平成2年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(森 利一議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午前十時四分開議
○議長(門 三佐博君) これより本日の会議を開きます。
○議長(門 三佐博君) 日程第一、議案第一号から議案第六十五号まで、並びに知事専決処分報告報第一号から報第四号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
40番森 利一君。
〔森 利一君、登壇〕(拍手)
○森 利一君 私は、差し迫った二つの問題について簡単に質問を申し上げたいと思います。
その一つは、池原ダムの水利権更新の問題でございます。
熊野川は、吉野熊野総合開発計画により昭和三十年代前半から上流にダムが建設されまして、分水により減水し、瀞八丁を初めとする山紫水明の熊野川は二、三年でもとの清流に戻るという建設当時の説明にもかかわらず、三十余年を経過した現在でも黄褐色の濁った水が流れているのであります。
昨年秋の汚濁は長期二カ月にわたり、大きな被害を受けたのでありますが、地元の「熊野新聞」は、見出しに「瀞峡が変じてヘドロ峡、沿岸漁業や観光に大打撃」として、記事の中で「夏から秋にかけての大雨による上流ダムの放流で熊野川の濁りがこれまでにない長期にわたり、上水道、工業用水、内水面漁業、名勝瀞峡のイメージダウンなど、深刻な影響を受けている。また熊野川河口から流れ出る黄土色の濁水は、潮流に乗って五キロから六キロに広がっており、海藻類に悪影響を与え、アワビ、サザエ、トコブシの生育はさっぱり。シーズンに入ったマダイの底釣りも、濁りと海藻に積もった泥で釣り量はゼロ。正月にかけてのウニ、ナマコ漁も透明度が悪くて期待できない。被害をもろに受けている三輪崎漁協では、二津野ダムの発電を中止せよと強硬な意見も出ている。 一方、濁りの長期化で新宮市の上水道も浄水コストの上昇に頭を抱え、落ちアユなど内水面関係者、下流の製紙工業水にも不安を与えている。今まで比較的きれいだった北山川の濁りが厳しいので、北山村のいかだ下りも瀞峡観光のウォータージェット船も、せっかくの観光が台なしだと怒りを隠せない。こうした事態に電源は、四日間、椋呂発電放流を停止したが、北山川の濁りがひどいので下流の濁りは変わらない状態である」と報道をいたしておるのであります。
内水面漁業、沿岸漁業、工業用水への影響、観光のイメージダウンなど、その上にダム湖にはかつての水質からは予想だにされなかった赤潮が発生して、湖面に広がるチョコレート色の赤潮を見た者は、これを下流の人々が飲み水にしているのかと、まゆをひそめるのであります。
さて、私の質問の目的は、熊野川水系の水利権更新に伴う問題であります。
先ほど申しましたとおり、熊野川水系には、十津川水系に七カ所、北山水系に四カ所の計十一カ所の大小ダムが昭和三十年代から四十年代にかけて構築されたのであります。水利権許可の期限は三十年でありますから、既に風屋、二津野、坂本ダムは昭和六十年に水利権を更新し、ことしすなわち平成二年三月、ダム群では最大の出力三十五万キロワット、三億三千万トンの水を貯水している池原ダムが水利使用の期限が来ているのであります。
これらダムの建設当時の昭和三十年代は我が国の戦後復旧の時代で、電力の開発は国家的な要請であり、特にエネルギー資源の関係から水力発電が大きく注目されたのであります。
当時は、ダム建設により水没したり、あるいは喪失する財産や権利の補償については重大問題として大騒動しましたが、三十年後に至るこの環境破壊については、「建設中とその二、三年は濁るが、やがてはもとの清流に戻る」という電源審議会の説明を信じ、納得させられ、顧みられなかったのであります。
そもそもこの熊野川は、千古の昔から雄大な自然の中で清澄な急流をなし、あの有名な瀞八丁の秘境やいかだ流しは天下に名をはせたところであり、新宮市が生んだ文豪・佐藤春夫は昭和二十六年に新宮市歌をつくり、「山紫に 水明く 人朗らかに 情あり」と、ふるさとの自然の美と人情の厚さを誇りたたえたのであります。
