平成26年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)
平成26年2月 和歌山県議会定例会会議録
第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)
汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。
正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。
質疑及び一般質問を続行いたします。
2番濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕(拍手)
○濱口太史君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
大きな項目1番目、森林資源の活用と林業・木材業の振興についてであります。
1つ目、素材増産に向けた今後の取り組みについてであります。
御案内のとおり、和歌山県は県土総面積の77%が山林であり、特に新宮市は、実に90%を超えた地域です。熊野川の河口に位置する新宮地域は、古くから紀州材の産地として、上流で伐採された木材の集散地としてにぎわったことが知られています。
車両などの近代交通機関が発達し、導入されるまでの間は、非常に重くかさのある木材の輸送は河川に頼ってきました。紀州材は、いかだの状態で熊野川河口まで運ばれ、そして主に東京などの大消費地へ輸送されました。戦後は、経済復興の進む東京など首都圏向けの旺盛な紀州材販売でにぎわい、製材工場も急速に増加するなど、地場産業として活気をもたらし、多くの地域住民が木材産業にかかわる中で、地域の基幹産業として大きく貢献してきました。
さらに、昭和30年代以降は、国内的に好況による需要増を補うため外材輸入が増加傾向にあり、中でも、新宮港を輸入基地とした船舶による大量輸入によりコスト縮小が図られました。木材産業は活性化されることとなりましたが、その傍ら、国内産木材の搬出コスト等も反映して需要が低い状況で、外国産木材に押し切られる状況となっています。
しかし、近年は、丸太での輸入から製材された製品での輸入に移り変わるなど、木材産業を取り巻く状況が激変し、木材の供給体系が根本から変わる中、新宮・東牟婁地域の木材産業の衰退は深刻な事態であります。これまでの歴史を振り返ると、現在低迷している新宮・東牟婁地域の経済再生を図るためには、これまでこの地域を主導し発展させてきた林業・木材産業の再生を図る必要があります。
さて、材木の生産から活用までの一連の流れを川に例えて、林業を川上、木材産業を川下という言い方をされます。最近の林業・木材産業復活に向けた県の取り組みとしては、川上における林業振興と川下における木材産業振興を並行して進めていると聞いています。
まず、川上における林業振興では、森林資源の充実に伴い、森林整備を行いながら間伐材を搬出して販売し、山主への還元を図る低コスト林業により一定の木材増産を達成しているとの報告をいただいております。
その状況を確かめるべく、先日、間伐材の搬出作業の2カ所の現場を見させていただきました。
1つ目の熊野川町の現場では、3人1組で間伐材をダンプに積み込み搬出する作業が行われていました。間伐材は、これまで、搬出にコストがかかるためにその場に放置されていましたが、県や市の支援を受けて作業道整備が進んだことにより、間伐材も無駄にしてはいけないという流れを生み出したと言えます。間伐材といえども樹齢50年前後の立派なものもありますので、十分商品になり得るというわけです。
バイオマス発電の燃料やチップに活用するケースも多いようですが、せっかく手間暇かけて搬出するのだから、燃やして燃料にするような使い道だけでなく価値のある活用を本当は望んでいると、作業をしている人たちからは、そのような意見も聞かれました。確かに、もっともな意見だと思いました。山仕事に携わる人にとって、主伐材も間伐材も同じ森林資源に違いはないのです。
