平成27年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(奥村規子議員の質疑及び一般質問)


平成27年2月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(奥村規子議員の質疑及び一般質問)


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 質疑及び一般質問を続行いたします。
 38番奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕(拍手)
○奥村規子君 おはようございます。
 議長のお許しを得ましたので、通告に従って質問させていただきます。
 まず最初に、和歌山市産廃処分場の林地開発計画についてお尋ねをいたします。
 和歌山市山口地区(滝畑・上黒谷)において、和歌山市の株式会社フォーシーズン・ファクトリーが建設を予定している安定型廃棄物最終処分場についてお伺いします。
 当計画地は、滝畑地区の飲料水や農業用水の水源地上流である森林区域で大規模に開発を行おうとしていることから、森林法に基づく林地開発許可が必要と思われます。
 また、根来断層の直近で地すべりや崩壊が多数見られる脆弱な場所であることから、2011年に計画が浮上してから今日まで、地元自治会が中心となって、デモ行進や市に対して約14万5000筆もの署名を提出するなどの反対運動が実施されております。地元自治会のほかにも、大阪府阪南市の住民も建設反対の要望活動や署名を和歌山市に提出しています。
 そこで、農林水産部長にお尋ねいたします。
 和歌山市に対し事業者が提出した生活環境影響調査実施計画書などについて、和歌山市からの意見照会がいつ付でありましたか。また、県としていつ付で出した回答ですか。内容は主にどういうものですか。とりわけ危険性に触れた分はあるのでしょうか。土砂災害や水質汚染などについて、どのように述べられていますか。ここに資料として和歌山市公文書開示を求めた資料1をつけさせていただきましたが、農林水産部長、お答えください。
○議長(坂本 登君) ただいまの奥村規子さんの質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 和歌山市から、平成26年4月16日付で、事業者が市に提出した廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく生活環境影響調査実施計画書等について意見照会があり、森林地域内での開発計画面積が1ヘクタールを超えることから、森林法に基づく林地開発許可が必要である旨、平成26年5月26日付で回答を行っております。
 林地開発については、災害の防止、水害の防止、水の確保、環境の保全を内容とする許可基準が定められており、計画地周辺及び下流域への影響を防止する具体的な対策を明確にするとともに、土木工事、洪水調整池等の防災工事、残置森林の配置等の計画に当たっては林地開発行為の許可基準に従うこと等をお答え申し上げたところです。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 続いて、お聞きいたします。
 事業者は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく産業廃棄物処理施設の設置許可の権限を有する和歌山市に対して、昨年、生活環境影響調査実施計画書及び生活環境影響調査実施計画書に伴う事業計画書などを提出しました。このことから、市は、実施計画書等に対する県等の関係機関や市の委嘱した専門技術委員の意見を取りまとめ、事業者に意見を通知していると聞いています。現在では、事業者が、和歌山市から通知のあった意見に対し、対応策を検討している状況であると推測されます。このような中で関係住民の声が十分に反映されるのか、心配しているところです。
 資料2は、和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領に示されている添付書類でありますが、農林水産部長にお聞きしておきたいと思います。本計画に対する林地開発など事前協議において、地元同意についてはどのように尊重し対応するのか、要綱を初めとして、対応方針についてお答えください。
○議長(坂本 登君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 林地開発許可の申請に際しては、和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領に基づき、関係者の同意書等を添付することを求めております。
 なお、現時点におきまして、事業者から県の事務取扱要領による事前協議、森林法に基づく林地開発許可申請はなされておりません。
