平成28年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


平成28年6月 和歌山県議会定例会会議録

第6号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


人名等の一部において、会議録正本とは表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に従い、一般質問に入らせていただきます。
 まず、地域公共交通の課題と展望について、以下4項目、順次お尋ねをいたします。
 1点目に、地域における公共交通の現状について企画部長に伺います。
 和歌山県内では、人口減と高齢化、また過疎の進行によって、買い物や通院などに、その交通手段に難儀する県民がふえてまいりました。いわゆる買い物弱者や通院弱者などと言われる交通弱者の増大です。国交省の調査でも、現在住んでいる地域の不便な点を尋ねると、「日常の買い物に不便」が17%、「医院や病院への通院に不便」が13%、「交通機関が高齢者には使いにくい、または整備されていない」が12%と、これらが回答の上位3項目となっています。私の地元有田郡でもそうですが、和歌山県内では、これらの声は全国と比較してもずっと高いと考えます。
 この公共交通というものは、県民が生活を営む上で、電気や水道、電話など通信網、道路などと並んで、県民の重要なライフラインだと位置づけることが大変大事になっていると考えます。
 鉄道とともに地域の公共交通の骨格となっている路線バスですが、この間、利用者減による減便や撤退が相次いでいます。国の資料によると、全国的にはこの10年間で輸送人員が86%に落ち込んでいるのですが、その中身を見ると、都市部では92%であるのに対し、地方部では76%にまで落ち込んでいます。こうした環境のもと、この間6年間で1万1160キロものバス路線が廃止されたとお聞きします。
 そこで、県内のバス利用者とバス路線の状況はどうなっているのでしょうか。あわせて、県としての路線維持のためどう努力してきたかお示しください。
 また、県内の市町村では、地域住民の切実な要望に応え、既存の公共交通を補完する目的で、コミュニティーバスやデマンドタクシーなどによって住民の交通手段確保の努力がなされています。その現状についても答弁を願います。
○議長(浅井修一郎君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 企画部長高瀬一郎君。
  〔高瀬一郎君、登壇〕
○企画部長(高瀬一郎君) 本県の乗り合いバス利用者は、人口の減少、過疎化の進展及び自家用車の普及などにより著しく減少しており、平成26年度の利用者数は年間1330万6000人で、ピークであった昭和46年度の7136万3000人の18.6%となっております。
 次に、バス路線の廃止数は、平成25年度から平成27年度で34路線となっております。県としましては、バス路線維持のため、複数の市町村をまたぐ広域的、幹線的なバス路線に対し、国と協調し、補助を行っているところです。
 また、コミュニティーバスは、交通空白地域、不便地域の解消等を図るため、市町村が主体的に計画し運行しており、平成28年4月現在、紀の川市等県内20市町村において運行されております。そのうち6市町では、事前に予約を受けるデマンド運行が実施されているところです。
○議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 県内のバス路線の利用者減、廃止数が、いずれも大変深刻な状況になっているということが示されたというふうに思います。
 現在、バス路線の廃止は許認可制ではなく、6カ月前の届け出だけで通ってしまいます。今後も、こうした状況が続くことが予想されます。地域交通の骨格となるバス路線の維持のために、行政は果たす役割は大変重要です。
 しかし一方で、一昔前とは社会的環境も異なり、人口や人の流れも変わった中で、既存のバス路線の維持だけを求めることは現実的ではありません。事業者も行政も住民のニーズや課題をよくつかんで、コミュニティーバスやデマンドタクシーなどを初めとする新たな対応も強化していかなければなりません。県と市町村でさらなる努力を要望するものです。
 続いて、次に福祉有償運送についてお伺いをいたします。
