平成3年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)
県議会の活動
議 事 日 程 第五号 平成三年七月五日(金曜日)
午前十時開議
第一 議案第八十四号から議案第百九号まで(質疑・委員会付託)
第二 一般質問
第三 請願付託
会議に付した事件
一 議案第八十四号から議案第百九号まで(質疑・委員会付託)
二 一般質問
三 請願付託
四 休会決定の件
出 席 議 員(四十六人)
1 番 尾 崎 要 二
2 番 中 村 裕 一
3 番 下 川 俊 樹
4 番 石 田 真 敏
5 番 中 村 隆 行
6 番 木 下 秀 男
8 番 藁 科 義 清
9 番 北 村 翼
10 番 小 川 武
11 番 上野山 親 主
12 番 井 出 益 弘
13 番 町 田 亘
14 番 尾 崎 吉 弘
15 番 門 三佐博
16 番 西 本 長 浩
17 番 高 瀬 勝 助
18 番 冨 安 民 浩
19 番 和 田 正 一
20 番 阪 部 菊 雄
21 番 平 越 孝 哉
22 番 大 江 康 弘
23 番 岸 本 光 造
24 番 山 本 一
25 番 吉 井 和 視
26 番 浜 田 真 輔
27 番 堀 本 隆 男
28 番 宇治田 栄 蔵
29 番 富 田 豊
30 番 中 村 利 男
31 番 馬 頭 哲 弥
32 番 宗 正 彦
33 番 鶴 田 至 弘
34 番 上 野 哲 弘
35 番 村 岡 キミ子
36 番 松 本 貞 次
37 番 木 下 義 夫
38 番 和 田 正 人
39 番 中 西 雄 幸
40 番 橋 本 進
41 番 野見山 海
42 番 森 正 樹
43 番 浜 本 収
44 番 新 田 和 弘
45 番 浜 口 矩 一
46 番 森 本 明 雄
47 番 山 崎 幹 雄
欠 席 議 員(一人)
7 番 岡 本 保
説明のため出席した者
知 事 仮 谷 志 良
副知事 西 口 勇
出納長 梅 田 善 彦
知事公室長 市 川 龍 雄
総務部長 山 中 昭 栄
企画部長 川 端 秀 和
民生部長 吉 井 清 純
保健環境部長 遠 藤 明
商工労働部長 中 西 伸 雄
農林水産部長 若 林 弘 澄
土木部長 磯 村 幹 夫
企業局長 高 瀬 芳 彦
以下各部次長・財政課長
教育委員会委員長
上 野 寛
教育長 西 川 時千代
以下教育次長
公安委員会委員 玉 置 英 夫
警察本部長 西 村 浩 司
以下各部長
人事委員会委員長
寒 川 定 男
人事委員会事務局長
代表監査委員 宮 本 政 昭
監査委員事務局長
選挙管理委員会委員長
稲 住 義 之
選挙管理委員会書記長
地方労働委員会事務局長
職務のため出席した事務局職員
事務局長 倉 本 辰 美
次 長 中 村 彰
議事課長 中 西 俊 二
議事課副課長 松 田 捷 穂
議事班長 松 谷 秋 男
議事課主事 古 井 美 次
議事課主事 松 本 浩 典
総務課長 田 上 貞 夫
調査課長 大 畑 巌
(速記担当者)
議事課主査 吉 川 欽 二
議事課速記技師 鎌 田 繁
議事課速記技師 中 尾 祐 一
議事課速記技師 保 田 良 春
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午前十時五分開議
○議長(山本 一君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(山本 一君) 日程第一、議案第八十四号から議案第百九号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
43番浜本 収君。
〔浜本 収君、登壇〕(拍手)
○浜本 収君 四点、質問をいたします。
その第一点は、県の燦黒潮リゾート構想における重要な位置づけの中で田辺市が進めております田辺湾総合リゾートの遅滞の理由と、リゾート形成のあり方についてであります。
昭和六十三年八月、総合商社丸紅と田辺市がタイアップして田辺湾総合リゾート開発計画を発表。新聞紙上では、「『東洋一』へ夢ふくらむ」「末はモナコか、リビエラか」「マリーナに千五百隻収容、県は全面支援」と、一斉に報道したところであります。
ちなみに、知事は本計画について、「リゾート開発計画が、県の推進している燦黒潮リゾート構想の主要民活プロジェクトとして、重点整備地区である田辺・白浜地域の雇用の創出、産業の振興等、地域の活性化に大いに寄与するものと確信しており、今後、当計画の実現に向けて積極的な取り組みを行っていく」との談話を発表、また田辺市長は、「今後、地元関係者との話し合い、関係法令との調整など、たくさんの仕事がございますが、市といたしましては、市民合意の上に立ち、全力を傾注してまいります」との決意を述べ、さらに龍野丸紅社長は、「当社は、田辺湾の持つ美しい自然を生かした国際的な総合リゾート開発を目指しており、今回の大規模マリーナを核とした海洋リゾート事業を田辺市と共同して積極的に進めていく所存であります」と、それぞれの方々が並み並みならぬ抱負と決意を開陳したところであります。
発表当時は一千億を投じるとのことだったが、その後、平成元年二月、基本協定を調印、二千億をかけるとし、平成四年春に着工して七年に一部をオープンさせるとの計画を発表。同計画によれば、田辺湾に面した新庄町内ノ浦、鳥の巣半島の陸地部分百十ヘクタール(甲子園球場の約四十倍強)を開発、六百隻収容のマリーナ、七百五十室のリゾートホテル、十四棟二千八百室のコンドミニアムやマンションと五百五十戸の別荘のほか、テニスコート、プール、人工ビーチなどをつくる。完成すると、国内外から長期滞在の観光客、年間二百万人の受け入れを想定、将来は大学をもつくり、若者に働く場所ができ、市税増収やゆとりのある市政が可能になるとのことであります。
この計画発表後の九月の県議会におきまして私は、リゾート形成に最も必要な住民合意の貫徹、自然優位に立つ開発のあり方、田辺湾の汚染進行の状況と本計画との関連、湾内に千五百隻のヨットを配置するという計画の不合理性等々、幾つかの問題を取り上げたが、その後のこれらの問題の解明や進行状況はつまびらかではありません。
歌ではありませんが、「夏が来れば思い出す」──発表後、もう三年目の夏がやってまいりました。予定では明春四月着工とあったが、華々しい滑り出しに比べ、本リゾート開発は見えてこない。そして六月二十三日、地方紙は「丸紅開発に暗雲」「元請業者撤退の動き?」の記事を大きく掲載。おくれている理由と今後の見通しについて、明らかにされたいのであります。
二つ目。平成元年二月、田辺市の紀南文化会館で行われた田辺湾岸総合利用とリゾート開発シンポジウムは、燦黒潮リゾート構想の概要と田辺湾岸総合利用計画の概要の中で、特に地域社会の対応として、リゾート地の形成は開発地区だけでなく地域全体が一丸となって取り組まなければならない地域振興策だとし、地域住民みずからが時代の流れを読み、従来の考え方に固執することなく、いかに参画できるかという視点のもとに積極的に取り組む必要があるとし、また、地元住民の大多数が望むリゾート地を形成するためのコンセプトを構築し、そのコンセプトのもとに推進する必要があると述べているが、その言やよし。しかしながら、予定どおり事が運ばないためか、何が原因なのか、対象地区からも、それを包む地域全体──もちろんこの場合、白浜も入ってございます。権利を私も確保しておるつもりであります──からも、その迫力が伝わってこない。それはなぜだろうか、あわせて所見を伺う次第であります。
三つ目。三年前、本計画の発表時には一坪五万円内外と言われていた地価は、今、十倍から十五倍に高騰している。もちろん、本計画が地価高騰のすべての要因ではないにしても、この計画が地価高騰を促進したことは否めない事実であります。
最近、口を開けば「リゾート」という言葉が世の中の救世主のごとく言われている風潮もあるけれども、リゾートといえばたくさんのマンションを建てて売ること、ゴルフ場をつくることといった傾向すら感じるが、マンション建設はマンション建設であり、ゴルフ場建設はゴルフ場建設であります。本来のリゾートの形成は、自然との共生、空間とゆとりをもたらす憩いの場の形成であり、人々が思いのままリラックスして、用意されているいろいろの施設を活用し、また迎える人々の真心のこもった対応、そして何よりも該当地の住民が安んじてともに参画し得る適正規模のものであることが望ましい。
最初のリゾートの感想というか、それについては、去る三年前に発表されました、オーストラリアへ行ってこられた石田真敏君の報告書の一部を引用させていただきました。そして、もう一度言いますけれども、何よりも該当地の住民が安んじてともに参画し得る適正規模のものであることが望ましいというのは、不肖、浜本の意見であります。
「ローマは一日にして成らず」。一挙に年間二百万の長期滞在の観光客を受け入れる想定に立つことは、言うはやすく実現には困難を伴う。田辺市当局と議会は今、この田辺湾岸のリゾート開発計画に懸命の努力を払っているところでありますが、私はその実現を危惧しつつ、県当局のご所見を伺うものであります。
次に私は、本議会の昨日の野見山議員の質問に対する答弁の中にもございましたが、いわゆる「TAP''90S」の成果とその報告書の一部に触れながら、観光問題について、例によって小さな問題を二点質問いたします。
紀伊半島観光立県推進地方会議は、この六月五日から三日間、和歌山、三重、奈良の三県で開催。本会議は、紀伊半島三県の観光の実情を踏まえ、一、観光資源、観光施設、二、交通アクセス、三、広域観光、四、サービス、人材、PR等々、必要な観光振興方策について検討、今後の推進の必要性をより認識する立場からも、三県観光振興懇談会を今後行うということを決定いたしました。
報告書は、交通アクセスの分科会での基本的な考え方の一つとして、交通機関における乗り心地の改善に向けて設備、機能面のより一層の改善、特急くろしおの新大阪乗り入れ本数の増加の検討、特急南紀の本数増加と新型車両の導入による大幅なスピードアップ等、輸送力の増強等々が強調されているが、特にその報告書のまとめにある旅行の楽しさの演出という内容、すなわち交通機関に乗ること自体が旅行目的ともなるような楽しい車両等の交通機関への導入を検討する必要があると指摘しているけれども、特急くろしおの現状を見るにつけ、ぜひ早急に是正すべしと強調しておきたいのであります。
車を運転することができない私は、いつもこの電車に乗ります。この電車に乗る私は、以前、車内放送の感想を少し取り上げたことがございますが、最近のアナウンスは随分改善されたことを、関係した者として一人ひそかに喜んでおります。しかし、きょう取り上げます左右に大きく揺れるこの電車は、旅行の楽しさの演出などとはほど遠いものである。満員で立ち席を余儀なくされたり、または車中の移動の場合などには、乗客は必ずといってよいほど酔う始末であります。乗ったことがある方、いらっしゃいますか。時々、気候や自然の変化のため飛行機や船で乗客が酔う場合もあるけれども、それとこれとは別であります。全国にこのような例は余りないと思う。これが改善を要望し、県当局を煩わす次第であります。