 今後、事前協議の申し出や林地開発許可が申請された場合には、森林法並びに県の事務取扱要領に照らして適正に審査してまいります。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 再度、農林水産部長に御確認をさせていただきます。
 今の答弁の中で、許可申請には地元同意が必要だという要領になっているということでよろしいのでしょうか。
○議長(坂本 登君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 県の事務取扱要領におきまして、林地開発許可の申請に際しては、関係者の同意書等の添付を求めているところでございます。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 最後に要望をさせていただきますが、森林の役割は、環境の保全や水資源の涵養、生物多様性の保全、レクリエーションの場の提供など、私たちの暮らしに不可欠なものです。
 私は、2011年6月議会において、知事に、産廃処分場計画について、住民同意をどう考えるかについて質問させていただきました。知事は、「最終処分場の確保に当たっては、県民の生活環境の保全を図り、住民の意見を聞きながら廃棄物処理法にのっとり対応してまいります」と答えていただいています。
 私は、林地開発許可申請に対しても、他県より進んだ取り組みをされているように思います。この資料にありますように、「利害関係者又は団体名、自治会、土地改良区、水利組合、漁業協同組合等ごとに記入すること」ということで書いていますので、当然、許可申請には地元同意が必要だと考えています。
 もう一度、農林水産部長にお尋ねいたしますが、その点でよろしいんでしょうか。(「要望と言うた」と呼ぶ者あり)ごめんなさい、質問です。
○議長(坂本 登君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 同意書が必要であるかどうかというお尋ねでございますけれども、県の事務取扱要領におきまして「申請の要件」という表現を用いてはおりませんが、林地開発許可の申請に際しては関係者の同意書等の添付を求めておりますので、必要ということになります。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 2つ目に、地方税回収のあり方についての質問をさせていただきます。
 地方税回収機構の活動実績等についてお尋ねいたします。
 市町村からの和歌山地方税回収機構への移管件数、移管額、徴収状況、滞納処分等の件数、未回収分の各市町村への返還、また県・市町村からの和歌山地方税回収機構への派遣職員の人件費はどのようになっているのか、総務部長にお尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 総務部長市川靖之君。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 和歌山地方税回収機構が公表しております資料によりますと、平成25年度における市町村から機構への移管件数は843件、移管額につきましては約11億円とのことでございます。
 徴収状況につきましては、直近に処理が完結した平成24年度引き受け分の徴収額は約7億円、徴収率は約49%で、未徴収の案件につきましては、最終的に各市町村へ返還されているとのことでございます。
 また、滞納処分等の状況につきましては、全ての事案につきまして財産調査を行い、そのうち約8割の滞納者につきまして差し押さえを実施しているとのことでございます。
 なお、県、市町村から機構への派遣職員の人件費につきましては、平成25年度決算によりますと、職員14名分で約1億円とのことでございます。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 各市町村から和歌山地方税回収機構へ移管される件数についてはどのように決まっているのか、総務部長にお尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 総務部長。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 和歌山地方税回収機構は、県内全市町村で構成される一部事務組合でございます。機構への案件の移管については、当然、各市町村おのおのの判断で決定されるというふうに聞いております。
 ただし、機構の人員が限られておりますことから、その処理能力を踏まえまして移管件数のおおよその目安が示されていると聞いております。その目安につきましては、各市町村の滞納額等、客観的な指標を基準にしつつ、各市町村に協議した上で決定されるというふうに聞いております。また、最終的な移管件数につきましては、この目安を参考にしつつ、各市町村が滞納状況等を勘案して自主的に判断しているというふうに聞いております。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 県は、市町村から和歌山地方税回収機構に移管される滞納事案について、どのように認識されていますか。
