平成30年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


平成30年6月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


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  午後1時0分再開
○議長(藤山将材君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 12番鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕(拍手)
○鈴木太雄君 皆さん、改めまして、こんにちは。
 実はきょう、6月20日、後ろにおられる藤山議長の誕生日でございまして、(拍手)大変おめでたい日なんですが、大変申し上げにくいんですが、42歳ではなくて43歳になりまして、(「訂正願います」と呼ぶ者あり)はい、公私ともに今後とも、議長におかれては頑張っていただきたいと、このように思っております。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問を行います。
 大項目の1として、梅産地の現状と課題について、3点にわたり質問を行います。
 まず、小項目の1、収穫見通しとその市場単価についてであります。
 古くから日本人に愛され、親しまれてきた梅は、本県を代表する農作物で、その生産量は昭和40年から半世紀以上にわたり日本一を誇っており、年によっての増減はあるものの、実に全国の6割を占める状況であります。また、本県の梅栽培面積は全国の約3割ですので、面積割合に比べ収穫量の割合が他県よりも非常に高いことがうかがえます。
 その和歌山県と梅の歴史をひもとくと、江戸時代の紀州藩田辺領下において、痩せ地は免租地であったことから、そこに梅を栽培したことが本格的な梅栽培の始まりだと言われております。また、田辺領がその痩せ地を利用した梅の栽培を奨励するとともに、保護政策をとったため、田辺・みなべ地方を中心に広がったとも伝えられています。
 そして、その梅の栽培が急激に増加したのは、明治40年以降の二度にわたる世界大戦のころからで、軍用食あるいは戦時中の食料として梅干しの需要が高まったことにあります。また、戦後経済の復興とあわせ、果実類の需要が増加していくのと同様に、梅栽培につきましても、特に昭和30年代以降伸びていきました。その後、優良品種の「古城」、「南高」の出現と高度経済成長期の食生活の多様化に伴う梅需要の伸びとが相まって、梅の栽培面積がさらに増加をいたしました。
 一時、梅干し需要の伸び悩み等あったものの、昭和56年ごろからの健康食品ブームに乗って梅干しが消費者に見直され、価格の上昇や梅栽培面積の増加がともに図られてきました。また、こういう流れに沿って収穫量も増加してきたわけでございます。
 こういった状況のもと、梅の栽培農家を初め製造販売業や観梅による観光業等の梅関連産業は、非常に裾野の広い地場産業として発展をし、紀南地域のみならず、本県における地域経済の大きな柱へと成長してきました。
 しかしながら、近年における本県の梅産出額は、生産農業所得統計によると平成16年度は215億円でしたが、22年度には108億円に落ち込み、その後、増減しながら27年度には103億円と、16年度と比較すると約52%も落ち込んでおります。先月発表されたばかりの28年度の梅産出額につきましては、少し持ち直したものの、124億円にとどまっているようであります。
 言うまでもなく、梅の生産量や市場単価は全てにわたり基本となります。ちなみに、昨年の平成29年度産梅の状況を調べてみますと、開花期の低温により受粉が十分に行われなかったことや、5月から6月中旬にかけて降水量が少なく小玉傾向となった理由から、県全体の生産量は対前年度比89%の5万3500トン、系統扱いの青梅出荷量は対前年比82%の5501トンでありました。市場単価については、対前年比128%の1キログラム当たり493円で取り引きされたようであります。
 市場単価は一時期に比べ持ち直したものの、生産量についてはここ10年で最も少ない中での数字であり、梅生産農家にとって決して安心できる状況ではないと認識をいたしております。
 そこで、まだ収穫期間中ではありますが、平成30年産梅の収穫見通しとその市場単価について、昨年と比較するとどんな傾向であるのか、農林水産部長にお伺いをいたします。
