平成元年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(森本明雄議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午後一時八分再開
○副議長(宗 正彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
42番森本明雄君。
〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 順次、質問を進めてまいります。
大阪国際空港の廃止と全体構想早期実現について質問をいたします。
十日ほど前、県関空全体計画促進協議会で記念講演された同志社大・榊原教授の原稿をもらい、勉強させていただきました。その中で、全体構想と一期工事の収支採算性の比較、使用料すなわち公租公課の問題、空港能力の問題について、私の考えと共通点がございました。
なお、先日来、同じ質問がございましたので、収支採算性を主とした観点から、私の意見を交えながら質問を進めてまいりたいと思います。
大阪国際空港存廃決定まであと一年半、存廃をめぐり、和歌山県にとっていよいよ正念場を迎えました。
御承知のごとく、航空審の第一次答申に、「新しい空港は大阪国際空港の廃止を前提として、同空港の機能をかわって受け持つ能力のあるもの」と明記されています。この答申に対して種々見解のあることは承知しております。
例えば運輸省の山本元航空局長は、「廃止すべきであるという意見を運輸大臣に具申をした、こういうものではないというふうに理解をいたしております。これは、新空港の計画につきまして、伊丹空港の廃止ということがあったとしても、それを受け入れるだけの十分な空港、こういう意味でございます」という廃止否定論であります。さらに、「この存廃問題についての手続は、地元との約束事がある。我々といたしましては、その約束事は誠意を持って守っていかねばならない」。その約束事とは、「空港を廃止せよという強い意見が昭和四十年代に地元から出された。そういった時代の動きを受け、公害等調整委員会に対して、伊丹周辺住民の方々が中心になって『廃止せよ』という調停申請があり、対して調停条項として運輸省は、関空の建設が決定された後、速やかに諸般の調査を行い、調査結果を開示し、かつ地方公共団体等の意見も十分聴取して空港の存廃問題を決めるべきである」。つまり運輸省は、大阪国際空港の存廃は地元の意向に沿った決定をする方針であります。
そこで、大阪国際空港が存続した場合、関空の立地条件が国内航空需要に与える影響、路線選びへの影響などを想定してみました。
例えば、アメリカのワシントンナショナル空港は狭隘で、大阪国際空港と同様の条件下にあり、都市から四十キロ離れたところにダレス空港を建設いたしましたが、実績はよくありません。カナダのモントリオールにおいても、ドルバル空港が狭いということで都心から五十三キロ離れたところに新空港を建設しましたが、前者同様で実績は上がりません。関空は大阪の中心より四十四キロ、それに対して大阪空港は十七キロ、立地条件は著しく不利であります。
空港が新しく設置されるその場所によって、既存の空港から利用者までの距離が変わります。そのことによって、便のよいところ、不便のところが出てくるのは避けられません。それに応じて、需要という面にプラスの要素とマイナスの要素として影響が出ることは事実であります。
現在、大阪空港の航空需要の六九%が国内便であり、その乗客の大半は京阪神及び大阪北部であります。果たして、近距離の大阪空港を越えて遠距離の関空まで足を運ぶだろうか。このように、国内便の立地条件で関空は大阪空港より大きなハンディを背負うことになります。
次に、二十一世紀を展望しての航空需要や運輸省が関空開港までに出してくるであろう航空需要予測は別といたしまして、現段階での関西における航空需要予測は、平成五年の地点で国際線九百万人であります。
大阪空港の利用状況の中で国際線の乗降客数は、六十二年一四%、六十三年一一%と二年連続で対前年比二けたの伸びで、本年も二けたは確実であります。今後、外国との行き来がますます盛んになるであろうし、潜在需要が関空開港による顕在化を予想した場合、十分見込める数字であります。
国内線の乗降客数については、五十九年より六十三年までの四年間で一千四百三十万九十九人より一千五百三十六万九千五百四十六人、百六万九千四百四十七人の増加で、伸び率七%。国が予測した平成五年での二千五百万人には約九百六十万人不足で、この達成には、今後、毎年対前年比一〇%強の伸びが必要となります。
立地条件や今後の国内景気の動向、新幹線の時間短縮計画など勘案した場合、潜在需要が顕在化しても少々無理があるのではないかと考えるのですが、この予測に狂いが生じた場合、下方修正した場合、大阪空港の収支採算上、関空での減便が考えられます。
また、空港の立地条件によって就航する路線、機材を勘案して路線選びがされるのではないか。すなわち、長距離路線は重量の関係で騒音の被害が大きいこと、アクセスがもたらす需要への影響度が少ないこと、そういった観点から、国内線においては主要路線の少数が関空に就航するとしても、短距離路線は大阪空港、長距離路線は関空と、範囲を分けてくる可能性はあります。そのようになれば路線が制限され、利用者の需要にこたえることのできない空港となります。