 こうした公共交通であるバスやタクシー、鉄道が利用しにくい人たち、交通弱者対策として、この間、自家用有償旅客運送という取り組みが進んできました。非営利の団体による運営で、会員登録することにより実費程度、タクシーの半額程度の運賃で利用することができ、全国的には約7割の市町村で実施をされています。大きく分けて、市町村運営の有償運送として交通空白輸送と市町村福祉輸送の2種類。これに加えて、NPO法人などボランティア団体による公共交通空白地有償運送と、そして福祉有償運送のこの2種類があります。
 今回、まず福祉有償運送についてお伺いをいたしますが、いわゆる介護タクシーや福祉タクシーの利用が随分進んでまいりましたが、介護保険の移動支援では利用できない、例えば墓参りであるとか理美容への付き添いとか友人宅の訪問などでも利用でき、病院内への付き添いも可能であったり、介護保険の介護度がぎりぎりつかない方でも利用できるなど、介護タクシーを補完する、そういう役割も果たしています。
 この福祉有償運送の和歌山県内における状況と、これに対する県の取り組みはどうなっているのか、今度は福祉保健部長より御答弁願います。
○議長(浅井修一郎君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 福祉有償運送の県内における状況ですが、県内7市町村において、17事業者が福祉有償運送事業に取り組んでおり、事業者の内訳は、特定非営利活動法人が7、社会福祉法人が9、生活協同組合が1となっています。
 次に、県の取り組みについては、平成27年度から福祉有償運送事業のより一層の普及促進を図るため、福祉有償運送を実施しようとする事業者に対し、新規車両の購入や福祉車両への改造経費の助成事業を開始しています。
 これまで、県内市町村や社会福祉協議会などに対し、県の助成事業の説明を行うとともに、福祉有償運送事業を実施する上で必要となるタクシー事業者、地域住民などで構成される運営協議会を設置していない市町村に対しては、支援ツールとして事務処理マニュアルを作成するなどし、運営協議会の設置を働きかけてきたところです。
 また、県内の社会福祉法人、医療法人、福祉関係の特定非営利活動法人等に対して事業実施意向調査を行い、事業実施主体の掘り起こしをしてきたところです。
 今後とも、事業を実施しようとする事業者と運営協議会未設置の市町村の両者への支援、働きかけを行い、福祉有償運送事業の普及促進を図ってまいります。
○議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 次に、もう1つの公共交通空白地有償運送についてお伺いをいたします。
 過疎地などタクシーの営業所もなくなった地域や、市街地でも公共交通の使いづらい空白地などのために、公共交通空白地有償運送という制度ができました。この間、有田川町の旧清水に位置する西八幡地域では、県の過疎集落支援総合対策に取り組む中で、住民の強い要望に基づき、当時の過疎地有償運送、現在のこの公共交通空白地有償運送が計画されました。寄り合い会で話し合い、地域のボランティアによる計画が進み、運行開始直前まで行ったのですが、地域の交通会議運営協議会において、一部タクシー業者の合意が得られず実現に至りませんでした。限界集落とならないよう、自分たちのできることから動いていこうとした役員さんたちの熱い思いもありましたし、地域の住民の期待も大きかっただけに、大変残念なことでした。
 県内における公共交通空白地有償運送の状況はいかがでしょうか。あわせて、今後の取り組みを支援する事業についてはどうなっていますか。企画部長の答弁をお願いいたします。
○議長(浅井修一郎君) 企画部長。
  〔高瀬一郎君、登壇〕
○企画部長(高瀬一郎君) 過疎地域などバスやタクシーによる輸送サービスが十分提供されていない地域の住民等をNPO法人や商工会等がその市町村の区域内で運送する公共交通空白地有償運送については、現在、県内で実施している市町村はありませんが、北山村が実施に向けた取り組みを進めております。
 なお、過疎集落支援総合対策のメニューの1つに生活交通の確保があり、地域の合意による事業計画が採択されれば、初期投資に係る支援を受けることができます。国の事業では車両の購入等、県事業ではバス停やベンチの整備等に対して事業を活用することが可能です。
