平成元年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


県議会の活動

 平成元年 和歌山県議会九月定例会会議録 第 五 号
 
 十月 六日 (金曜日) 午前 十時 四分 開議
  午後 二時五十八分 散会
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議 事 日 程 第五号
  平成元年十月六日(金曜日)
  午前十時開議
 第一 議案第百三号から議案第百二十一号まで及び報第十号
 (質疑・委員会付託)
 第二 一般質問
 第三 請願付託
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本日の会議に付した事件
 第一 議案第百三号から議案第百二十一号まで及び報第十号
 (質疑・委員会付託)
 第二 一般質問
 第三 請願付託
 第四 休会決定の件
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出 席 議 員(四十四名)
 1 番 井 出 益 弘 君
 2 番 和 田 正 一 君
 3 番 町 田 亘 君
 4 番 中 村 利 男 君
 5 番 山 本 一 君
 6 番 宗 正 彦 君
 8  番 鈴 木 俊 男 君
 9 番 阪 部 菊 雄 君
 11 番 平 越 孝 哉 君
 12 番 大 江 康 弘 君
 13 番 中 西 雄 幸 君
 14 番 橋 本 進 君
 15 番 古 田 新 蔵 君
 16 番 浦 武 雄 君
 17 番  堀 本 隆 男 君
 18 番 宇治田   栄 蔵 君
 19 番 下 川 俊 樹 君
 20 番 石 田 真 敏 君
 21 番 木 下 秀 男 君
 22 番 中 村 隆 行 君
 23 番 藁 科 義 清 君
 24 番 門 三佐博 君
 25 番 尾 崎 要 二 君
 26 番  那 須 秀 雄 君
 27 番 木 下 義 夫 君
 28 番 上野山 親 主 君
 30 番 尾 崎 吉 弘 君
 31 番 西 本 長 浩 君
 32 番 岸 本 光 造 君
 33 番 松 本 貞 次 君
 34 番  浜 本  収 君
 35 番 和 田 正 人 君
 36 番 浜 口 矩 一 君
 37 番 山 崎 幹 雄 君
 38 番 貴 志 八 郎 君
 39 番 田 中  実三郎   君
 40 番 森 利 一 君
 41 番 村 岡  キミ子   君
 42 番 森 本 明 雄 君
 43 番 中 村 博 君
 44 番 中 村 千 晴 君
 45 番 小 林 史 郎 君
 46 番 渡 辺 勲 君
 47 番 藤 沢 弘太郎 君
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欠 席 議 員(三名)
 7 番 岡 本 保 君
 10 番 部 矢 忠 雄 君
 29 番 平 木 繁 実 君
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説明のため出席した者
 知 事 仮 谷 志 良 君
 副知事 西 口 勇 君
 出納長 梅 田 善 彦 君
 知事公室長 市 川 龍 雄 君
 総務部長 斉 藤 恒 孝 君
 企画部長 川 端 秀 和 君
 民生部長 高 瀬 芳 彦 君
 保健環境部長 尾 嵜 新 平 君
 商工労働部長 天 谷 一 郎 君
 農林水産部長 安 田 重 行 君
 土木部長 磯 村 幹 夫 君
 企業局長 吉 井 清 純 君
 以下各部次長・財政課長 
 教育委員会委員長
 上 野 寛 君
 教育長 高 垣 修 三 君
 以下教育次長
 公安委員会委員長
 築 野 政 次 君
 警察本部長 井 野 忠 彦 君
 以下各部長
 人事委員会委員長
 寒 川 定 男 君
 人事委員会事務局長
 代表監査委員 宮 本 政 昭 君
 監査委員事務局長
 選挙管理委員会委員長
 稲 住 義 之 君
 選挙管理委員会書記長
 地方労働委員会事務局長
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長 山 本 恒 男
 議事課長 栗 本  貞 信
 議事課副課長 中 西 俊 二
 議事班長 高 瀬 武 治
 議事課主任 松 谷 秋 男
 議事課主事 石 井 卓
 総務課長 神 谷 雅 巳
 調査課長 阪 上 明 男
 (速記担当者)
 議事課主査 吉 川 欽 二
 議事課速記技師 鎌 田 繁
 議事課速記技師 中 尾 祐 一
 議事課速記技師 保 田 良 春
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 午前十時四分開議
○議長(門 三佐博君) これより本日の会議を開きます。
○議長(門 三佐博君) 日程第一、議案第百三号から議案第百二十一号まで、並びに知事専決処分報告報第十号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 45番小林史郎君。
 〔小林史郎君、登壇〕(拍手)
○小林史郎君 まず、先般来の海外視察の中で感じたことについて御報告申し上げ、これに関連して知事並びに当局の御所見を伺いたいと思います。
 このたびは、知事、議長を初め、各位の御理解のもとにブラジルとカナダへ行ってまいりました。私は障害者の身ですので、皆さんの足手まといになるのではと、海外視察についてはつい憶病になっていましたが、先輩・同僚議員からいただいた励ましの言葉に甘えて初めての体験をさしていただきました。当然、同行の皆さんには大変な御迷惑をおかけしたわけでありますが、その都度、親身も及ばぬ介添えをしていただき、おかげで無事、全日程を終えることができました。ここに、厚く御礼申し上げます。
 初体験というものはすべて新鮮に見えるものですが、このたびは国の外へ出てみて、初めて日本のことがよくわかったような思いであります。
 そこで、今も印象に残っている幾つかの事柄について御報告さしていただきたいと思いますが、何分にもメモをとる習慣がございませんので、単なる耳学問的な印象話の羅列に終わるかもしれませんし、また不正確な、誤ったとらえ方もあろうと思われます。その場合はお許しをいただきたいのであります。
 まず、ブラジルでの印象でございますが、サンパウロ空港におりたとき、そして数日を過ごさしていただく中で何よりも強烈に感じたことは、多民族国家の持っているエネルギーの力強さでありました。およそ人の集まるところでは、黒人、白人、東洋人、現地人、それにそれぞれの度合いに応じたさまざまな混血児が入り乱れていて、しかもそれが混然と一体化した形で生き生きと活動している姿には驚異を感じました。そして、そこには底抜けの明るさがあって、外見的には、全くと言ってよいほど肌の色による差別があるように思えませんでした。特に、さまざまの肌の色合いの人が一つに解け合い、歌って踊りまくるカーニバルの舞台を見たときは、ひとしおこの思いに駆られました。
 このような肌の色による差別がない生の姿の社会に接することは、これまで人権問題にかかわってきた私にとって、まさに新鮮な感動を呼び起こすものでした。部落問題と民族問題とでは本質的に異なっておりますが、ともに人権にかかわる問題であるという点で共通性があります。
 例えば女性の問題でも、サンパウロ空港で私たちの荷物を検査する主任税関の方は女性でしたし、カナダでも、バスやタクシーの運転手に女性の方が多く見られ、これらの多民族国家では、女性の社会的地位は我が国よりも高いという印象を受けました。ということは、肌の色によって差別しないという社会生活のあり方が必然的に人権の平等性を高めていくのではないでしょうか。
 こうした視点に立って今度の視察中ずっと考え続けたことは、多民族国家における民族問題がこれからどのような方向へ発展していくべきかということであります。
 御承知のように、日本の移民は、ブラジルでもカナダでもアメリカでも、昔はひどい差別を受け、塗炭の苦しみを味わいながら働きに働き続け、自分の汗とあぶらと涙の結晶によって今日の地位を築かれたのだと言えます。
 今日、サンパウロ一千二百万人の市民のために必要な野菜の七割以上は日本人移民によって供給されていると言われていますし、案内を受けたサンパウロの日本人街では、鈴蘭灯が輝き、漢字の看板も多く、日本の商店街と見違うばかりのにぎやかさであって、その経済力の大きさを知ることができました。つまり、日系移民がこのようにブラジル国家発展の重要な一環を担うようになるにつれ、その評価が高まり、今では民族的なべっ視などはほとんど受けていないようであります。私たちはこのことを大いに喜ぶとともに、同時に、志半ばにして挫折された多くの移民の方や、現在もその苦労の真っただ中におられる方も決して少なくないということを忘れてはなりません。
 八月二十七日にサンパウロ市で開かれた県人会には、六百人にも及ぶ方々が参加してくれました。会場でお会いした田辺市出身のお二人の方は、「わしらは千二百キロの道を自動車でぶっ飛ばしてきたのだ」と明るく話してくれました。苦しみにつけ、喜びにつけ、いつどんな折にでもふるさとを忘れたことがないようで、こんな機会にこそ、同じ言葉やふるさと文化で結ばれた民族感情が燃え盛ってくるのではないでしょうか。
 サンパウロにはカラオケ喫茶が五十軒ほどあると聞きました。私もその一つに案内してもらいましたが、広い店内がいっぱいの盛況で、演歌が休みなく歌われていました。バンクーバーでも同様のカラオケ喫茶が数軒あると聞きましたが、移民の皆さんのふるさとを思う民族的感情がいかに根強いものであるかを思い知らされたような気がしました。
 しかし、これと反対の方向、つまり民族同化の進んでいる話についても聞かされました。例えば、二世、三世ともなれば日本語を話せない人が断然多くなりますし、三世の結婚においては、日系人同士の結婚というケースはまれにしか見られないということです。
 ピラシカバ市は有田市と姉妹都市関係にありますが、ここに住んでいる同郷出身の吉井チ力さん宅に一晩泊めていただきました。彼は、東京農大卒業後、ブラジルに渡り、現地で農業試験場長を務めていますが、イタリア系の奥さんをもらい、三人のお子さんをもうけています。
 先年、彼は国から派遣されて筑波大学に三年間留学し、本県の果樹試験場にもお世話になったようであります。そのとき、家族も一緒に来ていて、お子さんたちは吉備町の御霊小学校に入学し、日本語を相当話せるようになっていました。それで、吉井さんに、「家での日常会話に日本語を使っているのですか」とお尋ねしたところ、「そうしたいと思うのだけれども、奥さんが十分使いこなせないこともあって、つい便利な使いやすい現地語になってしまう。それで、子供たちもこのごろは、せっかく覚えていた日本語もだんだんと忘れてきているようだ」との答えでした。
 このような多民族国家における二世、三世の間に進行している民族同化の現象は、押しとどめることのできない自然の成り行きであって、むしろ歓迎すべきものでないかと思います。
 そして、吉井さんが印象的にこんな話もしてくれました。ブラジルでの日本人の人口比は数%にしかすぎないが、大学に進学する若者の比率では現在一七%を超えていて、しかも年々高くなる傾向にあるということであります。日本ほどの学歴社会ではないにしても、大学を卒業すれば、当然、国の指導的立場で活躍していくのですから、これからのブラジル国発展の中で日系人の果たす役割は一層に大きくなってくることが十分に考えられます。
 そこで、一つの疑問と申しますか、迷いが起きてくるのであります。それは、こうした多民族国家の同化現象と県人会など日本人としての民族感情を高めるような活動とが矛盾することにならないか、一体この辺をどう理解したらよいのかという問題です。かつて太平洋戦争のとき、カナダやアメリカなどにおいて、二つの祖国を持つことで多くの先輩たちが苦しい思いをされたことを知っているだけに、私にとって一つの疑問でした。しかし、今度の二つの国の訪問を通じ、この疑問が解消できたと言えます。
 ブラジルでもカナダでも、県人会に参加し、いろいろとお世話をしてくださっている方は、一世であっても二世であっても、例外なく、その国においてすばらしく活躍しておられる方々ばかりであります。そして、このような県人会の活動の中心になっておられる方ほど、現地社会からも厚い信頼を寄せられているようであります。つまり、県人会の活動に参加することが同化の妨げになるのではなくて、むしろ反対に、県人会などの活動を通じて日系人共通の文化や伝統への理解を高めることにより、日本的な個性や能力をより現地の人々の中に生かしていきながら、この営みを通じて同化を進めていくことになるのではないでしょうか。そしてこのことが、日伯、日加など、両国の間の親善関係をより発展させるかなめの役割を果たすことになるのだと思います。
 少し横道にそれるかもしれませんが、これから雑談的なブラジルの見聞記を、見たまま、聞いたまま報告させていただきます。
 一番困った問題は、お金の使い方でした。同じ一千クルザードの札でも、新券と旧券では三けたも価値が違い、しかもそれが同時流通しているのですから、買物のときは旧券のゼロを三つとって計算せよと言われても、新券と旧券の見分け方自体がわからないのですから、大変です。それにしても、年間百数十%のインフレとか、終戦直後の日本のように公務員の生活が特に苦しいように見受けられました。
 また、こんな話も聞きました。ブラジルでは、選挙などで一たび政権が変わると、警察署長に至るまで、主な役職にある役人がすべて入れかわるそうで、それで、今の役職にある間に生活の安定を得ておかないとという風潮が強く──事実かどうかは知りませんが、これが公務員の中に否定的現象を多く生み出す要因になっているということでした。また、治安の方も余りよくないようで、アパートなどでは鉄さくで周囲を囲い、守衛を立てていましたし、個人の家でも鉄さくで囲い、中から錠をかけているところが多く見受けられました。
 こうしたことを通して、日本という国はまことにありがたい国だということを自覚したわけでありますが、それにしても、ブラジルという国は若々しくて未来のある国だと思いました。一千二百万人の人口を持つサンパウロという立派な首都を捨てて、原野の中にブラジリアという新しい首都を築くという大事業をやってのけるのですから、内に秘められているエネルギーのたくましさが大したものであることを実感しました。
 リオのカーニバルは余りにも有名です。連日、何十万という人が踊りまくるわけですが、この町全体が観光の町という感じがしました。人工的に拡張したと聞きましたが、本当に広くて美しい砂浜の海水浴場が延々と続いており、そこには、鉄棒あり、ブランコあり、サッカー場あり、屋台店ありで、目に入る範囲の人だけでも優に万を超えているような状況でした。また、朝、目を覚まし、まだ夜の明けやらぬホテルの窓から眺めてみますと、幾人かの市民がジョギングをしたり、鉄棒、体操などをしてこの砂浜のそこかしこで楽しんでいる姿が目につきました。そして、このとき、本当のリゾート開発とはこんな砂浜のことを言うのでなかろうかと思いました。大企業のもうけの対象になるのではなくて、貧乏人も金持ちも、みんな平等に遊び楽しめるものでなければ、本当の意味でのリゾート開発と言えないのではないでしょうか。
 リオのところどころに貧民街的な町並みが目につきますが、「リオのすばらしく盛大なカーニバルも、ここの住人たちがあって初めて実現できるのです」と説明してくれたガイドさんの言葉が妙に印象に残っています。ブラジルでは、リゾートも文化も、底の広い庶民層のエネルギーによって支えられているのだと思いました。
 次に、ピラシカバ市にある州立農科大学を見学さしていただいたときの印象でございます。
 この大学の敷地は四百ヘクタールもあって、その中に林業、畜産からバイテク、農業工学まで、あらゆる専門分野の校舎がゆったりと分立し、研究施設や実習地にも事欠かない様子でした。生徒は五千人に少し足りないということでしたが、教授陣は千人を超えると言われ、生徒五人に一人の先生というこの恵まれた条件は、国の基幹産業として、あすの農業に期待するその意気込みが感じられるようで、大変うらやましく思いました。
 ブラジルは国土が広く、しかも熱帯から寒冷地までと地域差があるため、どんな作物でも一年を通じて生産できると言われ、その主な担い手が日系移民であるだけに、今後、技術交流を深めるならば、ともに大きな利益をもたらすことができると思いました。ちなみに、この農科大学における日系人学生の比率は平均に比べて高いと聞いています。
