平成3年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(松本貞次議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午前十時四分開議
○議長(山本 一君) これより本日の会議を開きます。
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○議長(山本 一君) 日程第一、議案第八十四号から議案第百九号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
36番松本貞次君。
〔松本貞次君、登壇〕(拍手)
○松本貞次君 おはようございます。
まず、同和行政について質問いたします。
和歌山県は、部落問題について、戦後、国に先駆け、昭和二十三年から今日まで同和対策を県政の重点施策として取り組んできました。同和対策事業特別措置法が制定施行されてからはや二十三年を迎える中、本年は地対財特法の最終年度であるとともに、今後の部落解放に当たって大きな節目の時期であります。
そこで、少し歴史をさかのぼって考えてみたいと思います。
昭和三十三年に「部落差別をなくせ」という同和地区住民の切実な願いを込めた部落解放国策樹立要請全国会議が開催され、国策樹立請願大行進などに代表される果敢な運動によって昭和三十五年には同和対策審議会設置法案が可決され、その後、五年の歳月を経た審議の中で、昭和四十年に同和対策審議会の答申が出されたわけであります。我々の要求する国策としての同和対策を総合的に実施するための根拠となる法的措置を必要とするとの結論を得た結果、昭和四十四年の同和対策事業特別措置法として実を結び、抜本的な部落問題解決のための制度的保障が与えられたのであります。
本県においても、昭和二十七年に発生した某県会議員の差別発言の教訓により、国に先駆けて県政の重点施策として取り組んできた同和対策が全国の部落解放運動の注目を浴びてきたところであります。このような状況の中で、今日まで多くの人々の努力によって本県の部落差別の実態は一定の改善、整備がなされてきました。住環境の状況では、道路、上下水道等の生活基盤や住宅などが改善整備され、高校進学率や若年層の就労実態も、二十年前と比較すれば相当高まってきました。また、県民の部落問題に取り組む姿勢も、人権の大切さを自覚し、国民的課題として定着しつつあります。しかしながら、部落問題の解決という目標から現在の部落差別の実態を直視したとき、残された課題は少なくありません。
例えば、最も進んでいると言われる生活環境整備についても、さきの県同和対策協議会報告書においてさえ、平成四年度以降の法期限後に二百四十五億円の物的残事業──私の調査では四百五十億円の残事業──さらに、政令事業にない河川の改修、昭和四十四年以前に建設した老朽化した狭小住宅の建てかえ、今日まで同和地区住民のよりどころとなってきた隣保館を初めとする施設の維持管理等々、部落を解放するための必要事業では、県内すべての市町村を合わせると二千億円相当あるといった実態にあります。
また就労実態を見ても、若年層の常用雇用者は増加しつつあるとはいうものの、最も生活費のかかる中高年齢者に不安定就労者が多く、県平均と比較しても六・四%も高い実態にあるなど、多くの課題を残しています。さらに高校進学の状況は、四%から七%台の格差があります。入学率ではなく中退率の急増など卒業率で比較すれば一○%を超す格差があると考えられ、大学進学率についてはまだ全国平均の半分程度という状況であります。
一方、差別事件の状況を見ても、結婚等にかかわった差別事件は後を絶ちませんし、教育現場における差別事件も多発しています。さらに、各界のトップ層や公務員の差別事件、悪質な差別落書きや差別投書などが続発している実態であります。
以上のように、住環境面の改善整備が進んできた部落においても、生活、教育、労働などソフト面で多くの課題が残されているのであります。このことは、さきに開催された県内すべての市町村長、議会議長参加による県独自の東京大会でも議論の集中するところとなり、引き続き法的根拠を要望するに至っているのであります。
