平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(藤本眞利子議員の質疑及び一般質問)
平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録
第6号(藤本眞利子議員の質疑及び一般質問)
汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。
正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。
午後1時0分再開
○副議長(藤山将材君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
32番藤本眞利子さん。
〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)
○藤本眞利子君 皆さん、こんにちは。議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問を行います。
高校入試も近づいてまいりまして、高校を受験する子供たちにとっても悩ましい春がやってまいります。
今回は、まず奨学金制度についての県の取り組みをお聞きしたいというふうに思います。
近年、奨学金制度の問題が大きくクローズアップされるようになりました。それは、高校や大学を卒業すると同時に多額の借金を背負って社会生活をスタートさせる方が増加しているということです。新たに社会人になった方に何が起きているのか。どうしてそのようなことになってしまったのでしょう。
現在、県下の学生・生徒が利用している奨学金制度には、日本学生支援機構と和歌山県が実施している奨学金制度があります。
日本学生支援機構は、主に大学に進学した学生を対象に奨学金を貸し付けています。2種類の貸し付けがあり、第1種奨学金は無利子、第2種奨学金は有利子となっています。第1種無利子の奨学金は、特にすぐれた学生・生徒で、経済的理由により著しく就学困難な方に貸与を行っています。
第2種有利子の奨学金は、年3%の利率を上限に、第1種奨学金より緩やかな基準により選考された方に貸与されています。
お配りしている資料のグラフをごらんいただければと思いますが、経年で見てみると、日本学生支援機構の場合、無利子奨学金の貸与人数は横ばいです。それに比べて、有利子奨学金の貸与人数は増加している実態がわかります。
1998年では、無利子奨学金貸与人数が39万人、有利子奨学金貸与人数が11万人となっています。2012年では、無利子奨学金貸与人数が38万人、有利子奨学金貸与人数が96万人となっており、無利子奨学金貸与人数はほぼ横ばいでありますが、有利子奨学金貸与人数は9倍も増加しています。
和歌山県では、第1種奨学金採用候補者数は933人、第2種奨学金採用候補者は1448人となっており、やはり第2種奨学金を借りている方がふえているという傾向であります。奨学金が奨学金という名のもとに有利子で貸し付ける、まさに学生ローンとなっています。
子供の貧困や奨学金の返済が社会問題となり、新聞やマスコミ等で取り上げられるようになったこともあり、2~3年前からは第1種奨学金の枠をふやし、第2種奨学金枠を小さくする動きが出てきていますが、まだまだその差は歴然としています。
また、奨学金を利用している学生は、1998年では全大学生のうち23.9%であったのに対し、2012年では大学昼間部で52.5%となっています。約半数の学生が奨学金を利用している状況となっています。
奨学金を利用する学生が増加している原因として、国公立大学授業料の上昇が挙げられます。大学入学時の費用は、入学金と授業料を合わせると2010年には81万7800円余りで、20年前の52万5000円と比べると30万以上の値上げとなっています。
学費の値上げと反比例して、学生を支える保護者世帯の年収は、中央値ではありますが、1998年に544万円であったのに対し、2009年では438万と下降しているのです。奨学金を借りなければ進学できない現在教育の実態が浮かび上がります。
例えば、県内の高校生が高校等奨学金の国公立自宅外区分という区分で奨学金──これ2万3000円なんですが──これを利用したとしますと、年間27万6000円、3年間で82万8000円が卒業時における学生本人の借金となります。その後、大学に行くとして、無利子の第1種奨学金を受けられたとして、国公立自宅外区分で月額5万1000円の奨学金を利用したとすると年間61万2000円、4年間で244万8000円を借りることになります。合計327万6000円、これが卒業時に本人の借金として22歳の肩に背負わされることになります。