 先ほど触れましたように、ピラシカバ市は有田市の姉妹都市ですので、市長さんを表敬訪問させていただきました。半年ほど前に現職を破って初当選されたという若い労働党の市長さんでしたが、ジーンズ姿の大変気さくな方で、私は当選間もないので忙しく、訪日できなくて残念だが、ぜひ有田市長さんに来てもらってほしいというメッセージを託されてきました。早速、中本市長さんにお伝えしましたところ、次の市長選挙に当選できれば検討して返事をしたいとのことでありました。
 ブラジルの政治状況では、債務の返済と不況対策、インフレ対策を中心にして民政移行後の初の大統領選挙が争われているようでありますが、この国の選挙では、それぞれの党の政策の優劣が当落に敏感に響くような状況にあるとのことであり、ここにも、あすへの変革の大きなエネルギーが秘められているように思えました。
 先日、木下秀男議員より報告がありましたので、カナダの印象については少しだけ申し上げることにさしていただきます。
 この国は、緑が多くて、落ちついた、大変美しい国でした。特にバンクーバーでは、至るところに立派な花の咲き乱れる公園があって、本当に心の休まる雰囲気でしたし、町並みを通して庶民の生活状況を推察してみても、中国人の進出が目につくぐらいで、それほど厳しい対立と矛盾が噴き出ているようには見られませんでした。お会いした県人会の方も何となく余裕があって、落ちついた感じの方が多かったように思います。
 しかし、工野儀兵衛翁が百年前にこの地でサケ漁業を初めて切り開いたというフレーザー河畔の日本人街や日本庭園に立ってみますと、かつての日系移民の苦労の数々がしのばれ、一瞬、厳粛な思いに駆られました。
 最近、フレーザー漁港では、日系漁民が少なくなっているということでした。その原因について問い忘れましたが、とにかくより安定した仕事の方へ定着されているのだと思えました。
 東部トロントの県人会でも、本当に落ちついた、余裕のある雰囲気で、日加親善のために大きな役割を果たしてくれているであろう、その実力のほどを実感させていただいた次第であります。
 以上、見たまま聞いたまま、感じたままのことを率直に報告させていただき、時間も少々長くなりましたので、質問の方はそれだけ簡潔にしたいと思います。
 先ほど報告申し上げましたように、サンパウロでの県人会には非常にたくさんの方が参加してくれていましたが、どちらかというと一世の方が多く、全体として高齢化の傾向が進んでいるように見受けました。この点、トロントでの東部カナダ県人会では若いお嬢さんが日本舞踊を披露してくれるなど、二世、三世の方の参加が多かったように思いました。
 そこでお尋ねいたしますが、今後、県人会との提携をどう進め、特に二世、三世とのつながりをどう強めていくかなどの点について、知事も現地の状況をよくつかんでくれていると思いますので、御所見のほどを伺いたいのであります。
 続いて、海外技術研修生の問題でありますが、ブラジルでは、医学、コンピューター、農業関係などで研修生増員の強い要望が出されていました。それで、公室長より、この事業の実施状況について、またその成果や問題点があれば御報告願うとともに、受け入れ人数の増員の可能性についてもお答え願いたいのであります。
 次に、五年前のブラジル訪問の後の議会で、知事は、「和歌山県移民史」の補充と移民者名簿の整理について約束されていますが、この機会に、これらの事業が今日どの程度進んでいるのかを御報告願いたいのであります。
 最後に、日高原発の問題で質問いたします。
 今議会一般質問では毎日のように原発問題が取り上げられ、特に日高町長の最近の海上事前調査申し入れをめぐる情勢について論戦が行われました。私も、この論戦に参加させていただくわけでありますが、まず初めに、今回の日高町長の調査申し入れがあたかも区長会有志や商工会の総意に基づいて行われたかのように描き出している当局答弁の不当性を厳しく追及したいのであります。
 新聞報道にもありますように、我が党の日高郡市委員会と日高町支部は、九月四日に日高町長に対して「原発建設を前提とした事前調査申し入れの速やかな撤回を求める」という表題の文書申し入れを行い、九月十二日には、同様趣旨の公開質問状を提出しております。この文書の中で、第一点として、今回の区長会有志から出されたという申し入れなるものは、あくまでも「原発問題に早期決着を」という趣旨であり、決して原発推進を求めたものでないこと、同時に、当然のこととして、これは各区民総会において原発推進を論議した上で決定された意思でもないこと、第二点として、商工会から出された建設促進の要望も、本年五月の商工会総会の場で当面静観することの意思決定をしたばかりであって、急遽、理事会だけでこのような決定を行うことは不自然であり、商工会員の総意でないことは明白であると指摘しています。さらに、これらのこととともに、反対漁協組合員を威圧し、切り崩すためのものとしか考えようのない意識調査を強行しようとする町長の姿勢と考え合わせるならば、区長会有志や商工会理事会によるこの一連の動きは、町長の指導のもとに意図的に仕組まれたものと断ぜざるを得ないのであります。
 私は、この辺のことをよりよく理解していただくために、原発誘致をめぐっての日高町当局と関西電力との癒着関係の実態について、その歴史的経過を大まかにたどってみたいのであります。
 たしか、阿尾地区への原発誘致の問題が初めて日高町議会に提起されたのは、昭和四十二年の六月議会でした。それまでは、この阿尾地区に大信製材を誘致するということで、当時の井上町長が立会人になり、そのための用地買収を完了していましたが、この土地が原発用地として関西電力に転売されたため、原発に反対する阿尾地区住民が約束違反として土地の返却を求める裁判を起こしたことは御承知のことと思います。このような闘いの結果、四十三年十二月議会で阿尾地区への原発誘致は断念されることになりましたが、この土地返還の問題は、七年にわたる長期裁判の末、住民側の敗訴となり、阿尾地区住民は、一戸当たり七万円の訴訟費用のほかに、大信製材側から二億二千万円の損害賠償請求の裁判を起こされる事態となったのであります。しかし、この判決文の中でさえ、安全性に問題があって、地区住民の十分な理解と協力が得られる見通しのないまま原発誘致を進めた町の責任が厳しく指摘されており、まさに阿尾地区住民は、関西電力に奉仕する日高町当局によって重大な犠牲を強いられたのであります。
 この後、原発予定地は同町小浦地区に変更されることになりますが、この用地買収に当たっても、日高町当局は、まるで関西電力の出先機関であるかのような役割を果たしています。
 日置川町でもそうでしたが、ここでも「観光開発」ということで町民をだまして昭和四十五年から用地買収に乗り出し、その土地を一たん井上町長個人名義で登記し、一年もたたないうちに木村商事、藤和不動産などの関西電力関連商社名義に書きかえられています。しかも、この代金支払いを町が代行するため、町長名の別途口座を開設し、代金の支払いには公印を使って収入役が当たり、しかも驚いたことには、その登記事務のために担当職員が北海道やアメリカ、カナダの地主にまで公費を使って交渉に行くというほどのひどい公私混同ぶりであります。もし、この土地を本当に町の財産として買収したのであれば、当然、そのための予算措置をとるべきであり、それがないということは、疑いもなく、この土地買収は関西電力のためのものであることを示しています。
 皆さん、本来、住民福祉を守るための公的機関である地方自治体が、これほど露骨に一企業の利益の守り手になるようなことは許されるでしょうか。かくて、井上町長から一松町長に変わりましたが、日高町のこの体質が引き継がれており、このたびの海上事前調査の申し入れや問題の意識調査も、この癒着体質の典型的なあらわれであると言わねばなりません。
 以上、今度の区長会有志の申し入れの趣旨や商工会決議の泥縄式的なやり方を見れば、また日高町のこれまでの癒着体質について考えるならば、知事や企画部長の言うように、今度の事前調査の申し入れは区長会や商工会の総意を代表したものと到底思えないのであります。むしろ反対に、事前調査への突破口を開くことを目的にして、町長によって周到に準備された計画的で意図的なものであると思います。
 そこで知事にお尋ねしますが、今度の日高町長の事前調査の申し入れは、今もなお区長会有志、商工会の総意によると考えておられるのか。もしそうであれば、その論拠をお示し願いたいのであります。
 次に、原発三原則の地元同意の問題でありますが、これまでの知事答弁によれば、事前調査時は立地町、建設時は隣接町の同意をも必要条件とするということであります。しかし、私は、原発事故の特殊性から見て、地元同意についてこのような格差をつけることが間違いでなかろうかと思うのであります。なぜならば、一度チェルノブイリ原発のような事故が起きれば、その被害が数百キロにも及び、少なくとも三十キロ圏は人の住めない死の町になってしまうことが既に実証されているわけであります。だからこそ、日高でも日置でも、住民は隣接町の原発立地に対して重大な関心と不安を持っているのであって、現に日高地方では、一市二町において原発反対請願署名が有権者の過半数を超えておりますし、白浜町では、この請願書が採択されているのであります。
 御承知のように、行政区は全く原発事故と無関係に引かれた境界であって、行政区が違えば被害が少なくなるという性格のものではありません。その上に、日高でも日置でも、隣接町住民の不安が現実の姿となって噴き上がっているのですから、人権の平等性の立場から言っても、事前調査の段階においても隣接町の同意を求めるのが理の当然だと考えるのでありますが、このことについて知事の御所見を伺いたいのであります。
 以上で、第一回目の質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) ただいまの小林史郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 小林議員にお答え申し上げます。
 ただいま、小林議員から海外視察の状況並びに質問をいただいたわけでございます。
 小林議員とはカナダでお会いしたわけでございます。小林議員はブラジルから来られて、もう大分疲れておるんじゃないかと思ったのでございますけれども、非常に元気で、体の不自由を克服して研究欲、知識欲旺盛であり、教えられる点が非常にあったわけでございます。
 まず質問の第一点、県人会の今後の取り組みの問題でございます。
 話ございましたように、視察の中でも、県人会に入っておられる方は非常にすばらしい人だ、そしてまた対外的にもほかの人から信用されておる人だという話がございました。和歌山県の県人会が、そのように各地域において信用を得、ますます立派になっていっておるわけでございます。
 現在、和歌山県の県人会は、米国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ及びメキシコの六カ国で組織されておりまして、そのうちの中南米の各県人会に対しては活動費の助成をさせていただいております。
 また、在外県人会との交流につきましては、お話ございましたように、移住者の一世の皆さんとの交流が中心でございます。しかし、これから二世、三世の方々の活躍の場になってくるわけでございます。これら人の問題において、青少年の交流事業、海外技術研修員の受け入れ事業、また夏休みに県人会と本県高校生との交流等を行うとともに、本県の県人会に対して各種の情報を提供させていただいており、本県とのきずなを深めておるところでございます。
 また、今後の問題として、移住先諸国の州と本県との交流をなお一層深め、そして在外県人会が本県の国際交流の拠点としての役割を果たしていただくよう、一層、連携強化を深めてまいりたいと思っております。
 次に、日高原発の問題でございます。
 原子力発電所の立地に関連する地元からの要望についてでございますけれども、日高町区長会有志から「原子力発電所問題の早期解決を求める要望書」が、また日高町商工会は、総意ではなくて理事会として「電源立地推進要望」が、それぞれ日高町長及び町議会に提出されたということを聞いております。
 次に、原発に関係して、三原則の「地元の同意」の問題でございます。
 地元の同意につきましては、かねてからたびたび申し上げておるところでございますけれども、調査の段階では立地町、建設の段階では立地町及び隣接市町村、それぞれの市町村長及び議会の同意が必要であると考えておるわけでございます。
 事前調査では、環境影響調査及び立地可能性調査が行われ、建設が可能かどうかを判断する資料を収集することとなっております。したがいまして、事前調査の段階にあっては立地市町村の同意で足りるものと判断している次第でございます。
 以上です。
○議長(門 三佐博君) 知事公室長市川龍雄君。
 〔市川龍雄君、登壇〕
○知事公室長(市川龍雄君) 海外技術研修員の受け入れ事業につきましては、ブラジル、アルゼンチンなどの発展途上国から青年を九カ月間受け入れ、進んだ技術を習得し、それぞれの母国の発展に寄与していただくことを目的とした事業でございまして、昭和五十三年度から実施してございます。
 現在までに七十三名の研修生を受け入れ、医学関係、コンピューター技術、写真機械技術などの研修を行うとともに、相互理解と友好親善の推進を図ってございます。
 また、当事業の受け入れに当たりましては、受け入れ先も大変協力的でございますので、研修がスムーズに遂行していると理解をしてございます。
 なお、研修員の増員につきましては、昭和六十三年度から一名を増員いたしてございますが、今後、県人会等の意向を勘案しながら検討してまいりたいと存じております。
 また、本県の移住の歴史についてでございますが、昭和三十二年に発刊された「和歌山県移民史」において詳述されておりますし、昭和四十二年から四十六年にかけて発刊された「和歌山県政史」においても記載されておりますが、さらにお話のありました事項については、現在、編集中の「和歌山県史」の中でも検討してまいりたいと考えてございます。
 次に移住者の名簿につきましては、昭和六十一年度にそれぞれ各国の県人会の協力のもとに再調査を行い、現在活用しているところでございますが、今後ともこれを補充する形で整備をしてまいりたいと考えてございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 45小林史郎君。
○小林史郎君 海外視察の問題についてはいろいろと勉強さしていただいたわけでございますが、今、知事から答弁をいただいて特に感じることは、二世、三世の皆さんとどうつながりを深めていくのか、何でつながっていくのかということであり、これが大事な課題ではないかと思います。知事も、この辺に十分留意し、熱意を持ってくださっておりますので、今後とも、そうした点について御研究、御検討されて大きな成果を上げられ、いろんな施策の中で考えていただくことをお願いしておきます。
 次に、原発の問題でございます。
 原発の問題では、大分意見が違います。きのうも浜本議員が比井崎漁協総会の廃案問題について、新聞報道の実態あるいは水協法に基づいて県に報告された議事録から廃案ということははっきりしておるじゃないか、それなのに、採決に至らなかったのだと突っ張る理由があるならば、私の主張を崩すような根拠があれば示せと、再三にわたって迫られたと思います。しかし、当局の皆さん方はこの点についてまともに答えないで、ただ「採決に至らなかっただけです。議長が収拾したのでなしに、組合長が『廃案』と言ったんです」というようなことを繰り返すのみでございました。
 先日の森議員に対する知事答弁では、「区長会有志」あるいは「商工会の総意に基づいて」と言われたように記憶しておったので、総意ではないということをいろいろ申し上げさしていただいたわけです。それでも、やはりそうした立場に立って──私は、町長が住民の立場に立つように知事としての考えを示せと言うのではないのですが、町長を擁護するような立場の答弁に終わっておるように思います。
 また、二番目の地元同意の問題についても、事前調査は白紙の状態で、建設するかどうかわからないと言いますけれども、実際問題として、建設を前提にして事前調査が行われることは、これはもう否定できない事実だと思います。そして、今までの例では、事前調査をやってここがだめだったからもうやめたというところは、日本ではないんじゃないかと思います。
