平成2年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(藤沢弘太郎議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
○議長(門 三佐博君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
47番藤沢弘太郎君。
〔藤沢弘太郎君、登壇〕(拍手)
○藤沢弘太郎君 まず最初に、今日の異常な土地価格の暴騰に関連をしてお伺いをいたします。
東京二十三区分の土地でアメリカ全土が買えて、まだ三十兆円もおつりが来る。そんなばかな、このようにお考えの方もあるかもしれません。しかし、これは紛れもない事実なのであります。アメリカ全土の面積は東京二十三区の面積の一万五千六百二十一倍、その地価総額はアメリカ全土が四百三兆円、東京が四百三十六兆円推計と言われております。
政府統計でも、建設省の住宅データ集の八九年度版によると、日本では首都圏で住宅価格は年収の七・五倍、これに比べて西ドイツは四・六倍、イギリス四・四倍、アメリカ三・四倍となっております。今日は、この事態で推しはかることができないほど悪化しつつあります。こうした状態は大都市だけに限られたものではなくて、本県においても例外ではなくなってきております。
国税庁が、一月十九日発表した一九九○年分の最高路線価──御承知のように路線価とは、主要道路に面した宅地の一平方メートル当たりの評価額のことでありますが、和歌山での最高路線価は和歌山市本町一丁目のブティックJアンドR前、ぶらくり丁通りの百二十八万円で、これを頂点にして周辺の路線価を順次算出いたします。ちなみに、この路線価が、本年一月一日から十二月三十一日までに死亡した人の相続税、あるいはこの期間の贈与税の算定基準になるものであります。しかし、現実はこのような生易しい地価ではありません。
和歌山市の河西地区で、市当局が坪三十から五十万円で公共用地取得がまとまりかけていたやさき、大阪の業者が隣接地を坪百五十万円で買い取ったために用地取得は御破算になったということを聞いております。また、県道湊神前線に関連し、同和対策事業計画で六十三年度買収、坪三十五万円、本年その継続地の鑑定価格が六十万円、これがその近接地で百万円で買収されたために事業の支障が見込まれていると言われております。
関西空港建設絡みでの大阪大手不動産グループの進出が、本県の土地高騰に一層の拍車をかけております。毎日の新聞折り込みに不動産売買の広告が入り、その価格も平均三千万円から六千万円という高価。多くの県民にとって、マイホームは夢のまた夢。マイホームを持っている人には、固定資産税の値上げの追い打ちであります。
大手企業を初め、県外業者の進出の状況はどうでありましょうか。現在、和歌山県内に支店を持ち大臣免許を有する県外業者は三十三業者。和歌山市の二十一支店をトップに、県下に三十六支店の網の目を張っております。
なぜ、和歌山への進出が急増しているのか。もちろん、関空を初めとする大型プロジェクトとの関連を中心にして、その主な理由の一つは、大阪に比べて県や市の規制が緩いこと。マンション建設や開発のための条件として、大阪では周辺住民の同意が必要であるけれども、和歌山は関係する自治会長の同意だけをとれば近くに住む住民あるいは隣接自治会の同意は必要でないために金や日時がかからないということであります。大阪大手資本の和歌山進出によって、県内中小建設関係業者は手が出せず、倒産さえ出かねない状況になっておると言われております。
知事、関空関連による活性化なるものは大阪の大手不動産業者が中心であって、本県業者にとっては活性化の風は頭上を吹き抜けていっているのが現状ではないでしょうか。今日の土地狂乱を生み出したのは、土地、不動産を買い占め、投機をめちゃくちゃにやってきた大企業、そして湯水のようにこれら大企業に融資をしてきている金融機関と、何にも増して中曽根元内閣が進めてきた民間活力による高度利用こそ地価つり上げの根源ではないでしょうか。
そこでまず、知事にお伺いをいたします。
この異常な土地高騰を生み、県経済の活性化を阻害し、県民生活に困難を生み出している原因はどこにあるとお考えなのか、お尋ねをいたします。
また、大手不動産会社の不当な土地買いを規制し、金融機関による大手不動産会社などへの融資の規制、あるいは悪質地上げ業者の取り締まり、土地転がしの利益に一○○%課税を行うことが土地投機に対する実効ある措置と考えますが、知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
続いて、お尋ねをいたします。
