平成元年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(小林史郎議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
○議長(西本長浩君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
45番小林史郎君。
〔小林史郎君、登壇〕(拍手)
○小林史郎君 まず、去る六月四日、北京において起きた血の武力弾圧に関連して、本県の今後の日中交流運動のあり方の問題で質問いたします。
本県の日中交流運動は、日中共同声明を受けて大橋知事が昭和四十八年五月に訪中して以来、五十九年には中国山東省との間で提携関係の議定書が交わされるなど、今日まで各分野で相互の交流が発展してきました。私たちはこれまでも、このような交流関係のあり方について一定の意見を申し上げてきたところでありますが、それは、あくまでも真の友好運動を発展させる立場でありました。したがって、今度の流血の惨事に直面するに及んで、もし真に日中友好運動を発展させる立場に立つならば、今こそよき隣人として必要な発言をしていくべきときでないかと考えるのであります。
六月四日の日曜日の朝から、私たちはあの画面にくぎづけになりました。人民解放軍と名のる軍隊が、学生や市民や労働者に平気で武器を向ける。その惨状は、テレビを通じて全世界に放映されました。そして現在、まるで暗黒の中世か封建時代さながらの状況で活動家たちの人相書きがテレビで放映されており、密告が奨励され、密告した者には賞金が与えられています。こうして逮捕された者には、即決的な裁判で、次から次へと見せしめのための死刑判決が行われています。
今、中国の党や政府の一部の指導者たちは、反革命の暴動を鎮圧したのだ、正義は我にありなどと言っていますが、皆さんもそう思われますか。
北京の市民や学生や労働者たちが掲げた要求は、言論の自由、報道の自由、集会の自由、結社の自由、そして汚職・腐敗の政治を一掃しようという、ごく当たり前の民主主義の初歩的なものであります。しかも、学生たちの最高の形態としてとった戦術も、ハンガーストライキという無抵抗、非暴力の最も平和的な運動であり、素手で戦車に立ち向かった学生や市民の運動がどうして「動乱」や「暴乱」になるのでしょうか。私は不思議でなりません。
中国の今の憲法は、その三十五条で言論・出版・集会・結社・行進・示威の自由をすべての公民に保障していますし、その三十七条で公民の人身の自由を不法に剥奪または制限することを禁止し、またその四十一条では、いかなる国家機関や国家公務員に対しても批判及び提案する権利を有すると規定しています。したがって、このような憲法を守れというぎりぎりの要求を掲げた学生や市民の平和的な運動に対し、いきなり虐殺の武力を行使するという、こんな言語道断なやり方は絶対に許せないのであります。
そして、まことに残念ではありますが、今の中国は、かつての毛沢東による文化大革命のときのように、民主主義のかけらもない、専制的な軍事独裁体制のもとに置かれているように思えてなりません。
私はかねがね、「最高実力者・とう小平」という言葉を奇異に感じていました。それは、国家主席でもなく党を代表する総書記でもない人物が何で最高の実力者であるのかという疑問でありますが、今の中国の体制のもとでは、憲法上の責任者である国家主席も、党規約上の責任者である中国共産党の総書記も、軍事委員会主席として軍隊を握っているとう小平のもとに全く従属させられてしまっているということ、そして、もしこのような人物と仕組みによって軍隊が動員され、自分の気に入らない民主運動を弾圧していたとするならば、これはまさに民主主義と無縁な軍事独裁体制と言わねばなりません。
我が党は、このような事態の深刻な展開とその背景をはっきりつかんでいたがゆえに、六月四日即日、「社会主義的民主主義を踏みにじる中国の党・政府指導部の暴挙を断固糾弾する」という声明を発表するとともに、「赤旗」号外を発行して広く国民に訴えたのであります。
当然、この流血の惨事は世界じゅうに大きな衝撃を与えました。米国のブッシュ大統領は、週末の静養先で、直ちに「再び中国政府が平和的方法に立ち戻るよう求める」という非難声明を行うとともに、制裁措置についても発表しました。フランスのミッテラン大統領は「若者に銃を向けるような国に未来はない」と批判し、イギリスのサッチャー首相は「民主主義的な権利を求めていた人々に向かっての無差別発砲に激しい反感と憤怒を感じる」と怒り、西ドイツのコール首相は「自由の要求が戦車の重さによって押しつぶされることは決してない」と警告を発しています。