平成20年から5年間にわたる紀州材生産販売プランに基づき、低コスト林業基盤整備サポート事業において、1人当たりの搬出量を県平均2立米から3立米と1.5倍増加させるとともに、生産性の向上を図るために整備された作業道によって労働者の体力と時間の節約も図られ、労働環境に大きな変化をもたらしていました。
なお、ここで資料を配付させていただいています。それも見ながらお聞きをしていただければ幸いに存じます。
若者に敬遠される仕事、従事している人でも自分の子供には継がせたくない仕事、その要因は、きつい、危険、汚い、いわゆる3Kと呼ばれ、山仕事もその1つに挙げられることがありますが、実際に現場を訪れたときの印象は、それとは違う感覚でした。
視察した現場の中には、間伐材の仕分けや積み込み作業を行う林業機械を操作するオペレーターを女性が務め、3人1組のうち2人が女性というところもあり、山の現場が女性でも働くことができるほど安全性が向上しているという印象を受けました。
そのほかには、新しい大型機械による木材集材システムを用いた現場でした。そこには、切り倒した木を山からつり上げる架線を張るタワーヤーダと大型トラックを組み合わせた高性能林業機械がありました。オーストリア製の機械に日本向けに改良を施したもので、従来のものより力が強く、高いタワーを持つ機器を道幅3.5メートルの林道でも通れる車両に積載できるよう、メーカーと協議を重ね、改良したそうです。
タワーが高くなったことで、ワイヤーを長く伸ばせるようになりました。従来に比べ、ワイヤーの長さや最大つり上げ荷重が2倍にパワーアップし、集材範囲の拡大と一度に運べる量が増加。それに加えて、原木をつり上げる際の玉かけ作業、外すときにはねたワイヤーや木でけがをする事故が多く、危険度の高い作業とされていますが、リモコン操作によって木から外せるフックを使用、人が近づく必要がなくなりました。
また、引き上げた原木を一定の長さに切断するプロセッサー機械の処理能力も高く、驚くほどの速さで1本の大木を処理していきます。
これら一連の能力アップが功を奏し、搬出量はこれまでの3倍が見込めるそうです。
このように、行政の援助を最大限に活用し、さまざまなコスト低減と安全性の向上を図ってきた県内の林業、これまでの県の施策結果を踏まえ、新宮地域を含む紀南地域の現状と山側における素材の増産に向けた今後の取り組みをどのように考えておられますか。農林水産部長にお尋ねをいたします。
○議長(山田正彦君) ただいまの濱口太史君の質問に対する答弁を求めます。
農林水産部長増谷行紀君。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 新宮地域を含む紀南地域においては林業は主要な産業であり、県では、充実する森林資源を有効に活用するために、これまで作業道の開設や高性能林業機械の導入支援など、搬出間伐の低コスト化に向け、森林組合等に対してさまざまな支援を行ってまいりました。
その結果、紀南地域の間伐材の搬出量を例にとりますと、平成19年度、約8000立方メートルであったものが、5年後の平成24年度末には約3万5000立方メートルと大きく増加いたしました。
今後の紀南地域はもとより、本県の林業の振興を考えたとき、搬出間伐、主伐を問わず、低コストで原木を伐採、搬出することが重要であります。
県としては、これまでの取り組みに加え、紀南地域で取り組まれている地域の実情に合ったタワーヤーダ等の架線系集材システムの改良に対する支援や主伐後の再造林コストの低減など、低コスト林業の推進に向けて積極的に取り組んでまいります。
また、素材の増産に向けた事業体の体制強化を図るため、森林組合の合併を推進してまいります。
○議長(山田正彦君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 続きまして、2番目、紀州材の有効活用による地域再生に向けた取り組みについてお尋ねをいたします。
製材後の乾燥作業は、商品価値を左右する重要な工程だそうです。特に雨の多い地域ですから、自然乾燥だけでは安定供給を達成しにくい環境にあります。伺った新宮市内の製材所では、乾燥設備を導入するなど、出荷準備期間の短縮を図っているとのことです。