○議長(藤山将材君) ただいまの鈴木太雄君の質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長原 康雄君。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 昨年産の梅につきましては、議員お話しのとおり、着果数が少なく少雨により小玉傾向であったため、過去10年で最も少ない生産量となりましたが、今年産は対前年比121%の6万5000トン程度と、平年並みの生産量を見込んでおります。
 また、開花後の気温が高く推移し、適度な降水量があったことから、生育が順調で病害虫の発生も少なく、品質は良好となっております。
 こうしたことで、系統扱いの青梅の販売状況は、6月16日現在、出荷量は小梅で312トン、古城で482トン、南高で4318トン、市場単価は小梅で1キログラム当たり572円、古城で502円、南高で466円となっており、青梅全体では出荷量は5193トンで対前年同期比128%、市場単価は472円で対前年同期比95%と、小梅、古城、南高とも現時点で順調に取り引きされていると考えております。
○議長(藤山将材君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の2、梅関連商品の消費拡大に向けた取り組みについて質問をいたします。
 6月6日が梅の日であることから、その前日である5日、梅産地の市町やJA等で構成される紀州梅の会は、東京大田市場での梅フェアを皮切りに、首相官邸を訪れ、安倍首相へさまざまな梅製品を贈りました。
 また、梅の日当日の6日には、熊野本宮大社やゆかりのある京都の下鴨神社と上賀茂神社に梅を奉納いたしました。いずれも、梅のPRと梅の豊作や梅産業の繁栄を祈願しての行事であり、毎年とり行われております。
 また、学校給食で梅の日前後に梅を食べてもらおうと、梅メニューの取り組みも行っていますし、昨年度からは神島高校の生徒たちがこの梅の日を広く知ってもらおうと、みずからが開発した梅商品等のイベント販売を行っております。
 こういった記念行事を含め、これまでにさまざまな梅の振興が図られてきました。近年におきましては、消費拡大に係る取り組みとして、梅の機能性研究やそれを生かした商品開発、あるいは食育関連団体や米産地との共同消費宣伝活動にも取り組まれております。
 また、香港やシンガポール、マレーシアにおいて梅販売キャンペーンを行うなど、国内のみならず海外での販路拡大も積極的に推し進められてきております。
 梅の生産量日本一を誇りながら、梅産出額が以前の約半分と低迷している中、梅製品を積極的に普及させ消費を拡大し、さらなる紀州梅ブランドの確立を図ることは、本県にとりましてこれまで以上に重要であると常々私は考えております。
 そこで、小項目の2として、近年における梅関連商品の消費拡大に向けた取り組みについて、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 梅関連商品の消費動向については、人口減少や食生活の多様化などによりまして梅干しや梅酒の消費が低下傾向にあることを深く認識しております。県といたしましては、梅関連商品の消費拡大に向け、さまざまな取り組みを行っているところです。
 まず、国内では、アジア最大級の食品・飲料専門展示会であるFOODEX JAPANを初めとした各種展示会への出展支援を行うとともに、わかやま産品商談会等の開催に取り組んでおります。また、本格梅酒の販売促進にも取り組んでおり、首都圏の百貨店での試飲会や梅酒漬け込みセミナーを開催するとともに、梅の機能性をPRするなど、消費層の拡大に努めているところです。
 近年、国内市場が縮小する中、海外へ販路を拡大することは非常に重要であると考えており、海外においても大型展示商談会への出展により梅関連商品加工事業者の販路開拓を支援しているほか、梅酒については台湾の贈答シーズンに合わせ、販促活動や、本年11月に香港で開催予定の「インターナショナル・ワイン&スピリッツフェア」への出展支援も予定しているところであります。
 また、青梅については、平成26年から香港への輸出を開始するとともに、現地でJAグループや生産者が梅酒づくりを実演しながら販売活動を支援しており、平成29年からはシンガポールやマレーシアへも取り組みを拡大しているところです。
 さらに、梅の多角的な消費に向けては、大手食品・飲料メーカーへ梅果汁や梅パウダーなどの梅加工品を原材料として提案し、県産食材を使った新たな食品づくりに取り組む一方で、県内事業者が開発した梅のドライフルーツ等の販路開拓にも取り組んでいるところであります。
