平成30年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(山下直也議員の質疑及び一般質問)


平成30年2月 和歌山県議会定例会会議録

第7号(山下直也議員の質疑及び一般質問)

 

 

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  午後1時0分再開
○議長(尾﨑太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕(拍手)
○山下直也君 こんにちは。自民党県議団、山下直也でございます。(「知ってる」と呼ぶ者あり)ありがとうございます。
 平成30年2月定例会、3月2日からこの一般質問が始まりまして、本日最終日であります。連日の御精励にて大変お疲れのことと存じますが、しばらくの間、おつき合いをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 昨年の暮れ、私の母親が急に体調を崩し、入院をいたしました。母は、ふだんから健康に気をつけながら年齢を重ねてきたところでありましたので、私自身も少し驚きました。
 当日は、和歌山市の救急車により、日本赤十字社和歌山医療センターから和歌山県立医科大学附属病院へのスムーズな搬送や、各病院における迅速な診断、処置、そして手術に至ったわけでございますが、おかげをもって母は一命をとりとめました。その後、県立医科大学附属病院でしばらくの間お世話になり、現在は症状に一定の改善が見られたため、和歌山市内の施設に入所をいたしております。
 思い返してみますと、時間外に連絡をして診察、入院の受け入れをしてくれる医療機関があり、医師、看護師等、医療専門職の皆様が、懸命の処置はもとより、処置後の個々の患者に応じたリハビリ等の支援をしてくださっていることは、まことに心強いものであり、感謝の気持ちであります。
 医療機関に支払う窓口負担につきましても、母親は後期高齢者医療保険の被保険者で1割であります。私は、国民健康保険の被保険者で3割で済んでおります。改めて、日本の医療制度はすばらしい、ありがたいなあと、実際に患者の家族の立場になって、今そう感じておるところであります。
 また、母が倒れて以来、医療の場を初めさまざまな現場で多くの方々との出会いをいただき、多くの声を聞いてまいりました。これまでも私は、県民の皆さんの健康増進等について、和歌山県がん対策推進条例の制定を初め、できることは全てやるという強い気持ちで取り組んできたところでありますが、今議会の一般質問におきましては、医療保険制度のうち国民健康保険制度と医療の充実に係るリハビリテーション職の養成について、当局の取り組みや状況や考え方をお伺いいたしたいと思います。
 それでは、通告に従って質問いたします。
 まず初めに、国民健康保険財政の安定化についてであります。
 この問題を取り上げますのは、平成27年5月27日に成立した持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律、これに基づき平成30年4月から和歌山県も国民健康保険の保険者となるからであります。
 御承知のとおり、国民健康保険とは、病気や、またけがをした場合に安心して医療を受けることができるよう、加入者がふだんから保険料を納め、医療費の負担を支え合う助け合いの制度であります。国民健康保険は、全ての人が何らかの医療保険に加入することとなっている我が国の国民皆保険制度の中核として、地域住民の医療の確保と健康の保持増進に大きく貢献しているところであります。
 助け合いの制度である国民健康保険を持続可能な制度とするためには安定的な財政運営が不可欠であり、国民健康保険の加入者である被保険者の医療費は、被保険者の保険料と国からの補助金等で賄われております。財政運営の安定化を図る上でさまざまな施策があるかとは思いますが、私は、保険料の収納対策、国の財政支援の活用、そして、和歌山県議会の一般質問で多分この問題を取り上げるのは初めてではないかと思いますが、国民健康保険の支出対象とならない交通事故等による第三者行為求償事務の3点が重要と考えております。
 そこで、まず国民健康保険料(税)の収納率についてお伺いをいたします。
 先日公表された和歌山県国民健康保険運営方針によれば、和歌山県内市町村の平成27年度の国民健康保険料(税)の収納率は92.82%であり、全国平均の91.45%を上回ってはおりますが、市町村によって収納率の高低差が見受けられます。県下で地域差が出てくる問題点がありますが、県としての収納率に係る現状と認識について、まずは福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) ただいまの山下直也君の質問に対する答弁を求めます。
