平成2年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(和田正一議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
○議長(岸本光造君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
2番和田正一君。
〔和田正一君、登壇〕(拍手)
○和田正一君 先輩・同僚議員の御寛容と御理解を賜りまして、来期へつなげる一般質問を行わせていただきます。
これに先立ちまして、十一月三十日、二十八号台風に後押しされるように東京における予算拡大道路整備促進大会に参加させていただきました。大会、陳情を終えて翌朝の帰路は全くの快晴で、車窓の富士はすばらしく、晴れ晴れとした眺めではありましたが、列車が紀伊長島駅を過ぎ、尾鷲林業地帯に入るころから十九号台風等による風倒木が至るところに見られ、そのつめ跡、惨状に暗たんたる気持ちに誘われました。二十八号台風では幸い大災害は免れたものの、クリスマス、お正月を控えて、農林水産業を初め、少なからざる被害が発生していると聞き及んでおります。当局においては、知事が当初申されたとおり的確に対応しておられるものと信じますが、四たびの台風被害に十分なる措置を講じられますよう強く要望いたします。
知事も御視察くださいました、五月初旬の私の自宅対岸の崩壊地については、防災工事が着々進捗し、国道百六十八号線の一方通行も近く解除されるものと思われます。上部の治山工事も田長地内治山工事とともに既に発注済みと伺い、朝な夕な、また一雨ごとに現地で、自宅で見張りを続けておりました私、自称監視役も、みずからその役を解任する日の近いことをこの上なく喜んでおります。ありがとうございました。
では、逐次、質問に移らせていただきます。
一つ、知事は「燦黒潮リゾート」なる印刷物に「既に第四次全国総合開発計画、新しい近畿の創生計画、紀伊地域半島振興計画において、その夢は大きくふくらみ始めました。一方、高速交通網につきましても、関西国際空港の開港をはじめ南紀白浜空港のジェット化、高速道路・府県間道路などの整備が進み、内外に開かれた県土づくりは、新しい局面を迎えております。 これらを背景に、この度県では『海』をテーマとして『燦黒潮リゾート構想』を策定しました」と語っておられます。
これらは、もちろん、より積極的に推し進めていただかなければなりませんが、知事もそのあいさつの中で触れておられました、本県の資源である山岳、河川、温泉、歴史、文化と結ぶことにより、リゾートの質を高め、県土の均衡ある発展を忘れてはならないと思います。緑豊かな山々、すばらしい自然、高野山、熊野三山に象徴される日本の人々の心のふるさとに山をテーマとした、県の言う山岳リゾート、私流に言うならば山並みリゾート構想をより明確に、より大きく打ち出していただき、過疎に悩み、林業を初めとする第一次産業の不振の悩みを抱える山村に、そしてまた漁村にまで新しい息吹と活力を呼び戻して、老いも若きも安心して定住でき得るふるさと創生の実現に大きく踏み出していただきたい、心からの願いでございます。とともに、山を守り、田畑を守った県土保全の防人たちの住まう山村に希望のあすを開いてやっていただきますことを希求してやみません。山並みリゾート構想について、知事の力強いお考えをお伺いいたします。
二つ目、「道路が拓く、明日の『紀の国』」、道路整備促進大会会場の垂れ幕が今なお胸に焼きついて離れません。
大会当日、自民党本部に小沢幹事長を訪ね、陳情申し上げた折、幹事長が、私が東京に出るには八時間も要すると知って、まだそんなところがあるのかと驚いておられましたが、東京はおろか、県庁まで四時間、五時間以上も隔てた東牟婁、新宮地方は、近畿自動車道紀勢線の新宮起工と、本年四月及び八月に開通した福定─近露工区、皆地バイパスに引き続き三百十一号の小広トンネルの早期起工、また百六十九号奥瀞道路の進行にあわせて宮井大橋より東野トンネルに至る改良の促進を希望いたします。
なお、百六十八号宮井大橋より高津橋に至る間は崩壊または落石のおそれのある箇所が多々あると思われますので、十分点検の上、早期の改良をお願いいたします。三百七十一号線についても、同様に格別の御配慮をお願い申し上げておきます。
