平成28年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


平成28年12月 和歌山県議会定例会会議録

第4号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


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  午前10時0分開議
○議長(浅井修一郎君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第226号から議案第249号まで、並びに諮問第1号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 42番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさしていただきます。
 1つ目に、和歌山県の水源地の管理についてであります。
 北海道を初めとして、外国人や外国資本により、水源地である森林の買収が進められています。北海道・洞爺湖温泉街の西、約3キロ離れた洞爺湖町月浦地区では、ことし7月下旬、中国を拠点に不動産投資を展開する企業グループの現地法人が約7万7000平方メートルの土地を買収しました。グループオーナーが地元紙に語ったところによると、約100億円を投入し、500室、最大1500人を収容できる高級宿泊施設を中心とする大規模リゾートを開発、中国本土やマカオに住む富裕層や中間層を対象に、平成30年3月ごろをめどに、約100室を先行開業する方針だといいます。
 また、札幌市の中国系不動産会社が平成25年3月、小樽市で3100平方メートルの高台を購入し、約30億円を投じて、地上9階、地下2階の高級リゾートマンションを建設、分譲することを発表しましたが、3年たった今、工事はおろか、買収した土地は荒れ、開発は頓挫したままという事態も発生しています。
 和歌山県においても、白浜町の温泉つき別荘エリアで中国人が購入した物件もあるとのことです。17道県で水資源保全条例が制定されていますが、水資源保護の観点から、外国資本などによる買収を監視するため、水源地に絡む土地取引について自治体への事前の届け出などを義務づける条例とのことですが、外国資本による森林や水源地の売買については、実質把握が難しいのが実情であります。
 和歌山県も「水の国、わかやま。」キャンペーンができるくらいのさまざまな水資源が豊かなところであります。「和歌山」や「紀州」の商標を勝手に使用している国もあるくらいで、ますます海外からも魅力的な水源地として注目が集まっている和歌山県ではないかと思います。
 そこで質問に入りますが、1つ目、森林を多く有する本県ではありますが、外国人や外国資本による本県の森林の買収の実態はいかがでしょうか、農林水産部長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 外国人や外国資本による本県の森林の買収実態についてでございますが、森林の土地を新たに取得した者は、一定の面積以上で、かつ売買等による取得をした場合には、国土利用計画法の定めにより、該当市町村の土地利用担当部局に対して、同法に基づく土地売買等の契約の届け出が義務づけられています。
 また、平成24年4月から施行された改正森林法により、国土利用計画法に定める基準に当てはまらない森林の取得についても、該当市町村の林務担当部局に対して、森林の土地の所有者届の提出が義務づけられました。
 これにより、森林の土地を新たに取得した場合は、個人、法人を問わず、また規模や取得方法にかかわらず、該当市町村への届け出が義務づけられることとなっています。これらの情報は県にも報告される仕組みとなっていますが、これまでのところ、議員お尋ねの外国人、外国資本による森林の買収についての該当案件はございません。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 外国人や外国資本が水資源に絡む土地を取得した後に乱開発して、水源での過剰取水や水質汚濁を招かぬよう、生活に必要な水の安全管理上からも、和歌山県においては安全・安心な水源地保全対策が欠かせません。
 平成25年1月15日に、知事は、「水源を守るための『無許可伐採』・『無届伐採』の防止に向けた森林関係法令の周知徹底並びに伐採監視強化について」と記者発表をされていますが、さきに述べたような、外国人や外国資本が北海道などの森林を買収する事案が幾つも見られる昨今、外国からターゲットにされる可能性が大きい和歌山県の水源を守るための森林保全対策について、改めて仁坂知事の御見解をお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員の御心配は、全国各地で外国資本による森林買収がふえている中で、本県の対策は大丈夫か、本県だけが狙い撃ちにされないかということだろうというふうに思います。