先ほど私が新聞報道をもって申し述べました長期六十日にも及ぶ濁流水の問題でありますが、実は昭和六十年、風屋、二津野、坂本ダムの水利権更新に当たって電源開発株式会社は地元水対連に確約書を提出し、濁水長期化対策について、その応急対策として池原発電所放流水を混合希釈する対策の実施や七色ダム汚濁防止膜の設置、発電の一時停止など、汚濁防止に全力を挙げることを確約したのであります。しかし、このような高濃度の濁水に対しては、混合希釈も濁水防止膜も発電の一時停止も何の役にも立たず、電発自体が、応急手当てはしているが抜本的な対策が見つからないと、誠意のない、頼りない話をしているのであります。
一方国は、新宮川水質汚濁防止連絡協議会を機関として、汚濁防止分科会、淡水赤潮分科会においてこれらの問題に取り組んでおるのでありますが、十津川水系では赤潮が年々ひどくなり、北山水系では淡水海綿が異常発生するなど、肝心の水質の問題も不安を増しているのであります。
このように「死の川」と化した熊野川は流域住民の水泳や川遊びなど川との触れ合いをも奪い、自然の生態系を変え、山、川、海という自然を背景に発展してきた文化をも損なってしまったのであります。しかも、この有形無形の損害は言葉では言いあらわせないものがあり、その莫大な被害をもろに受けながら電源三法等何ら優遇されるものもなく、泥水ばかりかぶらされているのが下流和歌山県の市町村であり、住民であります。被害を受けるたびに補償の要求というパターンでは、将来展望がないのであります。
さて、水利権更新の池原ダムについて、電発の発行しておるパンフレットに「比較的清流を保っていた北山川も、昭和五十七年の台風十号により池原ダム上流に多くの山腹崩壊が発生し、洪水時には高濁度の水がダム湖に流入する状況となり、濁水長期化現象が生じてきた」としているとおり、このことは、下流にある山紫水明、幽玄の美を誇る瀞峡にとってはまことに重大な問題であります。
今、電発は、池原ダムに表面取水設備を設置することが濁水軽減に最も有効であるとしてその工事を計画し、工事中の水位低下に伴い予想される下流の流量や濁水の問題について、現在、漁業、観光、上水道、工業用水に影響が予想されるので、目下、関係者と協議をしているのであります。
繰り返すようでありますが、ダムによる自然環境破壊や水質汚濁、冷水、減水等は内水面漁業や沿岸漁業に大きな影響を与え、また下流の瀞峡に与えたイメージダウンははかり知れないものがあり、美しい自然の海岸線七里ケ浜もやせ細っていくという深刻な海岸浸食の問題、さらには製紙工業用水にも影響し、恐るべき災害の元凶となって母なる川を死の川にしてしまったのであります。
以上、るる長々と申し述べましたのは、失礼な言い分ですが、知事初め当局の皆さんにこの実情を再認識していただきたいためであります。水利権更新を目前に控え、流域の住民は「熊野川をもとの清流に戻せ」という悲願を合い言葉にして、厳しい憤りのもとで、今、市町村や新宮川対策協議会においてその対策を審議しているところであります。
私は、この自然破壊の大問題は、戦後、電源確保という国策によってダムをつくり水力発電がなされたのであり、これは一地方の問題ではなく、国や県がもっと実情を認識し、積極的に取り組むべきものであると考えるのであります。また、国や県は電発に対しても毅然たる厳しい態度で臨み、利潤の追求よりも地域との共存を図り、被害防止のために最大の方策を講じるよう強く要請すべきものであると考えるのであります。
河川法三十六条によりますと、建設大臣は水利使用に関し、その申請に対して処分しようとするときは、あらかじめ関係都道府県知事の意見を聞かなければならないことになっているのであります。それを受けて知事は関係市町村の意見を聴取することになるのでありますが、その市町村の要望を踏まえ、私が申し述べました自然環境破壊のはかり知れない被害を認識していただき、水利権更新のこの機会をとらえて熊野川に清流を取り戻すための諸方策を講じるよう、建設省並びに電発に対して強く要請をしていただきたいのであります。知事の所見をお伺いいたします。
次に、昭和五十三年、新宮川水質汚濁防止連絡協議会が発足し、汚濁軽減の研究や対策に当たっておられるのでありますが、どのような成果を上げておられるか、具体的に説明を願いたいのであります。また、この協議会の中でダム湖に発生する淡水赤潮のメカニズムやその生態などについて研究をされていますが、どこまで究明されておるのか説明を願いたいのであります。