 現実に白浜町議会では、日置川に原発をつくってもらったら困るという決議が採択されておる。御坊市でも、美浜町でも、由良町でも、有権者の過半数の請願署名が上がっている。こういう現実を見た場合に、もし知事が本当に県民の立場に立ってくれておるならば、事前調査で、最低、隣接町の議会の同意を得るという歯どめをかけて、安全性について慎重に対処するという姿勢があってしかるべきだと思うわけですが、既に原発立地へ道を開くことを一貫して考えておられるようです。廃案問題の扱いにしても、あるいは事前調査の町長の申し入れに対する見方にしても、そういうことがはっきり出ておると思います。
 この点について、先輩の森議員さんから、この前、知事の「廃案を認めない」という態度は日高町長と一体の立場ではないかというような指摘があったかと思うわけですが、私もそう思うのであります。
 知事は、原発三原則で、客観的な立場に立っておられるようなことを常に言われるわけですが、こうした一連のことから申し上げますと、どうも日高町と同じような原発推進の立場に立っておられるような──比井崎漁協の総会のときですか、「原発の一つや二つつくってもいいんと違うか」という発言をされたこともありますけれども、本心は、原発推進の立場にあるような感じがするわけでございます。
 ここで、日高町と全く同じような立場に立っておられるのか、あるいは本当に客観的に県民の動向を中心にして考えていく立場に立っておられるのか、その点を明確にしていただきたいと思うわけです。
 以上で、再質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 小林議員にお答え申し上げます。
 原発の取り組みについて、日高町長と同じ立場かということでございます。
 私は、毎回申しているように三原則を重点としておりますから、日高町とは違うわけでございます。私は県民の長でございますから、県議会並びに県民の皆さんの意見を十分反映させて仕事をやらしていただくという立場でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 45番小林史郎君。
○小林史郎君 最後に、要望だけ申し上げておきます。
 今の答弁を本当に身をもって実践していただきたいということをお願いいたしまして、私の再々質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で小林史郎君の質問が終了いたしました。
○議長(門 三佐博君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 9番阪部菊雄君。
 〔阪部菊雄君、登壇〕(拍手)
○阪部菊雄君 九月定例議会に、議員各位のお許しを得て、第三回目の一般質問をさせていただきます。
 十月六日、本日は「国際協力の日」であります。同時にまた今定例議会は、あたかも仮谷県政第四期目の折り返し点でもあります。
 最近の国内外の諸情勢は、極めて流動化と喧騒化に明け暮れております。去る七月の参議院選挙では、消費税撤廃のみで野党社会党が予測以上の大勝利をおさめ、自民党を周章狼狽せしめました。幸い本県は、保守の危機感による結束により、選挙区で世耕候補を見事に当選させました。同志諸君に心から感謝と敬意を表する次第であります。
 かくて保革逆転した参議院選挙後、初めて与野党激突の場となる第百十六臨時国会が去る二十八日に召集され、消費税廃止か見直しか、いよいよ、その展開次第では今国会での解散かという大波乱含みとなるでありましょう。
 一方、お隣の中国での動乱に端を発し、結局、マルクス・レーニン主義は武力弾圧なしではうまく機能しないということが明確化され、共産主義の神話は変革しつつあります。すなわち、一党独裁ソ連型社会主義はまさに終えんへの一歩を踏み出した──と各新聞は報道いたしております。
 こうした激動しつつある中で、県政を取り巻く諸情勢もまた極めて喧騒化しつつあり、声の大きい者が得をするかのごとき感がしないでもありません。
 不老橋建設中止を求める反対住民六十三名の監査請求、マリーナシティができれば漁場が荒らされるとして加太漁協の漁船三十八隻による海上デモ等々、数え上げれば枚挙にいとまがありません。このような厳しい中で、仮谷知事は正確な指導力と判断を持って、誠実に県政全般にわたり積極的に推進されており、着々と成果を上げておりますことは、まことに頼もしい限りであります。
 さて、通告に従い、質問いたします。
 一番目の地価対策についてであります。
 県土は限られた資源であり、この県土の有効的な活用を図るため総合的かつ計画的な利用により県の均衡ある発展に資することは大変重要なことであります。こうした県土利用が県民生活の安定向上と県経済の健全な発展に寄与できるものと確信いたすのであります。しかし、この土地利用に当たり、急激な地価の高騰は地域社会経済に大きな影響を及ぼし、社会資本整備、良好な都市環境づくりがおくれる要因の一つとなり、また県民生活向上に阻害をもたらしているところであります。
 この地価問題については、近年の東京都心部に端を発した地価高騰により、その対策の一つとして、国において昭和六十二年、国土利用計画法の一部を改正し、従来の届け出対象面積を引き下げる監視区域制度を設け、地価の安定を図ることとしたところであります。この制度により、現在まで三十二都府県、十一政令指定都市で監視区域の指定を行い、地価対策が講じられております。本県においても、平成元年三月一日から和歌山市の商業地域及び近隣商業地域に定められている区域を、さらに九月十六日から和歌山市、岩出町、貴志川町の全域と打田町のほぼ全域、また田辺市、白浜町の一部の区域を監視区域に指定し、地価対策を講じたことについては高く評価しているものであります。
 最近、国土庁が発表した都道府県で行っている地価調査結果が各新聞に報道されましたが、それを見ますと、七月一日時点の対前年変動率は、東京都、神奈川県では住宅地、商業地ともマイナスに転じるなど東京圏では頭打ちの傾向を見せた中で、大阪圏では、住宅地で三七・三%、商業地でも三六・一%と、昨年に続く高い上昇率となっております。特に、関西文化学術研究都市や関西国際空港などの大プロジェクトが進む京都府、奈良県、また大阪府では東大阪、南大阪地域の地価高騰がひときわ目立っている中、大阪府では、七月一日、監視区域の拡大及び面積基準の引き下げにより制度の強化を実施したところであります。これらの地価高騰により、和泉山脈を越えて紀北地域全体への波及は現実のものとなってあらわれています。
 県内の地価調査結果でも、和歌山市や那賀郡では一〇%以上の上昇の地点も見られ、橋本、伊都地方においても最高変動率は、橋本市で七・五%、かつらぎ町でも八・五%、高野口町では八・三%と、国道二十四号線沿いで上昇が見られております。したがって、地価が急騰してから監視区域を指定しても遅過ぎるので、国土利用計画法にも監視区域の指定条件として「地価が急激に上昇し、また上昇するおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域」となっております。これから考え合わせますと、橋本、伊都地方は地価上昇の動きがあること、及び京奈和自動車道橋本道路と国道三百七十一号バイパスが本年四月二十一日に都市計画決定されたこと、また南海電鉄を初め民間投資による宅地開発等が進められていることからすれば、今回、監視区域を指定した区域とともに、今後、橋本、伊都地方並びに那賀地方全域にも地価の上昇が急激に及んでくるのではないかと考えられます。当然、直ちに監視区域に指定すべきであったと考えますが、なぜ指定しなかったのか。いつも行政が後追いになるように思えてなりません。
 そこで、企画部長に質問いたします。
 橋本、伊都、那賀地方全域の監視区域の指定について、県はどのように対応するのか、御答弁をお願いいたします。
 次に、和歌山地方裁判所及び家庭裁判所妙寺支部存置についてお願いいたしたいと存じます。
 本問題に対して、関係市町村長及び各市町村議長より知事に陳情書、議会議長に請願書が提出されております。最高裁判所は、法曹三者協議会に地裁・家裁の統廃合の方向を提起し、その中に妙寺支部も含まれているということであります。
 最近、紀北地方、特に橋本市内において大規模な住宅団地の開発が進み、人口の増加が顕著であり、広域営農道路周辺への大阪資本による土地買収、さらにまた三百七十一号線、京奈和橋本道路の進展に伴い、ますますその傾向が急速に促進されつつある現在、地域住民の裁判を受ける権利を保障し、身近で親しみやすい司法サービスの場を「統廃合」という名のもとに一方的に推し進めることはもってのほかであります。和歌山弁護士会、近畿弁護士会連合会の弁護士全員、全司法労働組合も、これが統廃合に強く反対しております。
 仮谷知事、こうした地域住民こぞって地裁・家裁の存続の必要性を強く要望している現状について御所見を承りたいと存じます。
 次いでリゾートの推進について、二点質問いたしたいと思います。
 一点目、和歌山マリーナシティ開発規模の拡大についてであります。
 知事説明要旨を見ると、「西ドイツで訪れた国際的なリゾート地・バーデンバーデンでは、温泉資源を単に保養の場だけではなく多面的に活用し、周辺の自然と調和のとれた開発が行われている現状を見、またフランスで訪れたサン・シプリアンはマリーナを中心とした開発が行われている地域であり、和歌山マリーナシティ事業を推進している本県にとりましても非常に参考になる」とのことであります。
 去る九月二十一日に開かれた田辺市議会の田辺湾リゾート開発調査特別委員会で、総合商社丸紅の、リゾート基地建設の大幅拡充、その事業費二千億という夢のようなマスタープランが発表されました。
 詳細は省かしていただきますが、現在、松下興産と進めている和歌山マリーナシティ計画を可能な限り周辺に及ぼし、その規模の拡大をする考えはないか。すなわち、和歌浦全体構想の再検討であります。
 二点目、霊峰高野山を中心として、仏教と森林を併合した観光開発について質問いたします。
 関西国際空港開港に呼応すべく、三百七十一号線と京奈和橋本道路の促進が着々と進んでおります。こうした観点から、リゾート適地は海岸地帯だけではなく、世界的な仏教のメッカ・高野山と広大な森林地帯の自然環境を保全しながら、高野龍神スカイライン周辺、有田川上流の過疎化の激しい花園村をも含め、密教高野山大森林自然リゾート開発に取り組むお考えはありませんか。
 丸紅の田辺湾リゾート開発プラス白浜温泉、南紀白浜空港整備、高野山上へのヘリポート基地建設、これらを長期展望でとらえ、有機的な線で結合すれば、他府県ではまねのできない、世界でも類のない理想的な大自然リゾート地帯が生まれるのであります。いかがなものでしょうか、御高見を承りたいと思います。
 次いで、農林水産部に質問いたします。
 紀の川左岸基幹農道について、昨年、きょうと全く同月同日質問いたし、推進調査費三百万円が計上されましたが、あれから一年経過した今日、調査がどこまで進んでいるのか、御報告を承りたいのであります。
 次に、土木部に質問いたしたいと思います。国道昇格の見通しについてであります。
 特に紀北地方の地域開発と振興は大いに期待されておりますが、一、泉大津粉河線、那賀高野線、二、和歌山北部臨海田園都市線、三、有田湯浅線、有田高野線について、国の方ではいまだはっきりしていないとの昨年の御答弁でございましたけれども、今なおそのようなままでございましょうか。もし見通しがありましたら御報告願いたいのであります。
 次いで、商工労働部に御質問申し上げます。
 一点目、パイル織物の整理加工から発生するアクリル等のくず綿の処理についてであります。
 厳しい経済環境のあらしの中で、紀州繊維工業協同組合傘下の製造業者は、ひたすら企業の存亡をかけて日夜、合理化や新商品開発、販路開拓、販売促進等に頑張っておりますけれども、整理加工中に生ずるシャーリングのくず綿について、従来は泉州方面の専門業者が一定の料金で回収処分してくれておりましたが、本年度中ごろより、どのような理由か、全面回収中止、さもなくば極めて高い値上げを要求しております。また町営の焼却場も、高熱のため敬遠されております。
 御承知のごとく、くず綿が回収処理できなくなると、パイル織物業者、整理加工業者等々、たちまち操業に影響してまいります。こうした現状を御推察いただき、県関係部局、町当局並びに組合役員と善後策について協議していただきたく、要望いたす次第でございます。特に、いつも御高配いただいておりますことを感謝申し上げながら、切にお願いするものであります。
 二点目、県工業技術センターについてであります。
 四月一日、県工業試験場が「和歌山県工業技術センター」と改称され、何となくモダンな名称になりました。さらに、新任の横山所長は東京大学を卒業された優秀な方であります。かつまた従来からの技術職員も、他府県に劣らざる人材がそろっているようであります。しかし、悲しいかな、他府県に比べて建物は古く、設備機器も不十分と聞いております。
 ちなみに、この建物は、仮谷知事が若かりし経済部長時代に建設されたと聞いております。まあ、知事さんは今も若々しゅうございますけれども、さらにそれより若かったということでございます。
 昨年、前任の花岡部長は、施設設備については従来からも最新鋭機器の導入を図るなど充実に努めているところであるが、今後、時代に即応した施設、さらに研究体制もあわせ、そのあり方について検討していきたいと答弁されました。あれから丸一年、現在、横山所長という立派な研究者が就任されました。
 この際、建物の全面的改築を行い、施設設備も近代的なものにし、地場産業の育成強化と振興に寄与するお考えありやなしや、御所見を承りたいのであります。去年の花岡部長とよく似たような答弁はひとつ堪忍してもらいたいと思います。
 さて、最後になりましたが、教育長に「三ない運動」について質問いたします。
 文部省は、最近、騒音をまき散らし、無謀運転から事故の絶えない若者のオートバイ対策として、高校生に二輪車教育を実施する方針を固めました。「免許を取らない」「二輪車を持たない」「運転しない」という時代逆行の高校生への交通安全対策が逆に無免許運転を生む原因となり、政府の交通対策本部の調査では、昨年の交通事故死亡者数中、十六歳から十八歳までの高校生では千百六十五人、前年比六十七人増という厳しい結果が出ております。
 本年度より八月十九日は「バイクの日」と定め、文部省は特に工業高校の教育の中に二輪車の運転免許取得への試みとして全国的にモデル校を設置し、実技は最寄りの公安委員会指定校に委託するやに聞いております。本県においても、この実験校の指定を受けるお考えはありませんか。また、三ない運動の是非について御答弁いただきたいと思います。私は文教委員でございますので、教育長、再質問はいたしません。
 以上で、第一回目の私の質問を終わらせていただきますが、豊かな文化、健康、産業発展の和歌山創生のために、仮谷知事、西口副知事、梅田出納長、市川公室長、職員各位のさらなる御努力を心からお願い申し上げる次第であります。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(門 三佐博君) ただいまの阪部菊雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 阪部議員にお答え申し上げます。
 和歌山地裁・家裁支部の統廃合問題についてでございますが、全国で五十八支部の統廃合について現在検討がなされており、その中に和歌山地方裁判所の支部も対象とされてございます。
 この統廃合は国の組織の問題でございますけれども、地域の実情や県民生活への影響があると考えられますので、そうした意向を十分関係機関に伝えてまいりたいと思っておる次第でございます。
 他の問題は、関係部長から答弁いたします。
○議長(門 三佐博君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず、地価対策についてお答えを申し上げます。
 監視区域についての御質問でございますが、監視区域の指定に当たりましては、その地域の地価動向、土地取引及び全国の地価動向、社会状況を総合的に判断して指定することとなってございます。