ところが、日本政府の場合、四日に「これ以上、事態が悪化しないことを強く望む」という外務省の報道官談話を発表しただけで、翌五日になって宇野首相は「憂慮にたえない。平穏になることを祈っている」という感想を述べるにとどまり、国会の所信表明でもこのことに触れることを避けました。
宇野総理は、その理由として、日中戦争と在留邦人への配慮によるものと説明していますが、我が党は国会において、それは全く逆さまの議論であり、過去の侵略戦争に対する本質的な反省がもしあるならば、かつての日本の侵略軍隊と同様とも思われる今回の虐殺行為に対してもっと厳しい警告ができたはずであると追及してきました。
こうしたことをとらえ、評論家の藤原弘達氏はテレビ朝日の番組で、「今度の中国問題における正義のあり方、人権のあり方、人命の尊重という点において、いかなるマスコミ、各政党以上に一番筋が通っているのは日本共産党だ」と解説しています。また、経済同友会の石原代表幹事も六月六日の定例記者会見で、「宇野首相が『憂慮する』という声明を出しただけという点が気にかかる。欧米各国の反応と余りにも違う。事は人道問題であり、もっときちんと対応すべきでなかったかと思う」と、このように発言をしています。
加えて、近ごろ中国政府は、天安門広場で軍隊は発砲しなかったし、ここで一人の死者も出なかったと強弁する始末で、その一方では、見せしめのための大量の死刑執行を行うなど、あからさまな恐怖政治をやっています。しかも、初公判から死刑執行までが、上海の三人は一週間、北京の七人はわずか十二日間というありさまで、人間の命を奪う手続をこんな短時日に済ませてよいのでしょうか。まさに中世的な人命軽視の思想が色濃く残されていると言わねばなりませんし、当然のこととして、激しい国際的な非難が沸騰してきています。これに対し李鵬首相は「外からのいかなる圧力にも屈伏しない」などと言っているようでありますが、人権問題はあくまで国際問題であります。このことは世界人権宣言に高らかにうたい上げられていますし、人種差別のアパルトヘイト政策をとる南アフリカ政府が全世界の糾弾の的になっていることを見ても明白であります。したがって、今回の民主化運動を弾圧する恐怖政治の一連の動きを中国の内政問題として見過ごして、これ以上あいまいな態度を取り続けるような姿勢は絶対に許されません。
以上の立場を踏まえまして、知事に質問いたします。
新聞報道によりますと、山東省済南市で十七名という大量の死刑執行が行われています。これは、北京の武力弾圧に抗議して立ち上がった済南市民や学生に対して百八名を逮捕し、その第一次分として、死刑を含む四十五名に実刑判決を言い渡したものだと言われています。しかも、十七名という大量の死刑執行は、上海の三名、北京の七名に比べて異常に多い数であり、私たちは友好提携先のこのような状況に対して重大な関心を持たざるを得ないのであります。
そこで、知事として、今日の中国の事態に対して、今、最大の国際問題になっているこの人権問題に対処するためにどのような姿勢と考え方を持っておられるのか。我が党としては、この際、断固抗議すべきだと考えていますが、少なくとも中国政府と提携先の山東省に対して何らかの見解表明や申し入れを行って、よき隣人としての諌言をする考えがあるかないか、知事の所信のほどを伺いたいのであります。
続いて、知事公室長より、山東省との提携関係を従前どおり続けられる方針か、それとも何らかの見直しを行う考えであるのかについてお答え願いたいのであります。
さらに、本県がかかわる本年度の交流行事について、民間交流を含めてどのようなものが予定されているのか。それらのうち中止または延期されるものがあるならば、お示し願いたいのであります。
次に、農業関連の問題で質問いたします。
まず米の問題でありますが、農政審議会企画部会は、この五月に「今後の米政策及び米管理の方向」なるものを発表しました。この報告の主な内容は、一、政府買い上げ米を流通量の四割程度とする、二、買い上げ価格は大規模経営のコストで決める、三、消費者米価は米市場動向で決める、四、米管理に必要な経費は消費者負担の方向をとる、五、自主流通米の流通規制を緩和する、六、自主流通米の価格は市場で決める、七、減反は生産者団体の責任で行う、八、低価格の加工原料米をふやす等でありますが、これらの中身は、ここ数年来、経団連など主な財界団体が提唱してきた食管解体論、部分管理論とほとんど同じであります。つまり、政府は財界と一体となって今の食管制度を骨抜きにし、部分管理制に移行させようとしていることが、この報告によってはっきりしたわけであります。
その後、東京、大阪などへ米の取引所を設置する動きも出ているようでありますし、もしこの報告書の内容が実施に移されるようなことになれば、本県の生産者にも消費者にも次のような点で大変な影響が出てくると心配されますので、農林水産部長のお考えを伺いたいのであります。
