平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)
平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録
第5号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)
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人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。
質疑及び一般質問を続行いたします。
9番鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕(拍手)
○鈴木太雄君 皆さん、改めまして、おはようございます。
議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。最後までおつき合いのほど、よろしくお願いいたします。
大項目の1として、主要な県道整備について質問をいたします。
まず、小項目の1点目として、県道平瀬上三栖線の整備についてであります。
現在、県におきましては、紀南地方における主要な幹線道路について、中でも一昨年に起こった台風12号災害からの災害復旧工事につきましては、特に県管理の国道311号真砂から滝尻間や、県道田辺龍神線虎ケ峰付近等、順調にその工事が推し進められており、完全復旧が待ち望まれているところであります。
また、国道311号が寸断した際の迂回路となった県道近露平瀬線については、ちょうど2年前の平成23年12月議会での一般質問において待避所設置に取り組む旨の答弁をいただき、現在、田辺市近露から同市下川下の区間で特に整備を急ぐ3カ所を選定し、測量設計を行っていただいております。いよいよ来年度には、用地の取得を行った後、工事に着手したいとお聞きしており、大変感謝をいたしているところであります。
次に、県管理の国道371号については、紀北、紀中と紀南地方とを内陸部で結ぶ唯一の緊急輸送道路である県道龍神中辺路線の代替路としても大変重要な路線であり、残る未完成区間の龍神村殿原地区において、現在、橋梁及び改良工事が推し進められているところであります。
今申し上げましたような主要な幹線道路の整備については、いずれも順調に工事が推し進められておりますが、そういった中にあって、県道の平瀬上三栖線、田辺市中辺路町西谷から同市上野間につきましては、用地取得の難航等により、その事業が休止をしている状況にあります。
改めて申し上げますが、本路線は、地域間を結ぶ主要な道路であり、災害など緊急時には国道311号の代替路にもなります。しかし、現道は幅員が狭隘で線形も悪く、乗用車の対向や大型車両の通行が困難な状況であり、そのため、以前より事業再開に向け地元要望が根強い路線でもあります。
ここで、休止をしているその区間の早期事業再開についてどのようにお考えか、県土整備部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) ただいまの鈴木太雄君の質問に対する答弁を求めます。
県土整備部長石原康弘君。
〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 県道平瀬上三栖線は、田辺市中辺路町西谷から同市中心部に通じる生活幹線道路であり、また議員御指摘のように、災害時には国道311号の代替路ともなる路線であります。
議員御指摘の田辺市中辺路町西谷から上野までの区間につきましては、狭隘な区間が連続していることから、事業を再開する方向で、平成24年度には概略設計を、平成25年度には予備設計を行うなど、ルートの検討を進めております。
今後、地籍調査の進捗につきましても市や地元関係者の協力を仰ぎながら、本区間の事業の着手時期を検討してまいります。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の2点目として、県道上富田南部線の整備について質問をいたします。
県道上富田南部線は、上富田町からみなべ町に至る国道42号を補完する非常に重要な路線であります。田辺市域の下万呂から秋津町田尻間においては、秋津野橋の橋梁つけかえを含め、1.3キロメートルの区間で工事が本年7月に完成をし、引き続き、中万呂地区の0.5キロメートル区間について測量設計が行われてるところであります。
本路線から先の紀南病院前を通る温川田辺線までの区間については、現時点において整備予定がないと聞いておりますが、幅員が狭隘で特に線形も悪いため、区間を延長した整備が地域住民から求められているところであります。
また、同市秋津町の右会津川沿いの紀南農協秋津支所から岩口池入り口交差点までの区間については、バス路線や通学路になっており、先ほどと同じく、幅員が狭隘で車両が対向できない上に歩道も整備されていないため、交通に支障を来し、児童生徒にとっても極めて危険な状況下であります。