○議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 以上2つの有償運送、福祉有償運送と公共交通空白地有償運送にスポットを当てたわけですが、そのいずれもが運営協議会においてタクシーなど運送事業者の理解と合意を得ることが課題となります。全国的にも、運営協議会において合意を得るまでに要した開催回数は、1回というのが6割であるのに対し、2回以上開催される場合、合意を得るまで6カ月以上かかるケースが約半数あるというふうに、国のほうも資料をつくっております。
 福祉有償運送の場合、交通弱者への支援、住民の移動する権利の保障という観点から、エリアや利用者を限定することにより、誰でもいつでもどこへでも利用できる一般のタクシーとのすみ分けというのが可能になります。そして、その運営が、自治体や社会福祉協議会によるケースが私はもっともっとあってもいいというふうに思うんですね。NPOやボランティアだけに頼るのではなく、自治体も住民ニーズをよくつかんで交通弱者対策に乗り出すべきです。
 車両の運行も、タクシー事業者に運営を委託することも現実的です。委託費も入札によるたたき合いじゃなくて必要経費を支払う方法にすれば、事業者にとってもメリットもあり競合も避けられると思います。高齢者、介護の必要な方、障害のある方、免許を返納した方などの人数が年々増加していくことを考えれば、自家用車に乗らなくてもできる移動がもっと楽になれば、地域の活力のベースとなり得るというふうに思います。
 この項目の最後に4つ目ですが、地域での公共交通を守り豊かにする議論を求めての質問に移らせていただきます。
 国会での交通基本法、交通政策基本法の法案審議においては、国民の移動する権利の保障、交通権というものをどう認識するのか、位置づけるのかということが議論されました。まさにこの観点が、地方行政の交通政策にも求められているというふうに私は考えます。
 ところが、今の国の公共交通政策の中には、地域公共交通の規制緩和、民間委託・民営化を推し進めようとしていることや、白タク合法化につながる動きなど、さまざまな懸念もあります。この間のスキーバス事故などに見られるように、安全性や乗客、運転手を犠牲にして進められてきたこの規制緩和は、公共交通の未来像とは逆行するものです。
 人口減少や高齢化、過疎化が進む県内の地域社会においてこそ、しっかりとしたまちづくりとあわせた地域公共交通をつくり出していくことが大切ではないでしょうか。
 昨年施行された改正地域公共交通活性化法の基本方針においても、ともすれば民間事業者の事業運営に任せっきりであった従来の枠組みから脱却し、地域の総合行政を担う地方公共団体が先頭に立って、この地域公共交通の問題に取り組むことをうたっております。今回の法律では県も市町村とともに計画を立てることのできる側に位置づけられましたし、和歌山県としても現在策定中の新長期総合計画においても、どう地域交通を位置づけるのかをしっかりと議論しなければならないタイミングです。県として、地域交通をめぐる今後の議論と計画づくりに向け、県内市町村とともにどう取り組み、どう役割を発揮していくのかお示しください。
 また、地方自治体が地域の公共交通を支え取り組もうとすれば、国の地域公共交通の確保維持改善事業の予算を拡充することがどうしても必要です。国に対してこの予算拡充を要望すべきだと考えますが、いかがでしょうか、企画部長より御答弁願います。
○議長(浅井修一郎君) 企画部長。
  〔高瀬一郎君、登壇〕
○企画部長(高瀬一郎君) これまでの公共交通については民間事業者の事業運営に依存しがちでしたが、交通政策基本法、地域公共交通活性化及び再生に関する法律の一部改正等により、地域の総合行政を担う地方公共団体が先頭に立ち、関係者の合意のもとに、地域づくりと一体となった持続可能な地域公共交通ネットワークを再構築する枠組みとなりました。
 これに基づき、地域公共交通網形成計画を策定の上、その具体的内容を実現するための地域公共交通再編実施計画を策定し、国の認定を受けることにより、デマンド運行に用いる小型車両や予約システムの導入などが補助対象になることとされています。
 県としましては、市町村に対し、まちづくりと一体となった持続可能な地域公共交通ネットワーク再構築のための両計画策定を働きかけているところであり、市町村ごとに路線バスやコミュニティーバス、乗り合いタクシー等をどのように組み合わせたらいいかについて助言するなど、取り組んでいきたいと考えております。