 問題は、むちゃくちゃな伐採をして水源がかれてしまうようなことがあってはいけないもんですから、それは外国の資本だとやるんじゃないかというようなことを疑われてるからということではないかと思います。
 実は、むちゃをやるのは外国資本だけじゃなくて日本資本もありまして、露骨に言うと地元の関係者もそういうことをやったところもあります。したがって、土地を買収する目的として、むちゃをやりたいという意図があるとすると、和歌山で土地を買収したら損だというふうに思わせるような制度をつくっておくということが一番大事だというふうに思います。
 そういう意味で、水源保全のためには、外国資本による森林買収を直接規制して、何か「外国人は」と言って差別的なことをするよりは、適正な森林管理をちゃんとやって、内外を問わず、そういうむちゃをやりたい人は和歌山にあんまり寄りつきたくないなというふうに思わしとくのが一番いいということではないかと思います。これは、方法論的にはそうだと思うんですが、実際は大変でございます。
 国としましても、平成24年4月から施行された改正森林法によって無届け伐採に対する規制が強化されています。県独自では、さっき御指摘ございましたけれども、平成25年1月から、全ての保安林並びに1ヘクタール以上の普通林の伐採現場に伐採許可証等の旗の掲示を義務づけるということで、まず何やっとるかってすぐわかるということにし、それによって違法伐採等の防止に努めるとともに、あわせて、伐採現場の定期的な確認と違法伐採抑止を目的にして、県職員あるいは市町村の人たち、そういう方々を動員して、森林巡視の強化を図っているところでございます。
 現在のところ、本県での外国資本による森林買収というのは確認されていないんですけれども、そういうことを──むちゃをやりたいという目的でもって森林を買いたいという人がその気にならないように、先ほど申しましたような規制について遺漏がないかどうか、常にちゃんと心がけていきたいと、そんなふうに思っております。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 お答えいただきました。
 北海道の小樽市の高台でのリゾートマンション計画のように、土地購入の後、何年もほったらかしにして土地を荒れ放題にするケースというのは、これ少なくないんではないかなと思います。これも環境破壊につながるゆゆしき話でありまして、外国人や外国資本による土地購入後の放置物件についても、絶えず監視の目を行き届かせていただきたいと思います。
 決して好調とは言えない不動産市場や、人手も買い手もなく困っている土地・山林所有者に、外国人や外国資本が甘い話を仕掛けてくることもよくあると思います。特に、特定の国の外国資本が将来的な何らかの意図のもとに、近郊に複数の土地を購入するようなことも可能性としてあると思います。日本企業による開発が頓挫したり破産したりして放置されている土地なども当然ターゲットになります。
 さらに、取得した土地から地下水をくみ上げて、水脈を探し当てて自由に水を確保することだってあると思います。森林、地域政策、環境と多岐にわたる行政にかかわる案件だと思いますので、下流域に位置する市町村や田畑が荒廃することがないよう、また、和歌山県の天与の美しい自然環境が破壊されないよう、ぜひ全庁的な対応をお願いいたしまして、要望とさせていただきます。
 2点目に、和歌山県工業技術センターの活用についてであります。
 去る10月25日から26日に鹿児島県鹿屋市へ行って、鹿児島県大隅加工技術研究センター、当センター発の唐芋レアケーキが好評のフェスティバロの製造工場、大型でん粉プラント施設の鹿児島きもつき農業協同組合西南澱粉工場、それに、こうじ菌の発酵テーマパーク、麹蔵河内GENを視察してまいりました。
 ちなみに、フェスティバロの唐芋レアケーキ「ラブリー」は、空港でのキャビンアテンダントの口コミと、楽天のスイートポテトランキングで人気第1位になるなど、ネット戦略に加えてテレビでも取り上げられ、人気が爆発しました。厳選されたサツマイモを原料に加工製造された後、冷凍して各地へ発送され、解凍していただくのですが、甘さ控え目の誰でも食べやすいスイーツです。知る人ぞ知る鹿児島県を代表する加工品のブランドと言えます。特産農産物を使ったスイーツづくりは、良質なフルーツが豊富な本県にも大いに参考になるのではないかと感じました。
 さて、大隅加工技術研究センターでは、食品の一次加工について調査してまいりました。
 鹿児島県は、平成26年の農業生産額が4263億円で全国第3位、最も、畜産の占める割合が63.6%と高くなっています。素材提供型の農業から一次加工等による高付加価値型農業の展開を図るため、新たな加工・流通技術の研究開発を行うとともに、加工事業者等による加工品の試作、研究開発や販路拡大等を支援する施設として、平成27年4月に開設されました。
 整備に至った背景の1つに、国内の食用農水産物の最終消費額は生産・出荷段階時の約7倍に増加すると言われていて、このうちの約8割が、食の簡便化志向や外部化の進展を反映し、加工品と外食となっているということです。すなわち、7倍の価値が地元におりているということであります。だから、生産現場に近いところにセンターをつくって、地元関係者を育成、養成しようということで建設されたんだと、センターの方は言っておられました。