このため、本路線の未整備区間に対し、約20年前から長きにわたって地元要望がなされており、先般も地元から県に対し、改めて署名を添えて陳情が行われたところでもあります。さらに、同線稲成町までの区間についても、幅員はあるものの急カーブが多く、非常に危険な状況下にあります。
以上のような本路線における未整備区間について、整備方針をも含め、県土整備部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 県土整備部長。
〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 県道上富田南部線につきましては、議員御指摘のとおり、田辺市下万呂から秋津町までの1.3キロメートル区間が本年7月に完成し、引き続き田辺市中万呂の人家連檐区間0.5キロメートルの測量設計に着手したところです。
その先線となる県道温川田辺線までの区間につきましては、事業中区間の進捗を踏まえ、市や地元関係者の意見を聞きながら、整備のあり方について検討したいと考えております。
また、秋津町地内の右会津川に沿った区間につきましては、幅員が一部3メートル程度の特に狭隘な区間があります。この区間はバス路線であり、また地域の重要な生活道路でもあるため、用地協力が得られるのであれば、狭隘区間の解消について検討してまいります。
さらに、田辺市稲成町までの区間につきましても、交通状況を勘案し、地元の意見を聞きながら、特に狭隘な、また急カーブの箇所につきましては、現道対策について検討してまいります。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 今回質問いたしましたいずれの路線も、未整備区間が整備・解消されれば、生活用道路としてはもちろんのこと、他路線の代替路として非常に効果的かつ安全性も確保されることから、その整備や取り組みについて、ぜひ推し進めていっていただきたいと思います。これは要望といたします。
続けて、大項目の2である梅産地の振興について、小項目4点にわたって質問を、また、この項の最後に要望を行います。
まず、小項目の1点目として、梅干し等の動向について、特に梅干しの価格についてであります。
梅は、言うまでもなく、本県を代表する農作物の1つであり、特に紀南地方においては、梅栽培農家を初め、梅干しや梅酒等の製造販売業、また観梅による観光業等、梅関連の産業が非常に盛んであり、裾野の広い地場産業として地域経済の大きな柱となっております。
そういった中で、青梅の販売については、ことしも例年どおり、県や市町村、農協など、産地においてさまざまな取り組みを行っていただいておりますが、昨年の凶作により量販店の売り場面積が縮小されたことに加え、本年は全国的に豊作傾向であったことなどから、販売価格については非常に厳しい結果となりました。
こういった状況下で、市場からは、小梅、古城、南高へと続くリレー販売について計画出荷の要望があり、早急に対応する必要があるのではないかと考えております。
また、年末を控え、梅干しの流通も大変厳しいため、いまだ取引をしてもらえない農家もありますし、その上、梅干しの取引価格についても、公正取引委員会の警告以降は各社まちまちでありますので、産地の農家は梅の今後について不安を抱いております。やはり再生産価格を考慮した取引の確立が大変重要であり、求められているのではないかと考えるわけであります。とりわけ、この夏は、猛暑により熱中症対策として8月、9月の1世帯当たりの梅干しの購入数量や購入金額は前年同月よりも伸びているようでありますが、消費回復までに至っていないのが実情であります。
今後、梅干しの消費拡大はもちろん、青梅の需要を拡大し、青梅と漬け梅のバランスを調整することも必要と考えておりますが、県として、取引価格の安定と継続的な需要を図るための方策についてどのようにお考えでしょうか。農林水産部長に御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 農林水産部長増谷行紀君。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 本年産梅は、着果数、肥大ともに良好で、生産量は過去最高の7万9000トンとなり、農家が1次加工した白干し梅も、塩の使用量から見ると、例年の1.5倍に相当する約350万たるが生産されているものと推計しています。
消費者の低価格志向が続く中、白干し梅は単価の高い等級の取引が進んでおらず、生産農家の経営が厳しい状況であると承知しています。
県といたしましては、梅の消費拡大対策として、健康によいといった機能性の研究支援や、その成果をPRするフォーラムの開催に加え、梅干しについては、関係団体と協力して小学校等への配布を行っているところでございます。