 なお、国の地域公共交通確保維持改善事業の予算確保についてですが、地域公共交通の確保維持を図る上で非常に重要であると考えており、全国知事会などからも要望しているところであり、今後とも、あらゆる機会を捉えて国に対して働きかけてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁をいただきました。
 これまで地域交通の問題は、ともすれば市町村の仕事ということになってました。市町村は、コミュニティーバスの費用なども交付税措置があるだけで、財政的な負担がネックになりながらも頑張ってます。県は、どちらかというと国からの予算を右から左へお渡しするだけの仕事、地域の交通会議でも、お客さんのような立場であることがあるんじゃないでしょうか。
 基本的には、基礎自治体が地域課題をしっかりとつかむこと、国がきっちりと予算措置をすることが必要不可欠ですが、県としても県民の実態やニーズを市町村とともによくつかみ、地域交通をデザインする仕事に汗をかき、県としてのしっかりとした予算措置を伴う支援策を準備すべきときだと思います。このことを新しい長計を初めとする各種計画に位置づけ、今後予算化していくよう強く要望をさせていただきます。
 次の質問に移ります。
 次に、第2の柱として森林・林業総合戦略についての質問に移ります。
 昨年の12月県議会でも森林・林業政策について質問をさせていただき、山を生かして和歌山の森林と地域経済を守ろう、和歌山らしい林業モデルをと提案させていただきました。県は、今年度からの新政策として森林・林業総合戦略を打ち出しましたが、この新たな林業政策について、以下3点にわたって質問をさせていただきます。
 まず第1に、素材生産目標について伺います。
 昨年の地方創生総合戦略でも位置づけたように、木材の素材生産目標については、この間16万立米程度で横ばいだったものを約1.5倍化する目標を持ち、生産量と需要の拡大を進めようとしています。
 この目標は、単なる数値目標、お題目であっては意味がないわけで、この総合戦略で掲げた23万立米という数字は何を目指したどういう目標なのでしょうか、農林水産部長より答弁を願います。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 林野庁では、林業の成長産業化をキーワードに、新たな建築工法や木質バイオマスのエネルギー利用等、木材の多面的な利用による需要の拡大に向けて、さまざまな取り組みを進めているところです。
 そのような流れの中で、本県におきましても、今後、本格的に利用期を迎える森林資源を継続的に循環利用していくことが必要となっています。
 このことを踏まえ、和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略において、県内需要に対する県産材シェアの回復と新たなバイオマス利用の動きへの対応を目指し、平成25年に16.6万立米であった素材生産量を、平成31年に23万立米にまで引き上げることを目標として掲げたところです。
 素材生産量の増大を通じて木材の販売規模を拡大することにより、林業従事者の雇用の確保と待遇改善を図り、ひいては地域の林業が活性化するという好循環を目指してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 次に、ゾーニングによる選択と集中について伺います。
 総合戦略では、県内の森林を傾斜角度や道路からの距離によってゾーニングをして、事業の選択と集中を進めるとされています。
 ゾーニングという仕分けをするということなのですが、1つ1つの山には、その木を育ててきた山主さんの思いもありますし、その山主さんの意向や、その山で育っている木材の状況を考慮しないで県が勝手に上から押しつけるようなことがあってもいけませんし、また、ここはマル、ここはバツと、このゾーニングされた山林以外を機械的に切り捨てるような制度設計ではいけないと考えますが、このゾーニングによる選択と集中というものをどのように進めようとしているのか、農林水産部長に御答弁を願います。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 現在、林業を取り巻く環境は、全国的な競争が激化しているため、林業生産に係る生産性の向上が強く求められています。
 そのためには、個々の林業事業体の技術力を高め、低コスト化を推し進めていくことも必要ですが、地形的に有利なエリアに絞って重点投資することで、他産地に負けない効率的な林業が行える場所をふやしていくことも必要となります。