人によってはこの第1種奨学金と第2種奨学金の双方を借りている学生もいるということで、それがどれほど過酷なことか、想像していただきたいと思います。これが今の若い人たちの実態であります。
このような社会背景があり、卒業後の就職難が追い打ちをかけています。本人が失業や無業、非正規雇用や周辺的正規雇用といった状況に直面しており、返したくても返せない現状であります。卒業したからといって安定した生活を送れる保証もない中、奨学金滞納者は急増しています。
全国的な動向を申し上げましたが、県では今年度、新たに大学生等進学給付金が創設されました。給付型奨学金の導入については全国的にも早い導入で、画期的な取り組みとして高く評価したいと思います。
しかし、今回創設された給付型奨学金の総額は2400万円余り。1人当たり60万円で、給付は対象人数が40人と、利用対象者から考えると十分な数字とは言えません。
また、これまでも実施されてきた和歌山県修学奨励金制度は、高校等奨学金と大学・短大等を対象にした進学助成金、一時金があり、これらは無利子貸与であります。無利子ではありますが、借金であることは変わりませんので、和歌山県では、この無利子の貸与の奨学金は大体816人余りが利用しております。
そこで、知事にお伺いします。
教育の機会均等は誰もが保障される権利でありますが、日本の教育制度は誰もが平等に教育を受けられる制度になっていないというのが私の実感であります。
知事は、今回、給付型奨学金を創設されました。このことは評価しますが、高校や大学の卒業時に多額の借金を抱えてしまう、この今の日本の奨学金制度のあり方について、どのような見解をお持ちでしょうか。所見をお伺いしたいと思います。
また、和歌山県には県内に大学が少ないということもあり、全国的に見て県外大学への進学は全国一です。このような状況を少しでも緩和する意味でも、修学奨励金については、地元に残る高校生などについて奨学金の免除制度を導入してはいかがでしょうか。
また、返還の期日についても、修学奨励金が10年、進学助成金、一時金が5年と期日が決められていますが、近年は厳しい生活を余儀なくされている方もふえています。どうしても返済できない方に猶予期間を延長するなど、柔軟な対応をしていただきたいと考えます。
さらに、その期限を過ぎた場合の10.95%という延滞利息も、廃止するか利率を下げるなどの検討をしていただきたいと考えています。
以上3点について、教育長に見解をお伺いします。
○副議長(藤山将材君) ただいまの藤本眞利子さんの質問に対する答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 経済的な理由により、高い志を持ち、また学力も相当ある生徒が進学を断念するということのないように、教育機会を保障することは重要であります。このため、奨学金制度や授業料の減免などの支援策が行われているところではございます。
しかしながら、奨学金については、貧困家庭の増加や卒業後の就職難等による返還金の滞納が問題となっており、貸与型の奨学金のみならず、給付型の奨学金の充実が必要であると私も考えております。
このようなことから、県としては、低所得世帯の向学心のある学生に対して、大学進学を支援する独自の給付金制度の創設について今議会に提案しているところでございます。
また、この中では、地元に残る人もさらに優遇するということにしていきたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 教育長宮下和己君。
〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 修学奨励金の返還時における負担軽減についてお答え申し上げます。
免除対象者の拡充につきましては、返還金が次世代への奨学金となることから、現状では困難であると考えてございます。
次に、返還猶予につきましては、病気や生活保護などの場合は猶予を実施しており、返還者の実情に合った負担軽減に取り組んでいるところでございます。
次に、延滞利息につきましては、期日どおりの返還者との公平性から、また他の延滞利息と比べて現行の割合が妥当であると考えてございます。
このような制度のもと、経済的な事情を抱えた方には丁寧な相談を実施し、個々に応じた返還をお願いしているところでございます。
今後は、奨学金制度の維持を図りつつ、給付金制度を含め、関係部局と連携しながら修学支援の充実に努めるとともに、国への制度拡充を働きかけてまいりたいと考えてございます。
○副議長(藤山将材君) 藤本眞利子さん。
〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 知事には、日本の奨学金制度についての所見をお伺いしたわけです。