また、梅干しの消費量が10年前に比べて約2割程度減少する中で、梅干し以外の用途への拡大を図るため、梅ジュースや梅酒に適した品種への改植支援などの生産対策を実施するとともに、人工酸味料を添加した梅酒と、それを使っていないいわゆる本格梅酒を区別する表示基準の策定を財務省に要望しています。
梅は本県農業の基幹品目であることから、関係市町やJAなど産地の方々とより一層連携を図りながら、梅干しの消費拡大や生産対策に積極的に取り組んでまいる所存でございます。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の2点目であります。今後に向けた梅干し等の販路拡大の方策と取り組みについて質問をいたします。
先ほども申し上げましたが、本年産の梅は大豊作であり、農家が抱える梅干しの在庫も大量となっております。来年も豊作となると、本年産の在庫とも相まって、通常の梅干し販売チャンネルではとても対応し切れないのではないかと危惧をいたしております。
そういった中、田辺市とJA紀南でつくる紀州田辺うめ振興協議会では、先月8日に、梅干し製造時に発生する梅酢から抽出したポリフェノールにインフルエンザウイルスの増殖抑制と不活性化作用を発見したと発表をされました。これは、県の果樹産地再生緊急対策事業を活用して、元県立医科大学教授で和歌山信愛女子短期大学の小山学長のグループらに研究委託した成果であり、今後、うがい薬や抗ウイルス食品など、梅の機能性を生かした商品開発につながるものと期待しているところであります。
このように、県においても県産品の販路拡大につなげようと努力をいただいておりますが、今後、在庫も含めた梅干し等の販路拡大についてどのように取り組まれるか、農林水産部長に御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 農林水産部長。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 県では、従来より、スーパーマーケット・トレードショーやFOODEXといった大型商談会などにおいて、県産品の販路開拓に積極的に取り組んでまいりました。
昨年度からは、梅を初め、和歌山のものはおいしいし、さらに健康にもいいといった機能性等についてもPRしていこうということで、「おいしい!健康わかやま」を積極的に推進しています。
自治体ではほかに類を見ない取り組みとして、県産食材機能性ガイドを作成、配布するとともに、数々の健康関係のマスコミ媒体にも取り上げていただくよう働きかけるなど、機能性のPRに努めているところでございます。また、単なる販売促進だけでなく、アスリート向け梅干しの開発や食品メーカーへの食材・原料提案など、多角的な販路開拓にも努めております。
折しも、和食が世界無形文化遺産に登録され、今後注目が期待される中、本県特産のしょうゆやみそなどとともに梅干しが食材の1つとして再認識してもらえるよう、国内はもとより、海外への販路拡大にも取り組んでいく所存でございます。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の3点目として、将来を見据えて梅との複合経営や新たな農産物の発掘について質問をいたします。
梅は、去年の凶作から一転して本年は大豊作であったように、近年の温暖化の影響もあり、生産量や販売価格等が不安定で、梅農家の経営は年々厳しさを増してきております。こうした状況では後継者も残りにくく、産地の先細りが心配をされております。
そういった中、国では、米や麦、野菜、果樹等の価格が下落した場合、農家の収入減少分の一定割合を補填する収入保険制度の検討を既に始められておりますが、制度の導入に至るまではしばらくかかるでしょうから、当面はこの制度を当てにすることはできません。
私は、常々、梅農家の経営を安定させるためには、梅をベースとしながらも、多品目を取り入れた複合経営によりリスクを分散することが重要であると考えておりますし、事実、県においても既に取り組まれております。また、そうした複合経営に加え、将来的には、梅以外の新たな産物による産地化も必要となるのではないかとも感じております。この点について、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 農林水産部長。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 一般的に単一経営は作柄による価格変動の影響を直接的に受ける点からもリスクが大きく、議員お話しのとおり、経営安定のためには複合経営が有効であると考えております。
例えば、施設での野菜栽培は、永年作物とは違って年間複数回の収穫が可能、需給動向に応じた作物の転換が容易などといった利点があります。このため、県といたしましては、複合経営に取り組もうとする果樹農家の野菜・花卉用ハウスの導入を支援する和歌山版複合経営産地育成事業を昨年度から実施し、紀南地域の梅農家さんにも御活用いただいているところでございます。
