平成30年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号
平成30年9月 和歌山県議会定例会会議録
第5号(藤本眞利子議員の質疑及び一般質問)
◆ 汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、人名等、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。
質疑及び一般質問を続行いたします。
32番藤本眞利子君。
〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)
○藤本眞利子君 皆さん、おはようございます。4日目ということで大変お疲れのことと思いますが、しばらくよろしくお願いいたします。
まず、1番目に、運動部活動における体罰の防止についてお伺いしたいというふうに思います。
県議会においては、8月6日に臨時の文教委員会が開かれ、教育委員会から県内の高校における体罰の問題について報告がありました。
事案の詳細は省きますが、7月13日から3泊4日、校内で行われたラグビー部合宿中の出来事でした。バーベキューで飲酒した教師が部員の発言に激高し暴力を振るった上、けがをさせたものでした。当該教員は懲戒免職という厳しい処分を受けたのですが、校長への報告、保護者への報告が全て後回しになっていたことを考えると、暴力に対する当事者意識が欠落していたと言わざるを得ない状況だと考えます。
文部科学省では、平成24年12月に発生した、大阪府内の高校のバスケットボール部の顧問が同部キャプテンの男子生徒に体罰を加え生徒が自殺するという事件をきっかけに、体罰禁止の徹底を図るための実態把握を都道府県に指示しています。
平成25年の調査結果によると、平成24年度の体罰の状況は、国公私立の小学校、中学校、高校、特別支援学校を合わせると、発生学校数4152校、発生件数は6721件となっています。被害児童生徒数は1万4208人にも上り、体罰の場面は、小学校では授業中が最も多く、中学校、高校では部活動中が多いという結果になっています。
その後、毎年、体罰の実態把握が行われており、平成28年度の状況では、発生学校数748校、発生件数838件と徐々に減少していると言えますが、これは認知できた数であり、実際にはもっと多いと考えられます。また、体罰の場面は、小学校では授業中がやはり最も多く、中学校、高校では部活動中が多いということに変わりはありません。
このたびの県内の高校の事件を見ても、体罰という名の暴力について理解と認識がまだまだ浸透していないと考えます。そこで、今回は教育の一環であるスポーツと暴力について、以下でお伺いしたいと思います。
最近は、スポーツ界でのパワーハラスメント、暴力についてのニュースは枚挙にいとまもありません。レスリング、アメリカンフットボール、ボクシング、体操と次から次へと報道されています。日本におけるスポーツは感動と勇気を与えてくれる一方で、スポーツ界全体が暴力を容認し内包していると考えます。その体質は、教育的指導という名のもと、中学校や高校の運動部活動にも及んでいるのではないでしょうか。
文部科学省では、平成25年5月に、運動部活動での指導のガイドラインを作成し、体罰等の許されない指導と考えるものの例を具体的に示し、これを禁止しています。しかし、なぜ今なお体罰という名の暴力が終わらないのでしょうか。そこには、スポーツという分野以外では許されないけれども、スポーツでは許されるという文化が内在しているように思われます。
さて、名古屋大学大学院の教育発達科学研究科の内田良准教授が、「教育という病」という本を書いておられます。その中で、学校の管理下の災害を過去にさかのぼって運動部活動の死亡事例を独自に集約、整理したものがあります。その結果を見ると、昭和58年度から平成25年度の過去31年間に850人もの児童生徒が命を落としています。そのうち、中学校が308名で36.2%、高校が524人で61.6%を占めています。
一方、中学校、高校の主要運動部活動について部活動別に見てみると、ラグビーと柔道の死亡率が突出して高くなっています。
また、8月10日の「産経新聞」に、日本スポーツ振興センターがまとめた調査結果が載っています。これによると、昭和50年から平成29年の42年間で、高校や中学校のクラブで活動中に熱中症で亡くなった生徒は146人で、そのうち最も多いのが野球で32人、次いでラグビー17人、柔道16人と続きます。
部活動で命を落とす、これは全て指導者が注意をすれば防げた事故であります。また、学校全体が責任を負うべき行為であると考えます。学校関係者だけではなく、そういった行為を容認してきた社会も責めを負うべきだと考えます。