 福祉保健部長山本等士君。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 市町村が国民健康保険の保険料または保険税を適正に徴収することは、国民健康保険の安定的な財政運営とともに、被保険者間における負担の公平性の観点からも重要であります。
 平成28年度の収納率は、県平均では93.56%ですが、市町村別では最も高い九度山町で99.41%、最も低い和歌山市で90.23%と、9.18ポイントの差があります。
 なお、収納率は、主に収納事務の人員体制の違いにより和歌山市など人口規模の大きな市町では低くなる傾向となっておりますが、そのほかにも、市町村における被保険者の年齢構成等さまざまな要因により収納率に差が生じます。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 部長の答弁をいただきました。
 国民健康保険料(税)の収納率低下は、その収納不足をきちんと納付している国民健康保険被保険者へ負担転嫁させるばかりか、公的保険制度の信頼性を大きく揺るがせることにもなりかねず、看過することはできません。
 私は、収納対策を徹底するため、口座振替制度の推進、滞納整理の推進、国が設置する収納率向上アドバイザーを活用しての収納担当職員に対する研修会の実施等の取り組みを提案したいと考えますが、当局はどのようにお考えでしょうか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 議員御提案の収納率向上に係る取り組みにつきましては、大変重要なものと考えており、これまでも市町村に対し、収納担当職員への研修や、収納体制の充実強化に対する支援等を行ってきたところです。
 平成30年度からは県も保険者として財政運営に責任を持つことから、先般策定した国民健康保険運営方針においても、重点的に取り組むこととしております。
 まず、口座振替制度の推進につきましては、これまでも市町村が行う被保険者向けの啓発に要する経費について支援を行ってきた結果、平成27年度の口座振替利用世帯は43.15%と、全国平均の40.12%を上回っている状況です。
 しかしながら、全国的に見ると60%を上回る県もあることや、市町村間でも取り組みに差があることから、今後も引き続き市町村に対する支援を実施し、口座振替の推進を図ってまいります。
 次に、滞納整理の推進につきましては、所得や資産等があるにもかかわらず、保険料または保険税を納付する誠実な意思が認められない方には、市町村がその状況を十分に把握し、きめ細かな納付相談を実施した上で滞納処分を行っているところです。
 県としましては、収納率向上のため、適切に滞納整理を行うよう、引き続き市町村に指導・助言を行ってまいります。
 最後に、研修会の実施につきましては、県はこれまで市町村収納担当職員を対象とした研修を実施してきたところですが、今後は国が委嘱した収納率向上アドバイザーを活用し、豊富な事例に基づいたより実務的な研修を行い、各市町村が抱える収納上の課題の解決を図るよう努めてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 答弁いただきました。
 先ほど申し上げたように、保険料の確保は国民健康保険財政安定化の最も基本的な取り組みでありますので、県におきましても、市町村への助言、支援等、積極的に取り組んでいただくようお願いをいたします。これは要望であります。
 2点目として、国からの財政支援制度、特に保険者努力支援制度についてお伺いをいたします。
 ことし1月19日付「朝日新聞」朝刊に、医療保険財政健全化の取り組みの記事が掲載されておりました。国──厚生労働省でありますが──都道府県による医療保険財政の健全化に向けた取り組み、具体的には特定健診、特定保健指導の実施率や、がん検診受診率、健康づくりの取り組みの実施状況などの指標を点数化して公表したものであります。
 「朝日新聞」の見出しによりますと、「新潟1位、山口最下位」となっており、あわせてベスト5とワースト5が掲載されておりましたが、和歌山県はそのどちらにも該当していませんでした。和歌山県の順位はどうなっておるでしょうか。また、県下市町村の点数の状況はどんな状況でしょうか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 保険者努力支援制度は、特定健康診査受診率の向上や糖尿病等の重症化予防など、都道府県及び市町村における医療保険財政の健全化に向けた取り組みを推進するため、その取り組み状況を点数化した上で、獲得点数に応じ、県と市町村に対し、国から交付金が配分される制度です。