新たな産物の産地化の必要性については県としても認識しており、今後も関係市町やJAとよく相談しながら検討してまいります。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、小項目の4点目として、梅酒の販売促進について質問いたします。
国内での梅酒の販売状況は非常に好調であり、それにつれ、日本全国で梅酒の生産量もふえてきている状況にあります。日本洋酒酒造組合の統計によりますと、平成2年の梅酒生産量7189キロリットルであったものが、平成21年には約5倍の3万5234キロリットルにも伸びてきております。
梅酒は、20代の若い女性を中心に人気が高まっていることや、近年の酒類等でカロリーオフや糖質オフなどといった機能系飲料の普及があり、梅酒においてもその約4割が機能系梅酒であることから、生産量が増加をいたしております。また、梅酒人気は国内のみにとどまらず、今や海外への輸出製品として、日本酒や焼酎などとともに急成長しております。
そういった状況下において、最近では、県内の酒造事業者はもとより、梅干し製造事業者においても、紀州産の梅を使用した梅酒の製造がふえてきております。日本一の梅の産地である紀南地方においても、田辺市を初め、みなべ町や上富田町で、梅の販売促進といった観点から、梅酒などに関する特区の認定を受け、梅酒の製造事業者をバックアップしているところでもあります。
加えて、全国で乾杯条例が制定されておりますが、海南市においてもさきの10月に地酒で乾杯を推進する条例が制定され、今般、田辺市でも、梅酒や梅加工品の消費拡大による地域活性化をにらんだ通称「梅酒で乾杯条例」が議員提案により制定されたところであります。
その内容について少し御紹介いたしますと、この条例は、梅の生産量日本一を誇る本県において、代表的な品種である南高梅等を原料とした紀州梅酒や梅ジュースによる乾杯の奨励と、梅干しなどの梅製品を積極的に普及させることで梅の消費を拡大し、さらなる紀州梅ブランドの確立、梅関連産業の振興・発展及び地域の活性化並びに市民の健康維持増進を図ることを目的としております。
また、同時に、市、梅生産者、梅製品の事業者に積極的な取り組みを求めるとともに市民にも協力をお願いするものであり、県内はもとより、全国的な梅製品の消費拡大を期待するものであります。
国内の梅酒人気の高まりとともに、このように、梅産地の各自治体においても地域全体で機運の醸成を図ろうと努力をいただいてるところであります。県としても、日本一の生産量を誇る紀州産梅の振興という観点から、梅酒の販売を促進していく今が一番の好機ではないかと考えますが、現在の取り組み状況と今後の販売促進について、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 農林水産部長。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 梅酒の需要は、議員のお話のとおり、この20年近くで約5倍に拡大しており、要因として、若い女性を中心に、香りがよくて飲みやすいといっただけでなく、健康増進の効果もあるということで人気を集めていると受けとめています。
県では、先ほども申し上げたとおり、「おいしい!健康わかやま」をキャッチフレーズに県内事業者の販路開拓を支援するとともに、首都圏でのPRイベントでもマスコミやバイヤー関係者等に梅酒の魅力をアピールし、好評をいただいております。
県内梅酒メーカーも、国内はもとより、海外市場開拓にも積極的に取り組んでおり、また、お話のように、田辺市の梅酒で乾杯条例など、地元自治体でも機運が盛り上がってきていることから、今後もさらに各関係機関と連携しながら、本場紀州の梅酒の販売促進に取り組んでまいる所存でございます。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、梅の生育不良、根枯れについて要望いたします。
これまで、本県においては梅の生育不良について、植物生理や大気環境等の専門家で構成された和歌山県うめ対策研究会の報告に基づき、新たに設置したうめ研究所において、栽培管理、養水分管理などの研究や現地指導、また補助事業による改植や土壌改良への支援を行っていただいております。その結果もあり、生育不良樹の栽培面積に占める発生割合は、ピーク時に11.6%であったものが、現在、0.6%まで減少している状況であります。
しかし、先日行われた田辺うめ対策協議会による平成25年の梅生育不良樹に係る発生本数調査では、田辺市内で前年より約350本もの増加が見られます。その中には、地上部は健全であっても根が枯れている木もあり、今後、地上部に生育不良の症状が発現するのではないか、また発生本数が増加するのではないかと、農家から不安視されてるところであります。
本年、梅はかつてない大豊作となり、夏の間の高温干ばつも厳しく、例年以上に木に負担がかかっているのではないかと話している農家の方もいらっしゃいますが、いずれにせよ、県におかれては、関係市町やJAと十分連携をして、梅の根枯れを含めた今後の梅生育不良の発生やその状況について、例年以上に注視しておくとともに、必要に応じてその対策もしっかり講じていただきたいと、このように要望いたします。よろしくお願いをいたします。
