会で検討するということでございますが、早急に真剣に取り組んでいただき、一日も早く実現していただけるようにお願いを申し上げます。
 また、精神保健相談員の役割は大変でありますので、早く各保健所に配置されるようお願いをいたしたいと思います。
 南紀高校の充実についてでありますが、一段の配慮をお願いして、単位制教育と職業高校の充実を図られるよう要望いたします。
 テクノスーパーライナーについては、知事、企画部長の答弁を了といたしますので、和歌山県発展のために大いに取り組んでいただくことを要望して、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下義夫君の質問が終了いたしました。

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