平成元年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(森 利一議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午後零時四十五分再開
○副議長(山本 一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
○副議長(山本 一君) 質疑及び一般質問を続行いたします。
40番森 利一君。
〔森 利一君、登壇〕(拍手)
○森 利一君 私は、まず、産業廃棄物処理場の問題について質問をいたします。
三輪崎高地区における産業廃棄物処理場問題は、住民の強い反対のため長期にわたり紛争を続けていたのでありますが、去る十二月二十一日付をもって、県は申請者にその許可を与えたのであります。
反対する住民と県との間では若干の話し合いが持たれたのでありますが、県はこの許可申請について、法的には許可の基準に適合しておれば許可しなければならないのだという理由をもって、十団体の反対、五千二百名に及ぶ反対署名もむなしく、住民の納得のいかないまま一方的に許可されたのであります。許可を得た業者は直ちに処理場の建設工事にかかり、目下、建築中であります。
私も、先日、現地を見に行ってまいりましたが、既に廃棄物の搬入が始まったのか、焼却炉もできていないのに廃材を焼く煙が噴火のように立ち上り、ちょうどその日は小雨の日でありましたけれども、煙は処理場から下にはい下がって三輪崎・佐野住宅街に濃霧のように立ち込めていました。この処理場に隣接して一軒の農家があるのでありますが、そこのおばさんは、「きょうは風があちらに吹いていますが、風向きによっては煙に襲われたら洗濯物も干した布団も台なしで、それこそ人間も犬も家の中に閉じこもっているのがやっとです」という話をしていました。そして、反対した地元住民たちは、許可を強行された今、「わしらはどんな条件をもって許可されたのかは知らんけど」と言いながら、処理場建設工事を横目で見ながら、白けた態度で行政の今後を見守っているのであります。
したがって、住民の側から申せば、懸案の事項は話の詰まらないまま、また業者との話し合いもなされないままの許可でありますから、企業との公害防止協定を結ぶなどという和らいだ段階ではさらさらないのであります。
そもそも、この処理場許可申請の前、昭和五十九年ごろから、ある業者が許可を得ないまま廃棄物をこの場所に持ち込み、不法処理を行っていたのであります。地元民の話では、勝浦ドックに毒性の強いドラム缶入りの廃油や近畿電気のPCBを含んでいるおそれのある廃棄物など多種多様なものが埋められ、放棄されたと言っているのであります。もちろん、地元からは再三再四にわたり強い取り締まりを要求したのでありますが、この不法投棄が何と四年にわたり強行されたのであります。
結局、この不法業者が現在の申請して許可された業者に昭和六十二年三月に土地所有権を移転しているのでありますが、地元民は、何で不法投棄の最中に権限を持つ県が強い取り締まりをしてこれを制止することができないのかという、不法者に弱く住民に強いという行政に対する不信が根本に大きく横たわっているのであります。
実際問題として、掘削調査や土壌、水質検査を行わなければならないところまで、どうして不法投棄を放任していたのかということについて、その理由をまずお伺いいたしたいのであります。
次に、当廃棄物処理場のある高地区は、時間雨量で百ミリに及ぶことが珍しくないという大降雨地帯であり、その背後の山林はすべて東南斜面に位置して、しかも地すべり地質で、その山林に降った雨はこの傾斜の急な六千五百平米の処理場に流れ込むのであります。現に昨年九月の豪雨でも山崩れがあり、大量の土砂が現場に流入し、下流の農地や共同墓地にまで被害を及ぼしているのであります。これらのことから地元の人々は、災害時に土石流が処理場もろとも下流へ押し流されて下流域に大惨事を引き起こすおそれがあるとして反対をしたのでありますが、強固な土どめや擁壁などの安全確保について、あわせて環境の保全、火災の防止などについてどのような条件や留意事項を課しているのか、説明を願いたいのであります。