 議員御質問の和歌山県の点数及び順位は、県分につきましては、210点満点のうち124点で全国31位、市町村分につきましては、790点満点のうち382点で全国25位となっております。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 答弁いただきました。
 この保険者努力支援制度は、単なる取り組み結果の公表というだけではなく、この点数が高いか低いかによって国からの交付金が変動いたします。点数の高い努力をした自治体は交付金が多く交付され、結果として国民健康保険料(税)の減額につながります。このため、県及び市町村による保険者努力は大変重要であると思います。
 先ほど答弁いただいた和歌山県の財政健全化の取り組みの中で、他の自治体と比較して低い指標はどの指標なのか、その低い指標をどう改善していくのか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 保険者努力支援制度の評価指標のうち他県と比べて低い指標は、後発医薬品の使用割合が63.2%で43位、特定健康診査の受診率が31.7%で37位、糖尿病等の重症化予防の取り組みの実施率が56.7%で30位などであり、これらへの対策が必要と考えております。
 まず、後発医薬品の使用割合の向上対策としましては、これまで県による啓発資材の作成や、市町村による後発医薬品希望カードの配布等を行ってきたところですが、来年度は医療関係者との意見交換会や県民を対象とした後発医薬品の使用促進セミナーを開催し、後発医薬品の正しい知識の普及に努め、さらなる利用促進を図ってまいります。
 次に、特定健康診査の受診率向上対策としましては、今年度、県内2市町で受診勧奨モデル事業を実施し、受診率が7%上昇するなど一定の成果が出たことから、来年度以降、この取り組みを全市町村に広げてまいります。
 最後に、糖尿病等の重症化予防の取り組みとしましては、今年度、糖尿病性腎症重症化予防プログラムを策定することとしております。その実施に当たっては、各保健医療圏域ごとに市町村や保健所等の行政機関と医療関係者が協議の場を設け、プログラムに基づき抽出した対象者に効果的な保健指導を行い、糖尿病等の重症化予防に取り組んでまいります。
 県としましては、これらの取り組みをもとに、市町村とも協働しながら指標の改善を図り、確実な加点につなげてまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 国の社会保障費が年々増加している現状では、財源不足を国に支援してもらえばいいという考え方は、結局、国民健康保険の被保険者以外の方も含めた税金からの補填を容認するものであり、余りにも安易であります。
 健康増進に資する取り組みを充実させる等により医療給付費の削減に努めるとともに、保険者努力によって国の交付金を確保することにより国民健康保険の事業運営の安定化に努めるべきであると考えますので、県当局としてもその点を十分認識し、取り組んでいっていただきたいと思います。このことを要望させていただきます。
 3点目であります。3点目として、第三者行為求償事務についてお伺いをいたします。
 私が国民健康保険の第三者行為求償事務について関心を持ちましたのは、平成28年1月9日の「産経新聞」の記事であります。「交通事故医療費取りはぐれ 国保、年に数十億円」、こういう見出しを見たことがきっかけでありました。本県選出の鶴保庸介参議院議員がこの現状を問題提起し、それを受け、当時の河野行政改革担当大臣が厚生労働省に実態調査を指示したものと聞いております。
 第三者行為求償事務とは、国民健康保険の被保険者が交通事故等、加害者である第三者の不法行為によって生じた保険給付について、保険者はその立てかえた医療費等を加害者に対して損害賠償を請求する事務のことであります。
 本来、第三者が負担すべき医療費等を国民健康保険が負担したままにしておけば、第三者が負担すべき医療費等につき、不当に利益を得たこととなります。県内市町村の第三者行為求償事務の実績について、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 平成28年度における第三者行為求償事務の実績は724件、2億393万円となっております。このうち、交通事故に関するものが693件、1億9732万円と大半を占めております。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 第三者行為求償事務の実績について御答弁をいただきました。
 しかし、この実績だけでは、本来求償すべき案件全てに求償できているのかどうかがわかりません。市町村においては、求償すべき事案をどのように把握しているのか、また把握方法として十分なのか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 第三者行為求償案件を把握する手段としましては、被害者である被保険者本人から市町村に対し提出される「第三者行為による傷病届」により把握することが原則となります。