そこで、知事にお伺いいたします。
地対財特法の法期限後の法的措置について、本県としてどのように考えておられるのか、さらに七月十二日に開催される全日本同和対策協議会にどのような姿勢で臨んでいかれるのか、まず所見をお聞きしたいのであります。
次に、現在、国の地対協では法期限後の対応策について審議されているところであり、政府では、現行の地対財特法が一般対策への移行を円滑に進めるための最終の特別法であり、したがって平成四年度以降の法的措置はないかのような厚い壁をもって臨んでいるように聞き及んでいます。知事の委員としての立場は申すまでもなく、同和行政に真剣に取り組んでいる地方自治体の代表としての委員であり、その果たす役割は重大であります。知事は地対協の中で今後どのような働きをするのか、その決意をお聞かせいただきたいのであります。
次に、農業政策における活性化の促進についてお伺いをいたします。
県政百余年の歴史とともに、和歌山と言えばミカン──ミカン立県として名実ともに一大繁栄をもたらした黄金時代を思い浮かべると、現在のかんきつ産業が余りにも格差があるように思えてなりません。二十世紀前半の高度成長、二十世紀後半の全国のミカン過剰生産、それにオレンジ自由化の二重パンチ等々、先人、先輩の築き上げてきた農業立県としての価値観が希薄となり、今日の農産物の収益高においても全国中堅クラスから、現在はワーストスリーに近い減収となっていると聞きます。では、一体なぜそのような状況となったのかを考えるとき、もちろん生産者自己の反省も促すとともに、県行政の農業に対する指導面と対応面の甘さが大と考えます。
そこで、政策における今後の活性をいかに促進すべきかを一、二点お伺いいたします。
まず、一九八九年の和歌山県農協中央会の新年放談をまとめると、一、オレンジの自由化に対応でき得る対策の肝要性、一、産地間の適地適作の合理化、一、オレンジの逆輸出向けの検討、以上を骨子とした談話であったと思います。県としてこの対応について県農協とどう話し合われたのか、お聞かせを願いたい。
また、かつて故玉置総務長官が就任された直後、農協は営利に傾き過ぎると全国各農協に対して注意勧告を行ったことが記憶に新しいが、その後、農協の体質に変化があるのか否か。今まさにその時期が到来したと言わざるを得ない。真に農民のための農協、農業立県としての農協の指導と対応が今こそ必要と考えるが、本県の考えを示されたい。
次に、農業政策促進の条件についてお伺いいたします。
まず本県の農業政策について、農産物の生産が県の主要産業として政策面に位置するか否かをお聞きしたい。
全国のかんきつ生産県の農協組織への対応と本県の農協組織に対する対応の仕方が違っていると思われるが、いかがか。
農産物の生産性を高めるためには消費者本位の生産を基本とした指導を行うべきで、農家本位の生産向上は消費者に見放されるということを厳しく受けとめて指導すべきと思うが、どうか。
なぜ私がこのようなことを言うかというと、前段の県農専務の放談の中にあった適地適作の合理化について徹底した指導がなされていないように思うからであります。
農産物の栽培には三つの条件が必要であります。土質、気温、雨量によってそれぞれの栽培品種が異なることが至極当然であるはずが、現実に実行できていないのが問題であります。その結果、商品価値のない果実を消費者に供給し不評を買う。凍害品、浮き皮、す上がりという、それであります。全県下のかんきつ分布図(オレンジマップ)に基づく実行力が全く発揮されていない要因はどこにあるのか。適地適作という限りは産地の立地条件である三原則を生かした栽培方法を徹底して指導すべきであると考えるが、本県の農業政策の所見を示されたい。
また、和歌山県における三宝柑は、全国に類のない上品な味と珍しい形をしたかんきつであります。
百七十三年前の一八一八年に、徳川家の藩士・野中為之助氏が自宅の庭に植えて育てていたものを、当時の藩主・徳川治寛侯に献上したところ、その上品な味と珍しい形をすごく愛され、城内で栽培されていたが、当時の徳川家の重臣であった大江竜眠氏が城内の三宝柑の苗木を自宅でふやし、たまたま大江氏の親友で当時の栖原村長であった千川安松氏が譲り受け、栽培を始めたのが栖原三宝柑の歴史であります。
