平成3年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(木下秀男議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
○議長(山本 一君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
6番木下秀男君。
〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 ただいまの森議員の質問と重なるところがあるかと思いますが、関心のあらわれということで当局の皆さん方にお聞きいただきたいと思います。
まず、関西国際空港全体構想の推進についてであります。
今議会の提案理由と県政の最近の動きについてご説明がありましたが、お説のとおり、ことし四月二十八日には空港島とその対岸・泉佐野市が空港連絡橋で結ばれて陸続きとなり、空港島内でターミナルビルが着工され、本格的な建設工事が進められております。この勢いで第一期工事のおくれを取り戻し、全体構想の推進に弾みをつけたいところでございますが、少々気になる情報を聞き入れましたので、お伺いいたします。
今月二十一日、大蔵省に新着任の事務次官が関西財界への新任のあいさつに来阪され、記者会見の席上で、関西国際空港全体構想の実現について「一期工事の開港に全力を挙げる段階だ。将来の長期的な輸送需要の行方、関西国際空港会社の採算についてまだまだ勉強することが多い。来年度予算で本格調査費を計上するには運輸省を含めて慎重な態度で進めることになるのではないか」と、大変トーンの下がった発言をされております。さらに、伊丹空港存続を強力に推進しております十一市協は、現在の伊丹空港について都市型空港整備に取り組む方針を立て、今年から予算獲得運動を進めることを決議したとも漏れ聞くのであります。
関西国際空港建設促進の先頭に立ってこられました岸大阪府知事が引退され、関西国際空港会社設立当初から取り組んでこられた竹内社長、松山副社長の更迭と、首脳部がさま変わりをいたしました。この関西国際空港建設決定時から今日まで、関係三府県知事の一人として取り組んでこられ、経過等すべてを知り尽くし、今では長老的な立場にある仮谷知事のこれからの政治力を問われるときが来たのではないかと思います。
「県勢浮揚」を合い言葉に、知事を先頭に我々県議会も伊丹空港廃止を前提として本空港建設促進に取り組んでまいりましたが、残念ながら伊丹空港存続が決定され、国内便数も伊丹空港を主に新空港は接続便程度と言われ、運輸省と悶着もありました。かつて知事は、この議場で「政治生命をかける」と力強く決意を披瀝されましたが、今また全体構想推進に本格的に取り組み、実現に向かって行動を起こさねばならないやさきに、出ばなをくじかれたような情報でございます。
我々県民の関西国際空港開港にかける期待と相反する方向へ向かいつつあるような気がしてならないのでありますが、来年度予算編成に向けていかが取り組まれるのか、知事のご所見をお伺いいたします。
関連してでありますが、加太開発とアクセスについて二、三、お伺いいたします。
先日、久しぶりに加太の土取り場の現場と周辺の道路の状況を見てまいりました。土取りの現場は大変なさま変わりで、驚き、目をみはるたものであります。公社職員の説明によりますと、昭和六十三年五月の工事開始以来、約一万六千人余の見学者があったとのことであります。コスモパーク構想を中心とした加太開発に対する県民の高い関心のあらわれだと思います。すべて、新空港時代に向けての期待でもありましょう。細部については委員会でお伺いするといたしまして、次の点についてお伺いします。
土砂採取工事の工期が一九八九年四月から一九九一年十二月、ことしの末となっておりますが、期限内に完了するのか否か。
次に、開発推進機構というものを組織し、ことしの夏までに開発プランと利用計画をまとめるとしておりますが、予定どおりでき上がるのか否か。
土砂搬出後にできる跡地、いわゆるコスモパーク構想の中心となる約百四十ヘクタール余の土地全部をこの事業計画内に組み入れてできるものかどうか。私有地等があって全体計画に支障を来さないかどうか。