高温の環境下での練習をさせる、正座や直立等の姿勢を続けさせる、無意味な運動を繰り返す、連帯責任として罰則のような運動をさせる、これらはいまだに日常にありがちなものばかりです。
また、顧問が生徒に暴力を振るったとしても、「暴力はしたけれど、生徒の成長を願っての指導で、体罰ではない」とか「強くなってほしいから指導の一環で行った」という教育の名をかりた暴力が行われている現状があり、これを変えていかなければなりません。
先日、プロのラグビー選手と体罰の問題や指導のあり方についてお話をする機会がありました。彼が言うには、「日本の部活動は精神論的な指導が多過ぎる。プロは、練習時はけがをしないことを最優先にしているし、練習時の休憩のとり方や水分の摂取などについてもよく考えている。この間、高校の指導に行ったが、余りにも非科学的な指導内容で、僕たちさえもすごくしんどかった」というふうに話されていました。
さて、テニスでは、大坂なおみさんが全米大会で優勝するという快挙をなし遂げましたが、彼女を支えたコーチがクローズアップされました。なおみさんの精神を支えたのは、彼女への励ましや、あなたならできるというメッセージでした。毎日、パワハラ情報ばかりの日本のスポーツ界も見習うべきことが多いと思います。
先ほどお話ししたように、文部科学省が運動部活動での指導のガイドラインを示しています。この前書きは、「全国各地域の学校において、体罰が根絶されるとともに、指導の内容や方法について必要な検討、見直し、創意工夫、改善、研究が進められ、それぞれの特色を生かした適切で効果的な指導が行われることにより、運動部活動で生徒一人一人の心身の成長がもたらされることを願っております」というふうに結ばれています。
文部科学省のガイドラインは、あくまでもガイドラインであるため、各都道府県によって取り組みに温度差もあり、体罰はやってはいけないと認識されていても、それが現場にどれだけ説得力を持って伝わっているのかは、甚だ疑問であります。
そこで、教育長にお伺いします。
教育委員会として体罰の実態を把握されていますか。体罰防止について、これまでの取り組み状況をお伺いします。
勝ちたいために、つい過度な練習になってしまうことはよくあることです。それが全て悪いということではありません。ただ、熱心になればなるほど閉鎖性を強め、非民主的な上下関係をつくってしまいます。また、顧問による体罰、しごきなどが生まれやすく、けがや命のリスクを高めてしまうという事例もよくあります。
教育委員会として、今後、部活動から体罰を根絶するためにどのような対策を行っていくのか、お伺いします。
○議長(藤山将材君) ただいまの藤本眞利子君の質問に対する答弁を求めます。
教育長宮下和己君。
〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 体罰についてでございますが、体罰は、学校教育法第11条において禁止されており、児童生徒の心身に深刻な影響を与えるとともに、教員及び学校への信頼を失墜させる決して許されない違法行為であります。
議員御指摘のとおり、平成25年に国が実施した体罰に関する調査において本県でも相当数の事案があったことから、該当教員に対して厳正に対処するとともに、体罰根絶に全ての学校で徹底して取り組むよう、校長、教員を指導いたしました。また、平成25年度から運動部活動指導者研修会を毎年開催し、指導方法に関する顧問の意識改革を図っております。ことし4月には、国の運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインの内容を加えた和歌山県運動部活動指針を策定し、体罰を根絶するよう指導してまいりました。
こうした取り組みを行っている中でも毎年数件の体罰が報告されており、その都度、厳正に対処してまいりました。しかしながら、ことし7月に県内の高校において顧問による生徒への暴力事案が発生したことは、まことに遺憾であり、大変厳しく受けとめております。
このことから、7月末に臨時の県立学校長会を開催し、改めて体罰根絶に向けて各学校等で取り組むべき4点について私から指示いたしました。
1点目は、服務規律の遵守と綱紀の厳正保持及び県運動部活動指針を徹底することであり、各学校において直ちに校長が全教職員を指導いたしました。
2点目は、全ての顧問を面接し、課題や問題点を洗い出し、改善に向けた取り組みを進めるよう指示いたしました。
3点目は、今後の部活動のあり方について、コミュニティ・スクールにおいても議論を深めることであります。