 県におきましても、地価公示や地価調査はもとより、特に県単独事業でも地価動向の把握に努めているところでございまして、地価上昇の兆しが見られ、今後も上昇するおそれのある和歌山市の一部をことしの三月一日から、また和歌山市全域を初め二市四町については九月十六日から、それぞれ監視区域に指定いたしたところでございます。
 監視区域に指定されると届け出対象面積が引き下げられ、従来よりも小規模な土地取引についても届け出が必要となり、価格及び利用目的を審査することになります。
 議員御指摘の地域につきましても、一部で地価は強含みの傾向も見られますので、今後とも地価動向調査等を実施しつつ地価の動向や推移を把握しながら、地価対策についてはお話の趣旨を十分心して的確に対応してまいりたいと考えてございます。
 次に、リゾート推進についての二点の御質問にお答えを申し上げます。
 第一点は、和歌山マリーナシティ構想拡大についてでございます。
 和歌浦湾地区は、燦黒潮リゾート構想において重点的に整備する地区として、現在、国の関係省庁と協議を行っているところでございます。この地域におきましては、和歌山マリーナシティの充実はもちろんのこと、和歌浦湾の自然資源、歴史・文化資源を生かしながら、周辺内陸部でのスポーツ・レクリエーション施設等の整備とあわせて、一体的に整備してまいりたいと考えてございます。
 また、和歌浦湾周辺には黒江漆器を初めとする伝統地場産業並びに既存の観光産業がございますので、地域関連産業との連携を図りながらリゾート整備を進めることとして、幅広い利用者層にこたえられる機能の拡充を図っていく必要があると考えてございます。
 第二点は、高野山を中心とした観光開発についてでございます。
 議員御指摘のとおり、霊場高野山を中心とした内陸地域には日本有数の歴史・宗教文化、豊かな森林と個性ある温泉など特色ある資源が多く、これらについては、海岸部とともに本県の持つ貴重なリゾート資源であり、本県のリゾート整備を展望する上で必要不可欠な要素であると認識をいたしてございます。
 昭和六十三年三月に策定をした和歌山県リゾート開発基本構想におきまして、海洋型や都市近郊型リゾートゾーンの形成とともに、高野から龍神を経て熊野に至る一帯の地域を自然体験と心身のリフレッシュを目指した山岳・高原型リゾートゾーンとして形成を図ることといたしてございます。
 内陸部の資源を活用したリゾートと海洋型リゾートとの連携を図るとともに、地元市町村等の理解と協力を得ながら、多様な余暇活動にも対応できるリゾート空間の創出に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 紀の川左岸の基幹農道の問題でございます。
 この農道につきましては、各方面の強い御要望により、昭和六十三年度から調査を実施いたしておるところでございます。昨年度は、紀の川広域農道と受益地の関連、路線計画、現況輸送体系、周辺営農状況、地質調査等、事業推進に必要な基礎的調査を実施いたしたところでございます。本年度は、この調査結果を踏まえ、現在施工中の紀の川広域農道について、受益地を右岸、左岸に分離して事業効果の見直しを行う必要がございます。さらに、計画農道の効果測定や交通量調査、概略設計等を継続実施するとともに、国や関係市町村とも協議をしながら、事業採択に向けて検討を進めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 土木部長磯村幹夫君。
 〔磯村幹夫君、登壇〕
○土木部長(磯村幹夫君) お答えいたします。
 国道昇格の見通しについてでございます。
 一般国道の昇格につきましては、最近では、昭和五十七年の四月に追加指定が行われております。建設省においては、本年の秋以降、県等に調査指示を行って具体的な検討を開始し、第十次道路整備五カ年計画期間の昭和六十三年度から平成四年度の間で昇格路線の選定を進める方針であると聞いております。
 現在、まだ調査指示は来ておりませんが、次回の追加指定は非常に厳しい状況にあると聞いております。
 御質問の路線は本県の重要な骨格路線でありますので、今後、時期を見ながら国に対して要望してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 商工労働部長天谷一郎君。
 〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) パイル織物の整理加工から発生するアクリル等のくず綿の処理についてでございます。
 産業廃棄物につきましては、企業が処理することが基本でございますが、近年、地場産業の製造過程で排出される廃棄物の処理の問題は重要な課題となってきてございます。
 御要望の件につきましては、産地組合、関係市町村ともども、関係部局と連携をとりながら問題解決に向けて協議してまいりたいと存じます。
 次に、工業技術センターの件でございます。
 地場産業の振興を図る上で技術開発力の強化が重要な課題となってきてございます。こうした中で、過去五年間で約八億円の最新鋭機器を導入するなど、設備の充実に努めてきたところでございます。
 また、去る四月一日付で組織を改正し、企業ニーズに素早く対応できる体制といたしました。
 さらに、本年度お認めいただいている予算をもとに、研究開発機能の充実、開放的施設づくり、産・官協力体制の強化を三本柱とした基本計画を現在策定中でございます。
 今後は、この基本計画に基づき、研究棟や研究開発設備の拡充整備に取り組んでまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 教育長高垣修三君。
 〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 高校生に対する三ない運動についてお答えを申し上げます。
 いわゆる三ない運動につきましては、県高等学校PTA連合会の要請もあり、関係機関、関係団体等の御協力をいただき、昭和五十五年にこの制度を実施いたしたわけでございます。その結果、本県の高校生の二輪車による交通事故の発生件数は減少し、一定の成果をおさめたところでございます。しかしながら、全国的な傾向として、若年層の二輪車による交通事故死が増加をしている現状にかんがみ、文部省では来年度から高校生二輪車運転教育に関する調査研究を行う予定であると聞いてございます。
 議員御提言の、いわゆる実験校の受け入れにつきましては、今後、国におけるその計画の動向を踏まえながら慎重に対処してまいりたいと考えてございます。
 また、三ない運動の是非についてでございますが、生命を尊重することは学校教育の基本であるという観点から、本県においては、三ない運動はなお当分の間必要であると考えてございます。
 今後、文部省の研究成果や他府県の状況を見守りながら、よりよいあり方について関係機関、団体と協議をいたし、高等学校における交通安全教育の一層の充実に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(門 三佐博君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 9番阪部菊雄君。
○阪部菊雄君 知事さんの方から、地裁・家裁妙寺支部の存置について、関係機関へ十分働きかけるというお話をちょうだいいたしまして、大変うれしく思うわけでございます。当県では、その対象が妙寺支部と御坊支部になっておりますので、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。
 続いて、企画部長から御答弁いただきましたが、現状では、橋本、伊都、那賀地方は、大阪の不動産業者が大変いい値でどんどん買収いたしております。変動率以上の急騰が続いており、昨年から見ますると、一〇〇%も二〇〇%も上昇したところがあるというのが現実でございます。私も二年前までは宅建業者でしたので、こういう事情はよく知っております。御答弁のような、ちょっとぬるいふろに入っているようでは悔いを千載に残すのではないかと思うわけでございます。県も、関係町村の公共事業については、こうした急騰によりなかなかうまくいかず、水泡に帰すおそれもあると思いますので、この点、強く指摘いたしておきたいと思います。
 お話し申し上げましたように、橋本、伊都、那賀全域の監視区域の指定を、年内または遅くとも来年二月議会までにやっていただくよう要望いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
 どうもありがとうございました。
○議長(門 三佐博君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で阪部菊雄君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
○議長(門 三佐博君) この際、暫時休憩いたします。
 午前十一時二十八分休憩
 ──────────────────── 
 午後一時八分再開
○副議長(宗 正彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番森本明雄君。
 〔森本明雄君、登壇〕(拍手)
○森本明雄君 順次、質問を進めてまいります。
 大阪国際空港の廃止と全体構想早期実現について質問をいたします。
 十日ほど前、県関空全体計画促進協議会で記念講演された同志社大・榊原教授の原稿をもらい、勉強させていただきました。その中で、全体構想と一期工事の収支採算性の比較、使用料すなわち公租公課の問題、空港能力の問題について、私の考えと共通点がございました。
 なお、先日来、同じ質問がございましたので、収支採算性を主とした観点から、私の意見を交えながら質問を進めてまいりたいと思います。
 大阪国際空港存廃決定まであと一年半、存廃をめぐり、和歌山県にとっていよいよ正念場を迎えました。
 御承知のごとく、航空審の第一次答申に、「新しい空港は大阪国際空港の廃止を前提として、同空港の機能をかわって受け持つ能力のあるもの」と明記されています。この答申に対して種々見解のあることは承知しております。
 例えば運輸省の山本元航空局長は、「廃止すべきであるという意見を運輸大臣に具申をした、こういうものではないというふうに理解をいたしております。これは、新空港の計画につきまして、伊丹空港の廃止ということがあったとしても、それを受け入れるだけの十分な空港、こういう意味でございます」という廃止否定論であります。さらに、「この存廃問題についての手続は、地元との約束事がある。我々といたしましては、その約束事は誠意を持って守っていかねばならない」。その約束事とは、「空港を廃止せよという強い意見が昭和四十年代に地元から出された。そういった時代の動きを受け、公害等調整委員会に対して、伊丹周辺住民の方々が中心になって『廃止せよ』という調停申請があり、対して調停条項として運輸省は、関空の建設が決定された後、速やかに諸般の調査を行い、調査結果を開示し、かつ地方公共団体等の意見も十分聴取して空港の存廃問題を決めるべきである」。つまり運輸省は、大阪国際空港の存廃は地元の意向に沿った決定をする方針であります。
 そこで、大阪国際空港が存続した場合、関空の立地条件が国内航空需要に与える影響、路線選びへの影響などを想定してみました。
 例えば、アメリカのワシントンナショナル空港は狭隘で、大阪国際空港と同様の条件下にあり、都市から四十キロ離れたところにダレス空港を建設いたしましたが、実績はよくありません。カナダのモントリオールにおいても、ドルバル空港が狭いということで都心から五十三キロ離れたところに新空港を建設しましたが、前者同様で実績は上がりません。関空は大阪の中心より四十四キロ、それに対して大阪空港は十七キロ、立地条件は著しく不利であります。
 空港が新しく設置されるその場所によって、既存の空港から利用者までの距離が変わります。そのことによって、便のよいところ、不便のところが出てくるのは避けられません。それに応じて、需要という面にプラスの要素とマイナスの要素として影響が出ることは事実であります。
 現在、大阪空港の航空需要の六九%が国内便であり、その乗客の大半は京阪神及び大阪北部であります。果たして、近距離の大阪空港を越えて遠距離の関空まで足を運ぶだろうか。このように、国内便の立地条件で関空は大阪空港より大きなハンディを背負うことになります。
 次に、二十一世紀を展望しての航空需要や運輸省が関空開港までに出してくるであろう航空需要予測は別といたしまして、現段階での関西における航空需要予測は、平成五年の地点で国際線九百万人であります。
 大阪空港の利用状況の中で国際線の乗降客数は、六十二年一四%、六十三年一一%と二年連続で対前年比二けたの伸びで、本年も二けたは確実であります。今後、外国との行き来がますます盛んになるであろうし、潜在需要が関空開港による顕在化を予想した場合、十分見込める数字であります。
 国内線の乗降客数については、五十九年より六十三年までの四年間で一千四百三十万九十九人より一千五百三十六万九千五百四十六人、百六万九千四百四十七人の増加で、伸び率七%。国が予測した平成五年での二千五百万人には約九百六十万人不足で、この達成には、今後、毎年対前年比一〇%強の伸びが必要となります。
 立地条件や今後の国内景気の動向、新幹線の時間短縮計画など勘案した場合、潜在需要が顕在化しても少々無理があるのではないかと考えるのですが、この予測に狂いが生じた場合、下方修正した場合、大阪空港の収支採算上、関空での減便が考えられます。
 また、空港の立地条件によって就航する路線、機材を勘案して路線選びがされるのではないか。すなわち、長距離路線は重量の関係で騒音の被害が大きいこと、アクセスがもたらす需要への影響度が少ないこと、そういった観点から、国内線においては主要路線の少数が関空に就航するとしても、短距離路線は大阪空港、長距離路線は関空と、範囲を分けてくる可能性はあります。そのようになれば路線が制限され、利用者の需要にこたえることのできない空港となります。
 以上、述べましたように、大阪空港存続は関空を不完全空港にするおそれがあります。
 こうして考えてみますと、航空審の答申、関空会社法案を審議した国会での政府答弁、六十一年十二月に運輸省が発表した立地条件が需要に与える影響度を骨子とした一回目の中間報告、大阪空港存続の経済効果を大とする二回目の報告、さらに江藤運輸大臣の大阪空港存続示唆、空港周辺の自治体の方針変更など、いずれも運輸省としては従来の考え方の延長線上にあるものであり、その影響を受けて追従したものと思われ、運輸省としては大阪空港存続は一次答申当初からの意図とするところであります。
 大阪空港は一次答申に基づいて対応すべきだと答申を頼りとする和歌山県に存続の包囲網を敷き、攻撃を仕掛けてくる一連の動きをどのように受けとめ、どう対処されようとしているのか。決意とあわせてお伺いいたします。
 なお、前段申し上げました私の意見に対する所見もお伺いいたします。
 関空建設問題を審議した国会に参考人として出席した大阪市立大学の川島名誉教授は、「万一この第一期計画だけで終わるといたしますと、新しい空港の建設も、また不完全な空港を一つつけ加えることになりかねない─中略─二十四時間稼働という、この空港の性格を考慮に入れますと、引き続いて第二期以後の計画の早急な実行がぜひとも必要と思われます」と意見陳述しています。
 当時の運輸省山本元航空局長は、「私たちは、これはあくまで第一期工事だと、こう考えておるわけでございます。航空審議会で答申された全体構想は忘れていません。この構想の中の一部をできるだけ早く完成させて供用を開始する、こういう思想の上に成り立っておるわけでございます」と答弁し、一期工事だけでは不完全な空港であり、全体構想実現の重要さを指摘しています。
 国は、全体構想の検討基礎調査費を本年度も昨年度に引き続いて予算化いたしましたが、関空会社の平成二年度政府予算概算要求によると、過去二年度と同名目。三年連続調査対象は、実質、採算がとれるかどうかであります。
 航空審の答申に、「将来の航空需要予測というものは極めて困難である」と申しております。であるならば、経営の将来予測もまた困難でありますが、若干、一期工事での収支採算面に触れてみたいと思います。
