平成4年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
○議長(山本 一君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
33番鶴田至弘君。
〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 お許しをいただきましたので、通告順に従い、一般質問をさせていただきます。
まず、本県の上空に米軍機が再三飛来し、飛行訓練を行っているということに関してであります。
私は、去る十二月議会におきまして、本県中部における米軍の超低空飛行の危険を指摘させていただき、その中止を求め、県当局がしかるべく適切な対応をするよう迫りました。それに対して当局の方から、「中止を求めてまいりたい。事故再発防止がとられるまでの間は同地域での飛行は中止するという回答を得ている。この地域には本県も含まれている。十二月の飛行については飛行士の不注意によるものであり、厳重注意を行い、再度四軍に対して文書をもって徹底するということで遺憾の意を表してきた」と、そういうふうな旨の答弁があったわけであります。しかし、その後の事態は、既にご承知のとおり、米軍機は我々に対する約束など全くなかったかのごとく、紀伊半島は彼らの領土のごとく、傍若無人に危険な飛行訓練を行ったのであります。二月に至っては飛来が十日を超え、機数は延べにして数十機とも言われております。これほど県民を愚弄した話はございません。
私は、去る十二月議会において、一九八七年の事故の後の推移から見て、米軍との約束は簡単に信用することができないのではないかと申し上げたところでございます。五年前も、事故原因が明らかになるまでは飛ばないという約束がありましたが、それは一年を経ずしてあっさりとほごにされました。事故原因が明らかになったのかどうかも不明のままであります。そして、昨年の秋の事故であります。このときも八七年のときと同じように、事故原因が明らかになるまでは飛ばないということであったようでありますが、以後、直後も数回飛来し、ことしに入っての遠慮会釈のない傍若無人ぶりであります。少なくともこの事件に関する限り、和歌山県民は全く米軍に無視され、うそをつかれ、愚弄されっ放しであります。
十二月議会において私は、過去の経験から見て、単に飛行訓練の中止を要請するだけではだめだろう、このような行為には毅然として抗議すべきであると訴えたものでありますが、残念ながら事態はこのように推移してまいっております。いつまた事故が起こるかわかりません。県民は全くばかにされっ放しのような気がいたします。
ついては、本年に入ってからの米軍の本県における超低空訓練飛行の実態とそれに対する県当局の対応、いかなる経緯をもって県民に対する約束が破られていったのか、また米軍や外務省は何と言っているのか、それはなぜなのか、今後かかる事態を生じさせないようにどう対応するのか、知事としての責任においていかに処するつもりなのかを明らかにしていただきたいと思います。
続いて、紀の川の問題についてお尋ねをいたします。
紀の川リバーサイドグリーンベルト作戦ということで、紀の川河口から岩出橋の間十六キロメートル、三百ヘクタールという広大な河川敷を市民憩いの場として開発していこうという構想が昨年発表され、多くの方々の関心あるいは期待を集めているようであります。整備されれば、和歌山市民初め紀の川筋に住む人々の結構な憩いの場になるであろうと、私も期待をする一人であります。しかし、広大な河川敷であるだけに、その整備の方向は慎重を期さなければならないと思われます。周辺の方々の要求、専門家の意見を十分に取り入れた整備の方向を打ち出さないと、せっかく多額の金をつぎ込んでも利用者が少ないという結果になりかねません。
こういうことを申し上げますのも、例えば、現在、河口に近接する北岸は清潔に整備された緑地が相当な広さで存在しておりますけれども、利用者が非常に少ないということであります。近所の人々に尋ねてみますと、河口の周辺というのは内陸部と違って、常時風が吹いていて気温が低く、春でも相当寒いそうです。運動などにはよいかもしれないけれども、のんびり弁当をという機会はなかなかないようであります。河川敷のことですから、当然、樹木はありません。したがって、夏は一方的に照りつけられるだけで、逃げ場がない。そんな理由で、せっかくつくった緑地が紀の川大橋を渡る人々の目を一瞬和ませるだけということになっておるような事態ですが、大変もったいない話であります。そういう点から見ましても、市民の意見、周辺の人々の意見というのを十分聴取していただきたいと思います。とりわけ、若者たちの声は大事にしていただきたいと思います。
日曜、祭日の野球場の確保は、和歌山市の青少年にとってなかなか大変であります。月一度の抽せん会には、抽せん漏れしたたくさんの青年の残念がる顔も非常に多く、休日の健全なレクリエーションの場がまだまだ保障されておらないのだということを感じさせられます。ぜひとも紀の川筋の幅広い方々の意見を聞いて整備の方向を出すべきだと思います。この点について当局はどのような考え方をお持ちになっておられるのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
また一方、整備ということになりますと、隅々まで人工の手が及んで、紀の川が持つ雄大な景観が生かされず、ちまちまとした施設の寄せ集めになってしまっても残念でございます。自然を生かし、住民の要望にこたえていくというのが整備の基本的な方向だろうと思われますが、いかがお考えでしょうか。
また、河川敷には相当の民地や住宅があります。住宅の居住者には公営住宅を代替あっせんするというような結構な方針も持たれているようでございますが、民地に対してはどのように対処されるのでしょうか。
昭和五十八年には、河川敷内の地主に対して地建や県当局の強権的な行政指導があり、トラブルが新聞に報道されるというようなこともありました。河川敷内とはいえ、地主にとっては貴重な財産であります。この民地に対してどのように対処していかれるのか、基本的な考えをお示しいただきたいと思います。