それでは、引き続き、大項目の3であります。鳥獣害対策について、特に捕獲に取り組む農家の負担軽減について質問をいたします。
近年、イノシシや鹿、猿などの野生鳥獣による農作物被害が深刻な問題となっているのは、皆さん御承知のとおりでございます。全国的に同じような状況にあり、被害金額は200億円前後で推移している状況です。また、本県におきましても被害金額は3億円前後で推移しており、鳥獣害対策を行っているにもかかわらず、なかなか被害が減らない状況にあります。このような状況が続くと、農家自身の栽培意欲の減退にもつながり、耕作放棄地増加の原因となる可能性もあり、農業振興上、解決しなければならない問題であります。
しかし、農家自身も農作物が被害に遭うのを黙って見ているわけではなく、鳥獣害対策として主にわな猟免許を取得し、箱わなやくくりわなで野生鳥獣を捕獲されております。近年では、イノシシや鹿などといった野生鳥獣を農家自身が捕獲するという動きが目立ってきている状況であります。
国を初め県や市町村も鳥獣害対策に支援をされているところでありますが、わなでの捕獲の場合、餌やりや見回り等が負担になるため何とか軽減できないものかと思っておりましたが、昨年度、規制緩和により、わな猟免許を持たない補助者も餌やりや見回りが可能となり、地域ぐるみで捕獲活動ができることとなりました。
しかし、農家の方の場合、猟期に狩猟を目的としてわな猟免許を取得しているのではなくて、自衛手段としての有害捕獲であり、そのための狩猟者登録等にかかる費用が2万円を超え、経済的負担となっているので何とかならないかという声をよくお聞きいたします。
そういった状況下で、鳥獣保護法の改正の検討に際し、平成24年11月に環境大臣から中央環境審議会に対し「鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき措置について」が諮問され、それに対する答申素案が、現在、パブリックコメントで公開されております。その検討に当たっては、特に緊急を要するニホンジカやイノシシの個体群管理に焦点を当てて議論を深めたとされており、効果的な捕獲体制の構築として、農林業者等がみずから行う被害防止のための捕獲についても議論されております。
その内容はわなを用いた捕獲の規制緩和についてであり、答申素案では、「事業地内に限り、時期を問わず囲いわな、箱わなを用いた捕獲許可を不要とするなど、捕獲に係る手続きの簡素化を行うことは、農林業者が自ら行う被害防止のための捕獲の推進に寄与する」となっています。今後の法改正による規制緩和については安全性の確保などが危惧されているものの、箱わなに対する捕獲従事者要件のさらなる緩和が実現すれば農業者等への負担軽減につながるものと考えております。
また、県のくくりわなに対する要件緩和においては「経験者のもとでは、1猟期を経過すれば有害捕獲に従事できる」とされておりますが、特にこの点である有害捕獲許可に係る経験者要件を県がさらに緩和すれば、先ほど申し上げた農業者等への経済的な負担軽減にもつながると考えますが、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 農林水産部長。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 捕獲に取り組む農家の負担軽減については、これまでも狩猟免許取得やわなの購入に対する補助を行ってきましたが、個々の農家にとっては負担は大きいという声をお聞きしています。
現在、国で行われている「農林業者等がみずからの事業地に限り、時期を問わず、囲いわな、箱わなを用いた捕獲許可を不要とする」という議論は安全について引き続き検討が必要となっていますが、鳥獣保護法の改正による規制緩和は農家の負担軽減につながることですので、肯定的に受けとめております。
また、県が行っているくくりわなの有害捕獲許可に係る経験者要件の緩和は、農業者の負担軽減になっているものと考えております。
くくりわなの有害捕獲において経験者要件をさらに緩和する場合、和歌山県第11次鳥獣保護事業計画の変更が必要となりますので、今後、関係者の意見をお伺いしながら、安全性を確保しつつ、農家の負担軽減となる内容を検討し、変更協議を行ってまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 ぜひ農業者等の気持ちを酌み取っていただき、経済的にも負担軽減が図れるように県としても御努力をいただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。
続いて、4項目の海上における津波発生時の情報のあり方について、3点にわたって質問をいたします。
その1点目として、海上における情報伝達の現状と認識について質問をいたします。