さきに用地買収に関する一例を申し上げましたが、異常な土地高騰のもとで来年度県予算案における投資的事業が計画どおり執行され得るのかどうか、甚だ危ぶまれるのではないかと危惧せざるを得ないのであります。本議会第一日目に我が党の中村博議員が来年度予算問題で指摘をしたように、多額の不執行が起こる可能性が十分考えられるのではないでしょうか。現状を冷静に見て、来年度予算執行で事業計画を遂行し得る確信がおありかどうか、同時に、これに対する具体策などについて、知事からお答えをいただきたいと思います。
次いで、土木部長及び関係部長にお尋ねをいたします。
各種事業執行の上で用地取得の困難さは察するに余りがあります。聞くところによりますと、用地交渉が成立をしても相手方の要請は代替地問題が多くて、この点をどう打開するかが今日の地価高騰のもとでの中心の一つだとのことであります。先ほど、この問題につきましては大江議員が質問をされましたが、私はこの点、非常に重要であると思います。
また、用地取得に当たる担当職員は相手との交渉の七○%近くは夜になると言われ、人員の増加を初め県行政全体の問題として対処するなど、抜本的な対策が必要だと考えます。
さらに、住民の生活や環境を守るためにも、無謀な開発などを規制するためにも、従来のような弱い姿勢ではなくて、その周辺住民の同意を得ることをより一層重視するなど、手続上においてもより強力な指導を行うことが重要であると考えます。御答弁をお願いいたします。
次に、土地高騰と関連する地価監視区域制度についてお尋ねをいたします。第一日目に関連した質問がなされておりますので、重複を避けてお尋ねをいたします。
我々が調査をした和歌山市東部地区における地価高騰は、一カ月平均三%、年間約四○%に及んでおります。新聞報道によりますと、昨年十月一日から本年一月一日までの三カ月間において、海南市の商業地で二○%近く、橋本市紀見地区の住宅地で二○%以上、那賀町で一五%から三○%、粉河町で一五ないし二五%、桃山町で二○%近く、土地の上昇が確認をされたと報じております。
昨年当初における監視区域指定は、一定の効果を果たしたものと考えます。しかし、今日の異常な高騰に歯どめをかけるためには、届け出制や監視区域の指定というなまぬるい方法ではなくて、国土利用計画法第十二条の規制区域の指定を行い、知事の許可を必要とすべきと考えるわけであります。
また、県当局は専任の課をつくって対処すると本議会で答弁をされておりましたが、さしあたって和歌山市の商業地域及び近接商業地域の届け出対象面積を現行の三百平方メートルから百平方メートルに引き下げるべきだと考えます。既に、大阪府や奈良県ではこれを実施しております。大阪の大手業者などは和歌山全県を対象に進出をねらっておりまして、御坊、田辺、白浜など紀南方面の土地買いを進めております。特に、国土保全と乱開発防止、自然環境を守るために、欠くことのできない重要な和歌山の海岸線について監視区域に指定をするなどの対処を行うべきと考えます。
以上の諸点について、企画部長、土木部長の答弁をお願いいたします。
第二に、米の輸入自由化及び農業問題についてお伺いをいたします。
昨年の、温州ミカン、中晩柑の改廃園問題は、ミカン農家のみならず、他の果樹農家を初め和歌山県農業に与えた影響ははかり知れないものがあったと思います。年がたつにつれて、この打撃の影響はさらに深刻さを広げるものと推測されます。
さて、昨年の参院選、本年の衆院選の重要な争点の一つとなった米の輸入自由化問題についてであります。
改めて言うまでもありませんが、日本の米と稲作は日本国民の主食であり、日本農業の根幹をなすものであります。また、農家の経営と暮らしを支え、地域経済を支え、国土や環境の保全のために、そして伝統文化を生み出す土台でもあります。日本の産業の重要な柱の一つである農業の中で占める米の動向は国家の主権と民族の存立にかかわる問題であることを、まず申し上げておきたいと思うのであります。
昨年十一月二十八日付の産経新聞の一面トップに、「『コメ』で日米密約 自由化問題総選挙前触れず」との大見出しで、「米国政府が日本の政府・自民党に対し次の──ことし行われた選挙でありますが──総選挙が終わるまでは日米二国間では日本のコメ自由化問題に触れないことを非公式に約束していることが二十七日までに明らかになった」として、次のように報道しております。若干、引用してみます。