 鹿児島県は、「攻めの農業」プランの中に、「付加価値向上への取組強化」として、大隅加工技術研究センターを拠点とした食品関連産業の振興と、農業者等が農業生産及びその加工または販売を一体的に行う6次産業化の取り組みを支援しています。加工によって、重量がある青果物で出荷するよりも輸送コストを圧縮できます。
 当センターでは、企業や大学等との共同研究を推進し、加工技術、殺菌技術等といった研究開発だけでなく、今の時代、欠かせない要素である流通貯蔵技術の研究開発も行っており、加工ライン実験施設、加工開発実験施設、そして、企画・支援施設をそれぞれ開放しています。このような施設が本県にもあれば、もっと特産資源の果実類や野菜類を活用した加工食品で全国展開できるのにと感じた次第です。
 和歌山県に目を転じますと、和歌山県工業技術センターの食品産業部は今まで2階にあって、せっかくたくさんの加工機器があっても、部屋が狭過ぎて使い勝手がよくなかったので、今年度からの事業で1階のほうへ移転いただいて、より広いところで研究開発のための実験もできるよう御尽力いただいていると伺っております。
 そこで質問ですが、1つ目、この食品産業部のスペースを食品関連産業の方々に活用いただくとともに、企業等の利用状況次第で、商工と農林の垣根を越えて、農業者、農業生産法人等の農産物の一次加工の実験、開発研究にも今後活用いただきたいと思いますが、商工観光労働部長、いかがですか。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長岡本圭剛君。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 工業技術センターは、これまで、県内産業の中核的研究機関として、産業の振興及び県内企業の技術力、研究開発力の向上のための総合的な支援を実施してまいりました。そういった中、当センターは、本年創立100周年を迎え、より多くの皆さんに御利用いただくために、研究開放型の施設であるオープンラボ構想を新たに推進し、最新の分析・評価機器の導入や技術展示場の整備等を行っているところです。
 議員御質問の食品産業部の食品加工室についても、オープンラボの1つであるフードプロセッシングラボとして、多くの食品関連産業に携わる皆さん方に御利用いただくとともに、機能性の向上を図るため、内閣府の地方創生拠点整備交付金を活用するべく、本議会の議案として審議をお願いしております。
 農業者、農業生産法人などの皆さん方にも、農産物の一次加工の試作や実験、開発研究として既に御利用いただいているところであり、今後も食品加工室を含めた施設の充実を図り、より一層、工業技術センターを御利用いただきたいと考えております。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 次に、1階へ移転する食品産業部のフロアですが、原材料や試作品などの搬出入、また水回りが充実した実験・試作スペース、あるいは貯蔵、保存など流通技術の研究を含めた各種食品加工にかかわる必要機器の配置など、従来とは違った工夫、配慮を期待するものです。
 食品産業部における移転計画について、商工観光労働部長から御説明いただきます。
○議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔岡本圭剛君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本圭剛君) 現在、工業技術センターにおいて、研究開発の一層の効率化を図るため、実証棟内の施設の再配置計画を進めております。
 議員御質問の食品産業部における移転計画については、試作のための実験スペースを現在の3倍に拡大するとともに、食品加工機等を最適に配置する計画としております。これにより、基礎的な実験から試作品開発まで一貫して実施できるような環境が整うことになり、今後、食品関連産業に携わる方々を初め、より多くの皆さん方に研究開発に御利用いただけるものと考えております。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 若干繰り返しになりますが、食品試作実験室が従来より大きなスペースを確保することによって、使いやすさは大きく向上しますし、試作作業に当たって、たくさんのお水を使用できる洗い場、流し場は必要欠くべからざるものであります。また、実験から試作までが同じ場所で流れるように実施できるようになれば、利用者の機能性は随分改善されるものと期待しています。
 それに、加工だけでなく、加工食品がその鮮度とおいしさを保ったまま消費者に届くための貯蔵・保存技術研究も大変重要な要素になります。どうか、片っ端から予算を確保いただいて、本県の食品加工分野の拡大、発展につなげていただきますよう、よろしくお願いいたします。