 また、和歌山の梅の魅力を全国に発信するため、生産地の地勢や気候、栽培方法などをテロワールとして情報発信するとともに、若年層へのアプローチとして、梅加工品と県産果実を盛り合わせたわかやまポンチや、県内事業者が共同で開発した梅バーガーのPRに取り組んでいるところであり、昨年度は県内小学校と大手コンビニが新たにわかやまポンチを共同開発し、関西地方の約2800店で販売されたところです。
 これら梅関連商品の消費拡大に向けた取り組みは、梅販売価格の向上につながるなど、全国一の生産量を誇る本県にとって重要であると認識しており、今後とも梅の消費拡大に向けた幅広い取り組みを推進してまいります。
○議長(藤山将材君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目3の労働力の確保について質問をいたします。
 現在、全国的に人材、つまり必要な労働力の確保が職種を問わず困難であると問題視をされております。それは、農林水産業の分野においても例外ではありません。
 本県の基幹産業である農林水産業も同様で、特に梅やミカン等に代表される果樹農業におきましても、農業従事者の高齢化や急傾斜の畑では農作業の機械化は非常に難しく、人手に頼らざるを得ないなど取り巻く環境は非常に厳しいことから、労働力の確保が喫緊の課題となっております。
 このように、農業における労働力不足が叫ばれている中、農林水産省の呼びかけもあり、全国各地で援農の仕組みづくり等、課題解決に向けた取り組みが推進されております。
 例えば、本県とミカンの生産量を争う愛媛県の西宇和地域では、喫緊に農繁期の労働力を確保し、さらには担い手の確保、育成、定着を狙いとして、各関係機関・団体が連携をし、西宇和みかん支援隊という組織を立ち上げ、県内はもとより全国各地から西宇和ミカンの担い手、援農者を呼び込み、安定した労働力確保に向けて精力的にさまざまな事業を展開されております。
 また、大胆な規制緩和を実証する国家戦略特区法に外国人の農業就労が新たに加えられたため、現在既に特区指定済みの自治体に加え、その指定を得るために幅広い提案をする自治体が相次いでいる状況でもあります。これらのことからもわかるように、全国の農業地域は労働力の低下を死活問題と捉え、その対策に懸命に取り組んでおられます。
 現在、本県、特に紀南地域において梅収穫の最盛期を迎えておりますが、そういった中、人手が足りなく誰か紹介してほしいと多くの農家さんから相談を受けます。ことしの収穫量は平年並みではあるものの、特に手が回らない状況にあるとのことでした。以前より、人手を要するこの時期には、家族を初め管内、近隣市町あるいは知り合いからも多くのアルバイトを雇って梅の収穫をされてきましたが、年々人集めも難しくなり、苦労されているようであります。
 そこで、こうした状況を踏まえ、小項目の3として、農業における安定した労働力の確保、また収穫期や剪定期、いわゆる季節労働力の確保について、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 農家の高齢化や労働人口の減少が進行する中で、とりわけ果樹については、労働力のピークが収穫作業などの一時期に集中するため、農繁期の労働力確保が重要な課題であると認識しております。
 このため、県では、これまで農家求人情報サイト「グリーンサポート」を開設し、農家の労働力確保の支援に努めてきたところです。
 さらに、本年5月には、県やJA、和歌山大学、関係団体で構成する検討会を設置し、産地における労働力の実態調査を行うとともに、先進事例を踏まえた本県での方策について検討をしているところです。
 例えば、本県を代表する作物である梅とミカンでは繁忙期が重ならないため、お互いの労働力を補完し合えないか、また、水産業や林業の閑散時期の労働力もマッチングできないかといったような方策が考えられます。
 いずれにしましても、梅は本県農業の基幹作物でありますことから、今後もJA等関係機関と連携を密にしながら、季節労働力を含めた労働力確保対策の実現に向け、積極的に努めてまいります。
○議長(藤山将材君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 労働力の確保に向けて御努力をいただけるという御答弁をいただきました。やはり、本県にとって果樹農業は基幹産業であるとともに、特に梅栽培は世界農業遺産にも認定され、守り育んでいかなければならない産業でもあります。
 労働力の不足は耕作放棄地や鳥獣被害を増大させるとともに、生産量の減少や品質低下を招きます。また、そのことで産地力が低下し、産地全体の担い手がさらに減少するという悪循環を引き起こしかねません。ぜひ、喫緊に解決しなければならない問題として改めて認識をいただき、本腰を入れて取り組みを図っていただきたいと思いますし、地域や県内にとらわれることなく、その取り組みを深めていっていただきたいと思います。