「日米間の貿易交渉にかかわっている米国務省筋が二十七日までに明らかにしたところによると、米政府の『近く予想される日本の総選挙がすむまではコメの自由化要求を持ち出さない』という方針は、ヒルズ通商代表部(USTR)代表から自民党の小沢一郎幹事長に伝えられた。 同国務省筋によると、ヒルズ代表が訪日し、十月十二日に小沢幹事長と会談した際、小沢氏からの『総選挙の前に米国から日本のコメ市場開放を再び要求されると、自民党は選挙できわめて不利になるので、コメについては選挙後までは一言も触れないでほしい』という趣旨の要望に、『了解した』と明言した。ヒルズ代表は(中略)『次の総選挙が終わるまでは米国政府としては、日米との二国間の貿易関連の協議などでコメ市場自由化の問題を改めて持ち出すことはしないようにする』との非公式の約束を伝達したという。(中略)同国務省筋は、ヒルズ代表の小沢氏に対するこの言明が米政府全体の意向であり、非公式の保証と解釈できる、としている」、このように述べております。
中略したところもありますけれども、以上が産経新聞の昨年十一月二十八日に報道された内容であります。この報道は、まさに日本農業にとって重大な事態を示しているのではないでしょうか。
本年一月十八日、日本記者クラブにおける「米は一粒たりとも輸入しないという論理は世界に通用しない」と述べた、当時の松永通産相の発言をめぐる農民の抗議と批判の広がりは皆さん方の記憶に新しいところであります。米輸入自由化を容認する閣僚や自民党首脳の発言は、この一年だけを見ても、昨年一月四日の羽田元農水相、八月十一日の当時の高原経済企画庁長官、十月八日の渡辺元自民党政調会長と相次いでおります。
そもそも米の輸入自由化は、日米安保条約の第二条経済協力条項に基づくアメリカ側の対日要求の強まりの中で、一九八三年、中曽根・レーガン会談で設置が合意をされた日米諮問委員会の最終答申や前川リポートによって推進の方向が確認されてきたものであります。
経団連初め財界は、一貫してその実行を要求してまいりました。経団連の斎藤英四郎会長は、本年二月二十三日の記者会見で、米の輸入自由化問題について、「対外政策上の大きな問題として取り上げられることを覚悟しておくことが必要だ」、このように述べております。
さらに、新行政改革審議会いわゆる行革審は本年四月に発表予定の最終答申で、農産物の輸入規制の全面見直し、廃止とともに、食管制度の廃止という米の輸入自由化の条件づくりを打ち出すと言われております。私は、米の輸入自由化は何としても阻止しなければならない国民的課題だと思うわけであります。
そこで、まず知事にお伺いをいたします。
昭和六十三年九月県議会におきましても、「コメの市場開放阻止に関する意見書」を全会派一致で関係大臣に提出しております。この国民的課題である米の輸入自由化に対して、知事は反対の立場に立たれるのか、容認する立場に立たれるのか、お考えをお聞かせいただきたいのであります。
次に、食糧自給率についてお尋ねをいたします。
我が国の穀物自給率は、一九五五年に八八%であったものが、今や三○%にすぎません。カロリーベースでは、一九六○年に七九%あった食糧自給率が、七○年には六○%に、さらに八八年には四九%にまで落ち込んでしまいました。人口二千万人以上の国で食糧自給率が五○%を割っている国は、世界じゅうで日本だけであります。
例えば、フランスは一九八三年で一二八%に、西ドイツは一九八五年で九三%に、同イギリス七七%というところに見られるように、かつては自給率の低かったイギリスや西ドイツが輸入規制や価格保証の保護政策で自給率を高めてきたのとは我が国は全く対象的であり、農業再建にまともに取り組む姿勢でないと言わざるを得ません。食糧自給率の向上、農業の再建は、初めにも述べましたが、農家の暮らしと経営を守り、民族の自立、国民の健康と安全、国土と環境保全のために、まさに全国的な意義を持つ課題であります。
そこで、知事にお伺いをいたします。
まず、米の輸入自由化問題とも関連をいたしますが、自給率の落ち込みの原因とその高めについて、基本的な考えをお聞かせいただきたいのであります。
続いて、米作の減反問題に関してでありますが、この問題では我が党の小林史郎議員が再々にわたって質問をされておりますので、私は内容を簡単にいたしまして、減反問題など数点をお伺いしたいと思います。
私は、この減反問題に関する資料を担当課からいただきまして、農業人口の移り変わり、戸数、耕作面積、作物の種類、農業用資材などを調べているうちに、本当に胸が締めつけられ、調べるのを何度か中断したのであります。
去年のミカンの改廃園政策の中で、チェーンソーを買いながら、とうとう自分の手でミカンの木を切ることができなかったというお年寄りもおられます。また減反政策でミカンに転作した土地、今度はこれをつぶして他の作物を植える、こんな繰り返しが農業生産につきまとっている。農業の行く末に不安と絶望めいた気持ちがあって、どうして農業を国の重要な産業の柱と言えるでありましょうか。