この日本の高等学校、大学等への公的支出というのはGDPの約0.5%ということで、OECDの平均の約半分以下であります。日本は最下位です。OECDが各国の高等教育の授業料と奨学金を4つのモデルに分けた分析がありまして、その中で日本は、授業料が高額で学生の支援体制が未整備というふうな、とっても悪い分類に属されています。先進諸国が教育に係る費用を無料やとか低額に抑えていることに比べると、日本の教育費は各家庭に大きな負担を強いています。
ましてや、大学進学時の支出は、最初から大学進学を断念する生徒を生み出し、子供たちの夢を諦めさせる要因となっています。この点についても知事は十分理解されていると思います。
今回、県で実施している貸与型の修学奨励金、進学助成金の返済について、猶予項目を設置してほしい、返済期限の緩和や延滞利息の低減などを提言いたしました。まあ、現時点は難しいとの教育長の答弁でありました。
日本学生支援機構でも、以前は教員になったら免除があったり──公務員になったら免除があったりとか──したんですが、もうこれは廃止になっています。
この問題は、未来を担う将来を託す若い人材を確保するためにも本当に重要なので、奨学金制度のあり方について、国を巻き込んだ議論を、この日本学生支援機構に対しても、和歌山からしっかりと発信して見直しをしていただきたい、また給付型の奨学金についてもしっかりと創設していただきたいというふうなことを発信していただきたいというふうに、強く要望いたします。
次の質問に入ります。
次に、県民の方からも御相談をいただいている、県庁前交差点の一角にかつてあった扇の芝の整備と周辺の景観の整備についてお伺いします。
「紀伊国名所図会」によると、和歌山城の南西隅にある土地、その形状と芝生を植えていることから「扇の芝」と呼ばれていました。この扇の芝には、隣接して南北約350メートルの細長い馬場があったそうです。武士が馬に乗りながら弓を射る、流鏑馬の練習が行われていたと言われています。その馬場に沿って東側には少し根が上がった松並木があり、木陰で武士たちの武技を見物する老若男女の姿があったと記されています。
扇の芝からは、高石垣越しに連立式天守閣が間近に見えたそうです。現在、その高石垣は全く見えない状態になっています。お堀を挟んだ市役所側から見る高石垣は、手入れもされ、大変美しい姿を私たちに見せてくれています。
しかし、民家が隣接している扇の芝側は、高石垣の間から樹木が茂り、草に覆われ、このまま放置すれば高石垣自体が壊れてしまうのではないかと感じる状態です。
扇の芝の景観をめぐっては、これまでも市民の方からも指摘がされてまいりました。扇の芝において、和歌山公園の敷地の一部である高石垣から1.5メートルの範囲は、公園敷地内でもあるにもかかわらず、都市公園法に定められていない民家や商店、駐車場が高石垣の際まであり、和歌山市は許可を与えて使用料を徴収してきました。このことは、2008年11月24日付の「読売新聞」や同月26日付の「産経新聞」に記事が掲載されています。
写真を少し資料としてお出しをしています。石垣に隣接というんですか、もう寄りかかったような状態が見えると思います。このような状態を、平成21年度に行われた和歌山市の包括外部監査報告書によると、和歌山城管理事務所の所管の分で、「民家や店舗が和歌山城、和歌山公園の土地の一部を違法占拠している。都市公園法に違反しているため、早急に適切な処理をする必要がある」と指摘されています。
このような指摘から10年余りが経過したところで、ようやく和歌山市も重い腰を上げ、史跡和歌山城整備計画の見直しを図ることとなりました。市では、平成28年度に見直し計画の策定に取りかかり、その中で扇の芝の史跡指定に向けた準備を進めていくこととしています。
県都和歌山市の顔でもある和歌山城の、その中でも、県庁に最も近い扇の芝付近の景観は、観光立県を目指す県としても放置できない問題だと考えます。
天守閣の南西側は、和歌山城の景観を最もよく見せるビューポイントです。しかし、その手前の国道にかかる陸橋や扇の芝向かいの建物群も老朽化が目立ちます。扇の芝を史跡に指定するといった動きと同時に、その周辺の景観整備が欠かせないものと考えます。
そこで、知事にお伺いします。
先ほどからお話をしているように、私は扇の芝は価値の高い場所であると考えますが、その価値については、どのように捉えられていますか。
さらに、知事もよくごらんになっていると思いますが、扇の芝の一画は、民家や事務所、シャッターで閉鎖状態の店舗などが密集し、風格のある和歌山城天守閣など、周辺景観を台なしにしています。
扇の芝史跡整備事業の主体はあくまでも和歌山市でありますが、知事は都市計画においても市とともに協調していく方向を示されています。扇の芝史跡追加指定に伴い、その周辺を含めた景観整備についての所見をお伺いします。