川下における木材産業振興では、紀州材の加工・乾燥施設など生産体制の整備を行い、生産地としての基盤整備を強化するとともに、これまでの販売先に加え、新たな販路の拡大への取り組みによる需要拡大を推進していると聞いております。製材・加工分野への支援施策も引き続きお願いするところです。
先ほども申し上げましたとおり、新宮・東牟婁地域の経済が疲弊する中、地域再生の突破口の1つとしては、豊富な森林資源を活用しながら、山村地域での雇用を生み出し、紀州材としてブランドを高め、加工利用する木材産業の活性化が重要であると考えます。そして、そのためには山林部での計画的な素材増産と出口対策である木材の需要拡大がポイントになりますが、特に出口対策を考える上で、近年の木材利用を取り巻く状況には、消費税アップに伴う駆け込み需要とその反動やバイオマス燃料としての新たなマーケットの誕生、法律施行による公共施設木造・木質化や公共土木工事への木材利用への期待感など、さまざまな要素があると考えられます。
過日、間伐材に高温熱処理を施し、腐れや狂いを軽減し、耐久性を高めたデッキ材や外装材を製造している大阪の木材加工会社を訪ねました。新宮市においても、新しく建築された小学校の木造校舎の塀やテラス、サッカー場クラブハウスの外壁、駅のベンチなどに使用されています。
製品の説明、工場見学の後、実際にその資材を使用した大阪市内の建築物を見学してまいりました。
1カ所目は、昨年3月にオープンした大阪木材仲買会館です。建てかえられる前の会館は、老朽化したありきたりな事務所ビルであったが、新築に当たり積極的な木質化を進めた結果、木材を扱う業界団体の会館としてふさわしいものとなったと、大変好評であります。
中を案内していただくと、随所に設計者や施工業者のこだわりが感じられました。最新資材や照明器具、空調設備などと木材を融合させていました。外見だけでなく、木材でも建築基準法をクリアするための工夫や技術も随所に見られました。一例を紹介しますと、はりや柱には、内部にモルタルの燃えどまり層を組み込むことにより耐火性を向上させた耐火集成材を採用しています。1時間の耐火性能を持ち、4階建ての木造建築も可能だそうです。木材の利用促進、都市部の木造化ビルの普及モデルとして建築されたというだけあって、新たな技術がふんだんに盛り込まれた建築物です。
2カ所目は、大阪府木材連合会です。やや老朽化が見られるコンクリートビルの表側外壁一面に、化粧用木材をさまざまな組み方で取りつけていました。見る人に木のぬくもりとリニューアル感を与えるだけでなく、コンクリート蓄熱の抑制などの効果があり、夏の室内温度が2度下がるなどのメリットもあるとのことです。
3カ所目は、同じく外壁に熱処理加工を施した木材で建物全体を覆っている新築オフィスビルで、建築業界誌にも大々的に取り上げられたそうです。ちなみに、紀州材も多く使われているとのことでした。
全てを木造でというと、コスト面、条件面での事情もあるかと思いますし、強度や品質にすぐれた従来の建設・建築資材をないがしろにするというわけではありません。さきに紹介した大阪市内の建築物のように、外壁だけでも木材で化粧を施すなどの工夫があってもいいのではないかという考え方です。
公共建築物、例えば新宮市においても、庁舎、文化ホールの建てかえを間近に控えていますが、最新技術による加工が施されたものも含め、木材を外側内側にふんだんに使用して木材で栄えた歴史を表現するべく、象徴的な設計に期待します。
また、JR新宮駅の駅舎も、老朽化したコンクリートが少し古びた寂しいイメージと感じます。元来、開通100周年を迎えた新宮鉄道の起こりが材木運搬が目的であった歴史もありますし、まちの玄関口を木のぬくもりであらわし、癒やし効果を与えるものになればと夢を描いております。木材の地産地消と需要拡大の目的はもちろん、「木の国和歌山」のイメージをさらに向上させる効果があるものと考えます。
そこで、農林水産部長にお伺いします。紀州材の需要拡大に向けた出口対策をどのようにお考えでしょうか。
○議長(山田正彦君) 農林水産部長。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 紀州材の需要拡大は、林業・木材産業の振興を図る上で大変重要と認識しており、これまで県内の需要拡大に向けて民間木造住宅への紀州材の使用や公共施設の木造・木質化を支援してまいりました。