その他、県道、市町村道についても、道路が狭隘、危険箇所が多く、枚挙にいとまがありませんが、関係市町村と連携を密に保ちながら、市町村の求めに応じてでき得る限りの措置を講じていただきたいと思います。
以上について、当局の所見を開陳願います。
三つ目、熊野川水系ダム放流についてお尋ねいたします。
十九号台風来襲のさなか、午後九時ごろ、私は北山川の出水状態を見ようと自宅から約三百メートルの宮井大橋まで出かけ、約三十分後、帰宅しようとしたところ、既に腰のあたりまで水かさが増しており、やむなく立ち木に取りすがりながら自宅にたどり着きました。
私は、昭和二十一年、役場に勤めて以来、またダムが建設されてからも数知れない台風と出会ってまいりましたが、今回のような急速な水位の上昇とは初めての出会いであり、驚きよりも強い怒りを覚えました。
その被害状況は当局も既に御承知のことと思われますのでくどくは申し上げませんが、いかに発電ダムとは申せ、下流住民の生命、財産の保全、保護のためには、操作規則に固執することなく、予備放水等、災害防止に万全の措置を講ずるよう関係機関へ強く申し入れ、実行に移されるよう取り計らい願いたいと思いますが、当局のお考えをお聞かせ願います。
四つ目、ふるさとづくり特別対策、半島振興道路についてお尋ねいたします。
黒潮リゾートネットワーク構想のもとに、さきに林道龍神本宮線の整備が決まり、近くには林道水上栃谷線の起工が行われました。まことに喜ばしく、頼もしい限りでございます。龍神、中辺路、本宮、日高、西・東牟婁郡を結ぶこの道路は、山間に住まう人々に多大の期待と希望をもたらし、新しい生きがいを求めて頑張ってくださるものと確信いたしますが、この際さらに、古座川町平井から大塔村木守に至る林道の改良開設を取り上げてくださるようお願いいたします。三百七十一号線の整備促進についてもお願いしておるところでございますが、特にこの林道についてのお考えをお示しいただきたいと思います。
五つ目、十一月初旬、農林水産委員会は愛媛県を視察、調査いたしました。愛媛県当局並びに関係機関より説明を聞き、勉強させていただきましたが、人づくりの大切さをこもごも語っておられたのが強く印象に残っております。
本県も、平成二年度予算の編成に当たり「明日を担う人づくり」を一つの柱としておられることは意を強くするところであります。農林水産委員の先生方は、農林水産業にそれぞれ御造詣の深い方々であり、委員会においても視察の成果について、また農林水産業の振興施策等についても真剣に御討議くださるものと思われますが、山に生まれ、育ち、林業の盛衰を肌で感じてまいった私として愛媛県久万林業のあり方を注視してまいりました。
久万林業を興した人は和歌山県出身の方であったことを知り、誇りと思い、ここに人ありきと感じました。森林組合の製材加工工場には男女数十名が立ち働いており、活気に満ちておりましたが、久万林業のさらなる振興を図り、活力を求めるため、町、森林組合などの出資による第三セクターを設け、現在八名の若者がUターンして技術習得、研修を行っており、「久万には明るい未来がある」と語ってくれた森林組合専務理事の言葉は自信と希望に満ちておりました。作業道にかわるモノレール等を使用しておられるかと尋ねましたところ、言下に「ありません。トラックの通行可能な林道の密度は二十七メートル余で、作業道、間伐林道も整備されており、その必要はありません」とのことでした。
かつて、私も林業の先進地と言われる地方を何カ所か視察したことがございますが、これらのすべては林業の基盤である林道網の整備がなされていたことなどを思い浮かべ、将来、再び日の目を見るであろう紀州木の国林業振興のために基盤整備に十分意を用い、将来に備えていただきますよう、ここにこいねがう次第でございますが、当局のお考えをお示し願います。
また、林業振興に不可欠なことは自分の持ち山を知ることであります。若者が都市に流出したり、また現在の林業に魅力を感じない方々は、自分の持ち山の境界すら知らず、そのまま放置しておるものが多くなってまいりました。このまま推移すれば境界紛争の種となり、大変な事態を引き起こしかねないことを憂慮するところであります。幸い県では、ふるさと森林活性化対策、山番制度等によりその対策を考えておられることに敬意を表しますが、絵にかいたもちとならないよう森林組合、関係機関と密接に連携し、さらに一歩推し進めてくださることをお願い申し上げます。当局の見解をお示し願います。