○副議長(藤山将材君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 藤本議員御指摘のように、扇の芝は、昔から武士の空間でありながら町人にも開放されており、城外にあっても和歌山城と一体となった歴史的に希少な場所でありまして、史跡として追加指定を目指すのにふさわしい場所だと思っております。
こうした中、和歌山市がこの扇の芝地区を含む和歌山城周辺を景観重点地区として指定しているところでありますが、ようやくその具体化を目指そうという動きが出てまいりましたことは大変いいことだと思います。今後、扇の芝の史跡整備に向けて取り組みを進めていくと聞いておりまして、評価しているところでございます。
また、その向かい側の地区についても、空き地や老朽化した建築物等が点在し、和歌山城との一体景観として必ずしも好ましくない状況にあると認識しております。
また、現に扇の芝で商売をしている人とか、あるいは住んでおられる人にも、そこを史跡として整備しようといたしますと移ってもらわないといけませんが、そうすると同じような条件の代替地も必要でございます。
扇の芝とその向かい側の地区との一体整備は、史跡和歌山城の価値をさらに高めるとともに、魅力あるまちづくりのためにも必要と思っております。
こうしたことから、市の扇の芝の史跡整備にあわせ、その周辺一体のまちづくりについて、県としても主体的に取り組み、市と一緒になって再開発も含めた整備手法の検討等を行っているところでありまして、その実現に向けて和歌山市に協力してまいりたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 藤本眞利子さん。
〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 県としても最大限協力して取り組んでいきますということですので、大変前向きで、うれしい答弁だと思います。
でも、市としても、扇の芝を史跡指定に追加する段取りからと思います。そのためには住んでる方々に同意をいただかなければなりませんので、あんまりゆっくりしていたんではいつになるかわかりませんので、ともに協力していただきまして、もうあらゆる方面からアプローチしていただいて、少しでも早く進められるようによろしくお願いいたします。
次の質問に入ります。
3問目は、障害者差別解消法の取り組み状況についてお聞きしたいと思います。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、いわゆる障害者差別解消法が2013年6月19日に成立し、この2016年4月から施行される運びとなっています。
この法律は、「全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」と明記し、行政機関等及び事業者に対し、障害を理由とした差別を解消するための措置を行うように定めたものであります。
障害者基本法第4条には、差別する行為を禁止し、社会的障壁を取り除くための合理的配慮をしないと差別になると規定していましたが、今回の法律ではもう一歩踏み込んで、「具体的に実現しなければならない」と定められました。
これまでの障害者差別とは、目が見えない、聞こえない、歩けない、その人たちが持っている特性から生じると多く考えられてきましたが、そういった個人の特性のため働けない、また、さまざまな活動に参加できない社会の仕組みこそが差別であるとしています。
障害者差別解消法第7条には、行政機関等では、「性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的配慮をしなければならない」と明記されています。画期的な法律ではありますが、この法律が円滑に実施され、どのような場面でも対応できるようにするためには、まだまだ高いハードルがあると感じています。
障害者差別解消法の内容を円滑に実施するためには、障害者の日常及び社会生活をカバーする幅広い分野にわたる取り組みが必要と考えます。社会的障壁を除去するためにどのような対策を考えているのか、県の取り組み状況について福祉保健部長にお伺いします。
次に、お伺いします。
ここ近年、何らかの障害を持った児童生徒は増加傾向にあります。和歌山県立特別支援学校の児童生徒数は、平成17年度に1051人でありましたが、平成27年度には1407人と400人余り増加しています。また、小中学校の特別支援学級在籍児童数は、小学校において平成17年度に658人であったものが、平成27年度には1110人、中学校においては257人から474人と、倍近い増加であります。児童生徒の数が減少しているにもかかわらず障害を持つ児童生徒の数が増加している状況の中で、学校での対応が問われていると思います。
