平成3年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(小林史郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 午後一時三分再開
○副議長(橋本 進君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(橋本 進君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 45番小林史郎君。
 〔小林史郎君、登壇〕(拍手)
○小林史郎君 まず、原発事故の問題で質問いたします。
 きのう森議員からもお話がありましたが、去る九日、関西電力美浜原発二号機で炉心に近い蒸気発生器の細管がギロチン破断し、そこから放射能を含む高温高圧の一次冷却水が急激に流出、原子炉があわや空だき状態になろうとしたときに緊急炉心冷却装置が作動してやっと難を免れたという、恐ろしい事故が起きました。
 原子炉が空だき状態になれば核燃料の溶融、大量の放射能の放出という重大な事故になることは、一九七九年に起きたスリーマイル島原発事故で実証されています。今回は緊急炉心冷却装置が作動して危うく最悪の事態が避けられましたが、このような緊急装置が作動するような事故自体、本来起こってはならない重大な事故であります。もし、この事故がそのまま進行しておれば、京阪神の水がめ琵琶湖を含む八十キロ圏内が食料の汚染地帯という大惨事となっていたことを考えるとき、本当に慄然たる思いがいたします。
 美浜原発二号機のような加圧水型原子炉では、共通して蒸気発生器細管の損傷事故が多発していて、この型のアキレス腱と言われていました。外径二・二センチ、厚さ一・五ミリの管の内部を百五十気圧、三百度という熱水が秒速五、六メートルの高速で通過しますので、腐食や振動による損傷を防ぎ切れないのであります。
 これまで政府や電力業界は、細管の傷は大事に至る前に定期検査で見つけて手当てをしているから大丈夫だと説明し、損傷の見つかった細管に栓をしたり、さや当てをして運転してきました。この美浜原発二号機は昨年四月から七月にかけて定期検査をしたばかりで、このとき六千五百二十本ある細管のうち六本にひび割れが見つかり栓をしましたが、これまで栓をした細管は四百十一本で、この数は、他の同型原子炉に比べればまだ少ない方でありました。
 このことから考えますと、今回の事故は栓をした細管の多少にかかわらず大事故を引き起こす可能性のあることを示しており、また定期検査で安全を確保できるとしてきた政府、電力業界の説明は全く成り立たなくなったと言えます。しかも、定期検査では必ず正常に作動するように検査しておかなければならない重点項目である原子炉の圧力逃し弁が今回の事故で二個とも作動しなかったということは、原子炉の爆発にもつながりかねない恐ろしいトラブルであり、定期検査による原発の安全性確保の問題に新たな疑問を投げかけることになりました。
 このように、今の原発はさまざまな技術の未熟さを持ったまま推進されていますが、我が国では重大な事故が起こり得ないという安全神話が技術の未熟さを正面から見据える姿勢まで失わしめているということです。そのよい例が、先ごろ報道された資源エネルギー庁の研究姿勢であります。
 通産省資源エネルギー庁では、六年も前からこの蒸気発生器細管の損傷に関する国内外のあらゆるデータを収集するとともに、専門家から成る蒸気発生器検討会なるものを設置し、ひそかに細管損傷事故の防止対策を検討してきていながら、この完全破断事故に対しては「起こり得ないもの」として事実上無視し、何らの対策も打ち出していなかったことが明るみに出ています。
 同庁がこの検討会に提出した「蒸気発生器伝達管損傷と防止対策の現状について」という内部資料は、本文八十九ページ、付録百六十七ページにも及び、細管損傷に係るあらゆるデータとノーハウが網羅されていると言われています。そして、この防止対策は八八年ごろまで精力的に行われたと言われ、この間、八七年七月にはアメリカのバージニア州のノースアナ原発で細管の完全破断事故が起きているにもかかわらず、議論は専ら当時多発していた粒界腐食割れの対策に集中し、ノースアナ原発のような完全破断事故に関しては、「日本の原発はアメリカに比べ水質管理が徹底しており、同事故の引き金となった支持板の腐食は考えられない」と一蹴して、参考程度にしか検討されていなかったとのことであります。
 スリーマイル島原発事故の原因を究明したケメニー報告でも特に強調されているように、原発が十分に安全だという考え方が確固とした信念となって関係者に定着してしまった結果、こういう事故が起きた、だから安全神話こそ警戒しなければならないということが最大の教訓として引き出されているのであります。