 一つには国の能力に対して投資が過大であること、二つ目には非償却資産の総事業費に占める比率が高いことが言えます。通常の会社の場合、非償却資産が多額の場合は資本金を大きくして全額を補いますが、空港会社は借入金で補っています。そのため、空港会社は利益が非償却資産額に達するまで課税対象としない措置がとられるようですが、非償却資産四〇%は、いかにも非効率であると思います。
 空港の大きな財源に使用料があります。しかし日本の空港の現状では、空港使用料を中心として、公租公課のすべては限界に来ていると言われています。増収を図るための値上げ等での対応には困難な制約があります。しかも、全体構想は一期工事に比べて安全性の確保は増しても、収支採算面では、事業費に比較して受け入れ能力の増加が小さいため有利な結果は予測できません。
 また、収支採算面での前提に航空需要があります。その航空需要も、長期的に見て国内乗降客の伸び率は鈍ると予測されています。しかも会社は、単独の黒字は開業後五年、配当開始は九年後と約束されています。その上、大阪空港の存続となれば、大阪空港は一日国内便二百便のジェット機が就航するという輸送需要想定のもとに収支採算性を計算している関係上、関空の国内便はオーバーした便数しか就航しないことになり、廃止問題の項で述べたとおり、当初計画より減便が予想されます。
 さらに、開港時の発着回数を十万回としていることであります。空港の能力というものは、滑走路の受け入れ能力とターミナルの受け入れ能力とが関係して、そのいずれか小さい方に制約されます。理論的には、滑走路一本の能力として十六万回は可能だと思います。会社は、土地利用、施設計画などの変更は行いますが、しかし十六万回を維持するため、ターミナル面積約二百ヘクタールでは機能面、安全面から狭小だと思います。
 運輸省では、旅客あるいは貨物の輸送機能に与える影響から、オープンする時期のものとしてはこの程度でやむを得ないと判断したのでしょうか。これでは、現在運輸省が示している航空需要予測と同省の「伊丹空港の廃止ということがあっても、それを受け入れるだけの空港」という一次答申の判断が著しく整合性を欠くものとなります。と同時に、収支採算性に大きな影響を与えるものであります。
 そうした意味で、不完全空港の建設を進めながら、何ゆえ採算性のみ重視するのか。株式会社に踏み切ったのは、一つには早期完成、二つには資金面、三つ目には民間活力、四つ目には、民間事業の場合、附帯事業等運営面での効率がよいなどの理由からであります。採算性を第一に考えるのならば、大阪空港を廃止することであります。そうすれば、需要はすべて関空に移ります。収支採算上、有利な結果になることは明らかであります。
 経営面で悪い面が出た場合、経営努力を通じて適切な対応を図っていくのが第一義的に必要であります。しかし、事業そのものが第一種空港の建設、運営ということであります。この空港の建設、運営については、国が責任を持ち、地方公共団体や民間の協力を得てやる、すなわち国が基本的には責任を持って会社を支援していく姿勢が必要であります。第一次答申の「我が国が対外的に負う義務さえも履行できず、国際信義上の問題が生じている」という指摘をどう受けとめているのか、考えてみたくもなります。
 以上、るる意見を述べましたが、もし関空は一期工事で終わりとするならば、すべての面で不完全空港となり、和歌山県にとって、その持てる便益を享受したとしても不満足な結果とならざるを得ません。
 関西復権をかけての二眼レフ構造の実現や均衡ある国土の発展を目指す四全総から考えれば、関西に二つの不完全国際空港が存在することの意味もないことはないですが、関空の全体構想実現に未来をかける和歌山県のためには、大阪空港廃止、全体構想の早期実現こそが関空の持つ高度の機能を活用し、そのもたらす便益を享受して活性化につなげ、それが均衡ある国土の発展につながるものと考えるのであります。
 来年度予算で全体構想着工を確実にする予算の確保と六空整への全体構想組み入れ実現のため、全力を挙げて取り組まねばなりませんが、決意並びに所見をお伺いいたします。
 次に環境問題でございますが、TPT、TBTについてであります。
 有害性があり、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律でも指定化学物質となっている劇物TPTが、毎日の食卓に上がる魚の八〇%までを汚染していました。これは、七月、環境庁が発表した調査結果で明らかになったものであります。
 同庁が昨年初めて全国規模の調査を行ったところ、水質四十地区中三十地区、百十九検体中七十三検体、底質四十五地区中三十七地区、百二十九検体中九十九検体、魚類四十五地区中四十一地区、百四十四検体中百十八検体という高い率でTPTが検出されました。
 検出率で最も高かった魚類は、汚染度も際立っています。平均値が水質で〇・〇〇〇〇一五ppm、底質で〇・〇四八ppmなのに対して、魚類は〇・三九ppmであります。その中で、紀の川河口地点では、水質検体三で検出一、底質検体三で検出三、魚類検体三で検出三。特に魚類ではスズキから最低値一・四ppm、最高値一・六ppmのTPTが検出されています。これは、WHOが定めている一日摂取許容量〇・二八ppmの五・七倍の高濃度であります。
 環境庁は、TPT汚染が広域的で検出濃度も高い点を重視し、現時点で直ちに人の健康に問題を生じるとは考えられないとしながらも、現在の汚染の程度が長期にわたって継続するならば、将来、影響を及ぼす可能性があると結論づけております。
 TPTは、TBTと同じく二十年ほど前から製造され、かつては防腐、防カビの目的で家庭用品にも使用されていましたが、有害物質として昭和五十四年以降使用されていません。しかしこれまで、その効力から、養殖魚生けす用網や船底塗料に使用されていました。このうち網については汚染が問題となり、全国漁業協同組合連合会が一昨年から使用を自粛しましたが、船底塗料については使用されてきました。このため、国は関係業界に対し、TPTを含んだ船底塗料の使用自粛を要請しました。日本塗料工業会によると、TPTは汚染が問題になったことから現在生産を中止していますが、大量に使用されているTBTを生かすために、大きな痛手にならないTPTを殺したと見る環境問題専門家もいます。
 TBTもTPTと同様、有機すず化合物で有害性があり、やはり指定化学物質であります。環境庁は、魚介類への汚染が次第に拡大していることを公表してきました。
 また、東京都が行った調査では、都中央卸売市場に昨年初めまでの三年間に入荷された魚介類のうち、魚網使用養殖魚の九八・八%、天然ものの内湾産近海魚の七四・三%、沖合深海産の六二・六%に、〇・〇一ppmから、最高一・一九ppmのTBTOが検出されています。
 以下、質問を行ってまいります。
 一つ目に、TPT、TBTなど毒性が確認された物質は、今後、法に基づく規制をする必要があると思いますが、その見解について。
 二つ目に、御承知のようにTPTは難分解性であることから、中央公害対策審議会の化学物質専門委員会は「現在の汚染の程度が長期に続けば、将来、人体に影響を及ぼす可能性あり」と結論づけていますが、和歌山県の海は豊かな自然資源であります。その海が有害化学物質に汚染され、それが海水や海底、さらに魚類にまで及んできたとしたら、貴重な資源を失うことになりかねません。今後、県独自の調査と対策が必要と思いますが、どうか。
 三つ目に、環境庁の調査により、水質、底質、魚類に対するTPT汚染は全国規模に拡大しつつあることが明らかになりましたが、和歌山県の沿海、近海におけるTPTの汚染実態について。
 四つ目、御承知のようにTPTは汚水の付着防止や殺菌にすぐれた効力を発揮することから、海藻や貝類の付着防止のために養殖魚生けす用網、船底塗料に使用されてきましたが、県内関係業界における今日までの使用実態について。
 五つ目、TBTはTPTと同じく有機すず化合物の一種であり、その効力や使用方法も同じであります。いずれも有害性があり、TPTは長期的に摂取すると、成長阻害のほか、リンパ球や白血球の減少などが起こるのに対し、TBTも長期摂取すると中枢神経に影響を及ぼし、歩行障害や呼吸困難をもたらすおそれがあります。運輸省によると、TPT含有の船底塗料生産量二千三百トンに対してTBTは七千二百トンと、三倍以上も生産されています。しかし、通産省も運輸省も一様に、TBT汚染は深刻な状況にないと言っていますが、その見解について。
 以上、五点についてお伺いをいたします。
 次に、リゾート問題についてでございます。
 今、日本は空前のリゾートブームであります。その要因は、まず自由時間の増大などを背景とした国民のレジャー、リゾート志向が挙げられます。また地域振興の手段として、地方自治体が積極的に取り組んでいるところであります。さらに、内需振興であります。内需主導型経済への転換策は今後とも日本にとって重要な施策でありますが、リゾート振興は、この点で国の施策に合致しています。
 このように、リゾートブームは、民間、地方、そして国の要請に支えられたものであり、それだけに期待も大きいのであります。
 きっかけは、昭和六十二年に制定されたリゾート法であり、本格的な余暇時代の受け皿づくりとレジャー産業の導入による地域おこしのため、大半の都道府県がリゾート開発の計画に取り組んでいます。
 既に、福島、三重を初め北海道、兵庫など十七の開発構想が承認され、着工段階に入っています。また、承認待ちや申請のため調査を進めているところが十九あります。
 和歌山県では、県経済の活性化と本格的なリゾート時代に先駆け、加太・紀泉地区、和歌浦湾地区、田辺・白浜地区、勝浦・太地地区、西有田・白崎地区、枯木灘地区、潮岬地区の七カ所を重点整備地区などに設定した燦黒潮リゾート構想をまとめました。既に、和歌浦湾地区では松下興産、田辺・白浜地区では丸紅、東急不動産の進出が予定されています。和歌山県にも、今後、リゾート基地が大規模に形成・整備され、また基地周辺に大自然と調和のとれたリゾート基地が形成されますと、生活をエンジョイすると同時に、一つの大きなゆとりのある生活環境ができ上がります。その良好な生活環境を目当てに人材集積のハイテク産業が立地される可能性もあります。そのことが地域経済の活性化となり、雇用の確保につながっていく有力な戦略の一つとしてこのリゾートが位置づけられるであろうし、また効果を発揮すると期待するものであります。
 したがって、すべての重点整備地区に、今までの観光とかいうものの延長線上ではない、新しい観念のもとに、大規模、多角的、複合的かつ個性的、自然と調和のとれた滞在型基地の実現を願うのでありますが、所見をお伺いします。
 次に、リゾート法に基づく国の承認であります。
 現在、関係六省庁とのヒアリング中だと思いますが、本年中に基本構想の承認申請、本年度中に承認という当初のスケジュールに変更はないのか、お伺いします。
 承認を得るためには多くの条件整備が必要であります。そのため格段の努力をされている当局に敬意を表します。課題は、交通条件、民間の進出、地価問題、用地取得が考えられます。これらの条件整備の進展状況から見て、承認スケジュールは変更必至と考えます。当局はこのスケジュールに変更がないとするならば、交通条件の整備について、将来は別として、当面期待はできないので保留するとして、七地区への民間進出、地価急上昇抑制のため未指定地区への監視区域の指定、用地取得の見通しなど、現時点でそれ相当の進展があるものと判断しますが、現況と今後の対応についてお伺いします。
 次に、高齢者問題であります。
 日本は「経済は一流、政治は三流」と言われていますが、では福祉はどうだろうか。厚生省の特別研究班が公表した高齢化社会に関する国際比較報告書を見ると、欧米に比べると日本の福祉はまだ三流以下ではないかといった思いを禁じ得ないのであります。
 同報告書によると、我が国で「寝たきり」と称される在宅高齢者の割合は欧米に比べて三ないし六倍も高く、また特養ホームや病院に入っている高齢者、常に寝たままの割合も、スウェーデン四・二%、デンマーク四・五%、アメリカ六・五%に対し、日本は三三・八%に上っています。日本よりずっと早く高齢化の進んだ欧米諸国と日本とで、どうしてこんなに大きな違いがあるのだろうか。その原因は、介護に対する根本的な考え方の違いにあると言われています。
 我が国では、病に倒れた高齢者を寝かせたきりにし、病人の口元まで食事を運び、おむつをかえてあげるのが介護だと思われてきましたが、欧米では、老人の自立を助けるという認識に立って、末期の患者以外は老人の生活能力や運動能力の回復を最優先させる介護の考え方が定着をしています。したがって、「寝たきり老人」という言葉は、北欧の福祉先進国では既に死語になっています。
 デンマークでは、二十年前には寝たきり老人がまだ多かったと言います。「水平の人」と呼ばれて、今は口しか動かない人でも電動車いすで動き回っていると言います。何がそう変えたのだろうか。一つは、一九六〇年代に始まった補助器具の無料貸し付けであります。公立補助器具センターには、栓抜きから電動車いす、リフト、各種おむつまで、知恵の限りを尽くした二、三千種の小道具、大道具がそろっていると言います。それらを一人一人に合わせて選んだり、つくりかえたりすると、昔なら「水平」のままだった人が魔法にでもかかったように楽に動けるようになると言います。
 では、老人介護後進国日本が欧米先進国に追いつくためには何が必要なのだろうか。介護の思想の転換を柱として、それを可能にする思い切った保健・福祉・医療体制の抜本的整備であります。
 厚生省の報告書では、欧米型の老人医療や福祉施策を進めれば、十六万人もの我が国の常に寝たきり老人の数を二、三万人にまで減らせるとしていますが、そのためには、何よりも「福祉の日常化」の理念に基づく総合的かつ計画的な取り組みが肝要であります。
 「福祉の日常化」は北欧などで始められ、実現されつつある理念であります。障害を持つことを異常なことと見ずに、老人、障害者、子供、妊婦など社会的不利を負う人々を当然に包含するのが通常の社会であるとの考え方に立ち、家庭や地域であるがままの姿で他の人々と同等の権利を享受できる社会の構築を目指しています。いわば「救貧的福祉」と言われてきた一世紀前型の我が国の福祉のあり方に転換を迫るものであります。
 老人を寝かせたきりにしないための課題は山積しています。まず緊急課題としては、在宅福祉の三本柱と言われるホームヘルパー、ショートステイ、デイ・サービスの充実が挙げられます。政府は、三本柱の四倍増プランを十年から三年に短縮しました。本県も国の施策に沿ってホームヘルパーの増員が計画されています。しかし、日本の人口当たりのホームヘルパー数は、ノルウェーの五十二分の一、スウェーデンの四十四分の一という現状であります。続いてさらに大幅に拡充しなければ、訓練を受けたホームヘルパーの助けが前提になければ、在宅看護を言っても何ら進みません。寝かせたきりにすれば体が固まってしまうのは確か。しかし、ホームヘルパーも看護婦も少ない日本では、そうしないと家族も看護婦も倒れてしまいます。これが実情であります。一気に福祉先進国並みは無理にしても、お年寄りや家族の状況に合わせて週何回、何時間というミニマムを策定し、それを目標に体制づくりを進める必要があると思いますが、対策についてお伺いします。
 老人が朝から晩までベッドの上で生活するのではなく、車いすで暮らせるようにするには、それを可能にする町づくりや住環境の整備、地域ぐるみの協力、電動いすや自助器具の貸付制度など、発想の転換が必要でありますが、所見をお伺いします。
 欧米型の政策が日本にも浸透すると、現在十六万人と言われる常に寝たきり老人は二、三万人に減少できるとの報告を受け、厚生省は全国的な寝たきり老人ゼロ作戦の展開、意識啓発を図る予定でございます。当局でも、寝たきり老人対策として、寝たきり老人ゼロ作戦に対する目標を明確にした年次基本計画を策定する必要があると思いますが、見解と今後の対応についてお伺いします。
 なお、関連して、健康で長生きしたいという願いをかなえるため、寝たきりや痴呆性老人になるのを未然に防ぐため、脱寝たきり老人を目指すため、医療・保健・福祉を一本化させた先進的な在宅ケアサポートシステムを有した予防型福祉施設を設置すべきだと思いますが、見解をお伺いします。
 厚生省は、今回の報告書に基づき、介護施策を大幅に転換する方針と聞いています。介護元年にふさわしい施策の前進として評価するにやぶさかではありませんが、国、地方を問わず、行政には社会の全システムに及ぶ改革の総合計画を持ち合わせていません。社会から寝たきり老人をなくすには新しい福祉理念と実践計画が不可欠だと思いますが、所感をお伺いいたします。