第一点として、大部分の米の生産・流通価格を自由競争のもとに置くことになるが、消費者は果たしていつでも安定した値段で米を買えるのか、今まで政府が負担していた食管経費の一部を負担しなければならなくなり、さきの自由価格形成の問題とともに、現在の家計米価格水準よりもかなり高い値段で買わなければならなくなるのではないかという不安であります。
第二点として、生産者にとっては、作況によって豊作貧乏に襲われる危険性がないのか、また販売価格はどうなるかという見通しとの関連で、買い控えや買いたたきに見舞われることにならないかという不安であります。
第三点として、政府買い上げ価格が大規模経営のコスト基準で決められるようになれば本県の稲作農民のほとんどがつぶれてしまうと思われるが、この報告の関連施策の項に「生産性の向上の困難な中山間地域対策について幅広い観点から検討する」とあるが、一体どのようなことが想定されているのか、また本県として、この対策に対してどんな検討が行われているのかという問題であります。
第四点として、減反政策の実施を民間主体に移す場合、減反についての国の責任がほとんどなくなることになりますが、このことによって米の輸入自由化をガットの場で拒否する根拠を失うことにならないかという心配であります。
そこで、農林水産部長より、以上のような不安に答えていただくとともに、県として、この報告に対してどのような立場から政府に意見を出しているのかをお示し願いたいのであります。
続いて、本県農業の今後の問題について質問いたします。
農林水産統計では、本県農家の一戸当たり生産農業所得について最近の変化状況を見てみますと、昭和五十六年に九十三万六千円であったものが、六十年には八十五万七千円、六十一年には六十五万円、六十二年には五十五万八千円と減少を続け、特にここ二、三年の減り方はひどく、六十二年度の五十六年対比は実に六〇%と、半分近いまでの落ち込みとなっています。この間の粗生産額で比較的に減少度の高いものとして米、ミカン、畜産などが考えられますが、一戸当たり生産農業所得の落ち込みの要因は何か、またそのこととの関連において、この一戸当たり農業所得を引き上げるためにどのような対策が考えられているのかを農林水産部長よりお答え願いたいのであります。
続いて、ミカン再編対策の問題であります。
先日、何かの会合のときお伺いしたのですが、ある農家の方が、「一たん廃園を決意して申請したものの、いざチェーンソーを持ってその畑に入ってみると、このミカンの木のおかげで何人もの子養いができたのだという思いがふつふつと沸いてきて、とうとう病気にかかっている木以外は一本もよう切らなんだ」と述懐していました。
こうした形で取り消しになった申請も少なくないと思われますが、昭和六十三年度再編事業の実績が廃園・転換園別や郡市別でどのようになっているのか、その中に何か特徴や問題点があればお教え願うとともに、転換作物においてどのような品目が多く選択されているかについても御報告を願いたいのであります。
続いて、農業用廃ビニール類の処理対策の問題であります。
きのうも木下議員から質問がありました。先ほども触れましたように、オレンジの輸入自由化と零細稲作農民の切り捨て政策は本県農業を深刻な事態に追い詰めつつありますが、ここからの生き残り策の一つとして、施設園芸農業に取り組む農家が急激にふえてきています。ミカンどころの有田でも周年栽培と所得拡大を目指すハウスミカンがだんだんとふえてきていますし、県下の施設栽培の七〇%を占める野菜の場合、昭和五十年に二百十ヘクタールであったのが六十一年には約六百ヘクタールと三倍化するなど、急成長してきています。
このような状況の中で社会問題になっているのが、ここで使われた廃ビニール類の後始末の問題であります。高熱、有毒ガスを発生するため一般のごみ焼却場で引き受けてもらえず、海洋投棄で漁業被害を起こすなど、さまざまな社会問題が起きており、農家の悩みの種になっているわけでありますが、このままでは施設農業発展の足を引っ張るおもしになりかねません。当局におかれても、この対策に一定の努力をされていることはわかっているのですが、その具体化が余りにも遅過ぎると思います。
農林水産常任委員会の県内視察で御坊市名田に設置されている廃プラスチック処理機のテストプラントを見せてもらってから、もう四、五年はたつような気がしますし、高知県の農業用プラスチック処理公社を視察してからでも三、四年はたちます。しかも、この間、農業情勢の変化のもとで施設農業の比重がだんだんと高まってきているのに、きのうの木下議員への答弁にもありましたように、対策の具体化が一向に進んでいません。ほんまにやる気があるのかと、しかりたくなる心境でありますが、それはそれなりに難しい問題のあることはわかります。