○議長(坂本 登君) 総務部長。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 市町村から和歌山地方税回収機構への移管につきましては、滞納税額が高額な事案等、市町村にとって整理困難な事案などから市町村が滞納者の状況などを踏まえて選定しており、その引き継ぎに際しましては、市町村と機構で十分に協議の上、適切に移管されているものと認識しております。また、移管に際しましては、市町村において、移管対象者に対しまして事前に移管予告も行われているということでございます。
 なお、移管につきましては各市町村の判断により行われるものでございますけれども、一般的には、滞納を適正に解消するための市町村と滞納者間での取り決めが誠実に守られている場合は移管はなされないものというふうに認識しております。
 県といたしましては、今後とも、市町村と滞納者の間で十分な意思疎通が図られるよう、引き続き市町村に助言してまいります。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 再度、総務部長にお尋ねしたいんですが、答弁で、各市町村の滞納額等の割合を基準に市町村の意向を反映しながら移管予定件数を決定して市町村に提示するということでしたが、これは移管予定件数というのを年の初めに決めておいて、それに向かって実際に移管していくということでしょうか。
 地方税回収機構への移管事案の選定基準として、市町村にとって整理困難な事案、高度な処理能力を要する事案、同一滞納者で複数市町村にまたがる事案、滞納処分停止の判定が困難な事案ということが挙げられていますが、市町村は、こうした事案が起こった場合、その1つ1つを検討して移管するのだと思います。多い年や多い市町村もあれば、少ない年や少ない市町村もあると思います。しかし、あらかじめ予定件数が提示されれば、その件数に合わせて移管していかなければならない、滞納額が多いところは多く移管していかなければならない、そういう割り当てが行われているということになるのではないでしょうか。この点、もう一度お答えください。
○議長(坂本 登君) 総務部長。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 移管予定件数を年の初めに決めておき、それに向かって実際に移管していくのかというような質問でございました。
 実務としましては、各市町村が督促や催告などを行ったにもかかわらず納税相談等に至らず、その結果、高額な滞納となっているなど、地方税回収機構への移管対象となるべき案件につきまして、各市町村が日ごろから把握しておるところでございます。
 30市町村の代表者から成る機構の理事会におきましては、各市町村の滞納額等を勘案した移管件数の案が示されますけれども、最終的には、各市町村が日ごろの税務執行の中でみずから把握している移管対象となるべき件数をもとに、30市町村合意の上でおおよその目安を決定しているというふうに聞いております。その上で、実際に移管されるかどうかは、再度、それぞれの市町村の判断により決定されるものというふうに聞いております。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 これは要望させていただきますが、事前に機構が移管件数を提示するというのは非常に問題ではないかなと思うんです。地方税回収機構への移管というのは、それまで市町村では、滞納者の状況を踏まえながら相談に乗って、滞納を何とか解決していこうという対応が行われますが、地方税回収機構は、徹底して財産調査し、有無を言わさず滞納処分を行うところですから、そこにどれだけ移管するかを割り当てるというようなことは地方自治体がやることではないと思います。これはやめるべきだと思います。ぜひ地方税回収のあり方について検討することを御要望いたします。
 最後に、鳥取・児童手当の差し押さえ違法判決の活用についてお聞きいたします。
 2013年11月27日、広島高等裁判所松江支部において児童手当の入金口座差し押さえの違法性が争われた滞納処分取消等請求控訴事件の判決を、県は和歌山地方税回収機構及び市町村に対してどのように生かしていくのか、その対応について総務部長にお尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 総務部長。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 一般に、差し押さえ等禁止債権に係る金員が金融機関の口座に振り込まれることによって発生する預金債権につきましては、原則として差し押さえ等禁止債権としての属性を承継するものではないとの最高裁判決が出されておるところでございます。