 以上で、一回目の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの森本明雄君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森本議員にお答え申し上げます。
 大阪国際空港と関西国際空港について多面的にいろいろな御意見をいただいたわけでございますけれども、私も同様に感じる点がございます。
 全国知事会の建設運輸委員長を私が務めている関係もありますけれども、この問題についても、機会あるごとに運輸省や大蔵省に本県の主張を強く申し上げているところでございます。
 御指摘ございました大阪国際空港の存廃問題は、長い経緯や地元の思惑など変遷が繰り返され、さきの運輸大臣の示唆や存廃調査の中間報告によると、存続の線が出てきております。また、きのうの関西国際空港対策特別委員会委員協議会で叱咤激励いただいた模様を副知事から承り、私も同様に、極めて厳しく受けとめているところでございます。
 本問題に関しましては、関西国際空港対策特別委員会はもとより、県議会の皆さんに格別の御支援をいただいているところでございますけれども、大阪国際空港の存廃問題と関西国際空港の国内便の確保については密接な関係がございます。この問題に対しまして、県選出の国会議員の先生方や県議会の皆さん方、市町村や経済界の皆さんの政治力を結集して、さらには共通の立場である南大阪の各自治体や経済界、また関空会社と歩調を合わせ、政府に対してより具体的な行動を推し進めてまいる決意でございます。県議会におかれましても、格別の御支援を切にお願いする次第でございます。
 また、関西国際空港の全体構想につきましては、平成三年から始まる第六次空港整備五カ年計画への組み入れのためには平成二年中が勝負の時期であると考えますので、近畿知事会はもとより、関西の政界・財界等、各界挙げての取り組みで、その実現に向けて全力を傾注してまいる決意でございます。
○副議長(宗 正彦君) 企画部長川端秀和君。
 〔川端秀和君、登壇〕
○企画部長(川端秀和君) まず、大阪国際空港の廃止と関空全体構想の実現についてお答えを申し上げます。
 基本的な問題につきましては、ただいま知事から御答弁申し上げたところでございます。
 議員御指摘のとおり、関西国際空港を取り巻く問題については種々意見がございます。関西国際空港は我が国初の国内・国際の両機能を備えた二十四時間運用のアジアの拠点空港ということで、国際化社会への対応とともに、地域社会と共存共栄する空港として位置づけられている空港でございます。
 国内便の確保につきましては、県民の利便性、県益のためにはもちろんのこと、関西国際空港会社の経営を安定させる観点からも開港の当初から多数の国内線が望まれており、また外国の航空会社からの国内便確保の要望も強いことから、関西国際空港会社自体においても希望しているところでございます。
 また、空港アクセスの利便性につきましても、関西国際空港関連施設整備大綱に基づいて鉄道、道路等の整備が進められており、近畿各府県からの時間距離も克服されるものと考えてございます。
 また、全体構想の実現につきましては、来年度予算の概算要求において検討基礎調査費が計上されてございますが、直ちに着工事業費の計上ということは厳しい状況でございます。
 今後とも、知事の答弁にもございましたように、関西国際空港を完全空港とするために、国内便の確保、全体構想の実現に取り組んでまいる所存でございます。
 次に、リゾート問題についての三点の御質問にお答え申し上げます。
 第一点は、燦黒潮リゾート構想と県活性化についてでございます。
 本県におけるリゾート構想は、議員お話しのとおり、自然との調和を前提として、多様な機能で幅広い利用者層にこたえられ、そして地域資源を活用した特色のある整備をすることを基本方針とし、それぞれの重点整備地区が多くの人々に利用され、長期滞在が可能な、魅力あるリゾート地として整備することといたしてございます。
 こうしたリゾート整備は産業構造の変化に対応した新たな地域振興策であり、地域関連産業が活性化できるばかりか、リゾート整備による快適な環境がリサーチ産業等の立地の呼び水ともなり、若者の雇用の場の拡大が図られるなど、県勢の活性化に大きく役立つものと考えているところでございます。
 第二点は、リゾート法に基づく国の承認スケジュールについてでございます。
 法に基づく基本構想の承認についてでございますが、現在、基礎調査書を提出し、関係六省庁の合同ヒアリングを受けるなど、国と協議しているところでございます。
 議員のお話にもございましたように、基本構想の承認を目指して多くの県から基礎調査書が提出され、国との協議が進められているところでございます。本県といたしましても、関係部局の協力を得ながら、できるだけ早期に承認が得られるよう最大限の努力をしているところでございます。
 最後に第三点は、残された課題に対する対策についてでございます。
 議員御指摘のとおり、リゾート整備を推進していく上で民間事業者の誘致、用地の確保とその地価の問題は大変重要な課題でございます。現在、マリーナシティ、田辺湾総合リゾート開発計画等のように民間事業者の進出が決定しているところでは、既に用地の確保が進められているところでございます。
 その他のリゾート予定地におきましては、進出協定を結ぶなど、公表のできるまでに至っていないのが現状でございますが、進出意欲のある民間事業者が多数あり、それら民間事業者との調整や新たな企業誘致を積極的に進めてございます。
 用地の取得については民間事業者が主体となって進められると考えられますが、県といたしましては、地元住民、地元関係団体等の理解と協力を得ながら、積極的にリゾート整備を進めてまいる所存でございます。
 また、監視区域の指定についてでございますが、リゾート法の承認を受けた多くの道府県では監視区域を指定してございます。本県におきましても、重点整備地区の状況等を検討して対応してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 保健環境部長尾嵜新平君。
 〔尾嵜新平君、登壇〕
○保健環境部長(尾嵜新平君) トリフェニルすず化合物並びにトリブチルすず化合物、いわゆるTPT並びにTBTについての御質問でございますが、私から、御質問のうちの四点についてお答えを申し上げます。
 まず第一に規制についての見解ということでございますが、お話もございましたように、現在、両物質とも水質汚濁防止法の規制対象物質とはなっておりません。しかしながら、国においても、直ちに人の健康に問題を生じるとは考えられないとしておりますが、今後、規制強化等、検討する考えがあるというふうに聞いております。県といたしましては、国の動向に十分注意を払ってまいる考えでございます。
 第二点の、トリフェニルすず化合物の県独自調査及び対策についてでございますが、環境庁の調査の結果、紀の川河口でトリフェニルすず化合物が検出されましたので、県においても近く水質、底質、魚類についての再調査を行うことといたしております。
 三点目のTPTの汚染実態についてでございますが、今回の環境庁の調査で初めて明らかになったものでございまして、紀の川河口付近の県独自調査の結果を踏まえ、今後検討してまいりたいと考えております。
 四つ目に、現在の汚染は深刻な状況にないとの発言に対する考え方はどうかという御質問でございますが、議員の方から御指摘もございました国の化学物質専門委員会が、現在の汚染が長期に続けば人体に影響を及ぼす可能性がある、また監視が必要であるとしている以上、県としても環境庁の指導を仰ぎながら注意深くその推移を見守ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
 農林水産部にかかわるTPT使用の実態でございます。
 魚類養殖用生けす網に使用することにつきましては、昭和六十二年二月の全国漁業協同組合連合会、また全国かん水養魚協会の使用禁止決定に伴い、県漁業協同組合連合会においても直ちに使用禁止措置をとり、県漁連内に魚網防汚剤監視委員会を設置して使用禁止の徹底を図っているところでございます。
 また、船底塗料の使用につきましても、国の指導を受け、県において昨年十一月に使用自粛等の指導を実施してまいりましたが、本年八月にはその使用を全面的に禁止するよう強く指導したところでございます。
 こういったことから、漁業関係者につきましては、TPTは使用されていないものと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 民生部長高瀬芳彦君。
 〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 高齢者の問題につきまして、五点に分けてお答えしたいと思います。
 まず、家庭におけるお年寄りの生活や家族の介護を支援するための体制づくりについてでありますが、デイ・サービス、ショートステイ及び家庭奉仕員の在宅三事業について、その重要性、緊急性にかんがみ、平成元年度から三カ年で大幅な拡充整備を図るべく九月補正予算案において所要の経費を計上しているところでございます。
 特に家庭奉仕員につきましては、お年寄りが地域の中でできるだけ自立して生活していただけるよう日常的な家事、介護サービスを提供していくという最も基本的なサービスでありますので、市町村とも十分相談しながら、今後とも量的、質的な充実に積極的に取り組んでまいる所存であります。
 さらに、これと並行して、現在設置を進めている保健・医療・福祉の専門家で構成する市町村高齢者サービス調整チームを活用し、回数や時間など、お年寄りや家族の状況に合わせて適切なサービスを提供できるよう体制づくりを進め、地域のニーズに対応した家庭奉仕員派遣体制の整備を図ってまいる所存であります。
 次に、お年寄りの自立を助けるための町づくりや地域ぐるみの協力、自助器具の貸し付けといった御提案についてでありますが、その趣旨を実現するために、施設を拠点とした地域における在宅支援体制の普及やマンパワーの確保、さらにはこうした施策を通じての地域ぐるみの協力について、今後とも積極的に対応してまいりたいと考えてございます。
 また、地域活動に参加しつつ生きがいのある生活を営むことができるよう、関係部局と相談しながら町づくりや住環境の整備などにも努めてまいりたいと考えており、現在、策定作業を進めている長寿社会対策指針の中にも位置づけたいと考えております。
 さらに、家庭介護を支援するための各種器具の貸し付けにつきましても、その普及について今後とも市町村を指導してまいる所存でございます。
 寝たきり老人ゼロ作戦についてでございますが、厚生省の平成二年度予算の概算要求において、寝たきり老人にならない国民運動の提唱や寝たきり老人の防止に関する施策の強化等を内容とする寝たきり老人予防対策の展開が計画されていると聞いてございます。県といたしましても、国の予算の推移を見守りながら、その趣旨に即した対策の具体化に向けて検討してまいりたいと考えております。
 予防型福祉施設の設置についてでありますが、在宅福祉の充実のために施設を中心とした総合的な在宅支援が重要であると考えており、そのため、現在、関係施設におけるデイ・サービス事業、ショートステイ事業の普及に努めているところであります。さらに、こうした施設における専門的知識を地域の中で生かし、施設と地域とが一体となって在宅高齢者の自立を支援していく体制をつくっていくことが重要であると考えてございます。
 現在、厚生省の平成二年度予算の概算要求において、こうした考え方に立って在宅介護支援センターの整備構想も出されていると承知しておりますので、国とも十分連携をとりながら適切な対応を図りたいと考えております。
 最後に、寝たきり老人をなくするための新しい福祉理念と実践計画が必要との御指摘についてでありますが、確かに、地域全体が寝たきりのお年寄りを支援し、その自立を助けていくという理念が必要であると考えます。このため、現在、庁内の長寿社会対策推進本部において、長寿社会をにらんだ総合的なビジョンの策定を急いでいるところであり、また、これとあわせて寝たきり老人ゼロの精神を体現できるよう、国、また保健環境部等関係部局とも相談しながら各種施策の推進に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れありませんか。──再質問を許します。
42番森本明雄君。
 〔森本明雄君、登壇〕
○森本明雄君 再質問は自席でと思いましたが、渡辺団長から「前で、前で」と激励を受けましたので、ここからやらせてもらいます。
 関空問題につきまして、仮谷知事が今日まで、大阪空港存続問題、また国内便確保、さらには全体構想の早期実現など、精力的に取り組んでこられたことについては評価いたしますし、また先ほどの答弁では、取り組みについて、今までになかった突っ込んだ答弁も若干あったわけでございます。しかしながら、存廃問題につきましては、現実の問題として、存続の流れの勢いがますます強くなっていることは否定できない事実でございます。そして、先ほども述べましたとおりに、存続軍団によって和歌山県は完全に包囲されております。こういった状態では、大阪空港存廃については一〇〇%存続の見通しと私は思っております。
 先日、故大橋知事が県益を守るため、いや獲得するために国を相手に阿修羅のごとく闘った話を渡辺議員の質問を通じて聞きましたし、また、その後の関空をめぐる和歌山県の活動についても知ることができました。私なりにその結論として、関空建設で大阪府、兵庫県、さらには奈良県などの協力もさることながら、和歌山県の同意、協力なくして関空の建設着工はできなかったと判断をいたしました。その和歌山が存廃問題で蚊帳の外に追いやられて、なお国や周辺付近に気を使いながら発言をしなくてはならないのだろうか。関空建設のために、知事を初めとして当局、さらには議会が全面的に協力をしてきた、いわゆる和歌山県であります。
 とりわけ、血の一滴たる紀の川の水の分水に踏み切ったのであります。そして、分水や、南大阪、紀北地域の調和ある健全な発展のため一体的な総合施策の推進に努めることをうたった協定を締結いたしました。しかし、二つの不完全空港の存在では、両地域の調和ある健全な発展は望めないと思います。したがって、大阪空港廃止と全体構想実現への強力な推進を大阪府に要求し、その具体的成果を見るまでは紀の川利水に関する協定を一時凍結すべきだと思うのでございますが、知事の御所見をお伺いいたします。
○副議長(宗 正彦君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森本議員にお答えします。
 御意見を十分承り、検討してまいりたいと思います。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れありませんか。──再々質問を許します。
 42番森本明雄君。
 〔森本明雄君、登壇〕
○森本明雄君 再々質問をいたします。
 知事から、存廃問題や国内便確保の問題で、重大決意だとか重大な関心、毅然たる態度という発言が再三あるわけでございますが、その言葉の裏づけについては、私は不勉強かもしれませんが、非常に見えにくいのであります。
 また、第一質問で利水協定の一時凍結の決断を望みましたが、検討したいということで、なかなか踏み切れないようでございます。
 昨日行われた関空特別委員会の委員協議会の様子をけさの朝刊で知りました。新聞によりますと、西口副知事は「分水の実施年次まで阪和間の問題を交渉していく。その時々で覚悟があるぞ、とにおわせながらやっていく。県としても重大な決意を持っている」と報道されておりました。
 そこで、「県としても重大な決意を持っている」というこの西口副知事の言葉の意味でございますが、どのように解釈さしていただいたらよいのでしょうか。例えば、大阪空港廃止や国内便確保、あるいは全体構想早期実現の問題で大阪の協力が得られなかったとき、あるいは県の主張が通らなかったときに利水協定の凍結をするのか、また協定に明記された協力問題がスムーズに運ばなかったとき協定を白紙に戻すのか、その他いろいろなとり方があるわけでございますが、この言葉の持つ意味を具体的に明示していただきたいと思います。