次に、地元の人は、下流の谷には昔はハゼや小エビが多く見られたが、今では全然姿が見えなくなってしまった、不法投棄のせいではないかとうわさしているのであります。これらの因果関係については別の機に譲るとして、現在、この下流には伏流水を飲用している家庭も相当数あり、また三輪崎漁協も海岸のアラメ等の枯死によりアワビ、サザエの稚貝の死滅が多くなっていると警戒しているのでありますが、不法投棄を含め、廃棄物からの有害物質の溶出、水質検査等について、許可条件の中で今後どのように規制されていくのか、説明を願いたいのであります。
次に、この処理場に至る道路は農道であります。もともとこの高地区には道がなくて架線や背中で荷物を運んでいたのでありますが、ここ十数年ほど前にありがたくも農道の指定を受け、地区民が農地や山林を喜んで寄付もして完成された、本当に価値のある道路であります。いまだに未登記のために税金を払っているということであります。そこへ、地区民の反対する処理場が来てトラックやダンプが頻繁に往来するのであります。私も、時にこの坂道を車で上ることがありますが、大型の対向車にでも出会ったら大変で、幅員三・五メートルの曲がりくねった坂道を三十メートルも五十メートルもバックさせられることは、まさに命がけの感であります。また、運搬車から落ちこぼれた廃棄物の処理や整理などについて道交法以外の交通の問題も含めてどのように指導しているのか、質問をいたします。
次に、さきの不法投棄以来、住民は行政に対して大きな不満と不信を持っているのでありますが、納得のいかないまま許可された今も、設置反対代表から質問状も出されているとおり、住民は「どんな条件で許可されたのか。毎日監視人がついているわけではないし、何を持ってきて焼かれるのか、どんな毒性のものを埋められるのかわかったものではない。それかと言うて、わしらではなかなか業者に何もよう言わんしのう」とこぼしているのであります。許可をした県行政はこれらの声に何と答えられるのか。すなわち、不法投棄など許可条件の違反にどのように取り組み、監視、監督をしていくのか、住民の納得いく答弁を求めるものであります。
次の問題でありますが、新宮市の浸水対策について質問をいたします。
昨年九月六日、新宮地方を襲った集中豪雨は、午前九時から十時までの時間雨量が八十一ミリ、午前九時半から十時半までの参考時間雨量は実に百三十三ミリという、新宮としては過去にその例を見ない記録的な豪雨であり、恐らく全国的にも市街地に降った雨としては最高のものではないかと言われているのであります。いかに多雨地帯で雨になれている市民でも、真っ暗くなった空から走る閃光、割れるような雷鳴、たたきつけて降るような雨には慄然として恐怖におびえたのであります。
この記録的な豪雨により、瞬く間に床上浸水二百三十八世帯、床下浸水千六百二十九世帯、道路崩壊、橋梁流失、河川の決壊など、六億五千万円に及ぶ甚大な被害を受けたのであります。特に新宮市の低地帯である市田川流域におきましては、二十数地区、七十ヘクタール以上にわたって浸水被害を受けているのであります。
この集中豪雨は那智勝浦町から新宮市に集中し、熊野川上流に至らなかったために熊野川の増水がなく、したがって熊野川本川から新宮市の市田川への逆流がなかったという好条件の中でありましたが、それでもこのような浸水被害が出たのであります。新宮市の低地帯浸水対策につきましては、昭和四十五年以来、国や県のお世話になりまして公共事業として巨額の予算が導入されて市田川、浮島川の改修が進められ、その効果も大きく上がっているときにこの記録的な大災害に見舞われたのであります。
さて、これらの災害により新宮市の浸水対策の問題点が明らかになってまいりました。まずその一つは、浮島川排水機の問題であります。
災害当日の新宮土木の浮島川ポンプ操作状況を見ると、「九時三十二分、運転体制に入る。水位三・二八メートル。この間、降雨状況、十分間降雨強度十・五ミリから判断して自然流下。九時四十分も同じ。十時二十五分ごろから、気象アメダスによる雨雲の移動状況及び水位上昇の鈍化から判断して排水開始。水位四・四○メートル。この間、雨量及び水位の状況を見ながらゲートの開閉操作を繰り返す。十一時三十分、ゲートを全閉し排水する」といったような記録をされているのであります。