 一方で、平成25年11月27日の広島高等裁判所松江支部における滞納処分取消等請求控訴事件の判決におきましては、行政処分庁は預金口座に振り込まれた児童手当相当額を不当利得として返還することとされたところでございますが、この判決は、特定の事情下においてなされた処分の違法性が争われたものというふうに理解しております。
 滞納整理につきましては、あくまでもそれぞれの団体の責任において行われるものでございますが、県といたしましては、この判決の趣旨を踏まえまして、法令に基づき適切に対応するよう、和歌山地方税回収機構や市町村に対して通知するとともに、県内市町村税務担当課長が出席する会議やその他税務研修の機会などを通じまして、情報共有、注意喚起を行ってきたところであり、今後とも引き続き、地方税の徴収事務が適正に執行されるよう支援、助言してまいります。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 今、総務部長の答弁で、この判決の趣旨を踏まえて、法令に基づき適切に対応するよう通知している、注意喚起を行っているということですが、これはどういうことでしょうか。
 児童手当、給料や年金の生活費部分など、差し押さえ禁止債権が振り込まれた預金口座で、その中身がほとんど丸々差し押さえ禁止債権だと明らかな場合、どういう対応をするのか、県としてはどのようにお考えでしょうか。再度、総務部長、お答えください。
○議長(坂本 登君) 総務部長。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 今回の広島高裁の判決も踏まえた上で、地方税法などの法令に従って各団体において適切に滞納整理を行うよう助言したものでございます。
 また、一般的に、滞納整理におきましては、個別の滞納者の生活状況等を踏まえ、税収入の確保及び税負担の公平の確保を図る観点から適切に対応するべきものと考えております。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 最高裁判決で、預金債権は原則として差し押さえ等禁止債権としての属性を承継するものではないと出ていると言われましたが、これは違うのではないでしょうか。最高裁判決(平成10年2月10日)は、差し押さえ等禁止債権としての属性については触れてないのではないですか。原審、高裁判決は正当というものです。
 その高裁判決は、預金債権は原則として差し押さえなどの禁止債権としての属性を承継しないとしましたが、同時に、生活に充当する年金のように差し押さえできない給付は、預金口座に振り込まれた場合においても、受給者の生活保持の見地から、差し押さえ禁止措置の趣旨は十分に尊重されてしかるべきであると述べています。
 鳥取県の児童手当事件の広島高裁判決は、児童手当が預金になった後も児童手当としての属性を失っていなかった、児童手当相当額の部分は、実質的に児童手当を受ける権利自体を差し押さえたのと変わりがないから児童手当法の趣旨に反するもので違法と明言しています。これは、普通に考えても当然のことではないでしょうか。
 差し押さえ禁止債権といえども、預金口座に振り込まれたら自由に差し押さえできるという結論をひとり歩きさせてしまったら、もう差し押さえ禁止債権は存在しないも同然になってしまいます。児童手当も年金も、多くは銀行振り込みで受け取っているのですから、それが預金口座に振り込まれた瞬間から差し押さえられるのでは、差し押さえ禁止債権だと法律で決めた意味が全くなくなります。
 この高裁判決を受けて、鳥取県では、滞納処分の取り扱いマニュアルを改定して、預金口座で月4回以上入出金を繰り返すものは生活口座として認定する、差し押さえ禁止債権の入金の有無について十分確認する、預金履歴から差し押さえ禁止財産の入金が確認できた場合には差し押さえ禁止額相当額を除いて差し押さえを執行する、差し押さえ後、滞納者の申し立てで預金原資が差し押さえ禁止財産だと特定されれば解除または取り消すことなどとしました。預金であっても、差し押さえ禁止債権を原資とするものは差し押さえないということです。
 和歌山県としてもこうした明確な立場を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 私が最近相談を受けたケースですが、郵便貯金通帳を見れば、昨年秋から年金が振り込まれて、ほぼ同額を引き出すことが繰り返されている、そういった通帳で、実際に生活費に当たる年金16万円の方が全額差し押さえになっていたケースで相談を受けました。この貯金は明らかに全額を差し押さえられない年金である中で、貯金だからといって差し押さえできないというふうに思いますが、いかがでしょうか。もう一度、御答弁、お願いいたします。