また、河川敷が整備されると、次は水の問題が当然考えられなければなりません。昔は紀の川で泳いだ、絶好の遊び場だったという話をよく聞きます。しかし、今は昔の語りぐさでありますが、一日も早く清流をよみがえらさなければなりません。水質は環境基準ぎりぎりで、時と所によってはオーバーしているところもあるようです。水とたわむれるところがなければ河川敷整備も十分なものとは言えないでしょうから、清流の確保はまた一段の努力が必要だと思われます。そのためには公共下水道の設置が当然のこととして急がれなければならないのでしょうが、今年提案された予算案には、那賀処理区の基本計画策定の予算、伊都処理区の用地取得や幹線管渠工事費が上程されております。大いに期待したいところでありますが、過去の経過を見れば、一体いつまで待てば完成するのだろうかとの思いを抱かざるを得ないのであります。
紀の川流域の下水道計画の進捗状況、なかなか進まないその問題点、今後の展望などをお示しいただきたいと思います。
一方、公共下水道の完備までは手をこまねいて流れを濁るに任せておくわけにはまいりません。当局で一定の努力はしておられるようでありますが、隔靴掻痒の感を免れません。行政と市民が一体となって紀の川を美しくする運動が必要だということは関係者の多くの一致するところだとは思いますが、一過性の運動が見られても、持続した大きな運動というのはありません。現在までどのような施策が行われたか、また本年度の方針はどのようであるか、今後どのような展望をもって清流の奪回のために行政を進められようとしているのか、お尋ねをいたします。
次に暴対法、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に関係してお尋ねをいたします。
この法が発効して、県民からの大きな期待が寄せられています。同時に、今までと同様の鳴り物入りの空騒ぎに終わるのではないかという不安を抱く人も、決して少なくありません。暴対法の発効に当たって県警はどのような決意と体制で臨んでいるのか、新法との関係で従来の体制をどのように改編し、暴力団の根絶に対処しようとしているのか、決意と現況をお示しいただきたいと思います。
また、暴対法に備えて、最近、暴力団が右翼的政治結社や会社組織に衣がえをしていると聞きます。本県においてはどのような状況にあるのか、掌握している現状をお示しいただきたいと思います。
都道府県公安委員が、一定の要件に該当する暴力団を指定暴力団あるいはその連合体と指定するとありますが、衣がえとの関係ではいかに対処するつもりなのか。報じられるところによると、衣がえしても内容的には同じであれば暴対法で対処するとされておりますが、毅然として本当に対処できるのかどうか、その姿勢を示していただきたいと思います。
また、衣がえをした暴力団が各市町村の公共事業や請負に入り込む可能性もないとは言えないと思われますが、市町村との協力の関係はその点で十分なのかどうか、現況を含めて明らかにしていただきたいと思います。
続いて、財団法人和歌山県暴力団追放県民センターについてお尋ねをいたします。
私があえてこのセンターについてお尋ねをするのは、本センターが単なる民間の暴力排除の啓発センターであれば問題としないのでありますが、今までの暴排関連の組織と基本的に性格を異にしている点があるだけに、あえてお尋ねをしておきたいと思うのであります。
その一点は、センターの掲げた目的の中には、本来、警察行政が担当するところのものが幾つか含まれているという点であります。あえてここにセンターをつくり、それらの任務をつかさどらせるという目的は一体何であるのか。見方によっては、警察行政をセンターに肩がわりさせているのではないかとも思われる節もありますが、いかがなものでしょうか。
二つ目の問題は、センターの持つ半ば公的な業務について、最終的にどこが責任を持つかという点であります。
寄附行為第四条の事業内容の幾つかは、例えば「暴力団員による不当な行為に関する県民からの相談に応ずること」だとか、あるいは「少年に対する暴力団の影響を排除するための活動を行うこと」、また「暴力団から離脱する意志を有する者を助けるための活動を行うこと」、暴力団員による「不当要求による被害を防止するための措置が有効に行われるようにするための講習を実施すること」とか、数えていきますと、幾つか本来的に警察が行ってもよいと思われるような任務が随分と掲げられていると思われます。これらの点で、その業務の遂行が不十分で満足な結果が得られなかったとか、それによって不祥事が起こったとした際、警察行政の責任があいまいにならないかということであります。あるいは、警察の本来の業務をセンターが代行することによって、緊急事態への対応がおくれるような危惧はないかということであります。
次の問題は、センター運営の基金の問題であります。
基金の一部は寄附に依存することになっておりますけれども、主たる寄附者はどこに求めようとされているのですか。センター業務の基本的な性格は、県民に対するサービス業務であります。サービス業務を行う資金源を寄附に求めるとすれば、寄附金を出したところにはサービスを厚くということになりかねません。それが一般社会の常であります。そのような弊害を防止するためにも、この際、基金は全額公費負担というのが望ましいのではないでしょうか。暴排活動への協賛と参加の意思を示すという点では、寄附が意味のないことではないとは思いますが、基礎的な基金についてはふさわしくないのではないでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
次は、役員構成の問題です。
寄附行為による役員欄を見ますと、知事初め銀行の会長や社長さん、その他いかめしい肩書のついた超多忙な方々ばかりであります。当然、暴排に熱心な方々ばかりだとお見受けをいたします。しかし、センターを権威づけるのには好都合かもわかりませんが、単なる名誉職になって、有効な機能を発揮しにくいのではないかと危惧するものでありますが、いかがでございましょうか。