この土木事務所の記録にもありますとおり、予想を上回る降雨のため、ポンプ排水をとめて自然流下の方法をとっているのでありますが、この浮島のポンプ排水能力は五トンであり、時間雨量三十五ミリに対応するものであります。今回のような時間雨量百三十三ミリというような時点でゲートを閉めてポンプを操作しても、排水能力が低いため、かえって上流の浸水被害を大きくするだけであります。今回も、ポンプに頼り切った浸水地域の住民から、ポンプ操作がおくれたための人災だという強い抗議が出たのでありますが、結局はポンプの排水能力が低いため、上流に浸水被害が出ていても、その上にゲートを閉めて被害を大きくするよりも、自然流下により被害を最小限に食いとめる方法をとったのであります。
この浮島浸水地帯は年に数回浸水の起きる低地帯でありますが、幸い県の施策として浮島川ポンプ排水場が設置され、被害を最小限に食いとめ、住民も喜んでいたのでありますが、今回の豪雨の結果、ポンプ能力の問題がクローズアップしてきたのであります。
なお、ポンプの技術者の話によりますと、現在のようにポンプ一台で操業中、何かの故障で運転不能にでもなれば大惨事を引き起こす可能性を憂えていることもつけ加えて申しておきたいと思います。
以上のとおり、浮島川排水機の増設は緊急を要する問題でありまして、浸水地の住民とともに、その増設を強く要望する次第であります。
次に、問題の第二点でありますけれども、市田川下流にかかるJR鉄橋の橋脚の問題であります。
この鉄橋は本線と引き込み線が併設され、それぞれ三台ずつ計六台の橋脚が川幅の狭い市田川を占有しているのであります。その上、二列に並ぶ橋脚が左右ちぐはぐになっているため水の流れを阻害し、増水のときは水をせきとめる作用をして、しかもこの橋脚は相当古い時代の工事のため、橋脚の根入れが浅く周囲の掘り下げができないため、これより上流の河積が確保されていない、すなわち上流の河床の掘り下げができないため市田川の完全な改修が不可能な状態になっているのであります。この橋脚のネックが解消されない限り、市田川周辺の浸水問題は解消されないのであります。この橋脚問題について、JRとの交渉経過等について説明をお願いしたいのであります。
第三の問題は、市田川河口のポンプ排水機であります。
このポンプ場は、昭和五十七年八月、台風十号により熊野川が増水し、その上、ダムの放流などが重なって市田川に逆流、市内各地に大きな被害を受け、激甚災害対策特別緊急措置事業として建設されたものであります。熊野川本川からの逆流を防ぎ、あわせて市田川の排水を行うものでありますが、今次災害の経験を通して、十トンポンプ一台の能力では到底増水した市田川の水を吐き出すことは不可能であることが証明されたのであります。新たにポンプの増設を国に強く要望しているのでありますが、これについてもその経過状況等を説明いただきたいと思います。
次に、市田川上流の仙竜橋から磐盾橋に至る約六百メートルが未改修になっているのでありますが、今後の改修計画を説明願いたい。
佐野川の大幅な予算確保と早期整備を要望しているのでありますが、当面の改修計画を質問いたします。
次に、道路の問題であります。
紀南・新宮地方から阪神・京都方面への輸送、観光などの交通は、ほとんど百六十八号、百六十九号が利用されるのであります。また、松阪を通って名阪高速に入る方法もあります。紀伊半島縦貫道とか高速道路の紀南延長などとありがたいことではありますが、これはまだまだ夢の時代のことでありますから、現実の問題といたしましては、中京方面や阪神地方へ出るためには松阪へ五条へ橿原への道が早く改修されることが望ましいのであります。新宮市及び新宮商工会議所の大きな方針の中にも、百六十八号、百六十九号の早期改修が取り上げられているのであります。県としても、この百六十八号、百六十九号の改修のおくれが県南部発展に大きく関係することを強く念頭に置かれて、奈良県、三重県との協調の上、この促進を強く要望するものであります。答弁を願います。