過日の新聞報道によりますと、この土砂採取工事で開発公社から地元自治会に支払った地域整備費について、自治省が「全国的に珍しいケース」として調査を始めたとあります。調査内容は、算定基準があいまいで使途制限がなく迷惑料の意味合いが強いということだそうでありますが、これが事実とすれば、今後進めていくもろもろの開発事業、わけてもリゾート開発等の推進に大きく影響するのではないかと危惧するものであります。この点についてお伺いいたします。
現在、加太土砂採取場から大川地区の土砂積み出し場まで二本のトンネルを通ってベルトコンベヤーで搬出しておりますが、工事完了後、このトンネルの大工事を行い、四車線の道路をつけることを提言するものであります。初めからトンネルを掘るのではなくて、開通しているものを大きくするものでありますから、費用も割安であり、用地買収も必要でなく、一石二鳥と考えますが、企画部長のご見解をお伺いいたします。
次に、加太コスモパークを中心としたアクセスの問題であります。
粉河加太線、西脇山口線、岬加太港線等の整備は遅々として進んでいないように見受けられたのでありますが、この線の整備の工程と紀の川河口にかけられた有料橋の右岸の法線と工程についてお伺いいたします。また、コスモパーク構想も具体化してまいったようでございますが、この地から大川を経て岬町、関西国際空港に至るルートについてもお伺いいたします。
次に、看護婦不足解消についてお伺いいたします。
看護婦不足は今や大きな社会問題となっており、昨年六月議会に看護婦確保のための請願を受け、我々県議会全会一致で採択したところでありますが、関係機関のさまざまな取り組みにもかかわらず、看護婦不足の現状は日を追ってますます深刻になってまいっております。
和歌山県の看護職員需給計画によりますと、一九八八年(昭和六十三年)度の必要数七千七百人に対して就業者数は約六千六百余人で、充足率八五・七%と全国ワースト三位となっております。需給計画最終年度の一九九四年(平成六年)度の就業見込み者数でも、四百人不足となっております。
厚生省発表の適正数値も四百人不足となっていますが、その後、国において二十一世紀に向けて高齢化社会の到来を踏まえた高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)が策定され、さらに看護職員の需要が増すものと思われます。この現状を打破しようにも、今の和歌山県の状態では到底不可能であります。正看護婦養成数の基本定数が三百十五人と少ないからであります。
ちなみに、人口規模の類似したお隣の奈良県の正看護婦養成数は六百十人、滋賀県は四百七十五人と、和歌山県は大変なおくれをとっています。全国的に見ましても、看護婦不足解消作戦として、看護大学を設立する機運が本格化してきてございます。設立を検討しているのは全国十三都道府県で十四校、内訳は公立九校、学校法人五校と進行中との状況であります。この設立検討すべてが実施されれば、看護大学数は倍増となるわけでありますが、和歌山県には何ら影響がないと思います。
看護婦の絶対数が不足のため、夜勤日数が多くなり、健康不安と退職という二重三重の超過労働の実情を知り、早急な対応を施さなければなりません。地域医療体制を確立することが健康福祉和歌山の急務だとも思うのであります。
昨年から、看護婦さんが仕事の合間に街頭に立ち、看護と医療の実態を訴えておりました。一方、県医師会におきましても、各医療圏ごとの地域保健医療計画の推進に当たって、看護職員の確保問題について種々協議されていると聞き及んでいるところでございますが、こうした中で、ことしは紀中からさらに紀南地方に看護婦養成所の設立要求の運動が幅広く展開されつつございます。
県当局はことし三月に医科大学移転整備の基本構想を発表されましたが、その中に看護短期大学開設計画もありました。前述いたしましたとおり、看護婦養成は可及的速やかに対処すべきものと思考するものであります。当局の積極的なご答弁をお願いいたします。
次に、高齢化社会への対応──名づけて「シルバー・ユートピア構想」としてございますが──についてでございます。