 そこで、本県では森林ゾーニングという考え方を取り入れ、選択と集中の強化を図ることとしました。森林を地形条件などにより経済林と環境林の2つに大きく分け、経済林の中でも特に有利な場所については重点エリアと位置づけて、当面の間ここに支援を集中することとしました。
 森林ゾーニングのエリア分けの基準については、客観性や公平性を担保するために、議員御指摘のとおり、山腹傾斜角40度未満であったり4トントラック走行可能の道路から500メーター以内などといった、数値の把握が容易で林業生産性との関連性が強いものを使用しています。
 エリア分けの具体的な手順については、5月中旬から6月初旬にかけて県内5カ所において説明会を開催したところでありますが、今後は参加者から出された意見を踏まえて、県内森林組合や林業事業体等の皆様と議論を進め、より実効性のあるものにしてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 最後に、皆伐、間伐、環境林化のバランスのとれた森林林業政策をという点でお伺いをします。
 県が掲げた素材生産目標を達成する林業振興を進めるには、これからは皆伐をうんとふやさなければなりません。二酸化炭素の吸収量という環境面から見ても、伐期を迎えた木から皆伐により若い木に更新していくことが有効です。また、森林組合の作業班の皆さんからも、「森林組合の今後を考えても、間伐など補助事業頼みではモチベーションが上がらない。計画的な皆伐で山の更新が必要」との声も数多く聞かせていただきました。
 また、皆伐と再造林の取り組みを大きく伸ばすと同時に、間伐、環境林化をバランスよく進めることも大切であると考えます。
 県内急傾斜地での皆伐や搬出間伐を進めるため、架線集材技術の活用、継承と鹿害対策など再造林への支援、そして、計画的な伐採を進めるとともに、環境や災害対策として環境林への誘導などを、県内森林組合や事業者との間でよく相談しながら事業推進を図るべきだと考えますが、いかがでしょうか。農林水産部長より御答弁願います。
○議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 主伐や搬出間伐のような木材生産については、森林ゾーニングに基づいて設定する重点エリアに素材生産のための支援を集中させることにより、生産量の増大を図ります。
 将来、木材生産に必要となる木を育てるための間伐につきましては、重点エリアを含む経済林全体において継続的に切り捨て間伐等により支援してまいります。
 また、森林の公益的機能の維持増進のために行う環境林化につきましては、環境林内において手入れのおくれている人工林を対象に針広混交林化や広葉樹林化を支援し、健全な森林へ誘導してまいります。
 これらの支援を森林の総合的なバランスを勘案しながら実施することで、本県の林業・木材産業の成長産業化と、多様で健全な森林づくりを推進してまいります。
 また、森林ゾーニングのエリア分けについては、本県の地形条件や自然環境の特性に合わせた最適な事業を推進し、その効果が最大限発揮できるような形にする必要がありますので、議員御指摘のとおり、県内森林組合・林業事業体等の皆様と十分な意見交換をしながら作業を進めてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 ぜひ県内の関係者の皆さんと膝を突き合わせ、しっかりと議論を重ねていただき、この1年間、よりよい計画を練り上げていただくよう要望しておきます。
 次に、3つ目の柱であるヒートポンプ給湯機による低周波音健康被害についての質問に移らせていただきます。
 昨年2月県議会において、由良町における特別養護老人ホームに設置されたヒートポンプ給湯機による近隣住民への低周波音健康被害について取り上げました。健康被害に対する丁寧な対応を求めるとともに、消費者庁の意見に基づく関係者への対応も求めました。
 その後、県は、低周波音健康被害を予防するため、県内関係団体に対し、消費者庁の意見や業界団体が作成した据えつけガイドブックの周知徹底を行うとともに、県のヒートポンプ給湯機設置補助事業においてもガイドブックに沿った据えつけを要綱に明記するなどの素早い対応をしていただいたことは、評価をし、お礼を申し上げたいと思います。