また、現在、公共土木工事への紀州材利用を促進するため、農林水産部、県土整備部が連携して、木材利用推進指針、木材利用技術マニュアルの策定を進めているところです。
県外への販路開拓では、首都圏における大型住宅展示会への出展や記念市開催を支援するとともに、今年度から新たに九州地域での記念市開催支援や県内製材業者と首都圏の工務店、住宅建材業者との商談会を開催いたしました。
今後も引き続き、こうした取り組みを通じて紀州材の販路の開拓に積極的に取り組んでまいります。
また、議員から発言のございました公共建築物への木材利用による地域イメージ向上の効果につきましては、重要なことと認識し、今後、県の公共建築物への導入を検討してまいります。
○議長(山田正彦君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 答弁をいただきました。
続きまして、大きな項目2つ目、南紀熊野ジオパーク構想の推進についてであります。
まず初めに、平成25年度の取り組みと成果についてお尋ねをいたします。
推進協議会発足から約1年が経過しました。平成25年度も、ジオツアーや関連の講演会など、ジオパークという取り組みを広く認知してもらうための企画が活発に展開され、「ジオ」という言葉がメディアを通じて浸透しつつあります。
ジオパークにおいて重要な役割を担うジオパークガイドの養成講座が開講されました。募集定員30名に対し、2倍以上の74名の応募があったため、全員が受講できるように受講枠を大幅に拡大し、にぎやかにスタートを切りました。私も上富田文化会館においての第1回講座を初め地元での講座に参加をさせてもらい、講座の雰囲気や地域の特色の一端に触れました。受講者は、長時間にわたる講義にも最後まで熱心に取り組み、ガイドとしての知識習得に励んでおりました。
紀南地域の大地の特色や歴史・文化を初め、ガイドテクニックや安全管理に至るまでの5回の講座とジオサイト見学、試行ジオツアーなどの実習を経て、59名が実技試験に合格したとのことで、3月には、その養成講座修了予定者によって企画された6つのコースのジオツアーを受講者みずからがガイドを行うと聞いております。
ジオパーク認定の審査においてはもちろんのこと、認定後も、南紀熊野ジオパークの魅力を伝えるには、ジオパークガイドのレベルやおもてなし力にかかっており、これからの活躍に期待を寄せているところです。
また、盛り上がりを見せるのは行政の取り組みだけでなく、民間にも及んできた感があります。
ことし1月、新宮市において、国内の世界ジオパークの1つ、山陰海岸ジオパークでジオを活用した民宿経営で有名な旦那さんと名物ジオガイドとして御活躍の奥さん、御夫婦それぞれが講演を行いました。主催は、新宮市、東牟婁の有志で構成されている熊野円座という民間団体で、県のジオパーク調査研究事業業務委託の一環として開催されました。
経営する民宿での接客では、山陰の地酒を例に挙げ、「このお酒は、花崗岩のところの伏流水でつくられています。花崗岩にはろ過作用があり、飲みやすい水になるなどと、ちょっとした説明やストーリー性を加えるだけで喜んでいただける」と話していました。
また、地元の食材をアピールするため、カニ、牛肉、魚を加えたジオ鍋を考案。重要なことは、1店舗だけで提供するのではなく、数店舗が足並みをそろえたことで、地域の協働事業やまちおこしの話題としてメディアを通して全国に発信できたことなど、民間の立場でのかかわり方の事例を紹介されておりました。
参加者には「地域を伝えるためには、まず地元のことを知ることが大事だ」と呼びかけていました。民間と同様に教育の一環としてジオに取り組む学校もあるとお聞きし、とても心強く感じています。
そこで、平成25年度における南紀熊野ジオパーク構想の推進に向けた取り組みの成果について、環境生活部長にお伺いをいたします。
○議長(山田正彦君) 環境生活部長塩崎 望君。
〔塩崎 望君、登壇〕