二つ目。報告書は現状分析の上に立って観光方策についての必要な幾つかの提言を行っているが、紀伊半島における海の価値と海の利用等について、ややトーンが低いのではないかと私は思う。もちろん、当然のことながら、海洋スポーツ、海上交通の整備、クルージング時代への対応のための客船専用埠頭の整備、大型客船の寄港促進の検討を取り上げているが、私は少し角度を変えて、以下、質問を試みたいと思います。
一昨年から本県も参画し検討してきた大阪湾ベイエリア開発推進協議会の基本方針としての開発整備グランドデザインは、大阪湾ベイエリア開発整備の方向として、なぎさ海道と白砂青松公園の建設を取り上げていますが、なぎさ海道については、大阪湾ベイエリアの景観形成のため、大阪湾ベイエリアの諸都市は海への道、海辺をめぐる道をシンボルロードとして整備する必要があるとし、また、白砂青松公園の建設については、大阪湾の水辺はかつて輝く白砂と松林によって全国でも有数の美しい浜辺を形成していた、その姿を二十世紀のメモリアルとして望ましいスケールで復元し、内外の人々にその美しさを紹介する記念公園を整備するとしております。
この提言は、ひとり、ああ大阪湾のことやなと思ったら大間違いであります。大阪湾ベイエリアのこととして見るのではなくて、まさに誇るべき美しい海岸を持つこの紀伊半島で実現すべき課題でなければならないと私は思う。ご所見を伺う次第であります。
次に私は、教員定数の問題と高校募集定員発表の時期について触れて質問をいたします。
六月十九日、読売新聞は、補充講師確保キャンペーンとして「退職先生 カムバックして」との記事を掲載。それによれば、「県教委は、公立学校教員の産休、育児休暇などの補充のため、定年退職者を対象に、常勤、非常勤講師として教壇に再登壇してもらう『ティーチャーズ・バンク制度』を設けているが、人材確保が難しいと判断。地元のテレビや広報紙などを通じて、『やる気のある退職先生、カムバックして』と、バンク登録促進キャンペーンを展開することを十八日決めた。 教員の病気による長期休暇、女子教員の産休、育児休暇をカバーする常勤、非常勤講師は、従来、教員採用試験に合格した教員欠員待機者や、教員免許を持つ教員志願者で対処してきた。 ところが、それでも足りず、県教委は、昭和六十二年度に高校、平成二年度から、小、中学校のティーチャーズ・バンク制度を設け、退職教員のやる気に訴えてきた。 本年度は、高校七十七人、小、中学校十九人の計九十六人が同バンクに登録した。 うち実際、教壇に立ったのは、通勤距離などの関係で、現在までに計八十三人。 ところが、▽定年退職(六十歳)を待たず退職した人が今春、例年より約五十人多かった▽県立高校が入学定員を増やしたため教員が不足気味──などの要因が重なり、今後、常勤、非常勤講師の慢性的な不足が予想される事態となっている」。
補充講師確保キャンペーンの解説は今読み上げたとおりでありますが、一つ、新学期が始まって二カ月、もう三カ月になろうとしている。通常、一般の企業であれば、こんな措置はよほどの不測の事態が生じない限り起こり得ることではない。それは、確固とした教育行政、教育理念の欠如、それがそうさせているのではないかと私には思えるが、ただしておくものであります。
二つ目。既に小・中学校の四十人学級などを主な内容とする第五次教職員定数改善計画は、今年度十二年目にして国の段階で終了したが、一九九一年度予算に伴う和歌山県の教職員定数は国の基準を下回り、養護教員、事務職員、栄養職員合わせてほぼ百名が不足していると聞いているが、事実はどうなのか。公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(標準法)によれば、四学級以上の小学校では事務職員一名が配置されることになっているが、一例を挙げれば、田辺市の秋津川小学校、長野小学校、西牟婁郡では赤瀬小学校、椿小学校などが該当校となっておりながら未配置の状態である。この法の措置に照らし、全県下小・中学校での未配置の校名を明らかにされたいのであります。
今、私は一例を事務職員の配置について触れましたが、標準法に照らし、養護教員の未配置についても同様、明らかにされたいのであります。
三つ目。ご承知のように、教職員定数法は全国的な教育水準の向上のための基準であります。しかし、本県では国の基準を下回り、教職員の不足を来しているが、その実態はどうか、今後の方針とあわせてお聞きしておきたいと思います。
四つ目。県下の小・中・高それぞれの学校は、臨時的任用をされている教職員がほぼ二百五十名もおり、通常この方々は定数内講師と言われているが、これらの教員はほとんどが二十代の青年で、身分が不安定であります。私の知っている方の中には、和歌山県の採用試験を受けても難しいから──試験が難しいのではなくて、応募者が多いから難しい──あきらめて北海道へ行ってやっと先生になった人がいる。合格して何年もこちらで勤めておったけれども、もうまあ限界が来た。それで、北海道の試験を受けたら合格して、ふるさとを捨てて北海道で先生をする。そういう転出する人も出てきておりますが、本年度の新規採用はこの定数内講師を解消し得るものにはなっていないのではないか、どうなさるつもりなのか、答えられたいのであります。これらの教員が安んじて教育に打ち込めるよう努めるべきであると私は思うが、以上、所見と方策を伺うものであります。
五つ目。いつも申し上げることであります。平成二年九月の定例会で、私は高校募集定員の発表時期についてただしました。教育委員会は、「進路指導など教育的配慮の上から見ても、発表の時期はできる限り早めていく」との答弁を行ったが、どうなっているのか、どうなさるつもりなのか。
ご承知のように、十二月の県議会が終わったら、二十日に終わったら二十一日に発表する、これが毎年の例であります。ここ数年来、そういうことばかりを繰り返している。土木の所管であれば、工事箇所表がなかったらこれは審議にならない。工事箇所表と総予算との関係がないとこれが審議にならない。しかし、ひとり教育委員会だけはそれがまかり通っておる。
こういう状態は間違いであります。ですから、早くそのことを──しかも、それは「教育的配慮」の上に立っても早く発表することが望ましいということを何回か申し上げました。これは、あらかじめ通告をしております。答弁によっては、再質問でもまた具体的なことを申し上げたいと思います。
最後に、台風十九号と日置川について簡潔に質問をしておきます。
昨年の九月二十五日の十九号台風は、本議場、建設委員会等において幾たびか論議されてきたが、県河川課は関電と日置川町に足を運び、その対応に努力をしてございます。
当時、日置川町と町議会が日置川の上流に殿山ダムを持つ関西電力に要求した六項目の回答は、今ようやく日置川町と住民の間で検討されているが、台風発生以来、この夏が来るとはや一年目を迎えようとしております。
最近、特に当時多大の災害をこうむった日置川町田野井地区住民から、当時の被災の状況に照らし、関電を相手にダム操作がもたらした被害に対してその補償を求める裁判を行うと聞いているが、提訴に及ぶ方法論の可否は別として、その被災補償を求めることは当然のことであると私は思う。
以下、簡潔に理由を挙げ、質問といたします。
一つ、関電からの六項目の回答はダム放水のあり方や設備、情報についての必要な改善策を回答しているが、それは当時の関電の措置が非の打ちどころのない措置だったとは言いがたい何よりの証拠ではないか。まず私はこの点をただしておきたいのであります。
二つ目、関電は殿山ダムに起因して田野井地区に災害をもたらしたのではないから被災地には何の補償も行わないと言明しているが、だとするならば、これは通常言われる天災と受けとめていいのか、それとも河川管理者・和歌山県知事の責任に起因するものなのか、答えられたいのであります。
三つ目、第十九号台風における西牟婁郡下各町村の河川での大なり小なりの決壊や破損は、その後それぞれ復旧が急がれているが、住民の中からそれぞれの河川、町に対しても市に対しても、あるいは県に対しても、その管理者に提訴するなどということは全く聞かない。ダムを上流に持つ被災地住民は関電に補償要求の提訴を行おうとしているが、県当局はこの事実をどう認識するのか、見解を伺うものであります。
以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。
○議長(山本 一君) ただいまの浜本収君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 浜本議員にお答え申し上げます。
田辺湾の総合リゾートについてでございます。
遅滞の原因等については部長から答弁いたします。
リゾート形成のあり方ということについて答弁させていただきたいと思います。
田辺湾の総合リゾート開発計画は、複合的なリゾート施設を集積して第二の我が町づくりを行うという新たな発想による開発でございます。そうした点から、長期滞在者が基本的に生活できる都市機能を持った形で進めておるわけでございます。
お話のように、このような事業を推進するに当たっては、大事業ですので、当然ながら多くの問題が予想される次第でございます。それだけに、本事業の円滑な実施のためには、地元の人々の信頼関係をいかに築き、協力を得るかということが、私もまた大切な問題であると思っておる次第でございます。
県としても、この事業は大きなプロジェクトでございますので、雇用の創出の問題、産業の振興等、地域の活性化に寄与するものと信じ、実現に向けて支援を積極的に行っているところでございます。
次に、観光対策についてでございます。
TAP90''sの報告書に基づいてご意見をいただきましたけれども、お話のように、このTAP90''sはことしだけで終わるのではなしに、観光振興懇談会というのを設置し、報告書に基づいてなおいろいろな問題をやっていくわけでございます。従来、三県で知事サミットも行いましたし、部長会議や観光の協議会も行ってまいりましたけれども、この懇談会は、国の運輸省並びに建設省等々はもちろんのこと、観光関係の業者等にも参加していただいて行うわけでございまして、もちろん近鉄も、南海も、JRも参ります。そうした点において、いろいろな問題を解決してまいらなければならないと思います。
ご提言ございました振り子電車の問題については、部長から答弁いたします。
また、ベイエリアの報告の中にございました、海をもっと重点にせよという問題については、私たちも燦黒潮リゾート構想の中で取り上げておりますし、特にまた、先ほど申した振興懇談会の中で、いかにやっていくかということを検討してまいりたいと思っております。
○議長(山本 一君) 商工労働部長中西伸雄君。
〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) 浜本議員にお答えいたします。
田辺湾の総合リゾートがおくれていることについてでございますが、田辺湾総合リゾート開発計画は、事業化に向けて田辺リゾート都市開発株式会社を設立し、開発プラン、運営方法による採算性等、検討を進める一方、田辺リゾート開発準備事務所を設け、地元説明、用地交渉が行われてきたところでございます。
しかし、一部地域において用地の交渉が難航していると承知しており、こうした状況を打開するために、本年三月に関係企業が現地事務所を設置し、地元の人々との接触を通じ、積極的に理解を求める活動が行われてございます。いずれにしても、本計画の実現のために地元の住民の理解と協力が不可欠ではないかと存じます。