また、新宮川河床調査委員会は昭和四十年に発足、塩分の溯上や海岸の浸食、市田川への逆流、河口の移動など、これらの異常な現象に対してどのような解明がなされておるのか、お伺いをいたします。
さらに、濁水防止対策の恒久的対策として、ダム湖への濁水流入を防ぐため治山、植林、砂防事業は根本的な重要なことでありますが、この新宮川水系濁水軽減対策事業の概況とその進捗状況はどうなっているのかお伺いをいたしまして、第一の質問を終わりたいと思います。
次の問題は、新宮鉄道部の設置についてであります。
昭和六十二年四月、旧国鉄は問題点を残しながら分割・民営化され、JR西日本旅客鉄道株式会社として発足し、今日に至っているのであります。
この旧国鉄が分割・民営化される騒動の中で過疎地の各駅が無人化され、過疎に悩む町村の住民からは「過疎に追い打ちをかけるものだ」という強い反対運動が起こりましたが、無人化は強行されたのであります。この事態を受けた過疎地の住民は、国鉄はやがて民営化され、利潤を追求する企業経営に変われば、必ずや将来、過疎地の鉄道レールは取り外される運命にあることを憂慮いたしたのであります。
国鉄が分割・民営化されてから三年がたったのであります。JR西日本の経営状態やサービスの可否については別にして、私が先ほど申しました憂慮される事態が、採算のとれない過疎地は切り離されるという事態が現実の問題となって出てきたのであります。
JR西日本は、山陰や北陸地方を中心とするローカル線の経営合理化のためと称して、赤字線を地域別に管理して自立経営を目指す鉄道部を管内十カ所に設置し、六月一日から発足するとしているのであります。
紀勢線におきましても白浜─新宮間九十五キロにおいて、自立経営を目指す独立した管理構想のもとに新宮鉄道部が設置されるのであります。御承知のとおり、紀勢線は全線電化をして、しかも特急くろしおが新大阪、京都に乗り入れたやさきの出来事であります。
JR西日本の説明の大要は、「当社の鉄道事業は、経費面において、人件費、物件費だけでなく租税負担増を見込まれるなど、鉄道事業全体を取り巻く環境は楽観を許さない状況となっている。このため、旅客運送密度の低い区間についてはこのまま放置されることは許されず、紀勢線新宮─白浜間については自立経営を目指し、線区に相応した効率的かつ機動的な業務運営を行い、中小私鉄、第三セクターを参考にして思い切った発想の転換による業務の見直しを行い、従来の組織に変えて新宮鉄道部を設置する」としているのであります。
その内容の問題点は、新宮鉄道部の社員を現在員より約三分の一削減して、経営合理化のため、運転士には路線の点検や車両の検査などを兼務させ、やがてはワンマン運転の導入も予想し、保線係員やその他の社員も三種以上の仕事を兼務さすことによって沿線の機器の検査や保守の大幅な合理化などを計画しているのであります。これに対して、線路の保守や車両の点検など熟練が必要な専門技術を短期間で導入して一人何役も兼務させることは極めて危険なことであり、当然、労働強化が押しつけられ、安全性確保の上から重大な問題であり、さらにはサービスの低下につながるものとして厳しく批判をされているのであります。
また、聞くところによりますと、現在、新宮─白浜間の営業係数は一七三ということであり、これを新宮鉄道部の設置により自立営業、独立採算性を目指す課題を担って徹底した合理化を行うわけでありますが、さらに串本や勝浦の駅長や助役もなくなるという、観光行政など全く考えておらない措置もとられているということであります。
このように、社員を減らせばやがては当然列車の数も減らさなければならないし、自立経営は運賃の値上げにも結びつき、サービスの低下、安全の面、さらには地域の発展にも大きく影響するという、公共交通機関としてはまことに許されないことであると考えるのであります。
とにかく紀伊半島南部は、観光、リゾート構想で期待されていながら、最も困難点は交通の問題であります。高速道路の全通はまだまだ夢の時代で、今、過疎地の鉄道は切り離される運命にあり、紀伊半島の将来展望に大きな陰りが出ているのであります。