厚生省が発表した一九九〇年の人口動態統計と将来推計人口発表によりますと、合計特殊出生率(女性が生涯に生む赤ちゃんの平均数)は一・五三人と、戦後最低の落ち込みと報じております。このまま推移いたしますと、総人口は二〇一〇年の一億二千九百万人をピークとして、以降は退潮に転じ、二十一世紀後半には九千万人台に転落すると推計してございます。七年後には子供より老人の方が多くなり、二十年後にはお産の数よりもお葬式の数が多くなるという、日本社会の構成が大変動の中にあることを示しているのであります。
昨年実施した国勢調査の結果を見ましても、県下各市町村のほとんどと言える減少を見てございます。高齢化と過疎が急速に進んでいる実情であります。ここで高齢化社会だ、過疎だといって手をこまねいているわけにはまいりません。今、高齢化社会にいる人々は、戦中戦後の我が国の困難期に日本復興の礎となった方々であります。老後にあるこの人々に対し、福祉の面でも報いることが努めであると思うのであります。
以上、かたいことを申し上げましたが、私はここで少し観点を変えて、高齢化対策と過疎対策、就労対策、無医地区解消、林材業対策等の一助にもなればと、提言を申し上げます。メディカルセンターを中心とした超大老人福祉施設の建設であります。名づけて「シルバー・ユートピア」としておりますが、健康を担当する病院、特別養護老人ホーム、一般老人ホーム、夫婦用のコテージ、福祉教養娯楽センター、軽作業工場、農場、加工工場、ボランティアハウス、生活必需品の商店等々、一般社会と変わらないシルバーの町の建設であります。その周辺に看護婦さんや施設で働く人々の住居を建設し、その住居はすべて公営住宅を木造で建築し、建築材は森林組合が責任を持って調達する。この事業の発想は、医療産業としてとらえ、高齢化社会を認識し、奉仕の精神がなければ成り立つものではございませんけれども、中国地方で、小規模ではありますが既に実施されている町がございます。担当部長の賢明なる答弁をお願いいたします。
次に、女性の社会参加と就労についてであります。
私は、今春の選挙に十三項目の公約を掲げてまいりました。その中に、「あらゆる分野に女性の英知と能力を」とうたってございます。その公約実現に向かってこの問題を取り上げました。
昨今、女性を取り巻く社会経済環境の変化に伴い、女性の社会進出は目覚ましいものがあります。しかし、女性が男性とともにあらゆる分野の政策や方針決定の場に男女平等に参画していける体制づくりは、いまひとつという現状であります。国においては、審議会、委員会の全委員の中で女性委員の占める割合は平成二年十一月現在で八・二%であり、今後五年間に一五%を目標に努力していると伺っております。
本県におきましても、女性委員の登用について積極的に取り組まれてございますが、まだまだの感があります。ことしから国同様の目標値を定め、女性の考えや意見の政策方針決定への参画を望むものでありますが、知事のお考えをお伺いいたします。
さて、男女雇用機会均等法が昭和六十一年四月一日に施行されてから五年が経過しましたが、この間、男女平等に向けての制度、法律の改善が図られ、女性がその意欲と能力を発揮して働くことができる条件整備も徐々に進められてまいりました。今や女性の雇用者数は大幅に増加し、雇用者全体に占める女性の割合は三七・九%となってございますが、一方、女性が働き続ける場合の困難や障害も依然として多くあり、最近の調査によりますと、その原因が育児と答えた人が六一・四%、老人や病人の世話が四五・三%と、どちらも家庭内に多くの課題があると考えられます。社会情勢の変化により、今後、女性の社会参加わけても就労力にかける期待はより大きなものがあるため、働く女性の立場に立った施策を講じることにより、より一層の女性の活躍を願うものであります。
さきに国会で可決され来年四月一日から施行される「育児休業等に関する法律」では、男女就労者が、子供が一歳に達するまで、男女どちらでも申し出た方が休業できることが盛り込まれている法と聞き、これは女性問題を推進する上で明るいニュースと受けとめたものであります。