 最近、原発事故が多発し、しかも炉心近くの重大な事故がふえてきています。例えば、八八年九月の浜岡原発一号機での原子力圧力容器本体からの放射能を含む冷却水漏れ事故とそれに続く核燃料破損事故、八九年一月の福島第二原発三号機の再循環ポンプ破損とその金属片の炉心への流入事故等がありますが、これに続く今回の美浜原発事故は、我が国で起きる原発事故が次第に重大化してきていることを示しています。にもかかわらず、日本の原発は技術の未熟さを棚上げしたまま巨大化され、ふやされようとしています。
 政府の計画によれば、二〇一〇年までに原発の発電量を現在の二・三倍にふやす方針であり、そうなれば原発の危険がさらに大きく、切実なものにならざるを得ません。
 それに、電力業界の姿勢も問題であります。新聞報道によれば、通産省が、今度の事故にかんがみ、二次冷却水系への放射能漏れを示すモニター数値が通常の二割増で原子炉の運転を停止するよう指示したのに対し、関西電力の飯田孝三副社長は、「二割増ではたびたび停止させる事態も予想される」とか、「原因究明に半年もかかるのではたまったものでない」、「今回の事故は結果的に大したことはないと言えば失礼だが、社会的影響が少ない」などと発言し、余りの反響の大きさに、翌日、早くも陳謝していますが、はしなくも電力業界の安全軽視、営利優先の体質がだれの目にもわかる形で露呈されたと言えます。
 以上、今回の事故の深刻さから見て、また本県のいずれの原発立地候補地の住民も強い拒否反応を示しているという事実からも、これまでの本県の原発推進姿勢を改めるべきだと思いますが、このことについて知事の御所見を伺いたいのであります。
 きのうの中村、森両議員に対する答弁では、原発三原則に立って地元の意向を尊重しつつ対応する、そして現状認識については、地元同意が成立している状況にないというとらえ方を示されました。さらに森議員の、「それは原発を進めないという意味に理解してよいか」という再度の質問に対し、「前の発言と同じである」として、まともな答弁を避けられました。
 昨年の九月議会において私は、日高町で原発反対町長が当選したのだから、この機会に原発を断念すべきでないかとただしましたが、そのときの答弁と今度の答弁は、ほとんど同じであります。ということは、今回のように重大事故を体験してみても、知事の原発の安全性に対する認識の問題では何らの変化もなかったということになります。
 知事はかつて、海上事前調査の是非を決する比井崎漁協の臨時総会を前にして、「原発銀座にする気はないが、一つや二つはつくりたい」と発言したと報道されたことがあります。こうした本音とも受け取れる発言の上に、昨年の九月議会ときのうの答弁を重ね合わせますと、やりたい気持ちには変わりないのだけれども、地元同意の条件がすべてつぶれてしまったからやむなく静観しているだけだとも読み取れるわけであります。
 こうしたことは誤解であれば幸いでありますが、疑念を解くためにも、知事がきのう森議員の再質問にまともに答えていただけなかった真意を明らかにしていただくとともに、百七万県民の安全を預かる知事として、今度の美浜原発事故の重大性にかんがみ、本県の原発推進政策を改めることを明言していただきたいのであります。
 続いて、本県長期総合計画での位置づけの問題であります。
 長計では、「住民の福祉と地域振興の立場から、原子力発電所等の電源立地を促進する」とあり、さらには「住民の合意形成に役立つ広報活動を推進する」とまでうたい上げているわけでありますが、今策定中の第二次中期実施計画の中では、この原発はどのような位置づけになるのか、「促進」という文言がなくなるのか、また広報活動をやめることになるのかについて企画部長よりはっきりお答え願いたいのであります。
 さらに、お願いしていただきたいのでありますが、蒸気発生器の細管がアキレス腱と言われる今回の事故と同じ型の加圧水型原子炉のすべてについて、再点検を国に要請してほしいと思います。それは、今回のような支持板腐食による細管の破断事故は起こり得ない事故として円周方向での渦電流検査が手抜きされていることを会社側も認めていること、また定期検査で健全とされた細管が半年余りの間に破断事故を起こしていることを考えるとき、同型機の中で同じような事故が起こり得る可能性はなしとは言えず、万一起きた場合のことを考えれば深刻な不安に陥りますので、国に対してこのことを強く申し入れていただくとともに、企画部長より、どう対処してくださるかを御答弁願いたいのであります。
 次に、農政に関連して、若干の問題で質問いたします。