4点目は、高等学校体育連盟や高等学校野球連盟等が重要課題であるとして再認識し、みずから体罰をなくす取り組みを徹底して行うよう指導いたしました。高体連では、運動部活動適正化推進委員会が新設され、体罰根絶に向けた検討が進められております。高野連においても11月に研修会が計画されております。また、中体連においては、既に適切な部活動の運営についての研修を実施しており、今後は高体連と連携を図りながら取り組むよう指示しております。
県教育委員会といたしましては、今後、体罰根絶や科学的根拠に基づいた指導方法等に関する研修を体系的に実施するなど、体罰を根絶するため、粘り強く取り組んでまいります。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 体罰というのが違法行為であるというふうに今指摘をされておりますし、体罰を根絶するために取り組んでいくというふうに今答弁いただきました。
私が知る範囲ですけれども、過去、体罰をしている教員を管理職に任用したり教育委員会に出向させたり、そういう事例もあるわけですね。教育委員会が、その当時ですので、体罰というのは余り重要視していなかった時代だったんかなあというふうにもまた思っているんですが、また、部活動で体罰をしている顧問が、強くなるために仕方がないというふうに、周りがその顧問にも何も言えなかったりという、そういうこともあったわけです。
しかし、何度も言いますけれども、教育という名のもとの体罰は決して許されないと私は思います。社会や教育現場には、まだまだ体罰を容認する体質というか空気がまだ残っているということを前提に、今後さらに関係者、関係団体とともにしっかりと取り組みを進めていただきたいというふうに思います。
次の質問に入ります。人権行政の推進についてお伺いしたいというふうに思います。
部落差別の解消の推進に関する法律が施行され、丸1年半が過ぎようとしています。法律では、現在もなお部落差別が存在していることを認め、部落差別の不当性を明確に規定しています。この法律では、国及び地方公共団体の責務が明らかにされました。この間、法律に基づき、どのような具体的な施策が行われてきたか、以下でお尋ねしたいと考えます。
法律に、「情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ」とあるように、インターネット上における差別行為についても指摘しています。
昨年2月の定例会の質問時に、「県といたしましては、インターネット上での差別的な情報について、通報を受けたり発見した場合は、被害者への助言や、法務省と連携してプロバイダー等へ削除要請を行っているところでございます。また、同和問題を正しく理解していただくとともに、情報モラルや情報リテラシーを持ってインターネットを利用するよう、関係機関と一緒に県民の皆様への教育啓発を引き続き行ってまいります。さらに、インターネット上での本県にかかわる差別的な情報について現状把握を行い、国に対して働きかけていく材料といたします」というふうに答弁されています。
インターネット上の差別的な情報について、通報やたまたま発見した場合に被害者に助言する、法務省と連携して削除要請を行うという大変消極的なものでありました。このような方法でインターネット上の差別事件はなくなっていくんでしょうか。
和歌山市では、部落差別解消推進法をきっかけに、本年度よりモニタリング事業を開始しました。毎日2時間程度、非常勤職員と担当課の職員によるモニタリングを実施し、プリントアウトした上、法務局やプロバイダーに削除依頼を行っているとのことでした。しかし、個人にかかわるもの以外の削除は難しいとのことでした。
全国的に見ると、篠山市、三田市、尼崎市、福山市、伊丹市等々も実施しており、兵庫県や三重県、鳥取県でも実施されています。まだまだ数は少ないですが、監視することの意義は大きいと考えます。
市町村だけではなく県として、本県にかかわる差別的な情報について現状把握する必要があると思います。市町村にお任せではない、県としての主体的な取り組みが必要と考えますが、見解をお聞きします。
次に、人権相談についてです。
昨年の答弁では、「相談体制の一層の充実に向け、改めて県や市町村の担当職員が相談に的確に対応できるよう研修を実施したところであります。加えて、市町村に対しても、法の趣旨を踏まえた取り組みを強く働きかけてきたところです」とあります。
これも和歌山市なんですが、これまでも人権相談の窓口を設置してきましたが、今年度は人権ホットラインを設置するなど、新たな取り組みを開始したと聞いています。県内の市町村の相談体制の状況はどうなっていますか、また市町村へどのような働きかけをされているのか、お伺いします。