以上、大要を申し述べたとおり、私は紀伊半島南部の重大問題ととらえるのでありますが、県当局に次の質問をいたします。
一、県は、過疎対策、半島振興、県土発展の立場から、新宮鉄道部設置をどのように受けとめているのか。
二、観光やリゾート構想、ふるさと創生にも大きなダメージを受けることになるが、どのように考えておられるのか。
三、人員が削減され、一人何役も兼務するという労働強化の中で安全性やサービス低下についてどのように考えておられるのか。
四、全線電化、くろしお特急が国土軸に直結するという観光紀勢線での新宮鉄道部設置に対して、これを撤回するようJRに交渉すべきであると考えるが、どのように考えるか質問いたします。
以上で、私の第一回の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○議長(門 三佐博君) ただいまの森利一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森利一議員にお答え申し上げます。
池原ダムの水利権の更新につきまして、新宮川の汚濁問題について詳しく御説明いただいたわけでございます。私も新宮川の汚濁については十分認識しておりますし、また非常に苦慮しているところでもございます。
昨年五月の三県の紀伊半島知事会議、また紀伊半島開発連絡協議会等におきましても、この問題を全体的な態度で取り上げて審議し、国並びに電源開発に対し強く要望してまいってきておるところでございます。
話ございましたように、このたび池原ダムの水利権が更新することになっておりまして、私はもちろんのこと、県としても、森議員おっしゃいましたように新宮川の清流を早く取り戻すよう十分なる対策を立て、地元もいろいろ折衝しておりますので、そうした地元の意見を十分酌み取り、多角的な分野において建設省並びに電源開発株式会社に毅然とした態度で対処してまいりたいと思っております。
具体的な問題等については土木部長から答弁させていただきます。
それから、鉄道部の問題については企画部長から答弁いたします。
○議長(門 三佐博君) 土木部長磯村幹夫君。
〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
新宮川水質汚濁防止連絡協議会についてでございます。
新宮川水系の水質汚濁防止につきましては、ダム上流における山地崩壊対策、沿川開発等による汚濁源の流入防止対策、ダム設置者による汚濁軽減対策等、関係者が一致協力して総合的な対策を推進する必要があります。
このため、国、県、市町村、ダム設置者並びに学識経験者で構成する新宮川水質汚濁防止連絡協議会を設置して調査研究を行い、水質汚濁防止に努めているところであります。
本協議会を通じて実施された汚濁軽減対策は、治山造林、砂防事業、ダム湖周辺の崩壊箇所の護岸工事、さらに池原ダムの表面取水設備設置の検討及び発電放流水と清水の混合希釈、七色ダムの濁水防止膜の設置、風屋ダムのダム湖流入水路の改良、二津野ダムでは洪水時の濁水を早期排出するなどの対策であります。
また、淡水赤潮対策としまして、風屋、二津野ダムにおいてプランクトンの回収処理も行っております。
なお、淡水赤潮等の発生のメカニズムについてはまだ不明な点も多く、さらに引き続き、これらの解明のため調査研究をしてまいります。
次に、新宮川河床調査委員会は新宮川水系のダム建設に伴う新宮川の河床地形調査を行ってきております。
塩分溯上につきましては、昭和五十二年以来、五年置きに調査を行っております。調査時点では取水に影響はありませんでしたが、しかし異常潮位と異常渇水が重なる場合には塩分溯上の可能性があると考えております。
海岸浸食につきましては、和歌山県側において台風等により一時的な変動が見られますが、全般的には平衡状態が保たれていると判断しております。
次に河口の変動につきましては、波浪、特にうねりによる砂州が発達し、その開口部は波浪や洪水によっても変動しやすく一定しておりませんが、砂州の規模については大きな変化はありません。
また、市田川の逆流につきましては、市田川河口部に逆流防止水門を建設省が昭和六十一年八月に設置しており、洪水時の逆流による被害を防いでおります。新宮川河床調査委員会としまして、今後、より的確な成果を求めるため調査を進めてまいります。