児童生徒がどのような障害を持っていたとしても、全ての子供たちが特性に応じた教育を受けることができる学校にしていかなければなりません。しかし、残念ながら、毎日通う学校は、他の公共建築物の中でも最もバリアフリー化がおくれています。エレベーター設置やトイレの問題など、指摘されて久しいにもかかわらず、なかなか改善されずに今に至っています。
そこで、教育長にお伺いします。
社会的障壁を除去し、バリアフリー化を進める観点から、学校の取り組み状況と障害者差別解消法の趣旨が保護者や教職員に理解しやすい啓発も重要だと考えますが、この取り組み状況についてもお聞かせください。
○副議長(藤山将材君) 福祉保健部長幸前裕之君。
〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 県では、紀の国障害者プラン2014において障害を理由とする差別の禁止を基本原則の1つとしており、障害の有無によって分け隔てることなく相互に人格と個性を尊重し、支え合う共生社会の実現を目指し、総合的な障害者施策を進めているところです。また、和歌山県福祉のまちづくり条例に基づき、公共施設や公共交通機関のバリアフリー化を進めることにより、誰もが住みやすいまちづくりに取り組んでおります。
本年4月から障害者差別解消法が施行され、行政機関はもとより、民間事業者や全ての県民がそれぞれの立場で障害や障害のある方について一層理解を深める必要があると考えております。
そのため、県では、県が事業や事務を実施するに当たり障害のある方の社会参加を促進できるよう、具体的な配慮事例やそれぞれの障害特性に応じた配慮事項を盛り込んだ職員対応要領を策定したところであり、今後、研修等を通じて職員に周知徹底を図ってまいります。
また、障害のある方の社会参加を促進するためには市町村や民間事業者における取り組みも重要であり、各省庁が策定した事業分野ごとの指針に基づき、適切な対応が図れるよう、所管する各部局から周知してまいります。
○副議長(藤山将材君) 教育長。
〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 社会的障壁の除去に向けた合理的な配慮の提供については、具体的な場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるとされています。
県教育委員会では、障害のある子供たちがその特性に応じた十分な教育が受けられるよう、一人一人の教育的ニーズの把握と、保護者や子供本人の意向等を十分確認しながら、必要とされる合理的な配慮の内容を慎重に検討し、その提供に努めてまいりたいと考えてございます。
次に、学校のバリアフリーの取り組み状況についてですが、障害のある児童生徒が小・中・高等学校に入学を希望している場合は、先ほど述べました考え方に基づき、これまでも障害の状態を事前に把握し、それに応じて、例えばスロープ、階段昇降機やエレベーター等の整備に努めてございます。また、施設設備が整うまで、障害の状態に応じてホームルーム教室を1階に移したりして対応している場合もございます。
このような個別の対応以外に、県教育委員会、市町村教育委員会は、エレベーターや段差の解消、障害者トイレの整備など、バリアフリー化に努めてまいりました。
県教育委員会としましては、これまで以上に学校のバリアフリー化に努めるとともに、市町村教育委員会に対しても、施設整備に係る説明会や整備計画の聴取時など、バリアフリー化を積極的に促してまいります。また、そのための財源の確保については、あらゆる機会を捉え、引き続き国に対して強く働きかけるとともに、市町村教育委員会へは適時適切に情報を提供してまいります。
次に、教職員と保護者の皆様が本法律の趣旨への理解を深めることは重要であり、そのための学校の役割は大きいものと認識してございます。
今回の法律の施行に伴い作成している県立学校職員の対応要領は、合理的な配慮の提供に関する基本的な考え方を示すとともに、その留意点や具体例を記載しており、今後、教職員に周知徹底してまいります。また、市町村教育委員会に対しましては、県作成要領を参考として示し、対応要領の策定を強く働きかけてまいります。
県民や保護者の皆様には、本年度、障害のある子供たちの就学先の決定と合理的配慮の提供との関連性をテーマにした教育広報テレビ番組を制作し、周知啓発を行ったところです。今後も、例年開催している特別支援教育啓発セミナーにおいて、法の趣旨や合理的な配慮の提供に関する内容を取り入れるなど、引き続き周知徹底に努めてまいります。
県教育委員会では、全ての子供たちの学びがより豊かなものとなるよう、法の趣旨を踏まえた適切な対応に一層努めてまいります。