 3点目行きます。和歌山県の教育について。
 1つ目、がん教育についてであります。
 平成25年12月28日に施行された議員提案条例、和歌山県がん対策推進条例ですが、はや3年が経過しようとしています。その中の第9条に、教育関係者の役割がうたわれています。先生が子供たちに健康と命の大切さを訴えたり、がん予防のため規則正しい生活を心がけるよう呼びかけることも大切でしょう。そのために、がん体験者の話や医療者側の話を聞いたりすることも必要かと思います。
 2006年成立のがん対策基本法に基づいて国が定めるがん対策推進基本計画(2012年から16年度)には、がん教育指針の検討と実施が盛り込まれました。文部科学省の検討会が2015年3月に出した報告書では、がん教育を健康教育の一環とし、具体的な教育内容として、がんの要因と経過、予防、早期発見・検診、治療法、患者の理解と共生などを挙げています。
 がん教育の本格的実施に向けて、文部科学省の全国でのモデル事業が2014年度から始まっていますが、和歌山県では、小学校、中学校、そして高等学校と、それぞれのがん教育の取り組みはいかがでしょうか、教育長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 現在、がんに関する教育につきましては、学習指導要領に基づき、小学校、中学校、高等学校において、児童生徒の発達段階に応じて、健康教育の中で指導してございます。
 また、がんに関する教育につきましては、文部科学省が設置した「がん教育」の在り方に関する検討会において、日本人の死亡原因の1位であるがんについての理解や患者に対する正しい認識を深める教育が不十分であることから、健康教育の中でさらに重視することなどが検討されたところです。
 このようなことから、県教育委員会では、がんに関する教育を通して、学齢期における望ましい生活習慣の確立など健康づくりの基礎的素養を培うため、本年度、文部科学省の事業を活用し、専門医を含めたがん教育研究会において、小・中・高等学校の指導資料を作成しているところです。
 今後、こうした指導資料等を活用し、小学校では、保健や道徳において、健康と命の大切さを育むこと、中学校、高等学校では、保健体育の授業を中心として、科学的根拠に基づいたがんの予防や検診による早期発見、患者に対する正しい認識を持つことができるよう取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、学校でのいじめについてであります。
 相変わらず、学校でのいじめ事案はマスコミをにぎわしております。最近では、東京電力福島第1原発事故で福島県から自主避難している新潟市立小4年の男子児童が、同級生だけでなく担任の男性教諭からも名前に「菌」をつけて呼ばれ、11月から登校できなくなっています。
 さて、2014年度の児童生徒1000人当たりの都道府県別いじめ認知件数で、和歌山県は、京都府、宮城、宮崎、千葉、山形各府県に次いで第6位になっています。それだけ学校当局も、学校現場で日ごろ目配りされている成果だと言えるかもしれません。
 いじめ防止対策推進法が、平成23年10月に大津市の中2男子がいじめを苦に自殺したのを契機に、議員立法で制定され、平成25年9月に施行されて3年経過、それを受けて、本県でも和歌山県いじめ防止基本方針が平成26年3月に策定されましたが、和歌山県の基本方針策定以降のいじめの現状について、教育長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 本県の公立小・中・高等学校、特別支援学校におけるいじめの認知件数は、いじめ防止基本方針策定前の平成25年度は2635件、策定後の平成26年度は3692件、平成27年度は速報値でございますが、2953件となっており、増加傾向にあります。こうしたいじめの認知件数の増加は、同方針の策定を受け、各学校でより丁寧に児童生徒の人間関係や行動を注視し、早期発見に努めた結果であると考えてございます。
 また、いじめの解消率は、同方針策定前の平成25年度は約95%、策定後の平成26年度及び27年度は約98%と増加し、平成27年度において、解消率は全国で2位となっております。こうした結果は、各学校がいじめにつながるささいな言動や行動も見逃さず、いじめを早期に発見し、保護者や関係機関との連携を密にし、迅速にきめ細かな指導を行った成果であると考えてございます。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 ツイッター、フェイスブック、それに、LINEなどSNSでのいじめも、写真や実名を載せたり、集団で特定の個人を攻撃したりして、周囲への反響も大きな、露骨ないじめ、あるいは実に陰湿ないじめになっています。本県におけるSNSでのいじめの現状と対策について、教育長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) パソコンや携帯電話を用いて誹謗中傷などのいじめを受けた件数は、平成27年度の調査において、公立小・中・高等学校、特別支援学校で92件確認されており、近年増加傾向にあります。