次に、観光行政の中で、揺れる特急くろしおについてでございます。
先ほど知事の答弁にもございましたように、去る六月五日から七日まで、紀伊半島三県で紀伊半島観光立県推進地方会議が開催され、各委員の皆様方から交通アクセスについて種々提言をなされたところでございます。
議員ご指摘のとおり、特急くろしおなどの新大阪駅乗り入れ本数の増加については、JR西日本が夏の観光シーズンに合わせ、特急一便、急行一便を増便しているところでございます。また、特急南紀については、平成四年春には新型車両を導入し、スピードアップを図られるということをJR東海から聞いてございます。
次に、揺れる特急くろしおについてでございまして、スピードアップということから振り子型の電車を使用している関係上、揺れがあると考えられますが、今後、旅行の楽しさの演出という視点から、JR西日本とも十分協議をしてまいりたいと考えてございます。
次に、白砂青松公園の建設についてでございます。
浜本議員からご提言をいただきましたこの公園の建設については、観光振興を図る上からも、海辺に新しい砂浜や松林の整備が必要であると考えてございます。
従前から、白良浜や橋杭園地、和歌浦湾の整備などを進めているところでございますが、今後とも、県民の皆様方や県外からお越しをいただく観光客などの多くの方々に本県の誇る美しい海岸に親しんでいただくことが必要であると考えますので、関係部局とも協議しながら進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 土木部長磯村幹夫君。
〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
台風十九号と日置川についてでございますが、昨年の台風十九号は第二室戸台風に匹敵する大型の台風で、異常な豪雨による出水をもたらし、日置川沿川に多大の災害が発生いたしました。
殿山ダムのゲート操作については、事前に予備放流を行い、洪水時において流入量を下回る放流を行う等、現行の操作規程に基づいたものでありました。
ダム放流に関する情報伝達の措置について、関係機関への通知は規程どおりに実施されましたが、一般への周知に関しては、警報装置に故障が生じ、四門目以降の開扉について伝達ができない状態となりました。
こうした状況に対し、日置川町長及び町議会議長から関西電力に対して殿山ダム問題に係る是正・改善についての申し入れがなされ、県としては、これを踏まえ、関西電力に対して指導し、協議を重ねてまいりました。
このたびの改善措置のうち、ダム貯水位の可能な限りの低下については、現在、国が定める利水ダムの標準操作規程に加えて、大規模な出水が予測される場合に治水上の効果を加味したものであります。また情報伝達体制については、警報装置の二重化及び警報車の増車配備等により信頼度の向上を図るものであります。
当地域において被害を受けた河川や道路施設等については、異常な天然現象により生じた災害に対して適用される公共土木施設災害復旧事業の採択を受け、早期復旧を図るべく取り組んでいるところでございます。
また、日置川の河川改修については、計画的に実施しているところでありますが、平成三年度より田野井堤防の改修に着手することとしており、今後も事業の促進に努力をしてまいります。
被災地住民の方々の提訴の動きについては聞き及んでいるところでございますが、このたびのことについては話し合いによって解決されることが望ましいと考えており、今後の進展を十分見守ってまいる所存でございます。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 教育長西川時千代君。
〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教員定数と高校募集定員発表の時期についてお答えいたします。
非常勤講師等は、教諭の欠員補充として、また、産前産後休暇や育児休暇及び長期の病気休暇の補充等に必要な教員でございます。こうした教員を確保するため、ティーチャーズ・バンクを初めとする講師の募集を毎年行っておりますが、本年は過去に例を見ない定数の改善があったことや、平成二年度末での退職者数が見込み以上に増加したこと、さらには本県の高等学校進学率が全国平均以上となるよう措置したことから、例年以上の講師数が必要となり、「県民の友」等を通して新たに応募者を求めているところでございます。
次に、小・中学校の教職員定数についてでありますが、定数標準法に基づき、現員数等を踏まえ、過去の経緯を押さえながら算定してございます。
国は、平成三年度完成をめどに十二年計画で第五次改善計画を実施してまいりましたが、その進捗状況は職種によって一様でなく、養護教員、事務職員、栄養職員の充足率は極めて低く、これらの職種についての改善は多い年でも数名にとどまりました。本年度は改善計画の完成年でもあるため、前年度以上の充足率の伸びを予測し、養護教員、事務職員、栄養職員を合わせて約四十名増員いたしましたが、完成した国の標準数と比較すれば、なお八十名余りの差がございます。
このことについては、議員から西牟婁地方の校名が具体的に挙げられました。今後、県教育委員会としては、児童生徒数の減少や国の動向等を踏まえ、計画的に充足してまいります。
次に、教員採用の募集人数については、過去の定数の改善状況と退職者の見込み数、及び次年度以降の児童生徒数の増減を勘案して決めてございます。平成四年度については、国の新たな定数改善は見込めず、児童生徒数の減少が続くことから、さきに発表した募集人数を決定したところであり、本年度のような特異な状況は生じないものと考えてございます。
最後に、平成四年度の高等学校生徒募集定員の発表時期についてでありますが、中学校生徒の進路指導を行う上で重要であることから、今後、定員を決定するための総合的な検討を早め、できるだけ早く発表する所存でございます。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
43番浜本 収君。
○浜本 収君 商工労働部長、知事からのご答弁で、田辺湾リゾート形成にとって最も大切なことは地元住民の理解と協力だと申されておりますが、私もそのとおりであろうと思います。いわゆる住民合意ということが最も大切な課題である。
ただ、田辺湾のリゾート開発の計画発表は、どういうことであったのか知りませんけれども、三年前でしたが、地元の人が何も知らんときにいきなり発表した。そういうやり方をするから、後段で述べましたように、住民とともに、住民が参画し得るリゾート形成──これは、シンポジウムの論文にありました。多分、川端企画部長の書いた文章だろうと思いますけれども、すばらしい、その言やよしといった、そういうようなことと符合しない。いきなり発表して、住民の方々は何のことやらわからんとうろうろする。住民こそ主人公。ところが、その住民が知らない。知らない人を置き去りにして、年間二百万の人が来るんだとか、やれ大学をつくるんだとか──都市づくりですね。この構想は悪いとは思わない。いいことだと思います。しかし、ここの基本が狂っている。
遅滞の理由は何かと申し上げたが、その理由については答えない。答えないけれども、それは前段で述べた住民の合意が得られていないからであります。そこで私は、質問の中で適正規模のリゾート形成に切りかえたらどうだろうかということを申し上げているが、お気づきではなかったからだと思うけれども、これについても答えていない。あえて答えよとは申し上げませんが、住民とともに、住民が参画し得るリゾート形成、あるいはまた適正規模のリゾートの形成ということについて、田辺市の現状に照らして十分検討してほしいということを要望しておきたいと思います。
二つ目。観光の問題で大阪湾ベイエリアの構想を引用して申し上げましたが、なぎさ海道と白砂青松の公園についての答弁であります。
あの答弁について、どういうように再質問をしていいのか、私は迷います。答弁の言うていることは合っているけれども、どこか違うように思う。それは何だろうかなということをこの席で考えてみたけれども、部長はひょっとしたらお気づきだろうと思います。
時間がありますので、お許しを得て雑談風に少しお話をいたしたいと思います。
「われは海の子白波の 騒ぐ磯部の松原に 煙たなびく苫屋こそ わが懐かしきすみかなれ」──少年の日に愛唱した歌であります。きょうはカラオケの話はいたしません。
知事の母校である田辺中学の校歌は、「我が中学の英風は 扇ケ浜の松千樹 嵐気颯爽いやたかく 白砂碧浪いやたかし」。私たちが中学校に通ったころ、我々の青年時代を想起するたびに、すべて松、白砂といったものがよみがえってくるのであります。
大阪湾ベイエリア構想は、いろんなことを書いてございますが、いいことを書いているなと思います。しかし、それをそういうように、俗に言う「もじった」のはだれであったか。そして今、気がついて二十一世紀へのメモリアルとして白砂青松の公園をつくるんだと。
この構想は大阪湾にでき上がると、私は思います。あの迫力ある文章なりからいくと、絶対できるなと思います。しかしそれは、ああ大阪のことやな、いいことやなと思うのではなくて──我々は常に、枯木灘や黒潮洗う潮岬を見るたびに、海のことを自慢します。自慢しますけれども、しかしそこには、今言うようなものが何もない。
最近、海水浴場をちゃんとするためのいろんなことが行われております。白良浜は、もうほとんど完成しています。あるいは、この間私は橋杭にも行ってまいりましたが、そうなっております。しかし、それはそれであります。いわば、きらびやかな海の開発とあわせたような、超近代的と言っていいんですか、そういう海辺の形成ではないのであります。
私は、田舎の古い時代のそういう公園にせえというようなことは申してございません。しかし、白良浜にもあるし橋杭にもあるような、そういうおざなりのものをつくるんだ、見通していくんだというのではなくて、わずかな文章ではありますが、その大阪湾ベイエリア構想の中に書かれているような物の考え方に立脚した、いわば和歌山県が、紀州が日本に誇り得る白い砂と青い松林、そういうたたずまいと──そういう公園ということを申し上げているんじゃなくて、そういうものを指向するいわばメモリアルを、どうしても仮谷知事あなたの手で仕上げてほしいなと、この機会に特に要望をしておきたいと思います。
教育委員会は、高校の定員募集については時期を明示いたしませんけれども、私は、先日もあるPTAの方々から聞いたんです。うちの子、南部の保育学科へ行くのがいいと中学校の先生が教えてくれた。そして、その気になって十二月ごろまで、あるいはそれを学ぶための体験学習に夏休みに行ってきた。完全にその気になって、先生の指導されるままにそうした。ところが十二月になると、その学科がないようになった。募集せんと発表した。そうすると今度──こういう言い方は悪いんですけど、「これがおまえには一番いいんや」と言っておった先生が、今度は別の科へ行かす。「ないようになったから、今度はおまえこっちへ行け」と言うと何か切り捨てみたいになるから、また別の言い方で「熊高の園芸科へ行くのがおまえにはええ」と教える。