三宝柑の名称は、最初、殿様に献上した際、三方に載せて献上したとき形が宝珠に似ているため三宝柑として伝えられています。「三宝」とは、仏教では非常に意義深く、また吉祥の名であると伝えられています。現在でも、北陸地方では祝い事には欠かせない果物と重宝がられているところもあります。まさに、適地適作、歴史と伝統を守る今日のマル栖組合員の努力は大であります。
このように歴史ある三宝柑を育て守る努力は並み大抵ではありません。他のかんきつと違い多くの難点もあります。県行政としてこのような特産品には特別の農業政策を講じるべきと考えるが、どうか。
以上をもって、質問を終わります。
○議長(山本 一君) ただいまの松本貞次君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 松本貞次議員にお答え申し上げます。
同和行政について、地対財特法の法期限後の法的措置の問題でございます。
松本議員お話しのように、本県の同和問題の現状は、生活環境の改善整備や教育啓発についても相当な進展が見られてきたところでございます。しかしなお、ご指摘のような課題が残されているのも事実でございます。県の同和対策協議会としても、法期限後の本県の対応策について検討してきた結果、同和問題の解決は国の政治的課題として位置づける中で、総合的な施策を推進するため引き続き法的措置を講じられるよう国に対して強く要望していく必要があるとの結論に立ち至ったわけでございます。
現行法は一般対策へ円滑な移行をする最終の特別法であるという政府の厳しい見解があるわけでございますけれども、本県としては去る六月十九日、政府陳情集会を東京で開催して、県議会、市町村ともども強く要請してきたところでございますし、今後も引き続き適切に対応してまいりたいと思っております。
また、全日本同和対策協議会の全国大会についてでございます。
来る七月十二日に東京で全国大会が開催されますが、これは法的措置の実現と平成四年度以降の同和対策関係政府予算の確保を強く要望するために都府県、市町村長が参加して行われるものでございます。本県においても、県と関係市町村長が参加して政府並びに国会に対して法的措置を強く訴えてまいります。
それから、地対協委員としての知事の役割というか決意でございます。
国に設置されておる地域改善対策協議会は、同和関係施策のあり方についての政府に対する意見具申など重要な役割を持っており、私も当協議会の委員として参画しているところでございます。当協議会では、どのようにして特別対策を一般対策に円滑に移行するかについて検討を進めておりまして、現在、法失効後の同和対策についてさまざまな意見が出され、慎重な検討がなされているところでございます。
現在の地対財特法が四年前にできたわけでございますけれども、その前年の十二月の初めごろに協議会の本答申が出されました。しかしまた、八月の予算の大蔵省の締め切りに合わせて中間答申が必要でございます。この中間答申においてどのようにするかについて、先ほど申し上げた県の態度をもって和歌山県の実情を訴え、そしてまた今後の対策を訴えて意見を開陳し、積極的に協議会を進めていくように努力してまいる所存でございます。
○議長(山本 一君) 農林水産部長若林弘澄君。
〔若林弘澄君、登壇〕
○農林水産部長(若林弘澄君) お答えいたします。
まず最初に、農業政策における活性化の促進についての県農協中央会への指導と対応についてであります。
平成元年の農協中央会の新年放談については、昭和六十三年六月、日米間で決着を見たオレンジ、果汁等の輸入自由化に対する農業団体としての対応策を述べたものと聞き及んでございます。この対策については、農業情勢の厳しさを踏まえ、自由化後の産地のあり方について農業団体と話し合う中で、全国みかん生産府県知事会議とともに県議会の格別のお力添えをいただき、政府に強く働きかけてまいったところでございます。その結果、国はかんきつ園地再編対策を初め輸出対策など五項目から成る国内対策骨子の実施に踏み切ったものであります。