しかし、一歳になったからといって子育て卒業というわけにはまいりません。特に、就学年齢に達した後、高学年になるまでの間の帰宅後の行動が親にとっては心配であります。女性が持てる能力を発揮して積極的に社会参加し、あわせて安心して働き続けるために育児休業制度の実施に向けて企業等にどのように指導していくのか、もう一点は、小学校低学年児童の放課後対策についてどのような考えをお持ちか、県当局のご見解をお伺いいたします。
最後に、住友金属工業西防波堤沖埋め立てについてであります。
この件については昨日二人の質問者があり、三番せんじになりますけれども、私はこの件に大変注目をいたしておりまして、この議場で二回当局をただしました関係上、なるべく重複を避けて質問いたします。
昭和四十七年、住友金属和歌山製鉄所が西防波堤沖埋立計画を発表し、これを受けて和歌山県は、各関係機関と慎重に検討を重ね、昭和五十五年六月、公有水面埋立免許をされたことはご承知のとおりであります。埋立計画の目的は、九百万トン生産体制の確立と、環境問題を中心とした公害施設の沖出しを図り、公害防止協定のそれぞれの数値のすべてをクリアすることでありました。
県当局としては、環境、公害問題はもとより、埋立地に最先端の新製鉄工場移設計画を図り、鹿島製鉄所にまさるとも劣らない新鋭設備工場で、鉄冷えの中にあって合理化が進む和歌山製鉄所の活性化を図り、住友金属工業関連企業に働く労働者の不安を取り除き、日進月歩する技術革新に対処し、世界に誇る工場として再生することを望んだものと思います。
当時の鉄鋼事情を考えれば、和歌山製鉄所の場合、粗鋼生産コストは鹿島製鉄所に比してトン当たり約一万円強のコスト高となり、加えて鉄冷えで鉄鋼需要は少なく、合理化の中で配置転換や出向、人員整理等で大変な時期でもあり、知事におかれましても、この窮状を打開するためにも、中央官庁に強く働きかけ、和歌山県経済の立て直しのために西防波堤沖埋立免許に同意されたものと思うものであります。
昭和五十五年八月に護岸工事に着工し、五十八年十一月には第一工区が完成をしております。経済情勢の見きわめが非常に難しいことは承知するものでありますが、昭和五十九年ごろの住金側において、今日の鉄鋼事情を推察できなかったのでありましょうか。工事着手から今日までの鉄鋼業界の全国の生産量に比して、住友金属の年間粗鋼生産量の推移の資料を見れば明らかに三百万トンの横ばい状態であり、この時点で公害防止基準もクリアできる生産量に減産されていると思うのであります。
ここで、住金の生い立ちについてごく簡単に触れてみますと、遠く戦前の昭和十一年ごろから建設計画が始まり、昭和十四年、紀の川右岸の湊御膳松、松江、西庄を中心に用地を求め、昭和十五年末に和歌山製鉄所の新設に着工されたと言われます。設立当時の記録によりますと、用地買収対象になった地主や農家の戸数は五百八十四戸、土地田畑の買収面積は九十三万坪にも及び、「戦時体制」という名のもとに、サーベル姿の警官や憲兵まであらわれ、被買収者に対して有形無形の威圧と干渉が加えられたと言われております。白砂青松の浜と豊かな田地を失った人々、召集や徴用で働き手を取られ、心のよりどころの農地を強制買収された被買収者たちは、放心の状態であったとも記されてございます。
こんな誕生の歴史を持つ住友金属が、戦争を経て二十有余年の年月を経た昭和四十年代後半に、近代製鉄所として整備拡張すべく、さらに公害防止、環境整備等の目的から海面埋立計画を立て、前段申し述べた経過をたどってきたと思うのであります。
昭和四十七年八月に出された埋立計画説明書、昭和五十三年八月に出された公有水面埋立免許願書のいずれにも、「公害防止の徹底と環境改善対策に必要な用地を確保するため」と明記されてございます。工事は三工区に分かれ、五十八年からその工事を遂行中でありますが、既に一工区が完了、公害防止や環境改善の一部が移転され、その実現に向かって進行中とのことであります。ところが、残りの二工区、三工区の埋立計画の完成も見ないことし五月、西防波堤沖埋立地の利用計画見直し案が示されました。第二工区を中心に、LNG火力発電所の建設ということであります。
そこでお伺いいたしますが、公有水面埋立法十三条ノ二または二十九条によれば、用途の変更等をする場合は和歌山県知事、和歌山下津港港湾管理者の長の許可が必要となっています。今般の事件について住友金属工業株式会社からいつ話があったのか、まずお伺いいたします。