 こうしたことから、青少年をネットいじめなどから守るため、青少年・男女共同参画課と連携してネットパトロールを行い、インターネット上の誹謗中傷や個人情報の流出をいち早く発見し、学校での指導につなげています。
 SNS等を介したいじめが発生した場合、学校は警察等の関係機関と連携して対応するとともに、通信会社やサイト運営会社等にデジタルデータの削除を依頼することも含めて、早期に対応するよう指導しているところです。これまでも実施しております生徒指導や情報モラルの担当者を対象とした研修で、今後もSNS等によるいじめに対応する内容を拡充させ、未然防止に努めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 次に、いじめ防止対策推進法制定後も、背景にいじめがあったのではないかと思われる児童生徒の自殺が後を絶ちません。全国で平成25年には2件、26年には10件、27年には9件、そして、ことしも9月までに4件ありました。特に中高生の自殺がふえていて、中学生は4年連続増加しています。いじめによる自殺に至らないための、いじめを早期に発見することや、担当教師が1人で抱え込まずに、他の教師や保護者と情報を共有することも大切かと思います。
 本県における学校側のいじめの実態の把握と対応について、教育長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) いじめの早期発見、早期対応につきましては、全教職員がいじめ問題対応マニュアルや「子どもの安全・安心サポートマニュアル 見逃さないで!子どものSOS」に基づきいじめアンケートを実施するなど、各学校で子供の小さな変化を見逃さないよう徹底して取り組み、その実態把握に努めております。
 また、いじめを認知した場合は、担当の教員が1人で抱え込むことなく、管理職や学年主任などが中心となり、学校全体で取り組んでいるところです。
 具体的には、被害及び加害児童生徒双方からの聞き取りにより事実関係を把握し、その後、再びいじめが起こらないよう指導してございます。あわせて保護者に報告するなど、いじめの真の解決に向け地道な取り組みを行っております。
 加えて、いじめ問題を解決できる学校、学級集団づくりも行ってございます。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーも活用するなどし、児童生徒が不安や悩みを相談しやすい環境づくりと支援の体制を充実させてございます。
 さらに、県では、学びの丘に24時間対応のいじめ相談専用電話を開設し、学校と連携して問題の解消に取り組んでいるところでございます。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 昨今、個人が個人を攻撃するよりも、集団で個人をいじめる事案が圧倒的に多いのではないかなと思います。先生方も児童生徒の発するシグナルに敏感に反応して、ほかの先生方やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの方、さらに、保護者とのチーム体制でいじめ解消に当たっていただきたいと思います。
 犯罪行為が行われた場合の学校と警察との連携については、本県ではどのようになっていますか、教育長に伺います。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県教育委員会と県警察本部は、児童生徒の非行防止、被害防止、健全育成を図るため、平成17年度より、学校と警察が連携して児童生徒の情報を共有する、きのくに学校警察相互連絡制度を設けてございます。いじめに伴う暴力行為など、学校と警察との連携が必要と認められる児童生徒の問題行動等に対しても、本制度に基づいて学校と警察署が相互に連絡をとり合い、情報共有することにより、適切に対応し、問題解決に当たっております。
 また、学校現場においては、退職された警察職員を学校支援サポーターとして配置し、児童生徒の問題行動等を指導するなど、未然防止に役立ててございます。
 今後とも、警察を初めとする各関係機関との連携協力の強化を図り、問題行動の未然防止や早期発見、早期対応、適切な事後対応につなげ、児童生徒の健全育成に努めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 3点目に、不登校についてであります。
 文部科学省が10月27日に公表した問題行動調査の結果では、2014年度には全国で小学校の不登校が過去最多になりました。小学校での暴力行為は2015年度で1万7137件となり、2006年度の4.5倍になっています。小学校1・2年生の暴力行為の増加も顕著で、前年の1.8倍に上っています。学校でのいじめ、暴力だけでなく、最近では家庭環境による不登校もふえていて、学校だけでの対応が難しいケースも出てきていると伺います。