また、センターは暴力団と対抗する性格を潜在的に持つわけで、一部暴力団の襲撃の対象になるというような物騒なニュースも報道されたりしております。権力を持った警察が暴力団と癒着するというような情けない事態が、和歌山県ではありませんが、報じられたことも幾たびかありました。センターは権力を持たないだけに、暴力団の威嚇の中で癒着が生まれたりしないかという危惧もあります。そのような危惧をどのように防止されるつもりでしょうか。
野村證券や日興證券という日本を代表するような大きな企業が莫大な金を暴力団に提供するような時代であります。県下の企業の中でも、結構そのようなうわさが流されています。残念なことですけれども、県庁の幹部の職員が元暴力団の結婚式などへも出かけていくというような風潮もまだ残っています。至るところで癒着が相当進んでいると見なければなりません。新しく発足する暴追センターがそのようなことになってはならないという願いを込めながら、以上、暴対法とセンターに関係して、半ばの期待と半ばの不安を抱きつつ、警察当局がその任務を毅然として遂行されることを期待しながら質問するものであります。
続いて、拡声機の規制条例についてお尋ねをいたします。
この件につきましては、昨日からお二人の方が質問をされ、それに対する答弁が行われましたが、拡声機規制条例が発表されて以来、法曹界を初めとして各方面から言論・表現の自由を侵害するのではないかとの危惧が表明されております。私もまだまだ疑問点が残っておりますので、三たび質問をさせていただくわけでございます。私なりの疑問点を明らかにするために昨日の質問と重複する点が多々あろうかと思いますが、お聞きになられている議員各位にはお許しをいただきたいと思います。
通告した一番目は、本条例の提出の動機ということでありましたけれども、これについては昨日の答弁で、納得したわけではありませんが、答弁している意味はわかりましたので、質問は削除します。
二番目は、本条例の適用除外とそれ以外との関係についてお尋ねをしたいと思います。
除外するものの中には、例えば公職選挙法による選挙が挙げられています。これは、選挙になれば八十五デシベル以上の音量も許されるということ、すなわち八十五デシベル以上もの音量が必要なときもあろうと想定されているからだろうと思います。ところが、選挙期間以外の政治活動では八十五デシベルで規制される。同じ政治活動でありながら、選挙期間中だけは八十五デシベル以上出してもいいけれども、そのほかのときにはそれだけの音量を出してはならないと、こういう差別がついておるわけです。これは一体なぜでしょうか。どうして選挙活動と政治活動に区別されなければならないのでしょうか。
あるいは、国または地方公共団体の業務であれば八十五デシベルを超えてもよいとありますけれども、それでは、なぜ労働運動や市民運動なら八十五デシベルを超えてはならないのでしょうか。昨日の答弁では、通常の労働運動や政治活動には規制はかからないと答えておられましたけれども、条文を素直に読めば、規制の対象になっているのは明らかであります。
ちなみに、右翼の暴騒音は百デシベルをはるかに超えており、百二十に達していることさえあるのが実情ですが、規制の対象をなぜ右翼の騒音よりもはるかに低い八十五デシベルにしているのでしょうか。ここのところが全くわかりません。
昨日、答弁の中に、阪和線の踏切の騒音が八十五デシベルの例だと引き合いに出されておりましたけれども、人間の行う演説などと一定時間持続する列車騒音とを同一のように例示して印象づけようというのは余りフェアではないと指摘しておきたいと思います。常時八十五デシベルの列車騒音と最高値八十五デシベルの人の声とでは、体の感じ方は全く異なった印象を受けます。同時に、最高値として八十五デシベルを超えるような人の語りというのは通常六十デシベルぐらいのものであるということもひとつ念頭に置かなければならないと思います。そういう点で、この八十五デシベルが一律に、機械的に規制値になっているということは、どうしても理解できないことであります。
次に、街頭宣伝が警察官の監視下に置かれるのではないかという不安は依然として残ります。取り越し苦労ではないかと言われる方もおられますけれども、条文を素直に読めばそういうことになるわけです。法治国の住人であれば、同条例が施行されたならば八十五デシベルを心するのは当然の義務であります。消費税に反対でも払っているのと同じことであります。
一般政治活動や労働運動は取り締まりの対象ではないと言っておりますけれども、その保障はどこにあるのでしょうか。みずからの音量を規制するために音量測定器を持参して街頭宣伝をしなければなりません。八十五デシベルを超えるか超えないかは、この条例がある限り、当然警察は監視するでしょう。宣伝する者は監視を覚悟せねばなりません。少なくとも、警察がそうしようと思えば合法的に干渉することができるようになっているわけです。これでは自由な宣伝活動が困難になるのではないでしょうか。
次に、時間とか場所に関係なく八十五デシベルの規制がかかりますと、所によっては街頭宣伝が不可能な場所も直ちに出てまいります。
二月の末に、私は実際に測定器を持って実験をしてみたわけですけれども、その体験を少し話させていただきますと、和歌山駅頭などは、拡声機を使わなくても、何も話をしなくても常時七十デシベルぐらいの騒音が出ております。七十デシベルの騒音とはどんなものだろうかとお感じの方は、和歌山駅頭にお立ちになればおわかりになると思います。バスが通ってクラクションを鳴らすと、八十五デシベルはあっさりと超えてしまいます。ここでは、対向車線上の歩道の聴衆を想定して拡声機を使用しますと、暗騒音が七十デシベル前後ありますから、少なくとも七十デシベル以上でなければ対向車線上には聞こえてまいりません。低い音が七十以上ということは、力を込めて話をすると八十五デシベルをすぐに超えてしまうということです。こういうことになりますと、全くと言っていいほど拡声機の効果というものはありません。