次に、学習指導要領の改訂について質問をいたします。
文部省は、去る二月十一日、幼稚園指導要領及び小・中・高の学習指導要領案を発表したのであります。この学習指導要領は、中曽根前首相の「戦後教育の総決算」の意を受けて設けられた臨時教育審議会の答申に基づいて新しい教育課程がつくられ、それをもとにして今回の学習指導要領が作成されたのであります。
学習指導要領とは、教科の目標や内容、学校行事の方針、授業時間数、教科書作成の基準となるものでありまして、学校教育の基本となる非常に重要な指導要領であります。今回の改訂は、「ゆとりのある教育」を柱として定められた十二年前の指導要領を全面的に改訂したもので、戦後教育の流れを大きく変えるものであるとして注目されているのであります。
制度面におきましては、小学校一、二年の社会、理科を廃止し、新たに生活科を設け、また習熟度別学習を中学校に導入し、選択科目の履修を中学校にまで引き下げ、高校の社会科は解体、そうして地理歴史及び公民の両教科に編成し、高校の家庭科は男女必修となったのであります。教育の目標を「情報化、国際化、価値観の多様化の進む二十一世紀の社会に対応できる心豊かな人間を育成する」として、個性の重視、道徳教育の充実を図ることに重点を置き、国旗、国歌の指導を強化し、入学式や卒業式には日の丸を掲揚し、「君が代」の斉唱を義務づけているのであります。
この学習指導要領の改訂によって日本の教育が大きく変わり、学校が変わり、子供が変わるのでありますから、国家百年の大計にもかかわる重大な問題としてとらえられ、特に生活科の新設、中学校の差別、選別につながる習熟度別学習、高校社会科の解体などに大きな反対の世論が起こっているのであります。
私は、この重要な問題のすべてを取り上げて論ずる時間もありませんし、またその能力も及びませんが、この指導要領改訂に対する県教委の考え方やその中で特に問題となっている日の丸・「君が代」の義務化と日露戦争の東郷元帥の登場についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
それについて、まず指導要領改訂に対する新聞論調でありますが、毎日新聞二月十二日の「学校の授業は良くなるのか」という社説をちょっと読み上げてみます。
「(前略)その意味で、今回の改定案は次の三点で不満である。第一は、国粋主義的な傾向がうかがわれることだ。従来、日の丸と君が代を学校行事で掲揚、斉唱することが『望ましい』となっていたのを、強制に変えたのはその一つだが、小学校の歴史では、各時代の事項ごとに取り上げるべき人物四十二人をはじめて例示している。現在でも、七社の教科書には百三十四人が登場している。文部省が取捨選択した基準は明確ではないが、例示には新たに東郷平八郎元帥など三人が含まれている。 日清戦争や日露戦争での勝利が、日本の国際的地位を高めたことは歴史的事実としても、戦争を扱うならば、戦争の悪もまた理解させる必要がある。戦争と将軍が主体の歴史像を子どもに植えつけるようなことは、平和国家の形成者を育てるという教育基本法の精神からも好ましくない」。
次に、朝日新聞のこれも社説であります。見出しは「学習指導要領は『個性重視』か」。たくさんあるわけですが、前略いたしまして読んでみます。
「一方で、懸念される個所が少なくない。 一つは『日の丸・君が代』の問題だ。おとなの世界で意見が大きく分かれていることがらを、特定の立場に立って学校教育に持ち込むのには疑問がある。 それなのに、今回の指導要領は『入学式や卒業式などでは、国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導するものとする』と、現行の指導要領の表現(『儀式などの場合は……望ましい』)よりもさらに具体的で厳しくなった。義務化であり、学校での混迷は深まるだろう。納得しがたい。 国民的合意ができていないのに、文部省が主張を通した部分は、ほかにもある。道徳をさらに重視する方向しかり、高校社会科の廃止しかり。小学六年の社会科で日本海海戦の東郷平八郎のように、これまでの教科書にはまったく登場していない人物を『取り上げて指導すること』とした点も、そうだ。 東郷平八郎を小学生に必ず教えるべきかどうかについては、中島前文相が最後まで反対したように、さまざまな意見がある。しかし、文部省の担当幹部は『これまで日露戦争の記述では、与謝野晶子ら反戦的な人物が扱われ過ぎた』と主張した。こうした多分にイデオロギー的な発想で『取り上げる人物』を指定しているのであれば、その姿勢の公正さに疑問を持たれても仕方がない」──後略いたします。