正直、そういうことがあっちこっちで行われている。しかし、子供は一人一人が大切にされなければならないと思います。そんなこと大したことやないやないかということで教育というものを見てもらったら困ります。
だから、早く発表すればするほどいいということは二年前にも申し上げておるのでございますけれども、十二月の県会で「いつな、いつな」とみんなに聞かれて、「やがてします」「検討しています」というようなことを言うて、そして議長さんが「ことしもいい正月を迎えてください」とあいさつされて、みんなが帰った二日後に発表する、そういうぶざまなことはもう金輪際やめていただきたいと思います。
私は、手続上の問題を言うのでなくて、教育的な進路指導と子供の将来という上に立っての物の考え方を申し上げているのでありますから、どうぞことしはそういうぶざまなことのないように、ぜひとも十二月ににっこり笑ってここで発表できるようにしていただきたいということを特に要望いたします。
以上、皆、要望といたします。
○議長(山本 一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で浜本収君の質問が終了いたしました。
○議長(山本 一君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
33番鶴田至弘君。
〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
まず、人事行政についてお尋ねをいたします。
本県にも、多数の国派遣の職員が働いてくださっております。人づてに聞くその手腕あるいは能力に心からの敬意を表し、また、遠く和歌山にまでお出でいただいていることに感謝するものでございます。
しかし、同時に私は、国派遣の幹部職員が余り長期にわたって同一ポストに就任されることについては、いささかの危惧を抱くものであります。
誤解を避けるために申し添えておきますけれども、私は、過去、現在、お出でいただいた方々個人に対しては何ら意見を持っているものではございません。国から職員が派遣されて特定のポストで長期にわたってその任務につくというシステム、慣行について意見を申し上げるわけでございますので、どうか「あのやろう、生意気なことを言う」というようなことを思わないで、ひとつ意のあるところをお聞きいただきたいと思うわけでございます。
国の職員が地方へ来られて仕事をされるその中で、地方の実情などもよく学ばれ、国の行政の中に生かしていく、あるいは地方の人材不足を一時的に補完するというような点で、国派遣の職員を受け入れる、来ていただくということについて、私は異論を持つものではございません。
しかし、十年もそれ以上もそのポストは国派遣職員の指定席ということになりますと、また別の問題が生じてまいります。地方自治体の立場から主体性を持って人事をつかさどっているつもりが、いつの間にか、そこのポストは国の意志伝達機関になったり、あるいは国の地方に対する指導機関、少し言葉をきつくすれば国の地方への介入の機関とならないとも限りません。国の地方への介入ということは問題になってからも随分久しいものですが、財政を通じての介入だけでなく、人事を通じての例ということも決してないわけではありません。
もう一つの面は、本県の職員の意欲への影響であります。幾つかのポストは国派遣職員のポストであり、県職員がその能力を振るうことができないポストだということに固定してなってしまえば、おのずと意欲にも影響を及ぼします。それは、県行政にとって大きなマイナスであります。
三つ目は、いつまでたってもそのポストにふさわしい人材を育てられないということにもなります。人材の中央への依存主義が生まれます。それでは人は育ちません。私は、国派遣職員が有能な仕事をされておられるというのを聞くほどに、その感を強くするものでございます。
ついては、次のポストに関して、いつごろから国派遣職員が着任されておられるか、お尋ねをいたします。総務部長、保健環境部長、土木部長、財政課長、健康対策課長、道路建設課長、建築課長、以上について、国派遣となったのはそもそもいつごろからなのか、その意図するところは何なのか、お示しをください。また、国派遣職員の就任数を、二十年前、十年前、現在と、それぞれ何人おられるかをお示しいただきたいと思います。
次に、和歌山大学経済学部の跡地利用についてお尋ねをいたします。
この土地については、図書館等の文化施設とともに、サンピアがその目的に沿った施設をつくることの一環として、かつてゴルフの練習場をつくる計画が発表されました。ところがその後、地元を初めとした各界からの反対意見が出され、ゴルフ練習場については凍結されることになりました。私は、地元や各界の意見を率直に取り入れて凍結を表明された県当局の良識に、当然のことだとはいえ、好もしい感じを抱くものであります。
ついては、この際、「凍結」とは中止、断念のことなのかどうか、確認をさしていただきたいと思います。
同時に、このような計画をされるに当たり、なぜ住民合意を得るために十分の配慮をされなかったかということを残念に思うものであります。昨日論議されたゴルフ場問題にしても、和歌山市の不老橋の問題にしても、住民との合意の不十分さがいたずらに混乱を大きくする原因をつくっています。自治会長の合意だけで、あるいは安易な趣意書の回覧だけで住民の合意を得たとするのは極めて主観的であり、その内容を満たすものではありません。そこには、形だけ整えればいいという行政の不遜さを感じます。
しかし、一応この件に関しては凍結されたわけですから、これ以上申し上げません。ついては、跡地利用について、その後どのように検討されておられるか、現在のお考えをお聞かせください。また、過日の同じ轍を踏まないためにも、住民合意についても慎重な配慮がなければなりません。その点についてどのようにお考えですか、お示しください。
次に、教育関係の問題に移ります。
まず、日ごろ教育行政の推進のために日夜ご苦労されておられる関係者の方々に感謝を申し上げたいと思います。
さて、昨今、社会教育、今風に言えば生涯学習を発展させることの重要性が各分野から叫ばれています。情報化、国際化、高齢化など、急速な社会情勢の変化発展の中で、人々が、学校教育だけでなく生涯にわたって、自発的意思に基づき、それぞれの要求と能力に応じて学ぶことが豊かに生きていくための必須の条件となってまいりました。行政は、このような人々の要求にこたえて、いつでも、どこでも、だれでも学習できる環境、設備と案内者、指導者を配置しなければなりません。
その環境といっても極めて多様であり、今後の課題は極めて多岐にわたります。中でも、県民にとって、学習の場へのインストラクターとその場、すなわち会場、教室の有無が決定的に重要となってまいります。そういう認識と立場から、幾つかお尋ね申し上げます。
まず、生涯学習を発展させる上で大きな役割を果たすのは、何といっても人であります。さまざまな分野の人、指導者の育成と配置こそが生涯学習の発展の前提として求められます。その中でも中心的な役割を果たす社教主事等について、お尋ねをいたします。
教育委員会発行の平成二年度版「和歌山県の教育」によると、「社会教育主事の定数、専門的職員としての待遇、勤務の態様等課題も多く市町村の体制は十分とはいえない」とあります。また、生涯学習を進める上で大きな役割を果たすと思われる公民館について同書は、「住民の学習にますます意欲が多様化し高度化しているとき、公民館が生涯学習の拠点としての役割は極めて大きいものがある。 これらの役割を十分に果たすためには、使用目的に即し、整備された専門の施設・整備が必要であるとともに、公民館の管理運営の責任者である館長や、事業の実施にあたる職員として専門的な識見を有する公民館主事等が専任常勤で配置されなければならない」と述べております。いずれも、当を得た指摘だと思います。
ついては、この分野における本県の歩みを振り返るという意味で、次の点についてお答えいただきたいと思います。
公民館の設置状況、社教主事の配置状況、社会教育費の県民一人当たりの金額等について、十年前との比較でお示しをいただきたいと思います。
次に、小中学校における図書館司書教員の配置についてお尋ねいたします。
教育委員会発行の冊子、平成三年度版「学校教育指導の重点目標並びに指導の着眼点」という冊子によりますと、次のような記述があります。「児童生徒が日々学習を重ね成長をとげて行く過程の土台をなすものは、未知なるものへのあこがれであり、新たな発見や認識がもたらす驚きや喜びである。 学校図書館教育は、児童生徒のこうした自ら学ぼうとする力に信頼を置きながら、学校における教育活動全体の展開に資料センター、情報センターとしての機能面で十分寄与するとともに、自由で主体的な学習と読書を通した人格形成を行う場としての役割を期待されている」と述べています。
目まぐるしく変転する社会に成人していく子供たちが、みずからの生きる道を生涯みずから学びつつ生きていくためには、読書は極めて大きな意義を持つことは言うまでもありません。そこに図書館教育の主要な意味があります。
しかし現実には、活字離れという現象も進行していることも事実であります。憂うべき現実であります。教育委員会がそのような事態を直視して図書館教育の充実を指導されることは大変結構なことでありますが、今の教員の配置でその成果を十分期待することは困難ではないでしょうか。とにかく、職員は忙し過ぎるというのが現状であります。
ついては、法の定めもあるように、学校図書館法に言う司書教諭を試行的にでも配置していくことが必要ではないかと思うのですが、いかがお考えでしょうか。
三番目の問題に移ります。
過日、県下のさる小学校の体育館の敷地造成工事を自衛隊に依頼して行ったこと、またその学校の講堂を、授業中にもかかわらず自衛隊の隊員募集の場に提供されたことなどが物議を醸しました。
一般に、自治体が行う建設等の事業は自治体と民間業者との契約で行うのが通例であります。自衛隊の出番というのは、極めて異常の事態です。私自身は自衛隊の存在そのものを違憲とする考えを持っておりますが、そういう考えでない方々、立場を異にする方々から見ても、やはり不自然な感を免れないのではないかと思っています。
市町村がみずからの工事をどこに依頼するかは市町村の主体的判断になるものですが、そこにはおのずから政治的節度が求められます。教育の政治的中立を考えるとき、教育行政においてもその思想は尊重されなければなりません。
自衛隊は、世論を二分する高度の政治的存在であります。そのような立場から、私は自衛隊の学校建設工事への参画は極めて遺憾との思いをいたすところであります。また、授業時間中の自衛隊の講堂使用などということは言語道断であります。しかし、この事態も工事を依頼したという弱みのなせるわざとすれば、この種の工事を自衛隊に依頼するということが学校教育にさまざまなゆゆしき影響を与えてくるであろうことが推測できるわけであります。
先ほども申し上げましたように、工事の依頼等は市町村の主体に属することで県教委が余りとやかく言うことではないと考えますが、県教育長には県教育長なりの所感があろうかと思います。憲法、教育基本法の絡みでその所感をお聞かせいただきたいと思います。