ご承知のとおり、和歌山駅頭というのは、政治活動においても、政党の中央幹部の方々がしばしば演説をされるところであります。あの宣伝の音量は八十五デシベルをはるかに超えているものであります。そうしなければ街頭宣伝にならないからであります。このような繁華街あるいは暗騒音の高いところでは実質的に拡声機が有効性を失い、街頭の拡声機宣伝が行えないのと同じ状況に置かれるのが実態であります。
第五点として、昨日も質問をされて答弁がありましたが、警察官の恣意的な判断で拡声機宣伝に干渉される可能性があります。私どもが正常な形で街頭宣伝を行っておる場に右翼がしばしば押しかけてきて、暴騒音を浴びせかけることがあります。条例案五条は、このようなときに発せられる複合騒音の発生の防止のために必要な措置をとることができるとなっていますが、これでは正常な宣伝を行っていた者は全くたまったものではありません。四条、五条、六条については、警察官の恣意的な判断で街頭宣伝への干渉を容認する可能性は、昨日の答弁にかかわらず、依然として残っております。
また、この条例で右翼の暴騒音を本当に規制できるか、大いに疑問な点もあります。測定器の置かれているところだけを一時的に音を下げて、その場を離れるとまたわあわあとやり出す。イタチごっこが目に見えるようであります。
岡山県では同趣旨の条例を早くから持っていますが、二年前の日教組大会に押しかけた右翼に翻弄されております。数人は逮捕されたそうですが、結局は何の効果もなく、行政当局の及び腰もあって、公的な会場の使用取り消しなどが行われてしまったわけであります。イタチごっこをすれば、右翼はほとんど無傷で、暴騒音をまき散らすという目的を果たすというのが想定されるわけです。そのくらいの知恵は向こうも持っているのではないかと思います。
最後の質問ですが、百デシベルを超える右翼の暴騒音は許されるべきものではありません。しかし、この右翼の騒音というのは、八十五デシベルを前後として我々が、あるいは労働者が、市民運動がやっている街頭宣伝活動に比べて非常に少ない回数でもあります。そうすると、日常的な監視の対象は、右翼というよりも八十五デシベル前後で政治活動や労働運動、市民運動をやっている者にその条例は向けられるのではないかという懸念が十分にあるわけであります。
次に、弁護士会からも意見が寄せられているそうでありますが、やはり表現・言論の自由の侵害を懸念したものだろうと思われます。和歌山の権威ある法曹界からの意見です。どのように受けとめておられるか、明らかにしていただきたいと思います。
以上で、私の第一問を終わります。
○議長(山本 一君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
米軍機の低空飛行訓練について知事としていかに処するかということでございます。
過去二度にわたり、奈良県において米軍機による事故が起こっておりまして、県内における米軍機による低空飛行が県民に不安と不測の事態発生の懸念を与えておることは、まことに遺憾に思っておるところでございます。このため、先月末に担当者を外務省に派遣し、事実確認の上、飛行中止を要請したところでございますけれども、県民の生命・財産を守るために、状況に応じ、危険性の高い本県での低空飛行の中止をなお一層強く申し入れてまいりたいと思っております。
県の対応等につきましては、総務部長から答弁いたします。
○議長(山本 一君) 総務部長山中昭栄君。
〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 米軍機の低空飛行訓練につきまして、補足をしてお答え申し上げます。
昨年十月末に奈良県においてワイヤロープ切断事故が発生をし、知事名で低空飛行の中止の申し入れを行いました。外務省からは、調査結果が判明するまで同地域の飛行訓練を一時中止するという回答を得たところでありますが、ことしに入り、県内で二月五日から同月末までに延べ十一日間にわたって低空飛行が確認をされました。これに対して、二月末に知事の命を受けて担当者を外務省に派遣し、事実確認等を行ったところでございます。
外務省では、二月に入っての県内での飛行は空母インディペンデンス及び岩国の海兵隊からの飛行で、通常の演習の一部である飛行を行っている、また昨年の事故に対する同地域での飛行訓練の一時中止については、当該地域とは十津川村を含む奈良県南部を指すという回答であったために、県内での飛行状況と県の地形、奈良県の事故現場との位置関係、事故に関連する同施設の県内での配置状況等を説明し、奈良県南部と同じく、本県での低空飛行の危険性を指摘し、また地域住民に不安と不測の事態発生の懸念を与えている現状を訴えて、その際、改めて米軍に対して低空飛行の中止について適切な措置をとるよう強く要請をしたところでございます。
今後とも、粘り強く低空飛行中止の申し入れを行ってまいります。
○議長(山本 一君) 企画部長川端秀和君。
〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 紀の川リバーサイドグリーンベルト構想についてお答えを申し上げます。
国、県、和歌山市が一体となり、紀の川河川敷の不法占用の解決や民地の買収を進めながら、河口部から岩出橋までの約十六キロメートルの区間において、自然に優しい市民の憩いの場としての公園整備を紀の川リバーサイドグリーンベルト構想として推進してまいりたいと存じます。
また、国において実施している低水護岸の建設に当たっては、アシなどの水生植物の群生地を残したわんどや親水護岸を整備するとともに、同構想では、野鳥公園、水生植物公園、バードウオッチング広場、野草公園など、生態系に配慮した、自然に満ちたふるさとの河川としての整備を図ることとなってございます。
議員ご質問の意見の反映についてでございますが、国、県、和歌山市当局のみならず、各界各層の方々にも参加していただく場を設け、ご意見をいただきながら進めてまいりたいと考えてございます。