私も、国旗を掲揚するとともに国歌を斉唱するよう指導するとして、これを守らねば処分するというような文部省の態度は、国民の良心や思想の自由、また信教の自由にも抵触するものであり、「文句を言わんと黙って歌え」──黙っては歌えませんが──式の極めて高圧的な国家主義的な復古調の教育と考えるのであります。
さて、先ほどの新聞社説にもありましたが、東郷元帥の例示をめぐって中島前文相は、「日本海海戦という局地戦の司令官である東郷元帥をもって日露戦争全体は語れないのではないか。また、新指導要領に国旗、国歌の学校への定着、高校社会科の解体は盛り込みたいが、これに東郷元帥を加えると特定の意図があるような誤解を生む」として反対。これに対して文部官僚は、「現行の教科書には『君死にたまふこと勿れ』の与謝野晶子など反戦の人物ばかり取り上げているので東郷元帥は絶対必要だ」として平行線をたどり、結局、中島文相の退任を待って東郷元帥の例示が正式に決定したと報じているのであります。
かくして、「敵艦見ゆ、本日、天気晴朗なれども波高し、各員一層奮励努力せよ」と指令した東郷元帥が日露戦争を代表する人物として登場し、反戦平和の詩人・与謝野晶子の名は消えていったのであります。
この文部官僚の調子でいけば、海軍の東郷が出るなら陸軍は二○三高地の乃木将軍、まかり間違えば東条英機も復活するというようなことになれば、日本はもう一度奈落の底へということになるのでありますが、そういった冗談は別として、この日の丸・「君が代」の強制と東郷元帥の登場は、「天気晴朗」ではなく「雨もあらしも呼ぶものである」と私は強く感ずるのであります。
そこで、私の申し述べたいその一は、国会において第二次大戦の歴史的認識を問われた竹下首相は、「侵略戦争かどうかは後世の史家が評価する問題」だと居直りの答弁をし、国内外から厳しい反発を受けていることは御承知のところであります。
その二は、我が国の防衛費であります。これも国会で論議されたところでありますが、日本の防衛費は米ソに次いで世界第三位まで増強されているということであります。平和憲法のもとで専守防衛のはずの防衛費がついにGNPの一%枠を突破し、毎年五%、六%の突出を重ねている日本の防衛費が世界第三位と評されているのであります。
さらにその三は、今回の学習指導要領における国旗、国歌の強制であります。国粋主義的である、国民的合意ができていない、国家主義的イデオロギーの注入であるとして厳しい批判にさらされているのであります。混乱の起きることは必定であります。
その四は、東郷元帥の登場であります。戦後の教科書で初めて、かつて「軍神」とうたわれた東郷元帥が平和の詩人・与謝野晶子にかわって登場してきたことであります。
さて、私の懸念する第五番目であります。この指導要領を作成した直接の責任者は、リクルート未公開株の譲渡を受けながら「妻のしたことだ」と大うそをつき、政界進出をたくらんでパーティー券を各県教委に押しつけ、文部省ルートで既に事情聴取を受け、特捜部の捜査寸前と言われる元初等中等教育局長、元文部省事務次官・高石邦男氏であります。また、リクルートの家元であり既に逮捕され起訴された江副浩正は教育課程審議委員であります。このほかの審議委員の中にも、リクルートに汚染された者が数名いるのであります。
「教育は、不当な支配に服することなく」という教育基本法の精神のもとで、神聖であるべき学習指導要領がリクルート汚染にまみれ、しかもそうした汚れた手でつくられた指導要領の柱が、皆さん、「道徳教育の充実」であります。まさに、日本の教育を冒涜することも甚だしいと言わざるを得ないのであります。私は、戦争の時代と平和の時代を生きてきたのでありますが、今、平成元年ではなく、あの昭和初年の「いつか来た道」の感さえするのであります。