 いよいよウルグアイラウンドの農業交渉は本日をもって再開されるようであります。今度の交渉での米をめぐる情勢に容易ならぬものがありますが、同時に農業保護削減をめぐるアメリカとECの対立も根深いものがあって、今度の交渉は相当長引くのではないかという見方もされています。つまり、農業にも工業製品と同じく自由貿易と市場競争を適用すべきだとするアメリカの主張と、それぞれの国で農業が置かれている現実や社会的、経済的条件を考えるべきであるとして、自国の家族農業を守ることを社会政策の重要な課題と位置づけているEC側との間に、余りにも本質的な違いがあり過ぎるからであります。
 十二月議会の質問のときにも触れましたが、ウルグアイラウンド閣僚会議と並行して、昨年十二月三日にはベルギーの首都ブリュッセルでEC農業団体主催の世界農民集会が開かれ、ここに日本を含む二十三カ国から三万八千人の農民が参加しました。
 オーストリア農業生産者団体協議会の議長さんが、「農産物の価格保証や保護がなくなれば、農村や山村、レクリエーション地帯は砂漠になる」と、農業の多面的役割と山村農民の切実な思いを語りました。またEC農業青年協議会の会長は、「農産物は飽和状態なのに、さらに輸入するのはブッシュの押しつけだ。自然が違うように、農業もまた、各国、皆違う。農業政策を通商政策に従属させてはならない。こんなことをしたら、消費者においしい質のよい食べ物を提供できなくなる」と訴えました。また北欧の農民代表は、「農村地帯を保全することを忘れてリゾート開発などと言えようか」と叫び、アメリカと立場を同じくするカナダの農民代表も、「農業政策は行政府の中でつくられてはならない。ガットは家族農業を崩壊させる」と言い切っています。そしてドイツの農民は、「もっと安く生産できる国があると買いたたかれ、ピートは六万キロもつくれるのに四万八千トンしか買ってくれない」と嘆き、フランスの青年は、「大輸入業者のマージンは、今や三〇%を超えている」と糾弾しています。
 これらの叫びは全く日本の農家の叫びと同じであり、農業と農村はどこの世界でも、食料を供給し、地域経済を支え、国土と資源を保全する上で大きな役割を果たしているのだということを教えています。
 堀内全国農協中央会会長も、この集会で家族農業経営の重要性と農業の持つ多面的役割に触れながら、米の輸入自由化は決して受け入れのできないことを訴えましたが、この発言は、国際的に孤立するどころか、国境を越えた共感の中で激励されたということであります。
 そこで、本県農政の直接の責任者である農林水産部長にお尋ねしますが、今後の農政を進めるに当たって、アメリカが主張するように農産物も工業製品と同じように自由貿易と市場競争に乗せようとする立場に立たれるのか、それともECのように自国の家族農業を守ることを社会政策の重要な課題と位置づける立場に立たれるのか、その基本的な考え方についてお示し願いたいのであります。
 さらに、農業生産の地域経済に及ぼす影響についてお尋ねしますが、農林水産省の試算によれば、仮に米の生産が三〇%減産した場合、国民総生産が一・五%下がるのに対し、地域的には、北陸では二・八%、東北では二・四%と、比較的に大きな影響を受けることになっています。本県の場合、果樹県ですので比較的影響は少ないとも思われますが、それでも全国的な米からの転作によって本県の特産物である梅、ミカン、桃、花卉等への少なからぬ影響も考えられますので、もし農林水産省のような三〇%減産による本県地域経済に対する影響試算ができているならば御報告願いたいのであります。
 続いて、農協問題で質問いたします。
 三年前に採択された「二十一世紀を展望する農協の基本戦略」では、「国際化」なる言葉がよく使われています。同じ国際化と言っても、アメリカや財界が唱えるような自由貿易一辺倒の主張もあれば、安全な食料をどう確保し、地球の環境をどう守ろうかという別な流れもあるわけであります。
 ところで、基本戦略の目指す国際化では日本農業の規模拡大によるコスト引き下げが格別に強調されていますが、これは全く財界の言い分と同じであって、そこには農民の所得をどう確保していくのかという視点が欠落していて、内外格差の縮小を口実に、結局は工業製品輸出の犠牲のもとに日本農業を解体していく方向以外の何物でもありません。したがって私は、このような基本戦略のもとで打ち出されてくる広域合併の方針や農家を忘れた事業推進のやり方では、農協の発展も展望も見出せないと思います。
 最近、農協が行う豪華な着物展示会やスーパーまがいの安売り宣伝の広告チラシがよく目につきますが、近ごろの事業推進では職員さんたちは、貯金や共済加入の勧誘だけではなく、電気製品から宝石、高級呉服、家の航空写真まで売りに回っています。このために重い個人ノルマを持たされ、「自爆」と称せられているノルマ達成のためにみずからが共済に加入したり、売れ残り商品を自分で抱え込んで処分に困るといった現象があちこちで起きています。そして、この中で農協事業のあり方に確信と誇りが持てなくなり、働き続ける自信を失って職員が集団的にやめていくような事態まで生まれてきています。