次に、堤外民地の処理の仕方についてでございますが、現在、岩出から下流の約三百ヘクタールの河川敷のうち約六十ヘクタールの民地がございますが、大堰事業の進捗に合わせ、国、県、市が協調のもと、地権者の方々に対して十分説明を行い、ご理解をいただきながら進めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 土木部長山田 功君。
〔山田 功君、登壇〕
○土木部長(山田 功君) 紀の川リバーサイドグリーンベルト構想に関連する公共下水道の整備についてお答えを申し上げます。
紀の川流域内における下水道事業は、橋本市、高野口町、九度山町、かつらぎ町を対象とした紀の川流域下水道伊都処理区、和歌山市が行っている公共下水道、貴志川町においては特定環境保全公共下水道を実施しております。また、那賀郡六町を対象とする下水道全体計画の策定を進めることといたしております。
当面の目標といたしましては、平成三年度を初年度とする第七次下水道整備五カ年計画の期間内に紀の川流域下水道伊都処理区の一部供用開始と那賀処理区の事業着手に向けて努力をいたします。それとともに、和歌山市の公共下水道の促進について、引き続き指導をしてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 保健環境部長遠藤 明君。
〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 紀の川リバーサイドグリーンベルト構想に関連して、紀の川の浄化についてお答え申し上げます。
紀の川の水質は、ここ数年、環境基準とされているBOD二ミリグラム・パー・リッター前後で推移してございます。この水質汚濁の要因については、生活系の排水による汚濁負荷量が約七五%となっております。この削減には、下水道や農村集落排水処理施設、し尿と台所排水とを合わせて処理する合併処理浄化槽、そして家庭でできる台所排水等の生活排水対策があり、これまで啓発パンフレット等を作成し、環境月間等、機会をとらえて啓発に努めているところですが、平成四年度は合併処理浄化槽対策費一億六千八百三十六万六千円、生活排水対策費七百六十三万四千円を計上して取り組んでまいる予定でございます。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 警察本部長中長昌一君。
〔中長昌一君、登壇〕
○警察本部長(中長昌一君) まず、暴力団対策新法に関する鶴田議員のご質問にお答え申し上げます。
初めに、暴力団対策新法の施行に伴う県警察の決意と法施行に向けての体制について申し上げます。
本年三月一日、いわゆる暴力団新法が施行されましたが、県警察としては、法を円滑に施行するため、昨年七月、暴力団対策法施行準備室を設置し、法施行に向けた諸対策を推進してきたところであります。
また、法施行後における暴力団対策を強力に推進するため、去る三月一日付で、県警察の総力を結集した、総勢三百二十名体制の和歌山県警察暴力団取締特別対策本部を設置し、中でも特に寡占化の著しい山口組系団体の徹底検挙を図るため、各部門のベテラン捜査員による山口組特別捜査班を設置したところであります。
県警察といたしましては、暴力団対策を最重点課題として、暴力団対策法の施行を機に暴力団を壊滅し、暴力団による被害から県民を守るため全力を挙げてまいる所存であります。
次に、いわゆる暴力団の衣がえに関するご質問であります。
山口組におきましては、傘下団体に対し、組事務所所在地において株式会社の設立登記をせよとの指示をしておりまして、本県においても数団体の例が見られているところであります。暴力団がいかにこのような工作を行っても、それは偽装工作にすぎず、暴力団としての実態が変わらない以上、その暴力団を指定することに何ら影響はないと考えております。
なお、公共事業等からの暴力団の排除につきましては、昭和六十二年に県警察と県土木部との間で、県等の発注する建設工事から暴力団関係者を排除することについて合意して暴力団排除を進めているところでありますし、また各市町村との間でも同様の措置をとっているところであります。
いわゆる暴追センターのご質問についてお答えをいたします。
暴追センターの業務の中には、暴力団被害に係る相談業務などのように警察が現在行っているものも含まれていることはご指摘のとおりであり、このようなものについては、警察と暴追センターとの間において適切な機能分担を図りつつ対処してまいりたいと考えております。
いずれにいたしましても、暴力団対策は、ひとり警察による活動のみで効果的に行い得るものではなく、民間における暴力追放運動が大きく県民を巻き込んだ形で行われることによって、初めて暴力団の排除が実現するものであります。
この暴追センターは、このような県民総ぐるみの運動の中心となって活動することが期待されているものでありまして、非常に大きな意義と役割を持っているものと考えております。
暴追センターの業務に関する責任の所在についてであります。
この暴追センターはあくまでも民間の団体でありますので、第一次的には暴追センター自身がその責任を負うべきものであります。しかしながら、この暴追センターは、公益法人として、また暴力団対策法の規定による指定を受けた後は暴力団対策法上の指定法人として公安委員会の指導監督のもとにあるものですから、公安委員会はその限りにおいて暴追センターの活動について責任を負うこととなるものであります。
次に、緊急事態の対応についてであります。
暴追センターで行う業務と警察行政とは密接に関連する業務でありますから、警察は暴追センターで行う業務を全面的に支援し、また協力することといたしております。そのため、暴追センターとは常に緊密な連携を保ってまいりますので、例えば暴追センターに寄せられた相談の中に刑事事件に関するものがあれば、直ちに警察が通報を受け、これに対処することとなるのであります。
暴追センターの基金に関するご質問であります。
県民総ぐるみによる暴力団排除活動を展開するために、県及び市町村のほか、民間の各種暴排組織及び暴力団排除の趣旨にご賛同した方々の出捐により基金が構成されているものであります。