以上、述べましたように、大阪空港存続は関空を不完全空港にするおそれがあります。
こうして考えてみますと、航空審の答申、関空会社法案を審議した国会での政府答弁、六十一年十二月に運輸省が発表した立地条件が需要に与える影響度を骨子とした一回目の中間報告、大阪空港存続の経済効果を大とする二回目の報告、さらに江藤運輸大臣の大阪空港存続示唆、空港周辺の自治体の方針変更など、いずれも運輸省としては従来の考え方の延長線上にあるものであり、その影響を受けて追従したものと思われ、運輸省としては大阪空港存続は一次答申当初からの意図とするところであります。
大阪空港は一次答申に基づいて対応すべきだと答申を頼りとする和歌山県に存続の包囲網を敷き、攻撃を仕掛けてくる一連の動きをどのように受けとめ、どう対処されようとしているのか。決意とあわせてお伺いいたします。
なお、前段申し上げました私の意見に対する所見もお伺いいたします。
関空建設問題を審議した国会に参考人として出席した大阪市立大学の川島名誉教授は、「万一この第一期計画だけで終わるといたしますと、新しい空港の建設も、また不完全な空港を一つつけ加えることになりかねない─中略─二十四時間稼働という、この空港の性格を考慮に入れますと、引き続いて第二期以後の計画の早急な実行がぜひとも必要と思われます」と意見陳述しています。
当時の運輸省山本元航空局長は、「私たちは、これはあくまで第一期工事だと、こう考えておるわけでございます。航空審議会で答申された全体構想は忘れていません。この構想の中の一部をできるだけ早く完成させて供用を開始する、こういう思想の上に成り立っておるわけでございます」と答弁し、一期工事だけでは不完全な空港であり、全体構想実現の重要さを指摘しています。
国は、全体構想の検討基礎調査費を本年度も昨年度に引き続いて予算化いたしましたが、関空会社の平成二年度政府予算概算要求によると、過去二年度と同名目。三年連続調査対象は、実質、採算がとれるかどうかであります。
航空審の答申に、「将来の航空需要予測というものは極めて困難である」と申しております。であるならば、経営の将来予測もまた困難でありますが、若干、一期工事での収支採算面に触れてみたいと思います。
一つには国の能力に対して投資が過大であること、二つ目には非償却資産の総事業費に占める比率が高いことが言えます。通常の会社の場合、非償却資産が多額の場合は資本金を大きくして全額を補いますが、空港会社は借入金で補っています。そのため、空港会社は利益が非償却資産額に達するまで課税対象としない措置がとられるようですが、非償却資産四〇%は、いかにも非効率であると思います。
空港の大きな財源に使用料があります。しかし日本の空港の現状では、空港使用料を中心として、公租公課のすべては限界に来ていると言われています。増収を図るための値上げ等での対応には困難な制約があります。しかも、全体構想は一期工事に比べて安全性の確保は増しても、収支採算面では、事業費に比較して受け入れ能力の増加が小さいため有利な結果は予測できません。
また、収支採算面での前提に航空需要があります。その航空需要も、長期的に見て国内乗降客の伸び率は鈍ると予測されています。しかも会社は、単独の黒字は開業後五年、配当開始は九年後と約束されています。その上、大阪空港の存続となれば、大阪空港は一日国内便二百便のジェット機が就航するという輸送需要想定のもとに収支採算性を計算している関係上、関空の国内便はオーバーした便数しか就航しないことになり、廃止問題の項で述べたとおり、当初計画より減便が予想されます。
さらに、開港時の発着回数を十万回としていることであります。空港の能力というものは、滑走路の受け入れ能力とターミナルの受け入れ能力とが関係して、そのいずれか小さい方に制約されます。理論的には、滑走路一本の能力として十六万回は可能だと思います。会社は、土地利用、施設計画などの変更は行いますが、しかし十六万回を維持するため、ターミナル面積約二百ヘクタールでは機能面、安全面から狭小だと思います。
運輸省では、旅客あるいは貨物の輸送機能に与える影響から、オープンする時期のものとしてはこの程度でやむを得ないと判断したのでしょうか。これでは、現在運輸省が示している航空需要予測と同省の「伊丹空港の廃止ということがあっても、それを受け入れるだけの空港」という一次答申の判断が著しく整合性を欠くものとなります。と同時に、収支採算性に大きな影響を与えるものであります。
そうした意味で、不完全空港の建設を進めながら、何ゆえ採算性のみ重視するのか。株式会社に踏み切ったのは、一つには早期完成、二つには資金面、三つ目には民間活力、四つ目には、民間事業の場合、附帯事業等運営面での効率がよいなどの理由からであります。採算性を第一に考えるのならば、大阪空港を廃止することであります。そうすれば、需要はすべて関空に移ります。収支採算上、有利な結果になることは明らかであります。