 なお、保険医療機関で交通事故等、第三者行為と確認できた場合には、その旨を診療報酬明細書に記載することとなっています。そのほかにも、市町村での診療報酬明細書の点検や交通事故等の新聞記事をもとに、被保険者に対して照会することにより把握する場合もあります。また、傷病届の提出が確実に行われるよう、全市町村が損害保険関係団体と覚書を締結し、交通事故の場合には被害者にかわって損害保険会社が届け出を行う取り組みも平成28年度から始まったところです。
 市町村ではこれらの方法により第三者行為求償案件を把握しておりますが、傷病届の提出義務の周知が進んでいないため、自主的な提出が十分になされていない状況であります。そのため、県ではこれまでも市町村と共同して傷病届提出の啓発ポスターを作成するなど周知に努めてきたところですが、平成30年度から県も国民健康保険の財政運営における責任主体となることから、「県民の友」初め県の広報媒体を活用し、より一層の周知を図ってまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 和歌山県国民健康保険運営方針において、「県は、市町村における第三者求償事務の取組に関する数値目標や取組計画等を把握し、PDCAサイクルの循環により継続的に取組が改善されるよう、市町村に対する定期的・計画的な指導・助言の実施等、第三者行為求償事務の取組強化に資する取組の実施に努めます」と記載しておりますが、具体的にどのような指導・助言を実施するのでありましょうか。引き続き福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) 市町村が第三者行為求償案件をより確実に把握し、取り組みを強化するためには、市町村職員の資質向上、傷病届提出義務の周知徹底や警察、消防、保健所等からの情報提供体制の構築等が必要であると考えております。
 そのため、県では、市町村職員が診療報酬明細書を点検して求償案件を把握するために必要な専門知識を習得できるよう、国が委嘱した第三者行為求償事務アドバイザーによる実務経験に基づいた研修を実施してまいります。
 また、市町村の広報紙やホームページなどの媒体を活用した広報活動や、警察・消防、保健所等から事故等の情報を提供してもらうための協力体制づくりなどが着実に実施されるよう、市町村に指導・助言を行ってまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 第三者行為求償事務の取り組み強化に資する県の取り組みについて、御答弁をいただきました。
 この問題につきましては、先ほども申し上げたとおり、平成27年に鶴保参議院議員が問題提起されて以降、国においても取り組み強化が行われていると聞いており、これまでの県の答弁におきましても今後さらに取り組みを強化するということでありますが、この取り組みを通じて、これまで届け出が余り出されていなかったがために国民健康保険が負担していた費用を本来負担すべき者に負担させるという、国民健康保険制度のあるべき姿に向かうと考えております。
 最後に、この第三者行為求償事務は国民健康保険制度にとって大変重要な問題であると考えますが、これまで県議会でも取り上げられてこなかったということもあり、来年度から県も国民健康保険の保険者となることを踏まえ、改めて知事に、国民健康保険運営に係る第三者行為求償事務に対する意気込みをお尋ねいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 国民健康保険制度を持続可能なものとするためには、制度の安定的な運営と公平、公正な負担の確保が必要であります。
 言うまでもなく、交通事故等の不法行為により生じた損害の責任は、加害者が負うのが当たり前でございます。したがって、市町村が第三者行為求償事務に取り組むことは、当然しなければならないことでございます。
 これまで県は、市町村が行うそうした第三者行為求償事務に対し、財政支援や啓発等による支援を行ってきました。これからは県が国民健康保険における財政運営の責任主体になるわけでございますので、より一層積極的に取り組み、国民健康保険財政の安定化を図っていく所存でございます。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 知事、御答弁ありがとうございました。
 国民健康保険財政は構造的に厳しいと言われて久しいわけでありますが、本日質問及び提案させていただいた取り組みが実施できれば、安定化、健全化につながっていくものであると考えます。県議会議員として、また国民健康保険の被保険者として、県当局の取り組みを注視してまいりますので、積極的な対応をお願いいたし、次の質問に移ります。