以上、るる申し述べましたとおりでありますが、県教育委員会は今回の学習指導要領案をどのように受けとめているのか、特に混乱を予想される日の丸・「君が代」の義務化についてどのように考えておられるのか、東郷元帥の例示についてもその所見をお伺いするものであります。
以上で、私の第一問を終わります。
○副議長(山本 一君) ただいまの森利一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仮谷志良君。
〔仮谷志良君、登壇〕
○知事(仮谷志良君) 森議員にお答え申し上げます。
産業廃棄物の問題、新宮市の浸水対策は担当部長から答弁させていただきます。
私から、国道第百六十八号、第百六十九号について説明させていただきます。
お話ございましたように、百六十八号線、百六十九号線は、新宮から国土軸へ連絡するという五條なり橿原に最も近い道でございまして、その重要性について十分認識しておるわけでございます。そうした意味において、この両線の改良計画に積極的に取り組んでおるわけでございます。
現在、百六十八号の改良率は、和歌山県側が約八五%になっておるわけでございます。未改良区間は、奈良県との県境付近で三・四キロ、熊野川町と本宮町との境界で四・七キロとなっておるわけでございます。このうち、熊野川町と本宮町間の四・七キロについては、昭和六十三年度から事業に着手して積極的に仕事を進めておるところでございます。奈良県側は、現在、五五%程度の改良率となっております。従来、奈良県に対し、これの積極的な推進方をお願いしてきておるわけでございます。今後とも、なお一層進めてまいりたいと思っております。
百六十九号線につきましては、御承知のように県境が入り組んでいるところが多いわけでございます。交通不能区間の早期解消を図るため、建設省に権限を移管いたしまして、建設省でこの工事をやっていただいておるわけでございます。
現在、北山村付近の小松トンネルが開通いたしまして、その先の橋梁工事を行っております。また、北山村側だけではなしに熊野川町側からも工事をやっておるわけでございまして、平成元年度より東野トンネルに着工する予定になっており、まず、この不能区間三・七キロについて平成六年度末に供用するよう進めているところでございます。県事業としては、宮井地区において改良工事に取り組んでおり、本年度は一億五千万円の予算をお願い申し上げておるところでございます。
○副議長(山本 一君) 保健環境部長尾嵜新平君。
〔尾嵜新平君、登壇〕
○保健環境部長(尾嵜新平君) 産業廃棄物関係についてお答えを申し上げます。
最初に、過去の不法投棄についてでございます。
前の土地所有者の当該場所での不法投棄については、昭和五十九年から行われていたものでございます。これについては、県としても見過ごしていたものではなく、本人に対して保健所から再三にわたり、廃棄物の搬入を中止させるとともに、産業廃棄物処理業を営むには許可が必要である旨、手続等について強く指導してまいったところでございます。
次に、今回の処理場の許可に際しての条件、留意事項等についてでございます。
昨年十二月二十一日付の許可に係る産業廃棄物については、一般的に安定型産業廃棄物と言われる廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくずや陶器くず、及びいわゆる建築廃材と言われる五種類でございまして、有害物質が含まれていないものに限定して許可をいたしたものでございます。許可に際しましては、地元住民及び事業者と七回にわたる話し合いを行い、住民の方からの懸念については許可条件及び留意事項として業者指導に反映させております。
許可条件といたしましては、第一に、擁壁の建設の都度、確認を受けて廃棄物を処分すること、第二に、擁壁等各設備の定期点検の励行と損壊のおそれがあるときは早期に改善措置を講ずること、第三に、処分場下流の水質測定と焼却炉の煙道排ガスの測定及び測定結果の報告など十八項目を付しております。