 以上です。
○副議長(宗 正彦君) 以上の再々質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 私の決意と申しますのは、知事にさせていただいて最も県の政治力を結集したのは半島振興法の成立の問題であったと思います。これは、国会議員の皆さん、県会議員の皆さん、地元の皆さんが一体になって総力を発揮して成果を得たと思うわけでございます。また、各政党の御努力もいただいた次第でございます。今回もそのような力をもって全力を尽くすべきではないか、これが第一に進める方法でございます。
 そして水の問題でございますが、これについては、大阪府と利水協定を結んでおります。大阪国際空港の問題は、大阪だけが大阪だけで解決する問題ではないと思います。結局、運輸省が地元の意見を聞いて決定するということになっておるわけです。しかし、大阪の協力を得なければなりません。そのために水をどうするかという問題について副知事の心中には、協定は結んでおる、しかしながらそうした水の運用操作の問題において大阪との駆け引きができるではないかということがあったと思うわけでございます。締結した協定をすぐに凍結するかどうかという問題等については十分検討していかなければならないと思います。
 森本議員がおっしゃられた趣旨、またきのうの趣旨については私も十分存じておりまして、そうした点から一致協力してまいりたいと思っております。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れありませんか。──以上で、森本明雄君の質問が終了いたしました。
○副議長(宗 正彦君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
 38番貴志八郎君。
 〔貴志八郎君、登壇〕(拍手)
○貴志八郎君 私は、今日ほど地球規模の環境について懸念される時代、時はないと思います。特に昨今の大きな問題としてはフロンガスによるオゾン層の破壊が挙げられますが、これが地球規模においてあらゆる生物に大きな影響を与えるとされております。また、アフリカや中国、あるいは中近東における地球の砂漠化が大変な問題となっております。四国、九州を合わせたような地域が一年間に砂漠化していくという問題は、人類にとっても、地球上のあらゆる生物にとっても、重大関心を払わなければならない問題であるとしなければなりません。さらに昨今、熱帯雨林の問題が盛んに我々の耳目を集めておりまして、熱帯の森林乱伐による影響が地球全体に大きな環境上の問題を起こそうといたしております。地球の温暖化で北極の氷が解けてしまうかもしれないということも、我々の情報に入ってくるわけであります。
 こういう地球規模の環境問題を耳にし目にするたびごとに、私はいつも思うのであります。今、日本の食糧自給率は三○%を割ったということでありますけれども、この地球環境の変化の中で世界大凶作がいつ起こるかもしれないという懸念をだれしもが持つわけであります。我々は、戦前・戦中・戦後の飢餓の時代を過ごしているだけに、もしいろんな形で日本への食糧の供給が途絶えたときには一体どうするんだということを常に心配するわけであります。そういう意味では、農業という問題は、ただ単に一つの「産業」としてだけ見るのではなしに、日本の自衛力を考えるより前に考えなければならない自営の問題ではないだろうかと思うわけであります。
 そういう意味から、きょうは農業の問題について、和歌山に視点を当てながら論じてみたいと思うのであります。
 本県の場合は、地勢の関係上、平野率は極めて低く、したがって耕地面積そのものも、水田で全国順位四十三位、普通畑で四十五位と、低位であります。県人口と農産物との比率を見ましても、その自給率は米で五九%と、かなり低位にございます。この本県の状況は世界の中で対比する日本を縮図にしたようなものであり、その意味では、本県農政の悩みはそのまま日本農政のウイークポイントと相なるわけであります。
 さて、そこで私は、農業問題を大上段にかぶり、先ほど申したようにアフリカの食糧危機や日本の減反を論じ、あるいは地球規模の環境破壊と世界的凶作の可能性までをもここで深く論じようとは思いませんけれども、少なくとも、かつては本県にとっても主要な産業の主人公であった農業が、今、いずこへ行こうとしているのか。国の農政の失敗のあふりを受けて未来産業としての夢もまた消えなんとする今、果たして県当局に村おこし、農業おこしの具体的な展望とビジョンがあるのか。二十一世紀につなぐあすの和歌山県農林業基本計画が、果たしてこの命題にこたえていると言えるでしょうか。私は、大きな疑問を抱きながら質問を続けてみたいと思います。
 まず、耕地面積と農家戸数の減少についてであります。
 昭和四十年を基準といたしまして、今日では、水田の場合五八・五%、普通畑の場合五六・七%の減少であり、農家戸数も、専業で実に八四・六%、兼業でも七五%と減り続けているのであります。こうした農業の衰退は、高度経済成長の時代から、より顕著な傾向となり、工業の発展と人口の都市集中、農村の過疎化時代を迎えたのであります。要するに、農業は「魅力がない」「もうからない」「労働がきつい」ことなどを理由に、若者の農村離れに拍車をかけました。日本全体において農業が衰微の傾向にありますが、本県の場合も、数字が示すとおり、例外ではありません。
 知事は、国の農業政策のどの点に誤りがあったと思うのか。また、国の政策の誤謬に対してどのような対応をしようとしたのか。まず、基本的にお伺いをしておきたいと思います。
 次に、具体的な課題としてミカン問題と減反問題を取り上げますので、農林水産部長にお答えをいただきたいと思います。
 まず、ミカンであります。
 昭和三十六年三月に果樹振興特別措置法が制定され、それに基づいて本県でも独自の果樹農業振興計画を立ててミカンの需要予測を行い、水田等よりの転換を推進いたしました。本県の場合、法制定よりも早く、昭和三十三年ごろより転換が始まり、昭和四十二年ごろまでの十年間で約三千ヘクタールに達したということであります。
 当時、ミカン農家の経営が順風であったこともわかりますけれども、九州、四国を初め全国的にミカンへミカンへと草木もなびいた状況から言って、生産過剰への危惧は当然に推測できたと思うのであります。しかし本県では、そういった推測があるにかかわらずみかん園芸課を創設し、一方ではミカン園の農業構造改善事業を推進するなどミカン熱をいやが上にもあふり立て、ついには需給のバランスが崩れ、「有田みかん」という固有の銘柄基盤まで揺らいでしまう結果を招来いたしたのであります。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)
 そして、それからわずかに二十年を経過した今、転作したミカン園にミカンがたわわに実るころを迎えた昭和六十三年より平成二年までの三年間に実施するみかん園等再編整備推進事業が、農水省の推進で実施に移されました。今度は、ミカン園を廃園または転作するなら助成金を出そうと言うのであります。これは、今、議場から「そんなことはない」という声がありましたけれども、ミカン農家の今日の実態を政府自身が認めておるということであり、我々も、またミカン農家の皆さんもそれをお認めになっておると思うのであります。
 本県への割り当ては、温州ミカンで二千四百二十ヘクタール、ハッサク等他のかんきつでは、県独自の目標で千百五十ヘクタールということであります。お国の指導でミカンづくりに転換をし、次にはお国の勝手でオレンジの輸入自由化、そして今度はお国の都合でミカン、ハッサクは切りなさいであります。
 本県のミカン農家、中でも紀の川筋の農家は、国の需要予測に基づいてかんきつへの転換を行い、そして最後にはばっさり根こそぎ切らされる運命となったのであります。しかも、構造改善事業や、後で述べる紀の川用水に関しても、そのツケを払い終わらない間に廃園が始まっているのであります。
 県当局は、こうした現象をどのように見ているのか。国の農政の誤りに対し、何らかの対応をされたことがあるか。多分、「やった」ということでありましょうが、具体的にそのことを示していただきたいのであります。
 また、その国の施策に対する抗議や提言、あるいは損害を補完する要求をどのような形でやってきたのか。国に追随した本県のミカン行政に反省点はなかったか。反省すべき点があったとすれば、それをどのようにフォローしたか。具体例を挙げてお答えをいただきたいのであります。
 さて、次は米の減反政策についてであります。
 米の減反については、古く昭和四十四年ごろより始まっておりますが、実際には、水田利用再編奨励補助金制度が打ち出され、軌道に乗ったのは昭和五十三年以降のことであります。ざっとその実績を見ますと、自来十年間で、昭和五十六年を除いてその達成率は、実に歴年一〇〇%を超えているのであります。本県がいかに忠実に農水省の割り当てを消化してきたかが如実に示されておる数字であります。
 さて、この間に、県の水田本地面積に対して約三三・一%が休耕あるいは転換を行ったことになっております。ここで注目すべきことは、この間の補助金の推移であります。
 この補助金制度が始まった昭和五十三年当初では、十アール当たり、果樹等への転作で五万五千円、休耕などについては四万円で、別に計画達成加算金が出されております。そして、三年ごとに補助金が見直されておりますが、その間、逐次減額され、現在では一般作物への転換でわずかに二万円、休耕田に至っては七千円を補助されているにすぎません。
 数字を追っていくならば、まず転作・休耕ありきであります。一たび転作・休耕を行えば、後はお茶を濁すというやり方でございます。減反さえできればよしとする姿勢が見え見えであります。
 ところで、ここで質問をしたいのでありますが、本県の水田本地面積に対して休耕・転作の比率が、統計資料から見て全国的に高い水準にあることに気がつきます。冒頭述べたように、本県の場合は比較的耕地面積が少なく、その自給率も低位であるのに、休耕・転作目標面積が他府県の比率より高いが、その理由は一体どこにあるのか、ぜひ聞いておきたいと思うのであります。
 また、この本県に対する目標割り当てが妥当なものであると思っているのかどうかもお尋ねをいたします。
 さらに、休耕田、転作等の奨励補助金制度及び逐年補助率の引き下げについてはどのように評価をされているのか。農政に取り組む基本的立場を踏まえて答弁を願いたいのであります。
 特に、さきの参議院選挙において、現在の国の農政に対する批判がその得票数に大きく示されておりましたけれども、政府・自民党は、農政の見直し作業を国民の前に一つも明らかにされておらないのであります。むしろ、消費税の見直しは声高に言っておりますけれども、この農政の見直しについて、果たして国民のわかる形で検討がなされておるというのでありましょうか。この際、国の農政に対する見解を含めてお答えいただきたいと思うのであります。
 さて、そこで、いよいよ具体的な質問に入ります。紀の川用水の問題であります。
 県当局は、国営十津川紀の川総合開発事業の一環として昭和三十九年十一月に発足以来の事業内容、経過についてはよく御承知のことであると思いますので、あえてここでは説明を省略いたします。
 また、昭和六十年六月定例会において、「国営紀の川用水農業水利事業の地元負担金の軽減、償還条件緩和に関する意見書」が全会一致で採択され、政府各機関に送付されております。にもかかわらず、県議会全会一致の意見書は完全に無視されたのか、全然改善の糸口が見えてまいりません。県当局は、この県議会全会一致の意見書をもとに農水省に対してどのような交渉をされたのか、その経過についてぜひここで御報告を願うものであります。
 紀の川用水は、国営、県営、団体営の三種類ありますが、ここでは主として国営分についてのみ質問をいたしておきます。
 ここで、どうしても明確に答えていただきたいことがあります。御承知のごとく、この紀の川用水は、当初、昭和三十九年より七年間の計画で、関係者の承諾を経て立案実施されたわけですが、石油ショック等のため完成まで実に二十年もかかり、工事費も、当時の予算の約四倍の百十五億円にはね上がっております。工事がおくれた責任はもちろん、工事費のはね上がりを一方的に地方団体や農民に転嫁負担させている現状に対して、それでよろしいとお考えになっておるのでありましょうか。
 ところで、当事業の計画は、水田二千三百九十一ヘクタール、果樹二千五十一ヘクタール、計四千四百四十二ヘクタールの面積であります。そして、五十九年完成当時、結果的には水田で約五百ヘクタール減の千八百二十三ヘクタールだけが転換賦課対象となり、果樹はほとんど国営事業の賦課対象から外されているのであります。必然的に、果樹園分の賦課は水田農業者にしわ寄せをされているのであります。そして、使用していない果樹園用水利分まで負担をさせていることになっております。これが重要な第二点目の問題であります。
 次いで、この負担金には、国営の大迫ダム、津風呂ダムの水源分一億七千万円余が含まれているはずであります。また、水利費につきましても、使用していない水についても負担させていることになってはいないかと思うのであります。要するに、使用していない果樹園分の水利費も、従来の経緯から言って水田農業者に負担を求めているのではないかと思うのであります。
 さらに三点目の質問といたしまして、果樹二千五十一ヘクタール分のかんがいがなくなったのであれば、この分の水は大いに利用できるはずであります。特に、水田の場合と違い、畑地かんがいの場合、再び紀の川には戻らない性質の水であります。理論的に言えば、その分の水が余るわけであります。
 県は、さきに紀の川の水を大阪に分水することに合意をし、その協力費として百七十億円を受け取り、また道路建設を含めて、さまざまな内容の協定が行われておるわけであります。
 一方、御承知のとおり、米作の利益は、反当たり平均わずか三ないし四万円とされております。ここから紀の川用水の償還金やため池維持費等、平均反当たり二万円を差し引けば、うまくいっても、とんとんということであります。休耕田の場合は、完全な赤字であります。これが将来、十五年にわたって続くのであります。
 このように、苦しい農家経済に拍車をかけているのが紀の川用水償還金であります。しかも、この用水の利用面積は当初計画の半分以下になっております。
 私は、急速に訪れた時代の変転ゆえに、先人たちが苦労して築いたこの水利権を簡単に放棄するということを申し上げているのでは、絶対ございません。この水が利用できなくなっておるその事実を嘆き、この水が再び生きた形で利用できることを望むものであります。しかし現実の問題として、休耕田や果樹かんがいでは用水利用が放棄をされておることになっております。県は、この分の水利費だけでも肩がわりするか、あるいは肩がわりの意味で、少なくとも行政の手を水田農業者に伸べていくべきではないだろうかと質問をいたしたいのであります。
 そこで私は、現実を踏まえて、県当局に対してとりあえずの行政として次のことを提言し、質問をいたしておきたいと思うのであります。
 紀の川用水自体が使用されておらない余剰の水利権を保全するという意味でも、一、現行の利息五%を、例えば三・五%あたりまで引き下げること。当面、県は、水利権の保全ということを考え合わせて利子補給を行えないだろうか。二、償還条件は十五年ということであるけれども、当面、十年繰り延べて二十五年にできないだろうか。県の財政運用の中で補うということを考えられないだろうか。
 以上の二点については、早速検討を始め、実施に移してもらいたいものであります。そして農水省に対しては、用水の計画変更、オレンジの自由化、減反などの責任をとる意味でも、国の負担率を現行の六〇%から七〇%に引き上げて農家負担の軽減を図るよう、県議会の意見書に沿ってさらに運動を強化すべきであると思います。県当局の今後の取り組み姿勢をお伺いする次第でございます。
 さて、私の本日の質問はここまででありますが、あと少しだけ時間をいただき、発言を続けさしていただきたいと思います。
 幸か不幸か、ことしの十二月議会に、私、この県議会議場の演壇に立てるかどうか、非常に心配をいたしておるのであります。時によっては、本日のこの質問が私の県議会議員としての最後になるかもしれない。もし十二月にこの演壇に立たしていただく機会があれば、私の今日までの長い間の経験をもとにしたさまざまな提言やらお礼やらを申し上げたいと思っておるのでありますけれども、時としてその機会がないかもしれない。そんな気持ちがいたしますので、少しだけお礼などを申し上げたいと思うのでございます。