きのうの答弁にもありましたように、施設建設の財源問題、公社運営の赤字問題、業者委託による再生利用の問題や廃品回収のためのシステムづくりの問題等、解決しなければならない課題が多いようであります。しかし、具体化のために大きく踏み出していかない限り、机の上で幾らやきもきしていても問題は解決しないと思います。
聞くところでは、日高地方で農協や市町村関係者を含めた対策委員会がつくられ、ここでの検討に基づく一定の提言も行われているようであります。
そこで農林水産部長にお尋ねしますが、この処理対策の総合的検討のためにいたずらに日時を浪費するのではなく、たとえ最善の策を選択できない場合があっても、本県としてこれらの課題をどう解決し、どう乗り切っていくかという方針を明確に打ち出していただきたい。そして、これをどんな手順でいつまで完成させていくつもりかをお示し願いたいのであります。
最後に、年金生活者の問題で質問いたします。
先日、ある年金生活者の方は、こう語っていました。「なぜ生活に困っている年寄りを救おうとしないのか。純粋に年金で生活できる人はわずかですよ。私の場合、昨年の年金アップは月千円でした。ところが、消費税で月四千五百円、年間で五万円以上も取られることになる。これは、一・五カ月分の年金に相当する。消費税が高齢化社会のためなどというのは全くのうそですね」と。
全国で老齢年金を受給している人は一千四百万人と言われ、その六割以上が月平均三万円にも満たない国民年金の受給者であります。民間企業などの退職者を対象にした厚生年金受給者は約三百二十万人で、その平均月額は十二万円、公務員などが対象の共済年金受給者は約百七万人で、その平均月額は十六万五千円と言われています。ところが政府の家計調査報告によれば、六十歳以上の世帯の消費支出は平均月額二十六万円以上となっており、現在の年金では、高齢者が長生きしてよかったと言える社会にはほど遠い状態であります。
このような我が国の年金制度は国際的にも劣悪な水準でありますが、これまでも臨調行革路線のもとで保険料金の引き上げ、給付の切り下げが行われてきました。この上に、今度の通常国会に新たな年金改悪法案が提出され、現在、継続審議となっていますが、それは、一、厚生・共済両年金の支払い開始年齢を六十歳から六十五歳に繰り延べる、二、厚生年金、国民年金の保険料をそれぞれ引き上げる、三、国民年金に任意加入の二十歳以上の学生を強制加入させ、月額八千四百円の保険料を本人または親に負担させるなどという、ひどい内容であります。
例えば、年金支給開始年齢を六十歳から六十五歳におくらせるだけで、政府のモデル年金額十九万七千四百円で計算しても、この五年間の損失額が実に一千万円になります。これでは老後の生活設計が狂ってしまいますし、年金受給者はもとより、これから年金をもらう四十歳代、五十歳代の人たちにとっても深刻な問題であります。
先ごろ、「消費税収入は福祉に充てるんだ」と大見えを切った宇野首相の発言が、もしうそでないならば、今ごろこんなひどい改悪案が出てくるはずはありません。当然、今度の改悪案に対して、高齢者ばかりでなく、労働組合、学生、青年団体などを巻き込む多様な反対運動が広がってきています。そして、いま一つ大きな特徴は、年金生活者が組合をつくり、みずからの生活を守ろうとする動きが始まっていることであります。
本県においても、去る六月十七日に、一、公的年金を改善し、健康で文化的な生活のできる年金額に引き上げること、二、働きたい高齢者にその意欲、経験、能力に応じて就労を公的に保障することなどの要求を掲げて和歌山県年金生活者組合が結成されています。
まず、知事にお尋ねいたします。
今度の年金改悪案は、先ほど来申し上げてきたように、多くの県民の老後生活に重大な影響を及ぼしますので、知事より国に対してこの改悪案の撤回を求めていただきたいのでありますが、お考えを伺いたいのであります。
続いて、関係部長にお尋ねします。
年金生活者を初めとする高齢者の方々は、かつて郷土の発展のために力を尽くされた方ばかりであろうかと思われますが、この御労苦に感謝し、激励申し上げる気持ちを込めて、県民文化会館などで行われる文化行事等の割引券を差し上げることなどについて検討していただきたく思いますので、お考えのほどをお聞かせ願いたいのであります。
また、働く意欲のある高齢者に対し、雇用や仕事のあっせん、資金の貸し付けなどの面でどのような制度や施策があるのかについて、その手続を含めてお示し願いたいのであります。
最後に、高齢者のための施策は民生部、保健環境部、商工労働部などの多方面にわたりますので、先ほどの年金者組合等の要求に対応すべく窓口を設置していただけないかどうか、お伺いしたいのであります。