この埋立事業に並行して、昭和五十七年度から、住友金属和歌山工場周辺の住宅地域への公害防止を目的に、河西緩衝緑地事業として、公害防止事業団の手で湊緑地、松江緑地、西松江緑地の三カ所の委託事業が百億円余の事業費をかけて行われてございます。事業費は国、県、企業者それぞれ三分の一の負担とも聞くのでありますが、その点についてお伺いいたします。これもすべて住友金属の公害防止、環境整備に関連するものと思うのでありますが、仮に住金の言う利用計画の変更が成った場合いかがなるのか、あわせてお伺い申し上げます。
新聞報道によりますと、和歌山市長には平成二年七月に埋立地の用途変更の申し入れがあったとされておりますが、免許者であり管理者である県に対し、相談もしくは意見聴取があってしかるべきだと思うのであります。国と県の補助事業が含まれているこの緩衝緑地事業についてお伺いするものであります。
本埋立計画は、昭和六十一年七月に工事期間の伸長許可願が出され、同年八月に許可されましたが、そのときの伸長願の理由は、埋め立てに要する廃棄物の大幅減と鉄鋼不況を挙げております。この時点で工場沖出し移転計画を断念せざるを得ない状態にありながらも、なお埋め立てを続行した住金の目的はどこにあったのでありましょうか。「県内の産業廃棄物の受け入れ」を表面の理由に、自社工場から出る廃棄物の投棄場所として確保しておくという以外の何物でもないと思うのであります。
周辺の住民は、不況による延期はやむを得ないが、おくれても当初の計画どおり工場移転が実現されることを条件に伸長に同意したものであります。ところが、地元民の同意と県の許可を受けながら、一年後に円高不況による資金不足を理由に公害防止の沖合移転の中止を明らかにしております。公有水面埋立許可を受け、種々の規制の中で、公害防止、環境整備を目的とした工場移転を円高不況を理由に取りやめるのは、国内の大手企業では初めてのケースと言われております。住友金属は、和歌山県と周辺住民に二度の約束違反をしたと思います。
当時の土木部長は、「公共性、説得力がないと公有水面埋立法により目的変更は認められず、国に没収ということもあり得る」とコメントされましたが、今もそのとおりであるか、お伺いいたします。
また企画部長は、「現在の経済状況を考えれば、移転は無理だというのはわかる。住友金属のハイテク分野や住友グループの工場誘致など、経済活性化に役立つ方向で再開発をお願いしている」とコメントされてございますが、既にこのとき、住金側から県に対して埋立地の利用計画の話があったと受けとめるものであります。そのとおりとするならば、県が住金側に申し入れておることと住金が検討しておるLNG火力発電所とは異なるものであって、この点と、県がお願いしたその後の経過をお伺いいたします。
和歌山県と住友金属工業和歌山製鉄所は、半世紀にわたる深い関係にあり、両者共存共栄を図りながらともに歩んできたと思います。申すまでもなく、当議会も、埋立計画以来、今日まで県当局と連携しながら協力、支援をしてまいりました。このたびの住友金属工業の行おうとしている計画変更について、免許者であり管理者である県知事を差しおいてとった行為は、まことに不誠実で残念に思います。いかに社会情勢や経済情勢が変わろうとも、住友金属工業だけの事由で一方的な中止、変更、不履行は許されるべきものではありません。企業者としての何の倫理観念もないと言わざるを得ないのであります。
住友金属工業経営陣の猛省を促して、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○議長(山本 一君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 木下秀男議員にお答え申し上げます。
関西国際空港の全体構想についてでございます。
お話ございましたように、大蔵の事務次官が関西へやってきての慎重論、また関空の首脳部の交代といったものを考えると非常に厳しい実情でございまして、それらの見通しについてどう思うかということでございます。