なお、当然のことながら、暴追センターの活動はすべての暴力団による被害者、暴力団排除活動関係者等を対象として行われるものであって、ご懸念されるようなことは全くありません。
次に、役員構成についてであります。
役員構成につきましては、地域、職域における暴力団排除組織の関係者、関係行政機関の職員、暴力団排除の趣旨に賛同する方々によって構成されており、それぞれの方々の大所高所からする視点を初め、知識、経験が反映されることによって暴追センターの適切な運営が図られるものと考えております。
暴追センターと暴力団との癒着が生じないかとのご懸念であります。
暴追センターにおいて相談に当たる者については、弁護士、保護司、少年指導委員等で一定の資格を有する者を任命することとしておりますし、警察としても暴追センターと密接な連携をとってまいる所存でありますので、暴追センターの職員が暴力団の威嚇に屈したり、暴力団と癒着を生じたりすることはあり得ないと信じております。
次に、拡声機による暴騒音の規制に関する条例についてのご質問にお答えを申し上げます。
第一点目の、八十五デシベルの規制値等についてでございます。
本条例は、拡声機による県民の日常生活を脅かすような暴力的な騒音から平穏を守るために制定をお願いしているものでございます。一方、拡声機は、言論・表現の身近で重要な手段として広く活用されているものでございますので、その重要性にかんがみ、選挙運動のように法律で規定のあるものや公共性、公益性の極めて高いもの、また盆踊りや運動会のように地域の慣習として行われており、住民も納得をしているものについては、たとえ規制の基準を超える場合があっても本条例の適用から除外することとしたものであります。したがいまして、適用除外としたものについては、常に本条例の規制値を超える音量が必要であるからということで適用除外としたものではございませんので、ご理解をいただきたいと思います。
八十五デシベルという規制値につきましては、主観的判断の入る余地のない基準で、しかも県下のどの地域の住民にとっても受忍の限度を超える音量ということで、騒音規制法に基づく環境基準や日本産業衛生学会の騒音許容基準、さらにはILOの騒音限界値等を総合的に勘案をし、また他県の同条例をも考慮して決定したものでありまして、合理的な数値であると考えております。
なお、本県の公害防止条例では、工業地域及び工業専用地域における規制の基準を七十五ホンと定めるなど、より厳しい基準となっております。
第二点目でございますが、本条例が制定されれば拡声機の使用が警察の監視下に置かれることになるのではないかという点についてであります。
本条例は、あくまでも県民の日常生活を脅かすような拡声機の使用について、必要な規制を行うことにより地域の平穏を保持し、もって公共の福祉の確保に資することを目的とするものであります。したがいまして、通常行われている政治活動、市民運動、労働運動等に伴う拡声機による街頭宣伝活動は、それが一般県民からの理解を得ている常識的な範囲である限り、本条例の規制の対象とするものではございません。
また、本条例では、常識の範囲を超え、県民の日常生活を脅かすような拡声機の使用があった場合においても直ちに取り締まるというものではなく、科学的な機器によりその騒音を測定し、八十五デシベルを超えている場合に初めて警察官の停止命令が出されるわけでございます。そして、この停止命令を受けた場合、それに従って音量を八十五デシベル以下に下げれば、それで取り締まりを受けるということはありませんので、街頭宣伝活動を行っている者がみずから発している音の大きさを知らない間に摘発をされるということは決して起こり得ないわけでございます。
第三点目、本条例の規制値では拡声機を使用した活動が自主的にできなくなるのではないかという点についてであります。
本条例案の策定に当たりましては、和歌山市を初め県下七市から日常騒音が比較的高いと認められる場所三十三カ所をピックアップして、昼間の騒音状態を測定いたしました。その結果、議員ご指摘のとおり、最も交通量の多い場所の一つと言われている旧近鉄前交差点においても六十五ないし七十デシベルでございました。また、本県の平成三年版の「環境白書」においても同程度の騒音状態となっております。
このような騒音状態のもとにおきましては、八十五デシベル以上の音量を出さなければ街頭宣伝活動ができないといったことはないと考えております。
第四点目の、警察官の恣意的な運用がなされるのではないかというご質問でございます。
表現の自由等、憲法に保障された基本的人権は最大限に尊重されるべきものであることは、申し上げるまでもないことでございます。本条例は、街頭宣伝活動そのものやその内容を規制するものではなく、県民の日常生活を脅かすような暴力的な騒音を規制するものでございます。したがいまして、通常行われている拡声機を使用した政治活動、市民運動、労働運動等の街頭宣伝活動が一般県民の理解を得ている常識的な範囲である限り、本条例の規制対象とするものではありませんし、それらの行為に干渉したり、常時監視下に置くといったようなことは毛頭考えておりません。
このような考え方を明確にするためにも、第七条において、「この条例の適用に当たっては、表現の自由その他の国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」と明示しているところであり、この条文を十分尊重し、慎重な運用に努めてまいりたいと考えております。
第五点目、本条例の有効性についてのご質問であります。
実際の現場において、ご指摘のような事態が生じることも十分予想されます。しかし、ご指摘の内容の本質は、条例の有効性といったものではなく、取り締まりの技術的な問題あるいは取り締まりの方法論であると考えております。
そこで、このような場合においては、本条例第四条の停止命令、第五条の勧告、さらには第六条の立入調査を有機的に活用し、地域住民の皆様の平穏を速やかに回復するような取り締まりに努めてまいりたいと考えております。