 本来、農協は、地域の農業なり農家の生活の実情をしっかりつかんで、どこをどうすれば一歩でも農業を前進させられるのか、そのために何を地方自治体なり政府へ要求していくのかを常に追求していかなければなりません。
 今、農家の間では、共同購入による農業諸資材のコスト引き下げや機械の共同利用、品種、技術の改良、税金対策、産直販売等、さまざまな要求や悩みが渦巻いています。そして、このような要求にこたえる方向にこそ農協の未来があるのであって、広域合併や営利追求の企業体化の道は、ますます農家との矛盾を深めることになります。
 そこで農林水産部長にお尋ねしますが、県下の農協運営の現状についてどのような問題意識を持っておられるのか、今後の農協運営について何を望み、何を期待されているのかを伺いたいのであります。
 さらに、農協職員の労働条件の問題でございますが、第一点として、先ほどの自爆と言われる行き過ぎた推進事業の実態についてどのような把握を行い、どのような所見を持っておられるのか。第二点として、県下農協職員の給与水準は公務員や他の金融関係職員と比べて低くないのか。第三点として、農協職員の週休二日制についてどのようなお考えを持っているのか。以上の点について御答弁をお願いしたいのであります。
 続いて、ミカンの台風被害の救済対策について質問いたします。
 さきの十二月議会では、安田農林水産部長より、農業災害共済の適用について、「特殊事情を十分考慮した上での評価がなされるよう働きかけてまいりたい」との答弁をいただいていますが、その後の取り組みの現況を御報告願いたいのであります。
 二十八号台風で有田地方のミカン園では十二億円程度の被害額が報告されているようでありますが、これだけ大きな被害を受けながら補償されないということになれば、災害共済の存在意義がなくなります。
 そもそも災害共済は、気象条件などで大きな減収を来したときに備え、農家の皆さんが地獄で仏さんに会えるような気持ちで、苦しい家計の中から掛金をしてきたものであります。したがって、ことしのように完熟期に台風の直撃を受けた農家にとって、もし補償対象にならないということになれば共済に対する魅力がなくなってしまうわけで、脱退農家が続出してきましょうし、今でも加入率五〇%程度の災害共済組合の存立そのものが危うくなってきます。
 農家の皆さんの心情は、「難しい数字のことはわからないが、わしらは何十年に一度という被害を受けたのだから、とやかく言わんと、とにかく助けてくれ」ということであります。
 そこで、農林水産部長にお尋ねします。
 今度の台風被害の補償額をめぐって支部と県レベルの間で調整が難航していると聞きますが、その実情はどうなっており、県としてどのように対処されているのかをお知らせ願いたいのであります。
 続いて、今度の台風被害救済の関連で、ジュース原料柑の基金制度について質問いたします。
 昨年は台風被害の関係もあって、ジュース原料柑の出荷量は、補助枠二万二千トンを大きく上回って三万トンにもなりました。このため、二万二千トンの補助枠で三万トンを賄うことになれば原料柑の価格引き下げが避けられませんので、台風被害救済の一つとしても本県の特殊事情を訴えて国に対して補助枠の増額を要望していただきたいと思いますので、農林水産部長のお考えのほどを伺いたいのであります。
 私は、これまでも何回となく、生果の価格安定対策の一つとして運用できるよう、現行のジュース原料柑基金制度を拡充することを訴えてまいりました。つまり、豊作貧乏などで原料柑の出荷が計画量を上回る場合は、その超過分についての補助枠を増額してほしいということであります。そうすれば、ジュース原料柑は生果の価格のための安全弁の役割を果たすことができるわけであります。しかし、オレンジの輸入自由化によって原料柑の値段はキロ十五円以下に下がると言われ、不十分ながらも何とか価格安定の役割を果たしている現行の基金制度そのものが機能しなくなり、これまでにない生果暴落の事態も心配されます。政府もこのような事態の招来を予測してか、原料柑の価格補てんの特別枠を上乗せすることによって平成七年度を目指して軟着陸させようとしていますが、だからといって、原料柑の安全弁がなくなって生果の暴落を招く事態を改善できるわけではありません。
 そこで、農林水産部長より、完全自由化後の価格安定対策の一つとして、現行の原料柑基金制度が果たしている安全弁としての調整機能を存続させ、強化することが必要かと思いますので、これらの対策について研究検討し、具体案をつくって政府に要望していただきたく、お考えを伺いたいのであります。