 また、加えて、現在県は外国人の労働力が必要なほどの状況ではないが、人口が減少する中で将来的には外国人による労働力の確保が必要となる可能性はあると、こうされておりますが、季節労働や賃金等さまざまな問題があるにせよ、これからの1つの選択肢として、将来に向けてより一層検討を進めていっていただきたいと、以上、強い要望といたします。
 続いて、大項目の2として森林にかかわる税についての質問をいたします。
 まず、小項目の1、仮称・森林環境税及び森林環境譲与税の創設についてであります。
 既に皆さん御承知のように、平成30年度税制改正大綱におきまして、仮称になりますが、森林環境税の創設が明記されるとともに、閣議決定されたところでありますが、この税の導入については、国において長期間にわたり幾度となく検討されてきました。以前の一般質問においても申し上げましたが、1986年に林野庁が10年間の限定措置として水源税の導入を提案したことに始まり、近年では市町村長で組織する全国森林環境税創設促進連盟や市町村議会議員による全国森林環境税創設促進議員連盟を中心に、全国森林環境税の創設を目指し、その活動が展開をされてきました。
 また、昨今の山地災害の激甚化等により、国民の森林に対する期待の高まり等も受け、平成29年度与党税制改正大綱では、税の創設について平成30年度税制改正において結論を得るとされ、その後、与党税制調査会における議論が行われた結果、ようやく平成30年度税制改正大綱に、平成31年度からの税創設が明記されたわけであります。
 以上のように、森林環境税の創設により安定的な財源が確保されることは、森林面積が県土総面積の約77%を占める本県において非常に有意義なことであり、森林の公益的機能の発揮を初め、山村地域を中心とする地方創生にも大きく貢献するものであると考えます。
 そこで、まず小項目の1として、森林環境税及び森林環境譲与税の創設について、法案はまだ通過をしておりませんが、国へ長期間にわたって要望活動を行ってこられた知事の御見解をお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 森林環境税の創設により、議員お話しのとおり、森林率77%を占める本県においては、森林整備に係る安定的な財源が確保でき、一定の評価をしているところであります。
 その使途は、間伐や人材育成、担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の森林整備及びその促進に係る費用とされ、県や市町村の実情に応じ事業を実施するものとなっております。市町村においては、かなり多くの財源を付与されるということになりますので、いろいろ考えていただきまして、間伐など森林整備に活用していただきたいと思っております。
 なお、これまで森林整備の業務は主に県が行っておりまして、そのためのスタッフもいる。一方、市町村では専任の職員が少ないという状況でありますので、森林環境税の創設に伴い市町村が新たな役割を担うことから、県としては市町村における業務が円滑に進むように、民間委託をする際のノウハウの周知とか、あるいは県による事務代行などの支援を行ってまいりたいと思います。
 今後、森林環境譲与税を活用した森林整備を進めることにより、森林が有する公益的機能の保持はもとより、新たな雇用を生み出し、地域の活性化が促進されるように取り組んでまいりたいと思います。
○議長(藤山将材君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 続いて、小項目の2、森林環境譲与税を活用した県の役割と取り組みについて質問をいたします。
 森林環境税について、税制改正大綱に基づいて少し説明いたしますと、地方税である個人住民税均等割の枠組みを活用するものであり、国税として1人年額1000円を上乗せをし、市町村が賦課徴収するとともに、森林保全等が必要な市町村や都道府県に対し、森林環境譲与税として再配分する仕組みであります。全国における個人住民税均等割の納税義務者が約6000万人であることから、その規模は約600億円と試算されております。
 また、課税時期については消費税率10%への引き上げが平成31年10月に予定されていることや、平成35年度まで住民税均等割の税率が東日本大震災を教訓とした各地方自治体の防災対策に係る財源確保のため引き上げられていること等を考慮し、平成36年度から行われることとされております。