そもそも、政府による減反政策が開始されたのは一九六九年、昭和四十四年、ことしで二十一年目になります。減反開始の翌年から昭和六十三年までに本県の耕地面積は樹園地を中心に増加したものの、田んぼは一万九千七百七十二ヘクタールから一万五千ヘクタールへと四千七百七十二ヘクタールも減少しております。一方、農家戸数も六万六千五百九十一戸から五万三千六百四十戸へと、一万二千九百五十一戸も減少しております。また、農地、田畑の転用は、昭和五十九年から六十三年までの間に九百五十四・五ヘクタール減少、うち六三%が田んぼであります。その柱となっている水田農業確立対策実績いわゆる米減反の実績は、本県が消費県であるにもかかわらず、達成率は一○○%を毎年超過しております。担当者も言うに言えない苦労と悩みをお持ちと思いますが、本県の稲作農業をどのようにしていこうとされているのか、まず農林水産部長からお聞かせください。
かんきつ園地再編対策転換についてお尋ねをいたします。
ミカン、中晩柑の改廃園によって、梅、柿を初めとする他果樹を中心に、他作物や植林などへの転換が行われた一九八八年度の第一期の実績についてどのようにとらえておられるのか。
第二期、第三期計画が組まれておりますが、第二期はこの三月までとなっております。これらの計画が今日直面しているかんきつの改廃園の二の舞が起こらない、いや起こさないという展望を持つものとして、どのように対処されようとしているのか。
次に、後継者問題に関連をしてお尋ねをいたします。
一九八九年一月一日現在の基幹的農業従事者状況によりますと、全体で四万八千七百九十人のうち、十六歳から十九歳までが二十人、二十歳から二十九歳までが千五百四十人、三十歳から三十九歳までが五千五百三十人で全体の一四・五%、六十歳以上が二万七百三十人で四二・五%であります。
近畿における農業後継者数は本県がトップとなっておりますけれども、昨年における高校卒の新規就農者は七十人中四十四人で、うち他産業からのUターン青年十六人が含まれております。これらの指標は、後継者問題がいかに深刻であるかを示していると同時に、農業を産業の重要な柱と位置づけての抜本的で具体的な対策が緊急に求められている問題でありますので、部長からお答えをいただきたいと思います。
最後に、紀の川用水問題について、昨年十二月議会に引き続き簡潔にお伺いします。また、本会議二日目に岸本光造議員が本問題で質問をされておりますので、要点のみお尋ねをいたしてまいります。
十二月議会における「紀の川用水農業水利事業地元負担金の軽減に関する意見書」に基づく政府への働きかけ、及び県としての本事業に対する予算編成に積極的対応をされたことにお礼を申し上げます。
この用水事業の完成は一九九二年度と聞いておりますが、事業の現状と今日の時点における課題及び今後の対応と見通しについて、とりわけ創設をされる償還事業はどのような内容であるのか、あわせて本事業の最終地点となる和歌山市の山口西地区への完成に至る年度計画等について、農林水産部長から答弁をお願いします。
以上で、私の第一回の質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) ただいまの藤沢弘太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 藤沢議員にお答え申し上げます。
土地問題について、現在の地価高騰を生み出した原因等についてでございます。
昭和六十年代に入りまして、東京都心の商業地に端を発した地価高騰は次第に周辺部へ参りまして、大都市圏へ移り、また地方都市へと波及してまいったわけでございます。これは、我が国の経済の国際化、情報化等の構造変化に伴って東京への集中がさらに進みまして需給のアンバランスを生じ、都心部でのビル用地売却者による買いかえ需要が増加したこと、さらにこれらの需要を当て込んだ一部業者等による手当て買い、投機的土地取引が活発化したことや金融緩和状況がこれらに拍車をかけたものだと感じております。本県においても、特に昨年から関西空港関連を初めとして地価が上昇しておるということ、まことに遺憾に思っておるわけでございます。この対策に苦慮しているところでございます。
これらを規制するための実効ある措置についてでございます。