○副議長(藤山将材君) 藤本眞利子さん。
〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御意見だけ申し上げたいと思うんですが、障害者の障害を持ってる皆さんにとっては、この社会的障壁というふうな言葉であらわされていますけど、これこそが差別であるということが明確にされたわけですね。障害の特性に違いはあっても、それぞれの特性にかかわる社会的障壁を取り除く作業が、あらゆる場面で求められていくんだというふうに思います。
社会的障壁を取り除いた社会というのは、高齢者であったり子供であったり、社会的な弱者にとっても住みやすい社会だというふうに思います。
また、その中でも、先ほども申し上げましたけど、公共建築の中では、学校の施設がやっぱり最もバリアフリー化がおくれているというふうに思うんですね。県も市もですけど、教育委員会はエレベーターや段差の解消とか、それから障害者トイレの整備などバリアフリー化に努めてきたというふうに答弁をいただいたんですが、その数はやっぱり圧倒的に少ないという状況だと思います。
障害のある児童生徒が入学を希望したからではなくて、どの小学校も、どの中学校も、どの高校でも、障害のある子供たちが安心して通える学校環境がこれからは求められていくと思うんです。しっかりと取り組んでいただけるように要望すると同時に、今後の進捗も見守っていきたいというふうに思います。
次の質問に移ります。
最後に、和歌山県人権尊重の社会づくり条例の見直しについてお聞きします。
昨年の11月の16日、東京におきまして二階代議士が実行委員長となりまして、自民、民主、公明と超党派の国会議員、それから和歌山県からは、仁坂知事を先頭に、関係部局、各市町村の首長さん、市町村議会議員など大勢の皆さんが参加され、人権フォーラムが開催されました。県議会からも大勢の同僚・先輩議員が駆けつけられ、同和問題解決のためのフォーラムが成功裏に終了いたしました。
東京での人権フォーラムの開催は、和歌山県が同和問題の解決を目指し、率先して開催したことを大きくアピールする機会となり、その意義は大変大きなものがあったと考えます。
フォーラムでは、「同和問題解決に向けた長年にわたる取組にもかかわらず、一部週刊誌による部落差別を助長する報道や、インターネット上での部落地名総鑑の掲載、不動産会社による土地差別事件など(中略)後を絶たない状況であり、これらを放置することは断じて許されるものではない。このような中、特に(中略)企業・団体等による『部落差別撤廃のための法律』が早期に制定されるよう強く要望する必要がある」という決議が全会一致で採択されました。
このような動きを見た全国の関係者からは、同和問題の解決に向け、和歌山県が全国を牽引してほしいとの熱い思いが寄せられています。
差別撤廃に向けた和歌山県の取り組みが全国に波及し、政府を動かす大きな流れになることを願っていますが、その道はなかなか厳しいものがあると言わざるを得ません。
2016年、ことしの4月1日付で、新たな「部落地名総鑑」が発売されるとの情報がありました。これはインターネット上で出されているわけですが、鳥取ループと名乗るグループがネット上に公開したものです。公開内容は、以下のようなものであります。
お手元にお配りをいたしました全国部落調査という、こういう表紙の「部落地名総鑑」の原典というふうなことで、復刻というふうなことで出されているんですが、これは表紙だけでありまして、この続きには全国の部落の地名が出されているという驚くべき内容の本であります。
その中では、「1975年11月に発覚し、翌月12日の部落解放同盟の記者会見によりその存在が全国に発表された『人事極秘 特殊部落地名総鑑』──すなわち『部落地名総鑑』。これはインターネットで書かれている文章です──はどのような物だったのか」。筆者というのは、これを出している人ですね、「筆者は長らくその謎を追求してきましたが、奇しくも部落地名総鑑事件から40年にあたる昨年12月、部落地名総鑑の原典である『全國部落調査』(1936年財團法人中央融和事業協會作成)を発見した」というふうにしています。そして、「電子化に成功しました」として、アマゾンで単行本1000円として予約注文を受け付ける内容となっています。
そのアマゾンの予約注文は削除されたそうでありますが、先ほど言わしてもらったように、こういった資料、これに全ての地名が載っているというものが、このような形でインターネット上に出ています。