経営面で悪い面が出た場合、経営努力を通じて適切な対応を図っていくのが第一義的に必要であります。しかし、事業そのものが第一種空港の建設、運営ということであります。この空港の建設、運営については、国が責任を持ち、地方公共団体や民間の協力を得てやる、すなわち国が基本的には責任を持って会社を支援していく姿勢が必要であります。第一次答申の「我が国が対外的に負う義務さえも履行できず、国際信義上の問題が生じている」という指摘をどう受けとめているのか、考えてみたくもなります。
以上、るる意見を述べましたが、もし関空は一期工事で終わりとするならば、すべての面で不完全空港となり、和歌山県にとって、その持てる便益を享受したとしても不満足な結果とならざるを得ません。
関西復権をかけての二眼レフ構造の実現や均衡ある国土の発展を目指す四全総から考えれば、関西に二つの不完全国際空港が存在することの意味もないことはないですが、関空の全体構想実現に未来をかける和歌山県のためには、大阪空港廃止、全体構想の早期実現こそが関空の持つ高度の機能を活用し、そのもたらす便益を享受して活性化につなげ、それが均衡ある国土の発展につながるものと考えるのであります。
来年度予算で全体構想着工を確実にする予算の確保と六空整への全体構想組み入れ実現のため、全力を挙げて取り組まねばなりませんが、決意並びに所見をお伺いいたします。
次に環境問題でございますが、TPT、TBTについてであります。
有害性があり、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律でも指定化学物質となっている劇物TPTが、毎日の食卓に上がる魚の八〇%までを汚染していました。これは、七月、環境庁が発表した調査結果で明らかになったものであります。
同庁が昨年初めて全国規模の調査を行ったところ、水質四十地区中三十地区、百十九検体中七十三検体、底質四十五地区中三十七地区、百二十九検体中九十九検体、魚類四十五地区中四十一地区、百四十四検体中百十八検体という高い率でTPTが検出されました。
検出率で最も高かった魚類は、汚染度も際立っています。平均値が水質で〇・〇〇〇〇一五ppm、底質で〇・〇四八ppmなのに対して、魚類は〇・三九ppmであります。その中で、紀の川河口地点では、水質検体三で検出一、底質検体三で検出三、魚類検体三で検出三。特に魚類ではスズキから最低値一・四ppm、最高値一・六ppmのTPTが検出されています。これは、WHOが定めている一日摂取許容量〇・二八ppmの五・七倍の高濃度であります。
環境庁は、TPT汚染が広域的で検出濃度も高い点を重視し、現時点で直ちに人の健康に問題を生じるとは考えられないとしながらも、現在の汚染の程度が長期にわたって継続するならば、将来、影響を及ぼす可能性があると結論づけております。
TPTは、TBTと同じく二十年ほど前から製造され、かつては防腐、防カビの目的で家庭用品にも使用されていましたが、有害物質として昭和五十四年以降使用されていません。しかしこれまで、その効力から、養殖魚生けす用網や船底塗料に使用されていました。このうち網については汚染が問題となり、全国漁業協同組合連合会が一昨年から使用を自粛しましたが、船底塗料については使用されてきました。このため、国は関係業界に対し、TPTを含んだ船底塗料の使用自粛を要請しました。日本塗料工業会によると、TPTは汚染が問題になったことから現在生産を中止していますが、大量に使用されているTBTを生かすために、大きな痛手にならないTPTを殺したと見る環境問題専門家もいます。
TBTもTPTと同様、有機すず化合物で有害性があり、やはり指定化学物質であります。環境庁は、魚介類への汚染が次第に拡大していることを公表してきました。
また、東京都が行った調査では、都中央卸売市場に昨年初めまでの三年間に入荷された魚介類のうち、魚網使用養殖魚の九八・八%、天然ものの内湾産近海魚の七四・三%、沖合深海産の六二・六%に、〇・〇一ppmから、最高一・一九ppmのTBTOが検出されています。
以下、質問を行ってまいります。
一つ目に、TPT、TBTなど毒性が確認された物質は、今後、法に基づく規制をする必要があると思いますが、その見解について。
二つ目に、御承知のようにTPTは難分解性であることから、中央公害対策審議会の化学物質専門委員会は「現在の汚染の程度が長期に続けば、将来、人体に影響を及ぼす可能性あり」と結論づけていますが、和歌山県の海は豊かな自然資源であります。その海が有害化学物質に汚染され、それが海水や海底、さらに魚類にまで及んできたとしたら、貴重な資源を失うことになりかねません。今後、県独自の調査と対策が必要と思いますが、どうか。
三つ目に、環境庁の調査により、水質、底質、魚類に対するTPT汚染は全国規模に拡大しつつあることが明らかになりましたが、和歌山県の沿海、近海におけるTPTの汚染実態について。
四つ目、御承知のようにTPTは汚水の付着防止や殺菌にすぐれた効力を発揮することから、海藻や貝類の付着防止のために養殖魚生けす用網、船底塗料に使用されてきましたが、県内関係業界における今日までの使用実態について。
五つ目、TBTはTPTと同じく有機すず化合物の一種であり、その効力や使用方法も同じであります。いずれも有害性があり、TPTは長期的に摂取すると、成長阻害のほか、リンパ球や白血球の減少などが起こるのに対し、TBTも長期摂取すると中枢神経に影響を及ぼし、歩行障害や呼吸困難をもたらすおそれがあります。運輸省によると、TPT含有の船底塗料生産量二千三百トンに対してTBTは七千二百トンと、三倍以上も生産されています。しかし、通産省も運輸省も一様に、TBT汚染は深刻な状況にないと言っていますが、その見解について。