また、留意事項といたしましては、第一に、処分場への車両の通行については農業用車両等の通行を優先させること、第二に、処分場の環境保全への配慮と道路清掃等の励行、及び新宮市、地域住民の行う道路清掃等環境整備に積極的に協力すること、第三に、公害防止協定の早期締結など、十項目について指示いたしております。
その中の水質検査につきましては、許可条件の中で水質中のpH、BODなど、生活環境保全に関する項目について二カ月に一回以上、水銀カドミウムなど有害物質については六カ月に一回以上測定することとし、また焼却炉の煙道排ガス中の窒素酸化物濃度、硫黄酸化物濃度、ばいじん濃度及び塩化水素濃度については六カ月に一回以上測定をしていただくことになっております。これらの測定結果については、保健所に報告することを義務づけております。
処分場への道路につきましては、先ほども触れたように農道として整備されたものでございますので、舗装等の現状から、搬入車両は積載能力四トン以下に限定をいたしてございます。また、通行方法につきましては、農業用車両等の通行を優先させるとともに、道路清掃の励行等を留意事項として業者に指示いたしております。
最後に、許可条件違反等に対する監視についてでございます。
許可条件や留意事項の履行状況につきましては、適時、立入調査の実施による確認と業者からの報告等により確認するとともに、適切な指導を行ってまいる考えでございます。工事着工後、保健所において現地調査を行い、その都度、業者を指導いたしておるところでございます。
なお、地元新宮市職員の立入調査権を盛り込んだ公害防止協定の締結については、新宮市に対し指導しているところでございまして、これにより、きめの細かい監視ができるものと考えております。
以上でございます。
○副議長(山本 一君) 土木部長松永安生君。
〔松永安生君、登壇〕
○土木部長(松永安生君) 新宮市の浸水対策について、五点、順次お答え申し上げます。
まず、浮島川ポンプの増設についてでございます。
浮島川のポンプによる排水計画は毎秒十立方メートルでございます。議員御指摘のとおり、現在、暫定的に毎秒五立方メートルのポンプ一台が稼働しております。残りの排水施設については、平成元年度よりポンプ増設計画の調査を行うこととしております。
次に、市田川下流にかかるJR鉄道橋の対策についてでございます。
御質問のJR橋の箇所は建設省管理区間であることから、かねてより建設省とJRとの間で協議を進めてまいりましたが、そのうち橋脚の補強工事については、平成元年度より着手する予定で協議が進められております。
次に、市田川河口の直轄管理のポンプ増設については、議員御指摘の地元の状況は建設省も十分承知しているようでございますが、市田川流域の浸水対策としては、まず河道の整備を急務とし、平成元年度より先ほどのJR橋梁の補強工事に着手、引き続きしゅんせつ工事を進めることとしております。
次に県管理区間でございますが、仙竜橋から磐盾橋に至る間の未改修箇所については、現在、用地買収を進めているところであり、地元の協力が得られるならば平成二年度で用地買収を完了し、引き続き工事に着手する予定でございます。
最後に佐野川については、当面の整備方針として河口より支川・荒木川の合流点までの間を重点的に進め、その後、支川・荒木川の改修に移っていきたいと考えております。また支川・木の川については、今回の災害関連事業等を活用して進めることとしております。
○副議長(山本 一君) 教育長高垣修三君。
〔高垣修三君、登壇〕
○教育長(高垣修三君) 学習指導要領の今回の改訂についてでございます。
まず、「心の教育の充実」、「自己教育力の育成」、「基礎・基本の重視と個性教育の推進」、「文化と伝統の尊重と国際理解の推進」の四つが骨子となってございます。
これは、二十一世紀を目指して社会の変化にみずから対応できる心豊かな児童生徒の育成を図ることをねらいとしたものでございまして、特に個性尊重と国際理解の教育を重視したものと受けとめてございます。
次に、国旗、国歌についてでございます。