○議長(坂本 登君) 総務部長。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 最高裁判決では、差し押さえ等禁止債権としての属性について文言としては明示していないのは御指摘のとおりでございますけれども、判決理由の中で、所論の点に関する原審の判断は正当として是認することができ、その過程に所論の違法はないというふうにしております。このような判決は、一般的には原審の考え方を是認しておるものと解されておりまして、御指摘いただきました広島高裁の判決におきましても、最高裁の判旨として採用されておるところでございます。
 個別の事案につきましてのお尋ねがございましたが、税務情報につきましては、高度な守秘義務が課されております。市町村税の個別の事案について承知する立場にはございませんけれども、最高裁判決や広島高裁判決を踏まえまして、差し押さえ等禁止債権として取り扱うべきもの、こういったものにつきましては差し押さえを控えるべきものだというふうに考えております。
 こうした判決も踏まえた上で、税収入の確保及び税負担の公平の確保を図る観点から、法令に基づき適切に対応するよう、情報共有、助言を行ってきたところでございますけれども、今後とも引き続き、機構及び市町村に対しまして、認識を共有しながら、地方税の徴収事務が適正に執行されるよう支援、助言してまいります。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 ぜひ県としても、市町村と一緒になって、生活実態も十分把握して対応をしていただければと思いますので、よろしくお願いします。
 次、3項目め、お尋ねいたします。
 介護保険法が改定され、ことし4月からの介護保険事業が大きく変えられようとしています。1、要支援の方のヘルパーとデイサービスを介護保険給付から外し、市町村事業へ移行する、2、特別養護老人ホームへの入所は、原則、要介護3以上に限る、3、一定所得以上の方は利用料を2割に引き上げる、4、低所得でも預貯金などがあれば、介護施設の居住費、食費補助を縮小、打ち切るといった問題です。
 厚生労働省は、介護サービス提供事業者に支払う公費である介護報酬の4月からの改定額を決定しました。特別養護老人ホームやデイサービスなどへの報酬を大幅に引き下げるなど、安心できる介護の充実に逆行するものであると思います。介護現場からは、利用者にも、従事者にも、事業者にも大きな損失をもたらすと厳しい批判の声が上がっています。
 そこで、お尋ねいたします。
 介護報酬引き下げの影響について、どのようにお考えでしょうか。特別養護老人ホームや介護事業所では、事業が続けられない、労働者の待遇が一層厳しくなるなどの声が出ています。特に特別養護老人ホームは、報酬の大幅引き下げと人手不足により新設計画が白紙になるなど、基盤整備も進まない問題が出てくると考えられますが、これらの点についてどのようにお考えでしょうか。福祉保健部長、お尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 平成27年度介護報酬改定において、全体としてはマイナス2.27%の引き下げとなっていますが、一方で、認知症高齢者や介護の必要性が高い中重度者への対策強化等に向けた加算や、介護職員1人当たり月額1万2000円程度のアップとなる処遇改善加算の拡充がなされています。これらは、利用者のためにより質の高いサービスを確保するとともに、事業者のために介護職員の確保を目的とするものです。
 県としては、事業者に対し、この改定の趣旨の理解を図り、事業所における体制等の検討を促すため、関係団体への説明等を丁寧に行うとともに、関係者からの意見を聞き、実態を見きわめながら、必要に応じ、実情を国に伝えていきたいと考えております。
 また、国の制度を活用しながら介護人材の確保に取り組むとともに、特別養護老人ホームなどの施設整備を行う事業者に対し、資金計画や人員確保などの運営面への助言を行ってまいります。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 次に、要支援1、2の方のヘルパーとデイサービスを市町村事業に移行する問題についてお尋ねいたします。
 2015年4月から17年4月までに移行することとなっています。厚生労働省調査では、15年度移行114自治体、16年度移行277自治体、17年度移行1069自治体となっており、県内自治体では、2015年1月に実施された市町村に対する開始予定時期の調査では、15年度開始がゼロ、16年度開始が2、17年度開始が28と聞いています。