以上で、第一問を終わります。
○議長(山本 一君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
国の職員の県への採用問題でございます。
これについては、鶴田議員も文句はないということでございました。ただ、この機会に私の所見を述べさせていただきたいと思います。
私は、県行政を進める上で一番大事なことは、やはり職員が頑張ることだと思っておりまして、そうした面から人材育成、人事配置に十分配慮しておるわけでございます。
また、地方自治というのは、国、県、市町村が相連携しつつ住民の福祉を図っていかなければならないのではないかと思います。そうした意味においても、国から職員に来ていただくことは、連携を密にするし、組織とか職員の意識に活力を与えるし、広い知識も与えていると思うわけでございます。また、本県に出向してもらっておる職員の皆さんは、本県の職員としてまじめにやってくれておるし、帰られてからも、和歌山の実情をよく知っていただいて、いろいろと指導もいただき、かえって各省の東京事務所のような感じで働いてもらっているわけでございます。
また、県から市町村へも出向しておりますし、市町村からも出向してもらっております。国に対しても、県から出向しておる現状でございます。
○議長(山本 一君) 総務部長山中昭栄君。
〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 人事行政に関連をいたしまして、国家公務員であった職員の員数、在職年次についてでございます。
国の職員を県の職員として最初に採用した年を申し上げますと、お尋ねのございました部長職のうち、総務部長が昭和二十二年、保健環境部長が二十三年、土木部長が二十二年でございます。また課長職については、財政課長が昭和三十年、健康対策課長が四十九年、道路建設課長が二十二年、建築課長が四十八年でございます。
もとより、この間今日まで、当初から県職員として採用された方々がこれらの職につかれている時期もございます。
また、二十年前、十年前の採用人数でございますが、いずれも十名程度でございます。現在は十五名でございます。
○議長(山本 一君) 民生部長吉井清純君。
〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) 和歌山厚生年金健康福祉センター、いわゆる「サンピア」と愛称で呼ばれておりますが、かねてより社会保険庁に対して本県に設置の要望をしてまいりましたところ、昨年一月十日付で、和歌山市西高松一丁目の和歌山大学経済学部跡地に設置することが決定されたものであります。
この施設は、厚生年金の加入者、年金受給者、その家族、そして地域住民の方々が幅広く健康づくり、体力づくりを図る場として、スポーツ施設を中心に研修、会議、宿泊などに利用できる施設を建設するものであります。
施設の概要としては、三万二千七百三十六平方メートルの敷地に、センター棟、室内のスポーツ棟のほか、テニスコート、ゲートボールコート、ジョギングコース、憩いの広場など、屋外施設の設置を計画しており、平成五年三月の完成予定となっております。
なお、当初の計画にあった屋外施設の一つ、ゴルフ練習場については四月に計画を凍結しましたが、これは、住民の方々のご理解が得られない限り計画を進めることはないと考えていただきたいと思います。
この場合、代替施設を何にするかについては、健康増進の趣旨にかなうもの、採算性のとれるもの、住民の方々に理解が得られるものなど、三つの条件が満たされる屋外施設を検討中であります。なお、決まった場合には、地元住民の方々のご理解が得られるよう努力してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 教育長西川時千代君。
〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育問題の三点についてお答えいたします。
生涯学習の時代を迎え、社会教育の振興はますます重要となってございます。とりわけ公民館は、地域住民の身近な学習の場として、その施設の整備充実等の指導を行ってきたところでございます。
平成二年度における施設等を十年前と比較すると、公民館は三百三十五館から三百四十一館となり、特に文部省の定めた基準以上の公民館は七十館から八十九館となってございます。
次に、市町村の社会教育主事については、設置市町村数三十三市町村、三十七名から、四十八市町村、五十五名で、配置率は九六%となり、全国平均八六・四%を上回っております。
次に、社会教育指導員については、同和教育指導員を含めて三十八市町村、六十八名から、四十三市町村、九十二名となってございます。
また、生涯学習に係る学級、講座の開設状況及び受講者数についても、六百六十一講座、延べ二万六千名から、千四百五十五講座、延べ約五万三千名と伸びております。
次に、社会教育関係予算に係る県民一人当たりの指標値については、年度による変動もございますが、社会教育施設の建設がなされた年度はその指標値が高くなるという特徴がございます。平成元年度以降の本県の指標値については、県立の施設設備等の整備が図られており、高くなるものと考えております。
今後とも、生涯学習の観点から、その推進体制の整備や指導者の養成など、総合的に検討し、社会教育の推進を図ってまいりたいと考えてございます。
次に、学校図書館教育についてでございます。
児童生徒がみずから学ぶ態度を培うためにも、また活字離れが指摘される昨今の状況からも、重要であると考えてございます。教育委員会としては、学校図書館教育を教育活動全体の中に位置づけ、児童生徒の読書及び学習の充実に一層寄与するよう指導しているところでございます。
司書教諭の配置については、学校図書館法に特例の定めがあり、また定数標準法での算定が規定されていないことから、現在措置してございませんが、国に対しては定数標準法の第六次改善の中で措置されるよう要望を続けているところであります。今後は、国の動向を見きわめながら多面的に研究し、図書館教育の充実に努めてまいります。
次に、小学校の用地拡張工事については、町の依頼により自衛隊法等の規定に基づいて実施されたものであります。このような土木工事を自衛隊に委託するかどうかについては、依頼者である市町村が工事の内容や必要とする工事期間など、それぞれの実情に応じて判断しているものと考えております。
また、このたびの体育館の使用については、用地の拡張工事に伴い、体育館を含む周辺を授業等に使用しないなどの措置をとった上で町教育委員会が許可したものであると考えております。
以上です。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
33番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 再質問をさせていただきます。
二カ月ほど前までは雲の上のお方であった知事さんや県の幹部の皆さん方を目の前にして、いささか緊張をしているところでございますけれども、思い切って再質問をさせていただくわけでございます。
人事の問題についてでございますが、私は、国、県の人事の交流ということについては、あって当然だと思います。したがって、知事が言われたことについて、その限りにおいてはそのとおりだと思っています。
ただ、私が先ほどから問題にしておりますのは、特定のポストがもう長期にわたって──先ほどの総務部長の報告によりますと、戦後からずっと続いているのもあるわけです。例えば、土木部長、建築課長、健康対策課長、財政課長。ずっともう以前から国派遣の職員の方々がついておられる。先ほど申し上げました幾つかのポストも、私が調べた限りでは、すべて十年以上、二十年前後というようなポストであります。このような部署について、国派遣の職員が当然座るべき職責だというふうに県の職員の皆さん方が思うとしたら、私はこれは随分マイナスだと思うんです。
国派遣の職員の皆さん方がお出でくださって、中央との風通しをよくしてくれるとか、広い識見で県の職員に刺激を与えていただけるとか、あるいは充足できないポストに補完的についていただけるということについては、私はありがたいことだと思っております。
しかし、今申し上げましたように、これらのポストは指定席であるというふうになると、人事政策としてこれはまことに遺憾なことではないかと思います。
県の職員の皆さん方がそのポストに必要な手腕を磨くという機会がまず失われます。そして、意欲も失われるでしょう。一つのポストに座るために職員が互いに切磋琢磨し、公務員としてのみずからの能力を向上させていく、そういうこともそのポストに関しては少なくなっていくでしょう。
私の目の前に七名の部長さんが座っておられますけれども、その中にこの十年間一貫して三名の国派遣の職員の皆さんがついておられるということは、随分不自然だと思うんです。実質的な指定席制度というふうになっていると危惧するわけでございます。
さらに、十年前と比べて国派遣の職員が十五人にふえておるというような事態も、必ずしも喜ばしい現象ではないと思います。地方自治体としての主体性をさらに発揮していくためにも、それらのポストに座れるような県職員を養成するという人事政策が必要ではないか。あるいはまた、三割自治と言われるような状況の中で、せめて人事的にでも確固とした政策を持ち得るような、そういう配慮があってしかるべきではないかと私は考えるわけでございます。その点について、再度知事の所見をお伺いしたいと思います。
なお、派遣されて日夜ご奮闘されている職員の皆さん方には、大変耳ざわりな言葉であったかと思いますけれども、お許しをいただきたいと思います。
次に、和大跡地の活用の問題でお尋ねをしておきたいと思います。
採算性の問題が出されましたけれども、これに余り重点を置き過ぎると道を誤ることになるんではないかと思います。あのゴルフ練習場の設置ということについても、採算性から出発したことでありました。一番安直に利潤を得ることができるというところからの発想があのゴルフ練習場の問題になったわけですが、サンピアの趣旨、あるいは地元の要望との関係で、採算性の低いものであっても大胆に採用するという賢明な英断をしていただきたいと思うわけでございます。
さらにまた、住民要求の掌握の仕方については、ひとつ誠実な形でやっていただきたいと思います。実を申しますと、前回、このゴルフ練習場の設置が決定して発表された後で、あそこに何がよいか、アンケートをとって調べたことがあります。そして、そのアンケートでゴルフ練習場が一番多かったからということで、その決定を合理化するというような発表をされたことがあります。
また、そのアンケートのとり方も、和歌山大学の経済学部の跡地に何がいいかという設問ではなくて、今どんな施設が必要かという設問で、そしてゴルフ練習場という答えが出たから和歌山大学経済学部の跡地にはゴルフ練習場がいいという、非常に乱暴な論理が住民の前に出されたときがございました。これは、あえて申し上げなくても、随分とむちゃな論理だと思います。
このようなことのないように──恐らくそういうことはないと思いますけれども、念のために、本当に期待を持ってあそこがどうなるかと多くの県民が見詰めているわけでございますから、その任に当たられる方々の誠実なご努力と賢明な英断を期待するものでございます。