 ところが、県は、設置施設側に改善指導を続けたものの、翌4月には、設置施設側がお金をかけてまでこれ以上の改善をするつもりがないと意思表示されたとして、県としての行政指導を打ち切ってしまいました。このことについては、昨年9月県議会の雑賀議員の質問で、指導は強化すべきで打ち切りは逆だと指摘されたところです。県は事業所への行政指導をやめたと言いますが、低周波音による健康被害は改善されたわけではなく、健康被害を訴えている住民の方の体の状況は、むしろ時間を積み重ねて悪化をしているのです。行政指導打ち切り、その判断は非常に残念でした。
 私は、前回の質問でも申し上げましたが、このような個別案件への問題解決には、健康被害を受けている県民と設置施設との間での交渉と努力だけでは技術的にも費用負担の面でも限界があり、大きな低周波音を発生しているヒートポンプ給湯機を製造したメーカー並びにその機械の設置場所や設置方法を設計・施工した業者にも、改善方法の検討はもちろん、費用負担も含め、しっかりと対応を求める必要があると考えております。
 そのことから、私は、こうしたメーカー、設計・施工業者への指導においては国の果たすべき役割が大きいと考え、その後、9月には消費者庁、11月には経済産業省の担当者ともお会いして、この問題への対応強化を求めてまいりました。
 この4月に消費者庁が開いた会議では、改めて国から各方面に対し、健康被害未然防止のための周知徹底とともに行政の健康被害への丁寧な対応を求めていて、消費者庁が意見を出した後の各省庁の取り組みを追いかけているということが、そのホームページの資料からも見てとれます。
 今後の取り組みとしても、低周波音健康被害の未然防止と個別問題解決のため、こうした粘り強い取り組みを通じて、この低周波音健康被害がどういうものなのかという理解を、国民、業界、行政の中に広げていくことが大切であると考えるところです。
 消費者庁からは、本年4月14日付でこの低周波音問題への対応について県・市町村に対して改めて依頼文書が出されるなど、リスク低減のための努力と個別案件への行政の丁寧な対応を求められていますが、これらを受け、県として低周波音健康被害に対する認識と姿勢はいかがでしょうか。環境生活部長の答弁を求めるものです。
 次に、低周波音の発生源を特定するためのオンオフテストについてお伺いをいたします。
 私、これまで2回にわたって今回の由良町の件で情報公開開示請求をして、施設側の姿勢とかメーカーからの対応、こういったものをつぶさに目を通させていただきました。この中で県は、これまで由良町の施設に設置されたヒートポンプ給湯機が低周波音被害の原因であるというふうに特定ができればメーカーに対策を求めることは可能であり、すべきだということも検討されてきたということがわかります。
 行政指導を打ち切る前の段階では、県から遮音壁などの対策検討とともに、低周波音の発生源を特定するための方法として、国も示しているオンオフテストの実施を提案していました。なぜ発生源の特定が大切かといいますと、この開示された資料によりますと、このヒートポンプ給湯機の製造メーカーである三菱電機からは、低周波音が施設以外からもいろいろ出ているし、施設内にもさまざまな機械があるので特定が難しい、異常を感じる事例がほかにない、これ以上改善する方法を思いつかない、こういう見解が返ってきていたということがわかります。責任回避と言わざるを得ないような、こういう後ろ向きの返事だというふうに思います。
 今回のケースにおいては、発生源の特定が、メーカーや設置業者も含めた問題解決の糸口となることが期待できます。しかし、当時このオンオフテストの実施には、原因が特定された場合は施設側が対策実行を約束するということが条件のようになっていて、これでは合意のハードルは高かったというふうに思います。結果として、行政指導を打ち切ることとなってしまいました。
 今回の案件においては、今後の対応を進めるためにもハードルを設けずに、低周波音の発生源特定のためにオンオフテストを実施すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 以上2点、環境生活部長より御答弁を願います。
○議長(浅井修一郎君) 環境生活部長日吉康文君。
  〔日吉康文君、登壇〕
○環境生活部長(日吉康文君) 家庭用ヒートポンプ給湯機は、電力消費量の平準化に有効な深夜電力を使う給湯システムです。普及に伴い、機器から生じる運転音や低周波音により不眠等の健康症状が生じたとの相談事例が全国的に増加しています。