 また、新事業における現行相当サービス、緩和した基準のサービス、住民主体のサービスの見込み量については、各市町村とも現在準備中であり、具体的な見込み数はまだ出ていないということで、市町村の第6次介護保険事業支援計画には、具体的な利用数量の見込みというよりは、今回の介護保険制度の改正理念や市町村としての今後の取り組みの方向性について述べられているように思います。
 要支援の方は、サービスの選択が保障されるのか、現行相当サービスを引き続き受けたいという希望が認められるのかをお尋ねいたします。福祉保健部長、よろしくお願いします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 介護保険法改正により、市町村は、遅くとも平成29年4月から新しい介護予防・日常生活支援総合事業を実施することになります。この新事業は、訪問介護、通所介護に関し、介護保険による全国一律の基準によるサービス給付ではなく、市町村が地域の実情に応じて、介護事業者に加え、NPOや住民ボランティアなど、さまざまな主体による多様な支援を行うものです。
 今回の改正に伴い、新事業への円滑な移行を図るため、既に要支援認定を受け、サービスを利用している方で、その利用の継続が必要な場合には、新事業開始以降も既存サービス相当のサービスを継続して利用することが可能です。
 いずれにいたしましても、市町村は、要支援の方の希望するサービス、身体状況、生活状況等を適切に把握した上で、その方に必要なサービスの提供に努める必要があると考えております。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 再度、質問いたします。
 要支援の方のヘルパーとデイサービスを予防給付から外して市町村事業である多様なサービスに移行することについては、ほとんどの自治体が最終年まで移行できないとしていると思うんです。中央社会保障推進協議会が全国の自治体にアンケートを行いましたが、73%の自治体が多様なサービスの確保については見通しが立たないと答えています。
 答弁では、既に予防給付のサービスを受けている人は必要に応じて既存相当サービスを利用できるということでしたが、保険料を払い、要支援と認定されているのですから、希望するサービス、現行相当のサービスを保障すべきではないでしょうか。また、新たに要支援と認定された人にも、希望するサービスを保障すべきだと思います。
 その方に必要なサービスの提供に努める必要があるとお答えがありましたが、要支援の認定を受け、指定事業者による専門的サービスを希望する人には、これが保障されるのかどうか、もう一度、お答えをよろしくお願いします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 先ほども答弁させていただきましたが、既に要支援認定を受け、サービスを利用している方は、新事業移行後も、必要に応じ、既存サービス相当のサービス利用が可能です。また、新たに認定を受けた方は、認知機能の低下や退院直後で支援が必要であるなど、専門的なサービスが必要な場合は、現行相当のサービスを利用することが可能です。
 県としては、適切にサービス提供がなされるよう、市町村に対し助言及び支援に努めてまいります。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 次に、介護保険料の値上げについてお尋ねいたします。
 現在、全国平均保険料は5550円程度ですが、今度の改定で和歌山県の平均はどの程度になるのでしょうか。
 第5期の保険料を決める際には、負担能力を超える保険料となることから、国は、県の介護保険財政安定化基金を取り崩して保険料低減に充てるよう措置しましたが、今回についてはどうなっているのでしょうか。県の今期までの介護保険財政安定化基金残高はどの程度あり、どう活用しようとしているのか、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) ことし1月に県内市町村が試算した第6期介護保険料基準額の平均額は、約6300円と見込まれています。なお、この額は介護報酬改定の影響等を勘案する前のものであり、最終的には各市町村において介護保険条例の改正により確定するものであるため、多少の変動が見込まれるところです。
 次に、介護保険財政安定化基金は、第5期の保険料を決める際には介護保険法で平成24年度に限り一部を取り崩すことができるとの法改正がされたものですが、今回は法律上そのような規定がないため、取り崩すことはできないところです。
 また、今期予定している貸し付け等を実行した後の介護保険財政安定化基金の期末残高は約10億7000万円になる見込みで、市町村の介護保険財政に第1号保険料の収納率低下や給付費増による不足が生じた場合に市町村へ資金の貸し付け等を実施してまいります。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 最後に、改正介護保険制度の受けとめと今後の県の高齢者施策について、知事にお考えをお尋ねいたしたいと思います。