それから、教育委員会について質問をいたします。
まず司書教諭についてでございますが、先ほどの質問でも教員が法定数を欠いているというような論議がありましたから、なかなか司書教諭の話まではいかない、それどころではないというお気持ちになっておられることは私もわかります。ただ、ご答弁の中に、しばらく置かなくてもいい特例法があるからとか、定数標準法があるからというようなことがございましたけれども、これは古い時代、昭和二十九年という貧しかった時代に、お金がないから、まあしばらくは置かんでもいいやろうというふうに出された結論であります。置かなくてもいいということは、置いたら悪いということではありません。
私は、教育委員会が今回、あの指導指針のような冊子の中に、図書館教育の大きな意義をうたわれていることに敬意を表したいと思います。さらに、国に対する数少ない要望の中にこの司書教諭が配置できるようにという要望を出されていることに対しても、その熱意に対して敬意を表したいと思います。
しかし、同時に、そういう願いを実らせるために、和歌山県が和歌山県独自として、一つの大きな実験として司書教諭の配置を試行的に行い、その成果を持って国に対して要望されるということの方がさらに大きな意味を持つものではないかと思います。
実は私、この問題は和歌山市議であった時分から再三にわたって取り上げてまいりました。答弁は、大体もうすべて「県が、県が」と言われてきたんです。それで私、これが言いたいがためにここへ来たんです。ところが、「国が、国が」と言われる。次の選挙で私は国会議員にならなならん。席を暖める暇もないというのはこのことではないかと思うんですが。
どうかひとつ、和歌山県教委のすぐれた見識でもって大きな決断をされることを心から期待するものでございます。それは要望としておきたいと思います。
それから、さる小学校での自衛隊の学校工事への参画と授業中の講堂使用の問題についてでございますが、この点については、教育長は私の質問には答えてくれませんでした。事実経過だけを説明されたわけですけれども、ある意味ではやむを得ないかとも思います。しかし私は、この点についても要望をしておきたいと思うんです。
今、憲法と教育基本法というお話をさせていただきましたけれども、我々が持っているこの誇るべき憲法と教育基本法の精神は、教育の厳正な中立を求めています。同時に、その意向は教育行政にも反映されるものだと私は考えています。そういう意味で、世論を二分する存在である自衛隊の工事への参画、あるいは授業中にもかかわらずそれを使用するというようなやり方については、今後ゆゆしき問題を生み出すのではないかと危惧するものであります。
同時に、一般論としても、授業中に他の団体が学校施設を使用するというようなことは常識では考えられないことです。災害時や何か特殊な緊急の事態が発生したときにはやむを得ないかもわかりませんけれども、授業中に、その日に、その時間にその施設を使わないからよその団体が使っても結構ですというようなことにはならない。学校施設の使用目的が全然違うわけですから。そういう点については教育長にご答弁をいただけませんでしたけれども、その良識において判断をしていただきたいと思います。
私は、ご答弁をいただけなかったということで、その言外の気持ちとして酌ましていただいておるところでございます。
次に、生涯教育の問題に移ります。
皆さん方の努力の中で、徐々に生涯教育の施設や体制が進んでおることについては大きな評価をしたいと思いますが、私はこの間、何人かの地方の教育委員会の方々や公民館の指導者の方々とお目にかかって、お話をしてまいりました。
そのときに訴えられたことは、金がない、金がないから人が置けない、あるいは建物がつくれない、住民のニーズがわかればわかるほどその思いを切実にすると、こういう訴えをあちらこちらで聞いてまいりました。
今、和歌山県が長寿社会総合対策指針というのを持っておることをご存じだと思いますけれども、その中の生涯学習のところに、これからは十年間のうちに中学校区単位で近代公民館を一館つくろうとか、社教主事を複数で配置していこう、あるいは公民館に専任職員を置いていこうということが目標として掲げられております。しかし、今までのテンポですと、恐らくその三分の一にも到達しないと思うんです。
和歌山県の社会教育予算というのは、まことに残念なことでございますが、昭和六十三年度で県民一人当たり七千四百円、順位にして全国第四十位でございます。この十年間の全国の社会教育費の伸びは三六%です。和歌山県は残念ながら三・五%。十分の一です。あるいはまた、和歌山県の一般会計の予算が二九%伸びているのに社会教育費の伸び率が三・数%でとまっているということは、社会教育、生涯学習に対する見方を大きく変えていただかなければ、今掲げている目標は達成できないのではないかと思うわけです。
百五十の中学校に対して、現在、八十幾つかの公民館です。複数の指導主事を持っているところは、五十団体に対して二十団体であります。公民館に専任職員を持っているところは、ごく少数です。こういうことを考えてみましても、これからの生涯教育を大きく前進させていくためには、皆さん方の並み並みならぬご努力と同時に、そこに大きく金をつぎ込むという英断をされることが必要ではなかろうかと私は思うわけです。
そういう点で、教育長が果たされる役割は今後非常に大きくなろうかと思いますので、その決意と展望のほどをお示しいただきたいと思います。
以上で、第二問を終わらせていただきます。
○議長(山本 一君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 鶴田議員にお答え申し上げます。
先ほど、人事についての私の考え方を述べさせていただいたわけでございまして、やる気を起こさせるということが一番大事なことだと思っております。
鶴田議員がおっしゃったようなことは、私もまた考えております。そして私の判断で、適材適所で行っております。
○議長(山本 一君) 民生部長吉井清純君。
〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) お答えをいたしたいと思います。
まず採算性の問題でございますが、この施設については、先生ご承知のとおり、勤労者の皆様方がそれぞれ資金を拠出し合い、その積立金の運用によって厚生年金事業振興団が建設し、運用するものであります。したがって、採算性を求めるのはやむを得ないんではないかと考えております。
二番目の住民の理解の問題でございますが、住民の方々が大多数参加をしている自治会などを通じ、幅広く理解を求めてまいりたいと考えております。
以上です。
○議長(山本 一君) 教育長西川時千代君。
〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) お答えいたします。
社会教育を推進するため、和歌山県長期総合計画に基づき、現在、県立図書館、文化情報センター、美術館、博物館の建設を進めてございます。事業面では、生涯学習推進会議の設置や学校開放講座、生涯学習フェスティバルなどの開催も行ってございます。
また、市町村との連携を図るために、学習情報提供システムを導入して二十一市町村とネットワーク化し、さらにこれを広めてまいりたいと考えております。
今後は、住民の学習の場としての施設設備等の充実を図るよう指導に努め、生涯学習の推進を図ってまいりたいと考えてございます。
以上です。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。──再々質問がないようでありますので、以上で鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(山本 一君) この際、暫時休憩いたします。
午前十一時四十八分休憩
──────────────────
午後一時三分再開
○副議長(平越孝哉君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(平越孝哉君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
37番木下義夫君。
〔木下義夫君、登壇〕(拍手)
○木下義夫君 お許しをいただきましたので、一般質問を続けたいと思います。
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改選後の初登壇でございます。非常に厳しい選挙戦の中、田辺市の皆さんのご支援のおかげで、馬頭大先輩、野見山議員とともども県政壇上に送っていただきまして、第五選を目指す仮谷知事と和歌山県の発展のために議論をさしていただける幸せを、今しみじみとかみしめているわけでございます。そういう気持ちいっぱいでございますから、どうか仮谷知事初め関係の皆さんも、大いに心あるご答弁を願いたいと思います。
順番に従って質問を続行させていただきますが、第一点は児童の権利条約についてであります。
「銀も金も玉も何せむに勝れる寶子に及かめやも」という万葉歌人・山上憶良の歌があります。そのように、万葉の時代から児童は何物にもかえがたい、何物にもまさる宝物として考えられ、現在においてもその考え方は一貫しているのであります。
一九五九年、世界人権宣言に基づいて、国際連合が子供の人権について特別に、「人類は、児童に対し、最善のものを与える義務を負う」と書かれた、一九二四年のジュネーブ宣言の精神を引き継いだ全十条から成る「児童の権利宣言」を採択したのであります。
この「児童の権利宣言」の前文では、「人類は、児童に対し、最善のものを与える義務を負う」と述べておりまして、その第四条「健康に成長し発達する権利」、第七条「教育を受ける権利」、第八条「あらゆる状況において最善に保護及び救済を受ける者に含まれる権利」などの条文を掲げているのであります。
しかし、ここでは子供を保護の対象として見て、権利を行使する主体として扱われていないのであります。「児童の権利宣言」から三十年たって、ようやく子供を一人前の権利主体として認める条約が国際連合で一九八九年十一月二十日に定められました。皆さんご存じのとおり、特に発展途上国では今も非常に困難な条件のもとで多くの子供たちが悲惨な生活をしており、それらの子供たちの生活改善のためには国際協力が重要であるとして、各国においても批准されるべき条約として定められたものであります。
五十四条から成るこの条約には、さまざまな点で画期的な条文が含まれているのであります。「児童の権利宣言」には抜けていた「意見の表明」「表現・情報の自由」「思想・良心・宗教の自由」「結社・集会の自由」「プライバシー・名誉・通信の保護」などがあります。自分にとって何が最善の利益かを自分で決め、自分で表現し、みずから追求するために必要な権利が網羅されている。ここで取り上げた権利だけを見ても、それが文字どおり保障された場合、たちまち教育現場においてパニック状態を起こしそうな内容であります。