 次に、リハビリテーション職の養成と確保についてお尋ねをいたします。
 ここで改めて申し上げておきますが、リハビリテーション職とは、立つ、歩くなどの基本動作能力の回復や維持を図るため、医学的リハビリテーションを行う専門職である理学療法士、また入浴や食事などの日常生活の動作やレクリエーション等の作業活動を通じて体と心のリハビリテーションを行う専門職である作業療法士、話す、聞く能力の回復や維持を図る専門職である言語聴覚士の3つの専門職のことであり、このうち、とりわけ不足が懸念された理学療法士について、私はこだわってまいりました。
 私は、この問題に関して過去3回にわたって県当局にその必要性を訴え、一般質問を行ってまいりました。1回目の質問は平成9年であります。平成9年12月議会においてでありました。
 和歌山県主催、和歌山県福祉のまちづくり推進協議会協賛による福祉のまちづくりシンポジウムに私も参加させていただき、当時、元ニュースキャスターの小林完吾さんの講演を拝聴したときに、小林さんが脳内出血で倒れ、入院・闘病生活を送った御自身の体験を通して、リハビリテーションの大切さとその意義、理学療法士、作業療法士を今後、何よりも優先してふやすべきであることを訴えていたことに、私は当時強く胸を打たれました。
 折しも、当時、理学療法士及び作業療法士の数は本県の需要量を充足する状況になく、県の理学療法士協会の役員の方は、「理学療法と作業療法を誰にでも受けてもらえるよう、人材養成は急務であり、県内に養成施設があれば地元に定着してくれる有資格者がふえる」、そう強調されており、また、県の作業療法士協会の役員の方も、「現在、作業療法士は和歌山市に集中し、それ以外の地域には急務であり、これでは必要な患者さんに作業療法が行き渡らない。したがって行政の一層のバックアップをお願いしたい」とリハビリテーション職の養成を訴えておられました。
 当時、全国で理学療法士、作業療法士ともに養成機関が未設置はおろか計画すらなかったのは、本県を含め2県しかなかったと伺ったこともあり、私は、高齢化が進む本県の将来を見据え、理学療法士、作業療法士の人材確保等に係る県の取り組みについて質問をいたしました。
 そのときの県の答弁は、「理学療法士、作業療法士といったリハビリ関連職種等のマンパワーの確保は欠かせないところだと考えている。県内の養成機関の設置については大きな課題として受けとめており、国の需給計画見通しの動向も見ながら今後十分に研究を重ねていきたいと考える」という内容でありました。
 2回目の質問は、平成13年であります。平成13年2月議会においてでありました。1回目の質問以降、理学療法士、作業療法士の需要調査について、さらなる調査をされたのか、またその結果はどうだったのか。この時点においても、全国で理学療法士、作業療法士とも養成機関がないのは本県のみと聞いていた私は、さらに現状とこの問題に対する今後の県の取り組みについて質問をいたしました。
 そのときの県の答弁は、「理学療法士、作業療法士の需給調査については、平成12年8月に実施した結果、今後8年間に延べ270人の新規需要が見込まれる。養成機関の設置に関しては具体的な計画に至っていない。県内での新規免許取得者は大きく増加しており、近い将来、県全体として医療機関、介護保険施設等で必要とされる就業者数は確保できるものと考えられる」との趣旨でありました。この時点で、少し憤りを私は正直感じました。
 3回目の質問は、平成17年であります。平成17年2月議会においてでありました。過去2度にわたる質問から、理学療法士、作業療法士に関する問題は、県としても事が足りているという認識でいるのではという憂いが生じたため、この時点においても本県は理学療法士、作業療法士の養成校を持たない県である、言いかえれば専門職としての教員及び指導者が1人もいない地域である、このままではリハビリのサービスを受ける県民が多大な不利益をこうむるとの思いで、3度県の考えを伺ったところであります。このときの県の答弁も、需給状況等の把握、人材の確保、対策について協議、検討を進めていくという趣旨でありました。
 仁坂知事は、平成18年12月に知事に御就任され、このことについて御存じなかったのかもしれませんが、県当局の答弁が変わらないままで、最初の質問をしてから約20年の歳月が流れました。今、私が過去の答弁を詳しく申し上げたのも、この歳月の重みを知事並びに県当局の方々にわかっていただきたいという気持ちでいるからであります。
 3回にわたる私の一般質問の後、この現況を憂慮するかのように、平成20年、理学療法士を養成する4年制の専門学校が県内に設置されました。そして、毎年この学校で学んだ学生が国家試験に合格し、現場で活躍、本県のリハビリサービスの提供に大きく寄与されております。