以上、五点についてお伺いをいたします。
次に、リゾート問題についてでございます。
今、日本は空前のリゾートブームであります。その要因は、まず自由時間の増大などを背景とした国民のレジャー、リゾート志向が挙げられます。また地域振興の手段として、地方自治体が積極的に取り組んでいるところであります。さらに、内需振興であります。内需主導型経済への転換策は今後とも日本にとって重要な施策でありますが、リゾート振興は、この点で国の施策に合致しています。
このように、リゾートブームは、民間、地方、そして国の要請に支えられたものであり、それだけに期待も大きいのであります。
きっかけは、昭和六十二年に制定されたリゾート法であり、本格的な余暇時代の受け皿づくりとレジャー産業の導入による地域おこしのため、大半の都道府県がリゾート開発の計画に取り組んでいます。
既に、福島、三重を初め北海道、兵庫など十七の開発構想が承認され、着工段階に入っています。また、承認待ちや申請のため調査を進めているところが十九あります。
和歌山県では、県経済の活性化と本格的なリゾート時代に先駆け、加太・紀泉地区、和歌浦湾地区、田辺・白浜地区、勝浦・太地地区、西有田・白崎地区、枯木灘地区、潮岬地区の七カ所を重点整備地区などに設定した燦黒潮リゾート構想をまとめました。既に、和歌浦湾地区では松下興産、田辺・白浜地区では丸紅、東急不動産の進出が予定されています。和歌山県にも、今後、リゾート基地が大規模に形成・整備され、また基地周辺に大自然と調和のとれたリゾート基地が形成されますと、生活をエンジョイすると同時に、一つの大きなゆとりのある生活環境ができ上がります。その良好な生活環境を目当てに人材集積のハイテク産業が立地される可能性もあります。そのことが地域経済の活性化となり、雇用の確保につながっていく有力な戦略の一つとしてこのリゾートが位置づけられるであろうし、また効果を発揮すると期待するものであります。
したがって、すべての重点整備地区に、今までの観光とかいうものの延長線上ではない、新しい観念のもとに、大規模、多角的、複合的かつ個性的、自然と調和のとれた滞在型基地の実現を願うのでありますが、所見をお伺いします。
次に、リゾート法に基づく国の承認であります。
現在、関係六省庁とのヒアリング中だと思いますが、本年中に基本構想の承認申請、本年度中に承認という当初のスケジュールに変更はないのか、お伺いします。
承認を得るためには多くの条件整備が必要であります。そのため格段の努力をされている当局に敬意を表します。課題は、交通条件、民間の進出、地価問題、用地取得が考えられます。これらの条件整備の進展状況から見て、承認スケジュールは変更必至と考えます。当局はこのスケジュールに変更がないとするならば、交通条件の整備について、将来は別として、当面期待はできないので保留するとして、七地区への民間進出、地価急上昇抑制のため未指定地区への監視区域の指定、用地取得の見通しなど、現時点でそれ相当の進展があるものと判断しますが、現況と今後の対応についてお伺いします。
次に、高齢者問題であります。
日本は「経済は一流、政治は三流」と言われていますが、では福祉はどうだろうか。厚生省の特別研究班が公表した高齢化社会に関する国際比較報告書を見ると、欧米に比べると日本の福祉はまだ三流以下ではないかといった思いを禁じ得ないのであります。
同報告書によると、我が国で「寝たきり」と称される在宅高齢者の割合は欧米に比べて三ないし六倍も高く、また特養ホームや病院に入っている高齢者、常に寝たままの割合も、スウェーデン四・二%、デンマーク四・五%、アメリカ六・五%に対し、日本は三三・八%に上っています。日本よりずっと早く高齢化の進んだ欧米諸国と日本とで、どうしてこんなに大きな違いがあるのだろうか。その原因は、介護に対する根本的な考え方の違いにあると言われています。
我が国では、病に倒れた高齢者を寝かせたきりにし、病人の口元まで食事を運び、おむつをかえてあげるのが介護だと思われてきましたが、欧米では、老人の自立を助けるという認識に立って、末期の患者以外は老人の生活能力や運動能力の回復を最優先させる介護の考え方が定着をしています。したがって、「寝たきり老人」という言葉は、北欧の福祉先進国では既に死語になっています。
デンマークでは、二十年前には寝たきり老人がまだ多かったと言います。「水平の人」と呼ばれて、今は口しか動かない人でも電動車いすで動き回っていると言います。何がそう変えたのだろうか。一つは、一九六〇年代に始まった補助器具の無料貸し付けであります。公立補助器具センターには、栓抜きから電動車いす、リフト、各種おむつまで、知恵の限りを尽くした二、三千種の小道具、大道具がそろっていると言います。それらを一人一人に合わせて選んだり、つくりかえたりすると、昔なら「水平」のままだった人が魔法にでもかかったように楽に動けるようになると言います。
では、老人介護後進国日本が欧米先進国に追いつくためには何が必要なのだろうか。介護の思想の転換を柱として、それを可能にする思い切った保健・福祉・医療体制の抜本的整備であります。