以上で、第一回目の私の質問を終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの小林史郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 小林議員にお答え申し上げます。
お話ございました中国問題や中国政府の対応につきましては、私もいろいろな報道機関等を通じて承知しておりますし、また関心も持っております。
中国は政治体制や経済体制も日本と違いますし、詳しい状況等はつまびらかでございません。ただ言えますことは、多くのとうとい人命が失われたことは、人道上、まことに遺憾であると存じており、一日も早く平常な状態に戻ることを望んでおる次第でございます。
この問題につきましては、中国の国内の問題でございますので、今後とも事態の推移を見守りながら慎重に対処してまいりたいと考えております。
次に、年金制度の改正について反対すべきではないかということでございます。
今回の年金制度の改正案は、世界に類を見ない速さで高齢化社会が進展している中で、老後の生活の支柱としての年金制度を長期的に安定的に運営していくためのものであると承知しております。
この議案は、国会において継続審議になっております。老後を安心して暮らせるように、将来の老後のあり方を見詰めて、国会において十分審議していただきたいと思います。
将来、年金支給者が六十歳から六十五歳に引き上げられますので、この法とともに雇用問題について最大限の配慮を払っていただくことが最も肝要なことではないかと考えております。
また、十年たったならばどうする、二十年後にはこのようにするということを規定している法でございますけれども、老後の生活設計に支障が生じないよう準備期間を十分設け、段階的に実施することが最も緊要ではないかと存じておる次第でございます。
○議長(西本長浩君) 知事公室長市川龍雄君。
〔市川龍雄君、登壇〕
○知事公室長(市川龍雄君) 御質問の友好提携の今後のあり方につきましては、本県と中国山東省とは友好提携の締結以来、教育、文化、経済等の各分野における交流を通じ、相互理解、友好親善を深めてまいったところでございます。これからも友好関係を続けてまいりたいとは考えておりますが、あわせて今後の中国情勢、また国の外交方針も十分踏まえて慎重に対処してまいりたいと考えてございます。
今年度の事業についてでございますが、派遣は経済、医学関係等、また受け入れについては中小企業、経済関係等、相互の交流が予定されておりましたが、状況を見守ってまいりたいと考えております。
なお、中止になった事業につきましては、第十回近畿青年洋上大学がございます。また、山東省から受け入れる予定の海外技術研修員につきましては、来県が延期になる見込みでございます。
次に、県民文化会館主催の文化行事などに高齢者割引をしてはどうかということでございますが、県民文化会館は県民文化の振興と向上に努めているところでございます。
県民文化会館主催による各種の舞台芸能や講座、講演等の文化事業でございますが、入場料を設定して実施している舞台等の催し物につきましては、多くの県民の方々に鑑賞していただくために、できるだけ入場料金を安価に設定してございます。
現在のところ、高齢者に対しての割引はいたしておりませんが、高齢者向けの催し物につきましては、昭和五十二年以来、健康問題を初め、福祉、趣味、文化等を内容とした寿講座を移動文化講座として県内各市町村において無料で実施し、多くの年寄りの方々から好評を得ているところでございます。
この問題につきましては、今後、高齢者社会を迎える中で、各施設の対応を十分見守りながら検討してまいりたいと考えてございます。
○議長(西本長浩君) 農林水産部長安田重行君。
〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) お答え申し上げます。
今回の農政審の報告は、今後の米政策及び米管理についての基本的な考え方と改善の方向を示されたものでございます。その概要につきましては、最近の米及び稲作をめぐる厳しい状況の中で、引き続き国内自給を基本に食管制度の役割を維持しつつ、米流通の主体を民間に移行させ、市場原理の導入による品質の評価、生産調整については生産者団体の主体的な取り組みなどが方向づけられたものでございます。
これが実施された場合、生産者、消費者両者の立場からの問題点として、いずれも大変難しい問題でございますが、四点の御指摘がございました。