次に、部落差別解消推進法が制定された平成28年度は、障害者差別解消法、ヘイトスピーチ対策法も制定、施行されました。これら3法は、差別をなくすことを目的として制定されました。
その一方で、悪質なインターネット上での差別書き込みなどの行為は、とどまるところを知らず拡散されています。しかし、それに対して有効な対策が講じられていない現状であります。また、ヘイトスピーチに至っては、公衆の面前で堂々と差別言動が繰り返され、差別をあおっている実態が報告されています。
県では、平成14年に和歌山県人権尊重の社会づくり条例を制定しています。条例が制定されてから16年がたとうとしていますが、この間、社会の状況は大きく変化しました。私は、県の条例において、規制や救済を盛り込むべきだと考えます。差別に対する規制、救済措置をどのようにするかなど、あらゆる差別を許さない姿勢が求められていると思いますが、県としての見解と取り組みをお伺いします。
○議長(藤山将材君) 企画部長田嶋久嗣君。
〔田嶋久嗣君、登壇〕
○企画部長(田嶋久嗣君) インターネット上の差別的な情報につきましては、差別の拡散、助長につながる悪質なものと認識しております。
県では、これまでも国の人権擁護機関である和歌山地方法務局と連携し、プロバイダー等への削除要請を行ってまいりましたが、今後は、差別的な情報のモニタリングも実施し、差別の拡散、助長の抑止に努めてまいります。
次に、市町村における人権相談につきましては、県内全ての市町村におきまして人権相談窓口を設置し、対応していただいております。県では、市町村の担当職員が相談に的確に対応できるよう毎年研修を実施するなどの取り組みを行ってきたところであり、今後も引き続き、市町村と連携、協力して相談体制の充実に努めてまいります。
次に、あらゆる差別を許さない姿勢につきましては、県では、不当な差別が行われることなく、全ての人の人権が尊重される平和で明るい社会の創造を目指しております。そのため、和歌山県人権尊重の社会づくり条例に基づき、和歌山県人権施策基本方針を策定し、人権施策の総合的な推進を図っているところであり、今後も、社会の状況の変化や新たな法令の施行などの動きを踏まえ、時宜に応じた基本方針の改定を行い、市町村等と連携しながら相談体制の充実や教育、啓発など、必要な取り組みを推進してまいります。
また、差別に対する規制や差別された場合の救済措置については、全国的な課題であり、国が法制度を整備するなど、責任を持って対応すべきであることから、国に対して実効性のある法制度の整備を求めてきたところであり、一日も早く整備されるように引き続き強く働きかけてまいります。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 インターネット上の差別というのは、まるでモグラたたきのようでありまして、たたいてもたたいても次から次へと新たな差別が生み出されているわけですよね。現状では削除要請することが精いっぱいでということで、何か差別はやられたい放題だなというふうな感じもしまして、県では今回モニタリングを実施するというふうにしておりますので、これも全ての市町村と連携して取り組んでいただけるように要望したいというふうに思います。
また、現状では規制とか救済が難しいということなんですが、国へ要望していただけるということで、県としては今後何ができるかということは検討を続けていただきたいというふうに要望したいというふうに思います。
次に移ります。児童虐待の防止についてお伺いしたいというふうに思います。
昨年9月定例会でも児童虐待の防止について質問させていただいています。児童福祉法改正に伴う新しい社会的養育ビジョンの提言を受けた上で、児童虐待への取り組みをただしたものです。
冒頭では、児童虐待の相談件数が右肩上がりの増加の一途をたどっている現状をお話しさせていただき、虐待を受ける子供たちを年齢別に見てみると、学齢前の子供が44%という高い割合を占めていることも指摘させていただきました。また、虐待者の約5割が実の母親であり、実の父親も合わせて8割以上が実の父母であるという結果でありました。
国としても、本年7月20日付で、児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議による児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策を発表しています。本年3月に東京都目黒区で起こった5歳児の死亡事件を契機に発表したもので、児童虐待防止対策に関する閣僚会議において、国、自治体、関係機関が一体となって子供の命を守り、子供が亡くなる痛ましい事件が二度と繰り返されないよう、児童虐待防止対策の強化に向け、厚生労働省を初め、関係府省庁が一丸となって対策に取り組むこととしたとあります。