同和問題を食い物にした悪質な差別でございまして、同和問題関係者だけではなくて、差別を解決しようという多くの方々の思いを踏みにじる悪質な事件だと言えます。しかも、近年では、人を差別して何が悪いんやというふうな、大変憂慮すべき、恥ずべき傾向があらわれているように思います。もうヘイトスピーチなどは、その顕著な事例であると思います。今回のこの事件もそうであります。人権侵害とは何か、差別とは何か、人間として根本的な問いかけをしなければならない事態が発生しています。また、毎年行われる差別報告集会では、後を絶たない部落差別事案が報告されています。
このように、部落地名総鑑事件のような差別がまかり通り、それを禁止し罰する法律がないのが現状であります。
和歌山県では、平成14年に和歌山県人権尊重の社会づくり条例を制定しました。
条例では、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。世界人権宣言にうたわれているこの理念は、人類普遍の原理であり、日本国憲法の精神にかなうものである。 この理念の下に、社会的身分、門地、人種、民族、信条、性別等を理由としたあらゆる人権侵害や不当な差別が行われることなく、すべての人の人権が尊重される社会をつくることは、私たちみんなの願いである」とし、結びに、「ここに、私たちは、自然と人間との共生を目指す和歌山県で、人権尊重の社会づくりを進めるために、不断の努力を傾けることを決意し、この条例を制定する」とあります。
そこで、お伺いします。
このような差別事件が後を絶たない状況の中、これまでの条例では、差別をする人を啓発することも誤った考え方を問いただすこともできません。差別されたらされっ放しという状況で、条例が実質何の効果も出せていません。
条例制定から14年が経過しています。差別を禁止し、差別を許さない実効性のあるものに見直す必要があると考えますが、知事の所見をお伺いします。
○副議長(藤山将材君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 県におきましては、平成14年に制定した人権尊重の社会づくり条例に基づき、人権施策基本方針を策定しております。この基本方針に沿って、県内において発生するさまざまな人権侵害に対して行政が主体的に取り組む必要があるとの認識のもと、国や市町村等と連携し、行為者への啓発や被害者への助言などを行っております。
しかしながら、御指摘のように、インターネットを利用した差別表現の流布やヘイトスピーチに加え、差別を助長、拡散するおそれのある書物の販売などの行為が散見され、絶対にこれはいけないことだというふうに思います。とりわけ、御指摘の書物の出版につきましては、昨日、打ち合わせのときにそれを教えてもらいまして、怒りに胸が震えまして、「直ちにそんなものは条例で禁止してしまえ」と口走ったんでございますが、少しいさめられました。というのと、それから本日議論がありましたように、私もいろんな前職がございまして、その法制の問題とかいろいろ考えると、ちょっと憲法の議論としては勝てないかなというふうに今思いました。
ただ、例えば同じような憲法上の問題を抱えている脱法ドラッグの問題については工夫をいたしまして、それで、そんなものは和歌山県では、やらないようにすることを今一生懸命やってるわけでございます。ただ、それも正面からぶち当たったわけではございませんで、うまく悪質な業者さんの意向を利用して、そういうふうにしました。そういうような知恵を今のところ考えておりませんので、本件についてはちょっと条例では無理かなあというふうに現状では思っています。
また、これは全国的な課題でもございまして、国が責任を持って法律を制定していくべきであると考えます。
今後とも、県としては、これまでの人権救済の取り組みに一層注力するとともに、県民の人権意識の高揚を図るため、関係機関とともに啓発に取り組んでまいりたいと思います。また、人権侵害に対処するための実効性のある法制度が一日も早く整備されるように、この間の大会のときもそうでございましたように、国に対して引き続き、さまざまな機会を捉えて強く求めていきたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 藤本眞利子さん。
〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 知事の答弁の中にもありましたけども、私も、これ見るだけでも顔が赤くなるぐらい腹立たしい気持ちになってくるんですが、答弁では県条例では限界があるというふうなこと、それも私もある一定理解はできますし、こんなことがまかり通ってはいけないというような思いでいっぱいですので、一日も早くこういう実効性のある法整備を強く求めていただくとともに、県としてもその取り組みを進めていただきたいというふうに強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(藤山将材君) 以上で、藤本眞利子さんの質問が終了いたしました。