 森林環境譲与税については、森林現場の諸課題に対し早期に対応する必要があるため、本年5月制定の森林経営管理法に準ずる新たな森林の経営管理システムの施行とあわせ、平成31年度から森林整備等を実施する市町村や、それを支援する都道府県へ課税よりも先行して譲与基準に基づき配分をされます。
 また、平成35年度までの譲与財源は、譲与税特別会計からの借り入れにより対応し、市町村の体制整備に一定の時間を要することから、譲与額を段階的にふやす設定となっております。その借入金につきましては、後年度の森林環境税の一部をもって償還することとされております。
 その森林環境譲与税の使途については、間伐や人材育成、担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の森林整備及びその促進に関する費用に充てなければならないこと、また都道府県は森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用に充てなければならないこととされております。
 そもそも森林環境税は、都市、地方を通じて国民一人一人が森林を支える仕組みであり、その活用に当たっては広く国民に対して説明責任を果たすことが求められるため、市町村及び都道府県は森林環境譲与税の使途を公表しなければならないこととされております。
 譲与基準等につきましては、私有林人工林面積10分の5、林業就業者数10分の2、人口10分の3の割合で案分とされております。また、都道府県と市町村の譲与割合は、市町村の支援を行う都道府県の役割が大きいと考えられることから、制度発足当初は経過措置として都道府県2割、市町村8割でスタートし、市町村への譲与割合を徐々に高めながら、最終的には都道府県1割、市町村9割とする設計となっています。
 加えて、林野率が高い市町村は、車道からの距離が遠い奥まった森林が多く、森林整備に係る経費が掛かり増しになると考えられるため、林野率85%以上の市町村については1.5倍、75%以上の市町村については1.3倍を、私有林人工林面積に乗じる形で補正されることになっております。
 ちなみに、本県においては、今申し上げた譲与基準により試算を行うと、あくまで見込み額でありますが、制度発足当初は県と市町村の合計が約4億8000万円となり、その2割に当たる約9600万円が県へ譲与されることになります。その後、全体の譲与額が段階的に増加され、借り入れに対する償還が終了した平成45年には、県と市町村の合計が約14億4000万円となり、その1割に当たる約1億4400万円が県への譲与額となります。
 これまで申し上げたように、本来、森林環境税は市町村が主体となり森林整備等を行うことでありますが、来年度より県への譲与税の配分も始まることから、その税を活用した県の役割と取り組みについて、またどのように市町村へ支援を行っていくのか、あわせて農林水産部長にお伺いをいたします。
○議長(藤山将材君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 森林環境譲与税における県の役割は森林整備を実施する市町村の支援等であり、具体的な取り組みといたしましては、市町村の体制整備の支援、市町村が森林所有者の意向調査をする際の助言及び市町村の間伐事業の発注支援等を想定しております。
 さらに、その森林整備に必要な人材育成や担い手確保など、県で積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 いずれにしましても、市町村の実情や要望等を十分伺った上で、県の事務代行も含め、必要に応じて適切な支援を行ってまいりたいと考えております。
○議長(藤山将材君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の3、森林環境税と紀の国森づくり税について質問をいたします。
 御承知のとおり、全国の地方自治体における森林を守るための財源確保については、国に先んじて森林環境税と同様の税制の導入が進んでおります。2015年時点で、全国37府県と1政令市で導入されており、その税収は全国で総額319億円に上ります。
 本県におきましても、水源の涵養、県土の保全等の公益的機能を有する森林から全ての県民が恩恵を受けているとの認識に立ち、森林を県民の財産として守り育て、次世代に引き継いでいくことを目的として、2005年に紀の国森づくり税条例及び紀の国森づくり基金条例が制定をされました。