厚生省の報告書では、欧米型の老人医療や福祉施策を進めれば、十六万人もの我が国の常に寝たきり老人の数を二、三万人にまで減らせるとしていますが、そのためには、何よりも「福祉の日常化」の理念に基づく総合的かつ計画的な取り組みが肝要であります。
「福祉の日常化」は北欧などで始められ、実現されつつある理念であります。障害を持つことを異常なことと見ずに、老人、障害者、子供、妊婦など社会的不利を負う人々を当然に包含するのが通常の社会であるとの考え方に立ち、家庭や地域であるがままの姿で他の人々と同等の権利を享受できる社会の構築を目指しています。いわば「救貧的福祉」と言われてきた一世紀前型の我が国の福祉のあり方に転換を迫るものであります。
老人を寝かせたきりにしないための課題は山積しています。まず緊急課題としては、在宅福祉の三本柱と言われるホームヘルパー、ショートステイ、デイ・サービスの充実が挙げられます。政府は、三本柱の四倍増プランを十年から三年に短縮しました。本県も国の施策に沿ってホームヘルパーの増員が計画されています。しかし、日本の人口当たりのホームヘルパー数は、ノルウェーの五十二分の一、スウェーデンの四十四分の一という現状であります。続いてさらに大幅に拡充しなければ、訓練を受けたホームヘルパーの助けが前提になければ、在宅看護を言っても何ら進みません。寝かせたきりにすれば体が固まってしまうのは確か。しかし、ホームヘルパーも看護婦も少ない日本では、そうしないと家族も看護婦も倒れてしまいます。これが実情であります。一気に福祉先進国並みは無理にしても、お年寄りや家族の状況に合わせて週何回、何時間というミニマムを策定し、それを目標に体制づくりを進める必要があると思いますが、対策についてお伺いします。
老人が朝から晩までベッドの上で生活するのではなく、車いすで暮らせるようにするには、それを可能にする町づくりや住環境の整備、地域ぐるみの協力、電動いすや自助器具の貸付制度など、発想の転換が必要でありますが、所見をお伺いします。
欧米型の政策が日本にも浸透すると、現在十六万人と言われる常に寝たきり老人は二、三万人に減少できるとの報告を受け、厚生省は全国的な寝たきり老人ゼロ作戦の展開、意識啓発を図る予定でございます。当局でも、寝たきり老人対策として、寝たきり老人ゼロ作戦に対する目標を明確にした年次基本計画を策定する必要があると思いますが、見解と今後の対応についてお伺いします。
なお、関連して、健康で長生きしたいという願いをかなえるため、寝たきりや痴呆性老人になるのを未然に防ぐため、脱寝たきり老人を目指すため、医療・保健・福祉を一本化させた先進的な在宅ケアサポートシステムを有した予防型福祉施設を設置すべきだと思いますが、見解をお伺いします。
厚生省は、今回の報告書に基づき、介護施策を大幅に転換する方針と聞いています。介護元年にふさわしい施策の前進として評価するにやぶさかではありませんが、国、地方を問わず、行政には社会の全システムに及ぶ改革の総合計画を持ち合わせていません。社会から寝たきり老人をなくすには新しい福祉理念と実践計画が不可欠だと思いますが、所感をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森本議員にお答え申し上げます。
大阪国際空港と関西国際空港について多面的にいろいろな御意見をいただいたわけでございますけれども、私も同様に感じる点がございます。
全国知事会の建設運輸委員長を私が務めている関係もありますけれども、この問題についても、機会あるごとに運輸省や大蔵省に本県の主張を強く申し上げているところでございます。
御指摘ございました大阪国際空港の存廃問題は、長い経緯や地元の思惑など変遷が繰り返され、さきの運輸大臣の示唆や存廃調査の中間報告によると、存続の線が出てきております。また、きのうの関西国際空港対策特別委員会委員協議会で叱咤激励いただいた模様を副知事から承り、私も同様に、極めて厳しく受けとめているところでございます。
本問題に関しましては、関西国際空港対策特別委員会はもとより、県議会の皆さんに格別の御支援をいただいているところでございますけれども、大阪国際空港の存廃問題と関西国際空港の国内便の確保については密接な関係がございます。この問題に対しまして、県選出の国会議員の先生方や県議会の皆さん方、市町村や経済界の皆さんの政治力を結集して、さらには共通の立場である南大阪の各自治体や経済界、また関空会社と歩調を合わせ、政府に対してより具体的な行動を推し進めてまいる決意でございます。県議会におかれましても、格別の御支援を切にお願いする次第でございます。
また、関西国際空港の全体構想につきましては、平成三年から始まる第六次空港整備五カ年計画への組み入れのためには平成二年中が勝負の時期であると考えますので、近畿知事会はもとより、関西の政界・財界等、各界挙げての取り組みで、その実現に向けて全力を傾注してまいる決意でございます。
○副議長(宗 正彦君) 企画部長川端秀和君。
〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず、大阪国際空港の廃止と関空全体構想の実現についてお答えを申し上げます。