土地問題につきましては、過日、鈴木議員初め皆さんからもいろいろお話がございました。この対策については、総合的な対策が必要だと思っております。土地基本法ができましたけれども、それを具体化する各種法律等の制定ということが大事でございます。また国におきましても、昨年の十二月に基本理念を定めた基本法が発効するに伴いまして土地閣僚会議が開催されまして、税制の問題、金融の問題、宅地供給の問題等、十項目についての今後の土地対策の重点的な施政方針が定められておるわけでございます。こうしたものを積極的に推進していただかなければならないし、また過日も話ございましたように、知事としても、そうしたものについての意見具申もやっていかなければならないと思います。特にまた最近の新聞論調を見ましても、土地問題が各分野において取り上げられております。だから、各政党においても、この土地対策についての具体的諸施策をも推進していかなければならないと思います。県においても、改正が予定されております国土利用計画法を厳正に運用することにより、投機的な取引の排除により一層努めてまいりたいと思います。
次に、こうした異常な高騰の中で、来年度の予算の執行についてでございます。
お話ございましたように、これについても私たちは大変苦労しておるわけでございます。社会基盤の整備を図る投資的事業の執行は県民の福祉向上と活力ある産業振興のために最も重要なことでございますけれども、最近の急激な地価高騰によりまして、用地取得の難航に加えて災害による事業量の増加等により繰り越し事業も生じておるわけでございます。これが解決のためには公共用地の先行取得の充実、先ほども大江議員に申し上げましたように、こうしたやり方の問題と同時に用地取得の体制づくりを図り、計画どおりの事業推進に全力を傾注してまいる所存でございます。
次に、農業問題について、米の輸入自由化に対する知事の態度でございます。
お話ございましたように、米は国民の基本食糧であり、農業の根幹をなすものでございますので、輸入自由化に対しまして、昨年の県議会でもお答えしましたように反対してまいるわけでございます。一昨年九月の衆参両院の決議、また十月の本県議会においても国に対して反対意見書が提出されているところから、今後とも自由化反対に向けて強く働きかけてまいりたいと存じております。
次に、食糧自給率の低下の問題でございます。
これは、国民の生活水準が向上する中で、とりわけ食糧消費の多様化が進んでまいっておるわけでございます。穀物需要の形態が変化したことが大きな原因だと思うんです。議員御指摘のように、飼料用穀物を含めた現状の自給率は三○%でございますけれども、主食用穀物自給率では六八%でございます。しかし、基礎的食糧の確保の上からも、一定の自給率の維持はぜひ必要であると考えております。
○議長(門 三佐博君) 土木部長磯村幹夫君。
〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
まず、用地取得のための問題点についてでございます。
最近の地価高騰や地権者の土地に対する権利意識の高揚などによりまして、用地取得が非常に困難になっている状況は十分認識してございます。近年、金銭補償にかえ、代替地を要求される事例が多く、さらに公図訂正に伴う登記事務の複雑化等、用地をめぐる諸問題については非常に厳しいものがございます。
これに対応すべく用地担当職員につきましては日夜頑張っているところであり、これが解決の方策として、先般、庁内関係部局において公共用地取得促進対策委員会を発足させたところでございます。今後は、関係部局と密接な連係を保ちながら、人員の確保と事業の遂行を図ってまいりたいと存じます。
次に、無謀な開発などを規制するため周辺住民の同意を得ることについてでございます。
開発許可申請の審査に当たっては、関係部局の間で調整を図るともに、技術基準に基づき、申請者に対し計画内容について具体的に指導しているところでございます。
議員御指摘の周辺住民の同意については、市街化調整区域において開発行為を行う場合、開発申請者に対し許可申請に先立って、隣接土地所有者、関係地元自治会に十分説明、調整を行い、同意を得るよう今後とも指導してまいります。
以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 企画部長川端秀和君。
〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) 地価対策につきまして、規制区域指定と監視区域対象面積の引き下げと区域拡大についてお答えを申し上げます。
地価の異常な高騰は、県民生活や公共事業等の実施にとりまして大きな影響を及ぼすものと認識をいたしているところでございます。そうした中で、まず規制区域の指定についてでございますが、今回の東京都を初め異常とも言うべき地価高騰においても、規制区域制度によることなく、まず監視区域制度により対応されているところでございます。本県といたしましても、今後とも規制区域制度をも十分認識しつつ、監視区域の厳正な適用を図りながら地価対策に臨んでまいりたいと考えてございます。