 次に、教職員定数改善の問題で質問いたします。
 さきの十二月議会で高校の四十人学級の早期実現を求めましたが、近ごろ、新学期を前にして、小中学校の先生や御父兄から、うちの学校へ先生をふやしてほしいという要望をよく聞かされます。それは、教育困難な大規模校であったり、複々式転落寸前の過疎校であったり、また障害児学級であったり、さまざまでありますが、現場では、とにかく先生の数が足りないようであります。
 欧米では既に二十五人学級が常識と言われ、かつて中曾根首相が二十人学級のアメリカの学校を視察した際、これでは落ちこぼれも出ないとの感想を述べたと聞いていますが、我が国を経済大国と言われるなら、それにふさわしく学級定数も欧米並みにしてほしいのです。現実は、十二年もかけて、やっと今年度で小中学校の四十人学級が実現できる段階のようですが、本県の実情はどのようになっているのかを伺いたいのであります。
 国の方では、税収の伸び悩みや湾岸戦争の戦費負担を理由に計画達成への予算づけに難色を示していたと聞きますが、最終的には計画の満額達成の予算づけがなされたようであります。
 そこで教育長にお尋ねしますが、本予算案においては四十人学級達成のための第五次教職員定数改善計画の予算づけが一〇〇%措置されたか、その達成状況を御報告願いたいのであります。
 いま一つ教育長にお尋ねしますが、これからは児童生徒の急減期に入ります。この機会を行き届いた教育実現のための絶好のチャンスととらえ、小中学校三十五人学級、高等学校四十人学級の早期実現を目指す新たな改善計画の策定を文部省に迫っていくべきだと考えますが、御所見を伺いたいのであります。
 次に海南湯浅道路の通行料金の問題ですが、本題に入る前に、きのうも森議員が言われていましたように、長年にわたって高速自動車国道紀南延長促進議員連盟会長として大変な御努力をいただいた大先輩の古田議員のこれまでの御労苦に対して、厚く御礼申し上げます。おかげで、海南湯浅道路の通行台数も、ようやく初期目標の一万二千台に達するなど、大阪への直結と紀南延長を展望しながら有田地方の活性化にとってなくてならない道路となっています。
 勝手なもので、開通するまでは、料金のことはともかく、一日も早く通れるようにしてほしいとやかましくお願いしたのですが、のど元過ぎれば熱さ忘れるのたとえのごとく、今では、「料金が高過ぎる。何とかならないか」の声が高まってきています。もちろん、採算的にはやっと初期目標台数に達したばかりで、とても料金の引き下げなど云々できる段階でないことも、本県にとっては紀南延長の実現が最優先課題であることも百も承知の上のことですが、住民感覚としては、十一キロ九百二十円は他の道路に比べて余りにも高過ぎるというのが実感であります。
 そこで、着工当時のいきさつや高速道路会計と一般有料道路との違いを知りながら、あえて土木部長にお願いするわけでありますが、全国的な道路会計とのプール制など、何らかの方策でこの区間の料金引き下げができるよう関係機関に働きかけていただきたく、御所見を伺いたいのであります。
 最後に、五稜病院の問題で質問いたします。
 昨年の六月議会において、老人福祉医療センターの併設を含めて、地域に溶け込んだ五稜病院のあり方についていろいろと要望やら提言を申し上げたところでございますが、その後、五稜病院運営検討委員会なるものを関係部局の間でつくっていただいたと聞いていますが、これまでどのような検討が行われたのか、いつをめどに一応の方向を出してくださるのか、それまで関係市町村や住民の要望をどのようにくみ上げてくださるのかをお伺いしたいのであります。
 以上で、第一回目の質問を終わります。
○副議長(橋本 進君) ただいまの小林史郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 小林議員にお答え申し上げます。
 今回の美浜発電所の事故についてでございますけれども、私も安全性が何よりも重要であると考えており、今後の国の調査に関心を持って見守ってまいりたいと考えておるところでございます。
 電源立地問題につきましては、きのう、中村議員、森議員にもお答えいたしましたとおり、従来から基本としている三原則を堅持し、地元の意向を尊重しつつ対応するという考え方で、現在、第二次中期実施計画を策定中でございます。
○副議長(橋本 進君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 美浜原発事故に関連いたしまして、第二次中期実施計画での原発の位置づけ及び同型原子炉の再点検についてお答えを申し上げます。