国の緊急総合対策では、児童虐待防止対策体制総合強化プランの骨子が示されており、2019年度から2022年度までに児童相談所、市町村の専門職の配置を図るための取り組みを進めるとしています。この緊急総合対策の中で私が一番注目しているのは、児童虐待の早期発見・早期対応の項目であります。私は、最近、虐待が起こってからの対応では虐待から子供たちを守れないという危機感を感じています。
さて、ことし6月に、県立医科大学保健看護学部において、トリプルPジャパン研究会わかやま大会が開催され、全国から子供たちの養育にかかわる研究をされている皆さんがお越しになりました。トリプルPとは、ポジティブ・ペアレンティング・プログラムの略称で、聞きなれない方もおられると思いますが、親子関係をよくするため、ふだんの子育ての場面で親が子供にどのように向き合えばよいのか、どのような声かけがよいかを学ぶプログラムです。
その中で、NPO法人トリプルPジャパンの理事長をしている柳川先生は、「養育者の子供への不適切な言動は子供の虐待へと進展する」と述べられています。
また、その大会に講師としてお越しになっていた医療法人井上小児科医院院長の井上登生先生のお話を聞く機会をいただきました。
井上先生のお話は、虐待予防のためには、虐待をしてしまう養育者を支える視点が大変重要であり、子供への不適切なかかわりを改善できるような具体的な支援が必要であるとのことでありました。
井上先生は、母子保健・地域医療分野では知らない方がおられないぐらい著名な方で、大分県中津市で井上小児科医院を開業しており、医院には地域子育て支援センターとともに発達行動相談室も併設しています。その井上先生は、中津市における児童虐待予防の中核を担っていただいています。
ヒントをいただきたくて、中津市に視察に行かせていただきました。
中津市の母子保健の大きな特徴は、妊娠期から乳幼児期、その後の発達過程において、養育者と市町村関係者、医療関係者が顔の見える関係を築きながら養育を見守っていく形ができていることでした。
支援は、母子健康手帳を交付するときから始まります。母子健康手帳を交付するときは、面接室で必ず保健師が行い、妊娠中や出産前後に周囲のサポートがあるかどうかを確認しながら、支援が必要と判断した妊婦について特定妊婦としてかかわりを開始する体制が整えられています。出産後も乳児家庭全戸訪問、健診時ごとのかかわり等を通じ、顔の見える連携した関係づくりが進められています。健診時に気になる事案は訪問を引き続き行い、関係機関への連携も進められています。訪問や健診でのデータは全ての関係者が共有できるように蓄積されており、必要に応じ、ケース会議やカンファレンス会議が行われています。
中津市の取り組みは、県としても大変参考になるものです。
県でも、虐待防止に向け、さまざまな対策を行っています。それでもなお虐待件数は減少していません。子供たちを守るために何が足りないのか、真剣に考え込んでいます。
9月11日の「朝日新聞」に、「虐待、心取り戻した親」という見出しで記事が掲載されていました。悪いと知りながら感情が抑えられない、子供に手を上げてしまう、そんな親たちに向けての研修の記事でした。
その研修を主催している森田ゆりさんは、「事件のたびに親への非難が沸き上がるが、本当に必要なのは精神的なケア。当事者を袋だたきにして終わりという構造を変えない限り、事件はなくならない」とコメントしています。虐待防止にかかわる方がよく言われることが集約されています。子供の問題は、親の問題なのです。
県内でも、中津市と同じように母子保健の施策として、母子健康手帳交付時の聞き取り、乳児家庭全戸訪問、健診事業などを実施しています。同じ施策は行われているのですが、例えば、養育者と保健師との関係を顔の見えるものにまで発展させ、それを継続されているのでしょうか。全戸訪問した後や健診後のフォローは、きめ細かく続けられておられるのでしょうか。
厚生労働省から、平成30年7月20日付で、母子保健施策を通じた児童虐待防止対策の推進についてという通知文が都道府県に対して出され、子育て世代包括支援センターに関しては、「児童虐待の発生予防のためには、妊娠期から子育て期まで関係機関が連携し、切れ目のない支援を実施することが重要」と明記されています。児童虐待は、発生してまってからでは遅いのです。
そこで、福祉保健部長にお伺いします。
児童虐待の未然防止に重要な役割を果たすことが求められている子育て世代包括支援センターの本県での設置状況と取り組み内容はどうなっていますか。また、県として、児童虐待の未然防止のために、市町村支援も含め、どのような施策を進めていますか、お伺いします。