また、監視区域制度における届け出対象面積の引き下げでございますが、過日、鈴木議員にもお答え申し上げましたように、監視区域に指定した地域については詳細調査や地価動向調査を実施いたしまして、地価動向や土地取引状況の把握に努めているところでございます。こうした調査結果を踏まえまして、今後、届け出対象面積の引き下げ等、時宜を失することなく的確な対応を図ってまいりたいと考えてございます。
また、紀南地域の海岸沿いの監視区域の指定については、既に地価上昇の見られました田辺市、白浜町で昨年指定しているところでございますが、その他のプロジェクト関連地域等、地価上昇のおそれのある地域につきましては、今後もプロジェクトの進捗状況や地価動向等を見守りながら的確な対応を図ってまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 農林水産部長安田重行君。
〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
稲作農業の展望、稲作をどうしようとするのかという御質問でございます。
本県の稲作規模は一戸平均三十アールで、全国の六十四アールに対しまして大変規模が零細でございます。十アール当たりの生産コストは、全国平均よりも約四○%高くなってございます。稲作に依存する農業経営は至難なことと考えております。
こうしたことから、消費者の良質米志向が高まる中で、うまい米づくり運動を推進する一方、恵まれた自然環境を巧みに利用し、地域の特色を生かした、稲作だけに頼らない水田農業の展開、確立に取り組んでいるところでございます。
次に、かんきつ園地再編対策後の展望の問題でございます。
この事業は、需給の均衡と産地の再編整備を図るために農家の自主性を尊重しながら実施をしているところでございまして、第一期の転換の実施率は温州ミカンで全体計画の四九%、中晩柑で六七%と順調に進んでおり、地域の特色を生かした落葉果樹の導入を初め、果樹、野菜、花の施設栽培など、収益性の高い経営への取り組みが見受けられているところでございます。
議員御指摘の、二の舞にならないように、今後とも適地適産を基本とし、全国的な需給動向を勘案しながら、産地間競争の激化、国際化の進展に対処して、コストの低減や高品質生産を基本とした知識集約型農業の一層の推進を図るなど、生産者の積極的な取り組みを促しながら、関係団体と一体となって明るい展望を切り開いてまいりたいと存じてございます。
次に、過疎化の振興、特に後継者問題でございます。
農業後継者の減少は深刻な問題として受けとめておりまして、若者が農業に残れるような生産性の高い、魅力のある農業の確立を目指して、生産基盤の整備、地域の特色を生かした活力ある産地づくり、農村の生活環境の整備を図り、担い手養成の特別事業や就農相談活動、海外派遣研修、都市や地域の女子青年との交流会など生産と生活の両面にわたりまして、総合的な施策を市町村、また関係団体ともども積極的に推進し、後継者の確保とその定着に努めているところであります。
今後とも、後継者育成のために、県農業大学校の充実や農業高校等、学校教育との連携を深めながら、農業に対する関心を高めるとともに、農村社会に対する理解を深めて農業後継者対策に取り組んでまいる所存でございます。
最後に、紀の川用水の問題についてでございます。
おおむねにつきましては、さきの岸本議員の御質問に知事が御答弁を申し上げたとおりでございます。
土地改良負担金総合償還対策事業、これは平成二年度から五カ年で一千億円の資金を造成して、この資金の活用によりまして負担金の償還が困難な地域について助成措置を講ずることとなってございます。対象地域は、ピーク時の年償還額が十アール当たり三万円以上、または農家一戸当たりが二十万円以上の地区となってございます。現在、採択要件や特認措置の適用条件等々について、その制度の運用事項について国において検討をいたしておるところでございます。
なお、紀の川用水土地改良事業のうち和歌山市山口西地区の団体営の事業についてお尋ねでございますが、昭和六十三年度から総事業費二億三千七百万円で総延長二千二百メートルを実施いたしております。平成二年度末で五○%の進捗率となる予定でございまして、地元の強い要望もございますので、平成四年度末に完了できるよう鋭意努力をしてまいる所存でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
47番藤沢弘太郎君。
〔藤沢弘太郎君、登壇〕
○藤沢弘太郎君 答弁をいただきましてので、再質問をさせていただきます。