なお、林業の振興に関連して、最近、防火思想の普及と林業の現状からして林地火災の発生は非常に少なくなっておりますが、農山村の高齢化に伴い、消防力も低下の一途をたどっております。機動力の充実強化などが必要と考えておりますけれども、森林火災予防、消火の現状の取り組みと今後のお考えをお伺いいたします。
本日はここまでといたしとうございますけれども、来年四月、春のあらしをかいくぐり、桜吹雪に迎えられて再び登壇し、文化、文芸の薫りに満ちた格調高い演説をさせていただきたいと思います。本日は、ちょうど時間とはまいりませんが、お粗末ながら、まずはこれまでということにさせていただきます。御清聴、多く謝して終わります。
○議長(岸本光造君) ただいまの和田正一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 和田正一議員にお答え申し上げます。
陳情でございましたが、四たびの災害の御報告がございました。私も実際に風倒木の被害を見て、台風の右側の被害の大きさというものをまざまざと見せつけられた感じがしたわけでございます。これらに対しても積極的に対応してまいりたいと思っております。
それから、山並みリゾート構想の問題でございます。
お話ございましたように、山村地帯は豊かな自然と歴史、文化を持っております。県で昭和六十三年にリゾート開発基本構想を策定したのでございますけれども、この中においても山村地帯のリゾートの問題を積極的に加えさせていただいておるわけでございます。
また昨日来、過疎地域の高齢化が問題にされておるわけでございますけれども、そうした中でいかに生きるかということについて、関係の市町村が必死になって研究しておるわけでございます。市町村の皆さん方がリゾート計画を策定しておりますけれども、県としてもそうしたものを総合的に取り上げて対処してまいりたく、現在、作業を進めているところでございます。
また話ございましたように、燦黒潮リゾート構想との関連についても十分なる配慮を重ねていかなければならないと思います。特に、こうした山村地帯のリゾートについて、道路網の問題、林道の問題、そうしたものと密接なる連携をなおさら強め、リゾート構想を進めてまいりたいと思っております。
○議長(岸本光造君) 土木部長磯村幹夫君。
〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
紀南地方の道路整備についてでございます。
まず、高速道路の新宮側からの整備については、議会の御支援もいただきながら新宮─那智勝浦間の早期着工を国に要望してきたところでありますが、去る十二月七日に国道四十二号バイパスとして那智勝浦新宮道路十五・七キロメートルが都市計画決定されたところであります。このバイパスは自動車専用道路として計画された道路であり、今後とも本路線の早期事業化について国に強く働きかけてまいります。
次に、国道三百十一号の小広トンネルを含む中辺路五工区は本年度に事業化を行ったところであります。今後、測量等の調査、用地取得を行い、整備の促進を図ってまいりたいと考えております。
次に、百六十九号、三百七十一号については、現在、事業中の宮井工区、古座川三工区、端郷工区の整備を促進するとともに、他の区間についても交通の隘路区間の解消を順次図ってまいります。また、県道、市町村道の交通の隘路区間等については、今後とも関係市町村と密接な連携を図りながら、その解消に努力してまいりたいと考えております。
次に、道路の危険箇所については、従来から道路の安全性を高めるため、防災対策として落石防護ネット、ロックシェッド等の整備を進めているところであります。さらに安全の徹底を図るため、県下の危険箇所の総点検を行っております。今後、その結果をもとに緊急度の高い箇所から順次整備を行ってまいりたいと考えております。
次に、熊野川水系のダム放流についてでございます。
このたびの台風十九号は紀伊半島を直撃し、十津川の風屋ダムにおいては昭和三十六年の第二室戸台風に次ぐ流入量を、また北山川の池原ダムでは竣工以来、最大の流入量を記録するという大出水でございました。