なお、本条例と同様の条例を制定している石川県等八県においては条例の効果的な運用を図り、暴騒音の抑止に大きな成果を上げていると聞いております。
第六点目の、本条例の適用対象等についてでございます。
本条例は、あくまでも県民の日常生活を脅かすような拡声機の使用を規制するものであり、また条例提案の契機となった理由などから、条例施行後の主たる対象も当然限られたものとなると考えられます。
そこで、議員ご指摘の、通常行われている市民運動、労働運動、政治活動に伴う拡声機による街頭宣伝に対する本条例の適用についてでありますが、それが一般県民から理解を得ている常識的行為と考えられる限り、この条例の規制の対象と考えておりません。
なお、従来から行われている労働運動、市民運動等に伴う拡声機の使用について、県民等からの苦情や取り締まり要望等は出てきておりませんので、これらは県民の日常生活を脅かすような暴力的な騒音を発するような拡声機の使用形態とはなっていなかったと理解をしております。
第七点目の、弁護士会等からの意見についてどう考えるかということであります。
ご指摘のような意見があることは私どもも十分承知をいたしておりますし、真摯に受けとめております。そのご意見の多くは、常識の範囲を超え、県民の日常生活を脅かすような暴力的な騒音に対する規制や取り締まりは必要であるとした上で、本条例の運用に当たって、表現の自由、その他の国民の権利を不当に侵害するおそれはないのかといったものであります。
昨日、浜本議員にお答えいたしましたとおり、本条例の適用に当たっては、本条例の目的を踏まえ、また第七条の条文を尊重し、慎重な運用に配意してまいることを改めて明言し、ご懸念されるようなご心配はないことを明らかにしておきたいと思います。
以上でございますが、本条例の制定にご理解賜りますよう、お願い申し上げます。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
33番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 再質問をさせていただきます。
米軍機の問題です。
遺憾の意を表明されるのは当然だと思いますけれども、私は、こういう事態に立ち至ったということに対して知事の怒りをきっちりと示していただかなければならんと思うんです。機会を見て要請をしていく、次また飛んだら言うよということでは、それこそイタチごっこであって、何ら効果的な措置にはならないかと思います。やはり間髪を入れず、知事の方から抗議の意思を込めて毅然として中止を求めるというふうにならなければならないのではないかと思いますが、その点、いま一度、知事のご意見を聞かせていただきたいと思います。
次に、紀の川の問題です。
行政と住民が心を一つにして自然を守っていこうという運動は、なかなか簡単なことではないと思うんです。粘り強さが求められます。一度このビラをまいたら、あるいはいろんな実験をしたからといって、後々そういう運動が起こって自覚的に川をきれいにしようという状態になるかというと、なかなかそうはならないと思います。そのためには、やはり持続的な啓発活動、住民と共同したいろいろな運動が必要だろうと思いますが、それには一定の金が要ります。
ことし、いろんなものを含めて全県下で七百万円余りが提案されておるようですけれども、しかし、それでは実質的な仕事はできないというのが現実であろうかと思います。どのような事業が予定されているかとお聞きしても、住民運動を啓発し、これを持続的にやっていこうというような、運動に資するというようなところまで立ち至っていない、政策化されていないというのが現実であろうかと思います。非常に地味な仕事ですけれども、この運動がない限り、清流を取り戻し、自然をよみがえらせていくということにはならないかと思いますので、ひとつぜひとも力を入れて頑張っていただきたいと思います。
拡声機の使用規制の問題について再質問いたします。
日常生活を脅かすものを排除しようということでこの条例を提案されたのであるならば、なぜ八十五デシベルという低レベルにするのか、はっきりいたしません。右翼の騒音は、先ほども申し上げたように百をはるかに超えているところであります。今まで、日常的な政治運動、労働運動などでの拡声機使用の中では、八十五デシベルというのはしばしば出されていたと思いますけれども、それでも住民から苦情がなかったということは、その規制値が適切でないのではないかということを物語っていると思います。暴騒音という規定が非常にあいまいであります。
弁護士会の意見の中にも、八十五デシベルという音量の合理性についての検証が十分でないということが出されているわけです。こういうことはもっともっと研究しなければならない課題だと思うんです。そういう点で、弁護士会の要請を真摯に受けとめるというのであれば、こういう問題をもう少し幅広く検討するという機会を持つのが当然ではないかと思うわけですが、いかがか、お尋ねをしたいと思います。
それから一番大きな問題は、従来の運動には適用しないということを本部長は再三申しておられましたけれども、そういうことはこの条文の中にはないわけです。適用除外の中に適切な表現でもあれば別ですけれども、そういうこともないわけです。そこに、警察官の恣意的な判断によらざるを得ないという問題が起こってくると思うわけです。こういう点は明確にしておかない限り、従来の運動にはそういうものは規制の対象としないということが薄れていきます。明文化されていない限り、わからないわけです。現在の中長本部長のときはよかったけれども、本部長がかわったら、これはまた変わってしまったということになりかねません。そういう保証はどこにあるのかというと、実際にないわけです。したがって、こういう点では、この条例案はそのまま認めるわけにはいかないと思います。
それから、表現の自由を侵さないというようなことですけれども、ある程度の音量が規制されることによってそこで拡声機宣伝ができないということになれば、表現の自由の侵害ということになります。八十五デシベルという規定がある限り、あるいはまた警察官の恣意的な判断による干渉が条例的には許される限り、そういうことは起こり得ると思います。そういう点での明確な回答がありません。それこそ本部長の恣意的な意見ではなかろうかというような感さえいたします。その点がこの条例に欠落していると思います。