 介護報酬は、3年に1度改定されて、今回は報酬全体で2.27%引き下げになっています。2回連続の実質マイナス改定です。今回は、介護労働者の処遇改善の特別な加算を含んでいるため、その上乗せ分を除けば4.48%の過去最大規模の引き下げです。消費税やアベノミクスによる物価高などで介護事業の経費がふえる中、マイナス改定を実行すること自体、深刻な矛盾や困難を引き起こすものです。
 厚労省が決めたサービスごとの介護報酬は、特養ホーム、デイサービスなどの施設への報酬を大幅にカットする方針を打ち出しています。施設の運営と経営を直撃するものになっていると思います。特養への基本報酬は、個室でマイナス6%弱と、平均下げ幅よりさらに削り込まれています。相部屋はもっと大幅カットです。全国では特養の3割が赤字という実態が調査結果で判明しているのに、今回のマイナス改定によって、特に特別養護老人ホームがさらに苦境に追い込まれると考えられます。
 現在、特養の入所待機者数は、2014年3月末で2588人あり、そのうち要介護1、2の方は1063人もあります。和歌山県の高齢化率は27.3%で全国7位、高齢者夫婦や単身世帯が全世帯の4分の1を占めています。高齢夫婦のみの世帯全国2位、高齢単身世帯全国3位の県です。安心して高齢者が住めるまちづくりを進めていくためにも、今回の特別養護老人ホームだけではなくて、デイサービスや基盤整備の問題も含め、また、高くなる介護保険料、そういったことも含めて、今度の制度改正をどのように受けとめて、今後、県の高齢者施策としてどのように進めていかれようとお考えでしょうか。知事にお尋ねいたしたいと思います。
○議長(坂本 登君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 介護保険制度については、介護を必要とする高齢者の増加が見込まれる中、国の責任において、制度を将来にわたり持続可能なものにすべきだというのが基本だと思います。
 今回の介護報酬の改定は、サービスの充実と給付の重点化、効率化を行い、負担の増大を抑制しつつ持続可能な制度を実現するという基本的な考え方のもとで、国において十分議論されたものと考えます。しかし、今後、給付の重点化、効率化を進める中で、改定によって本当に支障が出るということがあれば、国の責任において手だてを講じていかなけりゃならないというふうに思います。
 また、県の高齢者施策の進め方については、和歌山の老後に安心を届ける政策において、見守り、健康、安心、産業化の4つの分野でそれぞれの状況やニーズに応じた施策を積極的に展開してきたところでありまして、今後も充実を図っていきたいと考えております。
○議長(坂本 登君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 介護保険制度は、確かに国の制度で、実際、和歌山県にとって非常にふぐあいな、不都合な、大変な課題があるというふうなことの実態をよく見ていただいて、そういった点で、国に対しても介護報酬の引き下げなどについて撤回するよう、ぜひ求めていっていただきたいと思うんです。そういう点とあわせて、やはり和歌山県で独自の施策を進めていくということでは、高齢者の尊厳の保持、自立した日常生活に必要な給付を保障するはずの介護保険が、今、要介護・要支援高齢者に負担と犠牲を強いることによって持続可能な制度にということになっているのではないでしょうか。
 今回の介護保険法の改定で、公費投入による低所得者の保険料軽減が初めて法制化はされました。しかし、公費投入でしか矛盾が解決しないところまで来たことのあらわれだと思います。制度的限界を示すものではないでしょうか。和歌山県では、今度、平均して800円保険料がまた上がるということでは、もう負担し切れないというようなことになってくると思います。
 そういった中で、国は財政危機を強調しますが、日本全体で8兆円を超える介護保険給付費のうち国が負担しているのが25%、2兆円程度です。政府一般会計予算は90兆円以上のうち2%にすぎません。防衛費の半分以下です。アベノミクスによる財政出動の額にも及びません。今後、超高齢社会に向けて、高齢者介護施策や地域包括ケアシステムをつくり上げる上で、国に対して国庫負担割合の引き上げをさらに強く求めていただきたいと思います。
 また、市町村の一般会計からの繰り入れ実現のための県の支援を求めることを要望して、一般質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(坂本 登君) 以上で、奥村規子さんの質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時23分休憩
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