○環境生活部長(塩崎 望君) 平成25年度の主な取り組みとしては、まず、学術専門委員会の知見を得ながら、9月にジオパークの見どころであるジオサイト候補地83カ所を公表し、その後も逐次、追加選定を進めているところです。また、ジオパーク認定に向けての基本計画書、日本ジオパークネットワーク加盟申請書の作成についても、鋭意作業を進めております。
南紀熊野の魅力を伝える上で不可欠なジオパークガイドの養成につきましては、議員お話しのとおり、全8回の養成講座を実施し、このたび50名を超えるガイドが誕生する運びになりました。
さらに、ジオサイトを初めとする地域資源の発掘や活用を目的に調査研究事業を実施し、民間の団体などから企画提案のあった11の事業を行ったところです。
このほかにも、ジオパーク構想の普及啓発のため、多くの講演会や学習会、ウオークイベントなどを開催し、地元のジオパークへの関心は大いに高まっていると感じております。
○議長(山田正彦君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 続きまして、平成26年度の日本ジオパーク認定に向けた取り組みについてお伺いをいたします。
さきに紹介しました山陰海岸ジオパークガイドの御夫婦が「ジオパークの取り組みは、地域の特効薬ではなく、じわじわと効いてくる漢方薬のようなもの」と言っていたのが印象的でした。
日本ジオパーク認定が決定されれば、県民の関心度も一気に上昇すると思います。この取り組みには、人の活動が重要であると同時に、アイデア次第で活用方法は無限に広がることが理解していただけるものと確信しています。地域の機運の高まりはもちろんですが、携わっている県や市町村の職員さんとのやりとりの中にもやりがいに満ちあふれた姿を感じ取れることが何よりも頼もしく思います。私がこの取り組みの先にある地域活性化の効果に期待を抱いてしまうのは、そんなところにあるのかもしれません。
いよいよ平成26年度は南紀熊野ジオパークの誕生に向けて日本ジオパークネットワーク認定への申請を行うとのことですが、申請手続の流れと認定までのスケジュールなどをお聞かせください。また、あわせて、その他の取り組みや計画についても環境生活部長にお聞きをいたします。
○議長(山田正彦君) 環境生活部長。
〔塩崎 望君、登壇〕
○環境生活部長(塩崎 望君) 日本ジオパーク認定までのスケジュールは、3月末までに日本ジオパークネットワーク加盟申請書を提出し、4月末のプレゼンテーション、その後の現地審査を経て、合否の判断は8月28日の第21回日本ジオパーク委員会で発表されると伺っております。
平成26年度の取り組みとしては、日本ジオパーク認定対応のほか、情報提供の拠点となるジオステーションの整備やジオサイトの説明板の設置を進めてまいります。また、南紀熊野の大地の成り立ち、自然、文化、人の暮らしをわかりやすく紹介するDVDの作成、教育現場で活用できる副読本の作成やジオパーク検定も実施してまいります。ガイドの養成につきましては、継続的なスキルアップを図るとともに、新たな人材の養成を目指して講座を開設いたします。
これらの事業に取り組むことにより、多くの方々に訪問していただける南紀熊野ジオパークに育て上げ、地域の活性化につなげてまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 どうぞよろしくお願いいたします。
大きな項目、最後、宇宙工学(人工衛星など)の活用についてであります。
まず、大規模自然災害に対する防災や復旧計画への活用について、要望を行わせていただきます。
先日、和歌山大学において、「和歌山を、宇宙からの防災・教育の拠点に」と題したシンポジウムが開かれました。パネラーは、国土強靱化を進めていく上で宇宙からも地域を観測するため衛星技術を取り入れることを提唱された二階俊博衆議院議員、千葉工業大学惑星探査研究センター松井孝典所長、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の西村英俊事務総長など、そうそうたるメンバーがそろいました。宇宙工学、特に人工衛星と地上のセンサーチップを使って地上の変化を観測するシステムを防災や災害発生後の救助や復旧対策に生かすため、その技術開発や実証を本県で展開していこうという内容でした。