 しかしながら、最初の質問のときに私が心配していた高齢化は現実に進行しております。一昨日、人権・少子高齢化問題等対策特別委員会が開かれました。そこで、県から現状説明がありました。本県は全国に先行して高齢化が進んでおり、平成29年1月現在、高齢化率は30.9%と全国7位の状況であり、今後、平成32年に65歳以上の高齢者数がピークになるとともに、平成42年には75歳以上の高齢者数がピークになると見込まれるとのことでありました。
 また、要介護認定者も平成28年3月時点の6.7万人から平成42年には8.1万人にふえることが見込まれております。リハビリテーション職の方々を必要とする人の数はふえ続けているのではないかと感じる次第であります。
 そこで、今回4度目の質問となったわけでありますが、今日までの過去3回にわたる私の質問を県はどう捉えておられるのか、また、現在のリハビリテーション職の需要について県はどう考えるのか、現況とあわせ、福祉保健部長にお答えいただきたいと思います。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) リハビリテーション職の養成機関が必要であるという議員の提言につきましては、時代の趨勢を読まれたものであると考えております。
 こうした認識のもと、平成20年4月に民間の理学療法士の専門学校が設立される際、県では人材の確保につながると判断し、施設の建設や設備の整備に補助を行いました。この専門学校では、毎年数多くの理学療法士を輩出し、本県のリハビリテーションの充実に貢献していただいております。
 次に、リハビリテーション職の需要についてでございますが、現在、病院に従事しているリハビリテーション職の人数は、10年前と比較して倍以上にふえています。しかしながら、有効求人倍率は依然として高水準で推移しており、人材が不足している状況です。
 また、将来の需要につきましては、平成28年5月に県が策定した地域医療構想において、リハビリテーションを中心とする回復期機能病床が不足すると予測し、それに対応するため、リハビリテーション職の確保対策が必要と位置づけました。構想策定時に病院を対象に実施した需要調査においても、人材を確保する必要があるとの結果が出ました。さらに、地域包括ケアシステムの構築を進める上で、在宅医療や介護にリハビリテーション職が必要であると見込まれます。
 今後、リハビリテーション職の需要は一層増大すると考えており、リハビリテーション職の養成、確保対策に積極的に取り組んでまいります。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 今、部長の御答弁をいただきました。
 今後、病院でのリハビリ人材の確保、さらには在宅医療や介護にリハビリに携わる人材が必要とのことであります。やっとわかっていただいたという思いであります。長かったです。大きく方向転換されたことは歓迎すべきことであると感じます。私からすれば、その重要性をようやく認識していただいたという気持ちであります。
 次の質問に入ります。
 リハビリテーション職の養成状況についてお尋ねをいたします。
 過去の私の質問において、本県は理学療法士、作業療法士の養成校を持たない県だと再三申し上げてきました。リハビリテーション職の養成施設の現状について、全国と本県の状況はどうなっているのか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 福祉保健部長。
  〔山本等士君、登壇〕
○福祉保健部長(山本等士君) リハビリテーション職の養成施設としましては、大学、短期大学、4年制や3年制の専門学校があります。平成29年4月現在、全国では理学療法士の養成施設は256あり、1学年の定員は約1万4000人、作業療法士の養成施設は192あり、1学年の定員は約7600人、言語聴覚士の養成施設は74あり、1学年の定員は約3000人となっています。本県では、理学療法士を養成する4年制の専門学校が1校のみであり、1学年の定員は40名となっています。
 作業療法士と言語聴覚士につきましては、県内に養成学校がない状況でございます。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 リハビリテーション職の需要は増大するにもかかわらず、本県の養成の状況は余りにも小さいことを痛感いたします。
 次の質問に移ります。
 今後の人材養成・確保対策についてであります。
 リハビリテーション職の需要と余りにも小さい県内の養成力を踏まえ、県は今後、具体的な担い手養成や確保対策をどのように考えておられるのか、改めて知事の御所見をお伺いいたします。