○議長(藤山将材君) 福祉保健部長山本等士君。
〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 児童虐待の未然防止のためには子育て家庭の悩みや不安が深刻化する前に早期対応することが極めて重要であることから、子育て世代包括支援センターでは、親の不安や孤立感を軽減するため、妊娠期から子育て期まで切れ目なく必要な支援を行っています。
県では、これまで市町村に対して、センターの開設準備経費や運営費の財政的支援と、支援プランの様式提示などの技術的支援による設置促進のための取り組みを行ってきており、現在、19市町村において設置運営されています。
国においては2020年度末までに全ての市区町村での設置を目指していますが、本県では、こうした取り組みにより2019年度末までに全ての市町村に設置される予定となっております。
このセンターでは、保健師などの専門職が母子健康手帳の交付や健診などの機会を捉えて妊産婦や乳幼児の実情を継続的に把握し、相談支援や、必要に応じ個別の支援プランの作成を行っています。その上で、気になる親子につきましては家庭訪問や保健指導の実施、親子教室の紹介などを行うとともに、専門的な支援が必要な場合には、保健所の療育相談や発達相談につなげたり、医療機関など関係機関と対応を協議し、適切な支援を行っています。
また、育児によるストレスは児童虐待につながるおそれがあるため、地域全体での見守りがその予防に重要であると認識しており、広く県民に対し、リーフレットの配布や広報紙、ホームページ等を活用した啓発活動のほか、課題を抱える親子への相談や行政との橋渡しを行う児童委員や母子保健推進員に対する研修の実施など支援を行っているところです。
あわせて、子育ての悩みや不安を抱える方に対する相談体制として、全国共通ダイヤル189などにおいて、24時間365日体制での電話相談を実施しています。
県としましては、今後、県内どの市町村においても同様の支援が受けられるよう、母子保健や子育て支援にかかわる専門職の知識と技能の向上を図るための研修を実施するとともに、一部の市町村で実施されている親と子供のかかわり方を学ぶ親支援プログラムを周知し、他の市町村での取り組みを促進するなど、児童虐待の未然防止に一層努めてまいります。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 虐待の未然防止について御答弁いただきました。
子育てを経験された方ならおわかりいただけると思うんですけど、子育ては本当にストレスのかかる作業です。若い親たちが子育て中は多かれ少なかれ悩みを抱えています。忙しい中、言うこと聞かない子供をたたいてしまうというようなことはよくあることでして、虐待の未然防止のためには子育てのスキルを学んでいただける機会を提供することだというふうに考えます。切れ目のない支援の中に、前向きに子育てに取り組むスキルを学ぶペアレンティングというソフト面での支援策をしっかりと整えていただきたいというふうに要望します。
次の質問に入ります。全国知事会の米軍基地負担に関する提言について、知事の所見をお伺いしたいと思います。
8月14日に、全国知事会は、政府及び在日米国大使館に対し、米軍基地負担に関する提言の要請活動を行いました。
全国知事会では、先日お亡くなりになった翁長沖縄県知事から、米軍基地負担の軽減について検討する場を全国知事会で設定すべきという提案を平成27年12月に受け、米軍基地負担に関する研究会が翌年の28年7月に設置されました。これは、米軍基地に係る基地負担の状況を基地等の所在の有無にかかわらず広く理解し、都道府県の共通理解を深めることを目的に設置されたものです。
このたび、北海道で開催された全国知事会議の場において、「米軍基地負担に関する提言」を7月27日付全会一致で取りまとめ、その後、先ほど申し上げました8月14日に、政府や在日米国大使館に要請活動を行いました。
提言では、日米安全保障体制は重要であるとしながらも、米軍基地の存在が航空機騒音、米軍人等による事件、事故、環境問題により基地周辺住民の安全・安心を脅かし、基地所在自治体に過大な負担を強いている側面がある等々、5点にわたって現状の指摘がなされています。
その上で、地位協定の抜本的な見直しなどを提言しました。提言が要求していることは当たり前の項目ばかりであります。