市場原理が導入された場合、財政負担はもとより、消費者負担も考えられるところでございます。また、豊作による価格の低落が予想されますが、米の果たす機能の重要性から、別途これの対策があわせて検討されることとなっております。
中山間のいわゆる生産が困難な地域については厳しい事態を招くことも考えられますが、一方では、地域の特性を生かした有機栽培や自然乾燥の米、あるいは現今の安全健康志向の消費者ニーズに合った付加価値の高い米づくり等が考えられます。いずれにせよ、別途、必要な施策の検討があわせてされることになってございます。
また、外圧、自由化の問題についてでございますが、稲作は日本農業の根幹をなすものであり、国内自給を基本に食管制度をあくまでも維持するということになっておりますので、これによって自由化問題は左右されるものではないと考えてございます。しかし、いずれにいたしましても、本県のような零細規模農家にとっては厳しい状況になるものと受けとめております。
したがいまして、国に対しては、去る六月一日、近畿管内の農林水産部長会議において本県農業の実情を強く訴えてまいったところでございますが、引き続き、今後も国の動向を見守りながら対処してまいらなければならないと考えております。
次に、本県の生産農業所得の落ち込みの要因とその対策でございます。
議員御指摘のとおり、農家一戸当たりの生産農業所得は、昭和五十六年以降、減少傾向にございます。これは主に、本県農業の基幹作物であるミカン、ハッサク等、かんきつ類の市況動向の低迷によるものと受けとめてございます。
特に、議員御指摘の五十六年度対比の大幅な落ち込みにつきましては、五十六年度に限りミカン市況が突出し、前後の年度よりもよかったといった統計上における計数の問題もございます。しかし、県下でも高度集約農業を展開している中紀の市町村では、農家一戸当たりの生産農業所得が全国平均を大きく上回っております。したがいまして、ミカン園地再編対策を機に、これをプラス要因になるよう、さらに高品質農産物の生産、また野菜、花卉、果樹の施設農業や技術開発を積極的に推進するなど高収益農業の展開に鋭意努め、農家所得の向上を図ってまいる所存でございます。
次に、ミカン再編対策の現況と、その問題点はどうかということでございます。
かんきつ園地の再編対策につきましては、昨日、木下秀男議員にお話をいたしましたように、昭和六十三年度を初年度として三カ年で実施するものであり、生産者団体、関係団体が一体となって推進してまいったところでございます。
六十三年度の実績につきましては、現在、最終段階のチェック、集計を行っているところでございますが、その概要は、温州ミカンでは、本県の三カ年の目標面積二千四百二十ヘクタールに対して初年度で全体の五〇%の千二百ヘクタール、ハッサク等中晩柑では、初年度で七百八十ヘクタールが実施されたところでございます。これを態様別に見た場合も、温州ミカン、中晩柑を合わせ、他果樹へは全体の五五%と最も多くなっており、廃園が三一%、他作物九%、植林四%の順でございます。
次に転換先品目でございますが、紀の川流域では落葉果樹の柿、梅、桃への転換が主でございます。有田地域では、転換面積が少ないけれども、梅、野菜、花卉、また紀南地域では、梅を主体に野菜、花卉ということになっております。
その問題点でございますが、これだけの事業でありますので、少なからず問題点があるわけでございます。二年目、三年目の転換品目は農家の自主選択ということで国、県は一定の目標指示を出しておりますけれども、何を選択していくかということが大きな問題でございます。
一つには、きのうも木下議員にお答えいたしましたように、転換先については近い将来二の舞になってはならんということも十分考慮していかなければなりませんし、同時に廃園という問題が出てきておりますので、他の優良園に影響を与えないような廃園の善良な管理の問題もございます。
今後は、全国的な実施状況、あるいは需給動向、生産者の意向を踏まえ、本対策の円滑な推進に努めてまいりたい所存でございます。
次に、廃ビニールの問題でございます。
この点についても、きのう木下議員にお答えをいたしましたように、基本的には排出者みずからが処理することとなっておりますが、施設面積の増加が大幅に見込まれる中で、処理対策が極めて重要であると認識しております。このため、これまでも適正処理の啓発推進、あるいは他府県における処理状況の実態調査に努めてきたところでございますが、処理施設の設置については運営等に問題があり、今後も引き続き十分検討する必要があると考えてございます。
県といたしましては、本県に見合った対応を図るために、排出者、生産者団体、関係市町村、県等関係団体が一丸となり、できるだけ早い時期に適正処理に向けての組織づくりを進めたい、そして関係者のコンセンサスを求めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(西本長浩君) 商工労働部長天谷一郎君。