基本的な問題につきましては、ただいま知事から御答弁申し上げたところでございます。
議員御指摘のとおり、関西国際空港を取り巻く問題については種々意見がございます。関西国際空港は我が国初の国内・国際の両機能を備えた二十四時間運用のアジアの拠点空港ということで、国際化社会への対応とともに、地域社会と共存共栄する空港として位置づけられている空港でございます。
国内便の確保につきましては、県民の利便性、県益のためにはもちろんのこと、関西国際空港会社の経営を安定させる観点からも開港の当初から多数の国内線が望まれており、また外国の航空会社からの国内便確保の要望も強いことから、関西国際空港会社自体においても希望しているところでございます。
また、空港アクセスの利便性につきましても、関西国際空港関連施設整備大綱に基づいて鉄道、道路等の整備が進められており、近畿各府県からの時間距離も克服されるものと考えてございます。
また、全体構想の実現につきましては、来年度予算の概算要求において検討基礎調査費が計上されてございますが、直ちに着工事業費の計上ということは厳しい状況でございます。
今後とも、知事の答弁にもございましたように、関西国際空港を完全空港とするために、国内便の確保、全体構想の実現に取り組んでまいる所存でございます。
次に、リゾート問題についての三点の御質問にお答え申し上げます。
第一点は、燦黒潮リゾート構想と県活性化についてでございます。
本県におけるリゾート構想は、議員お話しのとおり、自然との調和を前提として、多様な機能で幅広い利用者層にこたえられ、そして地域資源を活用した特色のある整備をすることを基本方針とし、それぞれの重点整備地区が多くの人々に利用され、長期滞在が可能な、魅力あるリゾート地として整備することといたしてございます。
こうしたリゾート整備は産業構造の変化に対応した新たな地域振興策であり、地域関連産業が活性化できるばかりか、リゾート整備による快適な環境がリサーチ産業等の立地の呼び水ともなり、若者の雇用の場の拡大が図られるなど、県勢の活性化に大きく役立つものと考えているところでございます。
第二点は、リゾート法に基づく国の承認スケジュールについてでございます。
法に基づく基本構想の承認についてでございますが、現在、基礎調査書を提出し、関係六省庁の合同ヒアリングを受けるなど、国と協議しているところでございます。
議員のお話にもございましたように、基本構想の承認を目指して多くの県から基礎調査書が提出され、国との協議が進められているところでございます。本県といたしましても、関係部局の協力を得ながら、できるだけ早期に承認が得られるよう最大限の努力をしているところでございます。
最後に第三点は、残された課題に対する対策についてでございます。
議員御指摘のとおり、リゾート整備を推進していく上で民間事業者の誘致、用地の確保とその地価の問題は大変重要な課題でございます。現在、マリーナシティ、田辺湾総合リゾート開発計画等のように民間事業者の進出が決定しているところでは、既に用地の確保が進められているところでございます。
その他のリゾート予定地におきましては、進出協定を結ぶなど、公表のできるまでに至っていないのが現状でございますが、進出意欲のある民間事業者が多数あり、それら民間事業者との調整や新たな企業誘致を積極的に進めてございます。
用地の取得については民間事業者が主体となって進められると考えられますが、県といたしましては、地元住民、地元関係団体等の理解と協力を得ながら、積極的にリゾート整備を進めてまいる所存でございます。
また、監視区域の指定についてでございますが、リゾート法の承認を受けた多くの道府県では監視区域を指定してございます。本県におきましても、重点整備地区の状況等を検討して対応してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 保健環境部長尾嵜新平君。
〔尾嵜新平君、登壇〕
○保健環境部長(尾嵜新平君) トリフェニルすず化合物並びにトリブチルすず化合物、いわゆるTPT並びにTBTについての御質問でございますが、私から、御質問のうちの四点についてお答えを申し上げます。
まず第一に規制についての見解ということでございますが、お話もございましたように、現在、両物質とも水質汚濁防止法の規制対象物質とはなっておりません。しかしながら、国においても、直ちに人の健康に問題を生じるとは考えられないとしておりますが、今後、規制強化等、検討する考えがあるというふうに聞いております。県といたしましては、国の動向に十分注意を払ってまいる考えでございます。
第二点の、トリフェニルすず化合物の県独自調査及び対策についてでございますが、環境庁の調査の結果、紀の川河口でトリフェニルすず化合物が検出されましたので、県においても近く水質、底質、魚類についての再調査を行うことといたしております。
三点目のTPTの汚染実態についてでございますが、今回の環境庁の調査で初めて明らかになったものでございまして、紀の川河口付近の県独自調査の結果を踏まえ、今後検討してまいりたいと考えております。