かねてから、早期実現のために、また要望決議並びに意見書の提出等、県議会の皆さん方のご支援をいただいて進めてきているところでございます。そうしたおかげで、昨年の八月の航空審議会の中間取りまとめが公表されまして、条件つきながら、事業着手の方針が示されたところでございます。さらにまた、平成三年度の予算編成においても、これまでの「全体構想検討基礎調査」から、全体構想を推進する上で一歩踏み込んだ「全体構想に関する調査」となったのでございます。
先ほど森議員にもお答えしましたように、厳しい環境でございますけれども、秋の閣議決定において全体構想が明確に位置づけられるように、県議会の皆さん、県選出の国会議員、近畿の知事会、国会議員等の協力を得ながら、これを強力に推進していかなければならないと存じておる次第でございます。
それから、女性の社会参加と就労の問題でございます。
県行政の推進に重要な役割を果たしている審議会とか委員会に女性の参加を得て、意見を求めて県政を推進せよということでございまして、私も同感でございます。そうした意味において、従来から審議会や委員会への女性の登用について努力しておるわけでございます。
平成三年度現在で登用率八・〇三%となってございまして、今後、積極的に進めてまいりたいと思っております。
他の問題については関係部長から答弁いたします。
○議長(山本 一君) 企画部長川端秀和君。
〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず、関西国際空港関連の加太開発についてお答えを申し上げます。
第一点の土砂採取事業については、本年六月末現在の総搬出土量は五千四百八十四万立方メートルでございます。なお、進捗率は八四%でございまして、本年十二月の埋め立て期限内に完了する予定でございます。
第二点は、土地利用計画についてでございます。
コスモパーク加太計画については、民間の開発ノーハウを活用するため、民間企業も参画したコスモパーク加太開発推進機構において、現在、土地利用計画等の基本計画を早期に策定すべく、鋭意作業中でございます。
第三点は、私有地等についてでございます。
コスモパーク加太計画は、土砂採取跡地を中心に一部私有地も含まれた約二百七十ヘクタールを開発整備しようとするものであり、予定地域内の方々にもご協力をいただきながら推進してまいりたいと考えてございます。
第四点は、土地開発公社が土砂採取事業に伴い地元自治会に支払いをしたいわゆる地元対策費でございますが、当時、関西国際空港島の埋め立て時期が迫る中、地元同意を得、早期に着工し円滑に事業を進めるための必要な措置として支払ったものでございます。
第五点は、土砂採取用トンネルの再利用についてでございます。
議員ご提言のあった土砂採取用トンネルの再利用については、現在まで関係機関ともども種々検討を重ねてまいりましたが、今後ともコスモパーク加太開発推進機構においてさらに研究してまいりたいと考えてございます。
次に、住友金属工業西防波堤沖埋立地の再開発についてお答えを申し上げます。
本県の産業構造は、鉄鋼、石油、化学等、基礎素材型産業に特化していることから、昭和六十一年十二月策定の第四次和歌山県長期総合計画に、産業構造の高度化・多角化を図っていくことが重要な課題であると位置づけをし、企業誘致に努力するとともに、広く産業界に対してその旨を機会あるごとに呼びかけ、お願いをしてきたところでございます。
なお、議員ご指摘の昭和六十二年九月時点においては、住友金属からの埋立地の利用計画の変更についての申し出の事実はございませんでしたので、ご理解を賜りたいと存じます。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 土木部長磯村幹夫君。
〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
加太開発に係るアクセスの整備でございます。
コスモパーク加太へのアクセス道路のうち、街路事業では西脇山口線と紀の川駅西庄線を整備しております。西脇山口線のうち、県道貴志琴の浦線との交差点より西側約六・四キロメートルについては、昭和四十七年度より県、市において整備を実施しており、うち約三・三キロメートルが平成二年度までに完成しております。残りの区間についても早期に完成できるよう事業を推進してまいります。