〔天谷一郎君、登壇〕
○商工労働部長(天谷一郎君) 高齢化社会の到来を迎えまして、高年齢者の雇用就業対策はますます重要な課題となってきてございます。県といたしましては、六十歳定年を基盤として、六十五歳程度までの継続雇用が促進されるよう事業主指導に努めながら、高年齢就職者に対しては公共職業安定所や高年齢者職業相談室における職業紹介機能の強化を図るとともに、各種雇用援護措置を活用し、再就職の促進に努めているところでございます。
さらに、六十歳代前半層を中心とした生きがい対策として、臨時的、短期的な就業の場を提供するためシルバー人材センターを設置するほか、婦人等就業援助センターでの内職あっせんなど諸対策の推進に努め、高年齢者の雇用の促進と安定が図られるよう一層努力をしてまいりたいと存じます。
○議長(西本長浩君) 民生部長高瀬芳彦君。
〔高瀬芳彦君、登壇〕
○民生部長(高瀬芳彦君) 年金生活者組合に対する窓口の設置についてでございますが、当該組合の事業内容が多くの部課にわたっておりますので、関係部課で協議してまいりたいと存じます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。
〔「農林水産部長に答弁漏れがあるように思うんですが。もう再質問でやります」と呼ぶ者あり〕
○議長(西本長浩君) 再質問を許します。
45番小林史郎君。
〔小林史郎君、登壇〕
○小林史郎君 それでは再質問させていただきます。
まず、中国問題でございます。
遺憾の意を表明されましたけれども、事態を見守るだけで、申し入れとか諌言といった積極的な対応をやらない。現状を見守り続ける、提携運動の見直しもやる考えはない、こういうように受け取れたわけですが、この御答弁、いささか残念に思います。
と申しますのは、けさ議員会館でテレビを見させていただいたんですが、中国は近く常務委員会を開き、デモ・集会を禁止する措置をとるというような話がありました。デモ・集会を禁止するというようなことは、二百年前のフランス革命以前に時代を逆戻りさせることになるんじゃないかと思います。こういうようなことは、資本主義社会であれ社会主義社会であれ、絶対許されないことだと思うんです。
本来、社会主義というのは、資本主義よりもより民主的で、人間が大切にされ、しかも自由が保障されなければならない、より自由でなければならないと私は思います。しかるに、残念ながら中国やソ連の現状は、決して肯定できるような状況ではございません。
中国やソ連において何でこんな否定的な問題が起きてくるかという点につきましては、私たちは、いわゆる資本主義的なデモクラシーを経ることなくして封建的な独裁体制、専制体制から直ちに社会主義へ入っていったため、人権問題で本当に苦労していない、人権を闘い取っていないというところに大きな原因があるのかと思います。そして、社会主義が始まって百年と、人類史から見た場合、歴史はまだ短く、いろんな誤りが出てきておる。これは決して見逃すことができないけれども、将来は必ず克服するだろうと確信を持っております。しかし、将来は克服されるであろうとも、現状を許すわけにはいきません。
こうした人権無視のやり方、民主主義否定のやり方に対して、積極的に発言なり行動をしていかなければならない。人権問題は国際問題である以上、国際世論の力によってこうした不当なやり方を抹殺していかなければならない、また変えていかなければならないと感じます。しかし、現状を見た場合、我が国の対応というのは、そうした観点に立っておりません。
これもきょうのテレビ報道でございますが、ECがアメリカに次いで、一致して中国のこういう現状に対して制裁措置を加えていくようです。その一つとして、経済協力も中止するというようなことが出ておったように思います。しかし、我が国を見てみると、今、ビジネスマンがどんどん北京へ帰っておるそうです。そうして、この間からの新聞論調などを見ると、日本は火事場泥棒でもうけようとしておる、もうけばっかりじゃないか、こういう国際的な非難も集まってきておるのが現状でございます。
かつて、南アのアパルトヘイト政策に対する対応の仕方はけしからん、手ぬるいということで国連において名指しの批判を受けたのも日本であります。こうした点から見た場合に、中国に対して、民主主義のいろんな点で経験を蓄えてきておる我々からもどんどん隣人としての発言をしていくことが非常に大事かと思うわけでございますが、残念ながら、先ほどの知事答弁も公室長答弁も、そうした観点では非常な弱さがあるという感じがいたします。