 まず、第二次中期実施計画における位置づけでございますが、先ほど知事がお答えいたしましたとおり、電源立地に関する県の基本方針である三原則を堅持し、地元の意向を尊重しつつ対応するという考え方で、現在、第二次中期実施計画の基本方針や事業計画の検討を行っているところでございます。
 次に、二月九日に美浜発電所で発生した蒸気発生器伝熱管の破断事故に関しまして、国は同じ型の原子炉を保有する電力各会社に対し、当面の対応方針として、二月十九日に二次冷却水等の放射能濃度の監視強化や非常用炉心冷却装置の関係機器の点検強化などの対策を指示したと聞いてございます。
 さらに二月二十日には、総理府の原子力安全委員会にワーキンググループ、また通商産業省に美浜発電所二号機調査特別委員会を設置し、原因究明や再発防止について徹底した調査がなされているところでございます。
 県といたしましては、安全性の確保は何よりも重要であるとの認識のもとに、今後の調査の推移や対策について、その都度、的確な情報収集に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 農産物を工業製品と同じように自由貿易の対象にすることについてどう考えるかということでございます。
 農産物の市場開放は、相手国の農業や経済事情などに照らし、二国間もしくはガット協議の場で、話し合いにより締結されているのが現状であります。
 議員のお話にもあるように、今日、ガット・ウルグアイラウンドでは、日本、韓国、スイス、北欧等のいわゆる食料輸入国グループ、アメリカ、オーストラリア等ケアンズグループと言われる食料輸出国、そして多くの品目について輸入課徴金、輸出補助金の二重課徴制をとるECと、三つのグループがそれぞれの立場で対立をいたしてございます。
 したがって、農産物を工業製品と同じように自由貿易の対象にすることについては、農業生産の持つ特殊性や食糧安全保障に加え、農業が持つ多様な役割にかんがみ、現行のガット第十七条で政府が食管制度などにより一元的に管理することが認められている品目、及びこれに関連し、農産物の特例措置として認められている地域振興上極めて重要な作物については自由貿易の対象とすべきでない、国境措置の関税化に応じるべきでないと考えてございます。
 次に、米の三〇%減産の問題でございます。
 既に稲作農家の深い御理解のもとに水田面積の三六%に当たる転作を実施しておりますが、仮定の話として、お話のように、さらに三〇%減産になった場合にどうなるかということでございます。農林水産省の試算によりますと、本県の地域経済に及ぼす影響は、県民総生産額の一・二%が減少するものとされてございます。
 次に、農協事業活動の問題でございます。
 農業の国際化の進展、また社会的、経済的な立場、農業の現実の厳しい姿の中で、農協は非常に大きな役割を果たしてきたものと考えます。
 国際化や金融化の波、自由化の波など、農業を取り巻く環境が変転する中で農協自身も多様化せざるを得ない厳しい現実に立ち至っていることは事実であり、農協自身もこれを真剣に受けとめ、「二十一世紀を展望する農協の基本戦略」を策定し、組織を挙げて取り組んでいるのが現状でございます。
 こうした中で、農協本来の趣旨である、農家から信頼される農協、農業者の立場に立った農協を基本にして、農家が何を求め、何を望んでいるかを見きわめて、時代に対応した営農指導や農協本来の事業活動をしていくべきであると考えている次第であり、県としても、農林水産省通達や秩序ある事業運営を強く指導しているところであります。
 また、お話にあった推進事業活動につきましては、基本的には、組合員生活の充実を図る必要から、貯金の受け入れ、共済への加入、生活に必要な物資の供給を行うなど、農協事業の一環として職員が取り組んでいる推進事業であると思っております。実態も調査いたしておりますが、さらに実態を知って適当な指導を行ってまいる所存でございます。
 次に、農協職員の労働条件の問題で、給与面についてでございます。
 経営規模、基盤により単純に比較するのは困難でございますが、県下農協の平成二年度の所定内給料は、平均年齢三十四・四歳で二十一万五千円となっており、本県一般行政職員の給与月額は、平均年齢四十・一歳で二十八万一千円となってございます。
 また、週休二日制については全農協が実施しているところであり、四週六休制を実施している農協は三十二組合、四週五休制が八組合となってございます。県といたしましては、農協の地域性や経営状況を勘案しながら、農協検査、中央会監査等を通じて職員の給与、週休二日制の充実改善に努めるよう指導しているところでございます。今後もさらに指導を深めてまいる所存でございます。
 ミカンの台風被害に対する農業災害補償法の適用の問題でございます。