 この紀の国森づくり基金に毎年2億円超の税収を積み立て、森林環境保全及び森林と共生する文化の創造に関する施策に活用いたしております。昨年度は、森林環境保全林整備事業として、施業の放置された奥地森林等1315ヘクタールの間伐を初め、6.3ヘクタールに及ぶ竹林整備、402立米の里山整備及び47立米の流木対策に活用されるとともに、緑育推進事業として県内124校の5001人が、森林環境の保全や森林共生文化等の森林学習にも活用しております。
 そのほか、県の施策で7事業、公募事業で16事業が実施されており、本年度においても紀の国森づくり基金活用事業として4億500万円を当初予算に計上し、今まさに事業の公募が行われているところであります。
 このように、紀の国森づくり税は森林環境の保全等に大きく寄与しておりますが、一方では、平成36年度から徴収される森林環境税と使途が類似していることから、二重課税に当たるのではないかと危惧されているところでもあります。
 そうしたことから、昨年6月、国に対して提出した森林環境税の早期創設を求める意見書において、森林環境税の早期創設とともに、本県が導入している紀の国森づくり税との関係を明確化する旨、強く要望いたしております。
 また、全国知事会でも、地方税財源の確保・充実等に関する提言書において、森林環境税の使途については地方の意見を踏まえ、現在、地方自治体が独自に課税している森林環境税等への影響が生じないように、しっかり調整すべきであると明記されております。
 それらを受け、昨年11月21日に開かれた総務省の有識者検討会で、森林環境税は政府が構築を進める新たな森林管理システムのもとで市町村が整備にかかわるための財源に充てられるので、府県の超過課税にとってかわるものではないと、すみ分ける方針が示されました。事実その後、国から新たな森林管理システムのもととなる森林経営管理法が制定されたところであります。
 申し上げるまでもなく、森林環境税は、人口の多い都市から大きな税金を徴収し、森林面積の大きい地方へ配分する税金でもあります。そうしたことから、森林環境税と紀の国森づくり税の目的や使途の相違を明確化するとともに、県民の皆さんに深く御理解をいただくことがやはり重要であると考えます。
 そこで、小項目の3として、いよいよ来年度から森林環境税の創設に先行して、森林環境譲与税が県、市町村へ配分されることとなりますが、県として今後どのように対応していくのか、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 農林水産部長。
  〔原 康雄君、登壇〕
○農林水産部長(原 康雄君) 紀の国森づくり税は、森林を県民の財産として守り育て、次の世代に引き継いでいくことを目的に導入されたもので、間伐等の森林整備のみならず、森林環境教育や次代に残す森林の保護など、多面的な業務を実施してきたところです。
 一方、森林環境税は、温室効果ガス排出量削減目標の達成を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から創設されることとなっています。
 それぞれの税の目的は異なることから、紀の国森づくり税と森林環境税の使途をすみ分けていくことが重要であると認識しております。
 このようなことから、紀の国森づくり税については、県としてハード、ソフトの両面から多面的な事業を戦略的に行い、森林環境税については市町村が間伐等の森林整備を行うなどを考えております。
 いずれにしましても、議員の皆様方の御意見も踏まえつつ、県民の理解と協力が得られるようしっかりとすみ分けを検討し、重複しない運用をしてまいりたいと考えております。
○議長(藤山将材君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁をいただきました。
 ただいまの答弁にもありましたように、紀の国森づくり税は森林環境税と目的は違うものの、県民にとりましてその違いがわかりづらいというのもこれまた事実であります。これまでに加え、新たに税として御負担をいただくものですから、しっかりすみ分けを行い、県民への説明、理解促進に努めていただきたいと思います。
 また、森林環境税の創設は、これまで地域の財政事情により困難であった不採算森林の整備や木材利用の促進、そして都市部と山村地域の連携による新しい取り組み等ができ得るものとなることから、私自身、大きな期待を寄せております。
 県当局におきましては、紀の国森づくり税並びに森林環境税が真に森林保全に寄与するものとなるよう、実りある活動や地域の実情に応じた市町村支援、調整等に御尽力をいただくよう強く要望して、次の質問に移りたいと思います。