四つ目に、現在の汚染は深刻な状況にないとの発言に対する考え方はどうかという御質問でございますが、議員の方から御指摘もございました国の化学物質専門委員会が、現在の汚染が長期に続けば人体に影響を及ぼす可能性がある、また監視が必要であるとしている以上、県としても環境庁の指導を仰ぎながら注意深くその推移を見守ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 農林水産部長安田重行君。
〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
農林水産部にかかわるTPT使用の実態でございます。
魚類養殖用生けす網に使用することにつきましては、昭和六十二年二月の全国漁業協同組合連合会、また全国かん水養魚協会の使用禁止決定に伴い、県漁業協同組合連合会においても直ちに使用禁止措置をとり、県漁連内に魚網防汚剤監視委員会を設置して使用禁止の徹底を図っているところでございます。
また、船底塗料の使用につきましても、国の指導を受け、県において昨年十一月に使用自粛等の指導を実施してまいりましたが、本年八月にはその使用を全面的に禁止するよう強く指導したところでございます。
こういったことから、漁業関係者につきましては、TPTは使用されていないものと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 民生部長高瀬芳彦君。
〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 高齢者の問題につきまして、五点に分けてお答えしたいと思います。
まず、家庭におけるお年寄りの生活や家族の介護を支援するための体制づくりについてでありますが、デイ・サービス、ショートステイ及び家庭奉仕員の在宅三事業について、その重要性、緊急性にかんがみ、平成元年度から三カ年で大幅な拡充整備を図るべく九月補正予算案において所要の経費を計上しているところでございます。
特に家庭奉仕員につきましては、お年寄りが地域の中でできるだけ自立して生活していただけるよう日常的な家事、介護サービスを提供していくという最も基本的なサービスでありますので、市町村とも十分相談しながら、今後とも量的、質的な充実に積極的に取り組んでまいる所存であります。
さらに、これと並行して、現在設置を進めている保健・医療・福祉の専門家で構成する市町村高齢者サービス調整チームを活用し、回数や時間など、お年寄りや家族の状況に合わせて適切なサービスを提供できるよう体制づくりを進め、地域のニーズに対応した家庭奉仕員派遣体制の整備を図ってまいる所存であります。
次に、お年寄りの自立を助けるための町づくりや地域ぐるみの協力、自助器具の貸し付けといった御提案についてでありますが、その趣旨を実現するために、施設を拠点とした地域における在宅支援体制の普及やマンパワーの確保、さらにはこうした施策を通じての地域ぐるみの協力について、今後とも積極的に対応してまいりたいと考えてございます。
また、地域活動に参加しつつ生きがいのある生活を営むことができるよう、関係部局と相談しながら町づくりや住環境の整備などにも努めてまいりたいと考えており、現在、策定作業を進めている長寿社会対策指針の中にも位置づけたいと考えております。
さらに、家庭介護を支援するための各種器具の貸し付けにつきましても、その普及について今後とも市町村を指導してまいる所存でございます。
寝たきり老人ゼロ作戦についてでございますが、厚生省の平成二年度予算の概算要求において、寝たきり老人にならない国民運動の提唱や寝たきり老人の防止に関する施策の強化等を内容とする寝たきり老人予防対策の展開が計画されていると聞いてございます。県といたしましても、国の予算の推移を見守りながら、その趣旨に即した対策の具体化に向けて検討してまいりたいと考えております。
予防型福祉施設の設置についてでありますが、在宅福祉の充実のために施設を中心とした総合的な在宅支援が重要であると考えており、そのため、現在、関係施設におけるデイ・サービス事業、ショートステイ事業の普及に努めているところであります。さらに、こうした施設における専門的知識を地域の中で生かし、施設と地域とが一体となって在宅高齢者の自立を支援していく体制をつくっていくことが重要であると考えてございます。
現在、厚生省の平成二年度予算の概算要求において、こうした考え方に立って在宅介護支援センターの整備構想も出されていると承知しておりますので、国とも十分連携をとりながら適切な対応を図りたいと考えております。
最後に、寝たきり老人をなくするための新しい福祉理念と実践計画が必要との御指摘についてでありますが、確かに、地域全体が寝たきりのお年寄りを支援し、その自立を助けていくという理念が必要であると考えます。このため、現在、庁内の長寿社会対策推進本部において、長寿社会をにらんだ総合的なビジョンの策定を急いでいるところであり、また、これとあわせて寝たきり老人ゼロの精神を体現できるよう、国、また保健環境部等関係部局とも相談しながら各種施策の推進に努めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れありませんか。──再質問を許します。
42番森本明雄君。
〔森本明雄君、登壇〕
○森本明雄君 再質問は自席でと思いましたが、渡辺団長から「前で、前で」と激励を受けましたので、ここからやらせてもらいます。