再度お尋ねしても積極的な答弁は期待できませんので、こちらの見解を申し上げておくだけにいたしますけれども、この点を十分取り上げて今後検討くださることを要望しておきます。
次は、農業問題でございます。
行政的にいろいろ努力してくれている、対応を考えてくれておる、その姿はよくわかります。しかし全体として、政策課題の対応の仕方というのは、非常に受け身的である、消極的であるという感じがします。
例えば、和歌山県の農家一戸当たりの生産農業所得が非常に減少傾向にあるということでミカンの問題を挙げられましたが、いわゆる自然的な、経済的な環境面を言うだけで、これが自由化圧力──グレープフルーツなどの果物がいろんな形でどんどん我が国に入ってきておる。こういう現状との関連で、自由化対策としての取り上げ方や視点が弱いのではないか。また、最近の農産物の価格引き下げ政策についても、自由化との関連で、米価を初めいろんな農産物の価格がどんどん引き下げられていく中で本県の農家が非常な苦境に立たされているが、これに対し、積極的に農家の立場に立って政策の変更を迫っていくという視点が弱いような感じがいたします。
私は、もっとそうした点に力を注いで、言うべきことはどんどん政府に対しても物申していく、そういう姿勢を強くお願いしておきます。
一つ答弁漏れのような感じがしたのは、食管制度の改悪の問題で、政府が管理責任も放棄する、あるいは減反政策も生産者団体に任せて責任をとらないということになれば、米は国家が管理・規制している品目であるから自由化ができないという、いわゆるガットで主張する根拠がなくなるのではないかというお尋ねをしたわけですが、ガットの場でそういうことはあり得ないと言うんか、あると言うんか、その答弁がなかったように思うんです。そこをもう一度はっきり答弁していただきたいと思います。
それから、廃ビニールの処理の問題であります。
一生懸命いろいろ考えてくださっておることはわかりますけれども、しかし言い出してから、もう相当時間がたっておる。しかも、具体的な解決の見通しも立っていない。部長の答弁では、生産者団体や関係者で組織をつくってこれから対応を決めていくということでございますが、いつまでもだらだらと相談ばかりしておるんじゃなしに、何年間ぐらいをめどにしてやり上げていくんだという決意があってしかるべきでないかと思うんです。こういった点、部長として考えておられるのかどうかも御答弁願いたいと思います。
以上で再質問を終わります。
○議長(西本長浩君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
農林水産部長安田重行君。
〔安田重行君、登壇〕
○農林水産部長(安田重行君) 小林議員の再質問にお答えを申し上げます。
今回のこの報告は、市場原理を強く導入するということでございます。しかし一方では、食管制度という格好の中においては国が厳然と維持管理をしていく、したがって政府米四〇%を持っていくということでございますので、自由化や外圧についてはそれだけで左右されるものではないというふうに考えておるところでございます。
それから、廃ビニールの処理に対する行政としての時期の明示でございますが、ただいま、きのうもお答えいたしましたように、できるだけ早い時期に適正処理ができる組織づくりをしたい、そして関係者のコンセンサスをつくっていきたいと御答弁をさせていただいたわけでございます。時期の明示ができればいいんですが、残念ながら現時点で県としては、いつどうするかということの御回答は申し上げられません。そういうことを含めたコンセンサスをつくっていくということでございます。
○議長(西本長浩君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
45番小林史郎君。
○小林史郎君 農林水産部長に要望しておきます。廃ビニールの問題です。
できるだけ早くということでございますが、私は、一年以内、二年以内にやれと、こういう時期を明示せえと言っているのではないんです。少なくとも、その取り組む姿勢として、一応の目標を設定してこの間にやり上げてしまおうという──それは十年であろうと五年であろうと、そういうものは明確に持つべきではないかと申し上げておりますので、その点、十分受け取っていただいて、できるだけ早く実現していただくことを要望申し上げておきます。
以上で終わります。
○議長(西本長浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で小林史郎君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○議長(西本長浩君) 本日は、これをもって散会いたします。
午後三時七分散会