 平成26年12月に、消費者安全委員会から経済産業大臣、環境大臣等に、家庭用ヒートポンプ給湯機の運転音による不眠等の健康症状の発生のリスクをできるだけ低減するとともに、より根本的な再発防止策の検討と発生時の取り組みを進めるよう意見が出されております。
 県といたしましても、この意見に基づき、家庭用ヒートポンプ給湯機の設置について、建築設計関係者や給湯機の施工業者に対して、寝室のそばを避けるなど適切に設置するよう家庭用ヒートポンプ給湯機の据えつけガイドブックを周知し、健康症状の発生のリスク低減の対策を行っているところでございます。
 また、健康症状発生時の対応につきましては、環境省が作成しました低周波音問題対応の手引に基づき、低周波音と健康症状の対応関係を調査し、個々の事案に対応した発生源対策、伝搬経路対策、受音点対策等の対策を行うよう、発生源の施設設置者に対して働きかけを行っているところです。
 また、この発生源を特定するためのオンオフテストをすべきとのことですが、本件につきましては、これまでにもヒートポンプ給湯機の製造者により低周波音の測定が行われておりますが、健康症状を訴えている方からの要望があれば、ヒートポンプ給湯機設置事業者の了解を得た上でテストを実施してまいります。
○議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長から御答弁いただきました。
 低周波音による相談事例が全国的に増加しているという認識、そして、発生リスク低減と健康症状発生時の対応の姿勢もお答えいただき、オンオフテストをやろうよという提案に対しては、関係者の了承を得てやっていきたいという姿勢が示されました。
 私は、この由良町の案件では、なぜ途中で指導をやめるんだ、なぜオンオフテストができないんだと、答弁によっては言いたいことがいっぱいあったんですが、やらない言いわけではなくて、やるという方向で前に向いた答弁であったと、そう受けとめております。
 低周波音の健康被害は、聞こえないからつらいんですね。うるさくないんです。苦しいんです。痛いんです。うるさい音なら対策はいろいろとれるんです。見えないし聞こえない低周波音、これは健康被害を感じない人にとっては理解されにくいんですね。そして、一たび問題が起これば、その解決は移設や撤去というような方法でないとなかなか有効な対策はとれないという大変なものです。
 先ほど紹介もしましたが、国のほうでは指導して、こういうヒートポンプ給湯機の据えつけガイドブックというのも協会のほうはつくりましたし、チラシもつくりました。そして、今はカタログにも設置方法は十分気をつけましょうということまで、販売のときのカタログまで書いている。そうしないと、一旦つけてしまえば、後からもう本当に大変なことになるということになるわけですね。
 この低周波音健康被害の問題では、製造メーカー、施工業者、国も県も市町村も、その姿勢、取り組みには不十分なところが山積みだと考えます。しかし、多くの人に知らせ、きょうのように議会で取り上げたりすることによって、県民の皆さんの理解を広げ、社会としての対応、行政としての対応を築き上げていく、切り開いていく、このことが大切だと考えています。
 和歌山県として、これまで以上に県民の立場に立った丁寧な対応を要望し、次の質問に移らせていただきます。
 最後の柱であるモササウルスの化石についての質問に移らせていただきます。
 議場には、配付資料として自然博物館のパンフレットをお配りいたしておりますので御参照ください。
 このたび、有田川町の鳥屋城山で発見されたモササウルス化石のクリーニングが完了し、5月の連休中に県立自然博物館での展示と行事が行われ、私も参加してまいりました。
 基調講演での解説、研究者やレプリカ作成者などを交えたシンポジウムで、この化石の貴重な価値について改めて学ぶとともに、著名なサックス奏者も参加して行われたミニコンサートではモササウルスの楽曲まで披露され、この化石が学術的魅力だけでなく、多くの人の心を引きつけるものを持ってるなとの感想を持ちました。
 モササウルス類と見られるこの化石は、ほぼ半身がそろっているという日本一のもの、アジアでもトップのものであるそうで、今後、さらなる研究の成果が期待されています。
 昨年公開された映画「ジュラシック・ワールド」でも、恐竜をも食べてしまう海の王者として、海の最強の王者としてモササウルスが登場し、主役級の扱いです。