また、紀の川駅西庄線については、河合橋を含む約七百メーターの区間において事業を行っており、今後とも一層の促進を図ってまいります。
県道事業については、粉河加太線と岬加太港線の整備を促進しております。粉河加太線については、昭和六十二年度より約一・八キロメートルの加太バイパスに事業着手しておりますが、地権者の代替地要求、公図混乱等により用地買収が難航しております。引き続き、用地買収に全力を挙げてまいります。
岬加太港線については、平成二年度に工事着手した大川トンネルを平成五年に完成し、その後、取り合わせ道路の整備促進に努め、早期完成するよう努力してまいります。
紀の川河口大橋については、平成四年二月に供用予定であり、本橋を利用する交通は御膳松交差点で国道二十六号に接続するとともに、土入川西側において市によって整備が進められている市道松江百十二号線を経由して粉河加太線と接続されることになります。今後、河口大橋を含む周辺道路の交通量の推移等を見ながら、新たな道路整備の必要性を検討してまいります。
次に、住友金属西防波堤沖埋め立ての見直しについてでございます。
住友金属と和歌山市による今回の公表に関しては、住友金属から土地利用計画の見直し検討をしたい旨、また和歌山市からは地域振興の面からLNG火力発電所などの立地について検討したい旨、さらに、このことについて公表して地元関係者の理解を求めていきたいと、本年五月にそれぞれから県に対して話がありました。
次に、河西緩衝緑地事業についてでございます。
この河西緩衝緑地事業は、住友金属を中心とした工業地域と地域住民の居住地域との間に緩衝緑地を設置し、そこに緑豊かな植栽や公園施設を設けることにより公害を防止し、あわせて地域住民等の憩いの場をつくり出すことを目的とした事業であります。
事業費の負担は、議員ご指摘のとおり、原則として国、県、事業者がそれぞれ三分の一となっております。本事業は緩衝緑地の目的に照らして適切に執行する必要があり、周辺地域の情勢の変化に対しては国の指導を得て適切に対応してまいります。
次に、西防波堤沖埋め立ての目的変更に係る審査についてでございます。
公有水面の埋め立てについては、国土利用上、適正かつ合理的であること、その埋め立てが環境保全及び災害防止につき十分配慮されたものであること、埋立地の用途が土地利用または環境保全に関する国または地方公共団体の法律に基づく計画に違背しないことなどの免許基準が定められており、また埋め立ての必要性等、その内容について厳正な審査を行い判断することが求められるものであります。また埋立計画の変更申請においても、同様に厳正な審査を必要とするものであります。
なお、議員ご指摘の免許一年後での中止の申し出の件については、当時、住友金属より、そのような表明はしていないとの報告を受けておりますので、ご理解を賜りたくお願いいたします。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 保健環境部長遠藤 明君。
〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 看護婦不足解消とのご質問にお答えをいたします。
まず県内の就業看護婦の現状でございますが、人口十万対の指標で見ると、昭和六十三年末で五百七十一人で、全国平均五百五十一人を少し上回っており、都道府県別の順位としては二十七位となっているところでございます。
高齢化社会の到来や医療の高度化の流れの中で、看護職員不足対策は、議員ご指摘のとおり、極めて重要な課題と認識しているところでございます。
県としては、県立高等看護学院や県内養成施設の定数増を図ってきたところでございますが、さらに本年四月には、病院協会立和歌山看護専門学校の設置のほか、緊急措置として各養成施設に定員の一割増の入学許可を要請するなど、養成力の強化に努めているところでございます。
一方、看護職員の就業対策として、修学資金制度の充実、離職防止のための院内保育所の設置推進、ナースバンクの充実等にも取り組んでいるところでございます。