次に、新宮川濁水軽減対策事業の概況とその進捗状況についてでございますが、新宮川水系の流域は全国有数の降雨地帯であり、地形、地質的にも濁水流出の原因となる山腹崩壊及び渓流荒廃等の自然災害が発生しやすい状況にあります。このため、濁水軽減並びに県土保全施策としての砂防、治山等の事業につきましては、従来から関係諸機関で対策工事を実施してきたところであります。平成元年度におきましても、和歌山、三重、奈良の三県にまたがる流域全体として事業費三十五億円を投じ、実施しているところでございます。
今後につきましても、関係諸機関と協議しながら優先的に施設を整備し、濁水の軽減並びに県土の保全を図るべく、なお一層努力してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 企画部長川端秀和君。
〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) JR新宮鉄道部設置についてお答えを申し上げます。
まず第一点は、過疎対策や半島振興の立場から新宮鉄道部設置についてどう考えているかについてでございます。
JR西日本では、本年六月から、関西本線、山陰本線、紀勢本線を初め、管内十カ所に鉄道部を設置する経営安定計画を進めていると聞いてございます。この鉄道部設置の一つに、紀勢本線白浜─新宮線区を管理する新宮鉄道部を設置するとのことでございます。
鉄道部の設置は、従来のいわば縦割り的とも言える列車区、電力区、信号通信区及び駅等の機能を一元化することにより経営効率を上げ、効果的な業務運営を図るためのものであると聞いてございます。
県といたしましては、半島振興等の立場から、減便や路線の廃止、第三セクターへの移行などは、あってはならないことと考えてございます。またJR西日本においても、路線の廃止等は一切しないということでございますが、今後とも厳しい姿勢で臨んでまいる所存でございます。
第二点は、観光やリゾート構想への影響についてでございます。
JR紀勢本線は、本県とりわけ紀南地方の皆さんの日常生活や観光、リゾート開発などの地域の振興に大きなウエートを持ち、欠かせない交通機関でございます。
県では、和歌山県輸送力強化促進委員会とともにJRの輸送力増強のため関係機関への要望活動を続け、特急くろしおの新大阪、京都駅乗り入れなど、一定の成果も得てまいりました。県といたしましては、観光振興、リゾート開発等を重点施策として取り組んでおりまして、その中でJRの果たす役割は大きく、今後もJRに対して強い姿勢で対応してまいりたいと考えてございます。
第三点は、安全性やサービスの低下についてどう考えるかでございます。
今回の鉄道部設置により利便性や安全性の低下につながることがあってはならないことは、議員御指摘のとおりでございます。これまでも機会あるごとにJRに対して利便性や安全性の向上等を申し入れてまいりましたが、今回の業務運営体制の実施により影響が生じないよう、強く申し入れを行っているところであります。今後とも、引き続き厳しく対応してまいる所存でございます。
最後に第四点は、鉄道部設置を撤回するようJRに交渉すべきであると考えるがどうかについてでございます。
鉄道部につきましては、JR西日本の業務の効率的な運営の問題ではございますが、その趣旨がどこにあっても県民の利便性、安全性に影響があってはならないことは申すまでもございません。
紀勢本線は、本県にとって基幹的な公共交通機関として重要な役割を担っており、県は輸送力強化促進委員会とともにJRに対し、これまでも紀勢本線等の時間短縮や設備改良、増便、増結等、輸送力の増強を働きかけてきたところでございます。
また、現在、県におきまして、地域の活性化を図るため、リゾート開発や観光開発等の産業振興を重点施策として取り組んでおりまして、そのためにも紀勢本線の輸送力増強を図らなければならないところであり、今後もより強く利便性の向上等を求めてまいる所存でございます。
以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
40番森 利一君。
○森 利一君 再質問をいたします。