関空問題につきまして、仮谷知事が今日まで、大阪空港存続問題、また国内便確保、さらには全体構想の早期実現など、精力的に取り組んでこられたことについては評価いたしますし、また先ほどの答弁では、取り組みについて、今までになかった突っ込んだ答弁も若干あったわけでございます。しかしながら、存廃問題につきましては、現実の問題として、存続の流れの勢いがますます強くなっていることは否定できない事実でございます。そして、先ほども述べましたとおりに、存続軍団によって和歌山県は完全に包囲されております。こういった状態では、大阪空港存廃については一〇〇%存続の見通しと私は思っております。
先日、故大橋知事が県益を守るため、いや獲得するために国を相手に阿修羅のごとく闘った話を渡辺議員の質問を通じて聞きましたし、また、その後の関空をめぐる和歌山県の活動についても知ることができました。私なりにその結論として、関空建設で大阪府、兵庫県、さらには奈良県などの協力もさることながら、和歌山県の同意、協力なくして関空の建設着工はできなかったと判断をいたしました。その和歌山が存廃問題で蚊帳の外に追いやられて、なお国や周辺付近に気を使いながら発言をしなくてはならないのだろうか。関空建設のために、知事を初めとして当局、さらには議会が全面的に協力をしてきた、いわゆる和歌山県であります。
とりわけ、血の一滴たる紀の川の水の分水に踏み切ったのであります。そして、分水や、南大阪、紀北地域の調和ある健全な発展のため一体的な総合施策の推進に努めることをうたった協定を締結いたしました。しかし、二つの不完全空港の存在では、両地域の調和ある健全な発展は望めないと思います。したがって、大阪空港廃止と全体構想実現への強力な推進を大阪府に要求し、その具体的成果を見るまでは紀の川利水に関する協定を一時凍結すべきだと思うのでございますが、知事の御所見をお伺いいたします。
○副議長(宗 正彦君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森本議員にお答えします。
御意見を十分承り、検討してまいりたいと思います。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れありませんか。──再々質問を許します。
42番森本明雄君。
〔森本明雄君、登壇〕
○森本明雄君 再々質問をいたします。
知事から、存廃問題や国内便確保の問題で、重大決意だとか重大な関心、毅然たる態度という発言が再三あるわけでございますが、その言葉の裏づけについては、私は不勉強かもしれませんが、非常に見えにくいのであります。
また、第一質問で利水協定の一時凍結の決断を望みましたが、検討したいということで、なかなか踏み切れないようでございます。
昨日行われた関空特別委員会の委員協議会の様子をけさの朝刊で知りました。新聞によりますと、西口副知事は「分水の実施年次まで阪和間の問題を交渉していく。その時々で覚悟があるぞ、とにおわせながらやっていく。県としても重大な決意を持っている」と報道されておりました。
そこで、「県としても重大な決意を持っている」というこの西口副知事の言葉の意味でございますが、どのように解釈さしていただいたらよいのでしょうか。例えば、大阪空港廃止や国内便確保、あるいは全体構想早期実現の問題で大阪の協力が得られなかったとき、あるいは県の主張が通らなかったときに利水協定の凍結をするのか、また協定に明記された協力問題がスムーズに運ばなかったとき協定を白紙に戻すのか、その他いろいろなとり方があるわけでございますが、この言葉の持つ意味を具体的に明示していただきたいと思います。
以上です。
○副議長(宗 正彦君) 以上の再々質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 私の決意と申しますのは、知事にさせていただいて最も県の政治力を結集したのは半島振興法の成立の問題であったと思います。これは、国会議員の皆さん、県会議員の皆さん、地元の皆さんが一体になって総力を発揮して成果を得たと思うわけでございます。また、各政党の御努力もいただいた次第でございます。今回もそのような力をもって全力を尽くすべきではないか、これが第一に進める方法でございます。
そして水の問題でございますが、これについては、大阪府と利水協定を結んでおります。大阪国際空港の問題は、大阪だけが大阪だけで解決する問題ではないと思います。結局、運輸省が地元の意見を聞いて決定するということになっておるわけです。しかし、大阪の協力を得なければなりません。そのために水をどうするかという問題について副知事の心中には、協定は結んでおる、しかしながらそうした水の運用操作の問題において大阪との駆け引きができるではないかということがあったと思うわけでございます。締結した協定をすぐに凍結するかどうかという問題等については十分検討していかなければならないと思います。
森本議員がおっしゃられた趣旨、またきのうの趣旨については私も十分存じておりまして、そうした点から一致協力してまいりたいと思っております。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れありませんか。──以上で、森本明雄君の質問が終了いたしました。