 続いて、大項目の3として、文里湾横断道路建設に向けた取り組みについて質問をいたします。
 平成28年の9月議会におきまして、文里湾横断道路について質問をさせていただきました。その際にも申し上げましたが、仮称・文里湾横断道路は、一般県道文里湊線より文里港をまたぎ、新庄方面に接続する架橋を含めた道路のことで、紀南地域の中心である田辺市街地と白浜町、上富田町を結ぶ地域間幹線道路等として位置づけられている整備要望路線であり、地元では一般的に文里湾架橋と呼ばれております。
 この道路構想が実現しますと、主要地方道南紀白浜空港線と田辺市街地が直接結ばれ、新庄地域の渋滞緩和も含めて交通の円滑化が図られるなど、近隣町との地域間を結ぶ道路として交流人口の増大にもつながります。また、3次救急医療機関である南和歌山医療センターと市街地を結ぶ非常に効果的な緊急搬送ルートが確立されるとともに、災害時においても、防災拠点ネットワーク港湾に位置づけられた新文里港からの輸送道路として、重要な路線になると考えられております。
 それらに加え、近年、田辺市では南海トラフ巨大地震津波対策協議会が設置され、議論が重ねられた結果、新たに避難困難地域の解消を図る上で、この横断道路は必要であると津波避難困難地域解消計画に位置づけられたことから、文里湾横断道路の整備について知事の御見解を聞きました。
 その質問に対し、知事からは、文里湾架橋が周辺住民を含め、県民の命を救うために必要であるという整理がついたため、今後は田辺市と連携をし、関係機関との調整やルートの詳細な検討など、文里湾架橋の実現に向けて必要となる取り組みを進めていくとの答弁をいただきました。あれから1年半以上が経過をしておりますが、田辺市や地元経済界からも、その早期実現を望む声が引き続き上がっております。
 そうした中、6月8日付地方紙に、文里湾架橋の予備設計は既に開札を終え、間もなく決定する、また、県と市は橋の高さなどを検討するため関係機関に聞き取り調査も進めている等、記事が掲載されていましたが、改めてこれまでの文里湾横断道路建設に向けた進捗状況と今後の取り組みについて、県土整備部長にお伺いいたします。
○議長(藤山将材君) 県土整備部長森戸義貴君。
  〔森戸義貴君、登壇〕
○県土整備部長(森戸義貴君) 文里湾を横断する道路構想、いわゆる文里湾架橋について、その進捗状況と今後の取り組みに係るお尋ねがございました。
 文里湾架橋につきましては、田辺市から和歌山県市長会を通じて、田辺商工会議所から和歌山県商工会議所連合会を通じて、交通の円滑化、観光の振興の観点により、その実現に向け、たび重なる要望をいただいてございます。
 一方、県が対策を進める3連動地震や南海トラフ巨大地震への備えとして、県民の命を守り、津波から逃げ切る方法を考えていく中で、田辺市が平成28年7月に田辺市津波避難困難地域解消計画を策定しました。その中で、文里湾架橋については、文里地区の津波避難困難地域のみならず、周辺に存在する要配慮者施設利用者等の避難路、避難場所として必要と位置づけられたところでございます。
 このことを踏まえ、県は田辺市と連携し、文里湾架橋の実現に向け取り組みを進めてございます。
 現在、県においては、田辺市とともに都市計画決定に必要となるルートの検討を行ってございます。このうち、文里地区側につきましては、津波避難困難地域の住民や、その周辺に存在する要配慮者施設の利用者等が迅速に橋梁へ避難できるように、その地域の南側にルートを配置し、神島高校南側付近の県道文里湊線への接続を考えてございます。新庄町地区側につきましては、県道南紀白浜空港線に接続すべく、現状の土地利用への影響や交差点の状況などを踏まえ、神島台交差点付近で接続するルートを考えてございます。
 あわせて、文里港の航路を横断する橋梁の高さは、船舶が支障なく航行できるように計画することとしてございます。
 今後の取り組みといたしましては、田辺市が将来の道路や公園など、市街地の具体的なまちづくりの方針等を示す田辺市都市計画マスタープランの中に文里湾架橋の位置づけを行うとともに、田辺市と連携し、今年度中に都市計画決定が行われるよう、都市計画案の作成などの手続を進めてまいります。
○議長(藤山将材君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 以上で、私の一般質問を終了します。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(藤山将材君) 以上で、鈴木太雄君の質問が終了いたしました。

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