また、和歌山大学の秋山演亮教授は、平成26年1月8日付「読売新聞」の「論点」というコラムで、「通信衛星のような大型衛星は大手企業が既に進出しているが、観測衛星はまだ市場と呼べるほど成熟していない。ならば、私たちが開発した超小型衛星を使って参入する余地がある。日本国内での市場は限られるが、海外へ目を転じると可能性は広がる」と述べています。「例えばインドネシアのように島の多いところは、地上に施設を整備するより衛星を打ち上げて利用したほうが効率的で、台風などの被害が多いアジア諸国では、被災状況を把握できる観測衛星が役に立つ」と述べています。
ERIAのネットワークを駆使し、日本の設計技術を世界に広め、衛星そのものや部品などを輸出するなど、その技術をもとに世界的規模の産業発展が期待できるのではないでしょうか。
これまでも、軍事、通信、地球観測、航行、気象、科学など、さまざまな分野の役割を託された衛星が次々と打ち上げられ、現代社会の身近な分野にも及ぶ活用がなされています。代表的なものには、携帯やスマートホン、また車両に搭載されたナビゲーションシステムなどに見られるGPS機能が挙げられます。また、地球の表面の状態を観測することもできるようです。
先日、テレビ番組で紹介されていたのですが、衛星を利用して海水温度、植物プランクトンの量、潮の流れなどを観測し、これまで蓄積された過去のデータをもとに、その日の条件の良好な海域を割り出す漁場予測システムが開発され、漁業者が漁に出る際に目的の種類の魚が多くいる場所をあらかじめ予測、いわゆる当たりの確率を上げることによって一定の漁獲量の確保や高騰する燃油コストを抑えることを可能にするそうです。
日進月歩、人工衛星を使った各種の対応システムが盛んに開発されている昨今、和歌山大学では、宇宙関連技術や教育ツールの開発、人材育成を目的とした宇宙教育研究所が設置されました。施設としては、電波観測通信施設である直径12メートルのパラボラアンテナや屋上天文台などを有しています。当然、人工衛星に関する研究も行われており、その技術が大規模自然災害への対策にも役立つものとなるでしょう。
歴史的に見ると、たび重なる大規模自然災害に見舞われてきた和歌山県。県民の安心・安全の確保のために、雨量計や川の水位計、地殻の変化を察知する計器を随所に設置するなど、既にさまざまな防災対策が講じられていますが、さらにその危機管理体制を強化するため、人工衛星を利用し、地域の平時の状況との変化を観測することによって危険な状況を予知したり、万が一、大規模自然災害が発生した場合には、足を踏み入れることが困難な場所であっても、衛星からの観測によって正確な災害状況を把握し、より有効かつより迅速に復旧計画や対策に生かすこともできるのではないかと期待します。
本県の平成26年度予算編成の中に、和歌山県土砂災害啓発センターの整備事業に対し、1億1480万円が計上されています。土砂災害の危険性について啓発、研修を実施するための施設を整備し、そこには、我が自民党県議団砂防事業推進議員連盟も国土交通省や全国治水砂防協会、県選出国会議員への要望活動を行ってきましたが、国の研究機関となる国立砂防研究所の誘致も行うとの説明がありました。
土砂災害啓発センター並びに国立砂防研究所における事業内容並びに人員配置等は、現在検討中とのことです。そのような段階であるならば、ぜひ人工衛星の技術も取り入れ、あらゆる技術を駆使してデータ収集に努めていただくとともに、国や大学などの研究機関の協力を得て万全の対策を講じられるよう、県が連携の中心的役割を果たしていただくことを強く要望いたします。
続けて、2つ目の項目に移ります。
宇宙開発利用を持続的に進めるための宇宙教育についてであります。
若者が職業を選択、決定する基準の1つに、その職業に従事している親や身近な大人に影響を受けることは少なくありません。例えば、代々続いた先祖や親の会社、あるいは職人の極意も含め家業を受け継ぐなど、子供や身内が後継者になることは、「看板を守る」というごく自然な流れとして社会に息づいています。