そして、「条約」は「宣言」と違って法的な拘束力が強く、したがって、これを批准した国はその条約に合わせて国内法を整備することが義務づけられ、さらに批准国は、本条約に基づいて設置される子供権利委員会に対して、本条約で承認された権利を実現させるためにどんな措置をとったか、二年ごとに報告しなければなりません。
この条約を日本国が批准すれば、生徒の人権を追求する上で、このようなことを主眼として運動している団体にとっては、非常に有力な武器を持つことになるのであります。
この条約上考えられる権利は、大きく分けて五つあります。「自分のことは自分で決める権利」「体罰を受けない権利」「学校に行く権利・行かない権利」「心の自由を守る権利」「性と人権に関する権利」があり、この五つの大きな権利の中には、「自分の服装は自分で決める権利」、制服との兼ね合いがあります。「自分の髪型は自分で決める権利」、長髪と丸坊主の関係があります。「オートバイに乗る権利」、三ない運動との関係があります。「校則改正の権利」「集会・団結・結社・サークルと政治活動の権利」「連帯責任を拒否する権利」「身体測定・健康診断を拒否する権利」「学校に行かない権利」「内申書を見てその記載を訂正させる権利」「成績の発表を拒否する権利」「家庭訪問・家庭調査を拒否する権利」「受ける学校を進路指導によって強制されない権利」「『日の丸』『君が代』、元号を拒否する権利」等々、その他、数知れないくらいの権利主張が行われ、今まで積み上げてきた教育環境及びルールの破壊が進み、相互の信頼関係が崩れる心配があります。
文部省は、新学習指導要領で、来年度から全面的に内容を改める小学校教科で「我が国の国旗と国歌の意義を理解させ尊重する態度を育てる」と、国旗・国歌の義務化に踏み込んだのに基づき、「日の丸」イコール国旗、「君が代」イコール国歌と理解できる記述にするよう厳しく指導しているのでありますが、これも非常に難しくなるような状態であります。
五月五日の「子供の日」の日本経済新聞の社説に次のような記事があります。
「この条約はわが国の法律や学校・教育制度に多くの問題を提示しているからだ。子供にも大人同様の意見表明権を認め、表現・結社・集会の自由を保障、プライバシーや通信、名誉を保護するなどの権利行使を認めている。いわば子供の社会権、自由権を認知するものである。 当然、髪形や制服など校則を中心とした管理教育が問われよう。カリキュラムの制定や教科書選択に子供が参加したり、内申書や家庭訪問などが問題になることもありそうだ。『子供の発達段階に応じて』とはあるが、条約でいう『子供』の始まりの年齢の定めはなく十八歳未満をさす。厳密にいえば民法や公職選挙法なども再考の要があるかもしれない。 もともと途上国の子供の福祉を中心に据えたものとはいえ、子供を保護の対象ではなく、権利を行使する主体ととらえる考え方は、先進諸国にも示唆的な内容である。しかし学校という組織の中で、子供の権利行使を制限する形で教育制度を充実、発展させてきたのだから、必ずしも条約とは運用面で相いれない点が出て来る。刑法、戸籍法、入管法などでの抵触を指摘する声もある。(中略) しかし条約の意味するところや国内の法、制度との斉合性などについて国会でも国民の間でもあまりに関心と議論が乏しい。今国会での批准が間に合わなかったことを奇貨として、ぜひ、その検討を深めてほしい。それはきっと国際的な視野で見たわが国の若い世代の現状や未来を明らかにするはずである。 大人がよしとするものを子供に与えるだけでなく、子供自身の意思を尊重し、それを法や制度に加えていこうとする条約の趣旨は、十分にうなずけるものである」として、さらに、ただ、その内容を見ると、子供に迎合するだけの批准ではその後に教育行政にも、社会生活、家庭生活上にも大きな問題が生じてくる、このあたりを十分に検討し、改正すべきところは思い切って改正し、当面留保すべきところがあれば留保することが、子供たちの未来に責任を持つ大人世代の努めであるといったことが述べられている。
そこで、次の四点についてお尋ねをしたいと思います。
この児童の権利条約に対する知事及び教育長の所見であります。
二番目は、この児童の権利条約について、内部でどのように検討して、今まで国に対してどのように働きかけてきたか。
三番目、この児童の権利条約が国会で批准されようとしているが、日本経済新聞の社説でも指摘しているように、大変大きな重要な問題を含んでいるので、この条約の批准についてどのように考え、それに対してどのような行動を起こすのか。
第四点目、特に第十二条の「意見表明権」、第十三条の「表現・情報の自由」、第十四条の「思想・良心・宗教の自由」、第十五条の「結社・集会の自由」、第十六条の「プライバシー・名誉・通信の保護」について大きな問題点があると思うが、どのように考えるか、知事及び教育長の答弁を求めます。
第二番目でありますが、紀南地方における看護婦の不足対策についてであります。
厚生省は、ナイチンゲールが生まれた五月十二日を「看護の日」とし、以後一週間を「看護週間」に制定した。国が「看護の日」制定に踏み切った背景には、既に深刻化している看護婦不足の問題がある。それに、高齢者を介護する人材を今後どうするかという問題もある。
平成元年末現在、看護婦、保健婦などの看護職員の総数は、八十万人の必要数に比べて五万人不足をしているのであります。平成二年度から始まった高齢者保健福祉推進十か年戦略では、さらに看護職員が五万人、ホームヘルパーが七万人、寮母や介護職員が十一万人必要であります。看護婦不足は東京、大阪、北海道など病床数の多い地域で深刻だと言われているが、我が和歌山県もご多分に漏れず、紀南地方でも看護婦の不足が一段と深刻になってきている。
厚生省の保健医療、福祉マンパワー対策本部は、一月に九回を超す例も多い夜勤の回数を八回以下にし、完全週休二日制の実施を目指すなど、待遇改善策を中間報告としてまとめている。これを実現するためにはさらに増員が必要で、厚生省は現在、待遇改善策を織り込んだ需給計画の見直しを行っているが、来年以降、十八歳人口が急激に減り始めるため、早くもその実現を危ぶむ声が聞かれているのであります。
このような厳しい状況が考えられる現在、紀南地方における看護婦がますます不足してきて、地方の医療活動にも支障を来すおそれがあります。
先日、木下秀男議員からも質問がありましたように、看護短大の設立、看護養成所の新設も考えていかなければなりませんが、当面の施策として今ある施設の拡充を図るべきだと思います。
まず第一に、県立南紀高等学校の専攻科の定員を現在の三十名から四十名に増員すべきである。今春、南紀高等学校の衛生看護科の卒業生は、全日制、定時制の合計で七十二名でありまして、そのうち同校の専攻科へ進学できたのはたった三名であります。卒業生のうち十五名は他の学校の看護婦の養成所へ入学したのであります。
全国の看護婦専攻科のある公立学校十五校のうち、南紀高等学校を含めて三校だけが定員三十名で、あとの十二校は定員四十名であります。本校の衛生看護科から自分の学校の専攻科への進学率を見てみますと、悪いところで五〇%であり、最高のところは岡山県倉敷中央高等学校の九〇%であります。南紀高等学校の場合、七十二分の三でありますから、たった四・一%で、本当にあきれた数字であります。
そこで、三十名から四十名へ十名の定員増を図ると同時に、この増員した分を地元の高校の推薦により入学させると、看護婦の地元定着が進んで看護婦不足の解消の一助となります。若者が定着いたしまして、地域の活性化にも大いに役立つのであります。
また、公立高等学校の入学試験日を見ると、南紀高等学校が三月十四日であり、一番早い公立は茨城県の岩瀬高等学校で一月十六日と十七日に試験が行われ、ほとんどの学校が一月から二月に行われております。南紀高等学校の衛生看護科の生徒も、十五名に及ぶ大量の優秀な生徒が他県へ行くことになっているので、入学試験を一月中にして他県に行かないように地元定着を図るべきだと思うが、教育長の見解をお尋ねいたします。
次に、社会保険紀南看護専門学校の定員を現在の二十名から三十名へ十名の増員を図り、その増員された分について、地元を中心とした推薦制度を取り入れて地元定着を図り、看護婦不足の解消を図るべきだと思うが、民生部長の答弁を求めます。
第三番目は、精神保健相談員の増員についてであります。
この問題については、昭和六十二年九月県議会で私が取り上げました。保健所に精神衛生相談員が配置されるようになったのは、昭和四十年六月に精神衛生法並びに保健所法の改正を見てからであります。保健所に対する精神保健業務の通知は、昭和四十一年の二月に公衆衛生局長通知「保健所における精神衛生業務について」により明らかにされてきたのであります。この通知は、保健所における精神衛生実践を、精神衛生相談員、医師、保健婦、嘱託医に対して、精神障害者の早期発見、早期治療、再発防止、アフターケアをその業務として課したものであります。いわば、保健所という場所を地域の医療福祉実践を展開する場として規定したのがこの通知であります。
本県において、この通知がなされて以後、保健婦に対して精神衛生相談員の認定講習を受けさせ、何人かの保健婦が精神衛生相談員の資格を取っております。まことに残念でありますが、専任の精神保健相談員が配置されましたのは、和歌山市の中央保健所で昭和六十二年になってからであり、現在、健康対策課に配置されているのは、私がこの問題をこの壇上で取り上げた後の平成二年であります。それも岩出保健所との兼任であり、本人は非常な激務に耐えている現状であります。
精神衛生法が改正されて精神保健法が昭和六十二年に施行されたのでありますが、この法律の施行によって、精神医療、精神保健を取り巻く状況は、入院中心の治療体制から地域医療を中心とした体制への転換が求められているのであります。
保健所は地域精神保健の中核機関として位置づけられ、精神保健相談、訪問指導及び社会復帰相談指導等の事業を実施しているが、現実は、地域精神保健活動の展開は専ら保健婦にゆだねられているのが現状であります。保健婦は公衆衛生学専攻であるので、習得した学問の基礎が違うし、また本来の一般保健相談業務を行わなければならないので、十分な精神保健活動ができないのであります。
私の地域で、本年になって三件の火災が発生しておりまして、地元の神社へ行っておはらいをしてきたぐらいであります。まことに残念でありますが、そのうちの二件は精神障害者の方が関係しており、地域の人々も常々何か事が起こるのではないかと心配していたが、それが現実の問題となって、その精神障害者の家族の方々も大変なショックを受けたのであります。
もし田辺保健所で専任の精神保健相談員がおって十分な精神保健相談、訪問指導を行えていれば、これらの不幸な事故も発生することなく、精神障害者の方も、その家族の方も、地域社会の人々も、明るい生活を送れているのではないかと思われます。
また、県下で精神障害者の社会復帰のための社会資源が不足しており、入院中で症状のよくなった人でも、地域の受け皿がないため長期入院を余儀なくされている状況であります。この社会資源の中で、とりわけ精神保健相談員の役割は重要となってきているのであります。精神保健相談員の業務は、精神障害者の症状が急に重くなった場合の対応や入院中の家族関係の維持、利用できる福祉制度の紹介、社会復帰相談、社会復帰援助など、精神障害者の日常生活の相談援助を行うことであり、精神障害者の地域定着を図る上からも、精神保健相談員を少なくとも各保健所へ一名は配置しなければならないと存ずるのであります。