議員ご指摘のゴールドプランによる新たな需要等もあり、昭和六十三年度に策定した需給計画について現在その見直し作業を進めているところでございますが、看護婦養成機関における教育スタッフや実習病院の確保等、解決していかなければならない大きな課題もございます。今後、これらの問題も含め、国、市町村及び関係機関の協力を得るとともに、医科大学整備の一環として検討を進めている看護短大の設置とあわせ、二十一世紀を展望した県全体の供給体制の整備に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 総務部長山中昭栄君。
〔山中昭栄君、登壇〕
○総務部長(山中昭栄君) 看護婦養成に関連して、看護短期大学の設置についてでございますが、現在、看護職員の養成、確保が重要な課題となっております。医科大学においてもまた同様でございます。
このため、さきに取りまとめを行った県立医科大学の移転整備の基本構想において、看護短期大学の設置を検討することとしております。今後、医科大学の移転整備を進めていく中で、保健環境部、医科大学と調整を図りながら、精力的に取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(山本 一君) 民生部長吉井清純君。
〔吉井清純君、登壇〕
○民生部長(吉井清純君) お答えをいたします。
まず、高齢化社会への対応についてでございます。
本県の高齢化は全国平均を上回る速さで進行しておりますが、今後も経済社会の活力を維持しながら、人生八十年時代にふさわしい県民一人一人が安心して生きがいのある生活ができるよう、総合的な対応を図っていくことが重要と考えてございます。
このため、長寿社会総合対策指針を策定し、総合的な取り組みを行っているところでございますが、議員ご提言のとおり、高齢者の方々が快適な生活環境で過ごせるよう、医療、保健、福祉、生きがいなど、高齢者のニーズに対応できる諸機能を初め、就労施設、文化機能をも備え、さらに地域振興の視点も加えた地域づくり、町づくりを推進してまいらなければならないと考えております。
今後は、先進地の状況や本県での適合性について、関係部局とも連携をとりながら調査、検討をしてまいりたいと存じます。
次に、放課後児童対策についてお答えをいたします。
近年、社会環境の変化により就労女性が増加し、あわせて核家族化が進行する中、昼間、保護者のいない児童の増加が予想されるため、低学年児童の放課後の安全及び活動指導が重要な課題であると考えています。したがって、厚生省が実施している放課後児童対策事業の受け入れができるよう、設置主体の市町村に対して積極的な指導に努めてまいる所存でございます。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 商工労働部長中西伸雄君。
〔中西伸雄君、登壇〕
○商工労働部長(中西伸雄君) 木下議員にお答えを申し上げます。
育児休業制度の企業等への指導についてでございますが、議員ご指摘のように、女性の雇用者数が大幅に増加する中、女性が働き続けようとするとき最も困難なことは、育児と職業生活の両立であります。
さきに国会で成立した育児休業法では、男女労働者が子供が一歳に達するまで育児のための休業を申し出ることができることとなっており、また、一歳から小学校就学までの子供を養育する労働者についても、事業主は育児休業の制度または勤務時間の短縮等の措置を講ずるよう努めなければならないこととなっております。
法の施行に当たっては、労働省令や指針が本年秋までに国から示されることとなっております。県としても、十月の育児休業制度普及促進月間を中心に、関係機関である和歌山婦人少年室並びに労働基準局とも十分協議しながら、経済団体を初め各事業主の方々への説明会を開催するなど、育児休業制度の普及促進に努力してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(山本 一君) 再質問がありませんので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○議長(山本 一君) 本日は、これをもって散会いたします。
午前十一時五十九分散会