 そこで、本県の不登校の現状と不登校に至る要因について、教育長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 本年10月、文部科学省から公表された平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果の速報値では、本県の1000人当たりの不登校児童生徒数は、小学校で前年度5.3人から5.2人、中学校で前年度32.1人から28.5人、高等学校で前年度17.2人から16.4人に減少してございます。
 また、本年7月の「和歌山県不登校対策に係る有識者会議のまとめ」では、不登校に至る主な要因として、学校における人間関係やいじめ、友人関係をめぐる問題、学業の不振、進路に係る不安、遊び、非行、無気力、親子関係をめぐる問題など、多岐にわたってございます。
 一人一人の児童生徒の状況を見ると、その背景も多様であり、個々の要因が複雑に絡み合うことが多くなっているため、問題に対応していくためには、その背景や要因をしっかり捉えることが極めて大切であると考えてございます。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 家庭によっては、学校で子供に何かあると、すぐに親が学校に行かせないようにしたり、家庭内暴力等虐待もあって、子供が学校に行くに行けないような場合もあると伺っております。不登校の要因は、学校内外でいろんな要素があると思いますので、先生方も大変ですが、家庭訪問等、小まめなケアをお願いしたいと思います。
 さて、子供たちが不登校にならないように、集団生活に必要な社会性や人間関係づくりの学びなども必要だと思いますが、本県での不登校対策について教育長にお伺いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 不登校の対策といたしましては、未然防止、早期発見、早期対応が極めて重要であります。
 具体的には、「累計5日以上欠席した児童生徒の個人状況・学校対応状況シート」を活用して、欠席しがちな児童生徒一人一人について、個々に応じた対応を行ってございます。
 また、議員御指摘の社会性や人間関係づくりにつきましては、「みんな生き生き!学級集団づくり」や「不登校を生まない集団づくり」のリーフレットを活用し、各学校では児童生徒にとって楽しい学級づくりや魅力ある学校づくりに取り組んでおります。
 不登校に至った場合は、学校への復帰支援のため、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を活用したチームによる組織的な支援体制の整備を行い、個々の児童生徒に応じた支援計画を立て、対応してございます。
 さらに、和歌山県不登校対策に係る有識者会議のまとめを受け、現在、不登校に関する対応マニュアルを作成中でございます。
 不登校の問題は、学校教育の根幹にかかわる最重要課題であり、これまでの取り組みをさらに充実させるとともに、今後も市町村教育委員会、学校、家庭、地域、関係機関と一体となって全力で取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 4点目に、脱ゆとり教育についてであります。
 いわゆるゆとり教育は、受験戦争の過熱による詰め込み教育への反省から1970年代に始まり、学校週5日制導入で本格化しました。2002年スタートの学習指導要領では、教育内容が3割減少し、それが学力低下を招いたとされ、2008年には現行指導要領に改訂されて、教育内容がふえて今に至っています。
 ゆとり教育の中で、「みずから学ぶ意欲や思考力などを学力の基本とする」とか「『ゆとり』の中で『生きる力』をはぐくむ」とありましたが、先生方も今までの教え方を変えざるを得ず、戸惑いがあったでしょうし、子供たちも、逆に教育内容が減ったからといって、みずから学ぶ意欲と思考力がその分、身についたとは限らないし、逆に自主性を求められ、課題を与えられることのほうが多くなって、授業自体がわかりにくくなったんではないかと思います。
 その際、導入された総合的な学習の時間が、有効的に授業として活用されたのかも実際疑問です。要は、子供たちに学習をやる気にさせるかどうかが大切なのであって、ゆとりよりも、むしろ気の緩みを子供たちに許してしまったのではないかと思ってしまいます。そこで、学力も必然的に低下したのではないかと思います。
 ゆとり教育で言われた能動的学習とは、まさに子供たちがやる気を持って学習することだと思います。学習の量では片づけられない問題だと思います。ゆとり教育は脱していいと私は思います。
 そこで、ゆとり教育の功罪について、教育長の御見解を伺います。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 文部科学省は、平成10年に改訂された学習指導要領において、教育内容の厳選、授業時数の縮減を行い、「『ゆとり』の中で『生きる力』をはぐくむ」ことを打ち出しました。いわゆるゆとり教育については、子供の自主性を尊重する余り、結果として基礎学力が十分に身につかなかったり、学ぶ意欲の低下につながったりしたというふうに私も考えてございます。