特に質問申し上げましたように、本年度の県予算案の執行という問題が非常に重要であるし、その中でも土地高騰というのは大変深刻な事態になっていると思うわけであります。知事もそのように答弁しておられましたが。
私は、こういった予算化の問題ともあわせながら、私が得た資料で若干見てみますと、ことしの二月から三月、和歌山市の杉ノ馬場、ここは宅地で商業地でありますけれども、坪単価が千六百五十万円です。市駅の周辺であります。また、吉田の祓戸というところ、これも商業地で更地になりまして一千万円。九○年の二月であります。吉礼におきましては、これは調整区域でありますが、八十万円。さらには小雑賀、これは現在、農地で準工業地でありますけれども、百万円。こういうような形で、売買の実例を見てみますと大変な状況であります。
私、去年とことしの問題も調べてみましたけれども、これらの事態については時間的な問題もあるので略します。しかし同時に、このような中で業者間においてどういったような実態が出ておるかと言いますと、例えば東洋台においては、今まで坪四十から五十万円であったのが今百五十万円。岩出の紀泉台でも県が分譲した当時は約十六万円、それが去年の三月で二十万円、ことしはもう百五十万円になっている。六十谷のニュータウンにおきましても、昨年六月で二十八万円のところが今八十万円から百万円。日によって違うわけであります。だから値がつけられないというのが現状であります。和歌山県の建設業者の中では、とにかく商業地は値段がつけられないと言われています。大阪業者の間では、大体、商業地は三千万、宅地が三百万、こういうようなところが天として来るんじゃないだろうかというようなことまで言われている状態であります。
そういったような状況でありますので、先ほど知事からも答弁をいただきましたけれども、こういう現状の中で県の事業をやっていく場合、非常に深刻さを通り越した状況だと思うわけであります。
この点で、予算実施の上でどのようにしていくのか。支障を来さないのか来すのか。来さないということを知事も言っておられましたが、私は用地の先行取得であるとか、国の土地あるいはまた公共用地については安い値段でこれを取得するということが大事じゃないかと思うわけであります。
それともう一つは、先ほど大江議員も言っておられましたけれども、代替地の問題です。
この代替地の問題につきましても、こうした安い土地を確保していくということが非常に重要だと思います。この点は知事から答弁をいただきましたけれども、これらの問題については恐らく大変深刻な事態が来ると思います。そういう点については、十分な態勢をもってこうした土地の値上がりの問題については直ちに手を打っていくことが大事だと思いますので、この点は要望として申し上げておきたいと思います。
二つ目に、実効ある措置の問題であります。
実効ある措置の問題ということで私申し上げましたけれども、一体、実効ある措置というのはどういうことなのか。これは、「総合的な対策」だという答弁がありました。私は、この問題につきましても、例えば土地規制の問題についてどうであるとか、金融機関による大手不動産会社などへの融資の規制とか、あるいは悪質地上げ業者の取り締まりの問題、こういった例を挙げてまいりました。知事の言う「総合的な対策」という中の一部かもわかりませんが、知事から具体的にこのような事態について一体どのようにするのかということについてもう少し答弁をいただきたい、このように思うわけでございます。
それから、監視区域の問題であります。
私は、こういったような土地の規制を行うべきだと、規制地域の指定ということを言いました。これは国土利用計画法に基づく問題であって国との関係でありますが、これについても積極的に県の方から強力な要請をしていくということがないと、国の問題だということで放置をしておってはならないと思うわけであります。歴史的にも国土庁がこの問題について首を縦に振らなかったというようなことがありますけれども、ぜひこういったような実情について強力に国に対する働きかけも行っていただきたい。これも、要望として申し上げておきます。
次に農業問題で、輸入自由化問題について申し上げます。
知事も輸入自由化反対を表明されました。以前からもそのような態度でありますけれども。
このような点から非常に心配なのは、政府や自民党がグレープフルーツの自由化に当たってアメリカとの合意をひた隠しにしてきたこと、そして自由化はしないという公約を掲げて六九年の総選挙、それから七一年の参議院選挙を行ったわけでありますけれども、この参議院選挙の投票の三日前に自由化を強行したという歴史的経過があるということでございます。また、一九八八年──一昨年の牛乳、オレンジの輸入自由化の際にも、ちょうど四月に行われた参議院の佐賀県の補欠選挙で、当時の竹下首相が県下の農協組合長あてに檄を飛ばしながら、選挙後の六月には自由化を強行している。