それは、「健康・福祉和歌山」の実現を県政の三大柱の一つして五選を目指している仮谷知事の大きな責務であると思い、そのことを県民の皆さんは心から待ち望んでいるのであります。このことに関する仮谷知事の所見をお尋ねいたします。
次に保健婦の精神保健相談員の資格取得の問題ですが、ご存じのように、現在の精神保健に関する業務は保健婦の皆さんが中心になって行っているが、実際に取得している保健婦が少なく、県下で十名だと聞いております。そして、現実の業務は最低二人がペアになって行わなければならないし、先ほども申し上げましたように、保健婦は公衆衛生学専攻であり、精神保健相談員は福祉心理学専攻であって、学問的に基礎が違うので、専門的に勉強して保健婦の皆さんにも精神保健相談員の資格を取ってもらい、精神保健法の精神を生かした業務を行い、精神障害者の本当の意味での安らかな地域定着を促進すべきであると思います。
そこで、保健環境部長の見解をお尋ねしたいと思います。
以上で、第一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの木下義夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 木下議員にお答え申し上げます。
児童の権利条約に対する知事の所見、また、この条約批准についてどのように考えておるか、どのような行動をするかということでございます。
本条約は、児童の意見表明権、思想の自由、また児童に対する差別禁止等、児童の権利に関して包括的な規定がなされており、世界の多くの国において生命権すら危ぶまれている児童が存在している現在、昨年この条約が発効されたということは大きな意義があると思うわけでございます。すべての児童がひとしく健全に育成され、また幸せが保障されるということを、私も強く願っております。
しかし、お話ございましたように、問題点も多く、その締結に向けての国内法の整備ということが極めて重要でございます。現在、政府部内においてその整合性等について検討作業が進められており、私もその作業について注目しているところでございます。
申すまでもなく、社会生活を維持する上で大切なことは、自分を大切にするとともに、また相手を大切にしなければならない、自分の権利、また他人の権利を尊重することが必要でございます。条約の趣旨も、児童の権利保護に十分意を用い、かつ責任感、連帯感の醸成を保障しながら児童の健全育成に努めなければならないということだと理解しているところでございます。
議員のご指摘については十分配意つつ、関係機関と連携を密にしながら、児童福祉のために今後とも努力してまいりたいと思っております。
次に、精神保健相談員の増員でございますけれども、昨年、県の保健所に一名の精神保健相談員を配置したところでございます。最近、精神保健相談件数や訪問指導件数が年々増加している状況や、医療や福祉、行政の連携を図る上からも、専門知識、技術を持った専任の職員の必要性ということは私も認めているところでございます。
今後、地域における精神保健活動を積極的に推進し、指導体制の強化を図るために、保健所についても内容を十分検討し、また精神保健相談員の設置についていかに留意をするか。定数の問題等もございますから、そうした問題も加味しながら検討を進めてまいりたいと思っております。
○副議長(平越孝哉君) 民生部長吉井清純君。
〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) 紀南地方における看護婦不足対策についてお答えをいたします。
社会保険紀南専門学校は、社会保険病院の看護体制を確保することを目的として設置されているものであり、社会保険庁の委託事業として行われており、定員は一学年二十名で、全寮制となっております。
定員の増員については、宿舎、教室の拡充、また委託費の増額など、解決しなければならない問題があります。しかしながら、看護婦養成は県政にとっても緊急の課題でもございます。例えば、運用上、地元の方の通学を認めるなどの対応について、運営者である公立紀南病院組合及び経営委託者である社会保険庁に要望してまいりたいと存じます。
以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 保健環境部長遠藤 明君。
〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 保健所保健婦に対する精神保健相談員の資格取得についてでございますが、現在、県の保健所に資格を持った者を十名配置しており、精神保健家庭訪問指導やデイケアの業務を担当しているところでございます。
国などが主催している資格認定講習会には例年受講をさせておりますが、今後とも資格取得者の増員について計画的に進め、精神障害者の社会復帰の促進を図ってまいりたいと考えてございます。
○副議長(平越孝哉君) 教育長西川時千代君。
〔西川時千代君、登壇〕
○教育長(西川時千代君) 教育関係の二点についてお答えいたします。
まず、子供の権利条約と教育の関連についてでございます。
この条約は、子供を単なる保護の対象としてではなく、権利を行使する主体であると位置づけ、子供の意見を尊重することや健康を享受すること、さらに障害児の自立と社会参加など、子供の最善の利益を求めるとともに、こうした理念を実現するに当たって国際協力が重要であることを明文化したものであると認識してございます。
県教育委員会としては、本条約の趣旨や内容について種々研究を重ねるとともに、文部省を初めとする関係省庁の動向について関心を払い、緊密に連絡をとってまいったところであります。
なお、本条約が批准された場合でございますが、そのまま機械的に当てはめれば教育にかかわって問題点も生じてくるおそれがございますので、指導上、慎重に対応する必要があると考えております。
議員ご指摘の各条項については、それぞれの権利や自由には他の者の権利を尊重すること、公共の安全と秩序を守ること、集団の規律を維持することなどの観点から、種々の制限を伴うものであると理解してございます。
今後とも、子供の教育に当たっては、教育基本法の理念にのっとり、また我が国の学校教育が長年にわたって築いてきた貴重な成果を踏まえながら、それぞれの子供の発達段階を考慮し、一人一人の子供が心豊かに健全に成長することを援助する立場から、適切な指導、助言を行うことが親や教師など大人の義務であり、かつ責任であると考えてございます。
次に、県立南紀高等学校の衛生看護専攻科についてでございますが、昭和四十六年に設置して以来、これまで実習体制の整備や病院などとの連携を図りながら、看護業務の高度化、多様化など、幅広いニーズにこたえ、実績を上げてきたところであります。
卒業者の進路についてでございますが、本年三月の修了者二十八名のうち二名が進学し、二十六名が看護婦として就職しております。その地域別内訳は、紀南地方十四名、紀北地方六名、県外六名となってございます。
今後、紀南地方の看護婦の確保を図るという観点から、議員ご指摘の点を踏まえ、他府県の状況をも参考にしながら、入学者選抜の実施時期や方法などについて、さまざまな角度から検討を加えてまいりたいと考えております。
また、募集定員については、実習病院等の事情も勘案しながら、今後、関係機関とも協議し、研究してまいりたいと考えているところであります。
以上でございます。
○副議長(平越孝哉君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
37番木下義夫君。
○木下義夫君 知事初め関係部長並びに教育長から意のある答弁をいただいたわけでございますが、特に児童の権利条約については、条約そのものは非常にすばらしい面がある。しかし、活用というか利用の仕方によっては、非常にまた弊害が生ずるおそれがある。
ここに「生徒人権手帳」という本がございますが、このとおりやられたら教育なんかたまったものやない、こういうふうなことを私もこの本を読んで心配する者の一人であります。きょう、わざわざ遠いところを傍聴に来ていただいている方も、常々心配しているわけです。
今、教育長から、条約の批准があっても機械的にはやらない、今までの教育慣行、そういう積み重ねを中心にしてやっていきたいというふうな決意の披露がありましたが、どうか、今まで以上の配慮をもって取り組んでいただくことを心から要望したいと思います。
それから、看護婦の問題であります。
きょうは南紀高等学校と紀南病院の専門学校を取り上げましたが、田辺には田辺医師会の准看護学院、准看護婦の養成所がございます。この運営についても、いろんな点でご配慮を願いたい。
こういうふうなことを要望して、私の一般質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
○副議長(平越孝哉君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下義夫君の質問が終了いたしました。
○副議長(平越孝哉君) お諮りいたします。質疑及び一般質問は、以上をもって終結することにご異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(平越孝哉君) ご異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
○副議長(平越孝哉君) 次に、ただいま議題となっております全案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
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○副議長(平越孝哉君) 次に日程第三、請願の付託について申し上げます。
今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
○副議長(平越孝哉君) 次に、お諮りいたします。明六日は議事の都合により、また七月八日及び九日は各常任委員会審査のため、それぞれ休会といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(平越孝哉君) ご異議なしと認めます。よって、七月六日、七月八日及び九日は休会とすることに決定いたしました。
○副議長(平越孝哉君) この際、各常任委員会の会場をお知らせいたします。
職員からこれを申し上げます。
〔職員朗読〕
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総務委員会 第 一 委 員 会 室
厚生委員会 第 二 委 員 会 室
経済警察委員会 第 三 委 員 会 室
農林水産委員会 第 四 委 員 会 室
建設委員会 第 五 委 員 会 室
文教委員会 第 六 委 員 会 室
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○副議長(平越孝哉君) 次会は、七月十日再開いたします。
○副議長(平越孝哉君) 本日は、これをもって散会いたします。
午後一時四十四分散会