それから、これは基本的人権にかかわるものであり、かつ一つの地方に限らずに、全国的な課題でもあるわけです。例えば、和歌山では八十五、どこかへ行ったら六十、あるいは北海道へ行ったらまた違う値があると、そういうことだってあるわけです。したがって、これは地方自治体でこういうような規制を設けるという性格ではないと思うし、自治体になじまない行為ではないかと思うわけであります。
以上、再質問をいたします。
○議長(山本 一君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
米軍機の低空飛行でございますけれども、先ほど述べましたように、毅然たる態度で対処してまいります。
○議長(山本 一君) 警察本部長中長昌一君。
〔中長昌一君、登壇〕
○警察本部長(中長昌一君) 鶴田議員の再質問にお答えを申し上げます。
まず第一点は、八十五デシベルというのは低レベル過ぎるではないかということでございます。
八十五デシベルにつきましては、県下のどこの地域の、どの住民にとっても受忍し得る限界値として設定したものであります。
ご参考までに申し上げますと、ILOの騒音の限界値は、注意限界レベルとして八十五デシベル、聴力障害を生じるレベルとして九十デシベルということであります。さらに具体的な例を申し上げますと、七十デシベルを超えた場合には電話による会話が困難になり、八十デシベル以上では人は極めてうるさいと感じ、九十デシベルを超えた場合には自律神経や内分泌系に変化を与え、仕事におけるエラーが増大する等の身体的障害が出るということであります。
こういうことを勘案して八十五デシベルという基準を決めたわけであります。したがいまして、この基準を変更する考えはございません。
次に、適用除外の問題でございます。
先ほどもお答えいたしましたとおり、本条例を提案するに至った主な動機は、さきの教育研究全国集会等における一部右翼団体の暴騒音を何とかできないかという県民の声が寄せられたことからであります。しかし、右翼による宣伝活動であれ、政治活動ということでありますので、ご指摘のような政治活動、市民運動等を除外するといったことになると、この条例運用の有効性という問題、もう一つは憲法の法のもとの平等という点においても問題がありますので、ご理解いただきたいと思います。
三つ目は、第七条の規定があるけれども、依然として警察官による恣意的な取り締まりになるのではないかというご質問であります。
本条例により規制される八十五デシベルという規制値は、主観的判断の入る余地のない基準として設定されたものであります。また、本条例を適用するに当たっても、暴力的な拡声機の使用があれば直ちに取り締まるというものではなく、科学的な機器により、条例の規定に従った方法により測定をして八十五デシベルを超えている場合に初めて警察官の停止命令が出されることになるわけであります。さらに、運用に当たっては第七条の趣旨にのっとって行うということを申し上げております。したがいまして、現場の警察官の恣意的な判断で運用するということはありません。
最後に、このような問題は全国的な課題でもあるから地方自治体で規制を設けるというものにはなじまないのではないかというご質問であります。
ご指摘のように、暴力的な騒音の規制を全国共通の法律で行うべきものであるという考え方もないわけではありません。しかし、平穏で静かな生活というものは、それぞれの地域住民がみずから守ろうと努力することによって保持されるものであると考えているところであります。したがいまして、全国画一的な法律によって一律に定めるよりは、地域住民が住民の意思として定める条例によって行われることの方が地域の実情と県民の要望に的確にこたえられるものであると考えております。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
33番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 再々質問をいたします。
先ほど、八十五デシベルの被害についてお話がありましたけれども、それは一定の持続する音を言っているわけであって、街頭宣伝等に出てくる音で、あるいは自動車等の瞬間的に出てくる音でそういう被害が出ているというような事態は決してありませんし、先ほど挙げられた例等についてもそういうことを前提にしているのではないと思いますので、本部長の答弁というのは、私に対する答えにはなっておりません。例えば和歌山駅の前で、自動車のクラクションの音によって肝臓を悪くしたというような話はいまだ聞いたことがないわけであります。
次に、法のもとの平等とおっしゃいました。私は、それが問題だと言っているんですよ。右翼にだけ適用するのではなく、中道にも左翼にも、どこにでも使えるんだと、そういう問題でしょう。それが「法のもとの平等」なんですよ。だから我々だって、当然、法のもとに平等であるべきことを求めます。したがって、先ほどから言っているようなことでは、従来から行われていた八十五デシベルを超えるような運動にも適用されるのではないかと、そこを尋ねているんです。そこのところが明確でない。そういう問題です。
それから、このような問題を地方自治で解決するのが妥当だと。いろんな見解があろうかと思いますけれども、基本的人権の問題が論議されているときにこういうことを一つの地方自治体の中でやられるというのは、まだまだ論議の余地のあるところではないかと思います。
答弁は不要です。要望しておきます。
○議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(山本 一君) この際、暫時休憩いたします。
正午休憩
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