 去る十二月議会においてお答え申し上げましたとおり、特殊事情を考慮の上、評価されるよう、鋭意取り組んできたところでございます。現在、二年産温州ミカンの共済金支払い見込み額は十億六千万円と試算されており、風水害によるものは、そのうち六〇%と見込まれております。これは、前年に比べて三六八%となってございます。
 単位共済組合は、その資料を取りまとめ中であり、報告を受けた後、連合会が評価高を取りまとめ、三月中旬に予定されている和歌山県農業共済組合連合会損害評価会へ諮問し、答申に基づいて国に報告し、国からの評価決定を受ける予定でございます。
 また、単位組合と連合会との調整につきましては、組合の被害報告額と連合会の抜き取り調査の結果において、統計資料や出荷高との関連から全県的に若干の相違がありましたが、現在、調整のための作業が急がれており、県としては被害農家に誤解を招くことのないよう十分精査をし、適正な評価の決定を行うよう強く指導しているところであります。
 なお、農家への支払い時期につきましては、例年六月のところ、本年はさらに早期支払いに努めるよう強く要請を続けているところでございます。
 最後に、果実基金制度は中長期的な見地に立った果実等の総合的な需給安定を図るものであり、加工果実の安定供給はもとより、生果の価格安定にも大きく寄与しているところであります。
 お話の、台風による原料果実の対象数量の増枠についてでございますが、対象数量は、果汁の需給見通しに基づいて長期取引契約として設定されているものであることから、業務年度の途中の数量変更は、制度上、大変困難でございます。
 次に本事業の存続強化についてでございますが、資金造成に係る生産者負担の問題もあり、今後はさらに生産農家の意向や生産動向等を踏まえ、十分検討しながら対処してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 海南湯浅道路の通行料金についてでございます。
 海南湯浅道路は、延長十一・三キロメートルの一般有料道路であり、日本道路公団により昭和五十九年三月二十八日に供用された道路であります。
 一般有料道路の通行料金につきましては、路線ごとに当該有料道路の利用に伴う便益額の範囲内において建設費、計画交通量、料金収入額、料金徴収期間等を考慮して料金の設定がなされておりますが、議員御指摘のとおり、本路線は他の路線と比較して高い料金設定となっております。これは、全体延長十一・三キロメートルのうちトンネル及び橋梁の占める割合が約八割もあり、他の路線と比較して建設費が高くなったためであります。
 当該有料道路が一般有料道路として既に供用されていることや、現段階では採算性が確保されていないこと等を考慮しますと、現時点では料金の引き下げは極めて困難であると考えられますが、地元の方々の御意見を日本道路公団に伝え、話し合いをしたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 保健環境部長遠藤 明君。
 〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 五稜病院問題についてお答え申し上げます。
 五稜病院のあり方につきましては、公営企業としての面からの効率的な運営や県立精神病院としてのあり方を中心に、現在、外部の専門機関に調査を委託するとともに、当部内においても検討を積み重ねてきているところでございます。
 この三月には医大等の関係部局を含めた五稜病院運営検討委員会を設置し、鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。
 また、地元の意見等につきましても、それら検討の過程の中でお伺いをしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 教職員の定数問題でございます。
 公立の小中学校の教職員の定数につきましては、国が第五次改善計画を昭和五十五年から十二年計画で実施をしてまいりました。平成三年度完成をめどに作業を進めているところでございます。
 本県におきましては、平成三年度ですべての小学校、中学校において四十人学級が実施できるよう措置したところでございます。
 また、複式学級の編制基準につきましては、平成二年度に新法に基づいて改善をしているところでございます。
 県といたしましては、従前からも国の動向を見きわめながら定数の改善を続けてきたところであり、平成三年度の充足率はおよそ九九%と予定をいたしてございます。
 その理由でございますが、単年度で第五次の改善計画をすべて充足した場合には、今後の児童生徒数の減少による定数減に対応できないこと、また第五次以降の国の改善計画が明確でないこと等によるものでございます。