池原ダムの水利権更新につきましては、私が先ほど申し上げましたとおり三十年に一度の水利権更新でありますから、地元では新宮川水対連や各市町村において、この機会に汚濁水を初め環境破壊問題について電発と交渉し、真剣に取り組んでいるのでありますけれども、ただいま知事の答弁のとおり、新宮川に清流を取り戻すために関係機関に強く働きかけるという強い決意を聞きまして、地元の人々もさらに力を得て取り組みも弾むことと思います。
また、濁水協の経過や成果についても、広範多数にわたる熊野川問題を短い期間に解決することは困難でありますが、着実に進められていることを多としたいと思います。
なお、赤潮発生のメカニズムについては、解明されないということはまことに残念でございますけれども、これも現段階ではやむを得ないと思うのでございます。
さらに、河床調査委員会の事業、新宮川濁水対策事業の治山、砂防の問題についても了解をいたします。
私は、この三十有余年にわたる自然環境破壊は一地方で解決できる問題ではなく半永久的に続くダムとの闘いでありまして、国や県の積極的な対策と指導が必要であると考えるのでありますが、さらに一層の御指導をお願いするものでございます。
次に、新宮鉄道部の質問についてでございます。
魚は水が引くことに極めて敏感であります。過疎に悩む者は過疎現象に極めて敏感であります。答弁を聞いておりますと、JRの言い分をまともに受けて「新宮鉄道部設置やむなし」という答弁に聞こえてくるのであります。
この重大問題をどのように受けとめておるのかという質問に、鉄道部の設置は従来の縦割り的な機能を一元化することによって効果的な経営を図るためのものであると聞いていると答弁されました。私が申し述べました、JR西日本の十カ所ある中の白浜─新宮間の赤字路線を切り離し、新宮鉄道部を設置して人員の削減、一人三役の兼務を押しつけて自立経営を目指すものだということには一言も触れていないのである。これは、JRの言い分そのままの答弁であると考えるのであります。
過疎地の鉄道が、これ以上業績がよくなることは望めません。自立経営が行き詰まれば、筋書きどおり第三セクターの道であります。過去において東京行きの夜行列車「紀伊号」が、強い住民の反対がありましたけれども外されてしまいました。また、「過疎に追い打ちをかけるものだ」と言って反対した無人駅についても、古座駅に至るまで無人化されてしまったのであります。私たち過疎に住む者は、この答弁に納得するものではありません。
ただ一つ、ここで確認をいたしておきますけれども、答弁の中で、減便や路線の廃止、第三セクターへの移行はJR西日本においては一切しないということであるという言葉を聞いたのでありますが、これは県議会への報告でありますから、JR西日本和歌山支社長が和歌山県と確約したものと受けとめていいかどうか、質問をいたします。
その次に、安全性やサービスの低下をどう考えるかという質問に対して答弁は、今回の業務運営体制の実施によって影響を受けないよう強く申し入れているところであると答弁しているのであります。こちらは日本語で質問をしておるのでありますが、英語で答弁をもらっておるように、どうも私にはわからないことが多いのであります。
人員が削減され、一人何役も兼務されるという労働強化の中で、安全性あるいはサービスの低下はどうなるのかと質問をしておるのであります。こういうことについてどこまで具体的にJRと話し合っておるのか、再質問をいたしたいと思います。
次に、観光やリゾートに大きなイメージダウンを受けるがどうかという質問の中で、勝浦や串本の駅長や助役もなくなるということが明確に言われてないのでありますけれども、これもはっきり答弁を願いたい。
とにかく、新宮鉄道部設置についてJRと十分話し合い、そうして県がどこまで把握しておるのかということについて、どうも私には何か把握されないものがあるわけでございます。
次の質問も同じことでありますが、全線が電化されておる、特急くろしおが国土軸へ直結をしておる観光紀勢線、このような線をよその赤字路線と一緒にするようなことはするなとJRへ交渉してはどうかと私は質問をいたしておるのであります。答弁は、紀勢線の輸送力の強化を求めていくということであります。かみ合っておらないのであります。