また、政治家やスポーツの世界でも、親が傾けてきた情熱や活躍ぶりに影響を受け、加えて身内の指導、いわゆる家庭内英才教育を経て、同じ世界で親をもしのぐ活躍や実績を残すケースもあります。あるいは、身内だけでなくても、よき経験者や指導者との運命的な遭遇に影響を受けることもあるでしょう。
しかしながら、これからの分野とも言える宇宙開発分野においては、そのような環境はごくまれではないでしょうか。とするならば、宇宙の仕事に憧れ、将来の開発利用を持続的に支えてもらう人材を育成するためには、幼少のころから関心を示す環境、宇宙開発利用に触れる機会を設けることは大きな効果があると考えます。
平成24年12月に科学技術・学術審議会などがまとめた文部科学省における宇宙分野の推進方策には、その意義として「我が国が宇宙先進国として宇宙開発利用を持続的に進めていくには、これらを支える人材育成が不可欠である。具体的には、様々なニーズに適切に対応し、優れたプロジェクトをまとめあげる総合力を持った人材、技術面で豊富な知見を有し、ロケット、衛星等の設計・製作等を的確に行える人材、更には新規利用分野の創出に貢献できる人材の育成が重要である」と記されています。
具体的な推進方策として、1つ目に、専門人材の育成は量ではなく質が問われる状況にあり、魅力あるプロジェクトへの参加を通じた能力向上が重要である、2つ目に、「関心を有する青少年の裾野の拡大」とあり、小中学生等に対しては宇宙分野への関心の向上を主眼とした教材開発などの取り組みを、高校生、大学生等に対しては模擬のロケットや衛星の打ち上げ等の実体験を通じてより専門的な関心を高める取り組みなどを支援するべきであると記されています。
本県には、地元和歌山大学に全国に先駆けた宇宙教育研究所があり、また、コスモパーク加太のような模擬のロケットや衛星の打ち上げ実験に適した敷地面積、都市部や近隣住宅からの安全距離が確保できる場所もあります。宇宙開発利用の分野での先進地を目指すことは、和歌山県の新たな特色や産業の創出につながるものと考えます。そのためには、子供たちが宇宙を身近に感じられるよう、宇宙工学を学ぶ環境づくりに取り組むことが将来の本県の発展につながる大変意義のあることだと考えますが、青少年に対する宇宙教育をどのようにお考えでしょうか。教育長にお尋ねをいたします。
○議長(山田正彦君) 教育長西下博通君。
〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 青少年に対する宇宙教育についてお答えします。
宇宙開発に係る科学技術というのは、今後ますます発展することが予想され、この分野で活躍する人材の育成が強く求められていくものと考えております。
県教育委員会では、広く科学に興味や関心を持った子供たちの育成に努めており、宇宙に関しても、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と連携協定を結び、中高校生が筑波宇宙センターを見学したり、宇宙開発に関する講義を受けるなどの機会を提供しております。
また、県内の高校生が、自分たちでつくった空き缶サイズの模擬衛星を打ち上げて大気データの入手、分析を競う缶サット甲子園全国大会で優勝し、アメリカで開催された世界大会に招待されるなど、高度な知識と技術を有する生徒も育っております。
今後も、科学への興味・関心を高め、宇宙工学の道に進む子供が育っていくよう、宇宙に関する題材も取り入れながら科学教育の充実に努めてまいります。
○議長(山田正彦君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 答弁をいただきました。今後の積極的な取り組み、どうぞよろしくお願いいたします。
以上をもちまして、私の一般質問を終わらしていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(山田正彦君) 以上で、濱口太史君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前11時39分休憩
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