 昭和四十二年の五月、私は初めてこの議会の演壇に立たしていただきました。途中二回ばかり議員を辞職して他の選挙に出たことがありますが、今日まで六期間、本会議が開かれるたびごとに、ただの一回も欠かすことなしにこの演壇に立って一般質問を続けさしていただいてまいりました。これはひとえに、同僚議員各位の厚い友情と先輩諸氏の御叱正、御鞭撻があったればこそであると、非常に感謝をいたしておるところでございます。
 この間買い求めたのでありますが、和歌山県の生んだ作家・津本陽さんの著書に「下天は夢か」という名の作品があります。織田信長の伝記であります。これを読んでおりますと、織田信長はよく幸若舞という舞を舞ったそうでありますが、その際、「人間五十年下天の内を比ぶれば夢幻のごとくなり」という句を口ずさみながら舞ったということであります。
 天には九つの天があるが、そのうちの一つ「下天」にあっては「五十年は一日一夜なり」と仏教の倶舎論にあるそうでありますが、信長はその生涯を、おのれの信ずる道をただ生き抜き、その言葉に寄せて無心に舞ったのではないかと推察をするわけであります。
 私は、決してそのような大それた物の考え、大悟徹底できるほどのものではありませんけれども、今日まで政治の道に入って約四十年、その所信を貫くことが我が人生に対する最も忠実な生き方である、また県民の皆さん方に訴え続けてまいった所信を貫いていくことが生きる道ではなかろうかと、ひそかに胸の中で思っておるわけであります。
 あとどれだけの期間、皆様とともにこの席に座らせていただけるかわかりませんけれども、その間も、従来同様、皆様方の温かい友情と御指導、御鞭撻を賜りますよう、この席をおかりしてお願い申し上げ、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの貴志八郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仮谷志良君。
 〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) ただいま貴志議員から、本議場において、思い出の多い、意義ある該博な提言、また質問をいただいたわけでございます。これに答えるにはちょっとお粗末になるかもわかりませんけれども、農業問題についての答弁をさせていただきます。
 農業は魅力がない、もうからない、労働がきついということで、若者が農村離れをしているとのお話ですが、そうした一面、バラづくりやトマトの養液栽培にいそしむ那賀郡や有田郡の若者、また稲、レタス、スイートコーンなどの三毛作に取り組む御坊市の農家、梅と花の複合経営に熱意を燃やす南部から田辺地域の皆さん、花卉生産に情熱を注ぐ西牟婁の方々、いずれの農家の皆さんも意欲を持って農業に取り組み、高収益を上げているのも事実でございます。
 先日の農業まつりにおきましても、農業者大会が青年農業者、青年経営者で行われ、多数の皆さんが参加されました。そして、厳しい農業経営の中であるけれども、高付加価値、都市近郊型の施設栽培等、新しい意欲に燃えての農業経営の意見発表、討論、また自由国際化社会における農業のあり方についての研修等、そうしたいろいろの姿を見て私も非常に力強く感じたのでございます。
 現在、世界的に産業構造が大きく変転する中で、先進国では産業としての農業構造の改善が進んでおるところでございます。アスパラやイチゴの例にもあるように、時の流通・消費構造に合わせ品種改良を進めて企業生産するカリフォルニアの農業には遠く及ばないとしても、EC連合とりわけオランダの近代的な花卉農業は、本県農業の目標として大いに学ぶところがあると思うのでございます。
 我が国におきましても、基本食糧の安定供給ということを柱にして、土地利用型農業の生産性の向上を図るために農業構造改善施策を推進してきたところでございますけれども、近年、さらに国際化や技術革新が急速に進む中で、産業として自立し得る農業を確立するために高付加価値化農業の育成に取り組んでいるところでございます。
 本県としましても、こうした国の方向を踏まえながら、県下を紀の川流域、有田川流域、日高及び紀南の四地域に区分し、地域の特性を生かした高付加価値化農業の振興に努めているところでございます。
 今後とも、品質向上対策やバイテク技術の活用などソフト面の充実、施設園芸や空輸農業の振興とあわせて一・五次産品の育成など、時代に即応した流通加工対策を進め、国際競争力のある産地育成に努めてまいりたいと思っております。
○副議長(宗 正彦君) 農林水産部長安田重行君。
 〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) 貴志議員にお答えを申し上げます。
 まず、ミカン対策の生産振興から転換対策に至る県の取り組みについて、四点の御質問でございます。
 産業構造の高度化や国際化の進展などに伴う社会経済情勢の変化の中で、農業も例外ではなく、他の産業同様、産業としての生産構造も大きく変革いたしてございます。中でもミカンにつきましては、国の果樹農業振興基本方針に基づき、本県の基幹品目として産地の拡大に取り組み、農家経済の安定向上に大きく貢献をしてきたところでございますが、その後の需要予測を上回る急激な消費構造の多様化の中で、需給の調整を図ることを余儀なくされてございます。
 さらに、貿易摩擦に端を発したアメリカとの激しい国際交渉の末、オレンジ・果汁の自由化の決着で、ミカン農家を守るため、早急に全国規模の生産調整を中心に再編整備の必要があったものと考えてございます。
 次に国の農政に対する対応でございますが、需給構造の急激な変化に対応するため、県といたしましては、生産基盤の整備を初め、落葉果樹や地域特産品目の導入など適正な産地誘導を図るとともに、施設栽培の導入や味一等の高品質果実の生産拡大に積極的に取り組み、産地の体質強化に努めているところでございます。
 国の施策に追随したのかということでございます。国は果樹農業振興基本方針を五年ごとに見直しており、県もこれに基づいて果樹農業振興計画を策定いたしておりますが、単に国に追随することなく、その事業の実施に当たっては国の施策を選択導入し、本県の特色を生かした産地の形成に努めているところでございます。
 そのフォローはどうしたのかということでございますが、急激な需給構造の変化から、国に先駆けて本県では昭和五十年度より、温州ミカン百万本改植事業を初め、特産果樹等の生産振興対策事業、施設栽培の推進、かんきつ優良品種産地化事業等を実施する一方、需給調整を目的とした加工場の整備、生産構造の改善に積極的に取り組んできたところでございます。
 今回のオレンジ・果汁の輸入自由化決定に伴うかんきつ園地再編対策を絶好の機会としてこれを生かし、特色のある、足腰の強い高品質な果樹産地の創生になお一層努めてまいる所存でございます。
 次に米の減反について、転作比率の高い理由と割り当ての妥当性の問題でございます。
 米は国民の基本食糧であることから、食管制度のもとで、公平、安定的に供給することを基本といたしてございますが、転作面積の配分に際しましては、東北、北陸の良品質生産地域には比較的有利に配分する一方、転作が容易な地域には高くなってございます。しかし、転作比率の高いこれらの地域については、転作促進の趣旨が生かせるよう、施設等の整備の措置が優先的に講じられていることから、妥当性の問題についても、本県の持つ地域の特性を生かした果樹を基幹とする複合経営や水田の持つ有利な機能を生かした知識集約型営農が図られているところでございます。
 次に、奨励補助金制度と補助率の引き下げについての評価の問題でございます。
 転作奨励補助金制度につきましては、産業として自立する農業の確立を目指すもので、農地の保全と農家経営の安定を図るものでございます。奨励補助金の引き下げは、食管制度の維持からも、やむを得ない措置と考えてございます。
 次に紀の川用水について、三点の御質問がございました。
 まず、意見書とその後の問題でございます。
 昭和六十年六月定例会において御採択いただいた意見書の件につきましては、国に対して、その後、工費の高騰、減反や廃園問題等から農家負担の窮状を機会あるごとに訴え続けてまいりました。その結果、六十三年度には、国において土地改良事業償還円滑化特別対策事業──これは利子補給制度でございます──資金手当として償還円滑化資金、いわゆるリリーフ資金という制度が平成元年度で創設をされましたが、現時点では紀の川用水はこの資金活用をいたしてございません。
 国営事業の地元負担金の軽減、償還条件の緩和について有効に活用できるような、さらに大幅な制度の拡充、創設等、議員連盟のお力もいただきながら国に対して強く働きかけておりまして、国も検討を始めてございます。今後、さらに強く働きかけてまいる所存でございます。
 次に、果樹かんがい減に伴う負担金の対策でございます。
 果樹園に対する畑地かんがいの計画面積は二千ヘクタール余でございましたが、議員御指摘のように、昭和四十年代後半からのミカン情勢の変化により、大半の受益地では事業実施意欲が減退をし、大きく遅延をいたしてございます。さらに今日の農業情勢からしても、今後も事業実施は見込めない状況でございます。
 こうしたことから、頭首工及び幹線水路に係る国営事業の償還金につきましては、すべて事業開始時の水田受益者が負担をしている状況でございます。水源負担分及び水利費についても、同様でございます。
 以上の畑地かんがい未実施による水田受益者へのしわ寄せと事業が大幅に長期化、増高したことを勘案いたしまして、その負担金対策として、本来、地元負担金は総事業費の二〇%でございますが、昭和六十年度の国営事業償還開始の時点から県はさらに一〇%を援助しておりますし、六十三年度からは、関係二市七町の御協力を得て、さらに負担の引き下げを図ってまいっているところでございます。
 次に、余剰水の活用についてでございます。
 紀の川用水事業のうち畑地かんがいの工事につきましては、現状の農業情勢から事業の完全実施が困難な状況にあることは申し上げたとおりでございます。したがいまして、将来、畑地かんがいに必要な水は余剰水となりますが、農業用水の特異性、下流域への影響等、複雑な問題もございます。しかし、議員御指摘のとおり、厳しい農業情勢を考えますと、紀の川流域の農業用水については、関係の市町や農業団体等の協力を得ながら、将来の水需給をも含めた総合的観点から、農業用水のみならず貴重な水資源として有効な利活用方策について十分検討していかなければならないものと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(宗 正彦君) 答弁漏れありませんか。──再質問を許します。
 38番貴志八郎君。
○貴志八郎君 まず、用水の問題であります。
 部長自身もお認めになったように、いろいろと工夫はされておりますけれども、現実に使っていない水の分を水田農業者にかぶせておるということは厳然たる事実でありますし、しかもこの余った水──この呼び方がいいのかどうか、とにかく使わない水は貴重な水であり、金に換算すればかなりの財産であります。それを保全するために、その水を使っていない水田農家になお負担をかけ続けていくということは、どうしても基本的に検討してもらわなければならない問題であると思います。それで、当面の課題として、利息の引き上げや償還の繰り延べという形で検討を開始してもらいたいというのが私の主たる意思でありますし、恐らく関係農業者の皆さん方も、もっと強い希望をお持ちになっておるのではないかと思われます。
 それから、結果的に物を見てまいりますと、農家が衰微していく現状は否定できないと思うんです。第一次産業である農業がこれほど落ち込んできたことに対して、当然に国の農政に対する批判があるわけであります。それは、地方公共団体から見ても、国の農政のあり方に対して一言物申すべきものが幾つもあると思うんです。そういうことについて、どちらかと言えば和歌山県の行政は国の御意向に従うという面が多かったのではないか。むしろ、国のやり方に対して、もっともっと陳情するというよりも、時には怒って詰め寄るというふうなことが──特に「地方の時代」と言われながらも地方自治が縮小されている中で本県の農業者が大変苦しんでおるということを背景に、しっかりした立場をとってやってもらわなければならんのではないかというふうなことを思うわけであります。
 減反の問題についても同様でありまして、和歌山県はこれほど耕地面積が少ないのに減反率が他府県に比べて平均より高いのはなぜかという疑問を投げかけました。お答えはありませんでしたけれども、そういったことも国に対して物申すべき一つではないだろうか。
 また、我々は、例えばアフリカの飢餓を毎日のように新聞やテレビで見てまいりました。地球の一角に食べることができない多くの人々がおるのに、なぜ日本で減反なのか、そういう疑問や意見が当然起こっていいはずであります。ただ単に貿易上の問題や摩擦だけを考えるのではなしに、人類の課題として取り上げていく勇気も、また必要でないかと思うのであります。
 私は、農業問題について、どちらかと言えば余り詳しくございません。けれども、きょうは思い切って農業問題を取り上げさしていただきました。私の未熟さゆえに突っ込み足りない問題も多々あったと反省をいたしておるのでありますけれども、いずれにしても、昔から農林水産部は、和歌山県の最も大きな部である、力のある部であると言われてまいりました。その農林水産部が、これからの和歌山県の農業について、知事の描いたビジョン、あるいはそのビジョンに近づこうとしておる農家の若い皆さん方の熱意をどうして生かし、そして和歌山にこの産業を残し、かつ栄えさしていくかということで、県政全体としてもっともっと力を尽くしていただきたいし、冒頭に申し上げました農業用水のように、どこかしら矛盾があるというふうなことに明快に答えられる政策を樹立して実行に移してもらいたい。
 以上、激励を申し上げまして、私の再質問を終わります。
○副議長(宗 正彦君) ただいまの貴志八郎君の発言は要望でありますので、以上で貴志八郎君の質問が終了いたしました。
○副議長(宗 正彦君) お諮りいたします。質疑及び一般質問は、以上をもって終結することに御異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(宗 正彦君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
○副議長(宗 正彦君) 次に、議題となった全案件のうち、議案第百二十号昭和六十三年度和歌山県公営企業決算の認定についてを除くその他の案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
○副議長(宗 正彦君) 次に日程第三、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
○副議長(宗 正彦君) 次に、お諮りいたします。明七日は議事の都合により、また十月九日及び十一日は各常任委員会審査のため、休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(宗 正彦君) 御異議なしと認めます。よって、十月七日、九日及び十一日は、それぞれ休会とすることに決定いたしました。
○副議長(宗 正彦君) この際、各常任委員会の会場をお知らせいたします。
 職員からこれを申し上げます。
 〔職員朗読〕
 ────────────────────
 総務委員会 第 六 委 員 会 室
 厚生委員会 第 二 委 員 会 室
 経済警察委員会 第 三 委 員 会 室
 農林水産委員会 第 一 委 員 会 室
 建設委員会 第 四 委 員 会 室
 文教委員会 第 五 委 員 会 室
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○副議長(宗 正彦君) 次会は、十月十二日再開いたします。
○副議長(宗 正彦君) 本日は、これをもって散会いたします。
 午後二時五十八分散会

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