こういうことは和歌山県の重大な問題でありますから、言葉のお互いのやりとりの遊戯ではなしに──JR職員にとっても大変な問題であります。白浜以南の住民にとっても、さらには県土発展においても非常に重大な、深刻な問題であります。建前の答弁よりも本音の答弁をひとつお願いいたしたい。
以上、再質問をいたします。
○議長(門 三佐博君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
企画部長川端秀和君。
〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず第一点は、切り捨てや減便などを一切しないという問題でございます。
鉄道部設置についてのJR西日本の考え方は、在来線の存続と活性化を念頭に置いた経営安定策であり、減便や子会社化、あるいは廃線等は一切しないということでございます。
県といたしましても、そういうことにならないよう、今後JR西日本と連絡を密にしながら、地域開発あるいはリゾート開発等も絡め、共存共栄という姿勢で紀勢本線を生かした南紀地域の活性化に取り組んでまいりたいと考えてございます。
二点目は、安全性、利便性の問題でございます。
鉄道部の設置により、一元的な作業管理体制をとることによって効率的な業務運営を行うものであるとのことでございますが、そういうことにかかわりなく、安全性については鉄道事業法とか鉄道営業法等の法令、規則によって基準が定められておりまして、鉄道事業者としてこれらを遵守していくことは当然のことであると考えてございます。
また利用客の利便性の問題につきましても、低下することなく旅客サービスに努めるとのことですが、県では今後とも、輸送力強化促進委員会とともに利便性の向上等を強く申し入れてまいりたいと考えてございます。
三点目は、駅長の問題でございます。
紀勢本線は、JR西日本の中で観光路線として位置づけされているところでございます。今回の新宮鉄道部の設置によっても和歌山支社新宮鉄道部長の指揮命令を受ける管理職員が今後も駅長としての業務を行うとのことで、利用客へのサービスなどにも影響がないということでございます。
今後、JRと緊密な連絡をとりながら、サービス低下などがないよう対処してまいりたいと考えてございます。
四点目は、紀勢本線の特異性と申しますか他の線区との格差の問題でございます。
今回のJR西日本の鉄道部は西日本管内十カ所の線区で設置する計画でございますが、県はJRに対し、十カ所を一律に考えることなく、紀勢本線については幹線であること、また観光路線であることなどから、その実情を勘案して実施するよう、強い姿勢で申し入れる所存でございます。
以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
40番森 利一君。
○森 利一君 この問題は、県が受けとめているような、あるいはJRが表向きに言っているような問題ではなく、白浜以南、ひいては県土発展のために深刻に影響をしてくるものだと思うわけであります。先ほどの答弁も不満でありますけれども、県政の中でどう位置づけていくのかといった考え方で、さらにこの問題は和歌山線にも及んでくると思うのでありますけれども、県は十分審議をしていただきたいと思います。
とにかく今、私たち南の方では、「田辺、白浜までが和歌山県だ。それから南和歌山県じゃない」とまで言われておるわけでございますけれども、今度の鉄道部設置によってこの言葉が本当のことになってきた。JRの職員が大量に減らされるのでありますが、今、過疎の町村においては一世帯でもこういう人々がいなくなるということは重大な問題なのであります。
さらに、平成二年度政府要望の中に田辺─新宮間の複線化の要望がなされておりますけれども、白浜─新宮間は赤字路線として切り離されるという現実の問題が出てきておる。こういう要望も、南から見ればまことに白々しい問題に見えるわけでございます。
したがいまして、この問題については、先ほど申し上げましたように、県政の中でどのように位置づけるかということを中心にして、さらに強くJRとも交渉していただくよう要望して、終わりたいと思います。
○議長(門 三佐博君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で森利一君の質問が終了いたしました。