「1、米軍機による低空飛行訓練等については、国の責任で騒音測定器を増やすなど必要な実態調査を行うとともに、訓練ルートや訓練が行われる時期について速やかな事前情報提供を必ず行い、関係自治体や地域住民の不安を払拭した上で実施されるよう、十分な配慮を行うこと。2、日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の保障などを明記すること。3、米軍人等による事件・事故に対し、具体的かつ実効的な防止策を提示し、継続的に取組みを進めること。また、飛行場周辺における航空機騒音規制措置については、周辺住民の実質的な負担軽減が図られるための運用を行うとともに、同措置の実施に伴う効果について検証を行うこと。4、施設ごとに必要性や使用状況等を点検した上で、基地の整理・縮小・返還を積極的に促進すること」を求めています。
知事会が住民の安全・安心を最優先に取りまとめた日米地位協定の見直しに言及したこの提言は、今までにない画期的なことであると思います。この提言は、沖縄本島の約15%の面積を占める基地の現状や、全国の米軍専用施設の面積の約70%が沖縄県に集中することによる沖縄県民の苦しみの声を代弁したものとなりました。
折しも横田基地へのオスプレイ配置が報道され、住民の不安が増大している中での提言は、大きな意味を持つものと考えます。
生前、翁長知事は、「憲法の上に日米地位協定がある。国会の上に日米合同委員会がある」とおっしゃっていました。飛行ルートの説明もない、訓練の事前報告もない、事故があっても立ち入りすらできない、事件があっても取り調べもできない現状を改めていかなければならないと思います。
そこで、知事にお伺いします。
知事は、全会一致で採択したこの提言についてどのような所見をお持ちなのか、お伺いします。
○議長(藤山将材君) 知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私自身は欠席でございましたんですが、全国知事会議において他の知事の方々も賛成したように、私もこの提言の内容にはもちろん賛成であります。
その上で、私が思ってることを申し上げたいと思います。
在日米軍基地問題に関しては、日米両政府が合意して、日本と極東の平和と安全を確保するため、安全保障上の観点から配備され、その上で、地政学上の観点からも沖縄に基地が集中していることは事実であるというふうに思います。今の世界情勢を考えると、日本の安全保障上、どうしてもこれは必要だと私は思います。しかし、それにより沖縄県民に多大な負担をおかけし、その負担のもとで日本の安全が何とか保たれている状態であるということについては、日本国民の1人として、沖縄の方々に頭を下げて、済まないと思っております。
提言にある地位協定の関係で申し上げますと、日本の安全保障上、米軍の飛行訓練は必要かもしれませんが、かつて米軍の実施するオスプレイの低空飛行訓練ルートが急遽、本県上空を含むオレンジルートに変更されたにもかかわらず、事前に我々に連絡がないということがございましたが、これについて、この議会で不快感を表明したこともあります。そのときも、現行法制上こうなることが予定されていることは自分としてはよくわかっているけれども、不快だというふうに申し上げたわけでございます。
現行法制上は米軍も国土交通大臣に事前に飛行計画を通報しなければならないということになっておりますけれども、民間機と違いまして、国交省の管制に服さなくてもよい場合も多うございます。さらに、県に対して知らせることは予定されておりません。有事の際は別といたしまして、平時の訓練においてもこれでよいのかと私は常に疑問に思うところでございます。そのため、日本地位協定による現行法制はそうであるとしても愉快でないというふうに申し上げたわけで、今もその考えに変わりはありません。
しかしながら、これらの取り扱いは、日米安全保障条約の締結以来、日米両政府の合意に基づき決定してきた経緯があり、また、その他のさまざまな取り扱いとパッケージになっていることから改めることは容易ではないというふうに思いますが、長い目で見て、日本人として努力して、いつかは改善していくべきものだと私は思います。
○議長(藤山将材君) 藤本眞利子君。
〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御答弁ありがとうございました。
私も、この提言の日米地位協定の改善というのは、改善の第一歩、きっかけになって、これが実現されるようになればいいというふうに思っております。御答弁、本当にありがとうございました。
これで、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(藤山将材君) 以上で、藤本眞利子君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前11時38分休憩
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