○議長(尾﨑太郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 先ほど山下議員から、ずっと長い間のいろんな御提言の経緯が御披露されまして、私はその後半ぐらいからしかわかっていないんでございますけども、和歌山県でこんな大事な仕事に関して養成校が1校もないというのは、これは情けないことであるというふうにずっと思っておりまして、民間の、寺下さんですけども、英断をもって専門学校をつくってくださるということになったときは大変喜び、感謝をし、評価をし、それでこれは少し応援をせないかんということで、ささやかでありますが応援をさしていただいて、以後、大変評価をしているところであります。
 さらに、地域医療構想、これをつくっていかないといけないということになりまして、福祉保健部のほうから回復期の病床が不足するということが予想されるということを聞きまして、これはさらにリハビリテーション職の確保が必要であるというふうに思いまして、改めて、あれだけでは足りませんので、一層ふやしていかないといけないなあというようなことを考えてきました。
 同じころ、東京医療保健大学の誘致にようやく成功いたしまして、次の大学誘致の可能性をいろいろ考えるという状況になってきたわけでございます。
 その結果、リハビリテーション職については、議員御指摘のように今後需要の増加も見込まれるし、それから、現在、大学という観点からいうと150人程度の学生が毎年県外の大学とか専門学校で学んでいて、進学希望者も結構多いということで、この人たちを考えたら誘致できるんじゃないかなあというふうに考えておるところでございます。
 県内にリハビリテーション系大学を誘致できれば、人材不足の解消や若者の県外流出の抑制などの効果が期待できるわけであります。これまで和歌山市の中心市街地に3大学ができることになりまして、そこにさらに新たな大学が誘致できれば、さらにまちなかの活性化にもつながるというふうに思っております。
 そういう観点でございますので、今後、積極的にチャンスをうかがって、何とかならんもんかということで頑張っていきたいと思っております。
○議長(尾﨑太郎君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 ただいま、知事の御答弁をいただきました。
 知事答弁のとおり、和歌山市の中心市街地には3つの大学が開学予定であります。正式には2つの大学と1つの学部ということでありましょうが。雄湊小学校跡地には、東京医療保健大学和歌山看護学部が設置され、本年の4月8日には入学式を迎えます。本町小学校跡地には、仮称・和歌山信愛大学教育学部が新設予定であり、来年春の開学予定と聞いております。また、伏虎中学校跡地には県立医科大学薬学部が設置され、平成33年4月開学予定と聞いております。
 そして、新たにリハビリテーション系の大学ができる可能性が出てきたということであります。これまた大きな計画が動き出すと感じます。
 そんな中、それはそれで結構なことかと思いますが、1つどうしても気になります。それは、先ほど知事の答弁にもありましたが、今まで頑張ってきた地元4年制の専門学校のことであります。こちらも大学化に向け、いろいろと考えておられると仄聞をしております。
 この間、いつも「県民の友」を私の家にも届けていただくわけでありますが、いつも一番最後のページに知事が書かれてるところがあると思います。いつもそこを読むわけでありますが、その3月号の知事メッセージの中で、知事は、「事業者やこれから事業をしようとする人にとって一番肝心なのは、企業者精神であり、挑戦する意欲であり、野心である。確かに環境の変化は大変なのだが、それは世界共通の条件だ。県の施策などをうまく活用しながら自分がやってチャンスをつかんでくれることを祈るばかりだ。ゆめゆめ、大変、大変と恐れてばかりいたり世を嘆いてばかりいるうちに和歌山以外の人に先にやられてピンチにならないように。それは和歌山のピンチだ」、そう述べておられます。私は、全くそのとおりだと思います。
 少し古いですが、「和歌山ファースト」というようなことも言えるんじゃないかなというふうに思うんですね。リハビリテーション職の養成につきましても、やはり同じではないか。企業者精神や意欲のある地元の学校が経営難になるようなことがあってはならないと考えます。
 作業療法士、また言語聴覚士等々、今まで本県に養成施設のない専門職をどう養成していくのか等の課題も残るわけでありますが、東京医療保健大学和歌山看護学部が地元の看護系の学校と共存共栄を図ってきたこと等も参考にして、本県のリハビリを必要としている方々に一日も早く喜んでいただき、安心してリハビリを受けていただけるよう、地元の学校とともに人材の養成確保に向け動いていただきたいということを強く要望いたし、私の質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(尾﨑太郎君) 以上で、山下直也君の質問が終了いたしました。

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