最初の質問でも述べましたけれども、一九八三年、中曽根・レーガン会談での合意に基づいて設置された日米諮問委員会が一九八四年に発表いたしました最終報告書では、米、大麦、小麦などは広大な農地規模を必要とするとして、平均一ヘクタール程度の農地規模の日本では米の生産を事実上やめるよう提唱しているという事実があるのであります。
知事、私の質問はこうした根拠の上に行ったものでありますので、そういった点を踏まえながら、この輸入自由化反対の問題については一番最初に質問申し上げたヒルズ国務長官と政府当局との会談という現実もありますし、具体的にこの反対の立場をどうすべきと考えられているのか。例えば、知事会議で国会決議をするように要請するとか、あるいは国の基本方針として明確にするよう政府と国会に要請をするとか、そういったような点、具体的な反対の内容についてお答えをいただきたいと思うわけでございます。
私は、こういったようなことは県の段階でもできるんじゃないかと思います。今年度の農林水産予算は四百五十七億でありますが、松下興産一社のためにほぼこれに匹敵するような四百二十二億円という金を支出されておる。「エンジンを始動させる」ということを知事は冒頭の説明で言われましたけれども、県民生活に密着した道路や交通、教育、ここにこそ力を注がなければならないのではないかと考えますので、こういった点についてもぜひひとつ知事の見解をお聞かせいただきたい。
以上で、私の再質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 藤沢議員にお答え申し上げます。
国の土地対策に対する積極的な提言等といった対応の問題でございます。
さきに私も申し上げたわけでございますけれども、我々が公共用地を推進する場合、一番の問題点は土地収用法をもう少し改正してほしいということでございます。日本の土地収用法は世界の中でも一番難しいのではないかと思います。だから、これを早期にできるような形にもう少しすべきじゃないかという感じがするわけでございます。これについては、我々地方団体としては是が非でも第一にやってほしいと思います。
次に、土地税制の問題が言われておるわけでございます。国際的な土地税制の中で日本の税制がいかにあるべきか。話ございましたように、土地問題が一番の緊急な政治課題だと思うんです。だから、こうした問題について具体的な形を考えていただきたい。
また、金融における取り扱いに関して監視の問題もございます。そしてまた、宅地供給を促進する方法を考えていただくということ。さらに、土地を開発した場合の開発利益の還元の問題。そしてもっと大事な問題は、土地に対する意識の改革について国全体として考えていただかなければならないんではないかと思います。私有権絶対という問題をどの程度まで考えるべきかと、使用権との問題で。これは、国民意識の問題として全般的に国会等において検討すべき問題ではないかと、こうしたことについても意見を述べさせていただきたいと思っております。
それから、米の具体的な反対の問題についでございます。
米の問題は、私は国政で論ずべき問題だと思います。さきに、反対決議を議会でもやっております。それに基づいて、知事としても反対を表明しております。国政の分野において十分検討すべき問題だと考えております。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
47番藤沢弘太郎君。
○藤沢弘太郎君 簡単に申し上げます。
知事、国政の問題ではありますけれども、そういったところへ県内の農業の実情を十分に反映していくといことがやっぱり国政の中でそういったような実現を推し進めていく重要な柱だと思いますので、その点を要望しておきます。
同時にまた土木部長──土木部長だけではなく県全体の問題でありますけれども、用地の取得というのは点買いではだめなんです。やっぱり面を買っていくという、そういう点も十分に考えてもらいたい。
以上で、再々質問を終わります。要望です。
○議長(門 三佐博君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤沢弘太郎君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) この際、暫時休憩いたします。
午後零時三分休憩
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