本水系の発電ダムの操作規則については、河川管理者である国の承認を受けてダム設置者の電源開発株式会社が定めたものであります。ダム操作は、承認を受けた操作規則に従って行わなければならないことになっております。このたびのダム放流については、事前に予備放流を行い、洪水流入時においても流入量を下回る放流を行っており、ゲート操作に関しては現行の操作規則に従ったものでありました。今後、県としては、今回の出水状況にかんがみ、議員御指摘の趣旨を十分踏まえ、洪水時の対応方法等について関係機関へ働きかけてまいります。
以上でございます。
○議長(岸本光造君) 農林水産部長安田重行君。
〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) 四点についての御質問でございます。お答え申し上げます。
古座川町の平井と大塔村の木守を結ぶ林道木守平井線の改良の問題でございます。
延長十七キロメートルのこの林道は、十一年九カ月の年月をかけて昭和五十八年度に完成をいたしました。林業面はもちろんのこと、議員お話しのとおり、地域の方々の生活や産業用道路として幅広く利用されてございます。
この路線は、県内でも特に急峻な山岳地帯の中を開設してきたものでございまして、相当期間を経過した現在、のり面の保全、ガードレール等の安全施設、また路面補修などを必要とする箇所が多く見られる状況にございます。古座川町と大塔村を結ぶ唯一の幹線地域道路でもございますので、今後さらに交通量が増加するものと見込まれるところから、改良、舗装を含めた本路線の機能強化について早期着工を図るべく、国と協議を積極的に進めてまいる所存でございます。
次に、将来に備えた林道整備についてでございます。
本県では、急峻な山岳地帯を広域的に結ぶ基幹林道の整備を重点に、現在、広域基幹林道を十一路線、これに接続する支線林道三十三路線について開設、整備を実施中でございます。平成十五年における林道密度一ヘクタール当たり七・三メートルの目標達成を目指して林道網の早期整備に取り組んでいるところでございます。
今後、二十一世紀の初頭に向かって、量的、質的にも全般的に優位にある本県の森林資源が着実に充実していく中で、県産材の安定供給体制づくり、とりわけ林道を中心とした生産体制の早期整備がますます重要となってくるものと考えてございます。このために、議員御提言の趣旨を十分踏まえながら、重点地域へは高密度路網の形成を図り、林業の機械化が進む中で、林内路網のネットワーク化を目指した林道の体系的な整備により一層取り組んでまいる所存でございます。
次に、森林の管理の問題でございます。
森林の管理については、地域外へ転出した方々の所有森林の中には手入れが行われていない箇所も見受けられるのが昨今の現状でございます。このため、ふるさと森林活性化対策事業によりまして、森林組合が中心となり、大阪、東京などの都市部で説明会を行うなどして、適正な施業管理を呼びかけておるところでございます。
なお、森林所有者の不在村化が進んでございます。所有森林の境界を含む森林の管理については、県森林組合連合会がことしから独自に山番制度を発足させ、境界の管理等を森林組合へ委託することを進めているところでございます。今後とも、こうした森林組合の活動を通じ、森林管理のより適正な推進に努めてまいる所存でございます。
最後に、森林火災消防対策の問題でございます。
山村地域の高齢化が進む中で森林火災の消防力の低下が起こっていることは、議員御指摘のとおりでございます。全国火災予防運動期間中に、特に広報車によって防火思想の徹底を図っているところでございますが、さらに平成元年度からは新たに過疎町村等の消防力強化のために、森林への入り込み客の多い市町村から順次、無線機、消防ポンプ、防火管理道の設置などを取り入れ、予消防活動の効率化、機動化を図っているところでございます。今後とも、防火思想の徹底を図るとともに、予消防体制の強化に努めてまいる所存でございます。
○議長(岸本光造君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
〔「再質問ございません」と呼ぶ者あり〕
○議長(岸本光造君) 以上で、和田正一君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(岸本光造君) この際、暫時休憩いたします。
午前十一時三十三分休憩
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