昨日、鈴木議員にもお答えをいたしましたとおり、国際社会が到来して国家間の依存関係が深まっている中で、信頼される世界の中の日本人として生きるために、我が国の文化や伝統を大切にすることを教えるとともに、国旗、国歌を尊重し、日本人としての自覚を養うことが必要であると考えます。また、そのことが外国を正しく理解し尊重することにつながるものと考えてございます。
最後に、お尋ねのございました東郷平八郎についてでございます。
これは、小学校六年生の社会科に登場する、いわゆる歴史上の人物四十二人の一人として例示をされたものでございます。歴史学習では、すぐれた文化遺産や人物の働きなどについて関心や理解を深めることが重要であると考えてございます。
以上であります。
○副議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
40番森 利一君。
○森 利一君 産業廃棄物問題についてでございます。
私は、この質問を通じて保健環境部長、環境調整課、新宮保健所の皆さんが非常に真剣になって取り組んでおるということを強く感じたものでありますが、いよいよこれからの問題でありますから、ひとつさらに真剣に取り組んでいただきたいと思います。
なお、住民が心配しております問題について念を押しておきたいんですが、業者が許可条件に違反した、違反行為を行った場合はどういうふうにするか、はっきり答弁を願いたい。
それからもう一つは、先ほど公害防止協定の問題等々出ておりましたけれども、住民から、この公害防止協定は住民と業者でするのではなくて、新宮市と業者との間で結んでいただきたいという要望があるわけでありますが、県はその方向に従って進めておるのかどうか。
この二点について質問をいたします。
それから、浸水対策について答弁をいただきまして、了承いたしました。
ことしは暖冬異変であります。そして、記録的な雨である。浸水に遭った人々が、ことしは大分やられるんやないかと心配しておるんでございますけれども、ぜひ県の方で力を入れて緊急の問題として取り上げていただきたいと思います。
それから、教育委員会の答弁でありますが、先ほど来、私は口角泡を飛ばして論じたわけでございますけれども、全然その論調は無視された形であります。特に、「君が代」・日の丸の問題等については、これはきのうの鈴木議員に対する答弁でありまして、きょうの私の答弁として受け取ることはできないわけでございます。
東郷平八郎の問題についても、「東郷平八郎が入ったことをどう思うか」と私は質問したんです。そうしたら、「東郷平八郎を例示しています」という答弁です。全然、質問と答弁がかみ合っていない極めて不満な答弁でありますけれども、この指導要領の改訂ということは、今、本当に教育界で重大な問題でありますので、教育委員会もひとつ十分研修されて、自主的な和歌山県教育委員会の意見というものを十分持って今後に対処していただきたい。今後、さらに機会を重ねて質問をしてまいりたいと思います。
以上で、私の再質問を終わります。
○副議長(山本 一君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
保健環境部長尾嵜新平君。
〔尾嵜新平君、登壇〕
○保健環境部長(尾嵜新平君) お答えいたします。
違法行為等に対する対応でございます。
立入調査等により、許可条件の不履行や許可品目以外の産業廃棄物の取り扱いなど違法行為を確認した際には、措置命令、営業停止命令等の行政処分を含めて、厳正に対処してまいる所存でございます。
二点目の公害防止協定については、県としては許可条件や留意事項を盛り込んだ包括的な公害防止協定の締結について新宮市に対して指導しているところであり、既に市と業者の間で協定の締結についての協議に入っていると聞いております。今後とも、協定の締結に向け、県といたしましても、必要に応じ支援してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○副議長(山本 一君) 答弁漏れはありませんか。──以上で、森利一君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
○副議長(山本 一君) 本日は、これをもって散会いたします。
午後一時三十八分散会