 今後とも、児童生徒数の減少や退職者数等を総合的に勘案をしながら計画的な改善を進めるとともに、国に対しては、小学校、中学校、高等学校の学級編制基準の改善を含めて新たな計画を早急に措置していただきますように、全国の教育長協議会を通じて働きかけをしてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 45番小林史郎君。
○小林史郎君 原発についての知事の答弁、企画部長の答弁、大変不満足です。まあ、これしか言えないのかなということも推察するんですが、私がるる訴えた心情を少しも酌み取ってくれていない。真意は何かということを明かそうという姿勢になっていない。これは非常に遺憾でございます。しかしまあ立場もあろうかと思いますので、一応この場はこれで終わりますけれども、企画部長に一言だけ再質問させていただきます。
 新聞で、中期計画については「促進」の文字を削るという報道がされておるわけです。そういう報道がありながら、議場でそのことについて触れて答えられないというのはどういうわけですか。検討していないというのか、検討しているというのか、結論が出ていないというのか、そういう方向に向いているというのか、その辺のこと、新聞にああいう記事が出ながら、何でこの議場で答弁できないか。その点を明確にしていただきたいと思います。
 それから農業問題では、ジュース原料柑の安全弁としての役割というのはこれから非常に大事になってくると思うんです。しかも、ブラジルのジュースが入ってきて物すごく低廉化していくという中で、これは死活問題になってくると思います。
 最初、ことし特別枠をもらいに行ってくれないかと要請をした意味は、サイクルになっていて難しいということはわかっておるんですが、そういう突破口を開く一つとして最大限の努力をしていただきたいという立場でお願いしておるのであって、後半の部分とあわせて、このことについてはひとつ積極的に研究し、対策を立てていただきたいと思います。
 それから、五稜病院の問題でございます。
 答弁は味気ないわけですけれども、はっきり申し上げまして、五稜病院についてこれまで私がずっと申し上げてきたことは、地元の創立当時の関係から、総合病院にするという約束があるじゃないか、地域に開かれた、地域に溶け込んだ病院としてやっていく責任が県としてあるんだよということを何回となしに訴えてきておるわけです。しかし、先ほどの答弁では、いわゆる五稜病院としての、精神病院としての運営がどうあるべきか、あるいは企業体としてどうすべきかと言えば、赤字解消対策しか考えていないという印象を受けるわけです。そうじゃなしに、地元の要望にどうこたえていくか、六月議会のときにいろいろとお願いしたことも含めて地元の自治体と十分話し合う、あるいは住民の代表とも話し合う、ボランティア組織についてもいろいろ検討する、こうした積極的な姿勢に基づく検討委員会でなければならないと私は思っておるわけですが、そういう方向も含めて、地元の要望も十分くみ上げた形で検討を進めていただけるのか、単なる赤字解消のために五稜病院の経営をどう改善するかというだけの検討委員会であるのか、その点をもう一度明確にしていただきたいと思います。
○副議長(橋本 進君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 第二次中期実施計画は、電源立地に関する三原則という県の基本方針を堅持して地元の意向を尊重しながら対応するという考え方のもとに、現在、鋭意策定作業中ということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
 以上でございます。
○副議長(橋本 進君) 保健環境部長遠藤 明君。
 〔遠藤 明君、登壇〕
○保健環境部長(遠藤 明君) 五稜病院の問題につきまして、先ほど、「公営企業としての面からの効率的な運営や県立精神病院としてのあり方を中心に」と申し上げたわけでございますけれども、小林議員が昨年の六月議会あるいはその後さまざまな機会に御提言されたこと、また地元からの要望なども十分お聞きをして今後検討を進めてまいりたいと考えております。
○副議長(橋本 進君) 答弁漏れはありませんか。──発言時間が終了いたしましたので、以上で小林史郎君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(橋本 進君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時六分散会

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