 ところが、どうもうな海の王者というイメージは、サメとかシャチに近いイメージなんですが、海の爬虫類というふうに言われると、ウミガメとかウミヘビとかという仲間ということになって、余りなじみがありませんし、イメージしにくいんですね。子供たちからも大人からも、「モササウルスって聞いたことない」とか「何だ、恐竜と違うんか」、こういう声も聞こえてきます。
 もっとこの化石の大発見を話題にしてマスコミなんかでも取り上げてもらうことが、「和歌山ってすげえな」、こういう声を広げ、和歌山だけでなく有田川町とか鳥屋城山、この注目度も上げ、地域資源としての価値を高めていくと考えます。
 今回、クリーニングが完了したモササウルス化石について、その学術的価値及び地域資源としての価値についてどう考えているのか御答弁を願います。
 また、2つ目に今後の活用についてですが、クリーニングが完了したことにより、これまで以上にこのモササウルス化石の研究と活用を展開、継続することが求められていると考えます。いろんな模型とか想像図とか、そういったものもつくられるんじゃないかと思うんですね。
 モササウルス化石の活用については、普及啓発施設としての自然博物館はもとより、各種研究機関や地元自治体などとも連携して、さらに価値を高める、地域おこしにもつながるようなさまざまな取り組みを広げていくことが大切だと考えますが、今後の活用についてどう考えておられるのか、以上2点、教育長より御答弁願います。
○議長(浅井修一郎君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) モササウルス化石について、一括してお答え申し上げます。
 モササウルス類は、恐竜が繁栄していた中生代の白亜紀後期に生きていた爬虫類であり、海中で生活をしていました。ひれ状に進化した足と鋭い歯が特徴で、魚類以外にウミガメや小型の首長竜なども捕食していたとされております。
 本県の有田川町で発見されたモササウルス類の化石については、平成18年2月に発見された後、発掘調査を行い、化石のクリーニング作業が本年2月に完了いたしました。
 モササウルス類の化石は国内において40例近く発見されていますが、本県で発見されたものほど多くの部位がそろっている例はございません。特に注目すべきは前足と後ろ足の部位がそろって発掘されたということで、これはアジアでは他に例がなく、極めて学術的価値が高いものであると認識しております。
 また、今後始まる本格的な研究の結果によっては新たな学術的価値も期待でき、発見された場所が広く注目をされることで新たな取り組みに活用できる可能性もあり、地域資源としての価値も期待できると考えてございます。
 県では、県立自然博物館において化石を公開する企画展を開催するとともに、地元中学校を初め県内外においてPR活動をするなど、積極的にその活用を図ってまいりました。今後は、自然博物館において常設展示を行うとともに、有田川町において7月の16日から8月の31日まで化石の展示公開を予定してございます。加えて、研究の成果を踏まえ、国内外への情報提供や新たな情報を盛り込んだ展示を行うなど、有田川町や関係機関とともに積極的に学術的価値と魅力を伝えてまいります。
○議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 教育長からは、あしたから始まる地元での公開展示も御案内いただき、今後も関係機関と一緒に値打ちと魅力を広げていくと答弁をいただきました。
 化石を通じてロマンを語ると言えば大げさかもしれませんが、夢がある仕事だと思います。また、このモササウルスにかかわる人の魅力も半端ではないものを感じました。発見をしたり発掘する研究者のこだわり、レプリカをつくる物づくりの人のこだわり、テレビの特集番組なんかもどんどんつくれるんじゃないかと思うほどでした。
 和歌山の魅力をアピールする、また1つ大きな素材となることでしょう。県や市町村、関係機関としっかり力を合わせて取り組まれるよう要望し、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(浅井修一郎君) 以上で、松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時31分休憩
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