現在、本県において東南海・南海地震等による津波の発生が懸念されている中、改めて言うまでもありませんが、地震発生時には、第1報として、防災行政無線による放送を初め、防災わかやまメール配信サービスやエリアメール、または緊急速報メール等、さまざまな手段で住民等へ緊急情報が発信をされます。そのことにより迅速に避難行動をとることができ、命を守ることにつながるものであります。
また、災害発生後においては、避難情報の収集並びに避難所内での安否情報や支援物資情報の収集など、極めて重要なことから、情報伝達手段の改善や複層化に鋭意取り組まれているところでもあります。つまり、山村、農村、漁村、まち等を問わず、陸上においては、地震発生時、第1報の緊急情報が瞬時に発信されますし、発災後においても情報伝達手段が着実に確立しつつあると考えております。
また、海上域におきましても、去る9月議会で行われた一般質問での答弁で、海上域における漁業者への情報伝達については、操業エリアのほとんどをカバーし、漁業者にも広く普及している携帯電話メールの緊急地震速報で認識していただくことが最も迅速かつ確実であると考えているとのことであり、私も、海上域における携帯電話への地震緊急情報の発信は有効な情報伝達手段として理解してるところであります。無論、言うまでもありませんが、携帯電話のサービスエリア内を航行している船舶においてもしかりであります。
しかしながら、漁船の操業中においては異なる事情があるのも事実であります。そもそも、漁業者は、操業中、水しぶきをかぶる作業であり、かっぱを着用するため、ほとんど携帯電話を身につけておらず、潮をかぶらないようデッキ等に保管をいたしております。また、仮に身につけていたとしても、特に網を上げている作業中などでは、携帯電話をのぞくことや着信を確認することは到底できるものではありません。
さらに、まき網漁船等においては、大きなエンジン音や振動があることに加えて、スピーカーを通した無線を使用しているため、第1報の緊急地震速報に気づくことは非常に難しい状況にあります。
このことを踏まえていただき、改めて海上域における情報伝達の現状とその認識について、知事の御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 海上で操業中の漁業者に対する地震発生時の第1報の伝達手段としては、携帯電話による緊急地震速報や緊急速報メールが普及率とか一斉同報機能という観点から最も迅速かつ確実な手段であると思います。大体35キロぐらいだったら届くということのようでございます。
しかしながら、議員お話しのように、携帯電話を身につけずにデッキに保管する、あるいはエンジン音等で気づきにくい、一生懸命操業しておられるときはなかなか熱中してるからわからんというようなことがありまして、緊急時における携帯電話による情報伝達には一定の制約があるということは容易に想像するところであります。
東南海・南海地震等による津波の被害を軽減させるためには、まず、第1報を迅速かつ確実に伝えることが基本でございます。携帯電話による操業中の漁船への緊急地震速報等の伝達にはこうした制約があることを踏まえ、対応策を考慮してまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 次に、2点目として、漁業無線の積極的な活用について質問いたします。
先ほど、改めて、海上域における情報伝達の現状とその認識についての項で、第1報を含めた情報伝達手段としての携帯電話の有効性並びに活用上の問題点について答弁をいただきましたが、そもそも操業中の漁業者におきましては、漁協や船と船との情報のやりとりや作業の指示など、漁業無線をふだんから使用しております。その使いなれた漁業無線を活用すれば、地上からの防災情報を漁船で受信することや、漁船からの緊急情報を災害対策室あるいは海上保安部等に提供することに加え、漁船からの現場情報を各漁船において送受信することもできます。
このように、陸上域や海上域を問わず双方向での情報のやりとりが可能であるため、発災後、津波等で流された人の救助や、またその復旧時においても、物資の輸送等に役立つことができ、非常に大きく重要な役割を果たすものであります。
しかしながら、現在、本県にあるほとんどの漁業無線海岸局は海抜5メートル未満のところに位置してるため、地震発生時におきましては無線従事者が高台への避難を余儀なくされ、漁船への緊急情報の第1報が発信できません。
操業中の漁業者にとりましては、陸上とは違い、地震の揺れを体で感じることはなく、地震が発生したこと自体わからないのが実情であります。そういったことから、避難するためには陸上からの第1報が唯一の生命線であり、むしろ海上域における緊急情報の第1報については、地震を感じない分、陸上域より重要度が高いと言っても過言ではありません。つまり、緊急時における漁業者への第1報についても、陸上同様に情報伝達手段の複層化を図ることが操業中である漁業者の安全性を確保することにつながるものと考えます。