この対策の実施に当たっては、農業団体、関係機関の合意と指導体制の一元化を図りながら、消費者ニーズに見合った高品質果実の生産とかんきつ産地の再編整備に取り組んでまいったところでございます。その結果、全国的にも転換目標面積がほぼ達成されたところであり、本県でも温州ミカン、中晩柑を含めて二千九百七十五ヘクタールとなってございます。また輸出振興では、従来のカナダ輸出に加えて、平成二年度からは桃山町農協においてもアメリカ向けのミカン輸出を実施しているところでございます。今後とも、厳しい状況を踏まえ、引き続き適地適作を基本に総合的な生産、流通指導を図ってまいる必要があると考えてございます。
次に、農業立県としての農協の指導と対応についてであります。
県といたしましても、組合員の意向が農協の事業運営に十分反映される組織体制づくり、農家経営を主眼とした営農指導体制の確立、消費者ニーズの変化や市場動向に沿った販売の推進等について指導に努めているところでございます。
農協組織においても、昭和六十三年に「二十一世紀を展望する和歌山県農協の基本戦略」を策定し、健康と安全、高品質、高技術を基本に地域の特性を生かした生産、販売体制の確立と学識経験者等の理事、監事への登用、さらには県農協連における営農対策室の新たな設置など、運営体制の改善について鋭意努力がなされているところでございます。議員お話しのように、農業経営が多様化する中で、農家から信頼される農協の確立を目指し、なお一層積極的に取り組むよう指導してまいる所存でございます。
次に、オレンジマップの発揮と農業政策についての所見でございます。
農業など第一次産業は地域経済の活力の維持、発展に大きな役割を果たしていることから、その振興については県政推進上、極めて重要な施策であると認識してございます。このようなことから、市町村はもとより農協など生産者団体と連携を図りながら、消費者ニーズに見合った生産、流通の推進を基本に濃密的な取り組みを行っているところであります。
昭和五十八年から生産販売に取り組んできた味一ミカンは、関係方面の評価が高い一方、厳しい品質基準や夏から秋にかけての気象条件に左右されることもあって出荷量が不安定な面もございますので、議員お話しのとおり、適地条件に見合った徹底した生産指導が必要なものと考えてございます。
そのため、産地条件を科学的に把握し、味一ミカンの生産拡大に資するため、有田地域を対象に昨年度完成したオレンジマップの積極的な啓発はもとより、この活用の推進を初め、技術指導面においても農業団体、試験研究、普及、行政で構成する農林水産技術会議の果樹部会や味一ミカン専門委員会において検討協議し、指導の一元化とその推進に努めているところでございます。さらに、本年はご案内のとおり、去る六月二十五日、有田市で開催された第三回味一ミカンサミット会議においても、マルチ栽培の推進や密植園の間伐、品種更新等、味一ミカンの生産拡大に向けて積極的に取り組むことを確認し合ったところでございます。
最後に、三宝柑など特産品の生産振興についてであります。
昨今の消費者ニーズの多様化、高度化に伴い、個性豊かな地域的な特産品が見直されてございます。このような中で、地域特産果樹について、将来の消費動向の的確な見通しと地域の自然条件に見合った生産振興を図っていくことが重要であると考えてございます。
議員お話しの湯浅町の三宝柑は、地域の特性を最大限に生かした貴重な特産品であると考えてございまして、湯浅町に導入されて以来、今日まで百十余年の伝統を守り続けてこられた生産者の皆さんのご努力を高く評価しているところでございます。
県では、こうした地域特産果樹の振興を図るため、今までも樹園地農道の設置や老木園の改植更新等の生産対策に加え、集出荷施設の整備にも取り組んでまいったところであります。今後とも、果実消費の多様化や国際化に対応して、こうした地域特産果樹の振興のため、生産対策はもとより選果場等、流通施設整備についても検討してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(山本 一君) 以上で、松本貞次君の質問が終了いたしました。