 一方、知・徳・体のバランスのとれた生きる力を育てようとする理念や考え方については、現在の学習指導要領にも引き継がれており、これからの時代に求められる力として重要な柱であると考えてございます。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 ゆとり教育について考えたとき、教育には、知識と考える力、このバランスのとり方が肝要だと思いましたが、さて、これから道徳の教科化が小学校で2018年度、中学で2019年度に実施され、2020年からいよいよ次期学習指導要領での教育が開始されます。学習内容は削減せず、対話を通じて知識の理解を深めるアクティブラーニングを全教科に取り入れ、英語教育を小学3年生から前倒しするといった改訂案が出ています。
 文部科学大臣も脱ゆとり教育を宣言する中、本県では、ことし行われた全国学力テストの成績が小中学校ともにほぼ平均を下回り、国語の2教科で全国最下位となって、依然低迷しております。
 そのような状況の中、道徳が教科化される目的と今後の和歌山県教育の目指す方向について、教育長の御所見を伺います。
○議長(浅井修一郎君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 道徳教育につきましては、本県独自に作成した「心のとびら」と「希望へのかけはし」を活用し、規範意識や思いやりの心などを育む取り組みを充実しているところでございます。
 今回の学習指導要領の改訂により、「特別の教科 道徳」として教科化され、これまでどおり、年間35時間の授業を実施します。いじめ問題への対応などの充実を図るとともに、子供たちがこれまで以上に課題について深く考え、議論し、よりよく生きるための基盤となる道徳性を育む授業を充実することを目的としてございます。
 本県の教育につきましては、確かな学力、豊かな心、健やかな体の知・徳・体を基盤とした、人間としての総合力を備えた人材の育成を目指してございます。そのため、現在策定を進めてございます新長期総合計画におきましても、児童生徒が主体的に学ぶ授業や補充学習の充実、道徳教育、ふるさと教育の推進、計画的な体力づくりなどを掲げることを検討してございます。
 とりわけ、学力は人間としての総合力の土台であり、全国学力・学習状況調査で明らかになった課題を改善できるように、市町村教育委員会とともに、学校、家庭、地域と一体となって、総力を挙げて取り組んでまいります。
○議長(浅井修一郎君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 ところで、主に中学校、高校での部活動ですが、学習指導要領で学校教育の一環に位置づけられています。部活動は、熱心にすればするほど体力、気力も時間も使いますが、気の持ちようで、同時に生徒の学習意欲の向上や責任感、それに社会性を育むものであると思います。部活動で楽しく心身を鍛えられますし、限られた時間の中で勉強にも励めば、大変めり張りもついて、相乗効果をもたらすものだと思います。
 最近、行き過ぎた行動が教員、生徒双方の負担になると問題指摘されている面もありますが、部活動は逆に脱ゆとり教育にもつながる、何事にもやる気、意欲を向上させるものだと私は思います。今後とも文武両道の総合的な人間力を高める教育、よろしくお願いいたします。
 4点目へ行きます。伏虎中学校跡地周辺の今後の交通対策についてであります。
 和歌山県立医科大学薬学部、それに新しい和歌山市民会館が伏虎中学校跡地に建設されるということで、まちににぎわいができるのはありがたいことですが、至近に和歌山市の行政の核たる和歌山市役所と和歌山市消防局、県下最大のホテル・ダイワロイネットホテル和歌山、和歌山城公園、それに、背後にビジネス街等が広がるところで、さまざまな業者が出入りする薬学部、また、各種イベントで一度に1000人以上が押し寄せることが容易に推測される新市民会館の2つが建設されて、稼働率が上がれば上がるほど周辺の交通渋滞が大変懸念されるところです。
 2つの施設はともに既設の市営あるいは民間駐車場で賄うということでありますし、また、今でも朝夕のラッシュ時には伏虎中学校、すなわち新しい市民会館用地に隣接するけやき大通りは公園前交差点付近まで車が渋滞するところでありますが、2つの施設の完成後の交通の動線について大変憂慮しております。
 伏虎中学校跡地周辺というのは、県庁所在地・和歌山市のまさに心臓部分に位置しておりますので、本県の行政や経済活動を停滞させるような悪い影響が出ないよう、県と市が十分な連携をとって、県警察の協力のもと、円滑な交通対策を遂行いただきますよう、切に要望させていただきたいと思います。
 これで、以上、一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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