したがって、海上域にいる、特に操業中の漁業者まで瞬時かつ確実に緊急情報を届けるためには、携帯電話メール機能だけではなく、漁業無線を活用した体制づくりが最良であり、最適であると考えます。
緊急時における第1報の発信を含めた漁業無線の積極的な活用について、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 農林水産部長。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 地震発生時の第1報の伝達手段の複層化は、情報伝達の確実性を高めるために、当然必要なことであると考えております。
東南海・南海地震等に際しましては、議員御指摘のように、無線従事者が高台に避難せざるを得ないため、海岸局からの漁業無線による第1報の発信は困難であります。対応策としましては、例えば漁船の無線機を、緊急時には海上保安庁からの緊急通信周波数に自動的に同調する機種に機能アップするという方法などがございます。
先ほど知事がお答え申し上げましたように、携帯電話による操業中の漁船への緊急地震速報等の伝達には一定の制約がございますので、今後、情報伝達手段の複層化に漁業無線を活用できるよう、海上保安庁の緊急通信の各漁船での受信について勉強してまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 本県には約5200隻もの漁船があり、そのうちの約2100隻が漁業無線を積んでおります。先ほども申し上げましたが、海上域で操業している漁船に対しての第1報の緊急情報は、携帯電話のメールのみでは心もとない状況であります。無論、携帯電話のメール機能を活用した緊急情報発信も大事ではありますが、やはり陸上同様、海上域でも、情報伝達の複層化は非常に重要であります。
また、津波がおさまった後なども、救援物資の搬送などで漁船は大いに役立つものでありますので、第1報を含めた情報伝達の複層化のみならず、発災後の災害応急対策の観点からも漁業無線の活用について検討していただきたいと思います。
今回はあえて触れておりませんが、本来であれば、発信元である漁業無線海岸局の高台移転を行うことが海上域での漁業者の安全を確保することにつながり、また発災後にも何よりも効果的であるわけであります。しかし、漁業者の命を守る、その意味において、まずは最低でも第1報を含めた情報伝達手段の複層化を図りたいという強い思いで今回は質問をいたしました。この点も含めて、各関係機関とも協議や研究をしていただきたいと思います。
続いて、次に移ります。
小項目の3点目として、海上域におけるレジャー客等への情報伝達の取り組みについて質問をいたします。
先ほどから特に海上域における漁業者への情報伝達について質問をいたしましたが、広域な沿岸部を持つ本県では、海上域での余暇を楽しむために多くの観光客に訪れていただいている状況でもあります。特に休日ともなると、海上域では多くの釣り客やプレジャーボートに乗ったレジャー客が訪れており、こうした観光客は観光立県を目指している本県にとりましても非常に重要であります。
しかし、本県は、東南海・南海地震等の脅威が常につきまとい、沿岸部ではいつ何どき津波に襲われても不思議でない環境にあり、海上域においての観光客に対する安全の確保が求められております。
そういったことから、海上域でレジャーを楽しむ方々に対し、県ではどのようにして地震・津波の第1報を伝えるのか、危機管理監の御見解をお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 危機管理監木村雅人君。
〔木村雅人君、登壇〕
○危機管理監(木村雅人君) 沿岸部のみならず、近海の海上におられる観光客の皆さんにも、エリアメール及び緊急速報メールにより緊急地震速報や津波警報が送信されます。
また、防災わかやまメール配信サービスの登録をされている方には、気象庁が発表する地震情報や沖合観測津波情報などのメールが随時配信されます。このメール配信サービスは、現在、約4万人の方々に御利用いただいておりますが、さらに観光協会、旅館組合、JRやNEXCO等とも連携し、パンフレットを配布するなど、観光客への周知にも力を入れているところです。
今後も、より多くの方々にメール配信サービスを登録していただけるよう、連携先を広げるなど、引き続き啓発に努めてまいります。
○議長(山田正彦君) 鈴木太雄君。
〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 これで、私の一般質問を終わります。御清聴、ありがとうございました。
○議長(山田正彦君) 以上で、鈴木太雄君の一般質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前11時19分休憩
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